説明

蓋付き浴槽

【課題】蓋を浴槽本体上にスライド可能に配置することで、蓋の開閉動作が容易に行えて使い勝手を向上させ得る蓋付き浴槽を提供する。
【解決手段】浴槽本体上に蓋が載置可能に配置される蓋付き浴槽であって、前記蓋が折り畳み可能に構成されると共に、蓋の一端側を前記浴槽本体の背足方向の一端側に取り付ける取付手段と、蓋の他端側を一端側方向に押すことで該蓋を折り畳みつつスライドさせるスライド手段と、を備えることを特徴とする。また、前記折り畳んだ蓋を浴槽本体上に立設保持する保持手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムバスルーム等の浴室に設置される浴槽に係り、特にスライド可能な蓋を備えた蓋付き浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、システムバスルーム等の浴室に設置される浴槽には、その上縁開口部を覆うための蓋が配置されている。従来、この種の蓋としては、例えば特許文献1に示すように、2枚に分割された蓋体を互いに接する状態で合わせて配置する合わせ蓋や、例えば特許文献2に示すように、複数の蓋体が可撓部を介して巻回可能に構成された巻き蓋等が使用されている。
【特許文献1】特開2006−150031号公報
【特許文献2】特開2006−239035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示の合わせ蓋においては、蓋が配置された状態で入浴者が浴槽に入る場合に、2分割された各蓋体を一々持ち上げて浴槽から外す必要があり、この開放動作が面倒である。また、特許文献2に開示の巻き蓋においては、巻回した蓋を浴槽本体上に立て掛けることが多いため、この立て掛け作業が面倒となり、いずれの蓋においても浴槽の上縁開口部を開放したり覆ったりする蓋の開閉動作や立て掛け作業が面倒で使い勝手が劣ることになる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、蓋を浴槽本体上にスライド可能に配置することで、蓋の開閉動作が容易に行えて使い勝手を向上させ得る蓋付き浴槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、浴槽本体上に蓋が載置可能に配置される蓋付き浴槽であって、前記蓋が折り畳み可能に構成されると共に、蓋の一端側を前記浴槽本体の背足方向の一端側に取り付ける取付手段と、蓋の他端側を一端側方向に押すことで該蓋を折り畳みつつスライドさせるスライド手段と、を備えることを特徴とする。また、請求項2に記載の発明は、前記折り畳んだ蓋を浴槽本体上に立設保持する保持手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、折り畳み可能に構成された蓋を浴槽本体の背足方向の一端側に取り付ける取付手段と、蓋の他方側を一方側方向にスライドさせるスライド手段を備えるため、スライド手段により蓋を持ち上げることなく浴槽本体上で折り畳みつつスライドさせることができ、蓋の開閉動作が容易に行えて浴槽の使い勝手を向上させることができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、折り畳んだ状態の蓋が保持手段で浴槽本体上に保持されるため、折り畳んだ蓋を安定保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は、本発明に係る蓋付き浴槽の一実施形態を示し、図1がその蓋の斜視図、図2が蓋の一端側裏面の斜視図、図3が蓋の浴槽への配置状態の縦断面図、図4が浴槽の平面図、図5が蓋の開放状態の縦断面図、図6が蓋のスライド手段の変形例を示す斜視図である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「浴槽本体の背足方向」とは、浴槽内の入浴者の背中や足が向く方向をいうものとする。
【0009】
図1及び図2に示すように、本発明の浴槽に使用される蓋1は、樹脂製の2枚の蓋体1a、1bを有し、この蓋体1a、1bが折り曲げ部2で連結されることで、平板状態と折り畳み状態とに変更可能に構成されている。そして、蓋1の長手方向の一端側である蓋体1aの端部両側面には、取付孔3がそれぞれ設けられると共に、蓋1の他端側である蓋体1bの端部の裏面の両隅部には、ローラ4がそれぞれ回転自在に配設されている。
【0010】
前記取付孔3は、図3に示すように、浴槽本体としての浴槽5の上縁フランジ5aで背足方向の一端側に立設状態で設けられた取付板6と共に本発明の取付手段を構成し、また、前記ローラ4は、図4に示す浴槽5の上縁フランジ5aの手前側と奥側に形成されたガイドとしての一対の溝7と共に本発明のスライド手段を構成している。なお、浴槽5の上縁フランジ5aに形成されるガイドは、溝7に限らず図4の一点鎖線aで示すように、一条もしくは二条の突条8等で形成することも可能である。
【0011】
そして、図3に示すように、浴槽5の上縁フランジ5aに設けられた取付板6に、蓋体1aの取付孔3が軸としてのピン9で回転自在に取り付けられると共に、蓋体1bのローラ4が溝7内に嵌挿されることで、蓋1が浴槽5上に載置状態で配置されている。なお、ローラ4は、例えばローラケース10に回転自在に取り付けられ、このローラケース10が蓋体1bの端部裏面の両隅部にそれぞれ埋設状態で配設されて、ローラ4の下端外周面が蓋体1bの裏面から所定寸法突出するように設定されている。
【0012】
この蓋体1aが浴槽5の上縁フランジ5aに取り付けられ、蓋体1a、1bが上縁フランジ5a上に載置された状態で、図3の実線で示すように、2枚の蓋体1a、1bが平板状態にされて、浴槽5の上縁開口部5bが蓋1で覆われた状態となる。
【0013】
一方、入浴者が浴槽5に入る場合は、平板状態の蓋1の蓋体1bの端部を手で持って蓋体1a方向に矢印イの如く押すことで、蓋体1aはピン9を中心に回動して図3の二点鎖線で示すように、折り曲げ部2が上方に持ち上がり、この状態からさらに押すことにより、図3の一点鎖線で示すように、2枚の蓋体1a、1bが折り曲げ部2で略完全に折り畳まれて浴槽5の上縁フランジ5a上に立設した状態となる。この立設状態を維持できる蓋体1a、1bの折り畳み角度は、蓋1の折り曲げ部2の剛性を変えることで調整することができる。この蓋1の立設状態において、浴槽5の上縁開口部5bが開放されて、浴槽5に入浴者が入ることができる。
【0014】
また、例えば入浴が終了して蓋1で浴槽5の上縁開口部5bを覆う場合は、蓋体1bの下部を手で持って反矢印イ方向に引っ張ることで、折り曲げ部2を開きつつ2枚の蓋体1a、1bを平板状態として浴槽5上に載置する。なお、蓋体1bの端部に図1及び図3の二点鎖線で示すように把手11を取り付け、この把手11を持って蓋体1bを押したり引っ張ったりできるように構成して、蓋1の開閉動作をし易くすることもできる。つまり、前記蓋1の場合、折り畳み可能な2枚の蓋体1a、1bの一方を他方側に押したり引っ張ったりすることで、2枚の蓋体1a、1bがスライド動作と折り畳み動作を行い、浴槽5の上縁開口部5bが開放されたり蓋1で覆われることになる。
【0015】
なお、図5に示すように、蓋1が立設される浴槽5の一端側の浴室壁面12にフック13(係止手段)を回動可能に取り付け、蓋1を立設状態とした際にフック13で2枚の蓋体1a、1bの連結部である折り曲げ部2部分を係止させるようにしても良い。このように構成すれば、立設状態の2枚の蓋体1a、1bを浴槽5の上縁フランジ5a上に安定支持できる。なお、係止手段はフックに限らず、ローラ4に設けられたロック機構等を使用することもできる。
【0016】
また、上記例では、スライド手段として回転自在なローラ4と溝7や突条8等のガイドを使用したが、例えばローラ4の代わりに、図6(a)(b)に示す摩擦係数が小さく滑りやすい易摺動部材14や突条部材15を使用して、浴槽5の平坦な上縁フランジ5a上をそのままスライドさせる構成とすることもできる。
【0017】
このように、上記実施形態の浴槽5にあっては、折り畳み可能に構成された蓋体1a、1bのうち、蓋体1aの端部を浴槽5の背足方向の一端側に取り付け、蓋体1bにローラ4を配設しているため、蓋1bを蓋体1a方向に押したり引っ張ったりすることで、各蓋体1a、1bを折り畳みつつスライドさせて浴槽5の上縁開口部5aを開閉でき、蓋1を従来のように持ち上げることなく浴槽5上で移動させることができる。このため、蓋1の開放動作や覆う動作を容易に行うことができ、浴槽5の使い勝手を向上させることが可能となる。
【0018】
特に、スライド手段として回転自在なローラ4と浴槽5の上縁フランジ5aに設けた溝7や突条8等のガイドを使用しているため、蓋1のスライド動作に大きな力を必要とすることなくスムーズに行うことができる。このため、高齢者や子供であっても蓋1の開閉動作を簡単に行うことができ、使い勝手により優れた蓋付きの浴槽5を得ることが可能となる。
【0019】
また、折り畳んだ状態の蓋体1a、1bをフック13で浴槽5の上縁フランジ5aに保持する構成を採用することで、入浴時に折り畳んだ蓋体1a、1bを安定した状態で保持することができる。さらに、スライド手段として、易摺動部材14や突条部材15を採用することで、スライド手段の蓋1への取り付けを例えば両面テープや接着剤等で行うことができて、その作業が簡略化されて安価な蓋1を得ることができる。また、浴槽5の上縁フランジ5aに溝7や突条8を設けない構造を採用することで、浴槽5の構成が簡略化されて安価な蓋1付き浴槽5が得られると共に、既存の浴槽への適用を容易に行うことが可能となる。
【0020】
図7及び図8は、本発明に係る蓋付き浴槽の他の実施形態を示す、蓋の斜視図及びその配置状態の概略縦断面図である。以下、上記実施形態と同一部位には同一符号を付して説明する。この実施形態の特徴は、蓋17を、図では6枚の複数の蓋体17a〜17fを折り曲げ部18で連結した蛇腹状とし、蓋17の一端側の蓋体17aの端部側面に設けた取付孔3を浴槽5の上縁フランジ5aに設けた取付板6にピン9で回動自在に取り付けると共に、蓋17の他端側の蓋体17fの端部における裏面の両隅部にそれぞれローラ4を回転自在に配設した点にある。
【0021】
この実施形態の蓋17においても、蓋体17fの端部を蓋体17a方向に矢印イの如く押すことで、図8の二点鎖線で示すように、各蓋体17a〜17fが折り畳まれて、浴槽5の上縁開口部5bが開放され、上記実施形態の蓋1と同様の作用効果を得ることができる。また、蓋体の枚数は、浴槽4の大きさや形状等に応じて適宜に変更することができる。
【0022】
なお、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、例えば図7及び図8に示す実施形態に、図5や図6の構成を採用する等、各実施形態を適宜に組み合わせることができる。また、上記実施形態における、蓋の形状や浴槽の形状、蓋の端部の取付手段の構成等も一例であって、例えば取付手段として、着脱可能なフックを使用し蓋全体を取り外し可能に構成して、蓋や浴槽の清掃を容易にする等、本発明に係る各発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、システムバスルーム等の浴室に設置される浴槽に限らず、例えば在来工法の浴室に設置される浴槽や各種施設の浴室に設置される浴槽にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る蓋付き浴槽の蓋の一実施形態を示す斜視図
【図2】同その一端側裏面を示す斜視図
【図3】同蓋の配置状態の縦断面図
【図4】同浴槽の平面図
【図5】同蓋の保持状態の縦断面図
【図6】同スライド部材の変形例を示す斜視図
【図7】本発明に係る蓋付き浴槽の蓋の他の実施形態を示す斜視図
【図8】同その蓋の配置状態の概略縦断面図
【符号の説明】
【0025】
1・・・蓋、1a、1b・・・蓋体、2・・・折り曲げ部、3・・・取付孔、4・・・ローラ、5・・・浴槽、5a・・・上縁フランジ、5b・・・上縁開口部、6・・・取付板、7・・・溝、8・・・突条、9・・・ピン、10・・・ローラケース、11・・・把手、12・・・浴室壁面、13・・・フック、14・・・易摺動部材、15・・・突条部材、17・・・蓋、17a〜17f・・・蓋体、18・・・折り曲げ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽本体上に蓋が載置可能に配置される蓋付き浴槽であって、前記蓋が折り畳み可能に構成されると共に、蓋の一端側を前記浴槽本体の背足方向の一端側に取り付ける取付手段と、蓋の他端側を一端側方向に押すことで該蓋を折り畳みつつスライドさせるスライド手段と、を備えることを特徴とする蓋付き浴槽。
【請求項2】
前記折り畳んだ蓋を浴槽本体上に立設保持する保持手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の蓋付き浴槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−228977(P2008−228977A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72574(P2007−72574)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)
【Fターム(参考)】