説明

蓮根収穫機及び収穫方法

【課題】不透水性の底部と同じく不透水性の枠体を有する槽内に耕土を適宜厚に収容するとともに耕土上に水を張って栽培した蓮根を、水噴射で掘り上げたのち、簡単な構造と操作で掬い上げる蓮根収穫機及び収穫方法を提供する。
【解決手段】不透水性の底部と同じく不透水性の枠体を有する槽内に耕土を適宜厚に収容するとともに耕土上に水を張って栽培した蓮根を収穫する装置であって、先端部から中央部前後にかけて蓮根や葉柄、茎を掬い上げる掬い部材を後方を高くした状態で多数連設するとともに、掬い部材を含む装置全体を前進させる車輪或いはクローラと、該車輪或いはクローラの上方には該車輪或いはクローラ及びベルトを駆動する駆動源と車輪或いはクローラを操舵するハンドルを備え、且つ、掬い部材の間には蓮根や根、茎を引っかけて後方へ引き上げるレバーを回転駆動するチェン或いはベルトを複数組設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不透水性の底部と同じく不透水性の枠体を有する槽内に耕土を8〜15cm程度厚に収容するとともに、耕土上に5〜20cm程度の水を張って栽培(浅田方式、プール方式、容器型栽培床)した蓮根を、水噴射で掘り上げたのち、簡単な構造と操作で掬い上げる蓮根収穫機及び収穫方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレンコン栽培は、沼地や低湿田など泥土が50cm〜1mもある箇所で行われている。これは、レンコンが深く潜る性質があり、深く潜らない粘質土壌水田では低品質のものしか得られず、深い泥田で栽培したものに高品質のものが多いと言われていることによる。
【0003】
従って、このような深い泥田での収穫作業は大変であり、古くは人間が腰まで泥田につかって手で掘り出していた。その上、収穫時期は冬季に行われるため寒いし冷たくて大変な作業であり、また作業者の高齢化もあって次第に廃止する農家が増えてきている。その分、中国からの輸入が増えてきている。
【0004】
ところが、ここ数年、農薬問題で中国からの輸入が途絶えており、国内でなんとか生産が続けられているのが現状である。何故従来方法では農薬が必要であるかは後述する。
【0005】
このような観点から、最近では機械掘りが次第に行われるようになってきた。機械掘りには、幾つかの方法がある。例えば、クローラ形式の走行装置を有する自走車体の前部にバケット部を設け、このバケット部を湾曲した掘取爪で構成して湿田の上土を除去しその下に露出した蓮根を人手で掘り上げるもの(特許文献1、2)、同じくクローラ形式の走行装置を有する自走車体の前部に昇降可能なリフトアームを取り付け、このリフトアーム下端に掘取爪を取り付けて蓮根を掴み取りするもの(特許文献3)、ノズルから水を噴射して上土を除去して人手で蓮根を掘り上げるもの(特許文献4)、超音波で土壌を液状化して蓮根を掘りだすもの(特許文献5)、四輪駆動車のアーム先端にバケットを取り付け、このバケットの鋤部先端の空気噴射孔から泥中に空気を噴射して蓮根を浮き上がらせ、バケットで収穫するもの(特許文献6、7)などがある。或いは、非常に強力なエアポンプで泥とレンコンを吹き上げ、水に浮いてきたレンコンを人手で回収する方法もある。この場合、多量のエネルギーを消耗するし操作が大変であり、しかも強力なため礫でレンコンを傷めることも多い。
【0006】
これらは、何れも深田で栽培した蓮根を収穫する装置であり、いずれもクローラや大型車輪を備えた大がかりなもので、価格も非常に高価である。従って、未だに深田に腰まで漬かって両手で掘り出す旧来の方法があちこちで行われている。
【0007】
そこで本発明者は、このように栽培も収穫も大変である深田の代わりに、浅い設備で従来と変わらない収量が得られるるとともに作業が大きく省力化される新しい栽培床を開発した(特開2007−202572号)。この栽培床は、整地した地盤の周りを板枠で囲い、その内部をプラスチックフイルムで覆って8〜15cm程度の耕土を入れ、その上に3〜10cm程度水を張ってレンコンを栽培するものである。尚、水は20cm程度まで張ることができるが、これは収穫の時であり、通常の栽培は最大で10cm程度まで水を張る。
【0008】
この栽培床は、レンコン栽培にとって常識外れな浅いものであるが、レンコンは伸び伸び成長し、極めて高品質のものが高収率で栽培できた。その理由の一つとして、水層や耕土層が浅いため春先からの地温や水温の上昇が大きく、レンコンの芽や葉の成長が早いためレンコンの生育が良好になったものと考えられる。また酸素の供給が多いことも理由の一つと思われる。
【0009】
ただ、この栽培床は、排水できない上、耕土が浅いため余剰の塩分や肥料の逃げ場がなく数年経つと蓮根に黒い斑点ができるなどの問題が出てきた。そこで、栽培床の底に傾斜を付けて排水できるようにすることも行うようになった。
【0010】
そして、収穫は、手掘りで行ってきた。これは、土壌と水の合わせても精々20cm程度で蓮根の太さが5〜10cmのため手掴みが容易であり、また、茎や葉柄の取りだしも手で比較的容易に行えることによる。また、収穫前に、高圧水噴射や水中ポンプ駆動で泥水を攪拌して蓮根を浮き上がらせると人手での回収がより容易になる。この栽培床を使用した蓮根の栽培方法は、従来の深田での栽培に比べれば遙かに省力化できるが、収穫は人力によるので、幾分手間がかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平03−079495号公報
【特許文献2】特公平03−079496号公報
【特許文献3】特開2003−33921号公報
【特許文献4】特公平01−038444号公報
【特許文献5】特許第3861265号公報
【特許文献6】特開平11−103633号公報
【特許文献7】特許第2873228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この収穫を機械化することを目的として開発したのが、本発明装置であり方法である。以下、詳細に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、不透水性の底部と同じく不透水性の枠体を有する槽内に厚みが8〜15cm程度の耕土を収容するとともに耕土上に水を張った栽培床で栽培した蓮根を効率良く収穫するとともに、茎や葉柄を確実に回収できる蓮根収穫機を提供するものである。
【0014】
本発明の蓮根収穫機は、先端部から中央部前後にかけて蓮根や茎、葉柄を掬い上げる掬い部材を後方を高くした状態で設けるとともに、掬い部材間には蓮根や茎、葉柄を引っかけて後方へ引き上げるレバーを回転駆動するベルト或いはチェンを複数組設けたものである。尚、特許文献6に記載されている蓮根収穫用のバケットは、圧搾空気を噴射する噴射ノズル及び簀の子状の格子部を持っているバケットで蓮根を収穫することが記載されている。しかし、この発明は、バケット先端部の空気噴射孔から泥中に空気を噴射して蓮根を浮き上がらせるものであり、本発明のように掬い部材で掬い上げてレバーの回転で持ち上げてるものではない。また、本発明では掬い部材上に蓮根や葉柄、茎を引き上げて収穫するものであるが、特許文献6ではフロートや車輪で駆動されアームを有している大がかりな装置であり、またバケットはこのブーム先端にとりつけられて前方へ蓮根を掘り上げるようにするものであり、構造は全く異なるものである。
【0015】
次に、本発明の蓮根収穫装置を使用することができる栽培床について説明する。この栽培床は、不透水性の底部と同じく不透水性の枠体を有する槽内に厚みが8〜15cm程度、より好ましくは10〜15cm程度の耕土を収容するとともに耕土上に水(深さ3〜20cm)を張ることができる構造のもので、底部は排水し易いように緩やかな傾斜を設けてもよい。尚、水の深さは栽培時には10cm程度までであり、収穫時に高圧水噴射や水中ポンプ駆動で蓮根を攪拌浮上できるように、20cm程度までにする。また、葉柄は、通常収穫時に刈り取るようにするが、短い部分がどうしても残る。この残った葉柄も茎や蓮根とともにレバーの回転で持ち上げて回収する。
【0016】
栽培床の幅(内法幅)は20m程度以下にする。狭い場所では、8〜9.6m程度以下でもよい。8〜9.6m程度の場合、槽をシートやフイルムで不透水性化する場合に市販のハウス用フイルム(有効幅8.4〜10m)がそのまま使用できて経済的であるうえ、収穫物の栽培床外への搬出が楽に行えることによる。20mを越える幅のフイルムも存在する。必要な枠体の内法高さは、耕土や湛水層の厚みにより20〜70cm程度であり、枠体内側も上記フイルムで覆うとすると、栽培床の幅(内法幅)は7.5〜9m程度となる。更に、幅を二分するように長さ方向に歩行橋を設けると、手を伸ばして除草やスポット消毒、除虫作業ができるので、レンコンの栽培中栽培床床へ入らずにすむ利点もあることによる。二分した場合、幅はそれぞれ4〜5m前後である。栽培床の長さは100m以上でも可能であるが、内法長さが20m程度のものであれば中間山地でも設置可能であり、長手方向の中程を高くすれば水抜きも容易で設備費もハウス用ビニールにモルタル床張の場合数十万円程度で手頃である。この場合、栽培面積は7.5×20=150m2 =1.5aとなる。尚、発泡スチロールにモルタル床張りで枠も発泡スチロール製とし、軽量土壌を用いれば、屋上緑化などに最適なものが得られる。
【0017】
底部として、枠体で囲んだ地面上に敷設した底用発泡スチロール板の上面に、シート或いはフイルムを介してモルタル層を設けたものが好ましい。これは比較的低コストであるとともに、発泡スチロール板が断熱層の働きをし、耕土の保温昇温に役立つことによる。また、モルタル層のために礫を踏みつけてもフイルムやシートを傷めず、また本発明の収穫機の作業が可能になる利点がある。モルタル層の厚みは2〜3cm程度でよい。
【0018】
以上に述べたような栽培床で栽培した蓮根を収穫するに際しては、蓮根を耕土ととも浮上した蓮根を掬い取る方式をとる。即ち、先端部から中央部前後にかけて蓮根や茎、葉柄を掬い上げる掬い部材を後方を高くした状態で設けるとともに、掬い部材の間には蓮根や茎、葉柄を引っかけて後方へ引き上げるレバーを回転駆動するチェン或いはベルト(以下、ベルトと言う)を複数組設けて、車輪或いはクローラ(以下、車輪と言う)の進行に伴って掬い部材上に蓮根や茎、葉柄を掬い上げる。耕土の厚みは8〜15cm程度であり、車輪或いはクローラ(以下、車輪とする)を駆動源で駆動すれば、蓮根や茎、葉柄を十分に持ち上げることができる。尚、耕土の持ち上げに先立って、水を深く(15〜20cm程度)して高圧水噴射や水中ポンプ駆動で泥水を攪拌して蓮根等を浮上させておくと、蓮根等の掬い上げがより容易に行われる。
【0019】
掬い部材の幅は2〜4mとする。これは、本発明装置を使用する栽培床の内法幅が、8m前後(中間の橋を設けた場合はそれぞれ4m前後)あるので、2〜4m程度であれば、無駄無く掬い上げができることによる。
【0020】
尚、蓮根の茎は栽培床の幅方向にも縦横に走っているので、掬い部材で掬う場合、茎の全体が掬われて茎や蓮根の持ち上げが困難になる。そこで、予め、掬い部材の幅程度に茎を(栽培床の全長さ方向に渡って)手で裁断しておくことが望ましい。掬うのは、上記4mとすると、4mの中央部の3m程度のみとし、両側の蓮根はそのまま収穫せずにおいておき、次年度の種蓮根とするようにしてもよい。
【0021】
尚、掬い部材の幅を1.4mとし、その両側に幅75cm程度の補助の掬い部材を取り付けるようにすると、掬い部材全端の幅が約3mとなり、本発明装置を軽トラックの荷台に後ろから乗せることができて移動に便利である。
【0022】
種蓮根を残さずに、全部の蓮根を収穫する場合、掬い部材の幅を1.4mとし、その両側に幅125cm程度の補助の掬い部材を取り付けるようにすると、掬い部材全端の幅が約4mとなり、上記4m幅の栽培床の半分の全体を一度に収穫することでできる。その場合も、栽培床の幅は8mであるので、中央部の茎は切っておく必要がある。尚、本発明装置を軽トラックに乗せずに移動させるような場合には、掬い部材の幅を4mとするとか、掬い部材の幅を2mにしてその両側に幅1m程度の補助の掬い部材を取利付けるようにしてもにい。
【0023】
掬い部材の長さは1〜2m程度である。掬い部材は、図2に示すように栽培床の底面に対してθ(約10〜15度の角度)で取り付けられており、車輪或いはクローラの進行に伴って、蓮根や茎等が掬い部材の上に押し上げられることになる。尚、掬い部材の先端に小さい補助車輪を付けておくと、移動時の抵抗が少なくなる。
【0024】
尚、掬い部材が多数連設したバーである場合、バーの形状は、円柱状や棒状、板状であり、その径や幅は約1〜2cmで、5〜20cm間隔で並んでいる。この隙間が大きいと蓮根が縦に揚がって来たときに間隙から落ちるおそれがあるので、間隙はできたら5cm前後以下が望ましい。バーの先端部には、各バーを連結するための棒あるいはプレートを設けるとバーが安定する。掬い部材は、ネットや板状体で構成されてもよい。この場合、ネットや板状体は補強のため枠体に取り付けられる。この板状体は、多孔の金属板からなることが水切りや軽量化の点から好ましい。
【0025】
蓮根や茎、葉柄を引っかけて後方へ引き上げるレバーを回転駆動するチェンやベルトは、ネットや板状体に設けたスリットの部分或いはバーの間に組み込むようにする。このようにすると、蓮根や茎等がこのレバーの後方(上方)への回転に従って後方(上方)に引きずり上げられ、掬い部材の上部に溜まりやすくなる。尚、車輪の上方には、車輪及びベルトを駆動する駆動源と車輪を操舵するハンドルを備えている。また、ハンドルの後方には、運転者が座る座席を設けてもよい。
【0026】
また、掬い部材は、全体が基部を中心として前方を上方に回動できるようにすると、軽トラックに乗せる場合に、場所を取らず便利である。
【0027】
次に、この蓮根収穫機を使用する方法について、説明する。この収穫機は、車輪を駆動すると掬い部材が耕土とともに蓮根や茎、葉柄を掬い上げる。掬い上げに際して、水中ポンプで泥水を攪拌しておけば、蓮根等の掬い上げがより容易に行われる。更に、車輪を駆動してバーを進めると、蓮根や茎、葉柄が掬い部材上に持ち上げられ、後方に移動する。
【0028】
ここで、蓮根を茎などと切り離して収穫するが、この際に、ホースなどで水を噴射して蓮根や茎、葉柄と土を分離すると、蓮根の予備洗浄と茎や葉柄の洗い出しが行われる。このようにすれば、部分的な収穫も簡単で少量ずつ時間差を設けた計画収穫が可能となる。更に、茎や葉柄がほぼ完全に除去できるので、次作での病気の発生が有効に防がれる効果もある。通常、レンコン10Kgに対し葉柄や茎は20Kg前後以上できると言われている。従来は、茎や葉柄を田から取り出すことは困難で、殆ど放置されている。そのため、これが腐敗病などの病気の原因となり、それを防ぐために大量の農薬(劇薬)による水田の消毒が必要となる。従って、従来の深田栽培では、レンコンの有機栽培や無農薬栽培は原則不可能であった。これに対し本発明では、茎や葉柄は耕土中からほぼ完全に除去できるので土壌消毒の必要がなく、無農薬栽培が可能になる。
【0029】
尚、取り出した葉や葉柄、茎は裁断すれば非常に優れた堆肥にすることができるので、本発明の蓮根収穫機で回収された蓮根は勿論、葉、葉柄や茎も含めて生産物は100%利用することができるものである。
【0030】
レンコン種の植え付けに先立って石灰散布による中和が行われることがあるが、従来は2月頃に耕運機で混ぜるなど大変な作業である。本発明の場合、収穫時(小型の水中ポンプ使用)に石灰をまけば、簡単に耕土と混ざる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明は不透水性の底部と同じく不透水性の枠体を有する槽内に耕土を適宜厚に収容するとともに耕土上に水を張って栽培した蓮根を収穫する装置であって、先端部から中央部前後にかけて蓮根や葉柄、茎を掬い上げる掬い部材を後方を高くした状態で設けるとともに、掬い部材間には蓮根や葉柄、茎を引っかけて後方へ引き上げるレバーを回転駆動するベルトを複数組設けるとともに、装置全体を前進させる車輪を設けたものである。そして、車輪の上方には車輪及びベルトを駆動する駆動源と車輪を操舵するハンドルを備えたものである。
【0032】
従って、以下に述べる効果がある。
(1)栽培床の幅が決まっており(8m前後、橋で区分されたもので4m前後、場合によっては20m、橋で区分されたもので10m前後)、耕土の深さも8〜15cm程度であるので、車輪を駆動することにより傾斜した掬い部材で蓮根や葉柄や茎を掬いあげて後方に持ち上げることが簡単にでき、蓮根の収穫と葉柄や茎の除去が容易に行われる。
(2)並べたバーの間やネットや板状体のスリットにレバーを回転駆動するベルトを設けたから、蓮根や茎、葉柄を引っかけて後方へ自動的に引き上げるので、蓮根の回収や葉柄、茎の除去がより簡単確実に行える。
(3)従って、病気の原因となる耕土中の茎や葉柄が簡単確実に除去できるため、土壌消毒のための農薬散布の必要がなく、完全な無農薬栽培が可能となる。
(4)掬い部材上にある蓮根や茎、葉柄に水を噴射すれば、蓮根の予備洗浄と茎や葉柄と耕土の区分が簡単に行える。
(5)従来の、クローラや大型車輪で駆動する大型で高価な装置ではなく、小型の駆動源で駆動でき、主要部品も掬い部材とレバーを回転駆動するチェンやベルト、小型車輪及び駆動源のみで構成されるので、安価小型にでき、操作や手入れも簡便である。
(6)レンコンの少量ずつの収穫が可能であるので、新鮮なレンコンを適時に適量出荷できるなど、老人農業に最適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明蓮根収穫機の一例を示す平面図である。(実施例1)
【図2】本発明蓮根収穫機の一例を示す側面図である。(実施例1)
【図3】本発明蓮根収穫機を使用する栽培床の断面した側面図で蓮根が栽培中の状態を示す模式図である。(実施例1)
【図4】図1、図2に示す蓮根収穫機を駆動させている状態の側面図であり、(a)は蓮根収穫機の前方で水を噴射して耕土を攪拌して蓮根を浮上させる状態を示し、(b)は掬い部材上に引き上げた蓮根や茎に水を噴射して耕土を落とす状態を示す。(実施例1)
【図5】蓮根収穫時の蓮根収穫機の周囲を模式的に示す平面図である。(実施例1)
【図6】蓮根栽培床の蓮根を掬わない部分の茎を切断する状態の平面図である。(実施例1)
【図7】本発明蓮根収穫機の掬い部材部分を示す他の例の部分平面図である。(実施例2)
【図8】本発明蓮根収穫機の掬い部材と補助掬い部材部分のみを示す他の例の正面図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0034】
先端部から中央部前後にかけて蓮根や茎、葉柄を掬い上げるバーを後方を高くした状態で多数連設するとともに、バーの間には蓮根や茎、葉柄を引っかけて後方へ引き上げるレバーを回転駆動するベルトを複数組設ける一方、バーを含む装置全体を前進させる車輪、該車輪の上方に、該車輪及びベルトを駆動する駆動源と車輪を操舵するハンドルを備えた蓮根収穫機。
【実施例1】
【0035】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1、図2は本発明蓮根収穫機の一例を示すもので、図1は平面図、図2は側面図である。図3は本発明蓮根収穫機を使用する栽培床の断面した側面図で蓮根が栽培中の状態を示し、図4は図1、図2に示す蓮根収穫機を駆動させている状態の側面図である。また、図5は、蓮根収穫時の蓮根収穫機の周囲を示す平面図、図6は蓮根栽培床の蓮根を掬わない部分の茎を切断する状態の平面図である。図7は本発明蓮根収穫機の掬い部材部分を示す他の例の部分平面図であり、図8は本発明蓮根収穫機の掬い部材と補助掬い部材部分のみをを示す他の例の正面図である。
【0036】
図1及び図2は、本蓮根収穫機の一例を示すものである。この蓮根収穫機1は、幅広の枠体2の下部に2個のクローラ3、枠体2の上部に駆動源(エンジン)4とクローラを操舵するハンドル5を備え、且つ、枠体2の前方に、掬い部材Aとして、複数本(図では22本)のバー6を突出させ、各バー6の先端部はプレート7で連結するようにしてある。符号8はバー6の取付け枠である。掬い部材Aは3本のロッド9により回転軸10に取り付けられており、軽トラックなどで搬送する場合に、掬い部材Aの先端側が上方へ持ち上げられるようになっている(図2点線矢印)。
【0037】
掬い部材Aの使用時には、プレート7及びバー6が、水平に対して10〜15度の後ろ向きに上がり勾配になるように支持される。この際、プレート7先端の両側に設けた補助車輪11により、摩擦なくプレート7が移動できるようになっている。プレート7は、鉄板製で幅が約1.5m奥行きが20cm、バー6は直径1cmの鉄パイプで、5cm間隔で並んでいる。プレート7やバー6は、ステンレス製にすると錆びないため蓮根にきずがつきにくい。掬い部材Aの回動は、油圧シリンダー40により行う。図1中、符号41は油圧ポンプ、42はオイルタンク、43は油圧モーターの切り替えバルブである。図2、図5ではこれらは省略してある。
【0038】
次に、レバー12は、蓮根Rや茎K、葉柄Yを引っかけて後方へ引き上げるためのものである。このレバー12は、複数個(図では6個)がベルト(又はチェン)13に固着されてバー6を一部除いた箇所に組み込まれて(図では5組)、油圧モータ14により矢印方向に回転駆動される。そして、この駆動は、蓮根Rや茎K、葉柄Y(図3、図4)を引っかけて後方へ引き上げる働きをする。これにより、容易確実に蓮根Rや茎K、葉柄Yの引き上げが行われる。符号、15はベルト13を駆動するチェン、符号16は、ベルト13の回転軸である。
【0039】
蓮根収穫機1を操作するには、蓮根Rの収穫や茎K、葉柄Y(図3、図4)の除去と切断をするためにもう一人人手があるほうが能率が上がる。また、符号18は、エンジン4の方に水がかかるのを防止するための防水板である。
【0040】
図1中、符号A′は補助の掬い部材である。この掬い部材A′は、幅75cm程度で取付け枠8′に複数本(図1では13本)のバー6′とプレート7′を取り付けたものからなり、掬い部材Aの両側から差し込み具19、19′で固定する。掬い部材Aに左右の補助掬い部材A′を固定した場合、補助掬い部材A′の両端側に、三角形状の立ち上がり部材20を設けておくと、蓮根Rや茎Kを引き上げた場合、落ちこぼれを防止できる。この補助掬い部材A′は、本体の掬い部材Aの両側に取り付けて使用するものであるが、取り付けを強固にするために、横方向のバー取付け枠8に棒状の補強部材を取り付けてもよい。
【0041】
図3は、本発明の対象となる栽培床100で蓮根Rを栽培している状態を模式的に示したものである。この栽培床100は、発泡スチロール101の上にモルタル102を敷いた底部103と発泡スチロール製の側壁104をシート105で覆った枠体106からなる槽107内に、8〜15cmの厚みの耕土Tを収容しその上に5cmの水Wの槽を設けたものである。符号Kは茎、符号Hは蓮の葉:符号Yは葉柄である。底部103は、排水し易いように、中高になっている。これが、概ね8月〜9月の状態である。
【0042】
図4は、図3に示す栽培床100の蓮根Rを収穫する状態を示す側面図である。即ち、図4(a)のように、栽培床100に本蓮根収穫機1を入れ、エンジン4を駆動してクローラ(車輪)を前方へ進める。すると、蓮根Rや茎K、葉柄Yは、耕土Tとともにプレート7、7′に掬われ、更に続けてレバー12の回転でバー6、6′上に持ち上げられて後方に送られる。バー6、6′の上部にきた蓮根Rや茎Kなどは、図4(b)のようにホース22で水21をかけると耕土と分離するので、蓮根Rを収穫する。同時に、茎Kや葉柄Yも人手で除去される。
【0043】
以上は、耕土Tが柔らかい場合の状態であるが、実際には耕土Tは結構固く、プレート7、7′で掬うことはほぼ困難である。そこで、図4(a)に示すように、蓮根の収穫に先立って、水を深く(20cm程度)して、掬い部材A、補助掬い部材A′の前方に水21をホース22から加圧噴射して(或いは水中ポンプ(図示略)耕土Tを攪拌すると、蓮根Rや茎Kが浮き上がる。この状態でエンジン4を駆動してクローラ(車輪)を前方へ進めると、プレート7、7′やバー6、6′による蓮根Rや茎Kの掬い上げやレバー12の回転で後方への移動持ち上げが容易に行われる。水中ポンプや水噴射による攪拌は、蓮根収穫機1の進行に合わせて、その前方の1〜3m程度でよい。そして、図4(b)に示すように、バー6、6′の上部にきた蓮根Rや茎Kなどは、ホース22で水21をかけると耕土と分離するので、蓮根Rを収穫する。同時に、茎Kや葉柄Yも人手で除去される。
【0044】
図5は、蓮根収穫時の蓮根収穫機1の周囲の状態を示す平面図である。即ち、蓮根Rは、製品用の舟状容器23に収納し、茎Kや葉柄Yは茎や葉柄用の舟状容器24に収納する。これらの容器23、24は紐23a、24aで蓮根収穫機1に連結しておき、蓮根収穫機1とともに栽培床100の中を移動する。図中、符号25は鎌である。
【0045】
尚、栽培床100自体の幅がほぼ8mの場合、その中央部に歩行橋(幅約20cm)108を設けると、片側の栽培床100の幅は3m90cm程度になる。一方、蓮根Rや茎Kは縦横に張りめぐらされているので、この蓮根Rや茎Kを掬い部材で掬い上げようとしても、上げられるものではない。そこで、図6に示すように、半分の栽培床100の両側にある茎Kを太点線26で示すように、前述の鎌25で裁断しておく。上記例では掬い部材Aと両側の補助掬い部材Bの寸法は計3m、片側の栽培床100の幅は3m90cmであるので、両側に45cmずつ残して、その中央部を掬い上げることになる。
【0046】
この残った部分の蓮根R′(図6中、斜線で示す)は、翌年用の種蓮根として栽培床100に残しておく。太点線26上にある蓮根Rは、内側或いは外側に手や足で移動させる。もし、種蓮根が不要な場合、片側の栽培床100の幅一杯(約3m90cm)の寸法の掬い部材A、補助掬い部材Bを用いればよい。この場合も、歩行橋108の側の茎Kは裁断しておく必要がある。
【実施例2】
【0047】
次に、図7は、掬い部材Aの他の例を示す平面図である。図6に示す掬い部材Bは、多孔の板状体30を枠体31に取り付けたもので、複数のスリット32部分(図では4箇所)にレバー12を回転支持するベルト13を張設している。符号16は回転軸、33は補助枠体である。この掬い部材Bも、その両側に、補助掬い部材B′を取り付ける。寸法は、掬い部材Aや補助掬い部材A′と同じである。この多孔の板状体30の代わりに、ネットを用いることもできる。
【実施例3】
【0048】
図8は、掬い部材Aと補助掬い部材A′の固定の仕方の他の例を示す。この掬い部材Aと両側の補助掬い部材A′、A′は、蝶番27で連結されており、車での移動時などには、補助掬い部材A′を折り畳んでおくものである。尚、軽トラックによる移動のことを考えなければ、補助掬い部材A′をやめて、掬い部材Aの幅を3m〜4m程度にすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の蓮根収穫機は、構造が簡単で安価に得られるとともに、操作が簡単で容易確実に容器型の栽培床で蓮根の収穫をすることができる。更に、耕土中に残しておくと病原菌の発生の原因になる茎や根の除去も簡単確実に行えるもので、蓮根栽培において非常に役立つものである。
【符号の説明】
【0050】
1 蓮根収穫機
2 枠体
3 クローラ
4 駆動源
6 バー
6′ バー
7 プレート
7′ プレート
8 バーの取付け枠
8′ バーの取付け枠
9 ロッド
10 回転軸
11 補助車輪
12 レバー
13 ベルト(又はチェン)
14 油圧モータ
16 回転軸
19 差し込み具
19′ 差し込み具
21 水
22 ホース
26 太点線
27 蝶番
30 多孔の板状体
40 油圧シリンダー
100 栽培床
104 側壁
108 歩行橋
A 掬い部材
A′ 補助掬い部材
B 掬い部材
B′ 補助掬い部材
T 耕土
W 水
R 蓮根
K 茎
Y 葉柄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透水性の底部と同じく不透水性の枠体を有する槽内に耕土を適宜厚に収容するとともに耕土上に水を張って栽培した蓮根を収穫する装置であって、先端部から中央部前後にかけて蓮根や根、茎を掬い上げる掬い部材を後方を高くした状態で設けるとともに、掬い部材間には蓮根や葉柄、茎を引っかけて後方へ引き上げるレバーを回転駆動するベルトやチェンを複数組設ける一方、掬い部材を含む装置全体を前進させる車輪或いはクローラと、該車輪或いはクローラの上方には該車輪或いはクローラ及びベルトを駆動する駆動源と車輪或いはクローラを操舵するハンドルを備えたことを特徴とする蓮根収穫機。
【請求項2】
耕土の厚みを8〜15cm程度とし、該耕土の上に少なくとも3〜20cm程度の水を張った栽培床で栽培した蓮根を収穫するための請求項1記載の蓮根収穫機。
【請求項3】
掬い部材は、枠体に取り付けたネット、枠体に取り付けた板状体或いは多数連設したバーであり、ベルトはネットや板状体に設けたスリットの部分或いはバーの間に組み込むものである、請求項1記載の蓮根収穫機。
【請求項4】
掬い部材の前部下部に、補助車輪を設けたものである、請求項1記載の蓮根収穫機。
【請求項5】
バーの先端部には、各バーを連結するための棒あるいはプレートを設けたものである、請求項3記載の蓮根収穫機。
【請求項6】
板状体は、多孔の金属板からなるものである、請求項3記載の蓮根収穫機。
【請求項7】
掬い部材の幅は2〜4mであり、バーは5〜20cm間隔で並べたものである、請求項1又は請求項3記載の蓮根収穫機。
【請求項8】
掬い部材は、軽トラックの荷台に後方から乗せることができる程度の幅とし、その両側に補助の掬い部材を連結できるように、或いは蝶番で折り畳み可能に連結するとともに、掬い部材全体が基部を中心として前方を上方に回動できるようにしたものである、請求項1乃至請求項7記載の蓮根収穫機。
【請求項9】
不透水性の底部と同じく不透水性の枠体を有する槽内に耕土を適宜厚に収容するとともに耕土上に水を張って栽培した蓮根を収穫するものであって、先端部から中央部前後にかけて後方を高くした状態の掬い部材を設けた装置を駆動して、蓮根や茎、葉柄を掬い部材上に持ち上げて蓮根を収穫することを特徴とする蓮根の収穫方法。
【請求項10】
蓮根の収穫に先立って、水を深くして圧力水或いは水中ポンプで耕土を攪拌して蓮根や茎、葉柄を浮上させるものである、請求項9記載の蓮根の収穫方法。
【請求項11】
掬い部材上に持ち上げたのち、蓮根や茎、葉柄に水を噴射して蓮根や茎、葉柄と土を分離し、蓮根を収穫するとともに茎や葉柄を除去するものである、請求項9又は請求項10記載の蓮根の収穫方法。
【請求項12】
収穫装置の掬い部材で掬う片側或いは両側の蓮根の茎を予め裁断しておき、中央部の蓮根の茎や蓮根のみを圧力水や水中ポンプで攪拌浮上させて掬い取り、残りの片側或いは両側の蓮根は種蓮根として残しておくものである、請求項9、請求項10又は請求項11記載の蓮根の収穫方法。
【請求項13】
収穫した蓮根や除去した茎、葉柄は、収穫装置で牽引される船状容器に載置するものである、請求項9記載の蓮根の収穫方法。
【請求項14】
除去した蓮根の葉柄や茎を裁断して堆肥にするものである、蓮根の収穫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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