説明

薄型テレビ用枠状板

【課題】臭素や塩素等のハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤あるいはフッ素化ポリオレフィンを使用することなく、透明性を維持しながら高い難燃性を有する薄型テレビ用枠状板を提供する。
【解決手段】分岐状ポリカーボネート樹脂を必須成分とし、樹脂組成物を成形してなる薄型テレビ用枠状板であって、前記樹脂組成物が、(1)分岐状ポリカーボネート樹脂(A)40〜100重量%および直鎖状ポリカーボネート樹脂(B)0〜60重量%からなる樹脂成分100重量部、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)0.005〜0.5重量部および有機金属塩(D)0.005〜0.2重量部からなり、かつ、(2)JISK7361に基づき、前記樹脂組成物を成形してなる厚さ3.0mmの試験片を用いて測定した曇り度(ヘーズ)が2%以下である枠状板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型テレビ用枠状板に関する。更に詳しくは、透明性、意匠性に優れ、塩素または臭素系難燃剤を使用せず難燃性をも付与した薄型テレビ用枠状板を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
大型画面の薄型テレビの普及にはめざましいものがある。この薄型テレビに使用される筐体としては、従来からスチレン系樹脂、ポリカーボネート/ABSアロイなどの難燃性樹脂が使用されてきた。
一方、薄型テレビの大型化に伴い、テレビ画面前面の周囲にガラス板等の枠状板を装着して高級感を演出することで顧客満足度や購買意欲を高める手法が講じられている。しかしながら、ガラス板は割れた場合の危険性や重量が重くなるといった問題があり、樹脂への代替が望まれていた。
【0003】
樹脂代替候補として、透明性、耐衝撃性、耐熱性、熱安定性等に優れたポリカーボネート樹脂が注目されている。ポリカーボネート樹脂は、自己消火性を備えた難燃性の高い樹脂材料ではあるが、テレビの用途においてはアンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価において、V−0等級であることが強く望まれている。
【0004】
ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与させる手法として、従来、難燃剤として塩素や臭素系化合物、あるいはリン系化合物を配合する方法が採用されている。しかし、塩素や臭素系難燃剤は、優れた難燃効果を示すものの、射出成形時に成形機スクリューや製品金型を腐食させる等の問題があった。また、リン系難燃剤は縮合リン酸エステル系難燃剤を中心に使用されているが、耐熱性あるいは衝撃強度の極端な低下が発生するという問題があった。これら著しい物性低下や環境面への配慮から、臭素や塩素等のハロゲン系化合物およびリン系化合物を含有しない難燃剤の使用が望まれている。
【0005】
上記難燃剤を使用せず難燃化する方法として、ポリカーボネート樹脂に芳香族スルホン酸金属塩を添加する方法(特許文献1)やパーフルオロアルカンスルホン酸カリウムを添加する方法(特許文献2)および分岐状ポリカーボネート樹脂に有機アルカリ金属塩を添加する方法(特許文献3)などの提案がされてきた。これらの手法を用いることにより、UL94試験に準拠した難燃性の評価において、燃焼時間の減少効果および燃焼時における樹脂の滴下(ドリッピング)抑制効果はある程度認められるものの、製品安全上の規格を満たすには十分ではなく、より一層優れた難燃性を有する材料の開発が求められている。
【0006】
一方、分岐状ポリカーボネート樹脂に重量平均分子量が400〜1500のポリオルガノシロキサンと有機スルホン酸金属塩をブレンドした樹脂組成物(特許文献4)が開示されている。しかしながら、当該分子量範囲のシロキサンを用いるとシロキサン自体の耐熱性が低下して難燃性の効果が低下し、さらに溶融粘度が低すぎて、成形加工時にポリカーボネート樹脂の成形体表面にシロキサン化合物がブリードアウトして成形体表面の外観を損ねるなど成形性を低下させる場合があるため、難燃性のみならず優れた成形性を有する材料の開発が望まれていた。
【0007】
さらに、燃焼時のドリッピングを抑制する方法として、ポリカーボネート樹脂にフッ素化ポリオレフィンを添加した樹脂組成物(特許文献5)が開示されている。このような組成物においては、燃焼時のドリッピングが抑制され難燃性は向上するものの、射出成形時にフッ素化ポリオレフィンが樹脂の流動方向に配向したり、フッ素化ポリオレフィンの凝集物が製品表面の外観不良を引き起こし、製品としての価値が著しく低下するという問題があり、従来からその改善が望まれてきた。また、フッ素化ポリオレフィンをポリカーボネート樹脂に添加すると、ポリカーボネート樹脂が本来有する優れた透明性を損なうという問題があり、特に透明性が求められる用途においては根本的な問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開昭50−98546号公報
【特許文献2】特公昭47−40445号公報
【特許文献3】特開平7−258532号公報
【特許文献4】特開2001−26704号公報
【特許文献5】特公昭60−38418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記難燃性、物性低下、外観不良、成形性等の問題を改善し、かつ臭素や塩素等のハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤あるいはフッ素化ポリオレフィンを使用することなく、透明性を維持しながら高い難燃性を有する薄型テレビ用枠状板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、かかる課題に鑑み鋭意研究を行った結果、ポリカーボネート樹脂として分岐状ポリカーボネート樹脂を必須成分として使用し、さらに特定のシリコーン化合物および有機金属塩を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物を成形することで、上記課題を解決した薄型テレビ用枠状板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、分岐状ポリカーボネート樹脂を必須成分として含有する樹脂組成物を成形してなる薄型テレビ用枠状板であって、前記樹脂組成物が、
(1)分岐状ポリカーボネート樹脂(A)40〜100重量%および直鎖状ポリカーボネート樹脂(B)0〜60重量%からなる樹脂成分100重量部、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)0.005〜0.5重量部および有機金属塩(D)0.005〜0.2重量部からなり、かつ
(2)JIS K7361に基づき、前記樹脂組成物を成形してなる厚さ3.0mmの試験片を用いて測定した曇り度(ヘーズ)が2%以下である、
ことを特徴とする薄型テレビ用枠状板を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の薄型テレビ用枠状板は、透明性を維持しつつ高い難燃性を備えており、薄型テレビの画面の周囲に装着することにより、より一層の高級感を演出させることができる。また、塩素、臭素等の難燃剤およびリン系難燃剤を使用しないことから環境面においても優れた特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明にて使用される分岐状ポリカーボネート樹脂(A)とは、ジヒドロキシジアリール化合物、分岐剤およびホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物、分岐剤およびジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、分岐剤およびホスゲンから製造された分岐状ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0014】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オク
タン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロ
キシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒド
ロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−
3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0015】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等を混合
して使用してもよい。
【0016】
分岐剤として使用される3価以上のフェノールとしては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ
−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−〔4,4−(4,4’−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0017】
これら分岐剤の含有量には特に制限はないが、成形加工性の面より、分岐状ポリカーボネート樹脂あたり0.01〜5.0重量%であることが好ましい。
【0018】
分岐状ポリカーボネート樹脂(A)の分子量には特に制限はないが、成形加工性の面より、メルトフローレイト(MFR)(300℃、1.2Kg荷重)が1.0〜20.0g/10分であることが好ましい。
【0019】
分岐状ポリカーボネート樹脂(A)は、従来公知の方法により製造することができる。たとえば、特開昭56−55328、特開昭58−23825、特開昭59−45318、特開昭59−133223、特開昭59−134742、特開昭62−10071、特開昭62−15223などに記載の方法が挙げられる。
【0020】
本発明にて使用される直鎖状ポリカーボネート樹脂(B)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造された直鎖状ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0021】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、前述の分岐状ポリカーボネート樹脂(A)に使用される種々の化合物が同様に使用できる。
【0022】
直鎖状ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量は、特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000〜100000、より好ましくは15000〜40000、さらに好ましくは17000〜28000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。また、直鎖状ポリカーボネート樹脂(B)の配合比率は分岐状ポリカーボネート樹脂(A)との配合において、0〜60重量%である。((A)+(B)=100重量%とする。)直鎖状ポリカーボネート樹脂(B)の配合比率が60重量%を超えると難燃性が低下するので好ましくない。
【0023】
本発明にて使用されるシリコーン化合物(C)は、主鎖が分岐構造でかつ有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなり、下記一般式(1)にて示される。
一般式(1)
【0024】
【化1】

【0025】
ここで、R1、R2およびR3は主鎖の有機官能基を、Xは末端の官能基を表わす。
すなわち、分岐単位としてT単位(RSiO1.5)および/またはQ単位(SiO2.0)を持つことを特徴とする。これらは全体のシロキサン単位(R3〜0SiO2〜0.5)の20モル%以上含有することが好ましい。(Rは有機官能基をあらわす。)また、シリコーン化合物(C)は、含有される有機官能基のうち芳香族基が20モル%以上であることが好ましい。
【0026】
この含有される芳香族基としては、フェニル、ビフェニル、ナフタレンまたはこれらの誘導体であるが、フェニル基が好適に使用できる。
【0027】
シリコーン化合物(C)中の有機官能基で、主鎖や分岐した側鎖に付いたもののうち芳香族基以外の有機基としては、炭素数4以下の炭化水素基が好ましく、メチル基が好適に使用できる。さらに、末端基はメチル基、フェニル基、水酸基の内から選ばれた1種またはこれらの2種から3種までの混合物であることが好ましい。
【0028】
シリコーン化合物(C)の平均分子量(重量平均)は、好ましくは3000〜500000であり、更に好ましくは5000〜270000である。3000未満であるとシリコーン自体の耐熱性が低下して十分な難燃性効果が得られず、さらに溶融粘度が低すぎて成形体表面にシリコーン化合物がブリードアウトして外観を損ねる場合があり、一方、500000を超えると溶融粘度が増加してポリカーボネート樹脂中の均一な分散ができず、難燃性および成形性が低下するため好ましくない。さらに好ましくは10000〜270000である。この範囲では溶融粘度が最適となるため、一層良好な難燃性と成形性を達成することができる。
【0029】
シリコーン化合物(C)の配合量は、分岐状ポリカーボネート樹脂(A)40〜100重量%および直鎖状ポリカーボネート樹脂(B)0〜60重量%からなる樹脂成分100重量部あたり、0.005〜0.5重量部である。配合量が0.005重量部未満では充分な難燃効果が得られず、0.5重量部を超える配合量では透明性に劣るため好ましくない。より好ましくは0.03〜0.3重量部の範囲である。
【0030】
本発明にて使用される有機金属塩(D)としては、芳香族スルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸イミドの金属塩等があげられる。金属の種類としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が挙げられる。好適には、4−メチル−N−(4−メチルフェニル)スルフォニル−ベンゼンスルフォンアミドのカリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3−3´−ジスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンジスルホン酸ナトリウム、パーフルオロプロパンジスルホンイミドカリウム塩、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドカリウム等が使用できる。とりわけ、パーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好適に使用できる。
【0031】
有機金属塩(D)の配合量は、分岐状ポリカーボネート樹脂(A)40〜100重量%および直鎖状ポリカーボネート樹脂(B)0〜60重量%からなる樹脂成分100重量部あたり、0.005〜0.2重量部である。0.005重量部未満では難燃性が低下するので好ましくない。また、0.2重量部を超える配合量では透明性に劣るため好ましくない。好ましくは0.02〜0.15重量部、より好ましくは0.04〜0.10重量部である。
【0032】
とりわけ、前記シリコーン化合物(C)の配合量が0.03〜0.3重量部、かつ有機金属塩(D)の配合量が0.04〜0.10重量部(それぞれ、分岐状ポリカーボネート樹脂(A)40〜100重量%および直鎖状ポリカーボネート樹脂(B)0〜60重量%からなる樹脂成分100重量部あたり)で使用することにより、透明性および難燃性の両者が顕著に向上することから、この範囲で(C)および(D)の両成分を使用することが特に好ましい。
【0033】
本発明の各種配合成分(A)、(B)、(C)、(D)の配合方法および溶融混練方法には特に制限はなく、任意の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等によりこれらを混合し、通常の単軸または二軸押出機等で溶融混練することができる。また、これら配合成分の配合順序や一括混合、分割混合を採用することについても特に制限はない。
【0034】
また、混合時、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば離型剤、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、リン系熱安定剤、紫外線吸収材、染顔料、展着剤(エポキシ化大豆油、流動パラフィン等)等を配合することができる。
【0035】
本発明の薄型テレビ用枠状板の成形方法としては、Tダイ押出成形法、カレンダー成形法等を用いることができる。また、必要に応じて枠状板表面にはハードコートや反射防止等の機能層を設けてもよい。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、部や%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
【0037】
使用した配合成分の詳細は、以下のとおりである。
分岐状ポリカーボネート樹脂:(以下、PC−1と略記)
ダウ・ケミカル社製 カリバー600−3(粘度平均分子量:24000)
直鎖状ポリカーボネート樹脂:(以下、PC−2と略記)
住友ダウ社製 カリバー200−3(粘度平均分子量:28000)
【0038】
シリコーン化合物:(以下、シリコーンと略記)
シリコーンは、一般的な製造方法に従って製造した。すなわち、適量のジオルガノジクロロシラン、モノオルガノトリクロロシランおよびテトラクロロシラン、あるいはそれらの部分加水分解縮合物を有機溶剤中に溶解し、水を添加して加水分解して、部分的に縮合したシリコーン化合物を形成し、さらにトリオルガノクロロシランを添加して反応させることによって重合を終了させ、その後、溶媒を蒸留等で分離した。上記方法で合成したシリコーンの構造特性は、以下のとおり:
・主鎖構造のD/T/Q単位の比率:40/60/0(モル比)
・全有機官能基中のフェニル基の比率(*):60モル%
・末端基:メチル基のみ
・重量平均分子量(**):15000
*:フェニル基は、T単位を含むシリコーン中ではT単位にまず含まれ、残った場合がD単位に含まれる。D単位にフェニル基が付く場合、1個付くものが優先し、さらにフェニル基が残余する場合に2個付く。末端基を除き、有機官能基は、フェニル基以外は全てメチル基である。
**:重量平均分子量は、有効数字2桁。
【0039】
有機金属塩:(以下、金属塩と略記)
パーフルオロブタンスルホン酸カリウム
【0040】
(透明性評価)
表2〜表4に示す配合成分および配合比率に基づき得られた各種樹脂組成物のペレットを125℃で4時間乾燥した後に、射出成形機(日本製鋼所製J−100SAII)を用いて設定温度320℃にて透明性評価用試験片(150x90x3.0mm)を作成した。JIS K7361に基づき、作成した試験片の3.0mm厚み部の曇り度(ヘーズ)を測定した。結果を表2〜表4に示す。
【0041】
(難燃性評価)
得られた各種樹脂組成物のペレットを125℃で4時間乾燥した後に、射出成形機(日本製鋼所製J−100SAII)を用いて設定温度280℃にて難燃性評価用試験片(125x13x1.6mm)を作成した。得られた試験片を用いて温度23℃、湿度50%の恒温室の中で72時間放置し、アンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価を行い、V−0またはV−1を合格とした。結果を表2〜表4に示す。なお、UL94の難燃性クラスは表1のとおり。
【0042】
【表1】

【0043】
残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の試験片が、有炎燃焼を続ける時間の長さであり、ドリップによる綿の着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
樹脂組成物が本発明の構成要件を満足する場合(実施例1〜9)にあっては、全ての評価項目にわたり良好な結果を示した。
【0048】
一方、樹脂組成物が本発明の構成要件を満足しない場合においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
比較例1は、分岐状ポリカーボネート樹脂の配合比率が本発明の定める範囲よりも少ない場合であり、難燃性に劣っていた。
比較例2は、シリコーン化合物の配合量が本発明の範囲よりも少ない場合であり、難燃性に劣っていた。
比較例3は、シリコーン化合物の配合量が本発明の範囲よりも多い場合であり、透明性に劣っていた。
比較例4は、有機金属塩の配合量が本発明の定める範囲よりも少ない場合であり、難燃性に劣っていた。
比較例5は、有機金属塩の配合量が本発明の定める範囲よりも多い場合であり、透明性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐状ポリカーボネート樹脂を必須成分として含有する樹脂組成物を成形してなる薄型テレビ用枠状板であって、前記樹脂組成物が、
(1)分岐状ポリカーボネート樹脂(A)40〜100重量%および直鎖状ポリカーボネート樹脂(B)0〜60重量%からなる樹脂成分100重量部、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)0.005〜0.5重量部および有機金属塩(D)0.005〜0.2重量部からなり、かつ
(2)JIS K7361に基づき、前記樹脂組成物を成形してなる厚さ3.0mmの試験片を用いて測定した曇り度(ヘーズ)が2%以下である
ことを特徴とする薄型テレビ用枠状板。
【請求項2】
有機金属塩(D)が、芳香族スルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩およびパーフルオロアルカンスルホン酸イミドから選択される1種もしくはそれ以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の薄型テレビ用枠状板。
【請求項3】
有機金属塩(D)が、パーフルオロブタンスルホン酸カリウムであることを特徴とする請求項1に記載の薄型テレビ用枠状板。
【請求項4】
主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)の配合量が0.03〜0.3重量部であり、かつ有機金属塩(D)の配合量が0.04〜0.1重量部(それぞれ、分岐状ポリカーボネート樹脂(A)40〜100重量%および直鎖状ポリカーボネート樹脂(B)0〜60重量%からなる樹脂成分100重量部あたり)であることを特徴とする請求項1に記載の薄型テレビ用枠状板。

【公開番号】特開2012−131841(P2012−131841A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282419(P2010−282419)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(396001175)住化スタイロンポリカーボネート株式会社 (215)
【Fターム(参考)】