説明

薄弱フィルムによる包装製品の包装不良検査方法及び装置

【課題】物品を薄弱フィルムにより密封した包装製品の包装不良を簡便かつ効率的に検出する。
【解決手段】包装製品の振動を抑止するガイドに沿って当該包装製品を搬送するコンベアと、前記搬送方向と平行な製品表面に対して垂直方向より、前記包装製品の表面に圧縮空気を噴射するエアーノズルと、前記エアーノズルから噴射された圧縮空気によって前記包装製品の表面から所定の高さ以上に膨らんだフィルムを検知するセンサと、を備える。当該検査装置は、前記センサの不良検知信号に基づいて該不良製品をコンベアから排出する排出部をさらに備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を薄弱フィルムで密封包装した製品の包装不良を検出する方法及び装置に関する。より詳細には、カップ状容器等のシュリンク包装の際に生じる穴あき等の包装不良を簡便に検知する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ麺やカップスープ等の包装形態の1つとして、熱収縮性合成フィルムによるシュリンク包装が知られている。カップ状容器の意匠性を損なわないようにするために、一般的には無色透明の薄弱フィルムが使用されている。また、その他の物品についても上記シュリンク包装と同様に、異物の混入や改ざんを防止するために薄弱フィルムによる包装が行なわれる場合がある。
【0003】
このシュリンク包装は、シート面に多数のピンホールを有する熱収縮フィルムによって包装前の物品を収容し、これらに熱を加えて熱収縮フィルムの特性に応じた収縮と、包装内部に取り込まれている空気がフィルムに形成されているピンホールから排出されることによって、フィルムを物品の表面に密着させるようになっている。
【0004】
ところが、このような包装工程において、熱収縮前のフィルムに収容する物品の位置にずれが生じたり、過熱により熱収縮時にフィルムが破れたりすることによって包装製品に穴あきが生ずる場合がある。従来は、これらの包装不良が無いかどうかを、加熱装置から搬出されてきた製品を目視で検査したり、画像センサで包装状態を撮影して画像処理により検査したりしていた。しかし、目視による検査では人手がかかるという問題があり、また、画像センサによる検査では透明フィルムの包装欠陥を発見しにくいという不都合があった。
【0005】
これを解決するための方法として、紫外線発光蛍光インクで検査用パターンが付されたシュリンクフィルムによって包装された物品に紫外線を照射し、紫外線の照射によって発光する検査用パターンを読み取ることによって、シュリンクフィルムによる物品の包装が正常になされているか否かを判定する方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
一方、ガムやキャンディー等のスティック製品の耳折部の包装不良を検知するために、該製品の耳折部のフラップが開く方向に圧縮エアーを噴射して、このエアーにより剥離されたフラップを光電センサで検出する方法が報告されている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2006−143231号公報
【特許文献2】特開平6−99951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、フィルムに特殊塗料をコーティングすること、さらに特殊照明を照射するシステムが必要であり、コストがかさむという問題がある。また、上記特許文献2の方法では、包装製品表面に生じたフィルムの穴あきを必ずしも検知できず、また、製品の搬送を一次停止させて検出しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであって、物品を薄弱フィルムにより密封した包装製品の包装不良を簡便かつ効率的に検出する方法及び装置を提供するものである。すなわち、本発明の包装不良の検出装置は、前記包装製品の振動を抑止するガイドに沿って当該包装製品を搬送するコンベアと、前記搬送方向と平行な製品表面に対して垂直方向より、前記包装製品の表面に圧縮空気を噴射するエアーノズルと、前記エアーノズルから噴射された圧縮空気によって前記包装製品の表面から所定の高さ以上に膨らんだフィルムを検知するセンサと、を備えることを特徴とする。当該検査装置は、前記センサの不良検知信号に基づいて該不良製品をコンベアから排出する排出部をさらに備えることにより包装不良品を排出することができる。
【0010】
本発明の検査装置の好ましい実施形態において、前記エアーノズルが先端を幅広に拡張して偏平の空気噴出口としたエアーノズルを含むことを特徴とする。
【0011】
他の実施形態において、前記センサが、前記コンベアの左右に配置されたエリア回帰型レーザセンサであって、当該センサの光の通路が前記エアーノズルから噴射される空気の幅方向の広がりと交差することが好ましい。
【0012】
前記薄弱フィルムは、厚さ15〜100μmのフィルムであり、熱収縮性であってもなくてもよい。さらに透明であっても色付きの薄弱フィルムであってもよい。
【0013】
本発明の検査装置の好ましい実施形態において、前記包装製品がカップ形状を有し、当該カップの天面及び底面の4つの端部を支えるガイドと共に当該カップ状容器の胴部をベルトコンベアにより挟んで搬送し、前記エアーノズルが当該カップ状容器の上部及び下部から空気を噴射することを特徴とする。前記薄弱フィルムがシュリンクフィルムであり、前記カップの天面及び底面に生じたフィルムの穴あきを検出することがさらに好ましい。
【0014】
本発明の検査装置のさらに異なる実施形態において、前記センサは、前記エアーノズルから噴射された圧縮空気によって、前記包装製品の表面から所定の高さ以上に膨らんだフィルムに接することで検知する接触センサ、及びフィルムのふくらみを検知する画像処理装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の検査装置は、薄弱フィルムにより密封された包装袋に開いた穴を簡便かつ確実に検査することができる。圧縮空気によって膨らんだフィルムを光電センサで検知することにより、穴の大きさ、形状、位置及び個数によらず、検査することが可能である。また、製品の搬送を一時停止させることなく、搬送中に穴あきを検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、カップ状容器(1)の全面に施されたシュリンクフィルムの天面や底面の穴あき(3mm〜40mm程度)を検査する典型的な検査装置を示す斜視図である。図1において、包装ライン(図示せず)から天地反転された状態で搬送されてくるカップ状容器(1)をその天面及び底面の端を支える4本のガイド(4)で挟み、両側面をベルトコンベア(5)で挟んで搬送させることで、カップ状容器の天面と底面を開放にする。この開放された天面と底面にエアーノズル(2)から圧縮空気を吹き付ける。フィルムに穴が空いている場合は内部に空気が入ってフィルムが膨らみ、その膨らみを光電センサ(6)で検知する。この検知信号に基づいて、不良品が所定の位置に搬送されたことを排出タイミングセンサ(9)が検知し、さらに排出用エアーノズル(8)から噴射された空気によって不良品が自動的に排出される。従って、この検査方法は製品を搬送中に行なうことができ、検査のために搬送を一次停止させる必要が無い。
【0017】
ここで、ガイド(4)及びベルトコンベア(5)は、包装されたカップ状容器を振動させることなく搬送可能なものであれば特に制限はなく、その配置や形状は適宜変更可能である。カップの天面又は底面のみを検査する場合は、通常のベルトコンベアやローラーコンベアであってもよい。上述した不良品排出部もレバー式等の機械的な方法を用いてもよい。
【0018】
上述したエアーノズル(2)は、放射状の空気を噴射する放射型エアーノズル(2a)(図2参照)や線状の空気を噴射する幅広エアーノズル(2b)(図3参照)等種々の形状のものを使用することができるが、先端を幅広に拡張して偏平の空気噴出口としたエアーノズル(幅広エアーノズル)を用いることが好ましい。カップの天面や底面に発生するフィルムの穴あきは、その位置や大きさ、数や形が特定できないため、どのような箇所にどのような穴あきがあっても検出できるようにするためである。例えば、図2に示したように、容器中央部付近に空いた穴は放射型エアーノズル(2a)から噴射された空気によって図のように膨らませ、これをセンサ(6)によって検出することができる。センサ(6)の位置を適宜調節することによって、カップ表面から所定の高さ以上に膨らんだフィルムを検知することができる。通常は、カップ表面から10mm未満である。
【0019】
一方、容器の周辺部に生じた穴あきを検出するためには、図3に示したように幅広のエアーノズル(2b)を用いることが効果的である。これらのノズルは1種類のみを用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。また、圧縮空気は製品表面に対してほぼ垂直方向から噴射することが好ましい。具体的には、垂直からプラスマイナス45度の範囲内が好ましい。圧縮空気の圧力は、ノズルの大きさや製品表面からの距離を考慮して適宜調整することができるが、例えば、圧縮空気の圧力を0.4MPa、カップの天面又は底面からの距離を10mm以上に設定することが好ましい。カップ状容器の天面及び底面の検査する領域を適宜区分けし、領域ごとに所定のエアーノズルを配置することで、どの箇所に穴あきがあっても膨らませることができる。
【0020】
本発明の他の実施形態における検査装置を示す斜視図を図4に示す。搬送ラインの上部の3箇所にエアーノズルを設置し、それぞれカップ底面の所定領域の穴あきを検査するようになっている。例えば、放射型エアーノズル(2a)は、カップ底面の中央部を、先端幅広エアーノズル(2b〜2e)はカップ底面の周辺部に空気を噴射するように設置されている。図4において、光電センサ(6)の光の通路は、前記幅広エアーノズルの幅方向の広がりと所定の角度で交差していることが好ましい。前記幅広エアーノズルから噴射される空気の幅方向の広がりとセンサの光の通路が重なると、フィルムの膨らみを効率的に検知できないからである。
【0021】
フィルムの膨らみを検知するセンサとしては、光電センサ、接触センサ、及び画像処理装置等、特に限定されないが、透明の薄弱フィルムを検知するためにはエリア透過型、エリア回帰型、小スポット反射型、エリア反射型等、種々の光電センサが好ましい。これらの中でも、透明薄弱フィルムを検出するためには、エリア回帰型のレーザセンサが特に好ましい。図5は、エリア回帰型レーザセンサ(6a、6b)の配置(検知エリア)と幅広エアーノズルの好ましい位置関係を示した模式図である。図5に示したように、当該センサの光の通路は、前記幅広のエアーノズルの幅方向の広がりと交差するときに効率的にフィルムの膨らみを検出することができる。交差する好ましい角度は約45度から約90度の範囲内であればよい。
【0022】
図6は、本発明の特に好ましい実施形態において、カップ天面又は底面上におけるエアーノズルの配置を示した模式図である。カップ天面又は底面の中央部のフィルムの穴あきは放射型エアーノズル(2a)によって膨らませ、カップ周辺部の4つの領域に生じたフィルムの穴あきは幅広エアーノズル(2b〜2e)を用いて膨らませることができる。
【0023】
また、本発明の検出装置は、熱収縮フィルム、いわゆるシュリンクフィルムによる包装に限定されない。例えば、ガムやキャンディー、タバコ等の包装には熱収縮しない薄弱フィルムが用いられており、このような包装の包装不良にも本発明の検出装置を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の包装不良の検査装置は、異物の混入や改ざんを防止する必要のある物品の製造プロセスに用いることができ、食品製造業のみならず多くの産業分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の典型的な検査装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の検査装置で使用される放射型エアーノズルによる穴あきの検出方法を示す模式図である。
【図3】本発明の検査装置で使用される幅広エアーノズルによる穴あきの検出方法を示す模式図である。
【図4】本発明の他の実施形態における検査装置を示す斜視図である。
【図5】本発明の検査装置における幅広エアーノズルと、エリア回帰型レーザセンサの配置を示す模式図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態におけるカップ天面又は底面上のエアーノズルの配置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0026】
1 カップ状容器
2 エアーノズル
2a 放射型エアーノズル
2b、2c、2d、2e 幅広エアーノズル
3 空気供給源
4 ガイド
5 ベルトコンベア
6 光電センサ
6a、6b エリア回帰型レーザセンサ
7 シュリンクフィルム
8 排出用エアーノズル
9 排出タイミングセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を薄弱フィルムにより密封した包装製品の包装不良を検出する装置であって、
前記包装製品の振動を抑止するガイドに沿って当該包装製品を搬送するコンベアと、
前記搬送方向と平行な製品表面に対して垂直方向より、前記包装製品の表面に圧縮空気を噴射するエアーノズルと、
前記エアーノズルから噴射された圧縮空気によって前記包装製品の表面から所定の高さ以上に膨らんだフィルムを検知するセンサと、
を備えることを特徴とする包装不良の検出装置。
【請求項2】
前記センサの不良検知信号に基づいて該不良製品をコンベアから排出する排出部をさらに備える請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記エアーノズルが、先端を幅広に拡張して偏平の空気噴出口としたエアーノズルを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記センサが、前記コンベアの左右に配置されたエリア回帰型レーザセンサであって、当該センサの光の通路が前記エアーノズルから噴射される空気の幅方向の広がりと交差することを特徴とする請求項1〜3何れか記載の検出装置。
【請求項5】
前記薄弱フィルムが、厚さ15〜100μmのフィルムである請求項1〜4何れか記載の検出装置。
【請求項6】
前記包装製品がカップ形状を有し、当該カップの天面及び底面の4つの端部を支えるガイドと共に当該カップ容器の胴部をベルトコンベアにより挟んで搬送し、前記エアーノズルが当該カップ容器の上部及び下部から空気を噴射することを特徴とする請求項1〜5何れか記載の検出装置。
【請求項7】
前記薄弱フィルムがシュリンクフィルムであり、前記カップの天面及び底面に生じたフィルムの穴あきを検出することを特徴とする請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記センサは、前記エアーノズルから噴射された圧縮空気によって、前記包装製品の表面から所定の高さ以上に膨らんだフィルムに接することで検知する接触センサ、及びフィルムのふくらみを検知する画像処理装置である請求項1〜3何れか記載の検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−113844(P2009−113844A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290586(P2007−290586)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)