説明

薄片状ガラスの製造方法

【課題】厚みの揃った薄片状ガラスが得られる製造方法を提供すること。
【解決手段】回転する平板状、カップ又は球体状の第1拡散部表面にガラス融液を供給する供給過程、遠心力により該第1拡散部表面の周縁から放射方向外向きにガラス融液を引き出す第1拡散過程、第1拡散部を囲むように配置した回転する筒状の第2拡散部内壁表面に、第1拡散過程で引き出したガラス融液を接触させ、遠心力と重力により第2拡散部内壁表面の下端から放射方向外向きにガラス融液を引き出す第2拡散過程、第2拡散過程で引き出したガラス融液が、第2拡散部の下端を囲むように配置した1対のプレートの間の間隙内に入るように、該プレート間を通過する空気流によって放射方向に移動するようにし、それによってガラス融液を平らに維持しつつ該ガラス融液を固化する際に薄片状に破砕するように放射方向に引き出す固化・破砕過程を有することを特徴とする薄片状ガラスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗料、インキ、化粧料、プラスチック、フィルム等に粒子として含有される薄片状ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜4に示すように、開口が上方を向くように配置された回転カップ内へ高温の溶融材料を下向きに供給する過程と、前記カップ内の溶融材料が該カップの上縁を越えて流出しかつ遠心力によって放射方向外向きに流れるようにし、さらに、遠心力によって前記カップから出た前記溶融材料が前記カップを囲むように配置された1対のプレートの間の間隙内に入るように前記プレート間を通過する空気流によって放射方向に移動するようにし、それによって前記溶融材料の流れを平らに維持しつつ前記材料を固化する際にフレークに破砕するように放射方向に引き出す過程とからなる、フレーク製造方法が知られている。
【特許文献1】特公表平2−503669号公報
【特許文献2】EP,A1,1572595号公報
【特許文献3】EP,B1,1732852号公報
【特許文献4】EP,A1,2203394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の製造方法では、溶融材料が1対のプレートの付近を通過して回転カップ内に注入される機構であり、前記プレート間を通過する空気流によって溶融材料が冷却されやすく、溶融材料の温度が安定しないため作製されるフレークの厚みにばらつきが生じやすい。さらに上記製法はフレークの厚みを薄くする場合、遠心力を大きくする必要があるが、カップは高温高速で回転しているため変形しやすい。カップが変形すると、その上縁に働く遠心力は場所ごとに変化するため、溶融材料が均一に引き出されないことから、得られるフレークの厚みにばらつきが生じやすい問題がある。また、開口が上方を向くように配置された回転カップを用いるために異物が混入し易い恐れがある。本発明は、厚みの揃った薄片状ガラスが得られ、また、異物の混入が極めて少ない薄片状ガラスを得ることができる製造方法を提供することを課題とする。なお、本発明の薄片状ガラスは、厚さが0.01〜200μm程度の両面が平滑な薄片状で、長辺が1μm〜10cm程度、短辺が0.5μm〜8cm程度の大きさの不定形のガラスであり、必要に応じて、粉砕・分級されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、回転する平板状、カップまたは球体状の第1拡散部表面にガラス融液を供給する供給過程、遠心力により該第1拡散部表面の周縁から放射方向外向きにガラス融液を引き出す第1拡散過程、前記第1拡散部を囲むように配置した回転する筒状の第2拡散部内壁表面に、第1拡散過程で引き出したガラス融液を接触させ、遠心力及び重力により該第2拡散部内壁表面の下端から放射方向外向きにガラス融液を引き出す第2拡散過程、前記第2拡散過程で引き出したガラス融液が、第2拡散部の下端を囲むように配置した1対のプレートの間の間隙内に入るように、前記プレート間を通過する空気流によって放射方向に移動するようにし、それによって前記ガラス融液を平らに維持しつつ前記ガラス融液を固化する際に薄片状に破砕するように放射方向に引き出す固化・破砕過程を有する、薄片状ガラスの製造方法である。以下、前記第1拡散部と前記第2拡散部をまとめて、単に「拡散部」と記載することがある。
【0005】
前記1対のプレートが2個の環状プレートからなり、該環状プレートのうち、垂直方向において、上側プレートの下端と下側プレートの上端の間に、前記第2拡散部の下端が配置されることが好ましい。
【0006】
前記第2拡散部がテーパー状の側部を有し、かつその下方が外向きに広がっていることが好ましい。
【0007】
前記第2拡散部が可変速電動モーターによって回転することが好ましい。
【0008】
前記1対のプレートのうち、前記固化・破砕過程で薄片状に破砕された薄片状ガラスが排出される側の端部が、サイクロン収集・分離器、集塵機、または、真空ポンプに接続されることにより、前記1対のプレートで挟まれた空間内の空気とともに薄片状ガラスを吸引回収することが好ましい。
【0009】
前記第2拡散過程でガラス融液が前記第2拡散部の下端から引き出される際に、または、前記固化・破砕過程で薄片状に破砕された薄片状ガラスが前記1対のプレートから排出される際に、前記ガラス融液または前記薄片状ガラスを添加剤で被覆処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、厚みの揃った薄片状ガラスが得られ、また、異物の混入が極めて少ない薄片状ガラスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の製造方法、及び、その製造方法に用いられる装置の一例を表す概略図
【図2】第1拡散部と第2拡散部とが連結された拡散部と製造方法の一例を表す概略図
【図3】第1拡散部と第2拡散部とが連結されていない拡散部の一例を表す概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の薄片状ガラスの製造方法の一例を、図面を用いて説明する。図1は、本発明の製造方法、及び、その製造方法に用いられる装置の一例を表す概略図である。ガラス融液供給部1から、ガラス融液2が、ガラス融液供給管3を経て、拡散部4に供給される。
【0013】
図2は、本発明の拡散部4と製造方法の一例を表す概略図である。図2において、拡散部4は、モーター5と結合した平板状の第1拡散部13と、筒状の第2拡散部14とが、第2拡散部の上縁部15及び連結部16によって一体に連結されたものである。
【0014】
ガラス融液供給管3を経て、拡散部4の第1拡散部13の表面に供給されたガラス融液17は、モーター5により回転された第1拡散部13の表面の周縁から遠心力により放射方向外向きに引き出される。第1拡散部表面の周縁から放射方向外向きに引き出されたガラス融液18は、第2拡散部14の内壁表面の接触点19に接触する。第2拡散部内壁表面に接触したガラス融液20は、遠心力及び重力によって薄く引き伸ばされ、モーター5により回転された第2拡散部14の内壁表面の下端から放射方向外向きに引き出される。
【0015】
従来の開口が上方を向くように配置された回転カップによる薄片状ガラスの製造方法では、厚さがより薄い薄片状ガラスを得るためには、カップの回転数を増大させて、遠心力を増してガラス融液を薄く引き出す必要がある。一方、本発明では、前記第1拡散部表面での遠心力、前記第2拡散部内壁表面での遠心力と重力、及び、前記第2拡散部内壁表面の下端での遠心力によって、それぞれガラス融液を薄く引き伸ばすことができるため、同じ厚さの薄片状ガラスを得る場合、従来の回転カップによる製造方法よりも、少ない回転数および遠心力で作製することができる。このため、遠心力による拡散部の変形を抑えることができ、その結果、得られる薄片状ガラスの厚みのばらつきを低減することができる。
【0016】
上記のように拡散部4により放射方向外向きに引き出されたガラス融液6は、前記第2拡散部の下端を囲むように配置した1対のプレート(図1の7、8)の間の間隙内に入るように、前記プレート間を通過する空気流によって放射方向に移動するようにし、それによって前記ガラス融液を平らに維持しつつ前記ガラス融液を固化する際に薄片状に破砕するように放射方向に引き出される。該空気流は、前記ガラス融液6を前記1対のプレートの表面に接触しないように保持し、該空気流とガラス融液との摩擦により、放射方向に引き出し続け、それによってガラス融液に波形やしわが発生することを防止し、ガラス融液を平らに維持しつつ、ガラス融液を固体状態になるまで冷却し続け、小さな薄片状に破砕する。
【0017】
前記プレート間を通過する空気流は、排気管12に接続された図示しない排気機構によって、前記1対のプレートの間の間隙内の空気が吸引回収されることによって発生する。排気機構としては、サイクロン収集・分離器、集塵機、ファン、送風機、吸引式空気輸送装置または、真空ポンプが挙げられ、それに薄片状ガラスを捕捉する機構を持たせることで、上記のように1対のプレート間から引き出された薄片状ガラス9を回収することができる。また、必要であれば粉砕及び分級装置を設けてもよい。
【0018】
前記拡散部4のあるガラス融液拡散室10と、前記排気管12のある薄片状ガラス回収室11は間仕切りされ、かつ、前記1対のプレートの間の間隙のみで双方が繋がった状態であることが好ましい。なお、このような状態で排気管12より吸引脱気すると、薄片状ガラス回収室11に静圧が作用し、薄片状ガラス9を効率よく回収できるとともに、前記1対のプレートの間の間隙に、前記拡散部4側から前記排気管12側へ通過するより強い空気流が発生して、該空気流により、拡散部4により放射方向外向きに引き出されたガラス融液6が、前記1対のプレートの間の間隙内に入り易くなり、さらに、放射方向に移動し平らに維持され易くなり、前記ガラス融液が固化・破砕され易くなり、生成した薄片状ガラスが放射方向に引き出され易くなる。
【0019】
図3は、本発明の拡散部4の異なる一例を表す概略図である。図3において、拡散部4は、モーター5と結合した平板状の第1拡散部13と、それとは連結されていない筒状の第2拡散部14とからなる。該第2拡散部14は第2拡散部の上縁部15及びベルト21によって可変速電動モーター22と連動して回転するものである。
【0020】
図3で表される拡散部4においても、前記ガラス融液供給管3を経て、該拡散部4の第1拡散部13の表面に供給されたガラス融液は、モーター5により回転された第1拡散部13の表面の周縁から遠心力により放射方向外向きに引き出され、該引き出されたガラス融液は、第2拡散部14の内壁表面に接触し、該接触したガラス融液は、遠心力及び重力によって薄く引き伸ばされ、可変速電動モーター22により回転された第2拡散部14の内壁表面の下端から放射方向外向きに引き出される。
【0021】
前記拡散部の周縁または下端に働く遠心力は10G以上であると、薄く引き出されたガラス融液6を安定して得ることができるため好ましい。図2のように、第1拡散部13と、筒状の第2拡散部14とが、第2拡散部の上縁部15及び連結部16によって一体に連結された場合は、当然ながら、第1拡散部13と第2拡散部14の回転速度は等しくなるが、第1拡散部13の周縁と第2拡散部14の下端のいずれに働く遠心力も10G以上であることが好ましい。また、図3のように、第1拡散部13と第2拡散部14がそれぞれ異なる回転駆動により回転される場合、それらの回転速度は必ずしも等しくなくてもよいが、第1拡散部13の周縁と第2拡散部14の下端のいずれに働く遠心力も10G以上であることが好ましい。
【0022】
該第1拡散部の形状は平板状、カップ状、球体状等、特に限定されないが、鉛直上方から見て直径10mm以上の円形であると、ガラス融液を安定的に引き伸ばし、該部の周縁から引き出せるので特に好ましい。該第1拡散部の材質は特に限定されないが、白金、カーボン、石英、耐熱鋼またはセラミックス等が挙げられる。
【0023】
また、モーターの回転軸が第1拡散部の中心付近もしくは重心付近に連結されていると、ガラス融液を安定的に引き伸ばし、該部の周縁から引き出すことができるため好ましい。
【0024】
該第2拡散部の形状は上下に開口部を有する筒状であり、円筒形が好ましい。また、テーパー状の側部を有し、かつその下方が外向きに広がっていることがより好ましい。広がり方は、第2拡散部を横から見たときに、図2に示すように、上縁部と第2拡散部の内壁の接点A、第2拡散部の内壁の下端B、第2拡散部の内壁の異なる下端Cのなす角度が85°未満であると、前記第2拡散部の内壁表面においてガラス融液が安定的に流れて薄く引き伸ばされるため好ましい。また、ラッパ状に側部の下方が外向きに広がっていてもよい。
【0025】
また、第1拡散部13の表面の周縁と、そこからから遠心力により放射方向外向きに引き出されたガラス融液が第2拡散部14の内壁表面に接触した接触点19との距離が3〜20mmであると、前記第1拡散部で引き出されたガラス融液を安定的に第2拡散部の内壁表面に供給できるため好ましく、該距離が5〜15mmであるとさらに好ましい。該第2拡散部の材質は特に限定されないが、白金、カーボン、石英、耐熱鋼またはセラミックス等が挙げられる。
【0026】
回転された第1拡散部の表面の周縁から遠心力により放射方向外向きに引き出されたガラス融液と前記第2拡散部の内壁表面の接触点が、前記第2拡散部の内壁表面のうち、第2拡散部の下端から鉛直方向に10mm以上、上方に位置すると、ガラス融液と第2拡散部の内壁表面とを十分な面積で接触させることができ、重力と遠心力によりガラス融液20を薄く引き伸ばすことができ、その結果、ガラス融液6をより薄く引き出すことができるため好ましく、鉛直方向に15mm以上、上方に位置することがより好ましい。また、前記接触点が、前記第2拡散部の内壁表面のうち、第2拡散部の上縁部から鉛直方向に10mm以上、下方に位置すると、第1拡散部から遠心力により放射方向外向きに引き出されたガラス融液が、上縁部に接触することなく、また途中で詰ることなく、第2拡散部の内壁表面へ安定的に供給されるため好ましく、鉛直方向に15mm以上、下方に位置することがより好ましい。
【0027】
前記1対のプレートの上側と下側のプレートの間隙が2〜70mmであると、前記ガラス融液を平らに維持しやすいため好ましい。該距離が5〜50mmであるとより好ましい。また、該1対のプレートは上側と下側のプレートの面が平行なものでも良いし、必ずしも平行でなくても良く、特に、前記拡散部側における上側と下側のプレートの間隙が、前記排気管側における該間隔よりも大きいものであると、該1対のプレートの間隙を通過する空気流がより安定するためより好ましい。
【0028】
垂直方向における位置関係として、前記1対のプレートの拡散部側末端における上側プレートの下端と下側プレートの上端の間に、前記第2拡散部の下端が配置されることが好ましい。このように配置されることにより、第2拡散部の内壁表面の下端から放射方向外向きに引き出されたガラス融液が1対のプレートの間の間隙に入り易くなるため好ましい。
【0029】
前記1対のプレートの拡散部側末端と前記第2拡散部の下端との距離が5〜80mmであると、第2拡散部の下端部が1対のプレート内へ入る空気流により冷却されにくいことから、該第2拡散部の温度が安定し好ましい。また、第2拡散部の内壁表面の下端から放射方向外向きに引き出されたガラス融液が、1対のプレートの間の間隙に入りやすいため好ましい。該距離は7〜60mmがより好ましい。
【0030】
また、前記1対のプレートが2個の環状プレートからなることが好ましい。環状プレートとして第2拡散部の下端を囲むことで、第2拡散部の内壁表面の下端から放射方向外向きに引き出されたガラス融液を漏れなく前記1対のプレートの間の間隙に入れることができ、効率的に薄片状ガラスを得ることができるため好ましい。
【0031】
前記1対のプレートの材質は特に限定されないが、白金、カーボン、耐熱鋼またはステンレス等が挙げられる。
【0032】
前記1対のプレートのうち、前記排気管側は吸引脱気された状態が好ましく、その際の気圧は0.5〜10kPaであると、1対のプレートの間隙内でガラス融液を平らに維持しやすいとともに、生成した薄片状ガラスを効率的に吸引回収しやすいため好ましく、0.6〜8kPaであるとさらに好ましい。なお、図1のように薄片状ガラス回収室11を設ける場合、該空間内の気圧が前記と同様に0.5〜10kPaであることが好ましい。
【0033】
前記1対のプレート部を冷却するために、該プレートの間隙以外の周辺部に配管を設置し、空気または水により冷却してもよい。
【0034】
ガラス融液供給部におけるガラス融液の粘度は20〜5000dPa・sであると、前記拡散部でガラス融液を平らに引き出しやすく、得られる薄片状ガラスの厚みの制御がしやすいため好ましい。25〜4000dPa・sであるとより好ましく、30〜3000dPa・sであるとさらに好ましい。
【0035】
本発明の製造方法で作製される薄片状ガラスのガラス種は、ガラス融液供給部において前記粘度のガラス融液とすることができるものであれば特に限定されるものではないが、二酸化珪素を主成分とし、酸化アルミニウム、酸化カルシウム等の金属酸化物を含有するものであることが好ましい。具体的には、Eガラス、Cガラス、ソーダライムガラス等が挙げられる。特に、SiO−B−ZnO−Al−CaO系の硼ケイ酸塩ガラスまたは、SiO−B−ZnO−Al−CaO−MnO系の硼ケイ酸塩ガラスは、低い溶融温度を有し、溶融成形性に優れるため、薄片状ガラスの原料ガラスとして好適である。
【0036】
また、前記第2拡散過程でガラス融液が前記第2拡散部の下端から引き出される際に、または、前記固化・破砕過程で薄片状に破砕された薄片状ガラスが前記1対のプレートから排出される際に、前記ガラス融液または前記薄片状ガラスを添加剤で被覆処理する場合、添加剤としては、樹脂中に前記薄片状ガラスを添加したときの分散性を向上させるための分散剤、前記薄片状ガラスを樹脂に配合してその強度や寸法安定性を向上させるための結合剤、及び金属酸化物を被覆するための原料が挙げられる。
【0037】
前記添加剤の被覆方法は、前記添加剤を含む溶液をスプレー塗布する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0039】
[ガラス融液の粘度の測定]
球引上げ粘度計BVB−13LH(オプト製)を用いて白金球引上げ法によりガラス融液の粘度を測定し、温度-粘度曲線を作成した。該温度-粘度曲線に基づき、ガラス融液供給部の温度におけるガラス融液の粘度を求めた。
【0040】
[拡散部に働く遠心力の算出]
第1拡散部の周縁及び第2拡散部の下端に働く遠心力は、次式によりそれぞれ算出した。
遠心力(G)=1118 × R × N2 × 10-8
(ここで、Rは拡散部の周縁または下端の回転半径(cm)、Nは拡散部の1分間当たりの回転数(rpm)を表す)
【0041】
[薄片状ガラスの厚さ測定とそのばらつきの評価]
走査型電子顕微鏡(S4500型、日立製作所製 以下、「SEM」と記載する)で得られた薄片状ガラスサンプル10個の厚みを測定し、その平均値と標準偏差を算出した。
【0042】
[実施例1]
図2に示すような第1及び第2拡散部を有する、図1に示すような薄片状ガラスの製造装置を用いて、表1に示す拡散部および表2に示す条件により薄片状ガラスを作製した結果、平均厚みは1.12μm、厚みの標準偏差0.36であった。また、SEM観察において表面が平滑であり、異物の混入は認められず、市販の薄片状ガラスと同等の品質であった。結果を表2に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
[比較例1]
本発明の拡散部を用いずに、代わりに開口が上方を向くように配置された回転カップを用いた以外は、図1に示すような薄片状ガラスの製造装置を用いて、表3に示す回転カップおよび条件により薄片状ガラスを作製した結果、平均厚みは1.35μm、厚みの標準偏差1.36であり、実施例1と同じ遠心力において、厚みは大きくなり、またばらつきも大きかった。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【符号の説明】
【0047】
1 ガラス融液供給部
2 ガラス融液
3 ガラス融液供給管
4 拡散部
5 モーター
6 拡散部により放射方向外向きに引き出されたガラス融液
7 一対のプレート(上側)
8 一対のプレート(下側)
9 薄片状ガラス
10 ガラス融液拡散室
11 薄片状ガラス回収室
12 排気管
13 第1拡散部
14 第2拡散部
15 第2拡散部の上縁部
16 連結部
17 第1拡散部に供給されたガラス融液
18 第1拡散部表面の周縁から放射方向外向きに引き出されたガラス融液
19 ガラス融液と第2拡散部内壁表面の接触点
20 第2拡散部内壁表面に接触したガラス融液
21 ベルト
22 可変速電動モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する平板状、カップまたは球体状の第1拡散部表面にガラス融液を供給する供給過程、
遠心力により該第1拡散部表面の周縁から放射方向外向きにガラス融液を引き出す第1拡散過程、
前記第1拡散部を囲むように配置した回転する筒状の第2拡散部内壁表面に、第1拡散過程で引き出したガラス融液を接触させ、遠心力及び重力により該第2拡散部内壁表面の下端から放射方向外向きにガラス融液を引き出す第2拡散過程、
前記第2拡散過程で引き出したガラス融液が、第2拡散部の下端を囲むように配置した1対のプレートの間の間隙内に入るように、前記プレート間を通過する空気流によって放射方向に移動するようにし、それによって前記ガラス融液を平らに維持しつつ前記ガラス融液を固化する際に薄片状に破砕するように放射方向に引き出す固化・破砕過程を有することを特徴とする、薄片状ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記1対のプレートが2個の環状プレートからなり、該環状プレートのうち、垂直方向において、上側プレートの下端と下側プレートの上端の間に、前記第2拡散部の下端が配置されることを特徴とする、請求項1に記載の薄片状ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記第2拡散部がテーパー状の側部を有し、かつその下方が外向きに広がっていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の薄片状ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記第2拡散部が可変速電動モーターによって回転することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の薄片状ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記1対のプレートのうち、前記固化・破砕過程で薄片状に破砕された薄片状ガラスが排出される側の端部が、サイクロン収集・分離器、集塵機、または、真空ポンプに接続されることにより、前記1対のプレートで挟まれた空間内の空気とともに薄片状ガラスを吸引回収することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の薄片状ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記第2拡散過程でガラス融液が前記第2拡散部の下端から引き出される際に、または、前記固化・破砕過程で薄片状に破砕された薄片状ガラスが前記1対のプレートから排出される際に、前記ガラス融液または前記薄片状ガラスを添加剤で被覆処理することを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の薄片状ガラスの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−126588(P2012−126588A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277502(P2010−277502)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)