説明

薄肉円筒状被加工物の保持方法とコレット。

【課題】薄肉円筒状被加工物の内径を内径形状に沿った保持する方法、およびコレット装置を得る。
【解決手段】中空円筒状ウレタンを圧縮し弾性変形を起こさせ、その弾性変形を利用することで、薄肉円筒状被加工物の内径を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薄肉円筒形状被加工物を内径から保持する方法と、内径コレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
その一例として、特開2004−25349号公報に開示されたものでは、従来の円筒状被加工物などの内径を保持する場合の手段として、内径コレットチャックがある。
内径コレットチャックは主に、外周面がリング状の穴の内面と接する円筒状のコレットと、コレット内側にはまり込むエキスパンダと、コレットの拡大を規制するシリンダを備える。コレットとエキスパンダは相互に面接触する円錐状の面を備える。
内径コレットチャックにおいては、拡大前のコレット外周面に被保持物をセットしエキスパンダをコレットに対し軸方向に摺動させると、上記円錐状の作用によりコレットが径方向に拡大し、保持物を保持することができる。
【特許文献1】特開2004−25349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の技術によれば、薄肉円筒状被加工物を保持した場合、被加工物はコレットの拡大により変形を起こし加工精度が得られなかった。変形を抑えようとすると、コレットの把持力が低下して、被加工物の保持力が不十分になり、加工中に被加工物が外れる危険性がある。
また、プレス加工などで絞られた薄肉円筒状被加工物の内径側内部形状は軸方向に直線ではなく波打つ形状をしているものがあり、コレットとの接触面が少なく被加工物を保持した時、薄肉円筒部内径寸法の最も小さい箇所のみ接触する。
そのとき被加工物自体の弾性がコレットの拡径力より劣る被加工物では、内部形状がコレットの拡径力により変形し、加工後製品精度が悪化する。
薄肉円筒状被加工物の内径形状が径方向に真円でない楕円または多角形形状の被加工物も前記同様である。
そこで、この発明は、薄肉円筒状被加工物の内径保持、薄肉円筒状の内径不均一な被加工物、または従来のコレットでは被加工物内面とコレットとの接触面の少ない被加工物の内径を保持する方法と、コレットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、請求項1、2、3に示す発明は、径方向に拡大可能な弾性体を利用し、軸方向に圧縮することにより弾性変形が生じることを特徴とする、薄肉円筒状被加工物の内径保持方法である。
また、請求項4、5に示す発明は、ウレタンゴムの弾性変形を利用し薄肉円筒状被加工物の内径を保持することを特徴とするコレットである。
請求項6に示す発明は、中空風船状弾性体に空気、油などの流体を送り込むことにより中空風船状弾性体が径方向に拡大し弾性変形が生じることを利用することで薄肉円筒状被加工物の内径を保持することを特徴としたコレットである。
弾性体材料としてウレタンゴムの他に、低弾性ゴム、シリコンゴム、ふっ素ゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンゴム、クロロプレンゴムが利用可能である。
【発明の効果】
【0005】
各発明によれば、ウレタンゴムを圧縮すれば径方向に膨らむ性質の弾性変形を利用して薄肉円筒状被加工物の内径を保持することにより、薄肉円筒状被加工物を被加工物自体の変形を抑えた内径チャッキング状態に保ち、加工精度不良を回避した保持ができる。
また、中空風船状弾性体に流体を送り込むことにより前記発明と同様に弾性体が拡大し弾性変形が起こる。その弾性変形を利用して薄肉円筒状被加工物の内径をチャッキングすることにより、被加工物の内径形状に沿った保持が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明の一実施形態を、図1、図2、図3に示す。
図1に示すように、回転駆動主軸(図示を省略)に中空主軸取付フランジ5をボルトにて固定し(図示を省略)、その中空主軸取付フランジ5の軸方向端面に円筒形中空突起部を持つ本体2がボルト7にて締め付けられている。
前記中空主軸取付フランジ5と本体2は回転駆動主軸(図示を省略)に固定されるので回転駆動主軸と一体となり、回転駆動主軸と同じ動作をする。
さらに図1では、図5に示すような中空T字形円筒引き込み棒3のE部に、図4に示すような中空円筒状ウレタンゴムコレット1が挿入され、中空T字形円筒引き込み棒3の大径端面穴より締め付けボルト6にてシリンダ中間軸4に密着固定されるまで締め付けられている。
【0007】
図2に示すように、中空T字形引き込み棒3は軸方向に動くチャックシリンダ(図示を省略)と一体となるシリンダ中間軸4にて固定されているので、チャックシリンダと同じ動作をする。
シリンダ中間軸4がチャックシリンダ方向へ摺動した時、中空円筒状ウレタンゴムコレット1は図5に示す中空T字形引き込み棒3のフランジ部Aと図6に示す本体2突起部B端面により、図2に示すように軸方向へ圧縮され、中空円筒状ウレタンゴムコレット1は弾性変形を起こし径方向へ膨らむ。
図3に薄肉円筒状被加工物の内径を保持した状態の実施形態を示す。
中空円筒状ウレタンゴムコレットにおける長さについて以下に記載する。
図1に示すL、図4に示すDにおいて「数1」を適用する。
【0008】
【数1】

また、中空円筒状ウレタンゴムコレットにおける径については、図4示すC、図5に示すE、図6に示すFにおいて「数2」を適用する。
【0009】
【数2】

また、他の一実施形態として図7に示す。
前記中空円筒状ウレタンゴムコレット1の径方向外周と被加工物の内径部との間に極薄肉円筒状中空リング10を入れることにより、被加工物を中空ウレタンゴムコレットで直接保持せず極薄肉円筒状中空リング10を間接媒体として弾性変形させることにより内径を保持する。
被加工物自体の弾性強度が弱く、内径チャッキングにより弾性変形を受けやすい中空円筒状被加工物の内径保持も変形を押えることが可能である。
極薄肉円筒状中空リングの材質として、金属、ポリアセタール、MCナイロン、ふっ素樹脂、ポリカーボネートが有効である。
【0010】
他の実施形態として図8に示す、中空円筒状ウレタンゴムコレット1a、1b、1cを組み合わせて使用することにより、被加工物の円筒形状内径に段差があるものも各々の内径に中空ウレタンゴムコレットの外径を会わせることにより、各内径ごとの保持が可能となる。
図8に示す中空円筒状ウレタンゴムコレット1a、1bまた1b、1cとの間には中空円筒状の金属性座金11、12を挿入することにより、中空円筒状ウレタンゴムコレット1a、1b、1cはそれぞれの弾性変形を損なうことなく径方向に膨らみ被加工物を保持できる。
【0011】
請求項6の一実施形態として図9に示す。
前記、中空円筒状ウレタンゴムコレット部分を当発明では、中空円筒状で風船形状をした中空円筒状風船形状ウレタンゴムコレット20としている。
また、中空円筒状風船形状ウレタンゴムコレット20を軸方向へ圧縮する構造の変わりに、軸方向は圧縮せず中空円筒状座金21にて固定されている。
図9に示す中空円筒状風船形状ウレタンゴムコレット20の軸方向端面22部より、中空円筒状風船形状ウレタンゴムコレット20の内部へ空気、油等の流体を送り込む。
そのとき中空円筒状風船形状ウレタンゴムコレット20は流体が送り込まれたことで弾性変形が起こり、軸方向は固定されているので径方向へのみ弾性変形が起こり、径方向へ膨らみ薄肉円筒被加工物の内径部を保持できる。
【0012】
これらの実施形態によれば、中空円筒状ウレタンゴムコレット20の弾性変形による膨らみにより、薄肉円筒状被加工物は円筒部内径側に内径チャッキング作用が働き保持される。
中空円筒状ウレタンゴムコレット20の材質、硬さの選択により、薄肉円筒状被加工物の内径内側が径方向に真円形状でない形状や、または軸方向に波打つような形状をした被加工物でも、その形状に沿った弾性変形が起こり得るので安定した保持ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態を示す中空円筒状ウレタンゴムコレットの一部断面を含む側面図である。
【図2】図1の中空円筒状ウレタンゴムコレットを弾性変形させた時の一部断面を含む側面図である。
【図3】この発明の一実施形態を示す薄肉円筒状被加工物を内径チャッキングした時の断面を含む側面図である。
【図4】中空円筒状ウレタンゴムコレットの断面を含む正面図および側面図である。
【図5】中空T字形円筒引き込み棒の断面を含む正面図および側面図である。
【図6】円筒形中空突起部を持つ本体の断面を含む正面図および側面図である。
【図7】この発明の一実施形態を示す一部断面を含む正面図および側面図である。
【図8】この発明の一実施形態を示す断面を含む側面詳細図である。
【図9】この発明の一実施形態を示す断面を含む側面図である。
【符号の説明】
【0014】
1、ウレタンコレット
2、本体
3、中空T字形円筒引き込み棒
4、シリンダ中間軸
5、中空主軸取付フランジ
20、中空風船状弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に拡大可能な弾性体と、前記弾性体を軸方向に圧縮することにより、薄肉円筒状被加工物の内径を保持する方法。
【請求項2】
薄肉円筒状被加工物の内径側内部形状が軸方向にうねりがある形状の被加工物の内径を保持する請求項1の方法。
【請求項3】
薄肉円筒状被加工物の内径側内部が径方向に真円でない形状の被加工物の内径を保持する請求項1、請求項2の方法。
【請求項4】
径方向に拡大可能な弾性体と、前記弾性体を軸方向に圧縮するシリンダを備え薄肉円筒状被加工物の内径を保持することを特徴とするコレット。
【請求項5】
コレットの弾性体は、ウレタンゴムである、請求項4のコレット。
【請求項6】
径方向に拡大可能な中空風船状弾性体と、前記弾性体を流体で膨張させることにより、薄肉円筒状被加工物の内径を保持することを特徴とするコレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−26831(P2006−26831A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210930(P2004−210930)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(596058627)株式会社ユニゾーン (2)
【Fターム(参考)】