説明

薄膜ガラスの搬送方法、及び薄膜ガラスの搬送装置

【課題】真空圧近傍下で薄膜ガラスを搬送する場合に、圧力変化に起因する薄膜ガラスの破損を抑制する。
【解決手段】真空容器10内の圧力を調整する減圧工程と、真空圧近傍まで減圧された真空容器10内で長尺な薄膜ガラスGを搬送する搬送工程と、を備える薄膜ガラスGの搬送方法において、減圧工程では、ロール状の薄膜ガラスGが真空容器10内に配置された状態で、3分以上の時間を掛けて真空容器10内の圧力を10000Paまで減圧させた後に、真空圧近傍まで減圧させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜ガラスの搬送方法、及び薄膜ガラスの搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示デバイス用の基板材料として、ガスバリア性や透光性などに優れる薄膜ガラスが好適に用いられている。この薄膜ガラスは、厚さが200μm以下、好ましくは30〜150μmの極めて薄いガラスであり、この薄さによって可撓性を有し、例えばロール状に巻き取ることも可能となっている。
【0003】
そのため、この可撓性を利用して薄膜ガラスに効率的に各種処理を施す手法として、長尺な薄膜ガラスをロールツーロール方式でロール搬送しつつ、その表面に各種処理を施す技術が提案されている。
【0004】
ところで、薄膜ガラスの表面に施される処理として、例えば真空蒸着やスパッタリングなど、内部が真空圧近傍に減圧された真空容器内で行われるものがある。そこで、減圧された真空容器内において、薄膜ガラスをロール搬送しつつ当該薄膜ガラスに真空蒸着やスパッタリングなどの処理を施す技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−71726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、真空容器内を薄膜ガラスの搬送前に真空圧近傍まで減圧する際や、搬送後に真空圧近傍から所定圧力まで加圧する際に、タクトタイムを抑えるために短時間で急激に圧力を変化させてしまうと(例えば図6参照)、ロール状の薄膜ガラスの各層間に圧力差が生じる結果、薄膜ガラスが破損してしまう場合がある。
【0007】
本発明の課題は、真空圧近傍下で薄膜ガラスを搬送する場合に、圧力変化に起因する薄膜ガラスの破損を抑制することのできる薄膜ガラスの搬送方法、及び薄膜ガラスの搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、真空容器内の圧力を調整する圧力調整工程と、真空圧近傍まで減圧された前記真空容器内で長尺な薄膜ガラスを搬送する搬送工程と、を備える薄膜ガラスの搬送方法において、
前記圧力調整工程では、ロール状の前記薄膜ガラスが前記真空容器内に配置された状態で、3分以上の時間を掛けて前記真空容器内の圧力を10000Paまで減圧させた後に、真空圧近傍まで減圧させることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、真空容器内の圧力を調整する圧力調整工程と、真空圧近傍まで減圧された前記真空容器内で長尺な薄膜ガラスを搬送する搬送工程と、を備える薄膜ガラスの搬送方法において、
前記圧力調整工程では、ロール状の前記薄膜ガラスが前記真空容器内に配置された状態で、3分以上の時間を掛けて前記真空容器内の圧力を真空圧近傍から20000Paまで加圧させることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の薄膜ガラスの搬送方法において、
前記圧力調整工程では、前記真空容器内の圧力を、所定の保持時間だけ一定に保持するようにステップ状に変化させることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送方法において、
前記圧力調整工程では、前記真空容器内の減圧中には前記薄膜ガラスに張力を作用させないことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送方法において、
前記薄膜ガラスの搬送方向への張力を制御可能な張力制御手段を用い、
前記圧力調整工程では、前記真空容器内の圧力が一定のときに、前記薄膜ガラスを搬送するための所定の張力を前記張力制御手段により当該薄膜ガラスに作用させることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の薄膜ガラスの搬送方法において、
前記圧力調整工程では、前記真空容器内の圧力が真空圧近傍まで減圧された場合に、所定の作用時間を掛けて前記所定の張力を前記張力制御手段により前記薄膜ガラスに作用させることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送方法において、
前記薄膜ガラスとして、長手方向の始端と終端とに樹脂フィルムが接合されてロール状に巻回されたものを用いることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送方法において、
前記薄膜ガラスとして、表面に導電性金属酸化物が塗布されたものを用いることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、真空容器内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、真空圧近傍まで減圧された前記真空容器内で長尺な薄膜ガラスを搬送する薄膜ガラスの搬送装置において、
前記圧力制御手段は、ロール状の前記薄膜ガラスが前記真空容器内に配置された状態で、3分以上の時間を掛けて前記真空容器内の圧力を10000Paまで減圧させた後に、真空圧近傍まで減圧させることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、真空容器内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、真空圧近傍まで減圧された前記真空容器内で長尺な薄膜ガラスを搬送する薄膜ガラスの搬送装置において、
前記圧力制御手段は、ロール状の前記薄膜ガラスが前記真空容器内に配置された状態で、3分以上の時間を掛けて前記真空容器内の圧力を真空圧近傍から20000Paまで加圧させることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10に記載の薄膜ガラスの搬送装置において、
前記圧力制御手段は、前記真空容器内の圧力を、所定の保持時間だけ一定に保持するようにステップ状に変化させることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項9〜11の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送装置において、
前記真空容器内の減圧中には前記薄膜ガラスに張力を作用させないことを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項9〜12の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送装置において、
前記薄膜ガラスの搬送方向への張力を制御可能な張力制御手段を備え、
前記張力制御手段は、前記真空容器内の圧力が一定のときに、前記薄膜ガラスを搬送するための所定の張力を当該薄膜ガラスに作用させることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の薄膜ガラスの搬送装置において、
前記張力制御手段は、前記真空容器内の圧力が真空圧近傍まで減圧された場合に、所定の作用時間を掛けて前記所定の張力を前記薄膜ガラスに作用させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、3分以上の時間を掛けて真空容器内の圧力を10000Paまで減圧させた後に更に真空圧近傍まで減圧させるか、或いは、3分以上の時間を掛けて真空容器内の圧力を真空圧近傍から20000Paまで加圧させるので、薄膜ガラスの搬送前での減圧時、又は搬送後での加圧時における真空容器内の急激な圧力変化を防止することができる。したがって、ロール状の薄膜ガラスの各層間に生じる圧力差を小さくすることができ、ひいては、真空容器内の圧力変化に起因する薄膜ガラスの破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】薄膜ガラスの搬送装置の概略構成を示す図である。
【図2】樹脂フィルムを接合した薄膜ガラスを説明するための図である。
【図3】実施例で用いた真空容器内の減圧パターンを示すグラフである。
【図4】実施例1の結果をまとめたグラフである。
【図5】実施例で用いた真空容器内の加圧パターンを示すグラフである。
【図6】従来における真空容器内の減圧パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0025】
図1は、本実施形態における薄膜ガラスの搬送装置(以下、単に搬送装置という)1の概略構成を示す図である。
【0026】
この図に示すように、搬送装置1は、真空圧近傍まで減圧された真空容器10内で長尺な薄膜ガラスGを長手方向に沿ってロールツーロール方式でロール搬送しつつ、当該薄膜ガラスGの表面に機能性膜を被膜する装置である。具体的には、搬送装置1は、真空容器10と、制御部11とを備えている。
【0027】
真空容器10内には、繰出ロール2,巻取ロール3,複数の搬送ロール4,…,被膜処理部5及び成膜ドラム6からなる搬送系が収容されている。この搬送系は、ロール状の薄膜ガラスG(元巻ガラス)を繰出ロール2から繰り出して搬送ロール4,…で搬送しつつ巻取ロール3で巻取りガラスとしてロール状に巻き取る過程において、被膜処理部5及び成膜ドラム6によって薄膜ガラスG表面に機能性膜を被膜するように構成されている。
【0028】
真空容器10内の搬送系のうち、繰出ロール2及び巻取ロール3には、これらを駆動するための駆動モータ21及び駆動モータ31が設けられている。また、繰出ロール2から繰り出される元巻ガラスには、いわゆる合紙としての樹脂フィルムF1が挟み込まれているため、この樹脂フィルムF1を巻き取るための合紙巻取ロール71及びこの巻き取りラインを支持する合紙搬送ロール72が繰出ロール2の近傍に設けられている。同様に、巻取ロール3は合紙としての樹脂フィルムF2を挟みつつ薄膜ガラスGを巻き取るため、この樹脂フィルムF2を繰り出す合紙繰出ロール73及びこの繰り出しラインを支持する合紙搬送ロール74が巻取ロール3の近傍に設けられている。
【0029】
また、真空容器10は、当該真空容器10内を減圧可能な真空ポンプ12と連通されている。この真空ポンプ12は、真空容器10内の圧力を少なくとも大気圧から真空圧近傍までの範囲で調整可能となっている。
【0030】
制御部11は、真空ポンプ12の駆動を制御して真空容器10内の圧力を制御可能に構成されている。また、制御部11は、駆動モータ21及び駆動モータ31の駆動を制御して繰出ロール2及び巻取ロール3の速度を制御可能に構成されており、ひいては、薄膜ガラスGの搬送方向への張力を制御可能に構成されている。
【0031】
搬送装置1が搬送する薄膜ガラスGは、特に限定はされないが、厚さが200μm以下、好ましくは30〜150μmの極めて薄いガラスである。また、薄膜ガラスGには、図2(a)に示すように、長手方向の始端と終端とに樹脂フィルムFが接合されていることが好ましい。この場合、この薄膜ガラスGがロール状に巻回された元巻ガラス及び巻取りガラスでは、図2(b)に示すように、繰出ロール2又は巻取ロール3と接する最内周部及び最外周部に樹脂フィルムFが位置することとなる。なお、薄膜ガラスGの表面には、帯電防止のために導電性金属酸化物を塗布しておくことが好ましい。この導電性金属酸化物の塗布により、大気圧中より帯電しやすい真空圧中においても、搬送ロール4又は成膜ドラム6と薄膜ガラスGとの密着が抑制され、搬送性を向上させることができる。このような導電性金属酸化物としては、例えば、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化イリジウム、スズ−アンチモン複合酸化物、インジウム−スズ複合酸化物等を適用することができる。なお、薄膜ガラスGの表面に導電性金属酸化物を固着する手法は塗布に限定されない。
【0032】
続いて、真空容器10内で薄膜ガラスGを搬送しつつ表面に機能性膜を皮膜する薄膜ガラスGの搬送方法について説明する。
【0033】
まず、ロール状の薄膜ガラスG(元巻ガラス)を真空容器10内の繰出ロール2にセットし、その先端を搬送系に沿って巻取ロール3まで張架する。但し、このときには未だ薄膜ガラスGに張力を作用させない。
【0034】
次に、真空容器10内を減圧する減圧工程を行う。
この工程では、制御部11により真空ポンプ12の駆動を制御し、真空容器10内の圧力を3分以上の時間を掛けて10000Paまで減圧させる。それから、真空容器10内の圧力を真空圧近傍まで減圧させる。なお、この減圧中には、薄膜ガラスGに張力が作用しないようにする。
【0035】
次に、制御部11により駆動モータ21,31の駆動を制御し、薄膜ガラスGを搬送するための所定の張力を当該薄膜ガラスGに作用させる。このときには、真空容器10内の圧力が真空圧近傍一定になってから、所定の作用時間を掛けて張力を作用させるようにする。
【0036】
次に、薄膜ガラスGを搬送しつつ機能性膜を被膜する搬送工程を行う。この搬送工程を経て、表面に機能性膜を被膜された薄膜ガラスGが順次巻取ロール3にロール状に巻き取られる。
【0037】
次に、真空容器10内を加圧する加圧工程を行う。
この工程では、制御部11により真空ポンプ12の駆動を制御し、真空容器10内の圧力を3分以上の時間を掛けて真空圧近傍から20000Paまで加圧させる。それから、真空容器10内の圧力を大気圧まで戻す。
こうして、所定の機能性膜が被膜された薄膜ガラスG(巻取りガラス)が得られる。
【0038】
以上のように、3分以上の時間を掛けて真空容器10内の圧力を10000Paまで減圧させた後に更に真空圧近傍まで減圧させるか、或いは、3分以上の時間を掛けて真空容器10内の圧力を真空圧近傍から20000Paまで加圧させるので、薄膜ガラスGの搬送前での減圧時、又は搬送後での加圧時における真空容器10内の急激な圧力変化を防止することができる。したがって、ロール状の薄膜ガラスGの各層間に生じる圧力差を小さくすることができ、ひいては、真空容器10内の圧力変化に起因する薄膜ガラスGの破損を抑制することができる。
【0039】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0040】
例えば、減圧工程又は加圧工程における真空容器10内の圧力は、上述した変化態様の範囲内で変化するものであればよく、例えば、所定の保持時間だけ一定に保持するようにステップ状に変化させてもよい。
【実施例1】
【0041】
以下に、実施例を挙げることにより、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1では、真空容器10内の減圧パターンを変えたときの、各減圧パターンでの薄膜ガラスG(元巻ガラス)の破損(破断)発生率を確認した。
【0043】
<薄膜ガラス>
薄膜ガラスGとして、CO2レーザーにて予め幅方向両端を切断済みの、厚さ70μmのホウケイ酸ガラスを用いた。元巻ガラスは、この薄膜ガラスGを常圧下で合紙を用いずに外径200mmの繰出ロール2(コア)に巻き取った外径400mmのものとした。なお、薄膜ガラスGの幅は、結果と併せて表1に示す。また、薄膜ガラスGの張力は30N/幅とした。
【0044】
<減圧パターン>
評価した7つの減圧パターンP1〜P7を図3に示す。なお、何れの減圧パターンも最終的に10-2Paまで減圧した。
【0045】
<結果とまとめ>
結果を表1及び図4に示す。この結果から、ロール状の薄膜ガラスGの破損に対しては、特に大気圧から10000Paまでの減圧速度が大きく影響することが分かる。また、この破損を抑制するためには、大気圧から10000Paまでの減圧に3分以上、好ましくは7分以上の時間を掛けるとよいことが分かる。
【0046】
【表1】

【実施例2】
【0047】
実施例2では、図3に示した減圧パターンP4,P7で減圧中の真空容器10内において、薄膜ガラスG(元巻ガラス)に張力を作用させたときの破損(破断)発生率を確認した。なお、評価条件は上記実施例1と同様とした。
【0048】
<結果とまとめ>
結果を表2に示す。この表から、ロール状の薄膜ガラスGの破損を抑制するためには、減圧中に当該薄膜ガラスGに張力を作用させるべきでないことが分かる。
【0049】
【表2】

【実施例3】
【0050】
実施例3では、図3に示した減圧パターンP1で減圧した真空容器10内において、所定張力が作用するまでの時間を変化させたときの薄膜ガラスG(元巻ガラス)の破損(破断)発生率を確認した。なお、所定張力は50N/幅とした。その他の評価条件は上記実施例1と同様とした。
【0051】
<結果とまとめ>
結果を表3に示す。この表から、真空圧近傍下での元巻ガラスへの張力付与にあたっては、できるだけ時間を掛けて行うのがよく、好ましくは3秒以上、より好ましくは10秒以上掛けて行うのがよいことが分かる。
【0052】
【表3】

【実施例4】
【0053】
実施例4では、始端及び終端に樹脂フィルムFが接合された薄膜ガラスG(元巻ガラス)を、図3に示した減圧パターンP1,P4で減圧したときの当該薄膜ガラスGの破損(破断)発生率を確認した。なお、樹脂フィルムFは厚さ50μmのPETフィルムとした。その他の評価条件は上記実施例1と同様とした。
【0054】
<結果とまとめ>
結果を表4に示す。この表4を表1と対比すると、薄膜ガラスG(元巻ガラス)に長さ5mの樹脂フィルムFを接合することにより、破損を抑制できることが分かる。なお、このような元巻ガラスを用いると、当該元巻ガラスを搬送装置1に取り付ける際、特に切断・繋ぎの際に、作業が容易となる。また、樹脂フィルムFのうち元巻ガラスの内周側のものは、ガラス自体の厚みに基づくいわゆる端末段差による転写故障や破損の抑制効果が期待できる。
【0055】
【表4】

【実施例5】
【0056】
実施例5では、真空容器10内の加圧パターンを変えたときの、各加圧パターンでの薄膜ガラスG(元巻ガラス)の破損(破断)発生率を確認した。
【0057】
<評価条件>
評価した6つの加圧パターンP11〜P16を図5に示す。その他の評価条件は上記実施例1と同様とした。
【0058】
<結果とまとめ>
結果を表5に示す。この表から、ロール状の薄膜ガラスGの破損に対しては、特に0.01Paから20000Paまでの加圧速度が大きく影響することが分かる。また、この破損を抑制するためには、0.01Paから20000Paまでの加圧に3分以上、好ましくは7分以上の時間を掛けるとよいことが分かる。
【0059】
【表5】

【実施例6】
【0060】
実施例6では、始端及び終端に樹脂フィルムFが接合された薄膜ガラスG(元巻ガラス)を、図5に示した加圧パターンP11,P14で加圧したときの当該薄膜ガラスGの破損(破断)発生率を確認した。なお、樹脂フィルムFは厚さ50μmのPETフィルムとした。その他の評価条件は上記実施例1と同様とした。
【0061】
<結果とまとめ>
結果を表6に示す。この表6を表5と対比すると、薄膜ガラスG(元巻ガラス)に長さ5m以上の樹脂フィルムFを接合することにより、破損を抑制できることが分かる。
【0062】
【表6】

【実施例7】
【0063】
実施例7では、一方の主面に導電性金属酸化物を塗布した薄膜ガラスG(元巻ガラス)を、図5に示した加圧パターンP11,P14で加圧したときの当該薄膜ガラスGの破損(破断)発生率を確認した。また、導電性金属酸化物を塗布していない薄膜ガラスG(元巻ガラス)についても同条件で評価し、両者を比較した。
【0064】
<薄膜ガラス>
導電性金属酸化物として、シリカゾル(コルコート株式会社製「コルコートN−103X」)から調製した固形分濃度2%のコーティング組成物を用いた。この導電性金属酸化物を薄膜ガラスGの表面に9μmのウェット膜厚で塗布し、続けて120℃の温風で60秒間乾燥させた。元巻ガラスは、この薄膜ガラスGを常圧下で一度巻取り、0.01Pa下で再度巻取り直したものとした。その他の条件は上記実施例1と同様とした。
【0065】
<結果とまとめ>
結果を表7に示す。この表から、導電性金属酸化物の塗布により、ロール状の薄膜ガラスGの破損を抑制できることが分かる。この効果は、表面の導電性金属酸化物により薄膜ガラスGの層間での密着が抑えられることによるものと考えられる。
【0066】
【表7】

【符号の説明】
【0067】
1 搬送装置
2 繰出ロール
3 巻取ロール
4 搬送ロール
5 被膜処理部
6 成膜ドラム
10 真空容器
11 制御部(圧力制御手段,張力制御手段)
12 真空ポンプ
21,31 駆動モータ
71 合紙巻取ロール
72 合紙搬送ロール
73 合紙繰出ロール
74 合紙搬送ロール
F 樹脂フィルム
F1 樹脂フィルム
F2 樹脂フィルム
G 薄膜ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内の圧力を調整する圧力調整工程と、真空圧近傍まで減圧された前記真空容器内で長尺な薄膜ガラスを搬送する搬送工程と、を備える薄膜ガラスの搬送方法において、
前記圧力調整工程では、ロール状の前記薄膜ガラスが前記真空容器内に配置された状態で、3分以上の時間を掛けて前記真空容器内の圧力を10000Paまで減圧させた後に、真空圧近傍まで減圧させることを特徴とする薄膜ガラスの搬送方法。
【請求項2】
真空容器内の圧力を調整する圧力調整工程と、真空圧近傍まで減圧された前記真空容器内で長尺な薄膜ガラスを搬送する搬送工程と、を備える薄膜ガラスの搬送方法において、
前記圧力調整工程では、ロール状の前記薄膜ガラスが前記真空容器内に配置された状態で、3分以上の時間を掛けて前記真空容器内の圧力を真空圧近傍から20000Paまで加圧させることを特徴とする薄膜ガラスの搬送方法。
【請求項3】
前記圧力調整工程では、前記真空容器内の圧力を、所定の保持時間だけ一定に保持するようにステップ状に変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜ガラスの搬送方法。
【請求項4】
前記圧力調整工程では、前記真空容器内の減圧中には前記薄膜ガラスに張力を作用させないことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送方法。
【請求項5】
前記薄膜ガラスの搬送方向への張力を制御可能な張力制御手段を用い、
前記圧力調整工程では、前記真空容器内の圧力が一定のときに、前記薄膜ガラスを搬送するための所定の張力を前記張力制御手段により当該薄膜ガラスに作用させることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送方法。
【請求項6】
前記圧力調整工程では、前記真空容器内の圧力が真空圧近傍まで減圧された場合に、所定の作用時間を掛けて前記所定の張力を前記張力制御手段により前記薄膜ガラスに作用させることを特徴とする請求項5に記載の薄膜ガラスの搬送方法。
【請求項7】
前記薄膜ガラスとして、長手方向の始端と終端とに樹脂フィルムが接合されてロール状に巻回されたものを用いることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送方法。
【請求項8】
前記薄膜ガラスとして、表面に導電性金属酸化物が塗布されたものを用いることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送方法。
【請求項9】
真空容器内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、真空圧近傍まで減圧された前記真空容器内で長尺な薄膜ガラスを搬送する薄膜ガラスの搬送装置において、
前記圧力制御手段は、ロール状の前記薄膜ガラスが前記真空容器内に配置された状態で、3分以上の時間を掛けて前記真空容器内の圧力を10000Paまで減圧させた後に、真空圧近傍まで減圧させることを特徴とする薄膜ガラスの搬送装置。
【請求項10】
真空容器内の圧力を制御可能な圧力制御手段を備え、真空圧近傍まで減圧された前記真空容器内で長尺な薄膜ガラスを搬送する薄膜ガラスの搬送装置において、
前記圧力制御手段は、ロール状の前記薄膜ガラスが前記真空容器内に配置された状態で、3分以上の時間を掛けて前記真空容器内の圧力を真空圧近傍から20000Paまで加圧させることを特徴とする薄膜ガラスの搬送装置。
【請求項11】
前記圧力制御手段は、前記真空容器内の圧力を、所定の保持時間だけ一定に保持するようにステップ状に変化させることを特徴とする請求項9又は10に記載の薄膜ガラスの搬送装置。
【請求項12】
前記真空容器内の減圧中には前記薄膜ガラスに張力を作用させないことを特徴とする請求項9〜11の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送装置。
【請求項13】
前記薄膜ガラスの搬送方向への張力を制御可能な張力制御手段を備え、
前記張力制御手段は、前記真空容器内の圧力が一定のときに、前記薄膜ガラスを搬送するための所定の張力を当該薄膜ガラスに作用させることを特徴とする請求項9〜12の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送装置。
【請求項14】
前記張力制御手段は、前記真空容器内の圧力が真空圧近傍まで減圧された場合に、所定の作用時間を掛けて前記所定の張力を前記薄膜ガラスに作用させることを特徴とする請求項13に記載の薄膜ガラスの搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−1405(P2012−1405A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139532(P2010−139532)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】