説明

薄膜ガラスの搬送装置、及び薄膜ガラスの搬送方法

【課題】容器内で薄膜ガラスが破断した場合に、容器内を吸引する吸引装置を保護する。
【解決手段】搬送装置1は、真空ポンプ11によって吸引された容器10内で長尺な薄膜ガラスGを長手方向に沿って搬送する。この搬送装置1は、真空ポンプ11と容器10とを連通する連通管110を遮断可能な遮断弁13と、薄膜ガラスGの破断を検知する張力検出ロール41又は破断検知センサ8と、張力検出ロール41又は破断検知センサ8が薄膜ガラスGの破断を検知した場合に、連通管110を遮断するように遮断弁13を制御する制御部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜ガラスの搬送装置、及び薄膜ガラスの搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示デバイス用の基板材料として、ガスバリア性や透光性などに優れる薄膜ガラスが好適に用いられている。この薄膜ガラスは、厚さが200μm以下、好ましくは30〜150μmの極めて薄いガラスであり、この薄さによって可撓性を有し、例えばロール状に巻き取ることも可能となっている。
【0003】
そのため、この可撓性を利用して薄膜ガラスに効率的に各種処理を施す手法として、長尺な薄膜ガラスをロールツーロール方式でロール搬送しつつ、その表面に各種処理を施す技術が提案されている。
【0004】
ところで、薄膜ガラスの表面に施される処理として、例えば真空蒸着やスパッタリングなど、内部が低圧に吸引された容器内で行われるものがある。そこで、吸引された容器内において、薄膜ガラスをロール搬送しつつ当該薄膜ガラスに真空蒸着やスパッタリングなどの処理を施す技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−71726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、低圧に吸引された容器内で薄膜ガラスを搬送したときには、搬送中の薄膜ガラスが破損した場合に、容器内を吸引する吸引装置にこの薄膜ガラスの破片が吸い込まれてしまい、吸引装置を壊してしまう恐れがある。
【0007】
本発明は、容器内で薄膜ガラスを搬送するものであって、薄膜ガラスが破断した場合に容器内を吸引する吸引装置を保護することのできる薄膜ガラスの搬送装置、及び薄膜ガラスの搬送方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、吸引手段によって吸引された容器内で長尺な薄膜ガラスを長手方向に沿って搬送する薄膜ガラスの搬送装置において、
前記吸引手段と前記容器とを連通する連通管を遮断可能な遮断弁と、
前記薄膜ガラスの破断を検知する破断検知手段と、
前記破断検知手段が前記薄膜ガラスの破断を検知した場合に、前記連通管を遮断するように前記遮断弁を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、吸引手段によって吸引された容器内で長尺な薄膜ガラスを長手方向に沿って搬送する薄膜ガラスの搬送装置において、
前記薄膜ガラスの破断を検知する破断検知手段と、
前記破断検知手段が前記薄膜ガラスの破断を検知した場合に、前記薄膜ガラスの搬送の駆動を停止させる制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の薄膜ガラスの搬送装置において、
前記破断検知手段は、前記薄膜ガラスの張力に基づいて当該薄膜ガラスの破断を検知することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送装置において、
前記容器は密閉されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、吸引手段によって吸引された容器内で長尺な薄膜ガラスを長手方向に沿って搬送する薄膜ガラスの搬送方法において、
前記吸引手段と前記容器とを連通する連通管を遮断可能な遮断弁と、前記薄膜ガラスの破断を検知する破断検知手段と、を用い、
前記破断検知手段が前記薄膜ガラスの破断を検知した場合に、前記遮断弁により前記連通管を遮断することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、吸引手段によって吸引された容器内で長尺な薄膜ガラスを長手方向に沿って搬送する薄膜ガラスの搬送方法において、
前記薄膜ガラスの破断を検知する破断検知手段を用い、
前記破断検知手段が前記薄膜ガラスの破断を検知した場合に、前記薄膜ガラスの搬送の駆動を停止することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の薄膜ガラスの搬送方法において、
前記破断検知手段として、前記薄膜ガラスの張力に基づいて当該薄膜ガラスの破断を検知するものを用いることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項5〜7の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送方法において、
前記容器として密閉されたものを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1,5に記載の発明によれば、破断検知手段が薄膜ガラスの破断を検知した場合に遮断弁により連通管が遮断されるので、薄膜ガラスの破片が吸引手段に吸引されることを防止できる。したがって、薄膜ガラスが破断した場合であっても、容器内を吸引する吸引装置を保護することができる。
【0017】
請求項2,6に記載の発明によれば、破断検知手段が薄膜ガラスの破断を検知した場合に薄膜ガラスの搬送の駆動が停止されるので、破断した薄膜ガラスの破片が飛散することを防止でき、ひいては当該破片が吸引手段に吸引されることを防止できる。したがって、薄膜ガラスが破断した場合であっても、容器内を吸引する吸引装置を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態における薄膜ガラスの搬送装置の概略構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態における薄膜ガラスの搬送装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本第1の実施形態における薄膜ガラスの搬送装置(以下、単に搬送装置という)1の概略構成を示す図である。
【0021】
この図に示すように、搬送装置1は、低圧に吸引された容器10内で長尺な薄膜ガラスGを長手方向に沿ってロールツーロール方式で搬送しつつ、当該薄膜ガラスGの表面に機能性膜を被膜する装置である。具体的には、搬送装置1は、容器10と、真空ポンプ11と、制御部12とを備えている。
【0022】
容器10は、密封された真空容器である。この容器10の内部には、繰出ロール2と、巻取ロール3と、複数の搬送ロール4,…と、被膜処理部5とが設けられている。これらは、繰出ロール2から繰り出された薄膜ガラスGを搬送ロール4,…で搬送しつつ巻取ロール3でロール状に巻き取る過程において、被膜処理部5によって薄膜ガラスG表面に機能性膜を被膜可能なように構成されている。
【0023】
繰出ロール2及び巻取ロール3には、これらを駆動するための駆動モータ21,31がそれぞれ設けられている。また、繰出ロール2から繰り出される元巻きガラスには、いわゆる合紙としての樹脂フィルムF1が挟み込まれているため、この樹脂フィルムF1を巻き取るための合紙巻取ロール71及びこの巻き取りラインを支持する合紙搬送ロール72が繰出ロール2の近傍に設けられている。同様に、巻取ロール3は合紙としての樹脂フィルムF2を挟みつつ薄膜ガラスGを巻き取るため、この樹脂フィルムF2を繰り出す合紙繰出ロール73及びこの繰り出しラインを支持する合紙搬送ロール74が巻取ロール3の近傍に設けられている。
【0024】
複数の搬送ロール4,…のうち、繰出ロール2の直後のものと巻取ロール3の直前のものとは、内部に歪ゲージを有し、通過する薄膜ガラスGの幅方向両端部での搬送方向への張力を検出可能な張力検出ロール41となっている。この張力検出ロール41は、薄膜ガラスGの搬送方向への張力に基づいて当該薄膜ガラスGの破断を検知するためのものである。
なお、張力検出ロール41は、繰り出しから巻取りまでの張力が一様な場合、どちらか一方への設置でも機能は得られる。通常この張力検出は、ガイドロール両端部分計2箇所に取り付けることとなり、その合算値でWeb(搬送中の薄膜ガラスG)へ掛かっている張力値を算出する形態となる。この機構を応用すると、例えば左右個別の張力値を比較し、幅手の張力の偏在を常に把握することも可能である。また、薄膜ガラスGの片エッジへの張力集中による破損の事前検出手段として活用することもできるし、左右差が所定の閾値を超えると警報を出すシステムなども可能である。
【0025】
また、繰出ロール2から巻取ロール3まで張架された薄膜ガラスGの搬送ライン内には、搬送される薄膜ガラスGの搬送方向への破断を検知可能な破断検知センサ8が複数設けられている。この破断検知センサ8は、搬送ライン内での薄膜ガラスGの有無に基づいて当該薄膜ガラスGの破断を検知可能な光学式のセンサである。なお、この破断検知センサ8は、当該破断検知センサ8前方での薄膜ガラスGの有無を検知可能であれば、光学式のセンサでなくともよく、例えば超音波式や磁気式等のセンサであってもよい。
【0026】
真空ポンプ11は、容器10内を吸引するものであり、連通管110を介して容器10と連通されている。また、連通管110には、当該連通管110を遮断可能な遮断弁13が設けられている。この遮断弁13は、特に限定はされないが、電磁弁である。
【0027】
制御部12は、駆動モータ21及び駆動モータ31の駆動を制御して繰出ロール2及び巻取ロール3を所定の速度で回転させる他、真空ポンプ11の駆動を制御して容器10内
を所定の圧力まで真空引きするものである。
また、制御部12は、張力検出ロール41が薄膜ガラスGの破断を検知した場合、つまり張力検出ロール41による薄膜ガラスGの張力検出値が0であった場合、又は破断検知センサ8が薄膜ガラスGの破断を検知した場合に、連通管110を遮断するように遮断弁13を制御するとともに、駆動モータ21及び駆動モータ31の駆動を停止させて薄膜ガラスGの搬送の駆動を停止させるようになっている。なお、薄膜ガラスGの破断が検知された場合には、搬送系に関する全ての駆動系を停止させることが望ましい。よって、駆動モータ21及び駆動モータ31はもちろんのこと、合紙巻取ロール71及び合紙繰出ロール73用の各駆動モータも停止させることが望ましい。また、その他の駆動系(所謂ドライブロール)があれば、それも停止させることが望ましい。
【0028】
以上のように、張力検出ロール41又は破断検知センサ8が薄膜ガラスGの破断を検知した場合に遮断弁13により連通管110が遮断されるので、薄膜ガラスGの破片が真空ポンプ11に吸引されることを防止できる。したがって、薄膜ガラスGが破断した場合であっても、容器10内を吸引する真空ポンプ11を保護することができる。
【0029】
また、張力検出ロール41又は破断検知センサ8が薄膜ガラスGの破断を検知した場合に薄膜ガラスGの搬送の駆動が停止されるので、破断した薄膜ガラスGの破片が飛散することを防止でき、ひいては当該破片が真空ポンプ11に吸引されることを防止できる。したがって、薄膜ガラスGが破断した場合であっても、容器10内を吸引する真空ポンプ11を保護することができる。また、このように駆動系の回転動力を速やかに停止させることで、ガラス破損後に駆動系を作用させ続けることによる二次被害の発生を防止することができる。
【0030】
[第2の実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図2は、本第2の実施形態における搬送装置1Aの概略構成を示す図である。
【0031】
この図に示すように、搬送装置1Aは、上記第1の実施形態における容器10に代えて、互いに一部を連通された3つの容器101〜103を備えている。これらの容器101〜103の内部には、上述した薄膜ガラスGの搬送ラインが分割して収容されており、大別して、容器101内には繰出ロール2を含む繰出しライン、容器102内には複数の被膜処理部5,…を含む処理ライン、容器103内には巻取ロール3を含む巻取りラインがそれぞれ収容されている。
【0032】
真空ポンプ11は、各連通管110を介して容器101〜103とそれぞれ連通されている。また、遮断弁13は各連通管110に設けられている。
制御部12は、各遮断弁13と接続されており、容器101〜103の何れかにおいて薄膜ガラスGの破断が検知された場合に、当該何れかの容器と連通された連通管110のみを遮断するように遮断弁13を制御する。
【0033】
以上のような搬送装置1Aによっても、上記第1の実施形態における搬送装置1と同様の効果を得ることができる。
【0034】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態では、容器10を真空容器として説明したが、この容器10は真空容器に限定されず、例えば所定のガスを充填する容器であってもよい。
【0036】
また、破断検知手段として張力検出ロール41及び破断検知センサ8を設けることとしたが、このうち何れか一方だけを設けることとしてもよい。
【0037】
また、本発明に係る吸引手段は、真空ポンプ11に限定されず、容器10内を吸引するものであればよい。
【符号の説明】
【0038】
1,1A 搬送装置
2 繰出ロール
3 巻取ロール
4 搬送ロール
41 張力検出ロール(破断検知手段)
5 被膜処理部
8 破断検知センサ(破断検知手段)
10,101〜103 容器
11 真空ポンプ(吸引手段)
12 制御部(制御手段)
13 遮断弁
21,31 駆動モータ
71 合紙巻取ロール
72,74 合紙搬送ロール
73 合紙繰出ロール
110 連通管
F1 樹脂フィルム
F2 樹脂フィルム
G 薄膜ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引手段によって吸引された容器内で長尺な薄膜ガラスを長手方向に沿って搬送する薄膜ガラスの搬送装置において、
前記吸引手段と前記容器とを連通する連通管を遮断可能な遮断弁と、
前記薄膜ガラスの破断を検知する破断検知手段と、
前記破断検知手段が前記薄膜ガラスの破断を検知した場合に、前記連通管を遮断するように前記遮断弁を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする薄膜ガラスの搬送装置。
【請求項2】
吸引手段によって吸引された容器内で長尺な薄膜ガラスを長手方向に沿って搬送する薄膜ガラスの搬送装置において、
前記薄膜ガラスの破断を検知する破断検知手段と、
前記破断検知手段が前記薄膜ガラスの破断を検知した場合に、前記薄膜ガラスの搬送の駆動を停止させる制御手段と、
を備えることを特徴とする薄膜ガラスの搬送装置。
【請求項3】
前記破断検知手段は、前記薄膜ガラスの張力に基づいて当該薄膜ガラスの破断を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜ガラスの搬送装置。
【請求項4】
前記容器は密閉されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送装置。
【請求項5】
吸引手段によって吸引された容器内で長尺な薄膜ガラスを長手方向に沿って搬送する薄膜ガラスの搬送方法において、
前記吸引手段と前記容器とを連通する連通管を遮断可能な遮断弁と、前記薄膜ガラスの破断を検知する破断検知手段と、を用い、
前記破断検知手段が前記薄膜ガラスの破断を検知した場合に、前記遮断弁により前記連通管を遮断することを特徴とする薄膜ガラスの搬送方法。
【請求項6】
吸引手段によって吸引された容器内で長尺な薄膜ガラスを長手方向に沿って搬送する薄膜ガラスの搬送方法において、
前記薄膜ガラスの破断を検知する破断検知手段を用い、
前記破断検知手段が前記薄膜ガラスの破断を検知した場合に、前記薄膜ガラスの搬送の駆動を停止することを特徴とする薄膜ガラスの搬送方法。
【請求項7】
前記破断検知手段として、前記薄膜ガラスの張力に基づいて当該薄膜ガラスの破断を検知するものを用いることを特徴とする請求項5又は6に記載の薄膜ガラスの搬送方法。
【請求項8】
前記容器として密閉されたものを用いることを特徴とする請求項5〜7の何れか一項に記載の薄膜ガラスの搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−1404(P2012−1404A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139425(P2010−139425)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】