説明

薪ストーブと蓄熱性基礎構造体による住宅用冷暖房

【課題】薪ストーブ温風生成ユニット付き薪ストーブと冷房機の熱を蓄熱性基礎構造体に蓄熱して、室内を冷暖房する、木造住宅の冷暖房装置。
【解決手段】寒冷期に薪ストーブ温風生成ユニット付き薪ストーブを木造住宅に設置し、該薪ストーブから生成する温風を蓄熱性基礎構造体に埋設した空気ダクトに送風し、該蓄熱性基礎構造体の輻射放熱で室内を暖房し、暖候期には前記蓄熱性基礎構造体に埋設した空気ダクトに冷房機より冷風を送風して冷熱を蓄熱し、冷風を送風して室内を冷房するシステム。薪ストーブの不安定な燃焼と、足下が暖まりにくいことを蓄熱性基礎構造体からの輻射放熱で改善し、蓄熱性基礎構造体に冷熱を蓄えることで安価な深夜電力を利用したり、太陽光発電での夜間の冷房を実現するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薪ストーブと蓄熱性基礎構造体を用いた冷暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国では、石油ファンヒーターやエアコンなどの温風暖房機が多く普及している。四季の温度差が大きく、夏はエアコンを必要とし、冬は暖房器具が必要となっている。
寒候期を快適にする住宅の考え方は、従来の住戸内の各部屋を個別に暖房する個別暖房よりも、各部屋の仕切を少なくし住宅全体を均一に暖める全館暖房へと移行している。
【0003】
床暖房は一般的には電熱線式と温水式が主流で他に温風式もある。床暖房は足元が暖かく快適な暖房であるため住宅建設時に取り入れられることが多くなっている。特に近年では、温水を利用した床暖房用の放熱ユニットが安価に提供されるようになり普及している。その理由として、温水は熱容量が高いため、少ない量の温水を細い径のホース内を循環させ、床に配管することで床暖房装置とすることができる。そのため、従来の木造の床組みのまま設置が可能となる。電熱線方式は設置費用は安いが電気代が高い。または電磁波による健康上の不安などが見受けられる。温風式は基礎コンクリート内にスチールダクトを埋設して利用する蓄熱式床暖房装置があるが、あまり普及していないのが現状である。
【0004】
特開2004ー162990号公報の、基礎コンクリートスラブを放熱器とする基礎コンクリートスラブ蓄熱床暖房は、熱容量が高いため温度調節はしづらい。逆に室内の温度を一定に維持する効果が高く室内を快適にする効果が高い。そのため基礎コンクリートスラブ蓄熱床暖房の目的は、室温の維持となり室内の温度差を少なくし寒いところを作らないことである。高熱容量の基礎コンクリートスラブ蓄熱床暖房は、温風暖房装置や輻射暖房装置と併用することで、快適な住まいの環境を提供できるものとなる。蓄熱性構造体は大きな重量と放熱面積を必要とするものであり、暖房設備のためだけに設置することはコストなどの負担が大きい。基礎コンクリートを床暖房に活用することで、少ない導入コストで快適な床暖房を提供可能である。
【0005】
また木製の床組の床下に温風を吹き込んで床暖房とする床下暖房装置というものがある。
また従来より石油ストーブなどの放射熱を温風に置き換えるため、様々な考案がされている。温風ファンヒーターのように直接温風を吹きだすものと、空気ダクトに温風を送風するものとがある。
【0006】
特開平11ー14154号公報は、ストーブ本体の内面にパイプを配設し、ストーブ本体の周囲からの輻射熱を熱容量大なる集合輻射熱として熱移送できるストーブが提案されている。
特開2007ー309587号公報は、ストーブ側壁部を、水冷又は空冷により積極的に冷却して、ストーブ側壁部において温水及び温風を生成させて暖房用に利用でき、ストーブガードの取付を必要としない、暖房用兼調理用ストーブが提案されている。主にストーブでやけどをしないためストーブを温水や温風で冷すことを目的としている。
【0007】
やけど防止や壁面との離隔距離を小さくするために、薪ストーブを二重構造とした対流式と呼ばれるものが販売されており、薪ストーブの側面の温度が低く抑えることができる。
【0008】
薪ストーブはカーボンニュートラルな性質があるため、地球温暖化を抑制することに有効な暖房装置であり、木質廃材を暖房に利用可能であることより循環型社会の創出にも役立つため、環境性能の優れた暖房器具である。
【0009】
薪ストーブを活用するためには、燃料の補給や煙突の管理など利用者が手間をかける必要がある。また燃料の搬入の労務を軽くするため1階に設置することが良い。また薪ストーブの暖房能力は大きいものが多い。このことは木材を燃料とする特徴である。煙や煤の発生を最小限にする燃焼が必要であるため燃焼炉や煙突を高温で安定した状態で燃焼を続ける必要となるからである。またなるべく長時間連続して燃焼し続けるほうが良い。点火が容易でないことも長時間燃焼が良いことの要因の一つである。煙や煤の発生を最小限にすることは、近隣環境の維持のためであり、煙突掃除の手間を減らすための利便性のためである。そのため1棟の住宅に薪ストーブを一台設置して利用されている。
【0010】
実開平01ー109718号公報は、薪ストーブの燃焼炉内に熱交換器を配設し、該熱交換器で温水を生成し、床暖房するものである。
薪ストーブの煙突を2重にし、間の空気を流通させ温風を生成する試みがあるが、煙突内面の温度低下により排気ガスの温度低下による煤やタールの付着問題がある。高温の煙突は一見無駄のようであるがスムーズに排気するため必要であるため薪ストーブの煙突の熱利用は難しいのが実情である。
【0011】
主に鉄筋コンクリート造の建物で躯体蓄熱冷暖房と言う技術が実施されている。コンクリートスラブを2重にし、間の空間に深夜に冷風を循環させてコンクリートに冷熱を蓄えて昼間に室内を冷房すると言うものである。他にも天井裏の躯体に冷風を吹きつけるなどの方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004ー162990号公報
【特許文献2】実開平01ー109718号公報
【特許文献3】特開平11 ー14154号公報
【特許文献4】特開2007ー309587号公報
【特許文献5】実開昭60ー173822号公報
【特許文献6】特開2006ー105470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
薪ストーブの特徴として、天井付近が温まりやすく床付近が暖まりにくいため不快感がある。これは温風暖房機や高温の輻射放熱暖房器具などに共通の特徴である。また人のいない天井付近が高温となるため燃料の消費に無駄がある。
【0014】
薪ストーブは利用するのに手間がかかるため、一棟の住宅につき1台で利用される。薪ストーブの暖房能力は大きくできるので1台で1棟の住宅を暖房できる。しかしながら薪ストーブ単体での暖房は、薪ストーブから離れたところ、特に廊下や浴室や脱衣室を暖房することが出来ない。暖房の及ぶ場所とそうでない場所で、大きな温度差が生じやすい。住戸内の大きな温度差によるコールドショックと言われる健康上の課題があり、大きな温度差は健康に悪影響を及ぼすこともある。暖房された住宅内はなるべく温度が平準化されている方が快適で消費エネルギーに無駄がない。暖かい場所を作ると同時に寒い場所を無くすことが良いのである。
【0015】
実開昭60ー173822号公報にあるように石油ストーブより温風を取りだす提案があるが、石油ストーブは暖房能力が小さく軽量で可動式のものが多い。そのため石油ストーブを各部屋ごとに複数台設置するほうが、費用も少なく簡易に暖房可能で、複数台の石油ストーブを用いて一戸の住宅を暖房している。そのため石油ストーブより温風を取りだす提案は普及していない。温風ファンヒーターなどもあるため製品化されていない。1台のみで利用される薪ストーブとは事情が大きく異なるのである。
つまり、一台の薪ストーブだけを1階に設置して住宅全体を暖め、効率良く利用し、快適に過ごせるようにするためには解決の必要な課題がいくつかある。
【0016】
また、実開平01ー109718号公報にあるように薪ストーブを熱源とする温水による床暖房装置が試みられている。しかしながら、薪ストーブを熱源とした温水生成には、薪ストーブの燃焼の特徴について課題がある。薪ストーブの燃焼には、適度な温度に安定して維持される燃焼炉が必要である。安定した高温の燃焼炉で木材を燃やすことにより、排出される煙を最小限にすることが可能となる。しかしながら、薪ストーブの燃焼炉に温水が配管されると低温の温水が炉の内部や周囲を循環することで、燃焼炉に低温の部分が生じ、熱交換器周囲には煤やタールなどが多く付着する。付着するだけでなく、排出される煙やタールの量も増えるため、煙突やストーブ内部にも煤やタールの弊害が生じる。また未燃焼ガスを増大させるものとなる。未燃焼ガスは煙突火災の原因ともなりうるため、未燃焼ガスの発生を最小限にする必要がある。また、燃焼炉の内部に熱交換器を設けることでは、低温の熱交換器が炎に接するため、燃焼ガスの温度を下げることになると想定され、前記と同じ課題が生じる。木材を燃料として温水床暖房するためには薪ボイラーを屋外に設置し、そこで貯めた温水を利用するほうが薪ストーブで温水を生成するよりも効果的である。しかしながら薪ボイラーと薪ストーブを同時に利用するときは、設置費用の増大と、労力の負担増となる。
【0017】
また、薪ストーブは電力を必要としないで燃焼を続ける。温水による床暖房とするためには温水を電力を用いて循環させるが、循環ポンプが停止することが想定され、温水の循環が停止したときに燃焼も同時に停止させられる構造が望ましいが、薪ストーブを循環ポンプの停止に連動させて停止させることは難しい。その場合温水管内が異常な高温状態となり温水が蒸発することが想定される。減圧弁などの緊急措置が必要となり危険な要素が存在する。
【0018】
特開平11ー14154号公報は、ストーブ本体の内面にパイプを配設し、該パイプ内に空気を送風することで温風を生成し、熱移送を実現するものとなっている。ストーブ本体の内面にパイプを配設することで燃焼熱を直に受け取ることを目的としている。そのため、ストーブ本体からの輻射放熱を最小限に抑える温風生成専用の機器の提案となっている。燃料を木材としたときには、薪の安定燃焼に必要な燃焼炉の熱容量が小さいと燃焼炉が高温で安定しないこと、パイプの耐久性や灰の掃除などの課題が多く、薪ストーブには適していないと考えられる。
また特開2006ー105470号公報は、暖炉の燃焼室2に設けた側面の金属製中空支柱より取入れファンによって床下のオンドル式床暖房坑道へ送風させる提案がある。薪ストーブは実用上、1戸の住宅に1台で運用させるため、住戸内の薪ストーブの輻射熱の届きにくいところを暖房し、気温の変化に効率よく対応し、薪ストーブの不安定な火力の変化を安定させることで薪ストーブの実用性が高められるが、前記の提案はテーブル状の暖炉で調理し、放熱される熱の一部を床下に送り床暖房として活用させる提案であり、温風を送出するだけで蓄熱効果がないため、本提案が解決しようとしている薪ストーブの運用についての課題を解決することは出来ない。
【0019】
温風床暖房は、温水床暖房と比較していくつかの欠点があり、普及していない。
温風床暖房の主な欠点としては、床下に配設する空気ダクトの断面積が大きいため、従来の木造床組みに対応することが難しいこと。温風の欠点のひとつに熱容量が小さいことで温度の上昇が早いということがある。温度の上昇が早いことは、危険な高温状態になりやすいということでもある。また温水は100度Cを越えることはないが、温風は上限温度がないため、危険な温度になることが想定される。特に床下暖房では、可燃物が多い空間に温風を吹き込むため低温炭化火災の恐れがある。また蟻害の観点からも不安があるなど、解決の必要な課題が多い。
【0020】
また温風式では、送風機を利用するため、送風機の送風騒音が生じる。特に熱源と送風機を室内に置くときには送風機の騒音が生じる。温水式は循環ポンプであるため騒音が生じにくいものとなっている。
空気ダクト部材や送風機は安価であるため、温水方式よりも安く提供することは可能である。
【0021】
また我が国の木造建築においては、蟻害を防ぐ必要がある。
我が国の住宅は、元来、木材を湿気による腐朽から守るためと、シロアリの防御のため、低温で風通しの良い床下空間を確保することが必要とされてきた。そのため冬は寒さを耐えることが必要であった。
蟻害の特徴は、わずかな隙間やひび割れからでもシロアリの侵入が認められること。木材が乾燥していても食害すること。木材を保護する薬剤の効力が10年程度であるため、 住宅の耐用年数に対して薬剤の保護は一定範囲での効果に限定されることなどがある。
シロアリは他の動物が活動しない冬も活動すると言われている。シロアリは低温の環境では活動出来ないが、床暖房により保温された住宅の床下は、シロアリが活動可能な空間を提供してしまうことになるのである。
またコンクリートで閉鎖された床下空間は、天敵のいない空間となりシロアリにとって安全な空間である。充分に換気され冬期も冷たく保つことができていても、暖かい季節であれば天敵のいない空間を通ってシロアリは建物に到達可能である。天敵のいない空間を作ることは、住宅に重大な蟻害を起こす可能性がある。
蟻害を防ぐには、床下空間と構造体を冬期の間冷たく保つことで冬期の蟻害を防止することが良い。また目視点検のしやすい床下構造とするか、その他の生き物と共生する床下空間とすることで暖かい季節の蟻害を防止することが良い。
従来の基礎形式においては、床下をコンクリートで密閉するなどしてもコンクリートの打ち継ぎ部分などの施工を確実にすることは難しいことである。
床暖房装置は建物の主要な部分である木材を含む床を暖める。薪ストーブやファンヒーターなどの直接暖房装置は室内の空気を暖めるが建物を直接暖めない。床暖房は地盤に近い部分の建物を暖めるため、建物の構成部材である木材が温かく蟻害を受けやすいという特徴が認められる。
さらにアメリカカンザイシロアリという外来種による被害も顕在化している。有効な予防策は提案されていないが、木材を暖めない構造とすることが現在採りうる最良の方法と言える。
つまり、温かい木製の床を構築してしまう床暖房装置を従来通りの床構造に設ける方法は蟻害対策が不十分である。蟻害は住まいの主要構造部分が消失することであり、充分に安全性が考慮された構造方法でなければならない。
【0022】
床暖房は暖かくなるまでに時間がかかり、温度調節がしずらいという特徴がある。そのため一般的には、エアコンなどの温風暖房機と床暖房を併用する。温風暖房機と床暖房とを併用するため煩雑で、利用者に面倒な使用感を抱かせるという課題がある。
【0023】
薪ストーブの課題の一つに、薪ストーブから壁面への離隔距離が大きいという課題がある。薪ストーブは装置の特徴から、燃焼炉の全面から放熱することが良い。そのため、薪ストーブの後方や側方からも高温の輻射放熱が行われるため、壁面より薪ストーブを60センチメートル程度離すことが必要とされている。しかしながら、限られた条件下では壁面に近づけてレイアウトすることが望まれる。そのため従来の薪ストーブでは、側面や背面を2重構造とすることで、離隔距離を少なくできるように配慮された薪ストーブが販売されている。
【0024】
躯体蓄熱冷暖房は鉄筋コンクリートの建物で実施されている。木造住宅では蓄熱体として活用できる躯体部分が地盤内の基礎構造体に限られるため、躯体蓄熱の運用方法がコストとつり合わないため実現に至らない。つまり、基礎構造体の活用方法に従来とは違う提案が必要である。また冬季は薪ストーブなどの暖房専用器具を使うものとし、その上で夏季にも快適な冷房装置が必要なのである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、前記実情に鑑み提案されたもので、1台の薪ストーブを戸建て住宅などに配設し、該薪ストーブで温風を生成し、蓄熱性構造体に蓄熱させる低温の輻射放熱暖房と、薪ストーブ本体や煙突からの熱放射とを組み合せて利用する複合暖房システムである。この複合暖房システムは、高温の薪ストーブは室内を素早く暖めることに適しており、低温の輻射放熱暖房は、建屋内の温度差を均質にすることに適している。特徴の異なる2つの暖房をひとつの熱源で、効率良く運転可能な暖房システムを暖房能力の大きい薪ストーブを用いて実現するものである。また暖候期には蓄熱性構造体に冷熱を蓄えることで、気温の低い深夜に冷熱を蓄え、気温の高い時間に放熱することで、冷房効率を高められる。深夜電力活用による経済効果や、太陽光発電の活用などに効果が得られる。
【0026】
請求項2に記載の薪ストーブとは、木を燃料とする輻射放熱暖房器具である。天然の木以外に木質ペレットなどの加工木質燃料を燃料とする輻射放熱暖房器具も含まれる。
【0027】
薪ストーブで燃焼の不安定化を起こさずに薪ストーブより熱を取り出すために請求項1に記載のダクト送風用の薪ストーブ温風生成ユニットを薪ストーブに配設する。ダクト送風用の薪ストーブ温風生成ユニットは燃焼炉を覆う箱体で、該箱体に2カ所の空気ダクト接続口を配設し、燃焼炉周囲を空気が巡回する空気巡回経路を形成する。2ヶ所の空気ダクト接続口は吸気口と排気口に分けられ、双方の接続口に空気ダクトを接続することが良い。また2ヶ所の接続口のうち一方に空気ダクトを接続し、他方を室内に開放しても良い。そうすることで空気ダクトの配管経路を単純化できる。空気ダクトには送風機を接続し、空気ダクトに送風することで温風を生成する。該ユニットは薪ストーブの放熱面の各面に配設可能である。上面は多くの温風が生成でき、上方への輻射放熱を少なくすることにも適している。側面は該ユニットを配設することで側面からの放熱を少なく出来るため薪ストーブの壁面からの離隔距離を小さくできる。側面については、薪ストーブの設置状況に合わせてオプションとして設定しても良い。必要に応じて設けることで、暖房能力を加減でき、壁面からの離隔距離を調整できる。
該ユニットで薪ストーブの燃焼炉の廻りに空気を循環させても、空気は熱容量が低いため燃焼炉の熱を多く奪うことがない。そのため燃焼炉内面の温度を適温に維持しつつ、燃焼炉外面より放熱される熱のみを取りだすことに適している。燃焼炉の内面側の温度が急に下がったり、部分的に温度が低くなったりすることがないため安定した燃焼が可能となる。
【0028】
請求項3に記載の薪ストーブ蓄熱性基礎構造体暖房は、室内に温風生成用兼暖房用薪ストーブを設置し、部屋の床に蓄熱性構造体が面しており、空気ダクトを蓄熱性構造体に埋設し、蓄熱性構造体内を巡回して配設する。巡回する空気ダクトの経路の途中に送風機を接続し、空気ダクトと送風機とダクト送風用薪ストーブ温風生成ユニットを接続し、送風機で該空気ダクト内と該ユニット内の空気を流通させて温風を生成し、該床に面する蓄熱性構造体を加熱させ、床面の輻射放熱により室内を暖房するものである。
【0029】
請求項1に記載の密実な床下を形成する基礎構造体は、床下に空間を形成することなく、床下が密実な状態を特徴とし、鉄筋コンクリートなどの固体で形成された建築物を地盤に定着させる基礎構造体である。該基礎構造体は埋め戻された土なども含むものである。該基礎構造体内に空気ダクトを循環して埋設させ、空気ダクト内を流通する空気の熱伝達により加熱または冷却される。暖房には室内に面して輻射放熱する放熱体である。冷房には断熱材で覆い保冷する。該基礎構造体の輻射放熱する部分は、熱容量が大きく放熱面積が大きく室内温度との差が小さいことを特徴とする。
【0030】
請求項1に記載の木造住宅の冷暖房蓄熱性基礎構造体は、蓄熱性基礎構造体に空気ダクトを埋設し、暖候期に該空気ダクトに冷房ラジエータを接続し、空気ダクト内に冷風を循環させることで蓄熱性基礎構造体を冷却し、該蓄熱性基礎構造体で冷熱を蓄熱する。一定時間保冷するため該蓄熱性基礎構造体は断熱材で覆うものとする。夜間に冷房ラジエータを運転することで、安価な深夜電力を活用し、気温の低い夜間のため冷房効率も高い。昼間の高温時に該蓄熱性基礎構造体内の空気ダクトに室内空気を送風し循環させることにより、室内を冷房することが出来る。蓄熱性構造体は質量が大きく熱容量が大なるため、多くの熱を蓄えることが出来る。この特徴により暖候期の夜間、安価な深夜電力を利用して蓄熱性構造体を冷却し、昼間に室内を冷房できる。つまり昼間のピーク電力を少なくすることが出来、冷房に掛かる電気代を節約できる。また太陽光発電は昼間に発電を行うが昼間留守にするなどしているときは蓄熱性構造体に冷熱を蓄え、夕方から夜間にかけて冷風を取り出し室内を冷房することが出来る。電力を自家消費することは、太陽光発電のメリットを高めることになる。多くの電力を必要とする暖候期に蓄熱により電力の自家消費を高めることができる。
【0031】
請求項1に記載の木造住宅の冷暖房蓄熱性基礎構造体は、寒候期には空気ダクトに温風を送風して暖房に活用し、暖候期には冷風を送風して冷房に活用する。そのため、温風用のダクトと冷風用のダクトを1つの住宅の基礎の別々の部分に埋設させる。暖房用の空気ダクトは蓄熱性基礎構造体表面より直接室内に輻射放熱させるためリビングなどの住居室に面する部分に埋設し、冷風用の空気ダクトは居室以外の部分に埋設し、断熱することで保冷して活用する。
ベタ基礎の蓄熱効果は主に暖房に使われるが、冷房に活用すると言うことでは結露の心配がある。また暖房時のように輻射放熱で活用すると言うことでは得られるメリットが少ないので一般的ではない。本提案では、冷房時は構造体からの輻射放熱ではなく一定時間保冷して冷風として取り出して冷房に活用することで、冷房効率を高めるメリットがある。また熱交換器を用いて熱を取り出すことで結露の発生を抑えることが出来る。
木造住宅の基礎構造体を居室の床面は暖房に活用し、居室以外の床面は冷房に活用することで、それぞれの場所で効果を得られる。木造住宅の基礎構造体をに活用することが可能となる。
【0032】
木造住宅の基礎構造体を蓄熱性基礎構造体として利用するため、請求項4に記載のL字断熱基礎コンクリートを提供する。L字断熱基礎コンクリートの縦断面形状はスラブオングレード型とする。スラブオングレード型は床下を土で埋める方式で重箱を伏せた基礎形式である。基礎コンクリートの外周部の立ち上げ部内面に断熱材を配設し、さらに基礎コンクリートの外周部の立ち上げ部の底面の埋め戻し土の下方に断熱材を敷設することでL字形状の断熱とする。L字断熱基礎コンクリートは、外気と接する部分や外気温の伝達量が大きい範囲に断熱材を配設し、外気温の伝達量の小さい範囲の地盤面には断熱材を配設しないことを特徴とする。このことは、外気より距離を遠ざけることで、必要な断熱性能を得るためである。また、地中は寒冷期は外気温よりも高く、暖候期は外気温よりも低くなっている。そのためエネルギーを使用することなく室温を安定化させる特徴がある。L字形状の断熱とすることで蓄熱容量を高め、地中熱を活用することも出来る。また地中よりシロアリが這い上がる可能性があるが、厚さ20センチメートル程度の鉄筋コンクリートによって、基礎コンクリートを貫通しないかぎり上部構造に辿りつけない。床下空間が無いため目視点検の必要な範囲を基礎の外周部の範囲に限定できる。基礎コンクリートは、打ち継ぎのない一体のコンクリートとすることが可能であるため、施工不良を起こしにくく防蟻安全性が高い。
【0033】
請求項1に記載の空気ダクトは温度上昇が早く、火災ややけどの心配があるが、空気ダクトを熱容量の高いコンクリートに埋設することで前記の心配を解消できる。なお空気ダクトは不燃のスチール製が良い。
【0034】
請求項2に記載の送風機は、高静圧時にも効率的なシロッコファンを用いるとよい。送風機を空気ダクトの巡回経路の途中に設け、騒音などの支障の少ない場所に設置し空気ダクトと接続する。また送風機の接続位置は高温の温風にさらされないように熱源から離れた位置が良い。また、送風機から騒音が空気ダクト接続口から多く発生するため、接続される空気ダクトが複数の曲がりと十分な長さを有することで、ファン騒音や排気騒音の消音効果を得ることができる。
【0035】
蓄熱性構造体加熱用薪ストーブ温風生成ユニットを、既存の薪ストーブに取り付けるためには、フックなどで固定することで容易に取付けが出きる。薪ストーブの側面については、側面用の該ユニットを付加できるように接続口を設けておき、必要に応じて付加可能なものとする。
【0036】
また薪ストーブを利用するときに薪ストーブの上面を使ってお湯を沸して加湿したり調理をしたいという要望がある。薪ストーブ温風生成ユニットは、薪ストーブの上面に配設させるほうが良いが、調理をするためには都合が悪い。そのため薪ストーブ温風生成ユニットの上面に高温の調理プレートを提供する。該調理ソケットは、薪ストーブ燃焼炉の上面と薪ストーブ温風生成ユニットの上面との間を接続する熱伝導体で、該熱伝導体は薪ストーブ温風生成ユニットの巡回経路の途中に配設するソケットである。該ソケットにより該ユニットの上面に効率良く薪ストーブの熱を伝えられ、該ソケットの上面を調理プレートと成すことで該ユニットを付加した薪ストーブで調理を可能にするものである。
調理ソケットを配設することで巡回温風の風量が減少するため、調理を行わないときは調理ソケットを外しておくか、調理ソケットを可動式とすることで温風の流通量の減少を防止する。調理を行うときは、調理ソケットをセットすることで、燃焼炉上面と薪ストーブ温風生成ユニットの上面とが熱伝導体により接続されて、調理ソケット上面にて効率良く調理が可能となる。
【発明の効果】
【0037】
この発明は前記した手段を用いることで、以下に説明するような効果を奏することができる。
木造住宅の基礎構造体を冷暖房蓄熱性基礎構造体とし、薪ストーブや冷房機で該冷暖房蓄熱性基礎構造体を加熱または冷却することで、1軒の木造住宅を効率良く冷暖房できる。
【0038】
蓄熱性基礎構造体は熱容量が大きいことを特徴とする。これは薪ストーブの火力が不安定なことにより生じる室温の変化を抑え、室温を一定にする効果がある。逆に薪ストーブ蓄熱性基礎構造体暖房は温度調節ができない。その点については薪ストーブの輻射放熱により室内を素早く暖めることができることで、暖房対象室の温度調節を柔軟に行うことができる。つまり薪ストーブと薪ストーブ蓄熱性基礎構造体暖房は双方の利点を活かし、欠点を補い合う都合の良い組み合わせとなるのである。
【0039】
本提案では、薪ストーブで発生する熱の一部を蓄熱性基礎構造体に送り込むため、薪ストーブと送風機だけで薪ストーブ蓄熱性基礎構造体暖房もできるため煩雑な操作が少ない。1台の薪ストーブの暖房能力が高いため可能となるのである。薪ストーブ蓄熱性基礎構造体暖房は薪ストーブを利用するのに必要な労力を増やすことなく、薪ストーブで薪ストーブ蓄熱性基礎構造体暖房を実現できる。つまり、薪ストーブと薪ストーブ蓄熱性基礎構造体暖房を併用することで、室内温度を平準化し、薪ストーブから離れたところも暖房可能となる。そのため1戸の戸建住宅を1台の薪ストーブで暖房可能となるのである。
【0040】
暖候期において、価格の安い深夜電力を利用して冷暖房蓄熱性基礎構造体を冷却することが出来る。夜間は外気温が低いため冷房効率が高い。夜間の冷房で得た冷熱を冷暖房蓄熱性基礎構造体に長時間蓄え昼間に室内に冷放熱させることが出来る。また蓄熱性構造体内の空気ダクトに送風し、室内に吹き出させることで冷風を室内に放出することで冷房効果を高めることが出来る。エネルギーを効率良く活用可能な冷房装置と出来る。同様の装置であるエコアイスと呼ばれる冷房装置は設置費用が高いため一般の住宅で実現されることは無いが、冷暖房蓄熱性基礎構造体を蓄熱体とすることで同様の効果を安価に実現できる。多数の一般の住宅に深夜電力で冷房可能な装置を提供できる。
薪ストーブに薪ストーブ温風生成ユニットを取り付けることで、壁面への離隔距離を少なくすることが可能となる。
【0041】
本提案は、温風を用いる暖房形式であるため、従来の木造住宅にそのまま配設することはメリットを生かせないことが多い。しかし基礎形式をL字断熱基礎コンクリートとし、空気ダクトを冷暖房蓄熱性基礎構造体に埋込むことで、様々な課題を解決し、さらに室内を快適にすることが可能なのである。
温風を用いる床暖房装置は、温水式と比較すると設置スペースやダクトの取回しなどで費用が多く掛かったり、設備上必要となる場所が多くなったりするが、L字断熱基礎コンクリートとし空気ダクトを該蓄熱性基礎構造体に埋設したときには、費用や場所の課題がない。
温水管をコンクリートに埋設する方法ではコンクリートの亀裂などにより、温水管が亀裂を生じさせる恐れがあるため、温水管をコンクリートに埋設することはあまりよくない。しかし空気ダクトはコンクリートの亀裂などによる空気漏れは支障とならないため基礎コンクリートに埋込む暖房装置としては、空気ダクトが適しているのである。つまり温風は、基礎コンクリートを直接加熱すること適した熱媒体である。冷暖房蓄熱性基礎構造体を放熱体に利用することで温水式よりも安く設置可能となる。
【0042】
木造住宅などの基礎構造を蓄熱性構造体となるL字断熱基礎コンクリートとすることで、シロアリの侵入経路を厚さ20センチメートル程度の鉄筋コンクリートで遮断できる。
また冷暖房蓄熱性基礎構造体を暖める暖房であるため、木材を暖めることがない。そのためシロアリ対策として有効である。
【0043】
また、送風機を止めたときには、薪ストーブが蓄熱性基礎構造体に熱を送り込まない単体の暖房器具として作用する。停電などが起きたときに装置を緊急停止しなくても良いこととなる。このことは床暖房用の燃焼器具が、床暖房専用でないために得られる利点なのである。燃焼器具の場合、床暖房に送風されないまま燃焼が継続すると、熱が燃焼器具から排出されないため、発熱により器具の損傷や火災などの危険がある。本提案では、燃焼器具が単体で室内暖房用として機能するため、床暖房装置が停止していても不具合を起こすことがない。
【0044】
カーボンニュートラルな薪を用い、薪ストーブを効率良く利用できるため、地球温暖化抑制に有効である。
【0045】
調理用ソケットを利用することで薪ストーブの上面を必要に応じて調理に活用できるものとすることができる。
【0046】
温風を利用するため送風騒音が生じるが、空気ダクトが十分な長さと曲がりを有するため送風騒音を軽減できる。
【0047】
L字断熱基礎コンクリートとすることで、地熱を活用可能となり夏に冷気供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】薪ストーブ温風生成ユニットの構成図
【図2】薪ストーブに薪ストーブ温風生成ユニットに取り付ける図
【図3】冷暖房蓄熱性基礎構造体のレイアウト図
【図4】薪ストーブと冷暖房蓄熱性基礎構造体を配設した住宅の断面図の1
【図5】薪ストーブと冷暖房蓄熱性基礎構造体を配設した住宅の断面図の2
【図6】薪ストーブ温風生成ユニットの調理ソケットを利用するときの断面図
【図7】薪ストーブ温風生成ユニットの調理ソケットを利用しないときの断面図
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1に、薪ストーブ2の燃焼炉の周囲に空気が流通可能な、薪ストーブ温風生成ユニット1を背面図、側面図、上面図の各図により示す。薪ストーブは燃焼炉の全周面より放熱する構造となっている。
薪ストーブ温風生成ユニット1は空気が流通する空間の高さは2から3センチメートル程度の箱体で良い。薪ストーブ温風生成ユニット1には、空気ダクト3を接続するための空気ダクト接続口4が2ヶ所あり、吸気口と排気口とに別けられる。薪ストーブ温風生成ユニット1の内部の空気が該薪ストーブの燃焼炉外周面を巡回するように隔て板20で仕切られており、吸気口と排気口に至る空気巡回経路21が燃焼炉の表面の外周面を巡回するものである。
薪ストーブ温風生成ユニットの箱体は燃焼炉の各面を覆って配設される。特に燃焼炉の上面と背面は有効である。上面については放熱量が多いため、多くの熱が得られる。背面は壁面に放熱されるため、壁面からの離隔距離を少なくできる。側面については、室内を暖める能力との兼ね合いで、必要かどうか検討すれば良い。そのため側面の薪ストーブ温風生成ユニットはオプションとして設定すれば良い。
【0050】
図2は、薪ストーブ2に取り付ける薪ストーブ温風生成ユニット1の図である。
薪ストーブの背面と上面とに覆い被せ、薪ストーブの側面については、必要に応じて追加で取り付け可能なものとする。また背面と側面との接続はアジャスト可能な接続部を設けると良い。
薪ストーブ温風生成ユニット1は、重箱状で内部に巡回経路を構成する仕切を配設し、該経路の両端に空気ダクト接続口4を配設する。薪ストーブと薪ストーブ温風生成ユニットの間には、一定の隙間が生じる。該隙間はガスケット材で塞ぐことも可能であるが、隙間を空気が流通しても支障を引き起すことは少ない。
【0051】
図3は、住宅内での薪ストーブ2を熱源とする冷暖房蓄熱性基礎構造体のレイアウト図である。暖房用の熱源の薪ストーブ2と送風機8に接続するスチール製空気ダクト3が居室内を循環する。居室はリビングや食堂などである。スチール製空気ダクト3の経路は居室を巡回する経路とする。
送風機8は建物の間取りに合わせて都合の良い場所に設置する。騒音が生じやすいため、居室以外の場所に設置することが良い。そのため送風機8はスチール製空気ダクト3の経路の途中に設けることが多い。また送風機8は薪ストーブ2より離れた位置に配設することで送風機8が高温にさらされないようにする。空気ダクトに多く用いられるスチールスパイラルダクトは、不燃で熱伝導性が高く温風ダクトに適している。
送風機8により循環せしめられる空気ダクト3内の空気は薪ストーブ2の燃焼炉の周囲を巡回する薪ストーブ温風生成ユニット1を経由することで、温風となり熱移送される。温風で基礎コンクリート6を暖め、基礎コンクリート6の輻射放熱により室内を暖房する。また図3では、基礎コンクリート6内の空気ダクトは閉鎖した循環回路となっているが、空気ダクト3の一方を開放しても良い。そうすることで、経路を単純化できる。
冷房用の冷房機24を屋外に設置し、冷房ラジエーター23と送風機8を空気ダクト3の経路の途中に配設する。空気ダクト3内の空気を循環させて基礎コンクリート6を冷却する。基礎コンクリート6は、主に夜間に冷却し、昼間から夕方以降に室内を冷房するため保冷する。そのため基礎コンクリート6は断熱材で覆う。室内を冷房するためには天井裏に配設した空気ダクト3に風量ダンパー9の開閉で空気を流通させ熱交換器26により室内に冷風を供給する。
【0052】
図4は、薪ストーブ2を居室内に設置し、室内の床面が基礎コンクリート6に面しており、該基礎コンクリート6内に空気ダクト3を埋設する、基礎コンクリート6で木造住宅の室内を冷暖房する構成図である。
L字断熱基礎コンクリートは、スラブオングレード型の基礎コンクリート6の外周面の立上がり部分の内側に断熱材7を配設する。また基礎コンクリート6外周面の立ち上げ部底面の面にも断熱材7を外気温の伝達量の大きい範囲に埋設する。外気温の影響を受けない地盤と床が接することで地熱を活用でき、床面を安定した温度に維持できる。また、夏期の冷気供給効果を得る。
薪ストーブ2には薪ストーブ温風生成ユニット1を取り付けて温風を生成する。
基礎コンクリート6内に埋設した空気ダクト3と薪ストーブ2に配設した薪ストーブ温風生成ユニット1とを空気ダクト3で接続する。基礎コンクリート6内の空気ダクト3には送風機8を接続し空気ダクト3と薪ストーブ温風生成ユニット1内の空気を循環させる。
居室は、薪ストーブ2と基礎コンクリート6より放熱される熱により暖められる。
冷房機24は屋外に設置し、冷房ラジエータ23を冷却し、冷房ラジエーター23は空気ダクト3に接続されており、空気ダクト3内の空気を送風機8で循環させることで蓄熱体27を冷却する。基礎コンクリート6は断熱材7で覆われており、一定時間の保冷を可能にする。冷房機24は主に気温の低い夜間に作動させることで冷房効率が高められる。また深夜電力を利用することで、電気代を節約できる。
冷却した基礎コンクリート6は、室内を冷房するときには、風量ダンパー9の開閉で室内側の空気ダクト3に送風し空気ダクト3内の空気を循環させ熱交換器26より、室内に冷風を供給し室内を冷房する。
図3と図4に示すように、住宅の基礎構造体の居室部分は基礎構造体が直接輻射放熱する床暖房となっており、居室以外の部分は、冷熱蓄熱用の保温された基礎構造体としている。ベタ基礎の防蟻性や防湿性などの効果に加えて蓄熱作用を夏と冬に活用するため冷房用の保温部分と暖房用の輻射放熱部分とに分けて活用する蓄熱性基礎構造体である。
【0053】
図5は、冷熱用の蓄熱体27を床下の基礎コンクリート6の下方に埋設したものである。
【0054】
図6は薪ストーブ温風生成ユニット1の調理ソケットの部分の断面図である。
下図は調理ソケット11を取り付ける前の状態を示し、上図は調理ソケット11を取り付けた図である。
薪ストーブ2の天板に調理ソケット11を固定できるソケット口22が開けられており、該ソケット口22は薪ストーブ温風生成ユニット1の経路の途中にある。調理ソケット11は、薪ストーブ2の上面と薪ストーブ温風生成ユニット1の上面を一体化する熱伝導体である。調理ソケット11により調理器具18に薪ストーブ の熱が効率良く伝えられ、調理に都合の良いものとできる。
【0055】
図7は、薪ストーブ温風生成ユニット1で調理ソケット22を利用しないときの断面図である。
下図はソケット口カバー12を取り付ける前の状態を示し、上図はソケット口カバー12を取り付けた図である。
調理ソケット11は温風の経路にあり、取外し可能なものとするため、ソケット口カバー12と交換できるようにする。温風の流通量の減少を防ぐためである。
【実施例】
【0056】
寒冷期には薪ストーブは暖房能力が大きく、一台の薪ストーブで住宅内全体を暖めるのに適しているため、一台の薪ストーブで住宅内を効率良く暖房する、家庭用の薪ストーブ複合暖房システムとして使うことが良い。
薪ストーブは火力が一定でないことが多く、設置場所によっては暖房の効果が得にくいなどの特徴があるが、温風を取り出し蓄熱構造体を加熱して暖房することで、さまざまな欠点を補うことができる。
一般的な住宅では各部屋ごとに間仕切られ、各部屋を個別に暖房する形式となっていることが多いため、暖房能力の大きい薪ストーブを導入しても効果が限定されることが多い。冷暖房蓄熱性基礎構造体の輻射放熱で暖房することで、1台の薪ストーブで住宅全体を暖房し、開放的な生活を実現できる。
暖候期には、蓄熱構造体に冷熱を蓄熱して活用する。冷熱は、気温の低い夜間に蓄熱構造体を冷却できるため、冷房の効率が良く、安価な深夜電力を利用して室内冷房に利用できる。また電力消費のピーク時に電力消費が少ないためピーク電力を下げる効果がある。つまり経済性の高い冷房装置とすることが出来る。また太陽光発電で昼間に発電した電力で蓄熱構造体に冷熱を蓄熱し、日没後に室内冷房のために利用することで、太陽光発電の利用価値を高めることが出来る。また太陽光発電では、寒冷期には蓄熱構造体を加熱し、日没後に利用しても良い。昼間に家を留守にする家庭でも太陽光発電を自家消費することが出来る。
【符号の説明】
【0057】
1 薪ストーブ温風生成ユニット
2 薪ストーブ
3 空気ダクト
4 空気ダクト接続口
5 鉄筋
6 基礎コンクリート
7 断熱材
8 送風機
9 風量ダンパー
10 露出空気ダクト
11 調理ソケット
12 ソケット口カバー
13 住宅
14 地盤
15 埋戻し土
16 土
17 煙突
18 調理器具
19 開閉窓
20 隔て板
21 空気巡回経路
22 ソケット口
23 冷房ラジエータ
24 冷房機
25 送風口
26 熱交換機
27 蓄熱体
28 排水ドレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造住宅の密実な床下を形成する基礎構造体で、該基礎構造体内に温風用と冷風用の空気ダクトとを循環させて埋設し、該空気ダクトに温風または冷風を流通させ、温風用の空気ダクトを埋設した部分は室内に面して該基礎構造体の輻射放熱により室内を暖房し、冷風用の空気ダクトを埋設した部分は断熱して蓄熱させ該空気ダクトから冷風を送風して冷房する、木造住宅の冷暖房蓄熱性基礎構造体。
【請求項2】
薪ストーブの燃焼炉を覆う箱体で、該燃焼炉と該箱体の間に空気が流通する空間を設け、該空間を燃焼炉外周面に沿った空気巡回経路に形成し、該空気巡回経路端部に空気ダクトを接続し、該空気巡回経路内の空気を前記空気ダクトに接続する送風機で流通させることで温風を生成し、前記空気ダクトに送出することで温風を生成する、薪ストーブ温風生成ユニット。
【請求項3】
木造建築の室内に請求項2に記載の薪ストーブ温風生成ユニットを取り付けた薪ストーブを設置し、前記室内に請求項1に記載の冷暖房蓄熱性基礎構造体が面し、前記薪ストーブと前記冷暖房蓄熱性基礎構造体に埋設した空気ダクトとを接続し、送風機を空気ダクトに接続して温風を流通させることで該冷暖房蓄熱性基礎構造体を加熱し、該冷暖房蓄熱性基礎構造体が輻射放熱して室内を暖める薪ストーブ蓄熱性基礎構造体暖房。
【請求項4】
請求項1に記載の蓄熱性基礎構造体は、逆重箱状の形状で基礎コンクリートの外周部の立ち上げ部内側面と立ち上げ部内側の底面に断熱材を配設し、外周面から離れた基礎コンクリート中央部の底面には断熱材を敷設せず、基礎コンクリートの内側を埋め戻して形成する、L字断熱基礎コンクリート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−197041(P2010−197041A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16413(P2010−16413)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(302033458)
【Fターム(参考)】