説明

薪ストーブ装置及び薪ストーブ暖房システム

【課題】二次燃焼機構を備えた薪ストーブにおいて、熱交換機構を備えて余剰熱回収や他所暖房並びに給湯等が確実に且つ効率的に実施する。
【解決手段】燃焼室11内の上部に二次燃焼用の空気供給口14を備えている薪ストーブ装置において、燃焼室内の底面全体を占めて上面を火床としている下方水室部2と、燃焼室上方における煙突部位置を除く部分の大部分を占める範囲に設けると共に、内部に熱交換用迂回管61を内装した上方水室部(上方水室31)と、二次燃焼用の空気供給口形成設置から外した位置で、前記下方水室部と上方水室部を連通させる連絡水室部4とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形燃料を燃焼させて室内暖房する所謂薪ストーブ(木質成形燃料:ペレット・ブリケットを燃料とするペレットストーブも含む)において、特に温水発生部を備え温水暖房や給湯を実現する薪ストーブ装置及び前記ストーブ装置を使用した暖房システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薪ストーブにおいて、燃焼室内外に水室を付設し、当該水室内に熱交換管を迂回させ、熱交換管を通過する水を温め、床暖房や給湯に使用する熱交換機構を備えている器具は公知である(特許文献1,2)。
【0003】
また薪ストーブにおいて、燃焼効率を高めるため、燃焼室内に一次燃焼で発生した未燃焼ガスを燃焼(二次燃焼)させる二次空気を供給する構造(二次燃焼機構)を備えた器具が知られている(特許文献3,特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−36830号公報。
【特許文献2】実開平1−120001号公報。
【特許文献3】特開2004−77060号公報。
【特許文献4】特開2007−285570号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二次燃焼機構を備えたストーブは、燃焼効率に優れていると共に、二次燃焼空気は燃焼ガスの煙突部からの排出に際して自然に吸引される構造で(特許文献3,4参照)、ある程度の一次燃焼が前提となる。このため当該ストーブを設置した室内の必要暖房熱量以上の燃焼によって余剰発熱量を生ずる結果となりやすい。
【0006】
この余剰発熱量は、特許文献1,2に開示される熱交換機構を付設することで有効に利用することができるが、特許文献1に開示されているように煙突部の周囲に水室を設けたのみでは、余剰熱回収が必ずしも適切に行われない。また特許文献2に開示されている様に燃焼室内の上部の煙突部入口個所に配置した場合には、二次燃焼機構の組み込みに不都合が生ずる。
【0007】
そこで本発明は二次燃焼機構を備えた薪ストーブにおいて、熱交換機構を備えて余剰熱回収や他所暖房並びに給湯等が確実に且つ効率的に実施できるストーブ装置及び暖房システムを提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)に係る薪ストーブ装置は、薪や木質成形燃料等を燃料とし、燃焼室内の上部に二次燃焼用の空気供給口を備えている薪ストーブ装置において、燃焼室内の底面全体を占めて上面を火床としている下方水室部と、燃焼室上方における煙突部位置を除く部分の大部分を占める範囲に設けると共に、内部に熱交換用迂回管を内装した上方水室部と、二次燃焼用の空気供給口形成設置から外した位置で、前記下方水室部と上方水室部を連通させる連絡水室部とを備えてなることを特徴とするものである。
【0009】
而して連通する上方水室部、下方水室部及び連絡水室部に水(伝達水)を満たし、燃焼室で、薪や木質成形燃料等を燃し、所定以上の燃焼が実現すると、二次空気の吸引がなされて二次燃焼が生じて、燃焼室内は相応の高温になり、燃焼室における連絡水室部を形成していない面からの輻射熱、並びにストーブ表面で暖められた空気対流で当該室内暖房がなされる。同時に上方水室部、下方水室部及び連絡水室部の伝達水は暖められて、所定の高温湯となる。更に高温湯である伝達水で上方水室部内の熱交換迂回管内を通過する水(用水)が温められ、前記温用水は相応の目的に使用することができる。
【0010】
また本発明(請求項2)に係る薪ストーブ装置は、下方水室部の上面を、連絡水室部との連通個所に向かって高くなるように傾斜して形成してなるもので、伝達水中に気泡が発生してもスムーズに上方水室部に移動し放出される。
【0011】
また本発明(請求項3)に係る薪ストーブ装置は、上方水室部と下方水室部と連絡水室部を一体に形成して、各水室部の壁部が燃焼室の内壁としてなるもので、ストーブ本体の一部が各水室部で形成されることになり、二次燃焼空気供給構造を所望のものとすることができ、二次燃焼効率の向上に容易に対応できる。
【0012】
また本発明(請求項4)に係る薪ストーブ装置は、 上方水室部を燃焼室外の上方に煙突部の通過部を除く部分の大部分を占める範囲に設けると共に、連結水室部が路燃焼室上壁を貫通して上方水室部に接続してなるもので、既存のストーブ装置に対して水室部を効果的に組み入れることができるもので、特に請求項7記載の発明のように、上方水室部が、燃焼室上方外側部分における上方水室と、燃焼室背面外側に添って設けた蓄熱水室とを備えてなることができ、これによって、室内の壁面近傍に設置されるストーブ装置において、壁面に近接して輻射熱が室内暖房に有効でないストーブ背面を覆うことになり、また伝達水の水量確保によって伝達水の熱容量を大きくできるものである。
【0013】
また本発明(請求項5,6)に係る薪ストーブ装置は、特に、連絡水室部を燃焼室内奥側隅部に柱状に形成してなり、また連絡水室部が、左右の柱状水室と、奥壁面に添うと共に、上面をV状として柱状水室間に設けた奥面水室とを備えてなるもので、燃焼室内天井付近に設けた二次燃焼空気口からの空気供給や、燃焼室上部に設けられた煙突部からの排煙、並びに燃焼室空間確保に支障をきたすことなく、上下水室部を連通できるものであり、奥面水室の形成によって燃焼室の内壁となる水室面積をさらに増大させることができる。
【0014】
また本発明(請求項8)に係る薪ストーブ暖房システムは、前記のストーブ装置と、ストーブ装置における上方水室部にオーバーフロー部を付設すると共に、上方水室部内に水位センサ及び温度センサを設けて、前記センサの検知値によって給水制御を行う給水機構と、上方水室部内の熱交換用迂回管と接続して別室配置の温水暖房器に温水を循環させる別室暖房機構とを備えてなることを特徴とするものである。
【0015】
而してストーブ装置で当該室内の暖房を実現すると共に、ストーブ装置における余剰発熱量を有効利用して別室の暖房も実現できるもので、特に伝達水の過熱や、水量不足に対しては、給水を実施して対応する。
【0016】
また本発明(請求項9,10)に係る薪ストーブ暖房システムは、上方水室部内の熱交換用迂回管に給水部と温水吐出部と接続して構成した給湯機構を、前記別室暖房機構に代えて設けたり、若しくは更に追加して設けたもので、別室暖房に代え、或いは別室暖房に加えて給湯設備として利用できるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記のとおり二次燃焼用空気供給を阻害することなく燃焼室内外に伝達水の水室部を設けると共に、上方水室部内に熱交換用迂回管を設けた薪ストーブ装置並びに前記薪ストーブ装置を使用した暖房システムで、ストーブの燃焼熱効率を高めるために二次燃焼を実現することによって生じ易い余剰発熱を有効に利用することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明(薪ストーブ装置)の実施形態の全体の外観図。
【図2】同各水室部の説明図。
【図3】同全体の断面図。
【図4】本発明の(薪ストーブ暖房システム)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示したストーブ装置は、ストーブ本体1に各水室部2,3,4を付設し、暖房システムは、前記ストーブ装置に給水機構5と、別室暖房機構6と、給湯機構7を組み合わせたものである。
【0020】
ストーブ本体1は、薪Aや木質成形燃料(粉砕木片や樹皮などを固めたペレットやブリケット)等を燃料とするもので、所定の大きさの燃焼室11と、前面扉12と、燃焼室11の上部に煙突部13を設けたもので、特に燃焼室11の上部に、二次燃焼用の空気供給口14を穿設した二次空気パイプ(外気導入用)15を、やや前方と煙突部13の入口近傍に配設してなるものである。
【0021】
下方水室部2は、燃焼室11内の底面全体を占めて上面を火床としているもので、特に上面は、後述する連絡水室部4との連通個所に向かって高くなるように傾斜して形成している。
【0022】
上方水室部3は、全体が側方視Γ状で、上方水室31と蓄熱水室32で構成され、上方水室31は、ストーブ本体1の燃焼室11の上外面全体における煙突部13の通過部33を除く部分を占める範囲に、適宜高さに設けたもので、蓄熱水室32は、燃焼室背面外側に添って設けたものである。
【0023】
連絡水室部4は、燃焼室11内の奥側両隅部に柱状に形成した柱状水室41と、左右の柱状水室41と、奥壁面に添うと共に、上面をV状として柱状水室41間に設けた奥面水室42と、柱状水室41から前方に向かって下方傾斜させた腕状水室43とを備えてなる。尚燃焼室内奥側の二次空気パイプ15は、柱状水室41間に設けてなる。
【0024】
給水機構5は、上方水室部3にオーバーフロー部51を付設すると共に、上方水室31内に所定のセンサ(水位センサ及び温度センサ)52を設け、更に給水栓53と接続して上方水室31に給水を行う給水路54を付設し、この給水路54に前記センサの検知値によって給水制御される給水弁55を介設してなるものである。
【0025】
別室暖房装置6は、上方水室31内に、フレキシブルチューブを適当長さ巻いて形成して熱交換用迂回管61と、別室Bに設置した温水暖房器62と、前記熱交換用迂回管61と温水暖房器62とを接続する循環路63と、循環路63に介装したポンプ64とで構成される。また下記給湯機構7を併設する場合には、温水暖房器62側に遮断弁65を介設する。尚温水暖房器62は、温風発生タイプでも床暖房配管によるものでも良い。
【0026】
給湯機構7は、前記の循環路63から分岐して熱交換用迂回管61と接続するもので、一方を給水部71と、他方を温水吐出部72と各々接続し、分岐管73に連動する開閉弁74を介設したものである。尚別室暖房機構6を設けずに、給湯機構単独で組み込む場合には、開閉弁74は単独で十分である。
【0027】
而して連通する上方水室部3、下方水室部2及び連絡水室部4に伝達水(熱伝達を介在する液体)を満たし、燃焼室11で従前とおり燃料Aを燃すと、ストーブ本体1においては、所定以上の燃焼が行われると、空気供給口14から二次空気の吸引がされて、燃焼室11内では二次燃焼が生ずる。
【0028】
この結果、燃焼室11内は相応の高温になり、ストーブ本体1の前面及び側面からの輻射熱、並びにストーブ表面で暖められた空気対流で当該室内の暖房がなされる。
【0029】
同時に上方水室部3、下方水室部2及び連絡水室部4の伝達水は暖められて所定の高温湯となり、更に高温湯である伝達水によって上方水室31内の熱交換用迂回管61内を通過する水(用水)が温められものである。
【0030】
特に下方水室部2の上面、奥面水室42の上面並びに腕状水室43の上面が、上方水室31と連通している柱状水室41に向かって高くなるように傾斜しているので、伝達水の加熱によって伝達水中に気泡が発生してもスムーズに上方水室31に移動し、大気中に放出される。
【0031】
伝達水が熱くなり所定温度以上となる場合には、給水機構5の給水弁55を開放して給水を実施し、また伝達水の水位が所定以上に低下した場合にも同様に給水を実施し、熱交換用迂回管61が常に伝達水に浸っているようにしている。
【0032】
そして熱交換用迂回管61を流れる用水は、伝達水によって暖められ、ポンプ64の駆動によって、別室Bに設置されている温水暖房器62に暖められた用水が供給され、別室Bの暖房を、単一のストーブ装置で実現することができたものである。
【0033】
更に用水を風呂、台所に湯として供給する場合には、別室温水暖房を中止(配管構成によって同時使用も当然可能である)し、給水部71から熱交換用迂回管61に用水を供給し、温水吐出部72から暖められた用水を取り出すことで、給湯設備としても使用することができたものである。
【0034】
このように本発明は、二次燃焼タイプのストーブ装置において特異な水室構成を採用して、別室暖房や給湯を実現したもので、ストーブの燃焼熱の有効利用を図ったものである。
【0035】
尚本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば前記実施形態は水室構造が、ストーブ本体内に下方水室部と連絡水室部を内装し、上方水室部をストーブ本体外に形成して、既存のストーブ装置を有効利用できる構成としているが、初めから上下水室部及び連絡水室部を一体に形成し、これらの水室部がストーブ本体の一部を形成するようにしても良い。
【0036】
更に連絡水室部の形状も、柱状水室に形成することなく、扁平面板状に形成しても良いし、腕状水室を設けなくとも良い等任意に定めことができるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 ストーブ本体
11 燃焼室
12 前面扉
13 煙突部
14 空気供給口
15 二次空気パイプ
2 下方水室部
3 上方水室部
31 上方水室
32 蓄熱水室
33 煙突通過部
4 連絡水室部
41 柱状水室
42 奥面水室
43 腕状水室
5 給水機構
51 オーバーフロー部
52 センサ(水位センサ及び温度センサ)
53 給水栓
54 給水路
55 給水弁
6 別室暖房装置
61 熱交換用迂回管
62 温水暖房器
63 循環路
64 ポンプ
65 遮断弁
7 給湯機構
71 給水部
72 温水吐出部
73 分岐管
74 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薪や木質成形燃料等を燃料とし、燃焼室内の上部に二次燃焼用の空気供給口を備えている薪ストーブ装置において、燃焼室内の底面全体を占めて上面を火床としている下方水室部と、燃焼室上方における煙突部位置を除く部分の大部分を占める範囲に設けると共に、内部に熱交換用迂回管を内装した上方水室部と、二次燃焼用の空気供給口形成設置から外した位置で、前記下方水室部と上方水室部を連通させる連絡水室部とを備えてなることを特徴とする薪ストーブ装置。
【請求項2】
下方水室部の上面を、連絡水室部との連通個所に向かって高くなるように傾斜して形成してなる請求項1記載の薪ストーブ装置。
【請求項3】
上方水室部と下方水室部と連絡水室部を一体に形成して、各水室部の壁部が燃焼室の内壁としてなる請求項1記載の薪ストーブ装置。
【請求項4】
上方水室部を燃焼室外の上方に煙突部の通過部を除く部分の大部分を占める範囲に設けると共に、連結水室部が燃焼室上壁を貫通して上方水室部に接続してなる請求項1記載の薪ストーブ装置。
【請求項5】
連絡水室部を、燃焼室内奥側隅部に、柱状に形成してなる請求項1乃至4記載の薪ストーブ装置。
【請求項6】
連絡水室部が、左右の柱状水室と、奥壁面に添うと共に、上面をV状として柱状水室間に設けた奥面水室とを備えてなる請求項5記載の薪ストーブ装置。
【請求項7】
上方水室部が、燃焼室上方外側部分における上方水室と、燃焼室背面外側に添って設けた蓄熱水室とを備えてなる請求項4乃至6記載の何れかの薪ストーブ装置。
【請求項8】
請求項1乃至7記載の何れかのストーブ装置と、前記ストーブ装置における上方水室部にオーバーフロー部を付設すると共に、上方水室部内に水位センサ及び温度センサを設けて、前記センサの検知値によって給水制御を行う給水機構と、上方水室部内の熱交換用迂回管と接続して別室配置の温水暖房器に温水を循環させる別室暖房機構とを備えてなることを特徴とする薪ストーブ暖房システム。
【請求項9】
請求項1乃至7記載の何れかのストーブ装置と、前記ストーブ装置における上方水室部にオーバーフロー部を付設すると共に、上方水室部内に水位センサ及び温度センサを設けて、前記センサの検知値によって給水制御を行う給水機構と、上方水室部内の熱交換用迂回管に給水部と温水吐出部と接続して構成した給湯機構とを備えてなることを特徴とする薪ストーブ暖房システム。
【請求項10】
別室暖房機構における温水循環路に、熱交換用迂回管を介在させて給水部と温水吐出部と接続して構成した給湯機構を付設してなる請求項8記載の薪ストーブ暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−223539(P2010−223539A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73451(P2009−73451)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(596169691)株式会社東新工務 (2)