説明

薬剤ディスペンサー装置の製造方法

本発明によれば、薬剤ディスペンサー装置の構成部分を処理する方法が提供され、構成部分は、装置の保管又は装置の使用中に薬剤と接触する、1以上の表面を有し、方法は構成部分を準備し、プラズマ被覆によって表面の少なくとも1つを覆い、薬剤の表面の付着又は汚染をそれによって抑制するステップを含み、プラズマ被覆の少なくとも一部はDCバイアス制御の下で実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤を投薬するためのディスペンサー装置を製造する方法、及び、その構成部分を処理する方法に関し、特に、だが決して排他的でなく、加圧されたディスペンサー装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分散媒中の薬剤を投薬する加圧されたディスペンサー装置を使用して、エアゾールとして吸入によって患者に対する薬剤を一般に投与することはよく知られている。そのような装置はしばしば加圧された計量式吸入器(pMDIs)と呼ばれ、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療のためにとても一般に使用される。
【0003】
この種のディスペンサー装置に関連した1つの問題は、装置の内面の有効な薬剤の吸収である。これは、次には装置の保管期間中の不安定な投薬及び/又は性能の損失ヘつながる。いくつかの実例で、有効な薬剤が微粒子の懸濁液のように存在する場合、薬微粒子のクラスタリングが生じる場合がある。
【0004】
有効な薬剤の表面への吸収を低下させるために採用された1つのアプローチは、装置の表面の特性を改質することであり、これは、伝統的に低エネルギー・ポリマーのスプレー・コーティングによって行われる。
【0005】
しかしながら、このプロセスは管理するのが難しく、また、多くの場合、表面のコーティングの品質は変動する。
【0006】
プラズマ重合によって被覆したコーティングがpMDI装置の様々な内部表面を提供することができることは、例えばEP0642992、EP1066073及びWO2008/146024から分かる。プラズマ重合は、低温技術であるから、非常に好ましい。
【0007】
しかしながら、本発明者らは同様に、従来技術のプラズマ重合技術に関連した欠点があり、また、利用することが経済的であり、受容できる物理的・化学的性質があるコーティングにつながる、実際的で商業上のアプローチを提供するため、新しく改善された技術を発展させる必要があることが分かった。
【0008】
欠点の例は、不揃いのコーティング被覆、重合された層を被覆させるために要する時間の長さ、及び、ディスペンサー装置での使用におけるコーティングのパフォーマンス特性を含む。
【0009】
さらなる欠点は、プラズマ重合プロセスの一部として生成されるプラズマ・コーティングの表面の、反応的な不飽和のサイトの再配置を可能にするため、プラズマ重合の後に、コーティングは一般的に、1〜7日間、棚に載せられ、調節されることである。
【0010】
製品を使用することができる前に、相当な長さの休み時間を必要とすることによって、製造工程を遅くすることに加えて、本発明者らは、水、水酸基及び大気の中にある種のような不適当な種は、休み時間の間に、プラズマをコーティングする表面(残りの反応サイト)に反応し/吸収しうることが分かった。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、少なくともその実施形態のうちのいくつかの中で、上記問題及びニーズに取り組む。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、薬剤ディスペンサー装置の構成部分を処理する方法が提供され、構成部分は、保管又は装置の使用中に薬剤と接触する、1以上の表面を有し、方法は、構成部分を用意し、プラズマ被覆によって表面の少なくとも1つを覆い、それによって、薬剤の表面付着又は汚染を抑制するステップを含み、そこで、少なくともプラズマ被覆の一部はDCバイアス制御の下で実行される。
【0013】
好ましくは、プラズマ被覆は、少なくとも1つのモノマーを重合するプラズマを含む。あるいは、無機のコーティングはプラズマ被覆でよい。
【0014】
このように、非常に効率的なプラズマ重合プロセスが提供され、最適の付着速度の一定のコーティングにつながる。
【0015】
DCバイアス制御は、範囲50-800ボルトのDCバイアス電圧で、好ましくは50-500ボルトの範囲で、最も好ましくは50-350ボルトの範囲を使用して実行されてよい。
【0016】
金属の構成部分については、構成部分は、モノマーをプラズマ重合するようなプラズマ被覆のステップの間にアースされることが好ましい。
【0017】
本発明者らは、構成部分が代わりに、RF電位でホールドされる場合には、生成されたプラズマは非常に激しくなり、コーティングを除去することが分かった。これは、構成部分が缶本体である実施形態中で特に問題である。
【0018】
プラズマ重合を実行することができる他の方法は、構成部分の電位がフロートすることを可能にすることである。
【0019】
これらの実施形態において、チャージが容易に放散され、コーティング種の引力が著しく低減され、弱い境界及び多孔性のコーティングにつながるので、このアプローチは、構成部分が金属の実施形態において、より好まれなかった。
【0020】
ポリマーのような絶縁材料から形成された構成部分は、フロートすることを可能とする。構成部分が缶本体である実施形態において、プラズマ被覆のステップの間、RF電位が缶本体内に位置する電極に印加されることは有利である。この配置は、特に、缶本体の内部の表面全体の上の一定のコーティングにつながることができる。
【0021】
有利に、プラズマ被覆のステップは、酸素が本質的な欠如状態で実行される。酸素の存在が重合されたコーティングに有害な効果があり、さらにいくつかの薬剤に有害な効果がありうることが分かった。
【0022】
有利に、プラズマ被覆によって生まれたコーティングは、モノマー又は他の前駆物質それ自身が酸素を含んでいない場合には、X線光電子分光法(XPS)によって測定される場合に、10At%未満の、好ましくは5At%未満の、最も好ましくは2At%未満の酸素含有量を有する。
【0023】
DCバイアス制御がプラズマ被覆が始まった後の期間を始められるのに対して、プラズマ被覆のステップは、DCバイアス制御なしで最初に実行されてよい。プラズマ重合被覆のステップは、前パワー制御を使用して、最初に実行されてよい。
【0024】
電力はモノマーのプラズマ重合中にプラズマに供給される。有利に、モノマーをプラズマ重合するステップは、モノマーの供給を維持する一方、プラズマに対する電源を切ることにより終了し、その結果、プラズマが電子の容量性の蓄積を使い果たすことにより縮小し、それによってコーティングの表面のクエンチングを提供する。
【0025】
このように、電源のスイッチが切られた後、容量性蓄積の中の電子が放出されるとともに、プラズマはゆっくり減少する。これは、表面を洗い流す強さを減少する、部分的にイオン化されたプラズマにつながる。
【0026】
最後に、表面は純粋で脱イオン化されたモノマーによって洗い流される。組み合わせられて、これは、プラズマ重合のサイト(一般的にプラズマチェンバー)から取り除かれる構成部分に先立って安定した表面を形成するために、不飽和のサイトを「完了する」目覚ましい効果がある。
【0027】
これは、構成部分を使用することができる前に、休止時間のいかなる必要性の除去という重要な利点を提供する。モノマーの供給は、プラズマに対する電源が切られた後、5秒から10分の範囲の中で維持されてよい。好ましくは、供給は、30〜60秒の範囲の中で一時に維持される。
【0028】
モノマーは、炭化水素、フルオロカーボン、シラン又はシロキサンの1以上でよい。単一のモノマーは使用されてもよい。あるいは、モノマーの混合物が利用されてもよい。適切なパーフルオロカーボン前駆物質は、nが1〜8の範囲のCnF2n+2、及び、化学物質HFA134a(1,1,1,2,-テトラフルオロエタン)及びHFA227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)を含み、それらは、一般に薬剤ディスペンサー装置の中で推進剤として使用される。
【0029】
環式パーフルオロカーボンは使用されてもよく。また、特に好ましい実施形態はC4F8である。不飽和のパーフルオロカーボンが使用されてもよい。
【0030】
前駆物質が炭化水素である実施形態の中で、nが1から12である化学式CnH2n+2のアルカンを使用できる。メタンとエタンは特に好ましい。C3H8、C4H10及びC5H12は、好ましい実施形態である。アルケン、アルキン及び環式炭化水素が前駆物質として使用されてもよい。
【0031】
コーティングは任意の所要の厚さになりえる。一般的に、厚さは、15から500nmの範囲であり、15から125nmの範囲が好ましい。しかしながら、他の厚さのコーティングを備えることは可能であり、また、300-400nmの範囲の厚さは商業上魅力的である。
【0032】
構成部分は、モノマーをプラズマ重合するステップの前に、洗浄するステップを行ってよい。好ましくは、洗浄するステップはプラズマ・クリーニング処理を使用し、また、最も好ましくは、プラズマはアルゴンを使用して形成される。
【0033】
構成部分の表面の酸化が、次のステップを実行することをより困難にするので、酸素が任意の洗浄するステップから除外されることは重要である。さらに、処理装置の壁へ吸収されたいかなる酸素も外に浸出し、次に被覆したプラズマ・コーティングを分離し、続くプラズマ・コーティング・ステップを同様により困難で、より不利にする。
【0034】
構成部分の表面は、モノマーをプラズマ重合するステップの前に、表面改質されてよく、そこで、表面改質は、表面改質の後に、金属フッ化物及び/又は金属炭化物部分を実質的に含む表面につながる、酸素の本質的な欠如を含む条件の下で、前駆物質を含むフッ素及び/又は炭素を使用して、プラズマ処理ステップで行なわれる。
【0035】
表面改質ステップは、モノマーをプラズマ重合するステップの前に実行され、任意の洗浄するステップの後に概して実行される。概して、反応的なフッ素及び/又は炭素へ、前駆物質を含むフッ素及び/又は炭素を効率的に分離するために、より強いプラズマは表面改質ステップの間に使用される。
【0036】
上に説明されたパーフルオロカーボン及び炭化水素も、表面改質ステップに使用されてもよい。メタン、エタン及びCF4、C2F6、C3F8及びC4F8は、特に好ましい。表面改質及び続くモノマーのプラズマ重合は、単一の連続工程を形成してよい。
【0037】
1つの実施形態において、プラズマは、表面改質を遂げるために、DCバイアスか前パワー制御のいずれかを使用して、最初に実行され、モノマーをプラズマ重合するステップを達成するために、後で、DCバイアス制御が、維持されるか始められる。
【0038】
本発明の2番目の態様によれば、薬剤ディスペンサー装置を製造する方法が提供され、方法は、本発明の第1の態様による方法でディスペンサー装置の構成部分を処理し、装置の他の構成部分を用意し、組み立てられた薬剤ディスペンサー装置を提供するために構成部分を組み立てるステップを含む。
【0039】
本発明の3番目の態様によれば、薬剤を投薬するためのディスペンサー装置が提供され、少なくとも1つの構成部分を含む装置は、本発明の第1の態様による方法で処理される。
【0040】
構成部分は、XPSによって測定された場合に2At%未満の酸素含有量を有するプラズマ被覆によって生成されたコーティング有してよい。
【0041】
本発明の4番目の態様によれば、薬剤を投薬するためのディスペンサー装置が提供され、装置は、保管又は装置の使用中に薬剤と接触する1つ以上の表面を有する構成部分を含み、その中で、前記表面は、XPSによって測定された場合、2At%未満の酸素含有量を有するプラズマ被覆したコーティングを有する。
【0042】
本発明が上に記述された一方、それは次の明細書、図面又は請求項の中で述べられた任意の創造性のある組み合わせまで及ぶ。
【0043】
本発明に従う、方法及びディスペンサー装置の実施形態は、今、添付図面に関して記述される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、加圧されたディスペンサー装置の断面図である。
【図2】図2は、缶本体を覆うための配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、10で概して示された、加圧されたディスペンサー装置を表し、加圧薬剤収納配置14を受け入れるハウジング12を含む。ハウジング12は、中に加圧薬剤収納配置14が配置される開放端円筒状部12aと、吹き口として機能する開放端通路12bを含む。
【0046】
ハウジング12は、さらに、加圧薬剤収納配置のバルブ・ステムを受け入れる通路12eを有するソケット12dを支持する内壁を12c含む。通路12eは、開放端通路12bによって定義された出口通路と次に連通する開口12fと連通する。
【0047】
内壁12cは、開放端通路12bの中へのハウジング12の上部のエリアからエアーが流れることを可能にする、そこに形成された多くの開口12gを有する
【0048】
加圧薬剤収納配置14の構造及び動作は、今より詳細に記述される。配置14は、フェルール18上でかしめられる缶本体16を含む。20で概して示された、測定弁機構が、フェルール18に搭載される。
【0049】
測定弁機構20はバルブ・ステム22を含み、その一部はバルブ部24に配置される。バルブ・ステム22及びバルブ部24はバルブ・ハウジング26に位置し、また、バルブ・ステム22は、図1の中で示される閉位置へバルブ・ステム22にバイアスをかけるスプリング28の動作に対して、軸方向にそこで往復可能である。
【0050】
測定する弁機構20は、さらに、内部及び外部のシール32、34と共に、バルブ部24及びバルブ・ステム22の一部によって規定される測定チェンバー30を含む。内部のシール32は、バルブ・ハウジング26に対するバルブ部24を密閉するために作用し、バルブ・ハウジング26の内部36から測定チェンバー30を分割する。
【0051】
外部のシール34は、フェルール18に対するバルブ部24及びバルブ・ハウジング26を密閉するために作用し、加圧薬剤収納配置14の外部から、測定チェンバー30をさらに密閉する。
【0052】
さらに密閉は、同じかしめ上のフェルール18に対する缶本体16を密閉するために作用する缶本体シール42によって提供される。バルブ・ハウジング26は、バルブ・ハウジング26の内部36が缶本体16の内部40と連通することを可能にする複数のスロット38を有する。
【0053】
バルブ・ステム22は、2つのチャンネル44及び46を有する。各チャンネル、44と46は、縦方向の通路及び横方向の通路を含む。
【0054】
バルブ・ステム・チャンネル44の横方向の通路が配置され、その結果、加圧薬剤収納配置14が、図1の中で示されるようなその閉位置にある場合には、測定チェンバー30は、バルブ・ハウジング26の内部36と連通し、それにより、缶本体16の内部40と連通する。
【0055】
より詳細に下に説明されるように、測定チェンバー30の体積は、一回量で投与される流体を収納する薬剤の体積に相当する。図1の中で示される閉位置において、服用量は、測定チェンバー30に完全に含まれており、外部のシール34の作用により、加圧薬剤収納配置14の外部へ漏れることがない。
【0056】
薬剤を含む流体の服用量をリリースするために、バルブ・ステム22は、スプリング28のバイアスをかける動作に対して、バルブ・ステム・チャンネル44が測定チェンバー30ともはや連通しない程度までバルブ・ハウジング26の内部36に押し込まれる。
【0057】
この投薬する位置において、バルブ・ステム22のバルブ・ステム・チャンネル46は測定チェンバー30と連通し、それによって、バルブ・ステム22を介して投薬される、測定チェンバー30内の薬剤を含む流体の服用量を割り当てるよう、バルブ・ステム22は設計される。
【0058】
その後、服用量は、装置を出るために、通路12e、開口12f、及び、開放端通路12bを通り抜ける。
【0059】
バルブ・ステム22が続いてリリースされる場合には、スプリング28のバイアスをかける作用は、図1の中で示される位置の方へ、バルブ・ステム22を後ろに移動させる。
【0060】
したがって、バルブ・ステム・チャンネル46は、測定チェンバー30が外部に対して密閉される位置を仮定し、バルブ・ステム・チャンネル44は、バルブ・ハウジング26の内部36が測定チェンバー30と連通する位置を仮定する。
【0061】
缶本体16の内部40の相対的に高い圧力と測定チェンバー30の相対的に低い圧力の間の圧力差のために、測定チェンバー30は、薬剤を含む流体の他の服用量で再び満たされる。
【0062】
図1の中で示される、加圧されたディスペンサー装置10はそのような装置の1つの例であり、それらの正確な動作モードの中のより大きくか、より小さい程度に異なる他の多くの測定装置が知られている。
【0063】
本発明は、図1の中で示される装置、又は他の加圧されたディスペンサー装置の動作モードに対するクレームを主張しない。もっと正確に言えば、本発明は、装置の内面に対する薬剤の損失を抑制するコーティングがその上にある装置とその構成部分、及び、そのような装置及び構成部分に関する製造方法を提供する。
【0064】
本発明が適用される方法の読者の理解を支援するために、図1の中で示される装置が提供される。熟練した読者は、本発明は、図1の中で示されるものより加圧されたディスペンサー装置の他のデザインに適用することができ、実際は、加圧されたディスペンサー装置より異なるタイプの薬剤ディスペンサー装置に適用することができることを十分に理解するだろう。
【0065】
本発明は、様々なプラズマ重合コーティングを提供することによって、加圧されたディスペンサー装置の内面に対する薬剤の損失を抑制するコーティングを被覆させる方法を提供する。
【0066】
図2は、缶本体50がプラズマ重合によって覆われる配置を示す。配置において、缶本体はアースで維持され、また、細長いRF電極52は、缶本体50の縦方向の軸に沿って缶本体50の内部へ実質的に伸張する。
【0067】
缶本体50は、ガス/モノマー・フィード入口56と、真空ポンプ(不図示)を使用して、ガスを排出する出口58とを有する、プラズマ反応槽54に位置する。適切なモノマーは、一般的に1以上のマスフローコントローラを含む適切な放出源(不図示)からガス/モノマー・フィード入口56を介して缶本体50へ送達される。
【0068】
モノマーが缶本体50へ流れ出す一方、プラズマを衝突及び維持することによって、重合されたコーティングは、缶本体50の内部の表面に堆積させられる。一般的に、13.56MHzのRFパワーはRF電極52に印加され、プラズマは当技術においてよく知られている技術を使用して衝突する。
【0069】
他のRF周波数は使用されてよく、また、4kHzから20MHzの範囲以内の周波数も、連続パワー又はパルス・モードの一方で使用されてよい。プラズマは、缶本体50の内部の表面に重合されたモノマーの薄いコーティングを堆積させる。1x10-2から10mbarの範囲のガス圧力を使用することができることが分かった。0.1と2ワットcm-2の間の出力密度が用いられてよい。
【0070】
好ましい実施形態において、重合されたコーティングの被覆前に、最初の表面改質を提供するための、相対的に強いプラズマを生成するために、電力はRF電極52に供給される。
【0071】
金属フッ素部分を有するフッ素で処理された表面、及び、次のフルオロカーボン重合コーティングを生成するために、前駆物質ガスは、パーフルオロカーボンでよく、あるいは、金属炭化物部分を有する改質された表面、及び、次の炭化水素重合コーティングを提供するために使用される炭化水素前駆物質でよい。
【0072】
代表的な作業条件の下では、缶本体50の内面の中の酸素含有量は、処理の開始の2分以内に、XPSによって測定された場合に、40〜44At%から8〜10At%にまで落ちるのが分かる。目標は酸化物レベルをできるだけ低く駆動することである。
【0073】
プロセスの残りについては、電力供給は切り替えられるか、又はDCバイアスモードで維持され、改質された表面はプラズマに重合された層で覆われる。
【0074】
図2の中で示される配置で、アースされた缶本体50に位置したRF電極52では、缶が次第に覆われるにつれて、缶の有効な電気抵抗は増加する。その結果、コーティングの厚さが増加するにつれて、アースされた缶への通常の電子経路は、低減される。
【0075】
前パワー操作は、薬剤ディスペンサー装置のための缶本体のような、構成部分を覆う従来技術のプラズマ重合プロセスの中で一般的に使用される。
【0076】
しかしながら、通常の前パワー操作の下では、処理が進むにつれて、電源からの電子放出は削減され、自己DCバイアスが低減され、そして、プラズマ強度は低下し、弱い多孔性のコーティングにつながる。
【0077】
対照的に、DCバイアス制御の操作によって、DCバイアスは固定され、そして、次には一定のプラズマ密度を維持する一定の電子放出が維持される。これは、コーティングの横の広がりの点から、及び、コーティングに深さの点からの両方で、一定の付着速度、及び、高品質で一定のコーティングを提供する。
【0078】
所要の厚さが得られるまで、コーティングのこの安定した速度は維持することができる。一般的に所要の厚さは、15〜200nmの範囲であるが、本発明はこの点に関して制限されない。
【0079】
プロセスの終わりに、コーティングのプラズマ重合のDCバイアス制御のさらなる利点に出会う。それは、1〜7日の間保管され、その結果、コーティング上の反応的な不飽和の表面サイトが飽和する、コーティングされた構成部分のための従来技術において代表的である。
【0080】
図2に関して記述されたプロセスにおいて、電源及びDCバイアスモードのスイッチは単に切ることができ、ガスのモノマーの供給は、一般的に、5秒から10分までの範囲、好ましくは、30秒から1分までの範囲にある期間の間その後流れることができる。
【0081】
コンデンサ中の電子が使い果たされるにつれて、プラズマの強度は徐々に減衰し、表面が、きれいで、脱イオン化されたモノマーで洗い流されるまで、表面が、相対的に若干のより大きなイオン化された種を含んでいないプラズマで洗い流されることを可能にする。
【0082】
効果は、要求される不飽和に対して、次の休み時間なしで、コーティングする構成部分が、プラズマ反応槽54から回収することができる反応しないポリマー及びモノマーを伴うコーティングを「完了する」ことである。
【0083】
処理される構成部分がアースされ、分離したRF電極が使用される、図2の中で示された構成は、ポリマー・コーティングをプラズマ重合するための好ましい構成である。さらに、構成は前の表面改質ステップに適している。
【0084】
表面改質ステップ及び次のプラズマ重合ステップの両方で同じ構成を使用する利点は、一連の作業の一部として2つのステップを実行することができるということである。
【0085】
表面改質ステップの前駆物質として、そしてさらに、プラズマ・コーティング・ステップのモノマー・ガスとして両方で、ガスを使用することができるとき、それは特に有利である。
【0086】
構成部分の表面が金属フッ化物部分に変換される場合には、前駆物質は、CF4、C2F6、C3F8、C4F8、HFA134a及びHFA227になりえる。構成部分表面の変性が金属炭化物層を生むことが意図される場合には、前駆物質/モノマーはメタン又はエタンであることが好まれるが、CH4からC6H14までの範囲の炭化水素を利用することができる。
【0087】
本発明によって処理された構成部分は、ポリマー被覆ステップの前に前洗浄ステップにさらされてよい(表面改質ステップが利用される場合には、洗浄するステップはさらに表面改質ステップの前にある)。
【0088】
酸素を利用する前洗浄ステップを使用することは、従来技術において一般的である。本発明者らは、前洗浄ステップで、又は、構成部分の処理の中の実際は他のところでの、酸素の使用は、非常に不利であることを理解した。
【0089】
本発明者らは、酸素の存在が、被覆したコーティングの増加、及び、それらの付着に有害であることを知った。例えば、プラズマ反応槽の壁及び他の部分に吸収された酸素は、コーティング及び/又はモノマーを分離するために外に浸出することができ、それは、ポリマーに有害であり、処理時間を増加させる。
【0090】
したがって、いかなる前洗浄ステップも酸素を遮断するべきである。特に有用な前洗浄ステップは、表面改質ステップ前に構成部分を清掃するために、アルゴン・プラズマを使用する。
【0091】
図2の中で示される実施形態は、缶が接地電極として作用する缶処理プロセスである。これは、特に好結果を提供することが分かった。他のコーティングの構成は可能である。例えば、他の構成において、缶はRF電極として作用してよい。
【0092】
しかしながら、実質的に密閉空間を有する缶のような構成部分では、非常に強いプラズマが生成される「中空陰極効果」が生じる場合があるので、この構成は不利になりえる。
【0093】
このプラズマは、いかなる重合コーティングも、付着速度に匹敵する速度でプラズマによって除去されるような強度になりえる。それは、缶が2つの電極間の浮遊の電位にある他の構成を使用する従来技術において一般的である。
【0094】
しかしながら、本発明者らは、表面電荷をホールドすることができず、それどころか、放散するので、構成部分が金属の場合、これは非常に不利であることを理解した。その結果、イオンのコーティング種の魅力が最小限にされ、弱い結合で多孔性の缶が、減少した付着速度で生成されることが分かる。
【0095】
説明された炭化水素及びパーフルオロカーボンの範囲のプラズマ重合によって覆われたアルミニウム缶本体は、105から128°の範囲の接触角(1μlの水小滴の使用)を示した。完成したコーティングのXPSスペクトルは、存在する種は、主として非常に稠密なマトリックス中の結合から成り、C-O結合及び他の酸素官能性として2.0At%未満の酸素を示す。アルミニウムは露出されない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤ディスペンサー装置の構成部分を処理する方法であって、
前記構成部分は、前記装置の保管又は使用中に前記薬剤と接触する、1以上の表面を有し、
前記方法は、
前記構成部分を用意し、
プラズマ被覆によって前記表面の少なくとも1つを覆い、前記薬剤の表面の付着又は汚染を、それによって抑制する、ステップを含み、
前記プラズマ被覆の少なくとも一部はDCバイアス制御の下で実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記プラズマ被覆は、少なくとも1つのモノマーのプラズマ重合を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無機コーティングはプラズマ被覆であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
DCバイアス制御は、50〜800ボルトの範囲、好ましくは50〜500ボルトの範囲、最も好ましくは50〜350ボルト範囲のDCバイアス電圧を使用して実行されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記構成部分は前記プラズマ被覆のステップの間にアースされることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記構成部分は缶本体であり、前記プラズマ被覆のステップの間、RF電位は、前記缶本体内に位置する電極に印加されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プラズマ被覆のステップは、酸素が実質的に欠如した状態で実行されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記プラズマ被覆によって生成された前記コーティングは、XPSによって測定されたとき、10%未満、好ましくは5%未満、最も好ましくは2%未満の酸素含有量を有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
プラズマ被覆が始まった後の期間、DCバイアス制御が始められるのに対して、前記プラズマ被覆のステップは、DCバイアス制御なしで、好ましくは前パワー制御を使用して、最初に実行されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
電力は前記モノマーをプラズマ重合する前記ステップの間に前記プラズマに供給され、
前記ステップは、前記プラズマが電子の容量性貯蔵を使い果たすことにより縮小するように、前記モノマーの供給を維持する間に、前記プラズマに供給された前記電源を切ることにより完了し、
それによってコーティングの表面の焼入れを提供することを特徴とする請求項2から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのモノマーは、炭化水素、フルオロカーボン、シラン又はシロキサンの1以上であることを特徴とする請求項2から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記モノマーはパーフルオロカーボンであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記モノマーはエタン又はC4F8であることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
薬剤ディスペンサー装置を製造する方法であって、
前記方法は、
請求項1から13の任意の1項による方法で、前記ディスペンサー装置の構成部分を処理し、
前記装置の他の構成部分を用意し、
組み立てられた薬剤ディスペンサー装置を提供するために前記構成部分を組み立てる、ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
薬剤を投薬するためのディスペンサー装置であって、
前記装置は、請求項1から13の任意の1項による方法で処理された、少なくとも1つの構成部分を含むことを特徴とするディスペンサー装置。
【請求項16】
前記構成部分は、XPSによって測定されたとき、2%未満の酸素含有量を有する前記プラズマ被覆によって生成されたコーティングを有することを特徴とする請求項15に記載のディスペンサー装置。
【請求項17】
添付図面に関連してここに実質的に記述された方法又はディスペンサー装置。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−520267(P2013−520267A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554417(P2012−554417)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050352
【国際公開番号】WO2011/104541
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512220916)ポータル メディカル リミテッド (2)