説明

薬剤散布方法及びその方法に使用する薬剤散布ノズル

【課題】クズ株、コマツナギ、ニセアカシア等の多年生草本類や樹木類を除去するための除草剤を、伐採することなく、効率的に散布できる薬剤散布方法及びその方法に使用する薬剤散布ノズルを提供する。
【解決手段】本発明に係る薬剤散布方法では、対象植物の形成層に至るまでの表皮を剥がし、前記表皮の内側が露出した部分に対し薬液を散布する。前記対象植物が、クズ株、コマツナギ、ニセアカシアのいずれかであってもよい。また、本発明に係る薬剤散布ノズルでは、長尺ロッドの先端に薬液の噴出口を設けるとともに、前記噴出口の近傍に、切刃を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クズ株、コマツナギ、ニセアカシア等の多年生草本類や樹木類を除去するための除草剤を効率的に散布するための薬剤散布方法及びその方法に使用する薬剤散布ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
農耕地における農作物や、ゴルフ場における芝などの育成目的植物を成長させるにあたり、通常、育成目的植物以外の植物(いわゆる雑草)は、育成目的となる植物の成長を阻害するものとして除去される。そして、その除去方法として、通常、除草剤を散布する方法が採用されている。
【0003】
ただし、除草剤は薬剤のタイプによって成分を吸収する部位が異なり、茎葉処理型や土壌処理型等の処理方法がある。また、茎葉処理を行う場合、茎や葉の断面に薬液を塗布しなければならないものの多いが、刈取り作業と塗布作業を別々に行うことは非効率的である。そこで、刈取り作業と同時に、刈取った草の茎断面に薬剤を塗布できる装置も考案されている。例えば、実開昭60−133732号公報には、受刃と刈刃との間から薬剤等の液状体を流出して草茎の切株部に供給する液状体供給機構を具備して構成したレシプロ形刈取装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−133732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クズ株等の多年生草本類や、コマツナギ、ニセアカシア等の樹木類にも、樹幹もしくは根系を切断(伐採)してその切断面に薬液を塗布しなければ薬効が見られないものが多い。そして、その場合に、伐採作業に加え薬液塗布作業を行うことは、上記の草を刈取る場合と同様、非効率的である。しかしながら、液状体供給機構を備える従来の刈取装置では、幹や根系が太い多年生草本類や樹木類を伐採することはできず、それらの伐採作業と同時に薬液を塗布することはできなかった。また、多年生草本類や樹木類の伐採は重労働であることから、その作業の低減が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、クズ株、コマツナギ、ニセアカシア等の多年生草本類や樹木類を除去するための除草剤を、伐採することなく、効率的に散布できる薬剤散布方法及びその方法に使用する薬剤散布ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る薬剤散布方法では、対象植物の形成層に至るまでの表皮を剥がし、前記表皮の内側が露出した部分に対し薬液を散布する。
【0008】
前記対象植物が、クズ株、コマツナギ、ニセアカシアのいずれかであってもよい。
【0009】
本発明に係る薬剤散布ノズルでは、長尺ロッドの先端に薬液の噴出口を設けるとともに、前記噴出口の近傍に、切刃を固定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る薬剤散布方法によれば、切断面に薬液を塗布しなければ薬効が見られない多年生草本類や樹木類であっても、形成層に至るまでの表皮を環状に剥がし、表皮の内側が露出した部分に対しに薬液を散布すれば、樹幹を伐採することなく、伐採した場合と同様の効果を得ることができる。
【0011】
本発明に係る剤散布方法の対象植物は、幹や根系が太いものであってその切断面に薬液を塗布することで薬効を得られるものであればよいが、特に、クズ株、コマツナギ、ニセアカシアが好適である。
【0012】
本発明に係る剤散布ノズルでは、薬液の噴出口と切刃が長尺ロッドに一体化されていることにより、対象植物の剥皮と薬液の散布を同一の器具で効率良く行うことができる。しかも、噴出口と切刃は長尺ロッドに設けられていることから、作業者が起立したままの姿勢で一連の作業を行うことが可能となり、大幅な作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る薬剤散布方法の工程を概念的に示し、(a)は作業が行われる前の薬剤散布ノズルと樹木の状態を示す図、(b)は剥皮作業が行われている状態を示す図、(c)は薬剤が散布されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図を参照しながら、本発明に係る薬剤散布方法を、本発明に係る薬剤散布ノズルを用いて行う実施例について説明する。
この実施例における散布方法で用いられる薬剤散布ノズルは、長尺のロッド1の先端に薬液の噴出口2を設けるとともに、噴出口2の近傍に、切刃3を固定したものである。長尺ロッド1は、作業者が腰をかがめることなく起立した姿勢のまま、後述の剥皮作業や薬剤散布作業を行うことができる程度の長さがあればよい。ただし、取り扱い性を損なわない程度である必要があり、1〜1.5mとすることが好ましい。噴出口2は、公知の除草剤散布用ノズルを用いることができる。切刃3は、樹木の表皮を剥がすことのできる程度の強度と形状を持つものであればよいが、0.5〜1cm程度の厚みを持ち、刃の部分が凹状に湾曲したもの例えば、三日月形に大きく湾曲した鎌の刃の形状が好ましい。
【0015】
この散布方法では、まず、切刃3を利用して、排除する対象植物である樹木4の形成層に至るまでの表皮を剥がす。この剥皮作業においては、切刃3を略水平とし凹んでいる刃の部分を樹木4の表面に差し込み、略水平の状態を保ったまま鉛直方向に沿って引き上げ、或いは押し下げればよい。すると、切刃3の刃の部分が接していた部位は上方、或いは下方にめくれ、樹木の形成層が露出した状態となる。そして、この作業を、樹木4の全周方向について繰り返し行うことで、樹木4に環状の剥離部5を形成することができる。このとき、剥離部5の幅は5〜10cmとすることが好ましい。剥離部5を形成する位置に制限はなく作業を容易に行うことのできる位置とすればよい。例えば、地表から20〜50cmの高さとしてもよい。なお、図1(b)及び(c)に示す剥離部5は、切刃3を剥離部5の幅方向下端となる位置に差し込み引き上げて形成されているが、これを幅方向上端となる位置に差し込み押し下げて形成してもよい。更に、切刃3を剥離部5の幅方向中央となる位置に差し込み、その部分において引き上げ作業と押し下げ作業の双方を行って形成してもよく、この場合、剥離部5の幅を少ない力で広くできる利点がある。
【0016】
環状の剥離部5を形成したら、次に、樹木4において表皮の内側が露出した部分、すなわち剥離部5の表面に対し薬剤を散布する。剥離部5の表面に散布された薬剤は、樹木4に浸透するため、その薬効により樹木4を枯らすことができる。薬剤6は、樹木4の周方向全域にわたって散布することが好ましく、その場合、薬液が幹の全ての維管束に浸透し、薬効が確実に得られるという効果がある。
【実施例】
【0017】
コマツナギに、環状の剥離部を形成し、その剥離部に対し薬剤を散布した。対象としたコマツナギの樹齢は5年程度で、その幹の太さ(地際直径)は約4cmであった。形成した剥離部の幅は約7cm、形成した位置は地表から40cmであった。また、薬剤にはグリホサートカリウム塩およびグリホサートアンモニウム塩の希釈液を使用した。更に、薬剤の散布には、肩がけ式電動噴霧器を使用した。その結果、薬剤散布から6ヶ月後に、コマツナギが根系まで枯れたことが確認できた。
【符号の説明】
【0018】
1 長尺ロッド
2 噴出口
3 切刃
4 樹木
5 剥離部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象植物の形成層に至るまでの表皮を剥がし、前記表皮の内側が露出した部分に対し薬剤を散布することを特徴とする薬剤散布方法。
【請求項2】
前記対象植物が、クズ株、コマツナギ、ニセアカシアのいずれかである請求項1に記載の薬剤散布方法。
【請求項3】
長尺ロッドの先端に薬液の噴出口を設けるとともに、前記噴出口の近傍に、切刃を固定したことを特徴とする薬剤散布ノズル。


【図1】
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【公開番号】特開2010−268695(P2010−268695A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120990(P2009−120990)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【Fターム(参考)】