説明

藻類保護具および藻類保護ユニット

【課題】 食害防止効果を達成し、容易に設置が可能な藻類保護具および藻類保護ユニットを提供することである。
【解決手段】 食害防止具1は、その内方に藻類30を収容して藻類30の食害を防止する。食害防止具1は、食害防止具本体17と、脚体7とを有する。食害防止具本体17には、その内方に藻類30を収容する収容空間12が形成される枠体6と、枠体6に設けられ、収容空間12を少なくとも下方に開放させて覆う網体4とを有する。脚体7は、食害防止具本体17を支持し、他の食害防止具1の脚体7に連結可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水棲生物による藻類の食害を防止するための藻類保護具および藻類保護ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、藻類を着生または種苗することによって、海底に藻場を人工的に造成することがある。また海底には、人工的に造成されている藻場ばかりでなく、自然に形成された藻場も存在する。これらの藻場は、魚類および底生生物などの水棲生物による藻類の食害が深刻な問題となっており、藻類の食害を防止するために種々の食害を防止するための手段が講じられている。
【0003】
従来の第1の技術の網によって藻類を覆う食害防止方法では、網の規模、つまり網の大きさによって、網の設置状態および作用効果が異なる。大型の網を使用する場合、藻場を囲うように網を配設し、網の幅方向一端部をブイによって浮かべ、さらに幅方向他端部を係留させることによって、網の形状を安定させる。これによって藻場に水棲生物が侵入することを阻止している。小形の網を使用する場合、藻場を覆うように配設し、網の端部を岩の間に差し込むなどして固定する、これによって藻場に水棲生物が侵入することを阻止している。また中型の網を使用する場合、藻場を覆うように配設し、アンカによって、網を岩盤または岩に固定する(特許文献1参照)。
【0004】
従来の第2の技術のコンクリートブロックを用いる食害防止方法では、箱状のコンクリートブロックを形成し、このコンクリートブロックを海底に沈める。沈められているコンクリートブロックの内方に藻場を形成し、外周部を網で覆うことによって、藻場への水棲生物の侵入を阻止している。
【0005】
【特許文献1】特許2606596号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の第1の技術の食害防止方法において、大型の網を使用する場合、網が大きいので、船舶などを使用して設置する必要があり、また海流によって流されやすい。さらに網を部分的に補修することができないので、石などが飛来して網が破損すると、破損している状態のままで放置するか、または網ごと交換する必要がある。小型の網を使用する場合、網内に形成される空間が小さく、藻類の成長の度合いに合わせて撤去する必要があり、網を撤去した後、藻類が食害の被害あうことが多い。中型の網を使用する場合、網をアンカによって岩盤または岩に固定する必要がある。網をアンカを使って固定する場合、専用の作業機械および専門知識を有する作業者が必要となる。それ故、中型の網を使用する場合、設置する者が限定される。またアンカを使って固定するので、アンカーを固定する対象物、たとえば現地岩盤などの基質によって、設置することができず、固定する対象物に固定可能か否かの検討が別途必要となる。
【0007】
従来の第2の技術の食害防止方法では、コンクリートブロックを用いるので、その製作費用および設置費用が高い。またコンクリートブロックを用いる場合、国などが主体的に行われるので、安易に設置することができない。
【0008】
本発明の目的は、食害防止効果を達成し、容易に設置が可能な藻類保護具および藻類保護ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、その内方に藻類を収容して藻類の食害を防止する藻類保護具であって、
その内方に藻類を収容する収容空間が形成される枠体と、枠体に設けられ、収容空間を少なくとも一方向に開放させて覆う被覆体とを有する藻類保護具本体と、
他の藻類保護具に連結可能に形成される連結手段とを有することを特徴とする藻類保護具である。
【0010】
本発明は、収容空間を開放する開口部に対して一方向に突出させて枠体に設けられる複数の脚体をさらに有することを特徴とする。
【0011】
本発明は、各脚体は、連結手段を備え、他の藻類保護具の脚体に連結部材によって連結可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明は、枠体には、藻類を着生するまたは種苗するための基質手段が設けられ、
基質手段は、収容空間内に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明は、被覆体は、網であり、枠体に着脱可能に設けられていることを特徴とする。
本発明は、枠体には、少なくとも3つの脚体が設けられ、
前記脚体によって枠体を支持可能に配設されていることを特徴とする。
【0014】
本発明は、藻類保護具本体は、切頭三角錐形状に形成され、三角形状の底部が開放し、
枠体には、3つの脚体が設けられ、
3つの脚体は、前記底部の各頂点にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明は、前記複数の藻類保護具を、連結部材で連結することによって、構成されることを特徴とする藻類保護ユニットである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、藻類保護具本体が一方向に開放しているので、その開放している開口部に自生または養殖などしている藻類を挿入することによって、枠体内の収容空間に藻類を収容することができる。枠体が被覆体によって覆われ、被覆体によって、収容空間への魚などの侵入が阻止されている。収容空間に魚などが侵入できないので、収容空間に収容される藻類が魚などによって食い荒らされることを阻止され、藻類の食害を防止することができる。
【0017】
また本発明では、連結手段によって他の藻類保護具に連結可能に構成されているので、複数の藻類保護具を連結することによって、複数の藻類保護具が連結されて成る藻類保護ユニットを構成することができる。藻類保護ユニットは、藻類保護具に単体比べて、広範囲にわたって、藻類の食害防止を達成することができる。また連結する藻類保護具を数量を増加させることによって、藻類保護ユニットの重量を増加させることができ、外力が作用しても藻類保護ユニットを停留させるために充分な重量を確保することができる。これによってアンカーなどによって藻類保護ユニットを海底などに固定しなくとも、停留させることができる。
【0018】
また本発明では、連結する藻類保護具の数量を増加させることによって、藻類保護ユニットについて充分な重量を確保することができるので、藻類保護具を軽量にすることができる。たとえば藻類保護具を使用者が持ち運び可能な重量、たとえば20kg以下であっても、複数の藻類保護具を連結することによって、藻類保護ユニットは、停留させるために充分な重量を得ることができる。したがって使用者は、クレーンなどの大型産業機械を使用することなく、手作業で設置することができ、設置が容易であり、利便性が高い。
【0019】
本発明によれば、脚体が開口部に対して一方向に突出している。これによって藻類保護具を海底などに載置するとき、脚体を海底などに立設することによって、開口部と海底などとを離隔させることができる。これによって藻類保護具を海底などに載置されている状態において、開口部と海底などとの間に間隙を形成することができる。このように間隙を形成することによって、枠体内のごみなどの不要物などを間隙から外方に排出することができ、枠体内に不要物が滞留することが防止できる。また海藻から脱落した葉なども外方に排出することができ、これらの葉を底生生物などの餌とすることができる。
【0020】
本発明によれば、複数の藻類保護具の脚体を連結部材によって、連結することができる。各脚体を海底などに立設させることによって、各藻類保護具は、海底などに載置される。したがって藻類保護具を海底に載置するとき、一の脚体の立設位置は、他の脚体の立設位置および藻類保護具本体の傾きに影響を受けることなく、位置決めすることができ、海底などの表面が起伏に富んだ地形であっても、脚体の位置決めが容易である。これによって前述のような起伏に富んだ地形であっても、各藻類保護具の一の脚体を一箇所に集めることができ、前記一の脚体が段違いで配設されることを防止できる。このように一の脚体の先端部を段違いで配設されすることを防止できるので、一箇所に集められる脚体の先端部を連結部材によって連結することが容易であり、藻類保護ユニットの設置が容易である。
【0021】
本発明によれば、藻類を着生するまたは種苗するための基質手段を海底などから離反させることができる。換言すると、基質手段に着生または種苗される藻類を海底などから離反させることができる。これによって底生生物が藻類を食い荒らされることを防止することができ、底生生物に起因する食害を防止することができる。
【0022】
本発明によれば、被覆体は、網であり、枠体に着脱可能に設けられている。被覆体が網であるので、枠体内の海水または淡水が滞留することがなく、枠体内を良好な水質環境に維持することができる。藻類保護具を継続的に使用すると、被覆体の網目の目詰まりが発生する。これによって収容空間に光が当たらなくなり、枠体内の海水または淡水が滞留し、光環境および水質環境が悪化し、また海流などの流れによって作用する力の影響が大きくなる。また石などが飛来して被覆体が破損し、前述のような優れた効果を達成することができなくなる場合がある。被覆体が枠体に着脱可能に設けられているので、前述のような状況が起こっても被覆体を交換することによって、光環境および水質環境を改善し、海流などの流れによって滑動および転倒することが抑制され、前述のような優れた効果を達成することができる。このように被覆体が着脱可能に構成されているので、前述のような状況下において、藻類保護具または藻類保護ユニットを取り出す必要がなく、作業が容易である。
【0023】
本発明によれば、枠体に設けられる少なくとも3つの脚体によって藻類保護具が支持されている。このように少なくとも3つの脚体を有するので、少なくとも3点で支持することができ、藻類保護具本体が海底などに当接することを抑制できる。これによって藻類保護具を載置する海底などの表面に起伏があっても、前記脚体よって安定した姿勢で藻類保護具本体を支持することができる。これによって藻類保護具に外力が加わって藻類保護具が不安定になることがなく、藻類保護具が転倒することを防止できる。
【0024】
本発明によれば、三角形状の底部の各頂点に3つの脚体がそれぞれ設けられているので、安定した姿勢で藻類保護具本体を支持することができる。さらに藻類保護具本体は、切頭三角形状に形成されているので、充分な体積の収容空間を確保しつつ、側面の表面積の低減を図ることができる。これによって多数の藻類を収容空間に収容することができるとともに、海流など流体の流れによって受ける荷重を低減し藻類保護具の転覆を抑制することができる。また藻類保護具本体が切頭三角形状に形成され、その底部が開口しているので、一の藻類保護具を他の藻類保護具の枠体に嵌合させることができる。これによって複数の藻類保護具を嵌合させて積み重ねることができ、嵩張ることを抑制できる。このように嵩張りを抑制できるので、より小さい容積によって多くの藻類保護具を搬送することができる。
【0025】
本発明によれば、藻類保護具単体に比べて、広範囲にわたって、藻類の食害防止を達成することができる。また複数の藻類保護具を連結され、海流などの流体の流れに起因する外力が作用しても停留している充分な重量の藻類保護具を構成することができる。これによってアンカーなどによって藻類保護ユニットを海底などに固定しなくとも、停留させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。また実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0027】
図1は、本発明の実施の第1の形態の食害防止具1を示す斜視図である。図2は、複数の食害防止具1を連結して構成される食害防止ユニット2を示す斜視図である。藻類保護具である食害防止具1は、海底、たとえば岩盤に載置され、アラメ、クロメおよびカジメなどの藻類を水棲生物の食害から保護するために使用される。具体的には、食害防止具1は、その内方に海底に自生するまたは養殖される藻類を収容して、前記藻類を被覆する。このように藻類を食害防止具1に収容することによって、前記藻類は、水棲生物と隔離され、水棲生物に食われることがない。このようにして食害防止具1は、藻類の食害を防止している。
【0028】
さらに食害防止具1は、複数の食害防止具1を連結具24によって連結することによって、図2に示す食害防止ユニット2を構成する。藻類保護ユニットである食害防止ユニット2は、食害防止具1よりも広範囲にわたって、藻類を被覆し、水棲生物の食害から保護することができる。また複数の食害防止具1が連結されているので、食害防止ユニット2は、充分な重量が得られる。したがって海流などの流れが作用しても、食害防止ユニット2が海底を滑動することを、防ぐことができる。以下では、まず食害防止具1の構成について説明し、次に食害防止ユニット2の構成を説明する。
【0029】
図3は、食害防止具1を示す平面図である。図4は、食害防止具1を示す正面図である。図5は、食害防止具1に含まれるフレーム3を示す平面図である。図6は、フレーム3を示す正面図である。図1を参照しつつ、食害防止具1を説明する。食害防止具1は、フレーム3と、網体4と、カバー体5とを含む。フレーム3は、枠体6と、3つの脚体7とを有する。枠体6は、切頭三角錐状に形成され、第1枠8と、第2枠9と、3つの連結部10を有する。第1枠8は、正三角形の枠状に形成されている。第2枠9は、正三角形の枠状に形成され、各辺が第1枠8の各辺より短尺に形成されている。第2枠9は、平面視で、第1枠8内に配設されている。第1枠8および第2枠9は、3つの連結部10によって連結されている。具体的には、各連結部10は、第1枠8の3つの角部8a,8b,8cと第2枠9の3つの角部9a,9b,9cをそれぞれ連結している。各連結部10は、その長手方向一端部10aが第1枠8の各角部8a,8b,8cに溶接され、長手方向他端10bが第2枠9の各角部9a,9b,9cに溶接されている。このようにして構成される枠体6は、その内方に収容空間12が形成され、その3つの側面部6a,6b,6c、底面部6dおよび上面部6eが外方に開放している。ここで上下方向とは、図5の紙面に向かって手前および奥行き方向である。
【0030】
3つの脚体7は、枠体6の底面部6aの各頂部、すなわち第1枠8の各角部8a,8b,8cに配設されている。本実施の形態では、各脚体7が連結部10に一体的にそれぞれ形成されている。3つの脚体7は、同様の構成であるので、一の脚体7について説明し、他の2つの脚体7については、同一の符号を付してその説明を省略する。脚体7は、大略的にU字状に形成され、第2枠9に対して離反する方向に突出している。換言すると、脚体7は、収容空間12を開放する開口部である底部6aに対して一方向である下方に突出している。脚体7は、その一端部が連結部10の長手方向一端部10aに一体的に設けられ、他端部が第1枠8に溶接されている。また脚体7の中間部、すなわち先端部が下方に向かって湾曲し、本実施の形態では、半円状に形成されている。
【0031】
被覆体である網体4は、いわゆるネットであり、枠体6に着脱可能に装着され、枠体6の側面部6a,6b,6cおよび上面部6eを外方から覆っている。本実施の形態では、網体4は、枠体6と同様に切頭三角錐状に形成され、その底部が開放されている。網体4は、枠体6に外嵌可能に形成され、枠体6に外嵌することによって装着される。網体4は、たとえば無結節網であり、ポリエチレンの網糸によって形成される。網糸の呼び径は、1mm以上3mm以下であり、網体4の網目は、たとえば20mm四方以上100mm四方以下に形成されている。
【0032】
カバー体5は、切頭三角錐形の枠状に形成され、枠体6に着脱可能に構成されている。カバー体5は、枠体6に装着され、この状態で枠体6を外方から覆っている。さらにカバー体5は、枠体6に装着されている状態において、網体4が枠体6から離脱しないように、枠体6とともに網体4を挟持している。このように構成されるカバー体5は、第1カバー部13と、第2カバー部14と、3つのカバー連結部15とを有する。第1カバー部13は、正三角形の枠状に形成されている。第2カバー部14は、正三角形の枠状に形成され、各辺が第1カバー部13より短尺に形成されている。第1カバー部13と第2カバー部14とは、3つのカバー連結部15によって連結されている。具体的には、各カバー連結部15は、第1カバー部13の3つの角部13a,13b,13cと第2カバー部14の3つの角部14a,14b,14cとをそれぞれ連結している。各カバー連結部15は、長尺方向一端部15aが第1カバー部13の各角部13a,13b,13cにそれぞれ溶接され、長尺方向他端部15bが第2カバー部14の各角部14a,14b,14cにそれぞれ溶接されている。このようにして構成されるカバー体5を枠体6に装着すると、第1カバー部13が第1枠8を、第2カバー部14が第2枠9を、カバー連結部15が連結部10を外方から覆う。さらに第1カバー部13と第1枠8とをボルトなどの締結具16で締結することによって、カバー体5が枠体6に対して離脱不能に装着される。以下では、網体4とカバー体5と枠体6とを含む構成を食害防止具本体17という。
【0033】
食害防止具1は、その高さが200mm以上1000mm以下に形成され、第1枠8の一辺の長さが500mm以上2000mm以下に形成され、その重量は20Kg以下に形成される。
【0034】
このような構成を有する食害防止具1は、まず網体4がフレーム3を上方から覆うように、網体4にフレーム3を嵌合させて装着する。次に網体4が装着されるフレーム3にカバー体5を装着する。このときフレーム3に網体4が装着されているので、網体4は、フレーム3とカバー体5との間に介在し、フレーム3とカバー体5とによって挟持されて、保持される。このような状態で、締結具16でフレーム3とカバー体5とを締結し、網体4がフレーム3から離脱しないようにフレーム3とカバー体5とを固定する。
【0035】
図7は、食害防止ユニット2を示す平面図である。図8は、食害防止ユニット2の一部を拡大して示す拡大平面図である。図9は、食害防止ユニット2を図9に示す領域Aの範囲を拡大して示す拡大平面図である。図10は、食害防止ユニット2を図9に示す領域Bの範囲を拡大して示す拡大平面図である。図11は、食害防止ユニット2に含まれる連結具24を拡大して示す平面図である。図9〜図10では、説明の便宜上、網体4およびカバー体5を省略して示す。以下では、図2を参照しつつ、食害防止ユニット2の構成について説明する。食害防止ユニット2は、前述のように複数の食害防止具1を連結することによって構成される。食害防止ユニット2は、複数の食害防止具1を含む食害防止ユニット本体20と、複数のチェーン21と、複数の係留ロープ22と、複数の係留具23とを有する。本実施の形態では、食害防止ユニット2は、チェーン21と、18個の係留ロープ22と、18個の係留具23とを有する。以下では、食害防止ユニット2の同一の構成の部材については、一の各構成についてだけ説明し、他の各構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0036】
食害防止ユニット本体20は、複数の食害防止具1と複数の連結具24とを含む。本実施の形態では、21個の食害防止具1と、25個の連結具20とを有する。食害防止ユニット本体20は、図7に示すように、21個の食害防止具1を三角格子の市松模様状に配設して、平面視で大略的に正三角形状に形成されている。このように配設される21個の食害防止具1は、互いに隣接する食害防止具1の脚体7を連結具24で連結されている。具体的には、食害防止ユニット本体20の周縁部では、図10に示すように、2つの食害防止具1の脚体7が隣接し、これら隣接する2つの脚体7が連結具24によって連結されている。食害防止ユニット2の周縁部を除く部分では、図9に示すように、3つの食害防止具1の脚体7が隣接し、これら隣接する3つの脚体7が連結具24によって連結されている。
【0037】
連結部材である連結具24は、いわゆるシャックルであり、複数の食害防止具1の脚体7を連結する部材である。連結具24は、連結具本体25と、施錠部26とを有する。連結具本体25は、U字状に形成されている。施錠部26は、施錠部本体26aと把持部26bとを有する。施錠部本体26aは、円柱状に形成され、その一端部に雄ねじが形成され、他端部に把持部26bが一体的に形成されている。把持部26bは、使用者が把持可能に形成され、本実施の形態では、円盤状に形成されている。施錠部26は、連結具本体の一端部25aを挿通し、施錠部本体26bの他端部を他端部25bに螺合させる。これによって連結具本体25の開口部を閉じることができる。連結具本体25に複数の食害防止具1の脚体7を掛止して、施錠部26で前記開口部を閉じることによって、複数の食害防止具1の脚体7を連結することができる。ただし連結具24は、シャックルである必要はなく、複数の食害防止具1の脚体7を連結可能な構成であればよく、たとえば単なるリングまたはワイヤであってもよい。
【0038】
食害防止ユニット本体20の周縁部およびその内部には、チェーン21が張り巡らされている。チェーン21は、複数の環状の金属リングを連結して構成される鎖であり、食害防止ユニット2の重量を確保するために設けられている。チェーン21は、連結具24によって、複数の食害防止具1の脚体7に連結されている。具体的には、図10に示されるように、チェーン21の金属リングの孔に連結具24の施錠部26を挿入して、施錠部26を連結具本体25に螺合することによって連結される。
【0039】
食害防止ユニット本体20の周縁部には、係留具23が係留ロープ22によって連結されている。各係留ロープ22は、たとえばポリエステルから成り、食害防止ユニット本体20の周縁部に配設される18個の連結具24にそれぞれ結合され、係留具23と連結具24とを連結している。係留具23は、食害防止ユニット2の重量を確保するための錘であり、本実施の形態では、土嚢を用いる。係留具23は、たとえば水中に配設することを考慮して、土嚢袋に石などを入れて構成される。ただし係留具23は、このような構成に限定されず、たとえば鉄などの金属塊であってもよい。
【0040】
図12は、食害防止ユニット2が海底に設置されている状態を示す平面図である。図13は、食害防止ユニット2を海底29の一部を模擬した地質板上に載置している状態を示す斜視図である。図14は、食害防止ユニット2を海底に設置されている状態を示す側面図である。図14は、説明の便宜上、図14において、最も手前側に配設されている食害防止具1の網体4を省略して示している。以下では、食害防止ユニット2の組み立てから、海底29への設置について、その実施の一例を説明する。まず複数の食害防止具1を三角格子の市松模様状に配設し、互いに隣接する食害防止具1の脚体7を連結具7によって連結し、食害防止ユニット本体20を構成する。食害防止防止ユニット20を構成するとき、食害防止ユニット本体20の周縁部および内部に第1枠体8に沿って、チェーンが張り巡し、連結具24によって、食害防止具1の脚体7に連結する。最後に係留ロープ22によって、係留具23を連結具24に連結することによって、食害防止ユニット2が構成される。
【0041】
このようにして構成される食害防止ユニット2は、藻類30が自生しているまたは養殖されている(以下、単に「自生などしている」という)海底29に向かって食害防止具1の収納空間12を開放させて設置され、食害防止ユニット2によって前記海底29に自生などしている藻類30を覆う。このように食害防止ユニット2を設置すると、海底29に自生などしている藻類30が収容空間12に収納される。さらに食害防止ユニット2は、3つの脚体7が食害防止具本体17に対して海底29に向かって突出し、この3つの脚体7によって食害防止具本体17が支持されている。これによって食害防止具本体17は、海底29に対して離隔して配設され、食害防止具17と海底29との間に間隙31が形成される。換言すると、枠体6の底部6dと海底29との間に間隙31が形成される。
【0042】
このようにして構成される食害防止ユニット2は、数ヶ月〜1年以上海底29に設置されるので、設置されている間に網体4に海藻などの付着物が付着し、網目に目詰めりが生じる。このような目詰まりが発生することによって、網体4の射影率が高まり、収容空間12内に差し込む光量が少なくなり、光量が極度に少なくなると、収容されている藻類が死滅する場合がある。それ故、食害防止ユニット2は、網体4を数ヶ月〜1年に一度新しい網体4に交換する。網体4を交換するとき、各食害防止具1の締結具16を取り、カバー体5を枠体6から取り外す。これによって網体4が剥き出しになり、剥き出しになっている網体4を枠体6から取り外し、新しい網体4を枠体6に装着する。このように網体4が装着される枠体6に、さらにカバー体5を装着して、枠体6とカバー体5とによって網体4を挟持し、締結具16によってカバー体5と枠体6とを締結することによって、食害防止具1の網体4の交換が終了する。このように網体4を交換するとき、または食害防止具1を製造する段階において、網体4、カバー体5および網体6が切頭三角錐状に形成されている、つまりテーパ状に形成されているので、網体4およびカバー体5の開口部が頭部側の部分に比べて広く、網体4およびカバー体5を枠体6に装着しやすい。またこのようにテーパ状に形成されるので、食害防止ユニット2が食害防止具1に分解したとき、一の食害防止具1を嵌合させて積層することができ、食害防止具1の収納空間が少なく、輸送コストが安価である。
【0043】
このようにして構成される食害防止ユニット2は、収容空間12と食害防止具1の外方とが網体4を介して隔離され、魚類の収容空間12への侵入が網体4によって阻止されている。したがって収容空間12内に収容されている藻類30は、魚類などから網体4を介して隔離され、魚類などの食害から保護することができ、食害を防止することができる。また食害防止ユニット2には、チェーン21が張り廻らされており、食害防止具1の脚体7に連結されている。チェーン21は、配置される海底の形状に合わせて張り付くように変形する。これによってチェーン21と海底との接触面積が大きくなり、摩擦力を大きくすることができる。これによって食害防止ユニット20の移動を抑制できる。
【0044】
また食害防止ユニット2の各食害防止具1は、3つの脚体7を海底29に当接させ、この3つの脚体7によって、食害防止具本体17が支持されている。このように3つの脚体7によって支持するので、海底29および岩盤などのようにその設置面部に凹凸を有する場合であっても、平面で支持するよりも食害防止具本体17が安定して支持される。さらに各脚体7は、第1枠8の各角部8a,8b,8cに設けられているので、さらに食害防止具本体17が安定している。
【0045】
図15は、水深による波高変化を示すグラフである。図16は、無次元砕波水深h/Lと流速算定係数Kとの関係を示すグラフである。図17は、網体4の射影率と滑動安全率との関係を示すグラフである。図18は、網体4の射影率と転倒安全率との関係を示すグラフである。図19は、設置水深の変化と1つの食害防止具1当たりの必要付加重量の変化との関係を、食害防止ユニット2に含まれる食外防止具1の数の違い毎に示したグラフである。以下では、このようにして構成される食害防止ユニット2の射影率の変化に伴う、滑動安全率の推移を説明する。食害防止ユニット2が設置される海域における、沖波波高H、沖波周期T、設置水深h、海面流速U、海面勾配、海底地質、沖波波長Lおよび換算沖波波高H’などの設計条件および計算結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
このような設計条件の海域における平均海面の水位の上昇Hを、沿整施設設計指針(H4)に示されている、海底勾配が1/50以下における水深による波高変化のグラフ、具体的には、H/Hとh/H’との関係を示すグラフに基いて計算する。このグラフは、H’/Lの値によって、使用する関係が異なる。本実施の形態では、H’/Lが0.04であるで、実線41に基いて平均海面の水位の上昇Hを求めると、H=1.5mが得られる。沿整施設設計指針(H4)によれば、H/hの値は、砕波帯近傍において、H/h≧2/3となり、非砕波帯において、H/h<2/3となる。前記平均海面の水位の上昇Hを参照して、H/hを演算すると、H/h=0.70≧2/3となる。したがって表1に示す設計条件の海域は、砕波帯近傍であり、食害防止ユニット2が設置される海域を砕波帯として、波および海流によって、食害防止ユニット2が滑動および転倒しないための安定計算を行う。
【0048】
沿整施設設計指針(H4)において、砕波帯の海域に設置される構造物が波および海流によって、滑動しないためには、式(1)を充足する必要があり、転倒しないためには、式(2)を充足する必要がある。
【0049】
【数1】

【0050】
ここでSFSは、安全率でありWは、食害防止ユニット2の重量であり、μは、摩擦係数であり、ωは、海水の単位体積重量であり、σは、食害防止ユニット2の単位体積重量である。さらに流体力Fは、式(3)で与えられる。
【0051】
【数2】

【0052】
ここでCは、抗力係数であり、Aは、射影面積であり、gは、重力加速度である。さらに流速Uは、式(4)で与えられる。
U=U+U …(4)
【0053】
ここでUは、波運動による水粒子速度であり、Uは、潮流による流速である。さらにUは、式(5)で与えられる。
【0054】
【数3】

【0055】
ここで流速算定係数Kは、砕波水深hと沖波波長Lと図16に示すグラフとに基いて、決定される値である。砕波水深hは、図15のグラフに基いて得られる値である。具体的には、図15のグラフにおいて、H/Hが最大のときのh/H’がh/H’として与えられる。この値から砕波水深hを演算し、さらに沖波波長Lを用いてh/Lを演算する。流速算定係数Kとh/Lとは、図16の破線42(水平流速算定値)の関係を有し、演算されるh/Lと図16の破線とに基いての流速算定係数Kの値を求める。
【0056】
具体的に前記設計条件に基いて、流速算定係数Kを演算していくと、表1に示すようにH’/L=0.005におけるh/H’は、h/H’=1.5である。したがって砕波水深hは、h=13.5mであり、h/L=0.0601となる。h/L=0.0601であるので、図15を参照すると、流速算定係数Kは、K=0.3となる。この流速算定係数Kを用いて、食害防止ユニット2が、砕波帯の海域に設置される構造物が波および海流によって、滑動および転倒するか否かを演算で確認する。食害防止ユニット2に関する諸条件は、表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
この表2に示す諸条件に基づいて、安定計算を行い、滑動しないか否かを判断するための滑動安全率および転倒しないか否かを判断するための転倒安全率が算出される。具体的に説明すると、case1〜case3は、本実施の形態の食害防止ユニット2について、ネット射影率が50%、30%、10%と変化した場合を想定したものである。図17および図18には、case1〜case3のネット射影率と滑動安全率および転倒安全率との関係を示すグラフである。図17および図18は、横軸がネット射影率であり、縦軸が滑動安全率および転倒安全率である。case4〜case6は、本実施の形態の食害防止ユニット2より食害防止具1の数が多く、36基の食害防止具1を備える食害防止ユニット2について、ネット射影率が50%、30%、10%と変化した場合を想定したものである。表2には、各条件に基いて算出される滑動安全率および転倒安全率についても示している。
【0059】
滑動安全率が1.2以下であると、食害防止ユニット2が滑動し、転倒安全率が1.2以下であると、食害防止ユニット2が転倒する。図17および図18に示されるとおり、射影率が50%以下であれば、滑動安全率および転倒安全率は、ともに1.2以上である。したがって食害防止ユニット2は、砕波帯の海域において、波および海流によって、滑動および転倒しないことが明らかである。
【0060】
図19は、食害防止ユニット2に含まれる食害防止具1の数の違いに伴って、1基の食害防止具1に対する必要な付加重量の違うことを示すグラフであり、縦軸が1基当たりの重量付加量(Kg)であり、横軸が設置水深である。type4は、10基の食害防止具1が三角格子の市松模様状に配設される食害防止ユニット2であり、type6は、本実施の形態の食害防止ユニット2であり、type8は、36基の食害防止具1が三角格子の市松模様状に配設される食害防止ユニット2である。図19に示されるように、食害防止ユニット2に連結される食害防止具1の数が増加すれば、1基の食害防止具1当たりに付加すべき重量が小さくなる。したがって連結する食害防止具1の数を増加すればするほど、食害防止ユニット2は、充分な重量を食害防止具1だけで確保することができ、1基あたりの係留具23の量を減らすことができ、広範囲の藻類20を保護する場合であっても、係留具23を大量に必要としない。
【0061】
以下では、本実施の形態の食害防止具1および食害防止ユニット2が達成する効果について説明する。本実施の形態の食害防止具1によれば、食害防止具本体17が下方に開放しているので、その開放している底部6dに自生または養殖などしている藻類30を挿入することによって、枠体6内の収容空間12に藻類30を収容することができる。枠体6が網体4によって覆われ、網体4によって、収容空間12への魚などの侵入が阻止されている。収容空間12に魚などが侵入できないので、収容空間12に収容される藻類30が魚などによって食い荒らされることを阻止され、藻類30の食害を防止することができる。
【0062】
また本実施の形態の食害防止具1では、脚体7によって他の食害防止具1に連結可能に構成されているので、複数の食害防止具1を連結することによって、複数の食害防止具1が連結されて成る食害防止ユニット2を構成することができる。食害防止ユニット2は、食害防止具1に単体比べて、広範囲にわたって、藻類30の食害防止を達成することができる。また連結する食害防止具1を数量を増加させることによって、食害防止ユニット2の重量を増加させることができ、外力が作用しても食害防止ユニット2を停留させるために充分な重量を確保することができる。これによってアンカーなどによって食害防止ユニット2を海底29などに固定しなくとも、停留させることができる。
【0063】
また本実施の形態の食害防止具1では、連結する食害防止具1の数量を増加させることによって、食害防止ユニット2について充分な重量を確保することができるので、食害防止具1を軽量にすることができる。たとえば食害防止具1を使用者が持ち運び可能な重量、たとえば20kg以下であっても、複数の食害防止具1を連結することによって、食害防止ユニット2は、停留させるために充分な重量を得ることができる。したがって使用者は、クレーンなどの大型産業機械を使用することなく、手作業で設置することができ、設置が容易であり、利便性が高い。
【0064】
本実施の形態の食害防止具1によれば、脚体が底部6dに対して下方に突出している。これによって食害防止具1を海底29などに載置するとき、脚体7を海底29などに立設することによって、底部6dと海底29などとを離隔させることができる。これによって食害防止具1を海底29などに載置されている状態において、底部6dと海底29などとの間に間隙31を形成することができる。このように間隙31を形成することによって、枠体6内のごみなどの不要物などを間隙31から外方に排出することができ、枠体6内に不要物が滞留することが防止できる。また海藻から脱落した葉なども外方に排出することができ、これらの葉を、うになどの底生生物などの餌とすることができる。
【0065】
本実施の形態の食害防止具1によれば、複数の食害防止具1の脚体7の先端部を連結具24によって、連結することができる。各脚体7の先端部を海底29などに立設させることによって、各食害防止具1は、海底29などに載置される。したがって食害防止具1を海底29に載置するとき、一の脚体7の先端部の立設位置は、他の脚体7の先端部を立設する位置および食害防止具本体17の傾きに影響を受けることなく、位置決めすることができ、海底29などの表面が起伏に富んだ地形であっても、脚体7の先端部の位置決めが容易である。これによって前述のような起伏に富んだ地形であっても、各食害防止具1の一の脚体7の先端部を一箇所に集めることができ、前記一の脚体7の先端部が段違いで配設されることを防止できる。このように一の脚体7の先端部を段違いで配設されすることを防止できるので、一箇所に集められる脚体7の先端部を連結具24によって連結することが容易であり、食害防止ユニット2の設置が容易である。
【0066】
本実施の形態の食害防止具1によれば、網体4は、枠体6に着脱可能に設けられている。網体4が網であるので、枠体6内の海水または淡水が滞留することがなく、枠体6内を良好な水質環境に維持することができる。食害防止具1を継続的に使用すると、網体4の網目の目詰まりが発生する。これによって収容空間12に光が当たらなくなり、枠体6内の海水または淡水が滞留し、光環境および水質環境が悪化し、また海流などの流れによって作用する力の影響が大きくなる。また石などが飛来して網体4が破損し、前述のような優れた効果を達成することができなくなる場合がある。網体4が枠体6に着脱可能に設けられているので、前述のような状況が起こっても網体4を交換することによって、光環境および水質環境を改善し、海流などの流れによって滑動および転倒することが抑制され、前述のような優れた効果を達成することができる。このように網体4が着脱可能に構成されているので、前述のような状況下において、食害防止具1または食害防止ユニット2を取り出す必要がなく、作業が容易である。
【0067】
本実施の形態の食害防止具1によれば、枠体6に設けられる少なくとも3つの脚体7によって食害防止具1が支持されている。このように少なくとも3つの脚体7を有するので、少なくとも3点で支持することができ、食害防止具本体17が海底29などに当接することを抑制できる。これによって食害防止具1を載置する海底29などの表面に起伏があっても、前記脚体7によって安定した姿勢で食害防止具本体17を支持することができる。これによって食害防止具1に外力が加わって食害防止具1が不安定になることがなく、食害防止具1が転倒することを防止できる。
【0068】
本実施の形態の食害防止具1によれば、三角形状の底部の各頂点に3つの脚体7がそれぞれ設けられているので、安定した姿勢で食害防止具本体17を支持することができる。さらに食害防止具本体17は、切頭三角形状に形成されているので、充分な体積の収容空間12を確保しつつ、側面の表面積の低減を図ることができる。これによって多数の藻類30を収容空間12に収容することができるとともに、海流など流体の流れにから受ける力を低減し食害防止具1の転覆を抑制することができる。また食害防止具本体17が切頭三角形状に形成され、その底部が開口しているので、一の食害防止具1を他の食害防止具1の枠体6に嵌合させることができる。これによって複数の食害防止具1を嵌合させて積み重ねることができ、嵩張ることを抑制できる。このように嵩張りを抑制できるので、より小さい容積によって多くの食害防止具1を搬送することができる。
【0069】
本実施の形態の食害防止ユニット2によれば、食害防止具1単体に比べて、広範囲にわたって、藻類30の食害防止を達成することができる。また複数の食害防止具1を連結され、海流などの流体の流れに起因する外力が作用しても停留している充分な重量の食害防止具1を構成することができる。これによってアンカーなどによって食害防止ユニット2を海底29などに固定しなくとも、停留させることができる。
【0070】
また本実施の形態の食害防止具1によれば、枠体6に網体4を装着することによって構成されるので、藻類30を収容するために充分な収容空間12を形成することができる。したがって網体4の形状を整えるための装置を海底29などに設ける必要がなく、設置が容易である。ま食害防止ユニット2を海底に設置することによって、藻類30の食害を防止することができ、網体4を岩盤などに挟み込んだり、または網体4をアンカーなどで固定する必要がなく、設置が容易であり、現地盤の支持力に影響を受けない。
【0071】
また本実施の形態の食害防止具1によれば、切頭三角錐状に形成されているので、第1枠8の角部8a,8b,8cおよび第2枠9の角部9a,9b,9cが鋭角に形成され、海流などの流れを分断し、海流などの流れによって作用する力を小さくすることができ、滑動および転倒し難い。さらに食害防止具1を連結して構成される食害防止ユニット2もまた切頭三角形状になるので、同様の効果を得ることができる。
【0072】
また本実施の形態の食害防止ユニット2によれば、食害防止具1が三角格子の市松模様状に形成されているので、食害防止具1が互いに離隔して連結することができる。これによって各食害防止具1が海流などによって外力が作用して傾くなどしても、隣接する食害防止具1同士が接触することがない。したがって網体4の破損が抑制される。
【0073】
また本実施の形態の食害防止ユニット2によれば、食害防止具1を連結することによって、構成することができ、組み立ておよび設置が容易である。またチェーン21および複数の係留具23を単に連結するだけで、食害防止ユニット2は、海底を滑動および転倒しない重量を確保することができる。
【0074】
図20は、食害防止ユニット2の他の使用形態を示す平面図である。食害防止ユニット2は、必ずしも三角格子の市松模様状に配設する必要がない。たとえば図20に示すように、三角格子の市松模様状に配設される複数の食害防止具1のうち、部分的に欠如させてもよい。たとえば海底29において部分的に隆起している場合、隆起している部分に対応する箇所の食害防止具1を欠如させて、食害防止ユニット2を設置する。これによって他の食害防止具1に対する前記隆起による影響を小さくし、各脚体7を海底29に確実に当接させて、食害防止具本体17を安定して支持させることができる。このように部分的に隆起がある場合であっても、設置が可能であり、また食害防止具本体17を安定して支持でき、食害防止具1の滑動および転倒を防止できる。
【0075】
図21は、実施の第2の形態の食害防止具1Aの第1枠8を示す平面断面図である。図22は、食害防止具1Aの受け部材45を拡大して示す拡大側面図である。図23は、食害防止具1Aの第1接続部材46を拡大して示す拡大正面図である。図24は、図23の第1接続部材46を紙面右側方から見た拡大右側図である。図25は、食害防止具1Aの第2接続部材47を拡大して示す拡大正面図である。図26は、図25の第2接続部材47を紙面下方から見た拡大底面図である。食害防止具1Aは、実施の第1の形態の食害防止具1の構成に、さらに基質手段43が設けられている。食害防止具1Aにおいて、その構成が実施の第1の形態の食害防止具1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略し、追加された構成だけ説明する。食害防止具1Aは、第1枠8に基質手段43が設けられている。
【0076】
基質手段43は、4つの基板44と受け部材45と、2つの第1接続部材46と、2つの第2接続部材47とを有する。を有する。基板44は、藻類を着生または種苗可能な板であり、本実施の形態では、平面視で矩形状に形成され、厚み方向一表面部に藻類が着生または種苗されている。基板44は、たとえば厚みが1mm、幅が30mm、長さが160mmの板である。受け部材45は、円柱状の部材である。各受け部材45は、その軸線方向中間部に2つの基板44が締結して固定されている。前記2つの基板44は、その長手方向が受け部材45の軸線に平行に配設され、その厚み方向他表面部を受け部材45を介して対向させて配設されている。また受け部材45は、その軸線方向一端部45aおよび他端部45bが雄ねじが形成されている。
【0077】
第1接続部材46は、板部48と載置部49とを有する。板部48は、大略的に板状に形成され、その厚み方向に垂直な表面部48aに、厚み方向に貫通する接続孔50が形成されている。さらに前記表面部48aには、載置部49が設けられている。具体的には、載置部49は、接続孔50より一端部48b寄りに、前記表面部48から垂直方向に突出するように設けられている。第1接続部材46は、板部48を第1枠8の外方に配置し、載置部49に第1枠体8の一辺の中間部を載置し、板部48の一端部48a近傍および載置部49が第1枠8に溶着されている。このように板部48の一端部48a近傍および載置部49が第1枠8に溶着して、2つの第1接続部材46が第1枠8の第1の辺8dの中間部に間隔を空けて配設されている。第1枠8の第1の辺8dは、三角形状の3つの辺のうち、角部8aおよび角部8bによって挟まれている辺である。
【0078】
第2接続部材47は、装着部51と接続部52とを有する。装着部51は、板状に形成され、幅方向一端部51aが開放し、厚み方向に貫通する切欠き53が形成されている。装着部51は、その幅方向他端部51bに接続部52が一体的に形成されている。接続部52は、装着部51からその幅方向に離反するにつれて、装着部51の厚み方向一方に向かって傾斜して延びる。装着部51と接続部52とは、その高さ方向の長さが異なり、接続部52の幅方向他端部およびその近傍の高さ方向一端部に段部54が形成される。第2接続部材47は、接続部52に沿って、第1枠8の第2の辺8eを配置し、前記辺8eの中間部を段部54に載置される。このように配置し載置し、接続部52および段部54と前記辺8eとを溶接する。これによって第2接続部材47は、第1枠8の第2の辺8eに設けられる。第1枠8の第2の辺8eは、三角形状の3つの辺のうち、角部8aおよび角部8cによって挟まれている辺である。同様にして第1枠8の第3の辺8にも第2接続部材47が設けられる。第1枠8の第1の辺8fは、三角形状の3つの辺のうち、角部8bおよび角部8cによって挟まれている辺である。
【0079】
このようにして設けられる各第1接続部材46および第2接続部材47には、第1および第2接続部材46,47にわたって受け部材45が架設されている。具体的に説明すると、受け部材45は、その軸線方向一端部45aが第1接続部材46の接続孔50に挿通され、前記一端部45aにナット55aが螺合されている。受け部材45は、その軸線方向他端部45bが第2接続部材46の切欠き53に挿通され、前記他端部45bにナット55bが螺合されている。このように軸線方向一端部45aが第1接続部材46に設けられ、軸線方向他端部45bが第2接続部材47に設けられることによって、2つの受け部材45が辺8dと辺8eおよび辺8dと辺8fとにそれぞれ架設される。架設される2つの受け部材45は、互いに平行に配設され、これら受け部材45に基板44が装着されている。このようにして装着される基板44は、その厚み方向一表面部が側方に向かって、食害防止具1Aの収容空間12内に固定的に設けられる。このようにして設けられる基板44は、海底29から離反して設けられる。
【0080】
また第1接続部材46および第2接続部材47は、平面視で第1枠8の内方に可及的に突出しないように形成されている。具体的には、第1接続部材46の載置部49は、その突出量が第1枠8の辺8dの直径と同一の長さに形成され、また第2接続部材47の装着部51の幅方向一端部51aが、第1枠8の辺8eまたは辺8fに装着されている状態で、第1枠8の可及的に突出しないように形成されている。これによって受け部材45を取り外すだけで、収容空間12内に他の食害防止具1Aの枠体6を収納させて積み重ねることができ、少ない収納スペースで多くの食害防止具1Aを収納することができる。
【0081】
本実施の形態の食害防止具1Aによれば、藻類30を着生するまたは種苗するための基板44を海底などから離反させることができる。換言すると、基板44に着生または種苗される藻類30を海底などから離反させることができる。これによって底生生物が藻類30を食い荒らされることを防止することができ、底生生物に起因する食害を防止することができる。
【0082】
本実施の形態では、食害防止ユニット2は、正三角形状に形成されているけれども、必ずしもこのような構成に限定されない。たとえば正方形、または矩形状であってもよく、幾何学形状であってもよい。さらに食害防止ユニット2は、必ずしも市松模様状に形成する必要がなく、市松模様の食害防止具1が欠けている部分に食害防止具1があってもよい。この場合、より多くの藻類を保護することができる。また食害防止具1も、切頭三角錐状でなくてもよく、三角錐状、切頭四角錐状であってもよく、連結できれば形状は問わない。
【0083】
本実施の形態では、網体4によって、枠体6の側面部6a,6b,6cおよび上面部6eを外方から覆っているけれども、必ずしも網体4に限定されない。たとえば金網であってもよく。網状に形成されているものであればよい。また網状に形成されているものに限定するものでなく、ビニールのように、網目を有さないものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の第1の形態の食害防止具1を示す斜視図である。
【図2】複数の食害防止具1を連結して構成される食害防止ユニット2を示す斜視図である。
【図3】食害防止具1を示す平面図である。
【図4】食害防止具1を示す正面図である。
【図5】食害防止具1に含まれるフレーム3を示す平面図である。
【図6】フレーム3を示す正面図である。
【図7】食害防止ユニット2を示す平面図である。
【図8】食害防止ユニット2の一部を拡大して示す拡大平面図である。
【図9】食害防止ユニット2を図9に示す領域Aの範囲を拡大して示す拡大平面図である。
【図10】食害防止ユニット2を図9に示す領域Bの範囲を拡大して示す拡大平面図である。
【図11】食害防止ユニット2に含まれる連結具24を拡大して示す平面図である。
【図12】食害防止ユニット2が海底に設置されている状態を示す平面図である。
【図13】食害防止ユニット2を海底29の一部を模擬した地質板上に載置している状態を示す斜視図である。
【図14】食害防止ユニット2を海底に設置されている状態を示す側面図である。
【図15】水深による波高変化を示すグラフである。
【図16】無次元砕波水深h/Lと流速算定係数Kとの関係を示すグラフである。
【図17】網体4の射影率と滑動安全率との関係を示すグラフである。
【図18】網体4の射影率と転倒安全率との関係を示すグラフである。
【図19】設置水深の変化と1つの食害防止具1当たりの必要付加重量の変化との関係を、食害防止ユニット2に含まれる食外防止具1の数の違い毎に示したグラフである。
【図20】食害防止ユニット2の他の使用形態を示す平面図である。
【0085】
【図21】実施の第2の形態の食害防止具1Aの第1枠8を示す平面断面図である。
【図22】食害防止具1Aの受け部材45を拡大して示す拡大側面図である。
【図23】食害防止具1Aの第1接続部材46を拡大して示す拡大正面図である。
【図24】図23の第1接続部材46を紙面右側方から見た拡大右側図である。
【図25】食害防止具1Aの第2接続部材47を拡大して示す拡大正面図である。
【図26】図25の第2接続部材47を紙面下方から見た拡大底面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 食害防止具
2 食害防止ユニット
3 フレーム
4 網体
6 枠体
7 脚体
12 収容空間
24 連結具
43 基質手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内方に藻類を収容して藻類の食害を防止する藻類保護具であって、
その内方に藻類を収容する収容空間が形成される枠体と、枠体に設けられ、収容空間を少なくとも一方向に開放させて覆う被覆体とを有する藻類保護具本体と、
他の藻類保護具に連結可能に形成される連結手段とを有することを特徴とする藻類保護具。
【請求項2】
収容空間を開放する開口部に対して一方向に突出させて枠体に設けられる複数の脚体をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の藻類保護具。
【請求項3】
各脚体は、連結手段を備え、他の藻類保護具の脚体に連結部材によって連結可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の藻類保護具。
【請求項4】
枠体には、藻類を着生するまたは種苗するための基質手段が設けられ、
基質手段は、収容空間内に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の藻類保護具。
【請求項5】
被覆体は、網であり、枠体に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の藻類保護具。
【請求項6】
枠体には、少なくとも3つの脚体が設けられ、
前記脚体によって枠体を支持可能に配設されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の藻類保護具。
【請求項7】
藻類保護具本体は、切頭三角錐形状に形成され、三角形状の底部が開放し、
枠体には、3つの脚体が設けられ、
3つの脚体は、前記底部の各頂点にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項6に記載の藻類保護具。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか1つに記載の複数の藻類保護具を、連結部材で連結することによって、構成されることを特徴とする藻類保護ユニット。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図2】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−11822(P2008−11822A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188702(P2006−188702)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000182247)サカイオーベックス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】