説明

藻類又は植物を収穫するための方法及びその方法に使用される装置

藻類又は植物が、沈水生の基質上で生育することによって、開放型連続システムで藻類及び/又は植物を収穫するための方法であって、藻類又は植物が生育中に、基質が移動されることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類及び/又は植物を収穫するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、栽培された藻類又は水中植物は、広範な応用分野を有していることが認められる。藻類は、確かにこれからの食物及びえさの源であるが、生物燃料エネルギーの主な源にもなっている。
【0003】
従って、藻類又は植物を生育させるための効率的及び経済的に好ましい方法の必要性が高まっている。そのような方法の1つが、国際公開WO98/18344に記載され、この方法は、貯水池に沈水される大きなネットの形態の基質(substratum)を提供するステップからなる。そのネットは、人工的に藻類が接種されて、貯水地は、基質が単に水中に沈むだけでなく、藻類の生育に必要な十分な日光を捕捉することができる水準まで、藻類を生育させるために水と栄養分で満たされている。基質が藻類で完全に覆われたときに、収穫を行うことができる。
【0004】
しかしながら、この方法の欠点は、藻類を生育させる広大な領域の土地を必要とすることである。これは、藻類を生育させるための設備投資費用を増加させるだけでなく、栄養分の再生と温度調節のような生育プロセスの制御に関する困難を引き起こす。
【0005】
この方法の更なる欠点は、除去するのが難しい基質上に藻類が生体膜を形成して、藻類を収穫するためにネット全体に亘る特別な装置の駆動を必要とするので、収穫が、大量生産の実質的なボトルネックとなる。
【0006】
本発明の目的は、上述の欠点を解決することと、効果的及び経済的に健全な藻類及び/又は植物の収穫方法を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、藻類又は植物が、沈水生の基質上で生育することによって、開放型連続システムで藻類又は植物を収穫するための方法であって、藻類又は植物が生育中に、基質が移動されることを特徴とする方法に関する。
【0008】
本発明によれば、主に微生物からなるバイオマスが生育し、又は培養される。本発明においては、微生物は、単細胞及び多細胞の両方の有機体を含む全て有機体であり、その最大の寸法が2mmより小さいと考えられる。しかしながら、自然の微生物群体には寸法が明らかに2mmの基準を超える、例えば、糸状藻類、線虫類などの多くの微生物が典型的に含まれる。それ故に、本発明においては、当然のことながら、用語「微生物群体」はこれらの群体内又は周辺に自然に発生する全てのより大きい微生物を含んでいると理解すべきである。これには、例えば、糸状藻類、線虫類、甲殻類、昆虫等が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0009】
本発明に従って生育されるバイオマスは、一般的に微生物群体を含み、特に所定のグループの微生物群体を含む。「グループ」の決定は分類学、生態学又はその他の機能的分類に基づいたものとすることができる。
【0010】
本発明により生産されるバイオマスの一つの好ましい実施例は、付着した微細物群体からなるバイオマス及び藻類グループの珪藻綱は「珪藻」によって多数が占められるバイオマスである。
【0011】
更に、本発明にとってここで留意すべきは、用語バイオマスは、また、水中植物、好ましくは巨大藻類も範囲に及ぶことである。
【0012】
本発明は、藻類又は植物が、沈水生の基質上で生育することによって、開放型連続システムで藻類又は植物を収穫するための方法であって、藻類又は植物が生育中に、基質が移動されることを特徴とする方法に関する。
【0013】
好ましくは、基質は、入口点から出口点に移動される。
【0014】
本発明の好ましい方法によれば、藻類又は植物は、入口点から出口点に移動中、水中に沈められている。
【0015】
非常に好ましい実施例によれば、基質は、入口点で接種され、及び/又はバイオマスは、出口点で収穫される。
【0016】
好ましくは、基質は、水流の中に沈められ、水流は、基質に対して逆流する。
【0017】
本発明の方法によれば、基質が水流に対して斜めに設置され、及び好ましくは垂直に設置される主要表面を定めることは、更に好ましい、。
【0018】
本発明の好ましい構成によれば、本方法は、水流の中で波を生成することを含む。
【0019】
本発明の別の好ましい形状によれば、本方法は、光源に対して基質を傾けるような位置決めを含む。
【0020】
また、藻類及び植物の収穫設備に関する本発明の別の実施例によれば、当該設備は、(i)少なくとも一本の水路と、(ii)水路内に水流を生成するための手段と、(iii)少なくとも1つの基質であって、その上に藻類又は植物を生育させるために水路内に設置される基質と、(iv)基質から藻類又は植物を除去するための収穫手段とを具え、設備が更に、(v)藻類又は植物の生育中に、基質を移動させるための手段を具えることを特徴とする。
【0021】
更に、設備が、水路内に基質を傾けるような位置決めの手段を具えることが好ましい。
【0022】
本発明によれば、藻類が生育する間、入口点(入口)から出口点への基質の動作は、連続的な生育と収穫プロセスを生じさせ、それにより、従来の方法に対して、平方メートル当たりの収穫高を増加させることができる。本発明の方法の結果として、これは、生育プロセスの制御を容易にするだけでなく、設備投資の大幅な減少を可能にする。
【0023】
本発明による方法の別の主の利点は、固定位置で収穫が実行されることであり、それにより、複雑な可動式収穫装置が不要となる。
【0024】
本発明の一実施例によれば、好ましくは、藻類又は植物は、水中に沈んでいるとき、収穫される。藻類又は植物が水中に沈められているときに、収穫することによって、藻類又は植物の破壊が、最小限とされるとももに、重力による水中への後退が防止され、それ故に、バイオマスの損失が防止される。また、バイオマスは、水から出ると、乾燥及び/又は腐敗し(細胞レベルで)、又は例えば酸化する(分子レベルで)可能性がある。本発明によれば、バイオマスの乾燥と、変性は最小化される。その結果、安定して高品質なバイオマスが得られる。
【0025】
好ましい実施例によれば、基質は、水流内に沈められ、水流は基質の動作に対して逆流する。
【0026】
本発明によれば、意外にも、逆流システムは、バイオマスの生育過程の終わりにバイオマスに最も高密度の高い栄養レベルを与えるが、最初の定着段階では、最も低い栄養レベルによって、バイオマスの最低密度が満たされることが分かる。どんな理論にも制約されることなく、この構成は、栄養制限を防いで、実質的に微生物であるバイオマスの任意の生育段階のバイオマスの生育に影響を与えると考えられる。更に、逆方向の水流は、水流の終わりで高い栄養レベルとなるのを防止することが可能であり、排水の浄化の必要性を制限する。
【0027】
逆流の提供は、特に、栄養再生と自己接種に関して、いくつかの重要な利点を有する。
【0028】
自己接種に関して、移動する基質の構成は、基質列と呼ばれる点に留意されたい。この列は、連続的に動作する。逆流システムにより、種の雨は生じ、水流の中で漂うバイオマスにより構成される。種の雨は、下流に(又は基質列まで)移動するとき、定着の少ない基質に徐々に接触して、新しい種がこれらの基質に順調に定着することができる可能性を増やす。
【0029】
本発明による方法の更に好ましい構成は、水流における波の生成を含む。
【0030】
本発明によれば、波動作用は、入射する日光のよりよい獲得をもたらすことが分かる。結果として、全体構成は、より多くの光エネルギが水柱に入り、次いで、微生物のバイオマスに吸収されることを可能にする。更に、波動効果は、バイオマスの生育に有益な効果を有する交互光(いわゆる、「閃光」)効果をもたらす。この光効果はより多い選択組成のバイオマスをもたらす。
【0031】
本発明の非常に好ましい方法において、当該方法は、太陽のような光源に対して基質を傾けるような位置決めを含む。
【0032】
日中において、及び/又は季節の変化とともに、太陽の位置が、基質の位置に対して変化するとき、基質の位置の傾斜を、元の位置で同期させ、及び/又は変化させることができれば、有益となるであろう。調節可能な傾斜のようなこの基質の位置決めは、バイオマスの生育と入射する日光との間の相互関係を最適化する。日光があまりに多い場合(例えば、夏の晴れた日)、光合成阻害を引き起こす露光過多からバイオマスを保護するのを助ける日陰を増やすように、傾斜を変化させることができる。一方、日光があまりにも少ない場合(例えば、曇った冬の日)、垂直に入射する日光の最大限の獲得を達成するために傾斜を変えることができる。更に、適合した傾斜は、所与の種の組成のためのバイオマスの生育と収穫高を最大限に促進するように決定される。また、基質の傾斜の度合いは、所与の種に依存し、特定の群体は、日陰の多い生息地を好む可能性がある。
【0033】
本発明の非常に好ましい実施例は、波の生成と基質位置傾斜をともに組み込む方法であり、それによって、バイオマスの生育を最大にする。特に、太陽の入射角と水面の波の傾斜に対して同時に、傾斜を最適に適合させることができる。
【0034】
また、本発明は、開放型連続システムにおける藻類又は植物の収穫設備に関し、当該設備は、(i)水路と、(ii)水路の中で水流を生成する手段と、(iii)少なくとも一つの基質であって、その上に藻類又は植物を生育させるために水路内に設置される基質と、(iv)基質から藻類又は植物を取り除くための収穫手段とを具え、当該システムが、更に、藻類又は植物が生育中に、前記基質を水路の入口点から出口点に移動させるための手段を具えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
藻類又は植物を生育するための本発明による連続型開放システム及び方法の以下の好ましい実施例を、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
【図1】図1は、本発明による藻類収穫設備を示している。
【図2】図2は、図1の線分II−IIに沿った部分断面図をより大きなスケールで示している。
【図3】図3は、図1の線分III−IIIに沿った同様の横断面図を示している。
【図4】図4は、図1の線分IV−IVに沿った同様の横断面図を示している。
【図5】図5は、図1の線分V−Vに沿った同様の横断面図を示している。
【図6】図6は、図1の別の実施例を示している。
【図7】図7は、本発明による方法で藻類を収穫するために用いることができる基質の実施例を概略的に示している。
【図8】図8は、本発明による方法で藻類を収穫するために用いることができる基質の実施例を概略的に示している。
【図9】図9は、水路内で移動する基質を概略的に示している。
【図10】図10は、基質を傾ける原理を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明による方法を用いて、藻類を生育させ、収穫するための設備1を概略的に示している。設備1は、少なくとも一つの水路、この例では、2組の一連の水路2を具える。各組は、リッジ3により間隔を空けて配置された多数の平行な隣接する水路2を具える。
【0038】
水路は、本実施例では直線状であるが、その全ては、入口点4と出口点5を具え、一方の組における異なる水路の入口点が、全てローディングチャネル6と連通しているのに対して、一方の組の異なる水路の出口点5が、輸送チャネル7としてさらに特定されるものと連通している。
【0039】
好ましくは、設備は、2組の一連の水路を具え、第2組の水路が、第1組の水路の延長位置に位置している。この構成では、両方の組が、共通の主要な輸送チャネルを有する一方で、ローディングチャネルが、水路の反対側に位置することが好ましい。
【0040】
異なるチャネルのリッジ3に沿って、輸送手段8を提供され、この輸送手段8が、図面には現れないギアレール又は駆動チェーンを具えていてもよい。
【0041】
リッジ上には、ギアホイールを有する多数のキャリア9が設けられ、それらが、上述したギアレールと連動して働き、一方、ローディングチャネル6内には、ギアレール上のキャリアを搭載するためのローディング装置が設けられている。
【0042】
図2で示されるように、輸送チャネル7は、二つのサブチャネル7A−7Bに分けられて、リッジ10により分離され、各サブチャネルが、一方の組の水路2と連通している。選択的には、輸送チャネルは、各水路2の出口点5に隣接するキャリア用のバッファ位置11を収容し、同様に、バッファ位置12は、ローディングチャネル6における各水路入口点に隣接して設けるようにしてもよい。
【0043】
また、再ローディングチャネル6’(図6)は、キャリア9の再循環を可能にするため、及び/又は水路の出口点からそれらの入口点への水の再循環を可能にするために設けるようにしてもよい。この再循環チャネルは、輸送チャネル7とローディングチャネル6の両方と連通している。水の再循環に用いられるときは、再循環チャネル内又は水路の入口点に栄養分補給点を設けることが好ましい。
【0044】
リッジ10には、キャリア9を中央収穫ユニット14に輸送することを可能にする輸送装置13が設けられている。好ましくは、この収穫ユニット14は、バイオマスで覆われた基質からバイオマスの除去を可能にする収穫手段を具える。そのような収穫手段には、例えば擦過器が含まれていてもよい。これに関して、収穫のもとで、基質からのバイオマスの効果的な除去をしようとして水路の出口点から基質に適用される各動作とプロセスが理解されるはずである。
【0045】
図示される実施形態(図2)において、輸送装置14は2本のアームを有し、各々が各サブチャネル7A−7Bに到達し、各アームには回転ディスクが設けられ、この回転ディスクが幾つかのフック形状の延出部を有し、それにより、バッファ位置からキャリアを引き上げて、それらを収集ラック15に配置することが可能となっており、その収集ラック15が、図3乃至5に示すように、輸送チャネルに沿って収穫ユニット14へと移動させることが可能となっている。
【0046】
水路2の少なくとも一つにおいては、藻類を生育させるための基質16が解放可能な方法でキャリア9に取り付けられて設けられている。運転モードにおいて、水路2は、その中に設置される基質16又は基質群が完全に水中に沈むような水準まで水で満たされている。
【0047】
好ましくは、基質16は、例えば、主な接着表面を形成しているスクリーンの形状の人工基質であり、それによって、主な接着表面は、移動方向若しくは水路の長手方向に対して直角又は所定の角度(斜めに)に向けられている。
【0048】
基質を有するいくつかのキャリアは、異なる水路2において交互に設置されるのが好ましいのは明らかである。この人工基質をともなった移動キャリアの構成はキャリア9列とみなすことができる。
【0049】
人工的な基質に関して、理想的には、自然の基質とあまりにも似ていなくて微生物群がもはやそれらに付着することがなくなることがないように、フラクタル形状又はそのような形状及び形式とすることにより、人工的な基質16が所与の容積のための最大付着面を有するものであることが分かる。
【0050】
水路2を通って移動したときに、水流が基質の上側を横切って通過してシステムの横断的な構成を可能とするような方法で、基質16が水路2内に設置されている。従来、使用された基質の重要課題は、バイオマスが基質に増加すると、水の通路が完全に塞がれる水位に到達するまでであってもシステムが目詰りして、流れが止まることである。しかし、本発明に係る基質のフラクタルのような性質により、基質の一部にバイオマスが生じることが可能になり、また基質のその隣接部分に向けて流れが続くことを可能にする幅広い開口も存在するため、流れは維持される。実施例は、基質を形成する一連のスクリーンを保持するキャリアである。これらのスクリーンはフラクタルパターンで孔が形成されている(例えば、Serpienskiガスケット)。このパターンは四つの正三角形に三角形を分割する。中央の三角形は開放されており、三つの外の三角形は、同様に自己相似フラクタルパターンで孔が形成されている。これは理論的に無限に繰り返される。バイオマスは徐々に塞がることとなる最も小さい孔のゾーンに定着することを始め、後により大きい穴のゾーンを目詰まりさせるが、常に、水の流れが続くことを可能にする中央の開口が存在することとなる。任意の時点で表面はある程度塞がった状態となり、流れによって引き起こされるスクリーン上の障害が存在することとなる。この障害は、計器によって測定することができ、収穫の理想的時期の指標として利用することができる。次いで、基質をともなうキャリアは引出機により引き出される。この内部のフラクタルパターンの構成により、基質をともなうキャリアを横断的に配置させることが可能になる。三角形の表面の他のフラクタルパターンは、例えば四角形、六角形等を同様に選択することができる。従来よりよく理解されているように、フラクタルパターン及び形式は、表面(例えば、Koch曲線)の外側(外部)に見られる。別の構成においては、フラクタルパターンが一つの単一スクリーン(あるいは一つの面)に割り当てるだけではなく多くの連続するスクリーンに亘って連続させるものとなっている。これは原理上は「3次元フラクタロイド」あるいは容積的なものであり、一方、一つのスクリーン上の上記の模様は「2次元フラクタロイド」あるいは平面的なものと考えられる。図7及び図8には、詳細な基質のフラクタルの性質および水を通過及び横断して流すようにする横断方向の位置決めは、非限定的な実施例によりさらに示されている。
【0051】
水路とチャネルにおける水に関して、水路を通るキャリアと基質の動作に対して逆流する水流を作る手段を設備に設けることが好ましいことが分かっている。
【0052】
本発明による収穫方法は、以下の通りである。
【0053】
バイオマスを生育するために、キャリア9は、基質16を搭載し、水路2の入口点4におけるバッファ位置12に配置される。バッファ位置12からのキャリア9は、水路2に移動され、更に輸送手段8によってこの水路を下る。
【0054】
一般に、本発明は、人工基質16が水路2内で移動するキャリア9に取り付けられることを、基本的に伴うものである。これらのキャリア9は、徐々に入口点4から出口点5へ水路2に沿って移動する。好ましくは、水路の水は、出口点5から入口点4へ流れる流水(逆流)である。
【0055】
人工基質16をともなったキャリア9は、全く藻類が付着していないか又はほんの僅かしか付着していないキャリア9上の新しく挿入された人工基質として入口点4から始まる。キャリア9は、それらが水路2に沿って移動するに連れて、人工基質16は、徐々に微生物と定着し、微生物のバイオマスが増加する。キャリア9上の人工基質16が、この水路2に留まっている全期間、バイオマスは増加する。
【0056】
典型的に、増加したバイオマスは、一定時間が経つと飽和状態に達する。ここでは、バイオマスが、流れによってもぎ取られる(垂れ下がる)ことにより、バイオマスが失われ始めるときに飽和したと定義する。
【0057】
最大限達成できる密度より、むしろ最適生産性でバイオマスを生育することを目標とするとき、飽和に達するまでの期間が、結果として、この移動構成で目標とされる水路2におけるキャリアの滞留期間となる。
【0058】
好ましい滞留期間(滞留時間)と水路の長さは、水路を通って動くキャリアの速度を決定する。この期間の終わりに、キャリアが、水路2の出口点5に到着したときに、人工基質16は、最適に微生物群体で覆われた状態となる。この時点で、それらは、水路2からバッファ位置に排出される。
【0059】
基質16及びそれに対応するバイオマスが水から取り除かれることなく、基質16はこのバッファ位置の中に設置される。バッファ位置は、水中にある。水からの基質の除去は、原理上可能であるが、これは、重力を通じて微生物群体の部分的又は全体的な亀裂をもたらし、その結果、バイオマスの一部又は全部が流れの中で失われることとなる。水から外へ基質を持ち上げることなくバッファ位置へ基質を動かすことは、時間単位当たり及び単位面積当たりのバイオマスの最終的な生産高にとってより有益である。
【0060】
バッファ位置から、基質は、輸送チャネル7を介して収穫装置14に輸送され、ここでバイオマスは、基質16から除去され、更に後処理を受ける。上記のように、少なくとも収穫まで、バイオマスが、水中に沈んだ状態で維持されることが好ましい。よれば、明らかに輸送チャネル7及び対応するバッファ位置11の水位は、覆われた基質16を水中に入れるために十分に高くなければならない。
【0061】
基質の輸送は別として、好ましくは、輸送チャネル7は、移動する基質に対して逆方向に水路を通じて導かれる栄養分に富んだ水を流入させる機能を有するが、分離チャネル又はパイプラインを使って、栄養分豊かな流入水を提供することも可能である。
【0062】
好ましくは、輸送チャネルにおけるバッファ位置は、これらの人工基質の多数を、そこに設置できるような方法で構成される。バッファ位置は、各生育水路2の始まりで、新しい栄養分に富んだ水(流入水)が連続的に提供される。この時点で、栄養分を含む豊かな水は、最高濃度の栄養分を含む。これによってバイオマスは、しばらくの間、流れの減少又は栄養制限によるどんな悪影響を受けることなく、その場に滞留することができる。この期間は、輸送装置が、衝突することなく、横断的なチャネルを上下に移動することが可能になる。
【0063】
輸送チャネルに沿った基質の輸送は、それらが最適な生育状態(すなわち、栄養分に富んだ水流中に沈められた状態)の下で保たれるような方法でバイオマスを収集する輸送装置13の手段によって達成される。この構成は、バイオマスの最大の生産性と最小の損失を可能にする。輸送装置13は、所定の時間枠の範囲内で輸送チャネルを上下に移動し、それは、バッファ位置11によって可能とされる。この時間枠は、ステアリングシステム(例えば、コンピュータ,PLC)が、回収の最適シーケンスを決定することを可能とする。原理上、これは、観察によって決定して、マニュアルで実行することができるが、自動化は、利用可能な資源(人的資源、時間、エネルギなど)の更なる最適化と経済的な使用を可能にする。
【0064】
収集の後、輸送装置13は、輸送チャネル7に沿って中央の収穫及び処理装置14に移動し、ここで基質が運ばれて、輸送装置13は、新しく覆われた基質を回収するために戻ることができる。
【0065】
バイオマスの除去後、基質16とキャリア9は、キャリア9列を維持するために水路に再ロードすることができる。この列は、設定された速度で連続的に動作している。この移動するキャリアの構成において、人工基質をともなった新しいキャリアは、各生育水路の始めに連続的に挿入しなければならないのは明らかである。これは、移動するキャリア列が完成した状態となり、発生した微生物のバイオマスの連続供給を最終的に提供するためには不可欠である。移動するキャリア列におけるキャリア間の間隔を変える、すなわち、離間又は近接させる更なる可能性が存在するのは、この再ロードする地点である。その間隔は、例えば、水的性質の変化、季節性、好ましいバイオマスなど、いくつかの理由で変えることができる。
【0066】
生育水路の再ロードは、様々な方法で行うことができる。新しいキャリアは、機械又は装置によってマニュアルで、又は自動的に挿入することができる。それらは、地上にある位置又は水中にある位置から挿入することができる。
【0067】
理想的には、再ロードは、統合された構成によって実行され、その構成を通じて、複数の機能が、実行される。一つの可能な構成は、流水チャネルと新しいキャリアのローディングチャネル6の機能を統合することである。このチャネル6は、各生育チャネルから、栄養分が枯渇した水又は流出物を収集する。チャネル6は、流出物を更なる処置、利用、リサイクル又は排出のためにおよそ中央の位置に運ぶ。このチャネルに沿って、上述のローディング装置は、上下に移動して、新しいキャリアを各生育水路2に挿入する。ローディング装置は、およそ中央の位置から新しいキャリアを回収し、ここでキャリアは、準備され、各生育水路2に運ばれる。
【0068】
おそらく、中間のローディングバッファは、実際の移動キャリア列内にキャリアが移動される前の、中間の待機場所とみなすことができる。これは、再ロードチャネルの第3の機能とみなすことができる。代替的に、このローディングバッファ12は、各々の伸びた水路に統合される。
【0069】
別の実施例は、「乾式」ローディングバッファ上にキャリアを設置する地上にある装置で構成される。この乾燥したローディングバッファから、それらは、続いて、自動バッファ構造によって放出されて、移動キャリア内に水中で設置される。その流出水は、更なる処理、又は廃棄のために分離チャネルで捉えられる。
【0070】
「湿式」ローディングバッファの利点は、定着の効率性を増加させることである。典型的に、そのバッファは、人工基質をともなった多数のキャリアを保持する。典型的に、これらは、互いに近接配置される。つまり、これは、実質的にそれらが生育チャネルで有する内部間隔より近い。したがって、これらの密集したキャリアは、流出物からバイオマスの小粒子を「捕捉する」フィルタの働きをすることになる。そのため、微生物種は、より容易に、ローディングバッファで「待機中」のこれらのキャリアに定着することとなるだろう。
【0071】
自動的にロードされるローディングバッファ12の更なる利点は、ローディング装置が異なるタイプの人工基質を有するキャリア9を積み込めることである。これにより、人工基質内の所定の配列を生育水路内で形成することが可能になる。
【0072】
これは、生育水路における水流のより大きな制御を可能にする。例えば、特定の連続する人工基質(フラクタロイド)を用いた、水流の更なる制御は、増殖するバイオマスによって運動エネルギのよりよい獲得を可能にし、同様に、増殖するバイオマスによる必要な栄養分の改善された再生と吸収を可能にする。
【0073】
逆流
好ましくは、水路2における水流の方向は、逆流である。この場合、逆流は、生育中のバイオマスに栄養供給を補充するために新鮮な栄養分に富んだ水(流入水)を様々な生育水路2に導く輸送チャネル7を用いて達成される。最初の定着段階で、最低の栄養水準が、バイオマスの最低密度を与えるが、その逆流システムは、生育水路の終わりでバイオマスを最高密度にするための高い栄養分を提供する。
【0074】
この構成は、微生物のバイオマスの生育段階の任意の時点において、バイオマスの生育に影響を及ぼすため実質的に栄養制限を防ぐ。
【0075】
逆流状態において、人工キャリアは、水路の基質から離れる小さなバイオマス粒子から直接生成された連続する種の雨によって接種されるものであってもよい。特に、この自動接種は、開放システムと結合して有益である。「開放」とは、局所的な種のプールから生成される外部の種の雨が基質に接種できるようにシステムと、特に基質は環境に対して開放されていることを意味する。この自然な接種は、微生物群体が適合した微生物群体の部分を形成するために新しい種を複合適応システムとして選ぶことを可能にするメカニズムである。このようにして、その群体は、連続的に環境の変化に適合し、開放型連続システムが、作られる。ここで、開放は局所的な種のプールに対して開くことを表し、連続は、連続的に適合する群体を表す。
【0076】
上述のように、更に、逆流システムは、有益な方法で変更された局所的に生成された種の雨をもたらす。外部の種の雨からの種が、流入水の入口でバイオマスによって捉えられると同時に、必然的に、所定の数の微生物は、キャリアの列の基質上で増殖するバイオマスによって連続的に放出される。その結果、流れの中で滞留する有機体が多くなるに連れて、珠芽(又は定着ユニット)の数も多くなる。水路の終端における発生微生物のバイオマスは、すでに最適に環境に適合しており、よれば、この群体から生成された種は、下流環境における定着により適合したものになる可能性が高い。
【0077】
これは、実質的に、種の雨が、定着により適しているとして、既に選ばれた種を含むような方法で、当該種の雨を変更する。よれば、この種の雨における有機体の定着の成功の可能性は、かなり高い。珠芽の数が、より多くなるので、この構成は、局所的な種のプールからの新しい種を組み込むことによって条件の変化に対する、群体の適合を除外しない。既に適合した群体からの種による連続する接種は、自己接種と呼ばれる。自己接種を可能にするそのメカニズムは、より安定した予測可能な発生バイオマスとそれ故に最終的な生産物のバイオマスの配合を可能にする。また、それは、新しく挿入された人工キャリアのより効果的な定着を可能にする。
【0078】
いわゆる、複合適応システム(CAS)アプローチを使用して、実用的に実行可能な技術工学的な開放型連続システムにCAS原理を転換することにより、微生物を生育するための自然環境(生息環境)のシュミレーションを行うことができる。自然の微生物群体は、変化する模擬環境にダイナミックに適応することが可能であり、群体の組成が自律的に変化し、この群体が変化する模擬環境条件に対して自己適応するものとなっている。自律的適応と局所的反応は群体の自己組織化をもたらす。結果として、最適の生息環境が、作り出され、そこでは、自然的で多種な微生物群体が自律的に反応及び適応してバイオマスの最適生産がもたらされる。単一の培養技術の典型的な生産物と対比して、自然の、及び多様な群体を使用することにより、より安定した生息環境が可能となり、それにより、改良されたバイオマスの生産を改善して、単位面積当たりの産出高を増加させることができる。
【0079】
更に、流入水の流れを適用することができ、水路の場所の機能を変化させることもできる。実際には、可変的な流入水流を提供することにより(速度水準であろうと栄養水準であろうと)、バイオマスの生育状態の制御を向上させることができる。
【0080】
例えば、その流速は、水路2の出口点5で垂れ下がりを制限するために低く選択されるが、入口点4のより近くでは、好ましい水速は、いわゆる種の雨を生成するために高くてもよい。
【0081】
波の誘導
栄養分配と自己接種に関する利点は別として、逆流構成は、波の形成をもたらすことができるという利点も有する。もちろん、波を生成する更なる手段を、水路2内に設けることも可能である。
【0082】
水面の波の作用は、逆流構成の直接的な結果であってもよい。人工基質をともなったキャリアは、水面の下に比較的浅く設置される。逆流は、人工基質に遭遇して、穿孔のフラクタルなパターンを介して流される。しかしながら、水流の運動力の一部は、人工基質の上端に作用して、基質の上に水の一部を押し上げることとなる。
【0083】
本システムの構成が、水面の直ぐ下で起こるそのような自然なものであるので、これは、水が基質の上を流れる/飛び越えるときに、波をもたらす。これは、水流が、基質の上端に衝突するたびに繰り返し起こる。その結果は、生育水路の全長に沿った想定される波の作用のパターンである。これは、得られた波の作用が、入射する日光のよりよい獲得をもたらすという点で有益である。よれば、全ての構成は、より多くの光エネルギが水柱に入るのを可能にし、その後に、微生物のバイオマスに取り込まれるのを可能にする。本発明者は、太陽エネルギをバイオマスにより効率的に変換するために水流の運動エネルギと基質の正確な位置決めとの間の相互作用を利用する。
【0084】
更に、波動効果は、バイオマスの生育に有益な効果を有する点滅光効果をもたらす。点滅光効果は、選択された組成の多いバイオマスをもたらす。
【0085】
波動作用を生成するために、キャリア列の中で続くキャリア間の距離が重要であるが、波動作用は、また、水流速度、水面下の基質の深さ、基質配置、水路配置のようなその他のパラメータに依存することは明らかである。よれば、当然のことながら、一又はそれ以上のパラメータによる直接的な実験は、本発明の範囲を離れることなく、波の生成をもたらすこととなる。
【0086】
逆流からおそらく生じる以外の更なる波の誘発は、ポンプによる手段のような公知の従来技術によって提供することができる。
【0087】
基質の位置決め
更に、図10に概略的に示されるように、設備には、光源に対して基質を傾斜させるような位置決めを可能にする手段を設けることが好ましい。
【0088】
日中において、及び/又は季節の変化とともに、太陽の位置が、人工基質の位置に対して変化するとき、人工基質の傾斜を、元の位置で変化させることができれば、有益となるであろう。この調節可能な傾斜は、バイオマスの生育と入射する日光又はその他の光源との間の関係を最適化するのに役立つ。
【0089】
日光があまりに多い場合(例えば、夏の晴れた日)、変化した傾斜は、光合成阻害を引き起こす可能性のある露光過多からバイオマスを保護する日陰を増やす。一方、日光があまりにも少ない場合(例えば、曇った冬の日)、垂直に入射する日光の最大限の獲得を達成するために傾斜を変えることができる。
【0090】
人工基質の傾斜は、光学測定装置と関連するいくつかのフィードバックシステムを通じてマニュアルで、又は自動的に、日中に変えることができる。
【0091】
更に、適合した傾斜は、特定の組成のバイオマスの生育を最大限に促進するように決定される。例えば、特定の群体は、日陰の多い生息地を好む可能性がある。
【0092】
この調節可能な傾斜の別の態様において、バイオマスの生育を最大限にするために、太陽の入射角と水面の波の傾斜に対して同時に、傾斜を最適に適合させることができる。
【0093】
波動作用と基質の傾斜はともに、動いている基質上で藻類又は植物を生育させる方法にとって有益であるだけでなく、上記のような同じ理由により、固定された基質上で生育する藻類にも良い影響をもたらすことが分かる。
【0094】
本発明は、記載の実施例及び方法に決して限定されるものではなく、本発明に係る藻類又は植物の収穫は、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更によって実現される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放型連続システム内で藻類及び/又は植物を収穫するための方法であって、前記藻類及び/又は植物が沈水生基質上で生育されるものとして、前記基質が前記藻類及び/又は植物が生育中に、移動されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記基質を入口点から出口点に移動させることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記藻類又は前記植物が、前記入口点から前記出口点に移動中、沈水されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、前記基質が、前記入口点で接種されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、前記藻類又は前記植物が、前記出口点で収穫されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法において、前記基質が、水流中に沈水しており、前記水流は、前記基質に対して逆流することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記基質が、前記水流に対して斜めに、好ましくは垂直に設置される主要表面を規定することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法において、波が水流内で生成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法において、光源に対して前記基質を位置決めすることを特徴とする方法。
【請求項10】
藻類又は植物を収穫するための設備において、前記設備が、(i)少なくとも一本の水路と、(ii)水路内に水流を生成するための手段と、(iii)少なくとも1つの基質であって、その上に藻類又は植物を生育させるために前記水路内に設置される基質と、(iv)前記基質から前記藻類又は前記植物を除去するための収穫手段とを具え、前記設備が更に、(v)前記藻類又は前記植物の生育中に、前記基質を移動させるための手段とを具えることを特徴とする設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−538671(P2010−538671A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525367(P2010−525367)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062585
【国際公開番号】WO2009/037355
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510078252)エスビーエイイー インダストリーズ エヌヴィ (1)
【氏名又は名称原語表記】SBAE INDUSTRIES NV
【Fターム(参考)】