説明

蛇腹レンズフードの伸縮機構

【目的】 粗、微調整のどちらでも容易に調整可能な蛇腹レンズフードの伸縮機構を提供する。
【構成】 回動可能な操作部60と、前枠14と後枠16を伸縮自在に連結するパンタグラフ30と、パンタグラフ30に設けられたカムフォロア38a、38bと、このカムフォロア38a、38bを蛇腹の伸縮方向とほぼ直交する方向に案内するカムフォロアガイド溝46a、46bと、操作部の中心より偏心した位置とカムフォロア38a、38bとを連結する連接部材50a、50bとを備える。調整時にマーク61と基準線44を参照すれば、蛇腹12を所定の繰出量に適切かつ迅速に調整できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カメラ等に用いられる蛇腹レンズフードを伸縮させる機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、蛇腹レンズフードを伸縮させる機構として、例えばビネットプレート等が取付け可能な前枠と、レンズ、フィルタ等が固定されたカメラ本体に接続された後枠とを連結するパンタグラフを有するものが知られている。この伸縮機構として、手動により調整するもの、あるいはネジにより調整するものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の手動式によるものでは、調整が粗くなってしまい、微調整が困難であった。一方、ネジにより調整するものでは、伸縮を調整する毎にネジを調整せねばならず、作業が煩雑であった。
【0004】本発明は、粗調整、微調整のどちらでも容易に調整可能な蛇腹レンズフードの伸縮機構を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る蛇腹レンズフードの伸縮機構は、上記の目的を達成させるため、前枠と後枠を蛇腹により伸縮自在に連結した蛇腹レンズフードの伸縮機構であって、回動可能な操作部と、前枠と後枠を伸縮自在に連結するパンタグラフと、パンタグラフに設けられたカムフォロアと、このカムフォロアを蛇腹の伸縮方向とほぼ直交する方向に案内する案内手段と、操作部の中心より偏心した位置とカムフォロアとを連結する連接部材とを備え、操作部を回動することにより前枠と後枠が蛇腹の伸縮方向に移動することを特徴としている。
【0006】また、操作部に、カメラ本体に取付可能なレンズに対応した蛇腹の伸縮量を示すマークが設けられ、パンタグラフのマークに対応する位置に、基準線が設けられていれば、調整時に基準線とマークを参照できるとともに、カメラ本体に装着可能な各レンズに応じて蛇腹の伸縮量をより適切かつ容易に調整でき、好ましい。
【0007】
【実施例】以下図示実施例により本発明を説明する。図はいずれも本発明の一実施例を示すものであり、図1は蛇腹レンズフードの収納時における右側面図、図2は蛇腹レンズフードの繰出時における右側面図、図3は図1のIII-III線に沿って切断したときの断面図、図4は蛇腹レンズフードの伸縮機構の分解斜視図である。
【0008】図1および図2から理解されるように、前枠14と後枠16は、蛇腹12により連結されて伸縮自在であり、その内部は外部から遮光されている。前枠14には例えばビネットプレートが取付け可能であり、後枠16は所定のレンズ、フィルタ等が装着されたカメラ本体(図示せず)に接続されている。操作部60を回動させるとパンタグラフ30を介して前枠14が進退し、蛇腹12が伸縮する。
【0009】パンタグラフ30は、前枠14と後枠16を伸縮自在に連結し、これらを伸縮方向に案内する機能を有するものであり、後述するアーム部材32a〜32d、支点ローラ34a、34b、カムフォロア38a、38b、ガイドローラ36a、36b、37a、37b、前枠係合部材18、後枠係合部材20および枠材40等で構成される。
【0010】前枠係合部材18と後枠係合部材20は、前枠14と後枠16にそれぞれ固定され、これらの両端には、前枠14および後枠16に沿って平行に延びるローラガイド溝22a、22bおよび23a、23bが形成される。
【0011】アーム部材32a〜32dは、細長い板状部材で形成され、互いにスムーズに回動自在に連結されている。すなわちアーム部材32a、32bは、その中央部において支点ローラ34aにより連結され、同様にしてアーム部材32c、32dは、支点ローラ34bにより連結されている。
【0012】アーム部材32a〜32dは、ガイドローラ36a、36b、37a、37bを介して前枠係合部材18および後枠係合部材20に連結している。ガイドローラ36a、36bは、アーム部材32a、32bの端部に設けられ、それぞれローラガイド溝22a、22bに摺動自在に係合している。同様にしてアーム部材32c、32dの端部に設けられたガイドローラ37a、37bは、ローラガイド溝23a、23bに係合している。これによりガイドローラ36、37は、ローラガイド溝22、23に沿ってスムーズに移動することができる。
【0013】カムフォロア38a、38bは、パンタグラフ30に設けられ、アーム部材32b、32dおよびアーム部材32a、32cを互いに回動自在に連結している。
【0014】枠材40は、前枠係合部材18と後枠係合部材20の間に設けられ、これらと平行である。また枠材40は1枚の細長い板状部材をコの字状に折り曲げて形成され、すなわち蛇腹12の両側面に対向する2つの板状部と蛇腹12の下面に対向する板状部とから構成されており、蛇腹12の下側面と左側面に備えられたパンタグラフ(図示せず)にも連結されている。
【0015】枠材40には、前枠14および後枠16に平行に延びるカムフォロアガイド溝46a、46bが形成されている。カムフォロアガイド溝46a、46bは、対向する各ローラガイド溝22、23の間に位置し、これらとほぼ同じ長さを有している。カムフォロアガイド溝46a、46bには、上述したカムフォロア38a、38bがそれぞれ移動自在に係合している。
【0016】図3に示すように、操作部60は、作業者が容易に操作可能な蛇腹12の側面に位置し、その軸心周りに回動可能に設けられている。操作部60には、円盤状の操作盤62と、操作盤62の下面に固定された軸部64と、連接部材支持軸70a、70bとを有している。
【0017】軸部64の円周方向に沿って凹設された溝部65には、枠材40に形成された孔42が回動可能に嵌入し、操作部60が枠材40に回動可能に取り付けられている。軸部64の先端に形成された軸止部66は、操作部60が枠材40から外れるのを防いでいる。
【0018】連接部材支持軸70a、70bは、軸部71a、71bと、これらの下端に形成された軸受部72a、72bとにより構成される。軸部71a、71bは、操作盤62の下面で中心より偏心した互いに対向する位置に固定され、次に述べる連接部材50a、50bの一端を回動自在に支持している。軸受部72a、72bは、連接部材50a、50bが操作部60から外れるのを防いでいる。
【0019】連接部材50a、50bは、操作部60の中心より偏心した位置と、カムフォロア38a、38bとを連結しており、操作部60の回動による変位を蛇腹12の伸縮方向とほぼ直交する方向の変位としてパンタグラフ30(アーム部材32a〜32d)に伝達する機能を有している。このような連接部材50a、50bは、図4に示すように、細長い板状部材に形成され、両端部には軸孔54a、54bおよび連結孔56a、56bが穿設される。
【0020】軸孔54a、54bには軸部71a、71bが回転自在に嵌入し、その位置において操作盤62に回転自在に連結している。これにより連接部材50a、50bは、操作部60の回動に伴ってスムーズに移動する。
【0021】連結孔56a、56bにはカムフォロア38a、38bがそれぞれ回転自在に嵌入しており、連接部材50a、50bは、カムフォロア38a、38bを介して枠材40およびアーム部材32a〜32dと連結している。連接部材50a、50bは、カムフォロア38a、38bとともにカムフォロアガイド溝46a、46bに沿って移動可能である。
【0022】図1に示す収納時では、カムフォロア38a、38bは、蛇腹12の伸縮方向と直交する方向において最も外側寄りの位置、すなわち操作部60から最も遠い位置に定められて、パンタグラフ30は折り畳まれた状態に定められる。
【0023】これに対して図2に示す繰出時では、カムフォロア38a、38bは、蛇腹12の伸縮方向と直交する方向において最も内側寄りの位置、すなわち操作部60から最も近い位置に定められて、パンタグラフ30は広げられた状態に定められる。
【0024】なお、操作盤62の回動位置に対するカムフォロア38の位置は、連接部材支持軸70a、70bの偏心位置および連接部材50a、50bの長さ等により定められ、これらの値は目的に応じて適宜定められる。
【0025】操作盤62の上面、すなわち作業者に視認される面側には、4つのマーク61a〜61dが四方に設けられている。また、枠材40には基準線44a、44bが、操作盤62の外側において視認可能な位置で、マーク61a〜61dに対応する位置に設けられる。蛇腹12の伸縮量調整時にマーク61と基準線44を参照しつつ操作盤62を回動すれば、蛇腹12を所定の伸縮量に迅速かつ的確に調整し易くなる。
【0026】また本実施例ではマーク61a〜61dが、蛇腹12が最も収納された時と最も繰出された時に基準線44a、44bにあうように設けられているが、例えば取付可能なレンズの繰出量に応じてマークを設ければ、各レンズに対応した繰出量が極めて迅速かつ適切に調整でき、効果的である。
【0027】次に本実施例の作用を説明する。図1に示す状態から操作盤62を反時計方向に回動させると、連接部材支持軸70a、70bが操作盤62と一体的に回転し、連接部材50a、50bを介してカムフォロア38がカムフォロアガイド溝46a、46bに沿って伸縮方向とほぼ直交する方向であって操作盤62に近接する方向にそれぞれ摺動案内される。これによりカムフォロア38a、38bが連結されているアーム部材32b、32dおよび32a、32cの一端も操作盤62の方向に案内され、支点ローラ34a、34bをそれぞれ中心としたアーム部材32b、32dおよび32a、32cの交差角度αは大きくなり、アーム部材32b、32dおよび32a、32cの他端が互いに離間する方向に移動する。
【0028】上記動作と同期して各ガイドローラ36、37もまた、それぞれローラガイド溝22、23に沿って操作盤62に近付く方向に移動し、これにより前枠係合部材18と後枠係合部材20は互いに離間する方向に押し出され、互いに平行に移動する。また、図示しない蛇腹12の下側面、左側面に備えられたパンタグラフも上記動作と同期して作用し、前枠14、後枠16および枠材40は互いに離間する方向に押し出され、図2に示すように前枠14、後枠16および枠材40は互いに平行に移動し、蛇腹12が伸張する。
【0029】一方、図2の状態から操作盤62を時計方向に回動させると、各連接部材支持軸70が操作盤62と一体的に時計回りに回転し、上述の場合とは逆に各カムフォロア38およびこれに連結する各アーム部材32の一端が操作盤62から相対的に離間する方向に摺動移動して交差角度αは小さくなり、各アーム部材32の他端は互いに近接する方向に移動し、前枠係合部材18と後枠係合部材20が互いに接近する方向に移動して蛇腹12が収縮する。
【0030】以上のように本実施例によれば、操作盤62の回動を強制的にある方向に付勢する手段を設けていないため、操作盤62を容易に回動することができるとともに、蛇腹12を手動で直接回動させることもでき、蛇腹12の伸縮量を容易に粗調整することができる。
【0031】また本実施例では、操作盤62を大きく回転させることにより蛇腹12を伸縮させるように構成されている。したがって、蛇腹12の伸縮量の微調整が可能であり、例えば操作者が直接蛇腹12を伸縮させるよりもはるかに高精度に伸縮量を調整することができる。
【0032】さらに本実施例では、基準線44とマーク61を参照することにより、蛇腹12の伸縮量が適切かつ容易に調整される。なお、マーク61が、カメラ本体に装着可能なレンズの伸縮量に対応していれば、さらに適切かつ容易に伸縮量を調整することができる。
【0033】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、粗調整、微調整のどちらでも容易に調整可能な蛇腹レンズフードの伸縮機構が得られる。
【0034】また請求項2に記載の構成によれば、蛇腹の伸縮量が、カメラ本体に装着可能な各レンズに応じて適切かつ容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一本実施例に係る蛇腹レンズフードの収納時における右側面図である。
【図2】蛇腹レンズフードの繰出時における右側面図である。
【図3】図1のIII-III 線に沿って切断したときの断面図である。
【図4】本実施例に係る蛇腹レンズフードの伸縮機構の分解斜視図である。
【符号の説明】
12 蛇腹
14 前枠
16 後枠
18 前枠係合部材
20 後枠係合部材
22a、22b、23a、23b ローラガイド溝
30 パンタグラフ
32a〜32d アーム部材
34a、34b 支点ローラ
36a、36b、37a、37b ガイドローラ
38a、38b カムフォロア
40 枠材
44a、44b 基準線
46a、46b カムフォロアガイド溝
50a、50b 連接部材
56a、56b 連結孔
60 操作部
61a〜61d マーク
70a、70b 連接部材支持軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前枠と後枠を蛇腹により伸縮自在に連結した蛇腹レンズフードの伸縮機構であって、回動可能な操作部と、前記前枠と後枠を伸縮自在に連結するパンタグラフと、前記パンタグラフに設けられたカムフォロアと、このカムフォロアを蛇腹の伸縮方向とほぼ直交する方向に案内する案内手段と、前記操作部の中心より偏心した位置と前記カムフォロアとを連結する連接部材とを備え、前記操作部を回動することにより前記前枠と後枠が蛇腹の伸縮方向に移動することを特徴とする蛇腹レンズフードの伸縮機構。
【請求項2】 前記操作部に、カメラ本体に取付可能なレンズに対応した蛇腹の伸縮量を示すマークが設けられ、前記パンタグラフの前記マークに対応する位置に、基準線が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蛇腹レンズフードの伸縮機構。
【請求項3】 前記案内手段が、前記前枠および後枠に平行に延びるとともに、前記カムフォロアが摺動自在に係合するカムフォロアガイド溝を有し、前記パンタグラフが、前記カムフォロアガイド溝が形成され、前記操作部が取付けられた枠材を有することを特徴とする請求項1、2に記載の蛇腹レンズフードの伸縮機構。
【請求項4】 前記パンタグラフが、互いに連結されたア−ム部材を有し、前記カムフォロアが、前記アーム部材の前記蛇腹の伸縮方向とほぼ直交する方向に移動する位置で連結することを特徴とする請求項1、2に記載の蛇腹レンズフードの伸縮機構。
【請求項5】 前記前枠および後枠にそれぞれ固定され、前記前枠および後枠に沿って延びるローラガイド溝が形成された前枠係合部材および後枠係合部材と、前記アーム部材に設けられ、前記ローラガイド溝に摺動自在に係合するガイドローラとを有することを特徴とする請求項1、2に記載の蛇腹レンズフードの伸縮機構。

【図1】
image rotate


【図3】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate