説明

蛇腹レンズフードの伸縮機構

【目的】 粗調整、微調整のどちらでも容易に調整可能な蛇腹レンズフードの伸縮機構を得る。
【構成】 回動可能な操作部60と、前枠14と後枠16を伸縮自在に連結するとともに、互いに交差するアーム部材32a〜32dと、この交差部近傍でアーム部材32c、32dに係合するとともに、操作部60に係合する第1ピン47、第2ピン48とを備える。操作部60を回動すると、第1ピン47または第2ピン48に係合するアーム部材32c、32dの交差角度αが変化し、アーム部材32a〜32dを介して蛇腹12が伸縮する。調整時にマーク61を参照すれば、蛇腹12を所定の繰出量に適切かつ迅速に調整できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カメラ等に用いられる蛇腹レンズフードを伸縮させる機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、蛇腹レンズフードを伸縮させる機構として、例えばビネットプレート等が取付け可能な前枠と、レンズ、フィルタ等が固定されたカメラ本体に接続された後枠とを連結するアーム部材を有するものが知られている。この伸縮機構として、手動により調整するもの、あるいはネジにより調整するものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の手動式によるものでは、調整が粗くなってしまい、微調整が困難であった。一方、ネジにより調整するものでは、伸縮を調整する毎にネジを調整せねばならず、作業が煩雑であった。
【0004】本発明は、粗調整、微調整のどちらでも容易に調整可能な蛇腹レンズフードの伸縮機構を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る蛇腹レンズフードの伸縮機構は、上記の目的を達成させるため、前枠と後枠を蛇腹により伸縮自在に連結した蛇腹レンズフードの伸縮機構であって、回動可能な操作部と、前枠と後枠を伸縮自在に連結するとともに、互いに交差するアーム部材と、この交差部近傍でアーム部材に係合するとともに、操作部に係合する係合部とを備え、操作部の回動にともなって、交差部の交差角度が変化することを特徴としている。
【0006】また、操作部に、カメラ本体に取付可能なレンズに対応した蛇腹の伸縮量を示すマークが設けられていれば、調整時に基準線とマークを参照できるとともに、カメラ本体に装着可能な各レンズに応じて蛇腹の伸縮量をより適切かつ容易に調整でき、好ましい。
【0007】
【実施例】以下図示実施例により本発明を説明する。図1〜4はいずれも本発明の一実施例を示すものであり、図1は蛇腹レンズフードの収納時における右側面図、図2は蛇腹レンズフードの繰出時における右側面図、図3は図1のIII-III線に沿って切断したときの断面図、図4は蛇腹レンズフードの伸縮機構の分解斜視図である。
【0008】図1および図2から理解されるように、前枠14と後枠16は、蛇腹12により連結されて伸縮自在であり、その内部は外部から遮光されている。前枠14には例えばビネットプレートが取付け可能であり、後枠16は所定のレンズ、フィルタ等が装着されたカメラ本体(図示せず)に接続されている。操作部60を回動させるとパンタグラフ30を介して前枠14が進退し、蛇腹12が伸縮する。
【0009】パンタグラフ30は、前枠14と後枠16を伸縮自在に連結し、これらを伸縮方向に案内する機能を有するものであり、後述するアーム部材32a〜32d、支点ローラ34a、34b、ガイドローラ37a、37bおよび前枠係合部材18、後枠係合部材20等で構成される。
【0010】前枠係合部材18は、前枠14の中央付近に固定され、この前枠係合部材18には後述する支点ローラ34aが回転自在に嵌入されている。後枠係合部材20は、後枠16の両端にそれぞれ固定され、これらには後枠16に沿って平行に延びるローラガイド溝23a、23bが形成される。
【0011】図2に示すように、後枠16には案内部材25a、25bが形成され、これらに形成された案内溝26a、26bは、蛇腹12の伸縮方向に向かって平行に延びている。案内溝26a、26bには、案内ピン27a、27bが摺動自在に係合し、これらに沿って移動可能である。
【0012】アーム部材32a〜32dは、前枠係合部材18および後枠係合部材20に連結し、これらを伸縮方向に案内する機能を有している。アーム部材32a〜32dは、細長い板状部材で形成され、支点ローラ34a〜34cにより互いにスムーズに回動自在に連結されている。
【0013】アーム部材32c、32dは中央部で互いに交差し、この交差部にそれぞれ軸孔32ca、32daが形成される。軸孔32ca、32daには、後述する軸部64が嵌入している。これにより、アーム部材32c、32dは、交差部で連結しており、その交差角度α(図1)は蛇腹の伸縮にともなって変化する。
【0014】ガイドローラ37a、37bは、アーム部材32c、32dの端部に設けられ、ローラガイド溝23a、23bに摺動自在に係合している。これによりガイドローラ37a、37bは、ローラガイド溝23a、23bに沿ってスムーズに移動することができる。
【0015】図3に示すように、蛇腹12の側面には操作部60が、その軸心周りに回動可能に設けられている。図4に示すように、操作部60には円盤状の操作盤62が、作業者が容易に操作可能な位置に形成される。操作盤62の下面側には第1係合孔71が楕円状に形成され、更にその内側には第1係合孔71に比し小さい径を有する第2係合孔72が形成されている。第1係合孔71、第2係合孔72は、それらの短径が蛇腹12の伸縮方向に沿うように形成されている。軸部64は、第2係合孔72より内側であって操作盤62の中央より突出しており、その先端には大径部65が形成されている。
【0016】係合部40は、アーム部材32a〜32dおよび操作部60に係合し、操作部60の回動による変位をアーム部材32a〜32dに伝達する機能を有する。係合部40は、薄板状部材41a、41bおよびピン47、48により構成される。
【0017】薄板状部材41a、41bは、薄板状のほぼ楕円形に成形され、それらの長手方向が蛇腹12の伸縮方向と直交するように互いに対向して配置され、四角には突起42a、42bが形成される。
【0018】薄板状部材41a、41bの短径方向には、互いに対向して延びる第1案内ローラガイド溝45a、45bが形成され、これらは蛇腹12の伸縮方向に沿って延びている。また、薄板状部材41a、41bの長径方向には、互いに対向して延びる第2案内ローラガイド溝46a、46bが形成され、これらは蛇腹12の伸縮方向と直交する方向に沿って延びている。このように第1案内ローラガイド溝45a、45bおよび第2案内ローラガイド溝46a、46bは、後述する第1ピン47および第2ピン48を蛇腹12の伸縮方向および伸縮方向と直交する方向に案内する機能を有している。
【0019】薄板状部材41a、41bの中央には支持孔43a、43bが形成され、支持孔43a、43bには軸部64が嵌入している。また、上記案内ピン27a、27bの先端は薄板状部材41bに固定されている。従って、操作部60と係合部40は、一体的に蛇腹12の伸縮方向に移動可能である。
【0020】第1ピン47、第2ピン48は、交差部近傍でアーム部材32c、32dにより区画された四角に配置されている。第1ピン47、第2ピン48は、アーム部材32a〜32dおよび操作部60に係合し、操作部60の回動とともに移動する。第1ピン47、第2ピン48は、それぞれ軸部47a、48aと、これらの周りに形成され、アーム部材32c、32dを挟持する2つの支持部47b、48bとを有している。
【0021】第1ピン47は、第1案内ローラガイド溝45a、45bに嵌入し、先端で第1係合孔71に当接し、その側壁に係合している。2つの第1ピン47は、交差部の上方と下方に位置しており、第1ピン47の軸部47aは、上記交差部近傍でアーム部材32c、32dに係合している。
【0022】第2ピン48は、第2案内ローラガイド溝46a、46bに嵌入し、先端で第2係合孔72に当接し、その側壁に係合している。2つの第2ピン48は、交差部の左右に位置しており、第2ピン48の軸部48aは、上記交差部近傍でアーム部材32c、32dに係合している。
【0023】図1に示す収納時では、第1ピン47は第1案内ローラガイド溝45a、45bの内側よりに、第2ピン48は外側よりに定められ、第1ピン47がアーム部材32c、32dに係合してこれらを押圧し、図2に示す交差角度αが小さくなり、パンタグラフ30は折り畳まれた状態に定められる。
【0024】これに対して図2に示す繰出時では、第1ピン47は第1案内ローラガイド溝45a、45bの外側よりに、第2ピン48は内側よりに定められ、第2ピン48がアーム部材32c、32dに係合してこれらを押圧し、図2に示す交差角度αが大きくなり、パンタグラフ30は広げられた状態に定められる。
【0025】なお、操作盤62の回動位置に対する交差角度αは、第1係合孔71、第2係合孔72の形状および軸部47a、48aの径等により定められ、これらの値は目的に応じて適宜定められる。
【0026】操作盤62の上面、すなわち作業者に視認される面側には、4つのマーク61a〜61dが四方に設けられている。蛇腹12の伸縮量調整時にマーク61a〜61dを参照しつつ操作盤62を回動すれば、蛇腹12を所定の伸縮量に迅速かつ的確に調整し易くなる。
【0027】また本実施例ではマーク61a〜61dが、四角に設けられているが、例えば取付可能なレンズの繰出量に応じてマークを設ければ、各レンズに対応した繰出量が極めて迅速かつ適切に調整でき、効果的である。
【0028】次に本実施例の作用を説明する。図5は、図1の操作盤下面に沿った断面図、図6は、図2の操作盤下面に沿った断面図である。
【0029】図1に示す状態から操作盤62を反時計方向に回動させると、第2ピン48が第2係合孔72の側壁に係合して、第2案内ローラガイド溝46a、46bに沿って内側に向かって移動するとともに第1ピン47が第1案内ローラガイド溝45a、45bに沿って外側に向かって移動する。これにより第2ピン48が交差部でアーム部材32c、32dを左右から押圧し、これらの交差角度αが大きくなる。従ってアーム部材32a〜32dが伸長し、前枠14、後枠16は互いに離間する方向に押し出されて蛇腹12が伸張する。
【0030】一方、図2に示す状態から操作盤62を時計方向に回動させると、第1ピン47が第1係合孔71の側壁に係合して、第1案内ローラガイド溝45a、45bに沿って内側に向かって移動し、これに伴って第2ピン48が第2案内ローラガイド溝46a、46bに沿って外側に向かって移動する。これにより第1ピン47が交差部でアーム部材32c、32dを上下から押圧し、これらの交差角度αが小さくなる。従ってアーム部材32a〜32dが収縮し、前枠14、後枠16は互いに接近する方向に移動して蛇腹12が収縮する。
【0031】上記動作の際、操作部60と係合部40は、操作部60の軸部64が係合部40の支持孔43a、43bに嵌入し、係合部40の薄板状部材41bには案内ピン27a、27bが固定されているため、蛇腹12の伸縮方向に一体的に移動することとなる。また、ガイドローラ37a、37bは、アーム部材32c、32dの移動に伴ってローラガイド溝23a、23bを摺動移動することとなる。
【0032】以上のように本実施例によれば、操作盤62の回動を強制的にある方向に付勢する手段を設けていないため、操作盤62を容易に回動することができるとともに、蛇腹12を手動で直接回動させることもでき、蛇腹12の伸縮量を容易に粗調整することができる。
【0033】また本実施例では、操作盤62を大きく回転させることにより蛇腹12を伸縮させるように構成されている。したがって、蛇腹12の伸縮量の微調整が可能であり、例えば操作者が直接蛇腹12を伸縮させるよりもはるかに高精度に伸縮量を調整することができる。
【0034】さらに本実施例では、マーク61a〜61dを参照することにより、蛇腹12の伸縮量が適切かつ容易に調整される。なお、マーク61a〜61dが、カメラ本体に装着可能なレンズの伸縮量に対応していれば、さらに適切かつ容易に伸縮量を調整することができる。
【0035】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、粗調整、微調整のどちらでも容易に調整可能な蛇腹レンズフードの伸縮機構が得られる。
【0036】また請求項2に記載の構成によれば、蛇腹の伸縮量が、カメラ本体に装着可能な各レンズに応じて適切かつ容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る蛇腹レンズフードの収納時における右側面図である。
【図2】蛇腹レンズフードの繰出時における右側面図である。
【図3】図1のIII-III 線に沿って切断したときの断面図である。
【図4】本実施例に係る蛇腹レンズフードの伸縮機構の分解斜視図である。
【図5】図1の操作盤下面に沿った断面図である。
【図6】図2の操作盤下面に沿った断面図である。
【符号の説明】
14 前枠
16 後枠
18 前枠係合部材
20 後枠係合部材
23a、23b ローラガイド溝
30 パンタグラフ
32a〜32d アーム部材
40 係合部
41a、41b 薄板状部材
47 第1ピン
48 第2ピン
60 操作部
61a〜61d マーク
62 操作盤
71 第1係合孔
72 第2係合孔
α 交差角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前枠と後枠を蛇腹により伸縮自在に連結した蛇腹レンズフードの伸縮機構であって、回動可能な操作部と、前記前枠と後枠を伸縮自在に連結するとともに、互いに交差するアーム部材と、この交差部近傍でアーム部材に係合するとともに、前記操作部に係合する係合部とを備え、前記操作部の回動にともなって、前記交差部の交差角度が変化することを特徴とする蛇腹レンズフードの伸縮機構。
【請求項2】 前記操作部に、カメラ本体に取付可能なレンズに対応した蛇腹の伸縮量を示すマークが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蛇腹レンズフードの伸縮機構。
【請求項3】 前記後枠に固定され、この後枠に沿って延びるローラガイド溝が形成された後枠係合部材と、前記アーム部材に設けられ、前記ローラガイド溝に摺動自在に係合するガイドローラとを有することを特徴とする請求項1、2に記載の蛇腹レンズフードの伸縮機構。
【請求項4】 前記係合部が、前記アーム部材により区画された四角に配置された第1および第2のピンと、第1および第2のピンを蛇腹の伸縮方向および蛇腹の伸縮方向と直交する方向に案内する案内手段とを有することを特徴とする請求項1、2に記載の蛇腹レンズフードの伸縮機構。
【請求項5】 前記操作部が、楕円状に成形され、前記第1のピンが係合する第1の係合孔と、前記第1の係合孔と異なる大きさの楕円状に成形され、前記第2のピンが係合する第2の係合孔とを有することを特徴とする請求項4に記載の蛇腹レンズフードの伸縮機構。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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