説明

蛇腹レンズフードの伸縮機構

【目的】 粗、微調整のどちらでも容易に調整可能な蛇腹レンズフードの伸縮機構を提供する。
【構成】 前枠14と後枠16を蛇腹12により連結する。枠材40に操作部60を回動可能に取付ける。操作部60にカム部材50を一体的に回動可能に取付け、カムフォロア38に係合させる。アーム部材32a〜32dを伸縮方向に直交する方向に移動自在に前枠14および後枠16に連結し、互いに回動自在に支持する。操作部60を回動すると、カム部材50が一体的に回転し、カムフォロア38を介してアーム部材32a〜32dが蛇腹12の伸縮方向に伸縮し、前枠14と後枠16を蛇腹12の伸縮方向に案内する。操作盤62表面に設けられたマーク61を、枠材40に設けられた基準線44に合わせることにより、カメラ本体に装着された各レンズに応じて蛇腹12の繰出量が適切に調整できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カメラ等に用いられる蛇腹レンズフードを伸縮させる機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、蛇腹レンズフードを伸縮させる機構として、例えばビネットプレート等が取付け可能な前枠と、レンズ、フィルタ等が固定されたカメラ本体に接続された後枠とを連結するパンタグラフが知られている。この伸縮機構として、手動により調整するもの、あるいはネジにより調整するものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の手動式によるものでは、調整が粗くなってしまい、微調整が困難であった。一方、ネジにより調整するものでは、伸縮を調整する毎にネジを調整せねばならず、作業が煩雑であった。
【0004】本発明は、粗調整、微調整のどちらでも容易に調整可能な蛇腹レンズフードの伸縮機構を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る蛇腹レンズフードの伸縮機構は、前枠と後枠を蛇腹により伸縮自在に連結した蛇腹レンズフードの伸縮機構であって、前枠と後枠を伸縮自在に連結するパンタグラフと、パンタグラフに回動可能に取付けられた操作部と、この操作部に一体的に取付けられ、パンタグラフに設けられたカムフォロアに係合するカム部材とを備えることを特徴としている。
【0006】また、操作部に、カメラ本体に取付られるレンズに対応した蛇腹の伸縮量を示すマークが設けられ、パンタグラフのマークに対応する位置に、基準線が設けられていてもよい。
【0007】また、カム部材が、湾曲するカム溝を有し、カムフォロアが、このカム溝に摺動自在に係合していてもよい。
【0008】また、パンタグラフが、前枠および後枠に平行に延びるカムフォロアガイド溝が形成され、操作部が取付けられた枠材を有し、カムフォロアが、カムフォロアガイド溝に摺動自在に係合していてもよい。
【0009】また、パンタグラフが、前枠および後枠にそれぞれ固定され、前枠および後枠に沿って延びるローラガイド溝が形成された前枠係合部材および後枠係合部材と、ローラガイド溝に摺動自在に係合するガイドローラとを有していてもよい。
【0010】
【実施例】以下図示実施例により本発明を説明する。図はいずれも本発明の一実施例を示すものであり、図1は蛇腹レンズフードの収納時における右側面図、図2は蛇腹レンズフードの繰出時における右側面図、図3は図1のIII-III 線に沿って切断したときの断面図、図4は蛇腹レンズフードの伸縮機構の分解斜視図である。
【0011】図1および図2から理解されるように、前枠14と後枠16は、蛇腹12により連結されて伸縮自在であり、その内部は外部から遮光されている。前枠14には例えばビネットプレートが取付け可能であり、後枠16は所定のレンズ、フィルタ等が装着されたカメラ本体(図示せず)に接続されている。操作部60を回動させるとカム部材50が回転し、これによりパンタグラフ30を介して前枠14が進退し、蛇腹12が伸縮する。
【0012】前枠14と後枠16には、前枠係合部材18と後枠係合部材20がそれぞれ固定されている。パンタグラフ30は、アーム部材32a〜32d、支点ローラ34a〜34e、カムフォロア38、ガイドローラ36、37および枠材40とを有し、アーム部材32a、32bはガイドローラ36と支点ローラ34cを介して前枠係合部材18に連結され、アーム部材32c、32dはガイドローラ37と支点ローラ34eを介して後枠係合部材20に連結されている。
【0013】アーム部材32a〜32dは細長い板状部材であり、互いにほぼ同じ形状に形成され、カムフォロア38および支点ローラ34a、34b、34dにより互いに回動自在に連結されている。すなわち、アーム部材32a、32bは、その中央部において支点ローラ34aにより連結され、アーム部材32c、32dは、その中央部において支点ローラ34bにより連結されている。またアーム部材32aの端部とアーム部材32cの端部は支点ローラ34dにより連結され、アーム部材32dの端部とアーム部材32bの端部はカムフォロア38により連結されている。
【0014】前枠係合部材18には、前枠14および後枠16に平行に延びるローラガイド溝22が形成され、ローラガイド溝22には、アーム部材32aの先端に設けられたガイドローラ36が摺動自在に係合する。同様に、後枠係合部材20には、前枠14および後枠16に平行に延びるローラガイド溝23が形成され、ローラガイド溝23には、アーム部材32cの先端に設けられたガイドローラ37が摺動自在に係合する。
【0015】枠材40は、前枠係合部材18と後枠係合部材20の間に設けられ、これらと平行である。また枠材40は1枚の細長い板状部材をコの字状に折り曲げて形成され、すなわち蛇腹12の両側面に対向する2つの板状部と蛇腹12の下面に対向する板状部とから構成されており、蛇腹12の下側面と左側面に備えられたパンタグラフ(図示せず)にも連結されている。枠材40には、前枠14および後枠16に平行に延びるカムフォロアガイド溝46が形成されている。このカムフォロアガイド溝46は、前枠係合部材18と後枠係合部材20に形成されたローラガイド溝22、23の間に位置し、これらとほぼ同じ長さを有している。カムフォロアガイド溝46には、アーム部材32d、32bに設けられたカムフォロア38が係合している。
【0016】操作部60は図3に示すように、円盤状の操作盤62と、操作盤62の下面に固定された軸部64を有している。軸部64の先端には軸止部66が形成され、また軸止部66の近傍には、円周方向に沿って凹設された溝部65が形成されている。溝部65は枠材40に形成された孔42に回動可能に嵌入し、これにより操作部60は枠材40に対して回動可能である。
【0017】カム部材50は薄板状を有し、図4に示すように、その角部に穿設された軸孔54には操作部60の軸部64が嵌入されている。軸部64には環状のストッパ部材70が嵌着され、ストッパ部材70の上端と、軸部64に形成された段部67の下面により、カム部材50が操作部60に挟まれて固定されている。従ってカム部材50は操作部60と一体的に回動可能である。
【0018】カム部材50の軸孔54とは反対側の外周縁には、円弧状の曲面部52が形成され、この曲面部52に沿って湾曲するカム溝56が形成されている。カム溝56の各部位と操作部60の軸部64との距離は連続的に変化しており、カム溝56の第1端部56aは操作部60の軸部64から相対的に遠く、またカム溝56の第2端部56bは操作部60の軸部64に相対的に近い。カム溝56にはカムフォロア38が移動自在に係合している。すなわちカムフォロア38は、カム溝56とカムフォロアガイド溝46の両方に係合しており、カム部材50の回動に応じてカムフォロア38は、カム溝56およびカムフォロアガイド溝46に沿って摺動する。
【0019】カム部材50が図1に示す位置にあるとき、すなわちカム溝56の第1端部56aが枠材40に近接しているとき、カムフォロア38がカム溝56によって操作部60から最も遠い位置に定められ、パンタグラフ30は折り畳まれた状態にある。これに対してカム部材50が図2に示す位置にあるとき、すなわちカム溝56の第2端部56bが枠材40に近接しているとき、カムフォロア38がカム溝56によって操作部60から最も近い位置に定められ、パンタグラフ30は広げられた状態にある。このようにカム部材50の回動に対するカムフォロア38の位置はカム溝56の湾曲形状により定まる。カム溝56の湾曲形状は、目的に応じて適宜定められる。
【0020】操作盤62の上面、すなわち作業者に視認される面側には、2つのマーク61a、61bが設けられている。これらのマーク61a、61bは、このカメラ本体に装着可能な各レンズ毎の蛇腹12の伸縮量(繰出量)に対応している。また、枠材40には基準線44が、操作盤62の外側において視認可能な位置に設けられ、マーク61a、61bに対応する位置に設けられる。マーク61を基準線44に合わせるように操作盤62を回動すると、そのレンズに応じた伸縮量に蛇腹12が伸縮される。
【0021】次に本実施例の作用を説明する。図1に示す状態から操作盤62を反時計方向に回動させると、カム部材50が操作盤62と一体的に回転し、カムフォロア38がカム部材50に形成されたカム溝56に沿って第1端部56aの位置より第2端部56bの位置に向かって摺動案内されるとともに、カムフォロアガイド溝46内を操作盤62に近接する方向(図1の右方向)に摺動する。したがって、カムフォロア38が固定されているアーム部材32b、32dの一端がカムフォロア38とともに操作盤62の方向に案内され、カムフォロア38を中心としたアーム部材32b、32dの交差角度が大きくなってアーム部材32b、32dの他端が互いに離間する方向に回動する。
【0022】またアーム部材32a、32cは、支点ローラ34a、34bを介してアーム部材32b、32dと連結しているため、アーム部材32b、32dと同様に、支点ローラ34dを中心として他端が離間する方向に回動する。したがってガイドローラ36、37が、それぞれローラガイド溝22、23に沿って図1の右方向に移動し、これにより前枠係合部材18と後枠係合部材20は互いに離間する方向に押し出され、互いに平行に移動する。また、図示しない蛇腹12の下側面、左側面にも、同様にパンタグラフが設けられているため、下側面、左側面でも前枠14、後枠16および枠材40は互いに離間する方向に押し出され、図2に示すように前枠14、後枠16および枠材40は互いに平行に移動し、蛇腹12が伸張する。
【0023】一方、図2の状態から操作盤62を時計方向に回動させると、カム部材50が操作盤62と一体的に時計回りに回転し、上述の場合とは逆にカム溝56に沿ってカムフォロア38が第2端部56bの位置より第1端部56aの位置に向かって摺動する。すなわち、カムフォロア38がカムフォロアガイド溝46内を操作盤62から離間する方向(図2の左方向)に向かって摺動する。アーム部材32bと32dの一端は、カムフォロア38とともに操作盤62から離間する方向に移動されるため、アーム部材32bと32dの交差角度は小さくなり、アーム部材32bと32dの他端は互いに近接する方向に回動する。またアーム部材32aと32cも交差角度が小さくなる方向に回動する。したがって前枠係合部材18と後枠係合部材20が互いに接近する方向に移動し、蛇腹12が収縮する。
【0024】以上のように本実施例によれば、アーム部材32a〜32dは、支点ローラ34a〜34e、ガイドローラ36、37およびカムフォロア38によってスムーズに回転するように連結され、またガイドローラ36、37およびカムフォロア38は、ローラガイド溝22、23およびカムフォロアガイド溝46にスムーズに移動するように係合しており、操作盤62の回動を強制的にある方向に付勢する手段を設けていないため、操作盤62の回転が容易で、手動により蛇腹12を伸縮方向に移動することも可能であり、蛇腹12の伸縮量を容易に粗調整することができる。
【0025】また本実施例では、操作盤62を大きく回転させることにより蛇腹12を伸縮させるように構成されている。したがって、蛇腹12の伸縮量の微調整が可能であり、例えば操作者が直接蛇腹12を伸縮させるよりもはるかに高精度に伸縮量を調整することができる。
【0026】さらに本実施例では、マーク61a、61bは、カメラ本体に装着されたレンズに応じた量だけ蛇腹12が伸縮するような位置に設けられている。したがって、マーク61a、61bが基準線44に合う位置まで操作盤62を回動させるだけの操作により、蛇腹12の伸縮量が適切かつ容易に調整される。
【0027】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、粗調整、微調整のどちらでも容易に調整可能な蛇腹レンズフードの伸縮機構が得られる。
【0028】また請求項2に記載の構成によれば、蛇腹の伸縮量が、カメラ本体に装着される各レンズに応じて適切かつ容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一本実施例に係る蛇腹レンズフードの収納時における右側面図である。
【図2】蛇腹レンズフードの繰出時における右側面図である。
【図3】図1のIII-III 線に沿って切断したときの断面図である。
【図4】本実施例に係る蛇腹レンズフードの伸縮機構の分解斜視図である。
【符号の説明】
12 蛇腹
14 前枠
16 後枠
18 前枠係合部材
20 後枠係合部材
22、23 ローラガイド溝
30 パンタグラフ
32a〜32d アーム部材
34a〜34e 支点ローラ
36、37 ガイドローラ
38 カムフォロア
40 枠材
44 基準線
46 カムフォロアガイド溝
50 カム部材
56 カム溝
60 操作部
61 マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前枠と後枠を蛇腹により伸縮自在に連結した蛇腹レンズフードの伸縮機構であって、前記前枠と後枠を伸縮自在に連結するパンタグラフと、前記パンタグラフに回動可能に取付けられた操作部と、この操作部に一体的に取付けられ、パンタグラフに設けられたカムフォロアに係合するカム部材とを備えることを特徴とする蛇腹レンズフードの伸縮機構。
【請求項2】 前記操作部に、カメラ本体に取付られるレンズに対応した蛇腹の伸縮量を示すマークが設けられ、前記パンタグラフの前記マークに対応する位置に、基準線が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蛇腹レンズフードの伸縮機構。
【請求項3】 前記カム部材が、湾曲するカム溝を有し、前記カムフォロアが、このカム溝に摺動自在に係合することを特徴とする請求項1、2に記載の蛇腹レンズフードの伸縮機構。
【請求項4】 前記パンタグラフが、前枠および後枠に平行に延びるカムフォロアガイド溝が形成され、前記操作部が取付けられた枠材を有し、前記カムフォロアが、カムフォロアガイド溝に摺動自在に係合することを特徴とする請求項1、2に記載の蛇腹レンズフードの伸縮機構。
【請求項5】 前記パンタグラフが、前記前枠および後枠にそれぞれ固定され、前記前枠および後枠に沿って延びるローラガイド溝が形成された前枠係合部材および後枠係合部材と、前記ローラガイド溝に摺動自在に係合するガイドローラとを有することを特徴とする請求項1、2に記載の蛇腹レンズフードの伸縮機構。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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