蛋白性組織の解離及び除去のためのシステム
高速可変方向パルスエネルギーフィールドフローフラクショネーションを用いて蛋白性軟組織を解離するための装置及び方法が開示される。高速パルス破壊エネルギー場は、除去対象である蛋白性軟組織を取り囲むプローブを使用することにより生成される。組織成分間の付着メカニズムが損なわれたら、解離された組織を除去するために流体法が使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2006年1月3日に提出された仮特許出願第60/755,839号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、肉眼で見える体積の高水和蛋白性組織の解離及び除去に関する。特に、高速可変方向エネルギーフィールドフローフラクショネーションを用いる肉眼で見える体積の高水和蛋白性組織の解離及び除去に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、硝子体網膜手術に関して説明されているが、当業者は、本発明を人間または動物の身体の他の部位の医療処置に応用できることが分かるだろう。
【0004】
数十年の間、先行技術の硝子体網膜後部手術は、1)せん断プローブによる(往復カッタか回転カッタを利用する)組織除去、2)はさみ、メスまたは硝子体カッタを用いる膜離断、3)鉗子及びピンセットによる膜剥がし、4)鉗子及び粘性流体による膜分離、のための機械的方法すなわち牽引法に依存してきた。メカニズム、材料、品質、製造可能性、システムサポート及び効率の面での改良は進んだが、後部眼内手術の成果の大幅な前進は主に執刀する眼科医の知識、不屈の精神、技能及び手練に拠るものであった。
【0005】
硝子体網膜手術における眼内組織の無牽引除去は、現在の機械的な医療器具の備えではほぼ不可能である。技能、正確な動き、経験そして知識を用いて、執刀医は組織除去時に機械的医療器具の使用による牽引を最小限に抑えてきたが、これを完全に排除することは不可能である。機械的手術法すなわち牽引手術法は、組織結合を分断するためにせん断作用を利用する。このせん断作用は本来的に除去対象である組織に対して張力を加えるものであり、この張力が網膜に伝達される。機械的手術法すなわち牽引手術法を使用するので、組織結合を分断するために使用される機械的医療装置の切断要素に動きを与える力は網膜に押し付けられる。眼科医が技能を持ち慎重に対処しても、牽引手術法に関連する力が網膜に押し付けられることにより網膜の損傷の可能性が生じる。
【0006】
蛋白質成分の構造変化を生じさせる際に使用されてきた可能な無牽引手術法は、強力パルス電場の応用を伴うが、強力パルス電場の使用は硝子体網膜手術など精巧な外科処置には進出していない。
【0007】
強力パルス電場は医学界、食品業及びマイクロメカニック装置の機械加工において多様な用途を得ている。医学界における応用の例は、腫瘍細胞への化学療法薬のデリバリ、遺伝子治療、経皮薬のデリバリ及び水及び液体食品のバクテリア汚染除去を含む。食品業においては、強力超短パルス電場は滅菌及び汚染除去において商業用途を見出している。最後に、マイクロ電気機械システム(MEMS−Micro Electric Mechanical Systems)チップに使用される機械加工及び表面改質術は強力超音波パルス電場を採用する。
【0008】
高分子、細胞膜、細胞内器官及び細胞外実体など生体構造の操作が、生物物理学及び生物化学の両方のエンジニアリンググループによる最近の研究の的である。動電学の分野では、電場に対する生物組織の反応が研究、診断及び治療用に使用されてきた。
【0009】
非外科的動電学研究及び開発
本出願において説明される発明は、生物化学的分子研究、治療薬開発、滅菌技術、商業的重合化、プラズマ研究及びMEMS(ラボオンチップlab−on−a−chip)の進歩のために現在使用されている先行技術の非外科的テクノロジーのいくつかを評価することにより基本的に理解できる。他のシステム(蛋白性物質が強力パルス電場のデリバリによって操作され損なわれるタイプのもの)について例証するために、先行技術のテクノロジーの主要な態様について下に説明する。
【0010】
電気レオロジー
電気レオロジー(ER:Electrorheology)は、生物学的流体を含めて流体のレオロジーが電場(通常、低DC電場)を与えることにより修正される現象である。流体に与えられる電場は流体にバルク相転移(bulk−phase transition)を誘発し、その際、電場強度が最も重要なパラメータであり、電場の周波数は一般に最も重要ではないパラメータである。ほとんどのコロイド状ER流体は電場振幅を増大することによって粘弾性効果を増す。興味深いことに、流体の粘弾性の減少は最高電場強度のときに現れるが、流体の粘弾性に対する電場強度の効果についての決定的な研究は欠けており、ERのメカニズムは未知のままである。
【0011】
電気泳動
電気泳動(または誘電泳動)は、電場における相互の電極すなわち負極または正極に向かう粒子の移動を伴う。電気泳動プロセスは、生体分子を分離し純化する(例えば、DNA及びRNA分離)ために使用される。ナノメートルからマイクロメートル程度の大きさの物質の場合、電気泳動プロセスは、物質の非常に特異な隔離及び物質特性の測定の両方に有効に作用する。電気泳動において、閉じ込められた懸濁液における電場誘発の相転移が空間的に均等のAC電場の問題である。この電場誘発の相転移は、懸濁液における周知の円柱構造の電場誘発形成に続いて生じる。外部電場を受けると、電場内部の粒子は電場の方向に沿って整列して、鎖及び柱を形成する。粒子の鎖及び柱は、その後、電場及び流体の流れの作用によって引き伸ばされる。粒子の分離及び隔離のために掛かる時間は数分から数時間程度のものであり、複数の二次的プロセスの応用を伴う場合が多い。高分子分離を強化するために、しばしばイオン界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムSDS)及び標本希釈が使用される。イオン界面活性剤は疎水性環境と親水性環境との間の化学的ブリッジを形成して、自然の蛋白質構造を維持するために必要な疎水性接続力を破壊するまたはこれを低下させる能力を有する。
【0012】
フィールドフローフラクショネーション
フィールドフローフラクショネーション(FFF:Field Flow Fractionation)は多くの方法で液体クロマトグラフィと両立可能な実験的溶液分離法である。一般に、FFFシステムにおいて分離される物質及び物質のサイズ範囲は電気泳動及び液体クロマトグラフィを用いて分析されるものに対して補完的である。FFFシステムにおいては、分離の主役(電場)が分離の方向に直交する方向に加えられて、FFFチャネルの出口で標本成分の時空間分離を生じさせる。FFFチャネルにおける分離は標本成分の滞留(時間)の差に基づく。一方、FFFシステムにおける滞留は標本の物理化学特性の差、加えられる攻撃の強さ及び様式及び分離チャネルにおける流体速度プロフィルに関連する。FFFの利用は電気泳動時間を数時間から数分に減少する。
【0013】
電気的フィールドフローフラクショネーション
マイクロ電気機械システム(MEMS)の機械加工において実施される作業から電気的フィールドフローフラクショネーション(EFFF)が生じる。EFFFは、軸方向か横方向に電場を与えることによってマイクロチャネルにおいて同伴されたナノ粒子、蛋白質及び高分子を生体外分離するためのプロセスである。この技法は、現在、MEMSマイクロ泳動装置と関連して研究中である。この方法は、電位(一方向側方電場)の作用を受ける検体の軸方向の流れに基づいている。流路における粒状標本の分離性能及び滞留時間は流路の流れ場を横切って加えられる電場と標本との相互作用によって決まる。蛋白質複合体の解離、蛋白質結合の破壊及びその後の分割はEFFFによって得られてきた。EFFFにおいて周期的(振動)電位を加えることによって、滞留時間が増大し、その結果分離が大幅に向上した。
【0014】
さらに、交互極性を持つパルス電位を加えることにより電場の効果を増すことが立証されている。電場勾配における蛋白性組織の局部的変形は純粋な伸長なので、せん断が鎖分断において重要な役割を果たすと見なされてきた。伸長速度及び伸縮軸によって定量化される配列ジオメトリ及び流れ場の強度を慎重に操作することによって高分子の大部分を大幅に伸長することができる。入力電圧を変化させれば回転、伸張及びせん断電場パターンを生成できるマイクロチップが設計されている。1.25cmチップにおける分離時間は約5秒に減少された。
【0015】
電気穿孔
電気穿孔は細胞膜の透過性を可逆的かつ一時的に増すために使用されてきた別の先行技術の非外科的テクノロジーである。生体外における細胞膜を横切る薬物及び遺伝子のデリバリを強化するために1994年ごろに導入された電気穿孔(EP)は、過去10年間に、分子生物学研究所における標準的手順となった。電気穿孔は、マイクロ秒からミリ秒の範囲の持続時間を有する電気エネルギーのパルス(センチメートル当たりのキロボルトで測定される)によって細胞膜の半透過性を一時的に損失させる技法である。このような細胞膜の半透過性の一時的損失は、イオン漏出、代謝物質の漏出、薬物、分子プローブ及びDNAの細胞摂取の増大を引き起こす。一部の先行技術の電気穿孔の応用は、形質移入のための生体細胞へのプラスミドまたは異物DNAの導入、ハイブリドーマを用意するための細胞の融合及び細胞膜への蛋白質の挿入を含む。古典的には、細胞のタイプ及び懸濁媒体に応じて0.1から10ミリ秒程度のパルス持続時間及びkV/cmの電場強度が利用されてきた。電気穿孔のメカニズム(すなわち、細胞経路の開閉)は完全には理解されていない。
【0016】
電気穿孔テクノロジーの適応は薬物デリバリのために使用されてきた。米国特許第5,869,326号及び公開された米国特許出願第2004/0176716号の両方は経皮薬物デリバリ用の器具について説明している。公開された米国特許出願第2004/021966号は電極配列体を用いる治療薬の皮内デリバリ及び生体外薬物デリバリについて説明している。米国特許第6,653,114号は電極切り替えのための手段を教示している。米国特許第6,773,736号及び米国特許第6,746,613号は、細胞の非活性化及び死を引き起こすことによって生成物及び流体を汚染除去するために電気穿孔テクノロジーを適合させた。米国特許第6,795,728号は、生体内で皮下脂肪貯蔵を減少させるための装置及び方法のための基礎として電気穿孔誘発の細胞死を使用する。
【0017】
ナノ秒パルス電場
ナノ秒パルス電場(nsPEF)テクノロジーは上述の電気穿孔テクノロジーの延長であり、生体内応用を含む。このテクノロジーにおいては、かなり高い電場(最高300kV/cm)と共に大幅に短い持続時間(1〜300ns)で形成される方形パルスまたは台形パルスが利用される。nsPEFはパルスパワーテクノロジーの進歩から発展した。このパルスパワーテクノロジーの使用は、試験対象である標本において生物学的に大幅な温度上昇を生じさせることなく細胞及び組織の電気穿孔に使用される電気エネルギーのパルスより数百倍高い電場強度を持つナノ秒パルス電場(nsPEF)の応用につながった。非常に少数の電気エネルギーパルスを使用することにより、nsPEFの効果は基本的に非熱的である。古典的な電気穿孔技法と異なり、哺乳類の細胞に対するnsPEFの効果が研究されたのはごく最近である。適切な振幅及び持続時間のnsPEFの応用は一時的な細胞透過性の増大、細胞または細胞下損傷または細胞消滅さえ生じさせる。生体内ナノ秒電気穿孔において、目標は狭い時間枠内での効果的な電場の均等分布を得ることである。
【0018】
現在の研究は、組織へナノ秒パルス(kV/cm)を加えることによってイオンまたは中性粒子を加熱することなく電子にエネルギーを与えることができることを立証している。一時的にかつ可逆的に細胞膜の透過性を増すためまたは細胞膜に影響を与えることなく細胞内成分を損なわせるために超短パルスエネルギー場(電磁EM、レーザーまたは強力集束超音波HIFU)を使用できることが判明している。より大きなエネルギーはイオンを励起し、短寿命のイオン基(OH及びO2+)の形成を生じさせる可能性があることも判明している。この発見は、細胞を殺すための滅菌及び汚染除去のプロセスの開発につながった。さらに高いエネルギーの使用は、分子レベルで細胞結合を攻撃する超荷電プラズマの形成を生じさせることができる。
【0019】
電気浸透
電気浸透(EO)はマイクロ装置に使用するための流体を運搬または混合するために使用される技法である。主要な概念は、流体に一方向のマックスウェル力を生成するために電極/電解液境界面において異なる荷電メカニズム及び極性強度の二重層を利用することである。この力は貫流ポンプを生成する。誘導電荷電気浸透(ICEO:induced−charge electro−osmosis)において、流体内部に微小渦を生じさせて、微小流体装置における混合を強化するという効果が得られる。流体に無秩序な流れの力を当てることによって、層流体系における混合を大幅に強化できる。極性及び与えられる電圧を変化させることによって、放射状の電気浸透流の強度及び方向を制御することができる。
【0020】
その他の界面動電現象
界面動電現象は上述のものに限定されない。MEMS研究において非常に大きい電圧及び固有の電場に結び付けられる最近の異種研究は、コロイドの電気泳動度は単に全正味電荷ではなく電荷分布に敏感であるという発見を含めて、可変的な電場を与えることにより興味深い反直観的効果が生じることを立証している。
【0021】
組織除去
上記のプロセスは全て高分子の操作に応用可能であるが、組織解離による肉眼で見える体積の蛋白性組織の摘出または除去には応用できない。組織にパルスエネルギーを用いる他のシステムは高レベルのエネルギーを採用するので、より長いパルス持続時間、パルス列、反復速度及び露出時間を用いて送られるより高いエネルギーが熱効果または超荷電プラズマの形成を生じさせることが判明している。このような熱効果または超荷電プラズマの形成は組織切断用の外科用器具を開発するためにいくつかの装置において効果的に利用されてきた。これらの器具においては、微小サイズ(厚みまたは突出)のプラズマ領域が器具の周りに生成される。超荷電プラズマ内部において電子、イオン及び一貫性のない動きを持つ分子が荷電され、これが、組織または細胞と接すると、分子レベルで結合を攻撃し、それによって、昇華を介して標的組織または組織表面を切除または除去する。超荷電プラズマの形成は電子雪崩プロセス、すなわち電子プラズマ雪崩イオン化を形成するための電子による価電子帯から連続体への高速のトンネリングのプロセスに依存する。付加的なトンネリング及び自由電子と分子との間の電場駆動の衝突によってこの超荷電プラズマの密度は急速に高まる。超荷電プラズマを用いる組織治療の主要な目標は非破壊的手術である。すなわち、制御された高い精密さで患部を除去して、非患部の損傷を最小限に抑えることである。活性プラズマのサイズ及び形状はプローブの設計、寸法及び媒体によって制御される。これまで気体媒体及び液体媒体の両方が採用されたことがある。液体内では、爆発性蒸気が形成される場合がある。
【0022】
パルス電子雪崩メス
公開された米国特許出願第2004/0236321号において開示されるパルス電子雪崩メス(PEAK)は無牽引冷温切断装置として説明されている。露出マイクロ電極と部分絶縁電極との間に高電場(nsPEF1〜8kV、150〜670uJ)が与えられる。このように高電場を与えることによりマイクロメートル長のプラズマストリーマの形式で表されるプラズマ形成を導く。プラズマストリーマの寸法を制御するのは露出電極のサイズである。一方、プラズマストリーマは、ミクロン規模の水の爆発性蒸発を生じさせる。パルスエネルギーが重要である。正確、安全及びコスト効率のよい組織切断が立証されている。ミクロンレベルにサイズが縮小された電極を用いる場合にも、液体媒体のイオン化及び爆発性蒸発は隣接組織を破壊してキャビテーションバブル(cavitation bubble)を形成する可能性があるので、プラズマ放電をプローブ先端に限定しなければならない。プラズマ形成時に達する高圧、蒸気泡の高速の膨張(>100m/秒)及びその後のキャビティ(空洞)の崩壊(相互作用ゾーンを拡大する可能性がある)は主に高速の泡蒸気冷却によるメカニズムである。眼科手術において、PEAKの使用によって生じる効果の不安定さ及び攻撃性は網膜の完全性にとって有害であるかもしれない。
【0023】
コブレーション
コブレーション(coblation)すなわち冷間切除は、プラズマを生成するために食塩水など導電性溶液と一緒に二極モードの無線周波数RFを使用する。プラズマは標的組織に接すると標的組織の表面層を昇華させる。加速荷電粒子の到達範囲は短く、プローブの周りのプラズマ境界層及び組織接点の表面に限定される。コブレーションは食塩水(導電性溶液)中のイオンにエネルギーを与えて、小さいプラズマ場を形成する。プラズマは組織の分子結合を破壊するのに充分なエネルギーを有し、切除経路を形成する。このプロセスの熱効果は約45〜85℃であると報告されている。古典的にRF電気手術装置は組織構造を修正するために熱を使用する。しかし、プラズマの影響はプラズマ自体に限定されかつ維持されるプラズマ層は顕微的な薄さなので、無線周波数誘発プラズマ場の生成は「冷間」プロセスと見なされている。プラズマは、分子結合を分子解離させるのに充分なエネルギーを持つ高度にイオン化された粒子から構成される。炭素−炭素結合及び炭素−窒素結合を破壊するために必要とされるエネルギーは3〜4eV程度である。コブレーション法は約8eVを供給すると見積もられる。電極は二極構成であり組織と食塩水との間にはインピーダンス差があるので、電流のほとんどは電極間に配置される導電性媒体を通過し、その結果組織に浸透する電流は僅かでありかつ組織の熱傷は僅かである。プラズマを生成するために必要なエネルギーの閾値に達しない場合、電流は導電性媒体及び組織を貫流する。組織及び導電性媒体の両方によって吸収されるエネルギーは熱として分散される。プラズマを生成するために必要なエネルギーの閾値に達すると、RF電流に対するインピーダンスはほとんど純粋な抵抗タイプのインピーダンスからもっと容量性タイプのインピーダンスに変化する。
【0024】
プラズマ針
プラズマ針は、周囲組織に影響を及ぼすことなく特定の細胞を除去または再配列できるようにするさらに別の装置である。プラズマ針の使用は、小規模のプラズマ放電を生じさせるために手動ツールに取り付けられたマイクロサイズの針を使用する非常に骨の折れる技法である。針先端と近位電極との間に電場が生成され、これらの間に不活性ガス(ヘリウム)が流れる。小規模のプラズマ放電は電子、イオン及びイオン基を含む。イオン及びイオン基は不活性ガスへの空気など汚染物質の導入によって制御可能である。小さいサイズのプラズマ源(プラズマ針)は、細胞自体を傷つけることなく細胞機能または細胞付着を変質させるような微細レベルでROS(反応性酸素種)及び紫外線放射を生成すると、想定されてきた。しかし、不活性ガスにおけるROS(例えば、空気)の増大が放射時間の増大と組み合わされると、細胞死を引き起こす可能性がある。プラズマ針の使用は薄い液体層を横切って影響を与えることが明らかであるが、この使用は眼科手術においてしばしば見られるような全液体環境においては最適ではない。
【0025】
放電加工
放電加工テクノロジーは上述のプラズマテクノロジーと類似する。放電加工装置は蒸気を生成するために、250kHz、持続時間10ms及び最高1.2kVのパルスエネルギー場を利用する。蒸気の絶縁破壊が生じると、小さいスパーク(<1mm)が形成される。最高1.7mmの遠距離電場効果(far−field effect)によって、放電加工による切断性能は電気外科と同様であるが、プラズマと同様プラズマのみが組織に接する。
【0026】
レーザー
レーザーは組織の高分子を破壊するためにこれまで使用されてきた別の無牽引テクノロジーである。レーザーは、1960年ごろから眼科手術に利用されてきた。レーザー使用の最大の成功分野は、糖尿病性網膜症、中心静脈閉塞及び加齢性黄斑変性または虚血性網膜血管炎における脈絡膜新生血管などの疾患における非侵襲的網膜凝結の分野である。レーザーは、角膜彫刻(corneal sculpting)及び緑内障などの眼前部の用途にも広く使用されてきた。後部眼科手術にレーザーを使用しようとする試みの結果は混合的なものである。非侵襲的(経角膜/水晶体または経強膜)技法は、これらの介在組織の吸収特性ゆえに実用的ではない。網膜及び硝子体の眼内手術に必要とされる高度な精密さは、組織の操作及び除去のためにさらに洗練された侵襲的技法を用いることを要求する。組織/レーザー相互作用体系は、1)熱:電磁エネルギーの熱エネルギーへの変換、2)光化学:レーザーフォトの吸収によって活性化される内在的(内因性)または注入(外因性)感光化学物質(発色団)、3)光切除:フォトンの吸収の分子内結合の直接的光解離、及び4)電気機械:絶縁破壊及びプラズマ生成につながる自由電子の多光子生成または熱電子放出、を含む。レーザーはコスト高であり、微細眼内組織を漂遊レーザーエネルギー及び遠距離電場熱効果から保護するために固有の設計のレーザープローブにシールド及び逆転防止装置を使用する必要があることが判明している。しかし、フェムト秒パルスレーザーの最近の開発は微細手術の用途に新しい可能性を開いた。
【0027】
その他の組織除去法
眼内組織を破壊するために現在採用されている方法は、細切(分割)(細切は機械的せん断硝子体切除装置の目的である)、熱(蛋白質変性)または酵素反応により得られる液化、及びレーザーまたはプラズマ処置を介する昇華、を含む。レーザーまたはプラズマ処置を介する昇華は実際には分子レベルの結合を損なうのに対して、細切及び液化はもっと力の弱い結合メカニズム(例えば、非共有結合)に影響を与える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
従って、硝子体網膜手術の多くの進歩にもかかわらず、硝子体網膜手術時に硝子体及び眼内組織など肉眼で見える体積の高水和の蛋白質組織を分解及び除去するための効果的な装置及び方法の必要性は依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、硝子体網膜手術時の硝子体及び眼内組織など肉眼で見える体積の高水和の蛋白性組織を解離及び除去するための装置及び方法を記載する。
【0030】
開示される発明は、超微細構造及び隣接するまたは付着する網膜の機能を損傷することなく眼の後部から硝子体及び眼内膜を牽引なしに除去するための器具及び方法に関して説明されているが、当業者は、開示される発明を人間及び動物の他の医療処置のために応用できることが分かるだろう。
【0031】
開示される発明は、硝子体及び眼内組織に係合し、これを分解し、除去するための古典的な機械的手段とは対照的に、可変的方向の強力な短パルス電場を用いて硝子体網膜手術を実施するための新しい手段に関して説明される。特に、以下の開示は、可変的方向の強力な短パルス電場を与えることによって生じる組織条件の一時的変化が肉眼で見える体積の蛋白性組織を除去するために充分であるという発見に影響を与える。機械的手段及び液化手段の技術的な成功は、硝子体物質を除去するために分子レベルでこれを切除または破壊する必要がなく、組織除去のために必要とされるのは無害な肉眼で見える状態変化だけであるという主張を裏付ける。従って、開示される発明によって可能になる眼内組織の除去は完全に無牽引である。
【0032】
本出願において開示される装置及び方法は、高速に変化する電場を用いて眼内蛋白性組織の成分における付着的及び構造的関係の局部的一時的解離を生じさせる。このような眼内蛋白性組織成分間の付着的及び構造的関係の局部的一時的解離は、眼内組織成分と網膜との間の無牽引剥離を可能にする。強力超短パルス電場の形成を強化し解離時に破壊された組織を除去するために、組織解離時に液体法(fluidic technique)(灌注及び吸引)が利用される。強力超短パルス電場が加えられる範囲内の物質のみを攻撃し除去することが意図される。従って、超短パルスが加えられることによって攻撃された物質のみが強力超短パルス電場を受けるので、組織摘出プロセス時に遠距離電場効果はない。
【0033】
流体法の使用と結び付けられるパルス電場を生成するために使用されるプローブの設計は、解離対象である肉眼で見える体積の標的組織を同伴する。従って、肉眼で見える体積の同伴された標的眼内組織は同時に強力超短パルス電場の攻撃を受ける。この強力超短パルス電場の攻撃は、同伴された肉眼で見える体積の眼内蛋白性組織の解離をもたらし、その後、吸引が、肉眼で見える体積の解離された同伴組織を除去する。
【0034】
本発明によれば、2つまたはそれ以上の電極を持つプローブは標的である水和組織、すなわち硝子体または眼内組織の中に挿入される。電極の端部はプローブの遠位端で露出される。電気パルスは電極のうち少なくとも1つに伝達され、他の1つまたはそれ以上の電極は帰り導体として作用する。負極として作用するデリバリ電極と正極として作用する帰り電極との間に非プラズマ電場が生成される。電気パルスごとに、極性の逆転、電極の切り替えまたはその両方の組合せによって、生成される電場の方向が変えられる。パルスを異なる周波数及び異なる振幅で再発生するバーストにグループ化することができる。このようなパルスグループを不均一組織へ向けることができる。電気パルスの振幅、持続時間、デューティサイクル及び反復速度は、場の方向の連続変化と共に、吸引ルーメンの開口を横切って破壊電場を生成する。組織は流体法(吸引)によって吸引ルーメンの開口に引き込まれる。その後、組織は灌注液と混合され、または灌注液で希釈されて、可変的方向の強力超短パルス電場を横切るとき解離される。プローブの先端の電極の1つまたはそれ以上の間で電場の方向を変えることによって、いつでも任意のときに電場に不調が生じる。プローブの端部の電極末端間にある影響を受ける媒体は、標的組織(例えば、硝子体)と補助液(灌注液)の混合物から成る。この標的媒体(この中に電場が生成される)の電気インピーダンスは補助液(灌注液)の制御されたデリバリによって維持される。望ましい実施態様において、電気インピーダンスを与える補助液は導電性の食塩水である。プローブ外部の灌注源によって、プローブ内の1つまたはそれ以上のルーメンを介してまたはその両方の組合せによって補助液を供給することができる。補助液がプローブ内部に限定的に供給されるとき、補助液は蛋白質解離を導くことができる特性(例えば、pH)及び成分(例えば、界面活性剤)を有する。
【0035】
本発明の実施にとって重要なのは、標的媒体内部において生成された電気エネルギー場の特性である。この場合、電気エネルギーの強力超短パルス(マイクロ秒未満)が使用される。組織のインピーダンス、導電性及び希釈は、補助液の灌注によって標的媒体内で維持される。パルス形状、パルス反復速度及びパルス列長は眼内組織の特性に合わせて調節される。眼内組織の不均一性に対処するために複数のパルスパターンを採用することができる。さらに、プローブ先端における電極の空間的末端及び活性化シーケンスは、生成される場のプロフィルと共に、組織分解において重要な役割を果たす。流体吸引速度は組織解離速度に合わせられる。標的媒体における高速パルス破壊電場は、強力であるが持続時間が短い(すなわち、低エネルギー)ので、周囲組織からの標的組織の実際的解離は一時的(数マイクロ秒から数ミリ秒)効果であり、非熱的で爆発性キャビテーションを欠く。
【0036】
超短持続時間の強力電気パルスによって送られるエネルギーはプラズマ形成を生じないので、攻撃的な遠距離電場効果がない。超短持続時間の強力電気パルスは、電子雪崩によってではなく場の方向の連続変化によって組織内に無接点破壊電力を生成するために使用される。特に、解離対象である蛋白性組織内に無接点でエネルギーが与えられる非プラズマ乱調領域が生成される。電場に入る荷電物質はこの場の影響を受け、眼内組織(例えば、蛋白質)が変化する。電子雪崩を生じさせることなく蛋白性組織の周りに破壊電場を生成することによって、組織成分間の付着メカニズムは一時的に損なわれる。このように付着メカニズムが一時的に損なわれることによって組織成分が解離することになり、遠距離摂動がない。このような組織複合体間の組織付着メカニズムが一時的に損なわれることは、蛋白質複合体の変性及び螺旋の伸び(uncoil)をもたらすので、それによってコラーゲンセグメント及び付着結合の破壊(ねじれ原線維の分割)を可能にする。
【0037】
本出願において説明される本発明の発見をもたらした作業の目的は、眼の後部眼内領域からの硝子体及び眼内膜組織の無牽引摘出であった。開示される装置及び方法は水和蛋白性ゲル基質に係合しこれを破壊して、組織成分間の付着メカニズムの一時的弱体化または解離を生じさせる。このように組織成分間の付着メカニズムが一時的損なわれるまたは解離している間に、解離された組織複合体を希釈して周囲組織から吸引するために流体法が使用される。
【0038】
本出願において開示されるシステムの目的は、安全な除去のために硝子体蛋白性組織の状態を改変させることでもある。硝子体蛋白性組織の状態のこのような改変は蛋白性組織成分の相互作用の破壊、隣接構造からの蛋白性組織成分の分離及び剥離の促進、及び蛋白性組織成分が分離及び剥離されるときのその除去を伴う。
【0039】
従って、現代の硝子体網膜の執刀医の要望に対処する新しい外科装置様式及び装置、すなわち網膜の完全性を保存しながら硝子体及び眼内膜をより良くかつより正確に摘出するための装置を提示することが本開示の目的である。ここに開示されるシステムは硝子体及び関連する眼内膜の状態を改変するため及びこれを除去するための新しい装置に重点を置いているが、本出願において提示される情報は眼科以外の外科分野にも応用可能であることが、当業者には明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
蛋白性組織の解離及び除去のための開示されるシステムは、添付図面を参照することによってよりよく理解されるだろう。
【0041】
液化(融解)は、加齢の自然の結果として眼の硝子体に現れる。人が70から90歳に達すると、硝子体のゲル構造のほぼ50%は状態の変化を経る。すなわち液化する。融解の結果は、硝子体基質の不安定化、HAコラーゲン結合の解離、コラーゲン螺旋の伸び、分子再配列、液化空間の体積増大、絡み合うテザー(tether)の緩み、網膜からの硝子体剥離の増大、コラーゲン繊維分断及び凝集、及びプロテオグリカン、非共有結合高分子及び付着性コラーゲン(タイプIX)の損失として、後部硝子体に現れる。細胞レベルで、本発明によって眼の硝子体部の液化をもたらす活動の多くに対処することができる。
【0042】
本発明の装置及び方法は、短時間の組織解離を生じさせるために眼内細胞外基質(ECM)の成分の特性に合わせて調節されるパルス持続時間、反復速度、パルスパターンプ及びパルス列長で、可変的方向の強力、超短持続時間のパルス破壊電場(低エネルギー)を与える。推奨される超短パルス破壊電場の供与様式は低エネルギーの高パワーのデリバリに依存する。
【0043】
図1に示されるように、本発明を実施するために開示される装置はプローブアセンブリ110を含む。プローブアセンブリは、電力の限定的で局所的な非熱的な動的領域を肉眼で見える体積の細胞外基質ECM(例えば、硝子体及び眼内膜)内部に生成して、蛋白性複合体の一時的解離及び同伴された肉眼で見える体積の組織の局部的液化をもたらすように、軟組織に与えられるエネルギーを送り、運び、分配する。中空プローブ114の先端112は同伴された肉眼で見える体積の蛋白性組織を取り囲むように配置される。流体法(灌注)は、まず中空プローブ114の先端112の電極116間に安定したインピーダンス及び希釈の領域を与えるために、次に非共有結合蛋白質関係の再構築が生じる前に影響を受けた肉眼で見える体積の蛋白性組織を引き込んで除去する(吸引)ために使用される。プローブアセンブリ110に使用される流体法は、食塩水の灌注及び流出液の吸引の両方を含むことができる。
【0044】
中空プローブ114の先端に生成される可変的方向の電場は、分散媒(carrierfluid)の移動(すなわち、水溶液における蛋白性物質の移動)方向に対して実質的に直交してすなわち直角に与えられる。電場の方向はパルスごとにまたはほぼパルスごとに変えられる。パルスの持続時間(数ナノ秒)は、蛋白質複合体の誘電緩和時間(〜1ms)に比べて短い。複数回のパルス方向変化が、誘電緩和時間間隔内に生じることができる。パルス持続時間、パルス反復速度、パルスパターン及びパルス列長は、熱効果の発現を防止するように選択される(「冷間」プロセス)。開示されるシステムは、高速(<5ナノ秒)の立上り時間及び立下り時間の可変的方向の方形パルスを生成し、これを送る。パルスの立上り時間及び立下り時間が短ければ、それだけパルスのフーリエ・スペクトルにおける周波数成分は高くなり、従って、パルスの影響を受ける構造は小さくなる。本出願において開示される蛋白性組織の解離及び除去のためのシステムにおいて、パルス持続時間はナノ秒の範囲であり、電場強度は1kV/cmより大きく、好ましくは数百kV/cmの範囲内である。
【0045】
開示される発明のシステムを実現する装置及び方法は、硝子体及び眼内膜物質を係合し、解離しこれを除去するために超短無秩序強力パルス電気的フィールドフローフラクショネーション(CHIP EFFF)を利用する。極性の逆転、活性電極の切り替えまたはこの両方を組み合わせることによって生じる(電極116の配列を使用することによる)電場の方向の段階的連続変化が中空プローブ114の先端112に組み込まれて、硝子体複合体(蛋白質群)をまとめる非共有結合に関与する電荷に対して破壊的効果を生じさせる。肉眼で見える体積の電気的に不安定な眼内組織を作ることによって、捕捉された蛋白性組織、膜及び多成分酵素内での疎水性及び静水性結合をさらに弱め、それによって組織の流動性または液化を増大することが可能である。その結果生じる蛋白性組織の疎水性及び静水性結合に対する攻撃は、硝子体及び関連眼内組織の付着性高分子の結合メカニズムを一時的に損ない、それにより硝子体集合体の微細部分を一時的に管理可能な遊離蛋白性液体複合体にするのに充分である。
【0046】
本発明の有効性にとって最優先事項はエネルギーの選択である。蛋白性組織をまとめる結合に対する攻撃の目的は、非共有結合に関連する高分子の外殻において電子間の乱調を生じることである。エネルギーの好ましい形式は電気である。すなわち、電場を直接的に生成することによって電子にエネルギーを供給することである。破壊電場を生成するために、電子にエネルギーを供給するためにフォトン及びフォノンを利用するマイクロ波及び超音波など他のエネルギー源を使用することもできる。本出願において、レーザー特にフェムト秒範囲のパルス持続時間及び実質的に水のピーク吸収周波数の周波数で作動するレーザーを別のエネルギー源として利用することもできる。
【0047】
本出願において開示される装置及び方法の望ましい実施態様においては、硝子体及び眼内膜物質を係合し、解離しこれを除去するために高速の可変的方向の電気的フィールドフローフラクショネーションが使用される。特に、開示されるシステムは、電場の生成を容易にしかつ解離された蛋白性組織を除去するために、流体法と結合される場の方向の連続変化を特徴とする強力超短パルス破壊電場を利用する。強力超短パルス破壊電場は、ナノ秒程度のパルス幅とkV/cm程度の場の強度を用いて生成される。強力超短パルス破壊電場は、吸引分散媒の流れの方向に対して実質的に直角に維持される。組織複合体(蛋白質群)をまとめる非共有結合に関与する電子間の乱調を生じさせるために、強力超短パルス破壊電場(極性を逆転させることによってまたは電極の配列間を切り替えることによって)の方向の段階的連続変化が採用される。熱効果に必要とされる時間に比べて短いパルス持続時間及びパルス列長を用いて、組織結合メカニズムに対する攻撃は基本的に「冷間」プロセスであり、一時的組織基質解離のために充分である。組織結合メカニズムに対する攻撃は硝子体及び関連眼内組織の付着性高分子の結合メカニズムを損なわせ、それによって硝子体集合体の微小部分を管理可能な蛋白性液体複合体にする。解離を引き起こす電場強度は逆二乗則に従う。従って、場の強度は電極間の領域において最高である。望ましい実施態様において、この距離は0.5mm未満である。影響を受ける蛋白性液体複合体はプローブ電極間の高速の可変的方向のパルス電場が与えられる領域内に局部化され、組織結合メカニズムに対する攻撃の一時的効果が消える(緩和する)前に流体法(吸引)を用いて除去される。蛋白性組織が摘出チャネルの中(すなわち流体吸引ストリーム内部)に入ると、変質した蛋白性複合体の状態は擬似攻撃前状態に戻ることができる。
【0048】
本出願において説明されるシステムの開示される応用例は、網膜の病的症状の治療のためのものであり、これによって図1に示されるように、本出願に説明される中空プローブ114はハンドル120を用いて外科医によって図3に示される通り扁平部アプローチ101を介して眼100の後部に挿入される。標準的可視化プロセスを用いれば、硝子体及び(または)眼内膜及び組織は中空プローブ114の先端112によって係合され、灌注メカニズム130及び吸引メカニズム140が起動され、高電圧パルス発生器150からの強力超短パルス電力はパルス形成網160、スウィッチング回路170及びケーブル124を介して送られて、同伴された体積の組織内部に強力超短パルス破壊電場を生成する。中空プローブ114の吸収ルーメン122に接続される吸引ライン118を介する吸引によってプローブ先端112に向かって引っ張られる同伴された組織の成分の付着メカニズムは解離されて、採用される流体法が破壊された組織を除去する。係合は中空プローブ114の先端112に対して軸方向または横方向である。摘出された組織は食塩水吸引分散媒を介して吸引ルーメン122を通じて除去される。
【0049】
後部硝子体組織全てを除去するか、あるいは網膜またはその他の眼内組織または膜から硝子体組織を特定して剥離することができる。
【0050】
後部眼窩及び網膜表面からの硝子体組織、硝子体網膜及び維管膜の係合、破壊及び除去は、糖尿病性網膜症、網膜はく離、増殖性硝子体網膜症、牽引療法、貫通外傷、黄斑膜及びその他の網膜症など視力を失う恐れのある症状を外科的に治療するために、硝子体網膜の専門家によって追求される重要なプロセスである。
【0051】
本出願において説明される装置及び様式は、硝子体及び網膜に関係する後部眼内手術のためのものであるが、牽引整復(部分的硝子体切除)、ミセル付着整復、子柱網破壊、操作、再構成、及び刺激、慢性緑内障を治療するための子柱網形成、シュレム管操作、残留水晶体上皮の除去及び組織トレーラの除去を含めて、眼前部の治療にも応用できることが分かる。開示される装置及び方法の他の治療への応用可能性が当業者には明らかになるだろう。
【0052】
システムの部分
制御ユニット(180)
パルスパワー発生器(150)
パルス形成網(160)
スウィッチング回路(170)
伝送線(124)
多電極手術用プローブアセンブリ(110)
流体システム(130、140)
【0053】
本発明の装置及び方法は、眼内組織外基質(ECM)の成分の特性に合わせて調節されたパルス持続時間、反復速度、パルスパターン及びパルス列長で強力かつ超短持続時間のパルス電場(低エネルギー)を送る。このシステム190用のパルスパワー発生器150は、硝子体及び灌注液の低インピーダンスに対してパルスDCまたはゲートACを送る。システム190にはエネルギー蓄積、パルス整形、伝送及び負荷整合成分が含まれる。高電圧パルス生成器150のピーク出力電圧は、外科用中空プローブ114の遠位端112の電極116を用いて最高300kV/cmの場の強度を送るのに充分である。パルス持続時間は蛋白質複合体の誘電弛緩時間に比べて短い。また、パルス持続時間、反復速度及びパルス列長(すなわち、デューティサイクル)は熱効果の発現を防止するように選択される(「冷間」プロセス)。システム190は立上り時間及び立下り時間が速い(<5ナノ秒)方形パルスを生成し、これを送る。本出願において開示される装置及び方法において、パルス持続時間はナノ秒の範囲であり、電圧は1kVより大きく、好ましくは数十kVの範囲である。
【0054】
パルス持続時間及び反復速度を制御するため、及び中空プローブ114の先端112の電極配列において電極間を切り替えることによって、電極間で極性を逆転させることによってまたはその両方を組み合わせることによって電場の方向に段階的連続変化を生じさせて、電極間の分散媒の絶縁破壊または熱効果を生じさせることなく電場に乱調を生じさせるために、スウィッチング回路170が組み込まれる。
【0055】
本発明の効果にとって最優先事項はエネルギーの選択である。蛋白性複合体を一緒に結合する非共有結合に関連する高分子の外殻において電子の間に乱調を生じさせるのが本発明の目的である。エネルギーの好ましい形式は電気である。すなわち、電場の直接生成による電子へのエネルギー供給である。マイクロ波、レーザー及び超音波など、電子にエネルギーを供給するためのフォトン及びフォノンを利用するエネルギー源も、高分子の外殻の電子の間に要求の乱調を生じさせるために使用できる。
【0056】
開示される装置は、伝送線124及び外科用中空プローブ114を含み、プローブは肉眼で見える体積の組織外基質ECM(例えば、硝子体及び眼内膜)内部に限定された局部的な電力領域を生成するようにエネルギーを送り、運び、分配する。電場は基本的に分散媒(すなわち、水溶液内の蛋白性物質)の移動方向に対して基本的に直交してすなわちこれに直角に与えられる。図4A、4B、4C、4D及び4Eは、外科用プローブ114の遠位端112における電極配列の可能ないくつかの実施態様を示している。
【0057】
例えば、参照番号1は、図4A、4B、4C、4D及び4Eにおいて、1つまたはそれ以上の通り穴を持つポリマー押出し成形物を指すために使用される。参照番号3、4、5、6、7、8、9及び10は押出し成形物1に埋め込まれる電極線を指す。図4A、4C及び4Dにおいて、中央に配置される電極線11が使用される。図4Eにおいては、中央に配置される管状電極12が使用される。図4Eにおいては、また、光ファイバ設備または他の形式の機器用に中央に配置されるルーメン13が使用される。要求の高速で強力なパルス電場パターンを生成するために他の多数の形態が可能であることが当業者には分かるだろう。実質的に平面状に示されているが、中空プローブ114の各電極116の遠位面を軸方向に食い違わせるまたは整列させることができ、遠位端112からこれを差し込むか突き出すか、またはこれを組み合わせることができる。図にはプローブの軸方向に直交する平面で終結するように示されているが、電極116は側面ウィンドウ(図には示されていない)の周りで軸方向に終結することができる。
【0058】
望ましい実施態様において、押出し成形物1の外径は1.016cm(0.040インチ)未満である。硝子体または眼内組織は吸収チャネルに向かってこの中へ引っ張られ、物質が電極116に対して直角を成す領域に接近すると、電極は活性化されて、電極116間に超短強力破壊電場を生成すると想定される。
【0059】
電極配列の配置及びその後の活性化の結果、一貫して方向が変化する可変的な場の放射が生じる。表5A、5B、5C、5D及び5Eは、それぞれ図4A、4B、4C、4D及び4Eに示される実施態様のための電極活性化案を示している。表5Aにおいては、図4Aに示されるプローブ114の端の実施態様に使用されるパルスシーケンスの例である12パルスが示されている。第一パルスは、負極として参照番号11を与えられる電極116を使用し、正極は3、4、5である。第二パルスはその逆である。残りのパルスは、可変的方向の電場を確立するためのパルス配列体の例である。
【0060】
表5Bにおいては、図4Bに示されるプローブ114の実施態様に使用されるパルスシーケンスの例である11パルスが示されている。
【0061】
表5Cにおいて、図5Aと同様に、図4Cに示されるプローブに使用される12パルスシーケンスが示されている。
【0062】
表5D及び5Eにおいては、それぞれ図4D及び4Eに示されるプローブ用の10パルスシーケンスが示されている。電極活性化の実施態様及びシーケンスに応じて他の多数の場のパターンが想定される。電極活性化の目的は水及び蛋白質の極特性を利用し、高速で方向が変化する強力な電場で乱調を生じさせて、水及び蛋白質の両方の等角変化を誘発して、一時的な組織解離を導くことである。電場が与えられる領域内に局部化される解離された組織複合体は、その後、攻撃の一時的効果が消える(弛緩)前に同時に流体法を用いて除去される。
【0063】
実施態様4Eの場合、中央電極12は例えば中心領域13を持つ管状導電電極である。中心領域13は灌注用通り穴または器具用チャネルであっても良いし、中心領域は光のデリバリ用の光ファイバ装置であっても良い。
【0064】
前述の通り、最も効率のよい破壊電場を与えるように配列内の電極の位置及び電極の数を構成することができる。また、電極のうち1つまたはそれ以上が同じ長さすなわち同じ軸方向の位置で終結しないように電極を軸方向に配置することができる。電極間の空間的な場の強度を最適化するように電極の端末部を成形することができる。電極の端末部の形状は、電極の間で電場を放射しその強度分布を最適化するように選択される直線エッジ、コーナー、シャープ、曲線(一定及び可変的)またはこれらの組合せを含むことができる。
【0065】
蛋白性非共有結合関係の再構築が生じる前に解離した細胞を引き込んでこれを除去するために流体法(吸引)が含まれる。望ましい実施態様に使用される流体法は食塩水灌注及び流出水吸引の両方を含む。望ましい実施態様において、流体システムは、眼内の体積及び圧力が生理学的限界内に維持されるように特に適合する灌注及び吸引の機能を含む。後部硝子体は97%を超える水分を含有するので、流体システムの重要な機能は係合される物質の希釈、水和及び安定したインピーダンスを保証することである。望ましい実施態様において、吸引チャネルは、上述の破壊電場を受ける間、眼内組織が吸引ルーメン122またはチャネルに引き込まれるように、外科用中空プローブ114に組み込まれる。吸引された流出水の流量率は破壊電場の影響を受ける水和蛋白性物質の解離率に適合する。BSS(登録商標)灌注液またはBSS PLUS(登録商標)灌注液(両方ともAlcon Laboratories,Inc.から入手可能)を用いる灌注が利用されることが予想される。解離を強化するために灌注液に無害の特性及び成分を組み込むことができる。図4に示されるように灌注ルート/チャネルを外科用プローブに組み込むか、独立したカニューレにこれを用意するか、あるいは両方の手段を組み合わせることができる。
【0066】
図6は3つの電極を含むプローブアセンブリ210の別の実施態様の斜視図である。望ましい実施態様110におけると同様、プローブアセンブリ210は中空プローブ214及びハンドル220を含む。組織は中空プローブ214の先端212によって係合される。図6、7及び8を参照することによりプローブアセンブリ216をよりよく理解することができる。3つの電極216はプローブ214内の中央スパイン217の周りにほぼ等角度間隔で配置される。電極216の間には灌注チャネル215がある。中央スパイン217の中央には吸引ルーメン222が配置される。中央スパイン217の中央には吸収ルーメン222が配置される。中央スパイン217、灌注チャネル215及び電極を外部ジャケット219が被覆する。ジャケットは非外傷性先端221で終結する。プローブアセンブリ210は除去対象である組織が非外傷性先端221のすぐ内部に位置するように配置される。
【0067】
図10に示されるプローブアセンブリ210用のサポートシステム290は、プローブ先端灌注システム235を含む点を除いて、図3に示される実施態様のサポートシステムと同様である。サポートシステムには、全体灌注システム230、灌注ライン218に接続される吸引システム240、制御ユニット280、1つまたはそれ以上の高電圧パルス発生器250、伝送線224に接続されるスウィッチング回路270及びプローブ先端灌注チューブ237に接続されるプローブ先端希釈灌注システム235が含まれる。
【0068】
プローブ先端の電極を示す図4A、4B、4C、4D及び4Eにおけると同様、図11A及び11Bは、プローブアセンブリ210における電極1、2、3及び4の別の配列を示している。図12A及び12Bは図11A及び11Bに対応し、蛋白性組織の周りに非プラズマ、無接点エネルギー供給の破壊領域を生成するための電極活性化シーケンスを示している。この非プラズマ、無接点エネルギー供給の破壊領域の生成をよりよく理解するために、図13A及び13Bはそれぞれ図12A及び12Bに示されるパルスシーケンスの力線を示しており、この場合には、電極の極性は逆転されない。
【0069】
図14は個々のパルスの持続時間、個々のパルスの反復速度及びパルス列のパルス長を制御する3チャネルパルス発生器250の略図である。
【0070】
図15は、図14に示される3チャネルパルス発生器250の1パルス生成サイクル例のチャネル状態を示す表である。
【0071】
プローブアセンブリ210がそれぞれ図6、7、8及び9に示される補足的灌注用の複数の通り穴215を含むことを理解することによって、図10に示されるシステム290をさらによく理解できる。補助灌注液の排出速度が希釈される水和眼内細胞の流入量より少ないように、灌注流量は、中央ルーメン222を通る吸引量より少ない。付加的な灌注液は、プローブ外部のプローブ先端希釈灌注メカニズム235(図10)によって与えられる。灌注液は、眼内組織を希釈するため及び電極216間に安定したまたはほぼ一定のインピーダンスを維持しそれによってエネルギーデリバリ及び電場強度の大幅な変移を防止するための両方に使用される。硝子体解離を強化するためにpH及び成分など灌注液の特性を選択することができる。
【0072】
灌注用の第三の導管237は、プローブアセンブリ210を補足的灌注源235に接続する。また、図10において分かる通り、パルス形成網が高電圧パルス生成器250に組み込まれる。
【0073】
図11A及び12Aを参照することによって、パルス間に電極の極性を逆転させる代わりに、電極間で活性負極と活性正極が切り替えられることが分かる。各パルスの電場の例を示すために、図13Aには生成される力線が示されている。図11Aに示される3電極1、2、3形態の場合、1サイクルは様々な方向から発する3つのパルスを含む。図12Aの表において、シーケンス例は実極性(逆転)ではなく電極切り替えを含む場合について示されている。図12Bの表及び図13Bに示される力線は、図11Bに示される4電極の実施態様1、2、3及び4を示している。この実施態様においては、電極が対で負極及び正極として作用する。
【0074】
図14にその略図が示される3チャネルパルス発生器は、1つのチャネルの始動が1つのパルスを1つの電極を送り、その後第二チャネルを始動し、第二チャネルは1つのパルスを別の電極に送り、その後第三チャネルを始動し、第三チャネルはパルスを別の電極へ送り第一チャネルを始動して再びシーケンスを開始する。1つのチャネルがパルスを発する間、他の2つのチャネルはゼロ抵抗を与え、発せられたパルスの帰路として作用する。チャネルのシーケンスは順番であるか、またはランダムでもよい。
【0075】
図15は、パルス放射時の各チャネルの極性状態を示している。各チャネルの極性状態は単一チャネルにおける実極性切り替えと異なり電極切り替えの結果生じる。
【0076】
プローブアセンブリ210のさらに別の実施態様が図16〜23に示されている。図16〜19は、平らで軸方向に細長い電極216を持つ実施態様を示している。これらの電極216は、吸引チャネル222に対して半径方向に整列する大きい平らな部分を持つ扁平形である。電極216の鋭いコーナーは、さらに集束的な電場が吸引チャネルに生成されるようにする。これらの電極216はジャケット219の口で終結する。
【0077】
図20〜23は、尖った先端を有する電極216を持つ実施態様を示している。これらの電極216は吸引チャネル222に対して半径方向に整列する大きい平らな部分を持つ扁平形である。これらの電極216は、折り曲げられた尖った先端で終結し、先端が吸引チャネル222に向かって半径方向内向きである。
【0078】
図16〜23に示される2つの実施態様において、3つの電極216はプローブ214内で中央スパイン217の周りに実質的に等しい角間隔で配置される。電極216間には灌注チャネル217がある。中央スパイン217の中央には吸引ルーメン222が配置される。非外傷性先端で終結する外部ジャケットが中央スパイン217、灌注チャネル215及び電極を被覆する。プローブアセンブリ210は、除去対象である組織が非外傷性先端221のすぐ内部に位置するように配置される。図17、19、21及び23において、ジャケット219と吸引チャネル222との間の開口は灌注液が電極216付近を滝効果で通過できるようにする。
【0079】
図16〜23のプローブアセンブリの作動は図11A、12A及び13Aに示されるのと同様である。前述の他の作動モードは図16〜23のアセンブリにも適している。
【0080】
開示されるシステムは、下記の利点をもたらす。
a)眼の後部からの眼内組織の無牽引除去
b)遠距離電場効果なしで小さい体積の組織の管理可能な解離
特に、遠距離電場移行、漏出または電場の拡散がない。網膜を含めて眼の後部全体に影響を及ぼす酵素プロセスと異なり、開示されるCHIP EFFFの効果は局部的である。
c)硝子体全切除なしに部分的硝子体切除または牽引解離
ほとんどの硝子体網膜手術は眼の後部における硝子体全体の摘出を必要とした。開示されるシステムを用いると、硝子体全体を除去することなく網膜から蛋白性組織及びコラーゲンを選択的に剥離することができる。従って、術後の人工硝子体の必要が排除される。
d)反応性酸素種が一切生成されない
レーザー、プラズマ及び熱発生様式など削摩テクノロジーと異なり、開示されるシステムは硝子体及び眼内膜の非共有結合付着面のみにしか影響を与えないので、有毒化学物質またはROSが含まれたりこれが放出されたりすることがない。熱効果を生じさせるには送られるエネルギーが不十分である。
e)安全性
エネルギーデリバリが中断する結果、蛋白性組織が再構築される。従って、標的組織に永久的損傷を与えることなくいつでもほぼ瞬間的に開示される方法を中断することができる。
f)多モード(摘出、凝結、切断、刺激)
プローブは複数の電極を有するので、様々な機能結果を得るためにパワー設定を変化させることが可能である。CHIP EFFFモードにおいては、プローブはガラス体及び眼内膜を摘出するために利用される。凝結モードにおいては、血管出血を止めるためにRFエネルギーを加えることができる。切断モードにおいては、組織の切断を実施するためにプラズマまたは放電加工を生じるように適切なパワー及び周波数を与えることができる。刺激モードにおいては、治療のために低パワーの電気パルスを与えることができる。
g)器具交換の減少
後部眼手術においては、硝子体及び眼内膜物質の係合、掻き裂き、分離及び除去のために過剰なほどの数の特製の専門的な器具が必要とされる。手術中の器具の交換は術後の合併症の大きな要因である。本発明を使用すれば、多くの先行技術の器具を無用のものとし、器具交換を最小限に抑える。
h)可動部の不在
プローブ製造のためのコスト及び労働力の減少が実現される。機械的硝子体切除プローブの製造は労働集約的である。本出願において考えられる使い捨て中空プローブは、ルーメンまたは凹部にワイヤを持つ取付け多ルーメン同時押出し成形物またはアセンブリと小さいハンドルとから成る。現在の機械的アセンブリと比べて組立て技能が小さくなる。
i)後部及び前部応用
開示される装置は、硝子体及び眼内組織の無牽引除去のために設計されているが、小柱網刺激、残留水晶体上皮の除去及び組織トレーラの除去、前部硝子体切除など特定の前部手術にこれを利用することができる。
j)ハイブリッドフレンドリ
開示されるプローブアセンブリの設計は単純なので、機械的硝子体切除、Alcon Laboratories,Inc.から入手可能なAquaLase(登録商標)外科器具及び化学的硝子体切除(酵素作用)など独立のまたは他の組織破壊及び摘出手段の補助的手段として有益である。
【0081】
開示される発明はその望ましい実施態様及び別の実施態様に関して説明されているが、上述の開示によってさらに他の実施態様が可能になることが当業者には分かるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明のシステムが使用される後部眼内手術に使用されるプローブの斜視図である。
【図2】図1に示されるプローブ先端の拡大斜視図である。
【図3】開示されるシステムの望ましい実施態様の略図である。
【図4A】プローブ先端の電極の択一的配置の前面図である。
【図4B】プローブ先端の電極の択一的配置の前面図である。
【図4C】プローブ先端の電極の択一的配置の前面図である。
【図4D】プローブ先端の電極の択一的配置の前面図である。
【図4E】プローブ先端の電極の択一的配置の前面図である。
【図5A】図4Aに示されるプローブ配列に関連する活性化案を示す表である。
【図5B】図4Bに示されるプローブ配列に関連する活性化案を示す表である。
【図5C】図4Cに示されるプローブ配列に関連する活性化案を示す表である。
【図5D】図4Dに示されるプローブ配列に関連する活性化案を示す表である。
【図5E】図4Eに示されるプローブ配列に関連する活性化案を示す表である。
【図6】本発明のシステムを採用する後部眼内手術に使用されるプローブの3電極実施態様の斜視図である。
【図7】内部の特徴を明らかにするための透明のカバーを含む、図6に示されるプローブの先端の拡大斜視図である。
【図8】図7に示されるプローブの端面図である。
【図9】図7に示されるものと同様のプローブの拡大斜視図である。
【図10】開示されるシステムの別の実施態様の略図であり、プローブに補足的灌注手段が含まれる。
【図11A】図7、8及び9に示される実施態様における3電極の配置を示すプローブ先端の端面図である。
【図11B】4つの電極を有するプローブ先端の端面図である。
【図12A】図11Aに示される電極配列に関連する活性化案を示す表である。
【図12B】図11Bに示される電極配列に関連する活性化案を示す表である。
【図13A】図11Aに示される電極のうち1つまたはそれ以上における電荷の配置から生じる力線例の図である。
【図13B】図11Bに示される電極のうち1つまたはそれ以上における電荷の配置から生じる力線例の図である。
【図14】3電極プローブと一緒に使用される3チャネルパルス発生器例の略図である。
【図15】図14に示される発生器のパルス発生1サイクル中のチャネル状態の略図である。
【図16】内部の特徴を明らかにするために透明のカバーを含む、図6に示されるプローブ先端の別の実施態様の拡大斜視図である。
【図17】内部の特徴を被覆するためのジャケットを含む、図16に示されるプローブの拡大斜視図である。
【図18】図16に示されるプローブの端面図である。
【図19】図17に示されるプローブの端面図である。
【図20】内部の特徴を明らかにするために透明のカバーを含む、図6に示されるプローブ先端の別の実施態様の拡大斜視図である。
【図21】内部の特徴を被覆するジャケットを含む、図20に示されるプローブの拡大斜視図である。
【図22】図20に示されるプローブの端面図である。
【図23】図21に示されるプローブの端面図である。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2006年1月3日に提出された仮特許出願第60/755,839号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、肉眼で見える体積の高水和蛋白性組織の解離及び除去に関する。特に、高速可変方向エネルギーフィールドフローフラクショネーションを用いる肉眼で見える体積の高水和蛋白性組織の解離及び除去に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、硝子体網膜手術に関して説明されているが、当業者は、本発明を人間または動物の身体の他の部位の医療処置に応用できることが分かるだろう。
【0004】
数十年の間、先行技術の硝子体網膜後部手術は、1)せん断プローブによる(往復カッタか回転カッタを利用する)組織除去、2)はさみ、メスまたは硝子体カッタを用いる膜離断、3)鉗子及びピンセットによる膜剥がし、4)鉗子及び粘性流体による膜分離、のための機械的方法すなわち牽引法に依存してきた。メカニズム、材料、品質、製造可能性、システムサポート及び効率の面での改良は進んだが、後部眼内手術の成果の大幅な前進は主に執刀する眼科医の知識、不屈の精神、技能及び手練に拠るものであった。
【0005】
硝子体網膜手術における眼内組織の無牽引除去は、現在の機械的な医療器具の備えではほぼ不可能である。技能、正確な動き、経験そして知識を用いて、執刀医は組織除去時に機械的医療器具の使用による牽引を最小限に抑えてきたが、これを完全に排除することは不可能である。機械的手術法すなわち牽引手術法は、組織結合を分断するためにせん断作用を利用する。このせん断作用は本来的に除去対象である組織に対して張力を加えるものであり、この張力が網膜に伝達される。機械的手術法すなわち牽引手術法を使用するので、組織結合を分断するために使用される機械的医療装置の切断要素に動きを与える力は網膜に押し付けられる。眼科医が技能を持ち慎重に対処しても、牽引手術法に関連する力が網膜に押し付けられることにより網膜の損傷の可能性が生じる。
【0006】
蛋白質成分の構造変化を生じさせる際に使用されてきた可能な無牽引手術法は、強力パルス電場の応用を伴うが、強力パルス電場の使用は硝子体網膜手術など精巧な外科処置には進出していない。
【0007】
強力パルス電場は医学界、食品業及びマイクロメカニック装置の機械加工において多様な用途を得ている。医学界における応用の例は、腫瘍細胞への化学療法薬のデリバリ、遺伝子治療、経皮薬のデリバリ及び水及び液体食品のバクテリア汚染除去を含む。食品業においては、強力超短パルス電場は滅菌及び汚染除去において商業用途を見出している。最後に、マイクロ電気機械システム(MEMS−Micro Electric Mechanical Systems)チップに使用される機械加工及び表面改質術は強力超音波パルス電場を採用する。
【0008】
高分子、細胞膜、細胞内器官及び細胞外実体など生体構造の操作が、生物物理学及び生物化学の両方のエンジニアリンググループによる最近の研究の的である。動電学の分野では、電場に対する生物組織の反応が研究、診断及び治療用に使用されてきた。
【0009】
非外科的動電学研究及び開発
本出願において説明される発明は、生物化学的分子研究、治療薬開発、滅菌技術、商業的重合化、プラズマ研究及びMEMS(ラボオンチップlab−on−a−chip)の進歩のために現在使用されている先行技術の非外科的テクノロジーのいくつかを評価することにより基本的に理解できる。他のシステム(蛋白性物質が強力パルス電場のデリバリによって操作され損なわれるタイプのもの)について例証するために、先行技術のテクノロジーの主要な態様について下に説明する。
【0010】
電気レオロジー
電気レオロジー(ER:Electrorheology)は、生物学的流体を含めて流体のレオロジーが電場(通常、低DC電場)を与えることにより修正される現象である。流体に与えられる電場は流体にバルク相転移(bulk−phase transition)を誘発し、その際、電場強度が最も重要なパラメータであり、電場の周波数は一般に最も重要ではないパラメータである。ほとんどのコロイド状ER流体は電場振幅を増大することによって粘弾性効果を増す。興味深いことに、流体の粘弾性の減少は最高電場強度のときに現れるが、流体の粘弾性に対する電場強度の効果についての決定的な研究は欠けており、ERのメカニズムは未知のままである。
【0011】
電気泳動
電気泳動(または誘電泳動)は、電場における相互の電極すなわち負極または正極に向かう粒子の移動を伴う。電気泳動プロセスは、生体分子を分離し純化する(例えば、DNA及びRNA分離)ために使用される。ナノメートルからマイクロメートル程度の大きさの物質の場合、電気泳動プロセスは、物質の非常に特異な隔離及び物質特性の測定の両方に有効に作用する。電気泳動において、閉じ込められた懸濁液における電場誘発の相転移が空間的に均等のAC電場の問題である。この電場誘発の相転移は、懸濁液における周知の円柱構造の電場誘発形成に続いて生じる。外部電場を受けると、電場内部の粒子は電場の方向に沿って整列して、鎖及び柱を形成する。粒子の鎖及び柱は、その後、電場及び流体の流れの作用によって引き伸ばされる。粒子の分離及び隔離のために掛かる時間は数分から数時間程度のものであり、複数の二次的プロセスの応用を伴う場合が多い。高分子分離を強化するために、しばしばイオン界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムSDS)及び標本希釈が使用される。イオン界面活性剤は疎水性環境と親水性環境との間の化学的ブリッジを形成して、自然の蛋白質構造を維持するために必要な疎水性接続力を破壊するまたはこれを低下させる能力を有する。
【0012】
フィールドフローフラクショネーション
フィールドフローフラクショネーション(FFF:Field Flow Fractionation)は多くの方法で液体クロマトグラフィと両立可能な実験的溶液分離法である。一般に、FFFシステムにおいて分離される物質及び物質のサイズ範囲は電気泳動及び液体クロマトグラフィを用いて分析されるものに対して補完的である。FFFシステムにおいては、分離の主役(電場)が分離の方向に直交する方向に加えられて、FFFチャネルの出口で標本成分の時空間分離を生じさせる。FFFチャネルにおける分離は標本成分の滞留(時間)の差に基づく。一方、FFFシステムにおける滞留は標本の物理化学特性の差、加えられる攻撃の強さ及び様式及び分離チャネルにおける流体速度プロフィルに関連する。FFFの利用は電気泳動時間を数時間から数分に減少する。
【0013】
電気的フィールドフローフラクショネーション
マイクロ電気機械システム(MEMS)の機械加工において実施される作業から電気的フィールドフローフラクショネーション(EFFF)が生じる。EFFFは、軸方向か横方向に電場を与えることによってマイクロチャネルにおいて同伴されたナノ粒子、蛋白質及び高分子を生体外分離するためのプロセスである。この技法は、現在、MEMSマイクロ泳動装置と関連して研究中である。この方法は、電位(一方向側方電場)の作用を受ける検体の軸方向の流れに基づいている。流路における粒状標本の分離性能及び滞留時間は流路の流れ場を横切って加えられる電場と標本との相互作用によって決まる。蛋白質複合体の解離、蛋白質結合の破壊及びその後の分割はEFFFによって得られてきた。EFFFにおいて周期的(振動)電位を加えることによって、滞留時間が増大し、その結果分離が大幅に向上した。
【0014】
さらに、交互極性を持つパルス電位を加えることにより電場の効果を増すことが立証されている。電場勾配における蛋白性組織の局部的変形は純粋な伸長なので、せん断が鎖分断において重要な役割を果たすと見なされてきた。伸長速度及び伸縮軸によって定量化される配列ジオメトリ及び流れ場の強度を慎重に操作することによって高分子の大部分を大幅に伸長することができる。入力電圧を変化させれば回転、伸張及びせん断電場パターンを生成できるマイクロチップが設計されている。1.25cmチップにおける分離時間は約5秒に減少された。
【0015】
電気穿孔
電気穿孔は細胞膜の透過性を可逆的かつ一時的に増すために使用されてきた別の先行技術の非外科的テクノロジーである。生体外における細胞膜を横切る薬物及び遺伝子のデリバリを強化するために1994年ごろに導入された電気穿孔(EP)は、過去10年間に、分子生物学研究所における標準的手順となった。電気穿孔は、マイクロ秒からミリ秒の範囲の持続時間を有する電気エネルギーのパルス(センチメートル当たりのキロボルトで測定される)によって細胞膜の半透過性を一時的に損失させる技法である。このような細胞膜の半透過性の一時的損失は、イオン漏出、代謝物質の漏出、薬物、分子プローブ及びDNAの細胞摂取の増大を引き起こす。一部の先行技術の電気穿孔の応用は、形質移入のための生体細胞へのプラスミドまたは異物DNAの導入、ハイブリドーマを用意するための細胞の融合及び細胞膜への蛋白質の挿入を含む。古典的には、細胞のタイプ及び懸濁媒体に応じて0.1から10ミリ秒程度のパルス持続時間及びkV/cmの電場強度が利用されてきた。電気穿孔のメカニズム(すなわち、細胞経路の開閉)は完全には理解されていない。
【0016】
電気穿孔テクノロジーの適応は薬物デリバリのために使用されてきた。米国特許第5,869,326号及び公開された米国特許出願第2004/0176716号の両方は経皮薬物デリバリ用の器具について説明している。公開された米国特許出願第2004/021966号は電極配列体を用いる治療薬の皮内デリバリ及び生体外薬物デリバリについて説明している。米国特許第6,653,114号は電極切り替えのための手段を教示している。米国特許第6,773,736号及び米国特許第6,746,613号は、細胞の非活性化及び死を引き起こすことによって生成物及び流体を汚染除去するために電気穿孔テクノロジーを適合させた。米国特許第6,795,728号は、生体内で皮下脂肪貯蔵を減少させるための装置及び方法のための基礎として電気穿孔誘発の細胞死を使用する。
【0017】
ナノ秒パルス電場
ナノ秒パルス電場(nsPEF)テクノロジーは上述の電気穿孔テクノロジーの延長であり、生体内応用を含む。このテクノロジーにおいては、かなり高い電場(最高300kV/cm)と共に大幅に短い持続時間(1〜300ns)で形成される方形パルスまたは台形パルスが利用される。nsPEFはパルスパワーテクノロジーの進歩から発展した。このパルスパワーテクノロジーの使用は、試験対象である標本において生物学的に大幅な温度上昇を生じさせることなく細胞及び組織の電気穿孔に使用される電気エネルギーのパルスより数百倍高い電場強度を持つナノ秒パルス電場(nsPEF)の応用につながった。非常に少数の電気エネルギーパルスを使用することにより、nsPEFの効果は基本的に非熱的である。古典的な電気穿孔技法と異なり、哺乳類の細胞に対するnsPEFの効果が研究されたのはごく最近である。適切な振幅及び持続時間のnsPEFの応用は一時的な細胞透過性の増大、細胞または細胞下損傷または細胞消滅さえ生じさせる。生体内ナノ秒電気穿孔において、目標は狭い時間枠内での効果的な電場の均等分布を得ることである。
【0018】
現在の研究は、組織へナノ秒パルス(kV/cm)を加えることによってイオンまたは中性粒子を加熱することなく電子にエネルギーを与えることができることを立証している。一時的にかつ可逆的に細胞膜の透過性を増すためまたは細胞膜に影響を与えることなく細胞内成分を損なわせるために超短パルスエネルギー場(電磁EM、レーザーまたは強力集束超音波HIFU)を使用できることが判明している。より大きなエネルギーはイオンを励起し、短寿命のイオン基(OH及びO2+)の形成を生じさせる可能性があることも判明している。この発見は、細胞を殺すための滅菌及び汚染除去のプロセスの開発につながった。さらに高いエネルギーの使用は、分子レベルで細胞結合を攻撃する超荷電プラズマの形成を生じさせることができる。
【0019】
電気浸透
電気浸透(EO)はマイクロ装置に使用するための流体を運搬または混合するために使用される技法である。主要な概念は、流体に一方向のマックスウェル力を生成するために電極/電解液境界面において異なる荷電メカニズム及び極性強度の二重層を利用することである。この力は貫流ポンプを生成する。誘導電荷電気浸透(ICEO:induced−charge electro−osmosis)において、流体内部に微小渦を生じさせて、微小流体装置における混合を強化するという効果が得られる。流体に無秩序な流れの力を当てることによって、層流体系における混合を大幅に強化できる。極性及び与えられる電圧を変化させることによって、放射状の電気浸透流の強度及び方向を制御することができる。
【0020】
その他の界面動電現象
界面動電現象は上述のものに限定されない。MEMS研究において非常に大きい電圧及び固有の電場に結び付けられる最近の異種研究は、コロイドの電気泳動度は単に全正味電荷ではなく電荷分布に敏感であるという発見を含めて、可変的な電場を与えることにより興味深い反直観的効果が生じることを立証している。
【0021】
組織除去
上記のプロセスは全て高分子の操作に応用可能であるが、組織解離による肉眼で見える体積の蛋白性組織の摘出または除去には応用できない。組織にパルスエネルギーを用いる他のシステムは高レベルのエネルギーを採用するので、より長いパルス持続時間、パルス列、反復速度及び露出時間を用いて送られるより高いエネルギーが熱効果または超荷電プラズマの形成を生じさせることが判明している。このような熱効果または超荷電プラズマの形成は組織切断用の外科用器具を開発するためにいくつかの装置において効果的に利用されてきた。これらの器具においては、微小サイズ(厚みまたは突出)のプラズマ領域が器具の周りに生成される。超荷電プラズマ内部において電子、イオン及び一貫性のない動きを持つ分子が荷電され、これが、組織または細胞と接すると、分子レベルで結合を攻撃し、それによって、昇華を介して標的組織または組織表面を切除または除去する。超荷電プラズマの形成は電子雪崩プロセス、すなわち電子プラズマ雪崩イオン化を形成するための電子による価電子帯から連続体への高速のトンネリングのプロセスに依存する。付加的なトンネリング及び自由電子と分子との間の電場駆動の衝突によってこの超荷電プラズマの密度は急速に高まる。超荷電プラズマを用いる組織治療の主要な目標は非破壊的手術である。すなわち、制御された高い精密さで患部を除去して、非患部の損傷を最小限に抑えることである。活性プラズマのサイズ及び形状はプローブの設計、寸法及び媒体によって制御される。これまで気体媒体及び液体媒体の両方が採用されたことがある。液体内では、爆発性蒸気が形成される場合がある。
【0022】
パルス電子雪崩メス
公開された米国特許出願第2004/0236321号において開示されるパルス電子雪崩メス(PEAK)は無牽引冷温切断装置として説明されている。露出マイクロ電極と部分絶縁電極との間に高電場(nsPEF1〜8kV、150〜670uJ)が与えられる。このように高電場を与えることによりマイクロメートル長のプラズマストリーマの形式で表されるプラズマ形成を導く。プラズマストリーマの寸法を制御するのは露出電極のサイズである。一方、プラズマストリーマは、ミクロン規模の水の爆発性蒸発を生じさせる。パルスエネルギーが重要である。正確、安全及びコスト効率のよい組織切断が立証されている。ミクロンレベルにサイズが縮小された電極を用いる場合にも、液体媒体のイオン化及び爆発性蒸発は隣接組織を破壊してキャビテーションバブル(cavitation bubble)を形成する可能性があるので、プラズマ放電をプローブ先端に限定しなければならない。プラズマ形成時に達する高圧、蒸気泡の高速の膨張(>100m/秒)及びその後のキャビティ(空洞)の崩壊(相互作用ゾーンを拡大する可能性がある)は主に高速の泡蒸気冷却によるメカニズムである。眼科手術において、PEAKの使用によって生じる効果の不安定さ及び攻撃性は網膜の完全性にとって有害であるかもしれない。
【0023】
コブレーション
コブレーション(coblation)すなわち冷間切除は、プラズマを生成するために食塩水など導電性溶液と一緒に二極モードの無線周波数RFを使用する。プラズマは標的組織に接すると標的組織の表面層を昇華させる。加速荷電粒子の到達範囲は短く、プローブの周りのプラズマ境界層及び組織接点の表面に限定される。コブレーションは食塩水(導電性溶液)中のイオンにエネルギーを与えて、小さいプラズマ場を形成する。プラズマは組織の分子結合を破壊するのに充分なエネルギーを有し、切除経路を形成する。このプロセスの熱効果は約45〜85℃であると報告されている。古典的にRF電気手術装置は組織構造を修正するために熱を使用する。しかし、プラズマの影響はプラズマ自体に限定されかつ維持されるプラズマ層は顕微的な薄さなので、無線周波数誘発プラズマ場の生成は「冷間」プロセスと見なされている。プラズマは、分子結合を分子解離させるのに充分なエネルギーを持つ高度にイオン化された粒子から構成される。炭素−炭素結合及び炭素−窒素結合を破壊するために必要とされるエネルギーは3〜4eV程度である。コブレーション法は約8eVを供給すると見積もられる。電極は二極構成であり組織と食塩水との間にはインピーダンス差があるので、電流のほとんどは電極間に配置される導電性媒体を通過し、その結果組織に浸透する電流は僅かでありかつ組織の熱傷は僅かである。プラズマを生成するために必要なエネルギーの閾値に達しない場合、電流は導電性媒体及び組織を貫流する。組織及び導電性媒体の両方によって吸収されるエネルギーは熱として分散される。プラズマを生成するために必要なエネルギーの閾値に達すると、RF電流に対するインピーダンスはほとんど純粋な抵抗タイプのインピーダンスからもっと容量性タイプのインピーダンスに変化する。
【0024】
プラズマ針
プラズマ針は、周囲組織に影響を及ぼすことなく特定の細胞を除去または再配列できるようにするさらに別の装置である。プラズマ針の使用は、小規模のプラズマ放電を生じさせるために手動ツールに取り付けられたマイクロサイズの針を使用する非常に骨の折れる技法である。針先端と近位電極との間に電場が生成され、これらの間に不活性ガス(ヘリウム)が流れる。小規模のプラズマ放電は電子、イオン及びイオン基を含む。イオン及びイオン基は不活性ガスへの空気など汚染物質の導入によって制御可能である。小さいサイズのプラズマ源(プラズマ針)は、細胞自体を傷つけることなく細胞機能または細胞付着を変質させるような微細レベルでROS(反応性酸素種)及び紫外線放射を生成すると、想定されてきた。しかし、不活性ガスにおけるROS(例えば、空気)の増大が放射時間の増大と組み合わされると、細胞死を引き起こす可能性がある。プラズマ針の使用は薄い液体層を横切って影響を与えることが明らかであるが、この使用は眼科手術においてしばしば見られるような全液体環境においては最適ではない。
【0025】
放電加工
放電加工テクノロジーは上述のプラズマテクノロジーと類似する。放電加工装置は蒸気を生成するために、250kHz、持続時間10ms及び最高1.2kVのパルスエネルギー場を利用する。蒸気の絶縁破壊が生じると、小さいスパーク(<1mm)が形成される。最高1.7mmの遠距離電場効果(far−field effect)によって、放電加工による切断性能は電気外科と同様であるが、プラズマと同様プラズマのみが組織に接する。
【0026】
レーザー
レーザーは組織の高分子を破壊するためにこれまで使用されてきた別の無牽引テクノロジーである。レーザーは、1960年ごろから眼科手術に利用されてきた。レーザー使用の最大の成功分野は、糖尿病性網膜症、中心静脈閉塞及び加齢性黄斑変性または虚血性網膜血管炎における脈絡膜新生血管などの疾患における非侵襲的網膜凝結の分野である。レーザーは、角膜彫刻(corneal sculpting)及び緑内障などの眼前部の用途にも広く使用されてきた。後部眼科手術にレーザーを使用しようとする試みの結果は混合的なものである。非侵襲的(経角膜/水晶体または経強膜)技法は、これらの介在組織の吸収特性ゆえに実用的ではない。網膜及び硝子体の眼内手術に必要とされる高度な精密さは、組織の操作及び除去のためにさらに洗練された侵襲的技法を用いることを要求する。組織/レーザー相互作用体系は、1)熱:電磁エネルギーの熱エネルギーへの変換、2)光化学:レーザーフォトの吸収によって活性化される内在的(内因性)または注入(外因性)感光化学物質(発色団)、3)光切除:フォトンの吸収の分子内結合の直接的光解離、及び4)電気機械:絶縁破壊及びプラズマ生成につながる自由電子の多光子生成または熱電子放出、を含む。レーザーはコスト高であり、微細眼内組織を漂遊レーザーエネルギー及び遠距離電場熱効果から保護するために固有の設計のレーザープローブにシールド及び逆転防止装置を使用する必要があることが判明している。しかし、フェムト秒パルスレーザーの最近の開発は微細手術の用途に新しい可能性を開いた。
【0027】
その他の組織除去法
眼内組織を破壊するために現在採用されている方法は、細切(分割)(細切は機械的せん断硝子体切除装置の目的である)、熱(蛋白質変性)または酵素反応により得られる液化、及びレーザーまたはプラズマ処置を介する昇華、を含む。レーザーまたはプラズマ処置を介する昇華は実際には分子レベルの結合を損なうのに対して、細切及び液化はもっと力の弱い結合メカニズム(例えば、非共有結合)に影響を与える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
従って、硝子体網膜手術の多くの進歩にもかかわらず、硝子体網膜手術時に硝子体及び眼内組織など肉眼で見える体積の高水和の蛋白質組織を分解及び除去するための効果的な装置及び方法の必要性は依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、硝子体網膜手術時の硝子体及び眼内組織など肉眼で見える体積の高水和の蛋白性組織を解離及び除去するための装置及び方法を記載する。
【0030】
開示される発明は、超微細構造及び隣接するまたは付着する網膜の機能を損傷することなく眼の後部から硝子体及び眼内膜を牽引なしに除去するための器具及び方法に関して説明されているが、当業者は、開示される発明を人間及び動物の他の医療処置のために応用できることが分かるだろう。
【0031】
開示される発明は、硝子体及び眼内組織に係合し、これを分解し、除去するための古典的な機械的手段とは対照的に、可変的方向の強力な短パルス電場を用いて硝子体網膜手術を実施するための新しい手段に関して説明される。特に、以下の開示は、可変的方向の強力な短パルス電場を与えることによって生じる組織条件の一時的変化が肉眼で見える体積の蛋白性組織を除去するために充分であるという発見に影響を与える。機械的手段及び液化手段の技術的な成功は、硝子体物質を除去するために分子レベルでこれを切除または破壊する必要がなく、組織除去のために必要とされるのは無害な肉眼で見える状態変化だけであるという主張を裏付ける。従って、開示される発明によって可能になる眼内組織の除去は完全に無牽引である。
【0032】
本出願において開示される装置及び方法は、高速に変化する電場を用いて眼内蛋白性組織の成分における付着的及び構造的関係の局部的一時的解離を生じさせる。このような眼内蛋白性組織成分間の付着的及び構造的関係の局部的一時的解離は、眼内組織成分と網膜との間の無牽引剥離を可能にする。強力超短パルス電場の形成を強化し解離時に破壊された組織を除去するために、組織解離時に液体法(fluidic technique)(灌注及び吸引)が利用される。強力超短パルス電場が加えられる範囲内の物質のみを攻撃し除去することが意図される。従って、超短パルスが加えられることによって攻撃された物質のみが強力超短パルス電場を受けるので、組織摘出プロセス時に遠距離電場効果はない。
【0033】
流体法の使用と結び付けられるパルス電場を生成するために使用されるプローブの設計は、解離対象である肉眼で見える体積の標的組織を同伴する。従って、肉眼で見える体積の同伴された標的眼内組織は同時に強力超短パルス電場の攻撃を受ける。この強力超短パルス電場の攻撃は、同伴された肉眼で見える体積の眼内蛋白性組織の解離をもたらし、その後、吸引が、肉眼で見える体積の解離された同伴組織を除去する。
【0034】
本発明によれば、2つまたはそれ以上の電極を持つプローブは標的である水和組織、すなわち硝子体または眼内組織の中に挿入される。電極の端部はプローブの遠位端で露出される。電気パルスは電極のうち少なくとも1つに伝達され、他の1つまたはそれ以上の電極は帰り導体として作用する。負極として作用するデリバリ電極と正極として作用する帰り電極との間に非プラズマ電場が生成される。電気パルスごとに、極性の逆転、電極の切り替えまたはその両方の組合せによって、生成される電場の方向が変えられる。パルスを異なる周波数及び異なる振幅で再発生するバーストにグループ化することができる。このようなパルスグループを不均一組織へ向けることができる。電気パルスの振幅、持続時間、デューティサイクル及び反復速度は、場の方向の連続変化と共に、吸引ルーメンの開口を横切って破壊電場を生成する。組織は流体法(吸引)によって吸引ルーメンの開口に引き込まれる。その後、組織は灌注液と混合され、または灌注液で希釈されて、可変的方向の強力超短パルス電場を横切るとき解離される。プローブの先端の電極の1つまたはそれ以上の間で電場の方向を変えることによって、いつでも任意のときに電場に不調が生じる。プローブの端部の電極末端間にある影響を受ける媒体は、標的組織(例えば、硝子体)と補助液(灌注液)の混合物から成る。この標的媒体(この中に電場が生成される)の電気インピーダンスは補助液(灌注液)の制御されたデリバリによって維持される。望ましい実施態様において、電気インピーダンスを与える補助液は導電性の食塩水である。プローブ外部の灌注源によって、プローブ内の1つまたはそれ以上のルーメンを介してまたはその両方の組合せによって補助液を供給することができる。補助液がプローブ内部に限定的に供給されるとき、補助液は蛋白質解離を導くことができる特性(例えば、pH)及び成分(例えば、界面活性剤)を有する。
【0035】
本発明の実施にとって重要なのは、標的媒体内部において生成された電気エネルギー場の特性である。この場合、電気エネルギーの強力超短パルス(マイクロ秒未満)が使用される。組織のインピーダンス、導電性及び希釈は、補助液の灌注によって標的媒体内で維持される。パルス形状、パルス反復速度及びパルス列長は眼内組織の特性に合わせて調節される。眼内組織の不均一性に対処するために複数のパルスパターンを採用することができる。さらに、プローブ先端における電極の空間的末端及び活性化シーケンスは、生成される場のプロフィルと共に、組織分解において重要な役割を果たす。流体吸引速度は組織解離速度に合わせられる。標的媒体における高速パルス破壊電場は、強力であるが持続時間が短い(すなわち、低エネルギー)ので、周囲組織からの標的組織の実際的解離は一時的(数マイクロ秒から数ミリ秒)効果であり、非熱的で爆発性キャビテーションを欠く。
【0036】
超短持続時間の強力電気パルスによって送られるエネルギーはプラズマ形成を生じないので、攻撃的な遠距離電場効果がない。超短持続時間の強力電気パルスは、電子雪崩によってではなく場の方向の連続変化によって組織内に無接点破壊電力を生成するために使用される。特に、解離対象である蛋白性組織内に無接点でエネルギーが与えられる非プラズマ乱調領域が生成される。電場に入る荷電物質はこの場の影響を受け、眼内組織(例えば、蛋白質)が変化する。電子雪崩を生じさせることなく蛋白性組織の周りに破壊電場を生成することによって、組織成分間の付着メカニズムは一時的に損なわれる。このように付着メカニズムが一時的に損なわれることによって組織成分が解離することになり、遠距離摂動がない。このような組織複合体間の組織付着メカニズムが一時的に損なわれることは、蛋白質複合体の変性及び螺旋の伸び(uncoil)をもたらすので、それによってコラーゲンセグメント及び付着結合の破壊(ねじれ原線維の分割)を可能にする。
【0037】
本出願において説明される本発明の発見をもたらした作業の目的は、眼の後部眼内領域からの硝子体及び眼内膜組織の無牽引摘出であった。開示される装置及び方法は水和蛋白性ゲル基質に係合しこれを破壊して、組織成分間の付着メカニズムの一時的弱体化または解離を生じさせる。このように組織成分間の付着メカニズムが一時的損なわれるまたは解離している間に、解離された組織複合体を希釈して周囲組織から吸引するために流体法が使用される。
【0038】
本出願において開示されるシステムの目的は、安全な除去のために硝子体蛋白性組織の状態を改変させることでもある。硝子体蛋白性組織の状態のこのような改変は蛋白性組織成分の相互作用の破壊、隣接構造からの蛋白性組織成分の分離及び剥離の促進、及び蛋白性組織成分が分離及び剥離されるときのその除去を伴う。
【0039】
従って、現代の硝子体網膜の執刀医の要望に対処する新しい外科装置様式及び装置、すなわち網膜の完全性を保存しながら硝子体及び眼内膜をより良くかつより正確に摘出するための装置を提示することが本開示の目的である。ここに開示されるシステムは硝子体及び関連する眼内膜の状態を改変するため及びこれを除去するための新しい装置に重点を置いているが、本出願において提示される情報は眼科以外の外科分野にも応用可能であることが、当業者には明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
蛋白性組織の解離及び除去のための開示されるシステムは、添付図面を参照することによってよりよく理解されるだろう。
【0041】
液化(融解)は、加齢の自然の結果として眼の硝子体に現れる。人が70から90歳に達すると、硝子体のゲル構造のほぼ50%は状態の変化を経る。すなわち液化する。融解の結果は、硝子体基質の不安定化、HAコラーゲン結合の解離、コラーゲン螺旋の伸び、分子再配列、液化空間の体積増大、絡み合うテザー(tether)の緩み、網膜からの硝子体剥離の増大、コラーゲン繊維分断及び凝集、及びプロテオグリカン、非共有結合高分子及び付着性コラーゲン(タイプIX)の損失として、後部硝子体に現れる。細胞レベルで、本発明によって眼の硝子体部の液化をもたらす活動の多くに対処することができる。
【0042】
本発明の装置及び方法は、短時間の組織解離を生じさせるために眼内細胞外基質(ECM)の成分の特性に合わせて調節されるパルス持続時間、反復速度、パルスパターンプ及びパルス列長で、可変的方向の強力、超短持続時間のパルス破壊電場(低エネルギー)を与える。推奨される超短パルス破壊電場の供与様式は低エネルギーの高パワーのデリバリに依存する。
【0043】
図1に示されるように、本発明を実施するために開示される装置はプローブアセンブリ110を含む。プローブアセンブリは、電力の限定的で局所的な非熱的な動的領域を肉眼で見える体積の細胞外基質ECM(例えば、硝子体及び眼内膜)内部に生成して、蛋白性複合体の一時的解離及び同伴された肉眼で見える体積の組織の局部的液化をもたらすように、軟組織に与えられるエネルギーを送り、運び、分配する。中空プローブ114の先端112は同伴された肉眼で見える体積の蛋白性組織を取り囲むように配置される。流体法(灌注)は、まず中空プローブ114の先端112の電極116間に安定したインピーダンス及び希釈の領域を与えるために、次に非共有結合蛋白質関係の再構築が生じる前に影響を受けた肉眼で見える体積の蛋白性組織を引き込んで除去する(吸引)ために使用される。プローブアセンブリ110に使用される流体法は、食塩水の灌注及び流出液の吸引の両方を含むことができる。
【0044】
中空プローブ114の先端に生成される可変的方向の電場は、分散媒(carrierfluid)の移動(すなわち、水溶液における蛋白性物質の移動)方向に対して実質的に直交してすなわち直角に与えられる。電場の方向はパルスごとにまたはほぼパルスごとに変えられる。パルスの持続時間(数ナノ秒)は、蛋白質複合体の誘電緩和時間(〜1ms)に比べて短い。複数回のパルス方向変化が、誘電緩和時間間隔内に生じることができる。パルス持続時間、パルス反復速度、パルスパターン及びパルス列長は、熱効果の発現を防止するように選択される(「冷間」プロセス)。開示されるシステムは、高速(<5ナノ秒)の立上り時間及び立下り時間の可変的方向の方形パルスを生成し、これを送る。パルスの立上り時間及び立下り時間が短ければ、それだけパルスのフーリエ・スペクトルにおける周波数成分は高くなり、従って、パルスの影響を受ける構造は小さくなる。本出願において開示される蛋白性組織の解離及び除去のためのシステムにおいて、パルス持続時間はナノ秒の範囲であり、電場強度は1kV/cmより大きく、好ましくは数百kV/cmの範囲内である。
【0045】
開示される発明のシステムを実現する装置及び方法は、硝子体及び眼内膜物質を係合し、解離しこれを除去するために超短無秩序強力パルス電気的フィールドフローフラクショネーション(CHIP EFFF)を利用する。極性の逆転、活性電極の切り替えまたはこの両方を組み合わせることによって生じる(電極116の配列を使用することによる)電場の方向の段階的連続変化が中空プローブ114の先端112に組み込まれて、硝子体複合体(蛋白質群)をまとめる非共有結合に関与する電荷に対して破壊的効果を生じさせる。肉眼で見える体積の電気的に不安定な眼内組織を作ることによって、捕捉された蛋白性組織、膜及び多成分酵素内での疎水性及び静水性結合をさらに弱め、それによって組織の流動性または液化を増大することが可能である。その結果生じる蛋白性組織の疎水性及び静水性結合に対する攻撃は、硝子体及び関連眼内組織の付着性高分子の結合メカニズムを一時的に損ない、それにより硝子体集合体の微細部分を一時的に管理可能な遊離蛋白性液体複合体にするのに充分である。
【0046】
本発明の有効性にとって最優先事項はエネルギーの選択である。蛋白性組織をまとめる結合に対する攻撃の目的は、非共有結合に関連する高分子の外殻において電子間の乱調を生じることである。エネルギーの好ましい形式は電気である。すなわち、電場を直接的に生成することによって電子にエネルギーを供給することである。破壊電場を生成するために、電子にエネルギーを供給するためにフォトン及びフォノンを利用するマイクロ波及び超音波など他のエネルギー源を使用することもできる。本出願において、レーザー特にフェムト秒範囲のパルス持続時間及び実質的に水のピーク吸収周波数の周波数で作動するレーザーを別のエネルギー源として利用することもできる。
【0047】
本出願において開示される装置及び方法の望ましい実施態様においては、硝子体及び眼内膜物質を係合し、解離しこれを除去するために高速の可変的方向の電気的フィールドフローフラクショネーションが使用される。特に、開示されるシステムは、電場の生成を容易にしかつ解離された蛋白性組織を除去するために、流体法と結合される場の方向の連続変化を特徴とする強力超短パルス破壊電場を利用する。強力超短パルス破壊電場は、ナノ秒程度のパルス幅とkV/cm程度の場の強度を用いて生成される。強力超短パルス破壊電場は、吸引分散媒の流れの方向に対して実質的に直角に維持される。組織複合体(蛋白質群)をまとめる非共有結合に関与する電子間の乱調を生じさせるために、強力超短パルス破壊電場(極性を逆転させることによってまたは電極の配列間を切り替えることによって)の方向の段階的連続変化が採用される。熱効果に必要とされる時間に比べて短いパルス持続時間及びパルス列長を用いて、組織結合メカニズムに対する攻撃は基本的に「冷間」プロセスであり、一時的組織基質解離のために充分である。組織結合メカニズムに対する攻撃は硝子体及び関連眼内組織の付着性高分子の結合メカニズムを損なわせ、それによって硝子体集合体の微小部分を管理可能な蛋白性液体複合体にする。解離を引き起こす電場強度は逆二乗則に従う。従って、場の強度は電極間の領域において最高である。望ましい実施態様において、この距離は0.5mm未満である。影響を受ける蛋白性液体複合体はプローブ電極間の高速の可変的方向のパルス電場が与えられる領域内に局部化され、組織結合メカニズムに対する攻撃の一時的効果が消える(緩和する)前に流体法(吸引)を用いて除去される。蛋白性組織が摘出チャネルの中(すなわち流体吸引ストリーム内部)に入ると、変質した蛋白性複合体の状態は擬似攻撃前状態に戻ることができる。
【0048】
本出願において説明されるシステムの開示される応用例は、網膜の病的症状の治療のためのものであり、これによって図1に示されるように、本出願に説明される中空プローブ114はハンドル120を用いて外科医によって図3に示される通り扁平部アプローチ101を介して眼100の後部に挿入される。標準的可視化プロセスを用いれば、硝子体及び(または)眼内膜及び組織は中空プローブ114の先端112によって係合され、灌注メカニズム130及び吸引メカニズム140が起動され、高電圧パルス発生器150からの強力超短パルス電力はパルス形成網160、スウィッチング回路170及びケーブル124を介して送られて、同伴された体積の組織内部に強力超短パルス破壊電場を生成する。中空プローブ114の吸収ルーメン122に接続される吸引ライン118を介する吸引によってプローブ先端112に向かって引っ張られる同伴された組織の成分の付着メカニズムは解離されて、採用される流体法が破壊された組織を除去する。係合は中空プローブ114の先端112に対して軸方向または横方向である。摘出された組織は食塩水吸引分散媒を介して吸引ルーメン122を通じて除去される。
【0049】
後部硝子体組織全てを除去するか、あるいは網膜またはその他の眼内組織または膜から硝子体組織を特定して剥離することができる。
【0050】
後部眼窩及び網膜表面からの硝子体組織、硝子体網膜及び維管膜の係合、破壊及び除去は、糖尿病性網膜症、網膜はく離、増殖性硝子体網膜症、牽引療法、貫通外傷、黄斑膜及びその他の網膜症など視力を失う恐れのある症状を外科的に治療するために、硝子体網膜の専門家によって追求される重要なプロセスである。
【0051】
本出願において説明される装置及び様式は、硝子体及び網膜に関係する後部眼内手術のためのものであるが、牽引整復(部分的硝子体切除)、ミセル付着整復、子柱網破壊、操作、再構成、及び刺激、慢性緑内障を治療するための子柱網形成、シュレム管操作、残留水晶体上皮の除去及び組織トレーラの除去を含めて、眼前部の治療にも応用できることが分かる。開示される装置及び方法の他の治療への応用可能性が当業者には明らかになるだろう。
【0052】
システムの部分
制御ユニット(180)
パルスパワー発生器(150)
パルス形成網(160)
スウィッチング回路(170)
伝送線(124)
多電極手術用プローブアセンブリ(110)
流体システム(130、140)
【0053】
本発明の装置及び方法は、眼内組織外基質(ECM)の成分の特性に合わせて調節されたパルス持続時間、反復速度、パルスパターン及びパルス列長で強力かつ超短持続時間のパルス電場(低エネルギー)を送る。このシステム190用のパルスパワー発生器150は、硝子体及び灌注液の低インピーダンスに対してパルスDCまたはゲートACを送る。システム190にはエネルギー蓄積、パルス整形、伝送及び負荷整合成分が含まれる。高電圧パルス生成器150のピーク出力電圧は、外科用中空プローブ114の遠位端112の電極116を用いて最高300kV/cmの場の強度を送るのに充分である。パルス持続時間は蛋白質複合体の誘電弛緩時間に比べて短い。また、パルス持続時間、反復速度及びパルス列長(すなわち、デューティサイクル)は熱効果の発現を防止するように選択される(「冷間」プロセス)。システム190は立上り時間及び立下り時間が速い(<5ナノ秒)方形パルスを生成し、これを送る。本出願において開示される装置及び方法において、パルス持続時間はナノ秒の範囲であり、電圧は1kVより大きく、好ましくは数十kVの範囲である。
【0054】
パルス持続時間及び反復速度を制御するため、及び中空プローブ114の先端112の電極配列において電極間を切り替えることによって、電極間で極性を逆転させることによってまたはその両方を組み合わせることによって電場の方向に段階的連続変化を生じさせて、電極間の分散媒の絶縁破壊または熱効果を生じさせることなく電場に乱調を生じさせるために、スウィッチング回路170が組み込まれる。
【0055】
本発明の効果にとって最優先事項はエネルギーの選択である。蛋白性複合体を一緒に結合する非共有結合に関連する高分子の外殻において電子の間に乱調を生じさせるのが本発明の目的である。エネルギーの好ましい形式は電気である。すなわち、電場の直接生成による電子へのエネルギー供給である。マイクロ波、レーザー及び超音波など、電子にエネルギーを供給するためのフォトン及びフォノンを利用するエネルギー源も、高分子の外殻の電子の間に要求の乱調を生じさせるために使用できる。
【0056】
開示される装置は、伝送線124及び外科用中空プローブ114を含み、プローブは肉眼で見える体積の組織外基質ECM(例えば、硝子体及び眼内膜)内部に限定された局部的な電力領域を生成するようにエネルギーを送り、運び、分配する。電場は基本的に分散媒(すなわち、水溶液内の蛋白性物質)の移動方向に対して基本的に直交してすなわちこれに直角に与えられる。図4A、4B、4C、4D及び4Eは、外科用プローブ114の遠位端112における電極配列の可能ないくつかの実施態様を示している。
【0057】
例えば、参照番号1は、図4A、4B、4C、4D及び4Eにおいて、1つまたはそれ以上の通り穴を持つポリマー押出し成形物を指すために使用される。参照番号3、4、5、6、7、8、9及び10は押出し成形物1に埋め込まれる電極線を指す。図4A、4C及び4Dにおいて、中央に配置される電極線11が使用される。図4Eにおいては、中央に配置される管状電極12が使用される。図4Eにおいては、また、光ファイバ設備または他の形式の機器用に中央に配置されるルーメン13が使用される。要求の高速で強力なパルス電場パターンを生成するために他の多数の形態が可能であることが当業者には分かるだろう。実質的に平面状に示されているが、中空プローブ114の各電極116の遠位面を軸方向に食い違わせるまたは整列させることができ、遠位端112からこれを差し込むか突き出すか、またはこれを組み合わせることができる。図にはプローブの軸方向に直交する平面で終結するように示されているが、電極116は側面ウィンドウ(図には示されていない)の周りで軸方向に終結することができる。
【0058】
望ましい実施態様において、押出し成形物1の外径は1.016cm(0.040インチ)未満である。硝子体または眼内組織は吸収チャネルに向かってこの中へ引っ張られ、物質が電極116に対して直角を成す領域に接近すると、電極は活性化されて、電極116間に超短強力破壊電場を生成すると想定される。
【0059】
電極配列の配置及びその後の活性化の結果、一貫して方向が変化する可変的な場の放射が生じる。表5A、5B、5C、5D及び5Eは、それぞれ図4A、4B、4C、4D及び4Eに示される実施態様のための電極活性化案を示している。表5Aにおいては、図4Aに示されるプローブ114の端の実施態様に使用されるパルスシーケンスの例である12パルスが示されている。第一パルスは、負極として参照番号11を与えられる電極116を使用し、正極は3、4、5である。第二パルスはその逆である。残りのパルスは、可変的方向の電場を確立するためのパルス配列体の例である。
【0060】
表5Bにおいては、図4Bに示されるプローブ114の実施態様に使用されるパルスシーケンスの例である11パルスが示されている。
【0061】
表5Cにおいて、図5Aと同様に、図4Cに示されるプローブに使用される12パルスシーケンスが示されている。
【0062】
表5D及び5Eにおいては、それぞれ図4D及び4Eに示されるプローブ用の10パルスシーケンスが示されている。電極活性化の実施態様及びシーケンスに応じて他の多数の場のパターンが想定される。電極活性化の目的は水及び蛋白質の極特性を利用し、高速で方向が変化する強力な電場で乱調を生じさせて、水及び蛋白質の両方の等角変化を誘発して、一時的な組織解離を導くことである。電場が与えられる領域内に局部化される解離された組織複合体は、その後、攻撃の一時的効果が消える(弛緩)前に同時に流体法を用いて除去される。
【0063】
実施態様4Eの場合、中央電極12は例えば中心領域13を持つ管状導電電極である。中心領域13は灌注用通り穴または器具用チャネルであっても良いし、中心領域は光のデリバリ用の光ファイバ装置であっても良い。
【0064】
前述の通り、最も効率のよい破壊電場を与えるように配列内の電極の位置及び電極の数を構成することができる。また、電極のうち1つまたはそれ以上が同じ長さすなわち同じ軸方向の位置で終結しないように電極を軸方向に配置することができる。電極間の空間的な場の強度を最適化するように電極の端末部を成形することができる。電極の端末部の形状は、電極の間で電場を放射しその強度分布を最適化するように選択される直線エッジ、コーナー、シャープ、曲線(一定及び可変的)またはこれらの組合せを含むことができる。
【0065】
蛋白性非共有結合関係の再構築が生じる前に解離した細胞を引き込んでこれを除去するために流体法(吸引)が含まれる。望ましい実施態様に使用される流体法は食塩水灌注及び流出水吸引の両方を含む。望ましい実施態様において、流体システムは、眼内の体積及び圧力が生理学的限界内に維持されるように特に適合する灌注及び吸引の機能を含む。後部硝子体は97%を超える水分を含有するので、流体システムの重要な機能は係合される物質の希釈、水和及び安定したインピーダンスを保証することである。望ましい実施態様において、吸引チャネルは、上述の破壊電場を受ける間、眼内組織が吸引ルーメン122またはチャネルに引き込まれるように、外科用中空プローブ114に組み込まれる。吸引された流出水の流量率は破壊電場の影響を受ける水和蛋白性物質の解離率に適合する。BSS(登録商標)灌注液またはBSS PLUS(登録商標)灌注液(両方ともAlcon Laboratories,Inc.から入手可能)を用いる灌注が利用されることが予想される。解離を強化するために灌注液に無害の特性及び成分を組み込むことができる。図4に示されるように灌注ルート/チャネルを外科用プローブに組み込むか、独立したカニューレにこれを用意するか、あるいは両方の手段を組み合わせることができる。
【0066】
図6は3つの電極を含むプローブアセンブリ210の別の実施態様の斜視図である。望ましい実施態様110におけると同様、プローブアセンブリ210は中空プローブ214及びハンドル220を含む。組織は中空プローブ214の先端212によって係合される。図6、7及び8を参照することによりプローブアセンブリ216をよりよく理解することができる。3つの電極216はプローブ214内の中央スパイン217の周りにほぼ等角度間隔で配置される。電極216の間には灌注チャネル215がある。中央スパイン217の中央には吸引ルーメン222が配置される。中央スパイン217の中央には吸収ルーメン222が配置される。中央スパイン217、灌注チャネル215及び電極を外部ジャケット219が被覆する。ジャケットは非外傷性先端221で終結する。プローブアセンブリ210は除去対象である組織が非外傷性先端221のすぐ内部に位置するように配置される。
【0067】
図10に示されるプローブアセンブリ210用のサポートシステム290は、プローブ先端灌注システム235を含む点を除いて、図3に示される実施態様のサポートシステムと同様である。サポートシステムには、全体灌注システム230、灌注ライン218に接続される吸引システム240、制御ユニット280、1つまたはそれ以上の高電圧パルス発生器250、伝送線224に接続されるスウィッチング回路270及びプローブ先端灌注チューブ237に接続されるプローブ先端希釈灌注システム235が含まれる。
【0068】
プローブ先端の電極を示す図4A、4B、4C、4D及び4Eにおけると同様、図11A及び11Bは、プローブアセンブリ210における電極1、2、3及び4の別の配列を示している。図12A及び12Bは図11A及び11Bに対応し、蛋白性組織の周りに非プラズマ、無接点エネルギー供給の破壊領域を生成するための電極活性化シーケンスを示している。この非プラズマ、無接点エネルギー供給の破壊領域の生成をよりよく理解するために、図13A及び13Bはそれぞれ図12A及び12Bに示されるパルスシーケンスの力線を示しており、この場合には、電極の極性は逆転されない。
【0069】
図14は個々のパルスの持続時間、個々のパルスの反復速度及びパルス列のパルス長を制御する3チャネルパルス発生器250の略図である。
【0070】
図15は、図14に示される3チャネルパルス発生器250の1パルス生成サイクル例のチャネル状態を示す表である。
【0071】
プローブアセンブリ210がそれぞれ図6、7、8及び9に示される補足的灌注用の複数の通り穴215を含むことを理解することによって、図10に示されるシステム290をさらによく理解できる。補助灌注液の排出速度が希釈される水和眼内細胞の流入量より少ないように、灌注流量は、中央ルーメン222を通る吸引量より少ない。付加的な灌注液は、プローブ外部のプローブ先端希釈灌注メカニズム235(図10)によって与えられる。灌注液は、眼内組織を希釈するため及び電極216間に安定したまたはほぼ一定のインピーダンスを維持しそれによってエネルギーデリバリ及び電場強度の大幅な変移を防止するための両方に使用される。硝子体解離を強化するためにpH及び成分など灌注液の特性を選択することができる。
【0072】
灌注用の第三の導管237は、プローブアセンブリ210を補足的灌注源235に接続する。また、図10において分かる通り、パルス形成網が高電圧パルス生成器250に組み込まれる。
【0073】
図11A及び12Aを参照することによって、パルス間に電極の極性を逆転させる代わりに、電極間で活性負極と活性正極が切り替えられることが分かる。各パルスの電場の例を示すために、図13Aには生成される力線が示されている。図11Aに示される3電極1、2、3形態の場合、1サイクルは様々な方向から発する3つのパルスを含む。図12Aの表において、シーケンス例は実極性(逆転)ではなく電極切り替えを含む場合について示されている。図12Bの表及び図13Bに示される力線は、図11Bに示される4電極の実施態様1、2、3及び4を示している。この実施態様においては、電極が対で負極及び正極として作用する。
【0074】
図14にその略図が示される3チャネルパルス発生器は、1つのチャネルの始動が1つのパルスを1つの電極を送り、その後第二チャネルを始動し、第二チャネルは1つのパルスを別の電極に送り、その後第三チャネルを始動し、第三チャネルはパルスを別の電極へ送り第一チャネルを始動して再びシーケンスを開始する。1つのチャネルがパルスを発する間、他の2つのチャネルはゼロ抵抗を与え、発せられたパルスの帰路として作用する。チャネルのシーケンスは順番であるか、またはランダムでもよい。
【0075】
図15は、パルス放射時の各チャネルの極性状態を示している。各チャネルの極性状態は単一チャネルにおける実極性切り替えと異なり電極切り替えの結果生じる。
【0076】
プローブアセンブリ210のさらに別の実施態様が図16〜23に示されている。図16〜19は、平らで軸方向に細長い電極216を持つ実施態様を示している。これらの電極216は、吸引チャネル222に対して半径方向に整列する大きい平らな部分を持つ扁平形である。電極216の鋭いコーナーは、さらに集束的な電場が吸引チャネルに生成されるようにする。これらの電極216はジャケット219の口で終結する。
【0077】
図20〜23は、尖った先端を有する電極216を持つ実施態様を示している。これらの電極216は吸引チャネル222に対して半径方向に整列する大きい平らな部分を持つ扁平形である。これらの電極216は、折り曲げられた尖った先端で終結し、先端が吸引チャネル222に向かって半径方向内向きである。
【0078】
図16〜23に示される2つの実施態様において、3つの電極216はプローブ214内で中央スパイン217の周りに実質的に等しい角間隔で配置される。電極216間には灌注チャネル217がある。中央スパイン217の中央には吸引ルーメン222が配置される。非外傷性先端で終結する外部ジャケットが中央スパイン217、灌注チャネル215及び電極を被覆する。プローブアセンブリ210は、除去対象である組織が非外傷性先端221のすぐ内部に位置するように配置される。図17、19、21及び23において、ジャケット219と吸引チャネル222との間の開口は灌注液が電極216付近を滝効果で通過できるようにする。
【0079】
図16〜23のプローブアセンブリの作動は図11A、12A及び13Aに示されるのと同様である。前述の他の作動モードは図16〜23のアセンブリにも適している。
【0080】
開示されるシステムは、下記の利点をもたらす。
a)眼の後部からの眼内組織の無牽引除去
b)遠距離電場効果なしで小さい体積の組織の管理可能な解離
特に、遠距離電場移行、漏出または電場の拡散がない。網膜を含めて眼の後部全体に影響を及ぼす酵素プロセスと異なり、開示されるCHIP EFFFの効果は局部的である。
c)硝子体全切除なしに部分的硝子体切除または牽引解離
ほとんどの硝子体網膜手術は眼の後部における硝子体全体の摘出を必要とした。開示されるシステムを用いると、硝子体全体を除去することなく網膜から蛋白性組織及びコラーゲンを選択的に剥離することができる。従って、術後の人工硝子体の必要が排除される。
d)反応性酸素種が一切生成されない
レーザー、プラズマ及び熱発生様式など削摩テクノロジーと異なり、開示されるシステムは硝子体及び眼内膜の非共有結合付着面のみにしか影響を与えないので、有毒化学物質またはROSが含まれたりこれが放出されたりすることがない。熱効果を生じさせるには送られるエネルギーが不十分である。
e)安全性
エネルギーデリバリが中断する結果、蛋白性組織が再構築される。従って、標的組織に永久的損傷を与えることなくいつでもほぼ瞬間的に開示される方法を中断することができる。
f)多モード(摘出、凝結、切断、刺激)
プローブは複数の電極を有するので、様々な機能結果を得るためにパワー設定を変化させることが可能である。CHIP EFFFモードにおいては、プローブはガラス体及び眼内膜を摘出するために利用される。凝結モードにおいては、血管出血を止めるためにRFエネルギーを加えることができる。切断モードにおいては、組織の切断を実施するためにプラズマまたは放電加工を生じるように適切なパワー及び周波数を与えることができる。刺激モードにおいては、治療のために低パワーの電気パルスを与えることができる。
g)器具交換の減少
後部眼手術においては、硝子体及び眼内膜物質の係合、掻き裂き、分離及び除去のために過剰なほどの数の特製の専門的な器具が必要とされる。手術中の器具の交換は術後の合併症の大きな要因である。本発明を使用すれば、多くの先行技術の器具を無用のものとし、器具交換を最小限に抑える。
h)可動部の不在
プローブ製造のためのコスト及び労働力の減少が実現される。機械的硝子体切除プローブの製造は労働集約的である。本出願において考えられる使い捨て中空プローブは、ルーメンまたは凹部にワイヤを持つ取付け多ルーメン同時押出し成形物またはアセンブリと小さいハンドルとから成る。現在の機械的アセンブリと比べて組立て技能が小さくなる。
i)後部及び前部応用
開示される装置は、硝子体及び眼内組織の無牽引除去のために設計されているが、小柱網刺激、残留水晶体上皮の除去及び組織トレーラの除去、前部硝子体切除など特定の前部手術にこれを利用することができる。
j)ハイブリッドフレンドリ
開示されるプローブアセンブリの設計は単純なので、機械的硝子体切除、Alcon Laboratories,Inc.から入手可能なAquaLase(登録商標)外科器具及び化学的硝子体切除(酵素作用)など独立のまたは他の組織破壊及び摘出手段の補助的手段として有益である。
【0081】
開示される発明はその望ましい実施態様及び別の実施態様に関して説明されているが、上述の開示によってさらに他の実施態様が可能になることが当業者には分かるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明のシステムが使用される後部眼内手術に使用されるプローブの斜視図である。
【図2】図1に示されるプローブ先端の拡大斜視図である。
【図3】開示されるシステムの望ましい実施態様の略図である。
【図4A】プローブ先端の電極の択一的配置の前面図である。
【図4B】プローブ先端の電極の択一的配置の前面図である。
【図4C】プローブ先端の電極の択一的配置の前面図である。
【図4D】プローブ先端の電極の択一的配置の前面図である。
【図4E】プローブ先端の電極の択一的配置の前面図である。
【図5A】図4Aに示されるプローブ配列に関連する活性化案を示す表である。
【図5B】図4Bに示されるプローブ配列に関連する活性化案を示す表である。
【図5C】図4Cに示されるプローブ配列に関連する活性化案を示す表である。
【図5D】図4Dに示されるプローブ配列に関連する活性化案を示す表である。
【図5E】図4Eに示されるプローブ配列に関連する活性化案を示す表である。
【図6】本発明のシステムを採用する後部眼内手術に使用されるプローブの3電極実施態様の斜視図である。
【図7】内部の特徴を明らかにするための透明のカバーを含む、図6に示されるプローブの先端の拡大斜視図である。
【図8】図7に示されるプローブの端面図である。
【図9】図7に示されるものと同様のプローブの拡大斜視図である。
【図10】開示されるシステムの別の実施態様の略図であり、プローブに補足的灌注手段が含まれる。
【図11A】図7、8及び9に示される実施態様における3電極の配置を示すプローブ先端の端面図である。
【図11B】4つの電極を有するプローブ先端の端面図である。
【図12A】図11Aに示される電極配列に関連する活性化案を示す表である。
【図12B】図11Bに示される電極配列に関連する活性化案を示す表である。
【図13A】図11Aに示される電極のうち1つまたはそれ以上における電荷の配置から生じる力線例の図である。
【図13B】図11Bに示される電極のうち1つまたはそれ以上における電荷の配置から生じる力線例の図である。
【図14】3電極プローブと一緒に使用される3チャネルパルス発生器例の略図である。
【図15】図14に示される発生器のパルス発生1サイクル中のチャネル状態の略図である。
【図16】内部の特徴を明らかにするために透明のカバーを含む、図6に示されるプローブ先端の別の実施態様の拡大斜視図である。
【図17】内部の特徴を被覆するためのジャケットを含む、図16に示されるプローブの拡大斜視図である。
【図18】図16に示されるプローブの端面図である。
【図19】図17に示されるプローブの端面図である。
【図20】内部の特徴を明らかにするために透明のカバーを含む、図6に示されるプローブ先端の別の実施態様の拡大斜視図である。
【図21】内部の特徴を被覆するジャケットを含む、図20に示されるプローブの拡大斜視図である。
【図22】図20に示されるプローブの端面図である。
【図23】図21に示されるプローブの端面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟組織の部分をまとめて保持する結合を破壊するためのシステムであって、
前記システムが、
前記軟組織を取り囲むため複数の電極を含むプローブと、
複数対の前記複数の電極の間に高速パルス破壊電場を生成するシステムと、
前記プローブと結合する吸引システムと、
を備え、
前記高速パルス破壊電場が蛋白性複合体を部分的に液化させ、前記軟組織の構成部分間の付着メカニズムの一時的解離を生じさせ、前記吸引システムが前記解離された組織を除去する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記高速パルス破壊電場が解離対象である前記軟組織に対して実質的に直角を成すことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数対の電極間の前記高速パルス破壊電場が電極極性の連続的逆転及び活性電極の順次変化によって生成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数対の電極間の前記高速パルス破壊電場が電極極性の逆転によって、活性電極の切替によって、またはその両方の組合せによって生成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記吸引システムが解離時に前記解離された軟組織を除去することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数の電極が伝導媒体に浸漬されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
電極間に安定したインピーダンスを維持するために灌注液が供給されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
パルス形状、パルス反復速度及びパルス列長が前記解離対象である組織に合わせて調節されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
肉眼で見える体積の蛋白性組織を解離するための方法であって、
前記蛋白性組織の細胞外基質内に電力の限定された局部的な非熱的破壊領域を確立することによって蛋白性液体複合体を生成するステップ、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記蛋白性組織の前記細胞外基質内における電力の限定された局部的な非熱的破壊領域の前記生成が、前記蛋白性複合体の一時的解離及び前記肉眼で見える体積の蛋白性組織の局部的液化を生じさせることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記電力の限定された局部的な非熱的破壊領域が生成されるとき吸引を実行するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
希釈しかつ安定したインピーダンスを維持するために灌注を実行するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記吸引が、前記蛋白性複合体の前記一時的解離及び局部的液化が終了する前に前記解離された肉眼で見える体積の組織を除去するのに充分であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
電力の限定された局部的な非熱的破壊領域の前記生成が前記蛋白性組織の疎水性及び静水性結合を弱体化することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記蛋白性組織における前記疎水性及び静水性結合の前記弱体化が、粒状蛋白質及び蛋白性構造の流動性を増大することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記電力の限定された局部的な非熱的破壊領域が可変的方向の強力パルス電場の使用によって生成されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記パルス電場がナノ秒の持続時間の電気エネルギーの方形パルスを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記パルス電場が5ナノ秒より短い立上り−立下り時間のパルスを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記電場の強度が1kV/cmより大きいことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記電力の限定された局部的な非熱的破壊領域が、直接的または間接的にマイクロ波エネルギーの使用によって生成されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記電力の限定された局部的な非熱的破壊領域が、直接的または間接的にレーザーの使用によって生成されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記レーザーがフェムト秒範囲内のパルス持続時間及び実質的に水のピーク吸収周波数で作動することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記電力の限定された局部的な非熱的破壊領域が直接的または間接的に超音波の使用によって生成されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項24】
組織解離を含めて硝子体網膜手術を遂行するための方法であって、
扁平部アプローチを用いて眼の後部の中へ中空プローブを挿入するステップと、
所定量の組織を前記中空プローブで取り囲むステップと、
硝子体複合体を保持する非共有結合に関与する電子の中に乱調を生じさせるために前記中空プローブ内部に配置される電極で強力超短パルス電場を生成するステップと、
蛋白性非共有結合関係が再構築される前に前記所定量の組織を除去するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項25】
前記強力超短パルス電場が該電場の方向の段階的連続変化を含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記強力超短パルス電場が該電場の極性の段階的連続変化を含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記強力超短パルス電場が解離される前記所定量の組織に対して実質的に直角を成すことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記所定量の組織が吸引によって除去されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記強力超短パルス電場のために安定した電気環境を維持するために伝導媒体が使用されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記強力超短パルス電場におけるパルスが組織の蛋白性成分を解離するために使用されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
所定量の組織を取り囲む外科用中空プローブの先端の電極間に強力超短パルス電場を生成するためのシステムであって、
前記システムが、
パルスパワー発生器と、
前記パルスパワー発生器に接続されるパルス形成網と、
前記パルス形成網に接続されるスウィッチング回路であって、前記電極間の電気パルスの持続時間及び周波数を制御するスウィッチング回路と、
を備え、
前記強力超短パルス電場が蛋白性液体複合体を生成して前記所定量の組織を一時的に解離できるようにするために充分である、
ことを特徴とするシステム。
【請求項32】
前記スウィッチング回路が前記電極の活性化シーケンスを変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記スウィッチング回路が前記電極の極性を変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記スウィッチング回路が電極間の場の方向を変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項35】
前記電極間に伝導媒体を含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項36】
安定した電気環境を維持する前記電極間の流体を含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項37】
前記解離時に前記解離された組織を除去するために吸引システムを含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項38】
前記スウィッチング回路がパルスバーストサイクルごとに電圧振幅を変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項39】
前記スウィッチング回路がパルスバーストサイクルごとに周波数を変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項40】
前記スウィッチング回路がパルスバーストサイクルごとにデューティサイクルを変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項41】
前記スウィッチング回路がパルスバーストサイクルごとにパルスパターンを変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項42】
蛋白性組織の電場誘導解離を導くpH特性を持つ灌注液を備える、請求項31に記載のシステム。
【請求項43】
蛋白性組織の電場誘導解離を導く成分を持つ灌注液を備える、請求項31に記載のシステム。
【請求項1】
軟組織の部分をまとめて保持する結合を破壊するためのシステムであって、
前記システムが、
前記軟組織を取り囲むため複数の電極を含むプローブと、
複数対の前記複数の電極の間に高速パルス破壊電場を生成するシステムと、
前記プローブと結合する吸引システムと、
を備え、
前記高速パルス破壊電場が蛋白性複合体を部分的に液化させ、前記軟組織の構成部分間の付着メカニズムの一時的解離を生じさせ、前記吸引システムが前記解離された組織を除去する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記高速パルス破壊電場が解離対象である前記軟組織に対して実質的に直角を成すことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数対の電極間の前記高速パルス破壊電場が電極極性の連続的逆転及び活性電極の順次変化によって生成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数対の電極間の前記高速パルス破壊電場が電極極性の逆転によって、活性電極の切替によって、またはその両方の組合せによって生成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記吸引システムが解離時に前記解離された軟組織を除去することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数の電極が伝導媒体に浸漬されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
電極間に安定したインピーダンスを維持するために灌注液が供給されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
パルス形状、パルス反復速度及びパルス列長が前記解離対象である組織に合わせて調節されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
肉眼で見える体積の蛋白性組織を解離するための方法であって、
前記蛋白性組織の細胞外基質内に電力の限定された局部的な非熱的破壊領域を確立することによって蛋白性液体複合体を生成するステップ、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記蛋白性組織の前記細胞外基質内における電力の限定された局部的な非熱的破壊領域の前記生成が、前記蛋白性複合体の一時的解離及び前記肉眼で見える体積の蛋白性組織の局部的液化を生じさせることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記電力の限定された局部的な非熱的破壊領域が生成されるとき吸引を実行するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
希釈しかつ安定したインピーダンスを維持するために灌注を実行するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記吸引が、前記蛋白性複合体の前記一時的解離及び局部的液化が終了する前に前記解離された肉眼で見える体積の組織を除去するのに充分であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
電力の限定された局部的な非熱的破壊領域の前記生成が前記蛋白性組織の疎水性及び静水性結合を弱体化することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記蛋白性組織における前記疎水性及び静水性結合の前記弱体化が、粒状蛋白質及び蛋白性構造の流動性を増大することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記電力の限定された局部的な非熱的破壊領域が可変的方向の強力パルス電場の使用によって生成されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記パルス電場がナノ秒の持続時間の電気エネルギーの方形パルスを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記パルス電場が5ナノ秒より短い立上り−立下り時間のパルスを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記電場の強度が1kV/cmより大きいことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記電力の限定された局部的な非熱的破壊領域が、直接的または間接的にマイクロ波エネルギーの使用によって生成されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記電力の限定された局部的な非熱的破壊領域が、直接的または間接的にレーザーの使用によって生成されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記レーザーがフェムト秒範囲内のパルス持続時間及び実質的に水のピーク吸収周波数で作動することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記電力の限定された局部的な非熱的破壊領域が直接的または間接的に超音波の使用によって生成されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項24】
組織解離を含めて硝子体網膜手術を遂行するための方法であって、
扁平部アプローチを用いて眼の後部の中へ中空プローブを挿入するステップと、
所定量の組織を前記中空プローブで取り囲むステップと、
硝子体複合体を保持する非共有結合に関与する電子の中に乱調を生じさせるために前記中空プローブ内部に配置される電極で強力超短パルス電場を生成するステップと、
蛋白性非共有結合関係が再構築される前に前記所定量の組織を除去するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項25】
前記強力超短パルス電場が該電場の方向の段階的連続変化を含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記強力超短パルス電場が該電場の極性の段階的連続変化を含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記強力超短パルス電場が解離される前記所定量の組織に対して実質的に直角を成すことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記所定量の組織が吸引によって除去されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記強力超短パルス電場のために安定した電気環境を維持するために伝導媒体が使用されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記強力超短パルス電場におけるパルスが組織の蛋白性成分を解離するために使用されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
所定量の組織を取り囲む外科用中空プローブの先端の電極間に強力超短パルス電場を生成するためのシステムであって、
前記システムが、
パルスパワー発生器と、
前記パルスパワー発生器に接続されるパルス形成網と、
前記パルス形成網に接続されるスウィッチング回路であって、前記電極間の電気パルスの持続時間及び周波数を制御するスウィッチング回路と、
を備え、
前記強力超短パルス電場が蛋白性液体複合体を生成して前記所定量の組織を一時的に解離できるようにするために充分である、
ことを特徴とするシステム。
【請求項32】
前記スウィッチング回路が前記電極の活性化シーケンスを変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記スウィッチング回路が前記電極の極性を変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記スウィッチング回路が電極間の場の方向を変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項35】
前記電極間に伝導媒体を含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項36】
安定した電気環境を維持する前記電極間の流体を含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項37】
前記解離時に前記解離された組織を除去するために吸引システムを含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項38】
前記スウィッチング回路がパルスバーストサイクルごとに電圧振幅を変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項39】
前記スウィッチング回路がパルスバーストサイクルごとに周波数を変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項40】
前記スウィッチング回路がパルスバーストサイクルごとにデューティサイクルを変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項41】
前記スウィッチング回路がパルスバーストサイクルごとにパルスパターンを変化させることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項42】
蛋白性組織の電場誘導解離を導くpH特性を持つ灌注液を備える、請求項31に記載のシステム。
【請求項43】
蛋白性組織の電場誘導解離を導く成分を持つ灌注液を備える、請求項31に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2009−522047(P2009−522047A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549479(P2008−549479)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/047185
【国際公開番号】WO2007/081474
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(501449322)アルコン,インコーポレイティド (140)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/047185
【国際公開番号】WO2007/081474
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(501449322)アルコン,インコーポレイティド (140)
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