説明

蛍光体合成用合金の製造方法

【課題】原料金属の仕込み組成と合金中の金属組成との差が少なく、組成分布が均一な蛍光体合成用合金の製造方法を提供する。
【解決手段】
下記式[1]:
3-x-y-z+w2z1.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2 [1]
で表される組成を有する蛍光体合成用合金の製造方法であって、
少なくともR元素の一部、M元素、A元素及びSiを含み、かつLaとSiを、LaSiとSiの共晶組成付近の量比で含む原料混合物を、LaSiとSiの共融点以上Siの融点未満の温度で融解して溶湯とした後、残りの元素を、目的とする組成となるように添加した後に昇温し、金属元素全体を溶融混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合窒化物、酸窒化物等の窒素含有化合物からなる蛍光体の原料合金(以下これを、「蛍光体合成用合金」ということがある。)の製造方法および蛍光体合成用合金に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化物は、製造のしやすさの点では酸化物に劣るものの、酸化物や他の無機化合物にない特性を持つものが少なくない。現に二元系の窒化物であるSi、BN、AlN、GaN及びTiN等は、例えば、基板材料や、半導体、発光ダイオード(light emitting
diode。以下、適宜「LED」と略称する。)、構造用セラミックス、コーティング剤等様々な用途に使用されており、工業的規模での生産が行なわれている。
【0003】
また、近年、三元系以上の元素から構成される窒化物について、多くの新規物質が製造されている。特に最近では、窒化珪素をベースとした多元系窒化物や酸窒化物において、優れた特性を有する蛍光体材料が開発されている。これらの蛍光体材料は、青色又は近紫外LEDによって励起され、黄色ないし赤色の発光を示す。
【0004】
これらの蛍光体と青色又は近紫外LEDとの組み合わせによって、白色で発光する発光装置を構成することができる。
例えば、特許文献1には、窒化物系半導体の青色LED又はLDチップに、セリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体のYの一部をLu、Sc、Gd、又はLaに置換した蛍光体を組み合わせた白色発光装置が記載されている。この白色発光装置によれば、LEDから発生する青色光と蛍光体から発生する黄色光との混色で白色の光が得られる。また、この白色発光装置は、既に表示用途等として実用化されている。
【0005】
特許文献1に記載の白色発光装置は、発する光の演色性が低く、照明用途としては課題があった。即ち、前述のセリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、発光スペクトル中に赤色の成分が少なかった。このため、セリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体と青色LEDとを組み合わせたとしても、暖かさの感じられる、蛍光ランプで言われる電球色(JIS Z8110)のように色温度が低く、かつ、演色性の高い照明光を得ることは難しかった。そのため、セリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体よりも赤色成分を多く含み、半値幅の広い発光スペクトルを有する蛍光体が望まれていた。
【0006】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、これまでに知られていない全く新しい窒化物及び酸窒化物等の窒素含有化合物の結晶相を含有する蛍光体が、高性能の黄緑色ないし橙色蛍光体として非常に優れた特性を示し、発光装置等の用途に好適に使用できることを見出し先に提案した(特許文献2参照)。
【0007】
特許文献2に記載の蛍光体は、下記式[A]:
3-x-y-z+w21.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2y+w111-y-w1 [A]
〔式[A]中、Rは、La、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種類の希土類元素を示し、Mは、Ce、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示し、Aは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示し、x、y、z、w1及びw2は、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
(1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)、0≦(1.5x+y−w2)
/6<(9/2)、0≦x<3、0≦y<2、0<z<1、0≦w1≦5、0≦w2≦5及び0≦w1+w2≦5〕
で表される結晶相を含有することを特徴とする蛍光体である。
また、特許文献2には、当該蛍光体は、上記結晶相に含有される金属元素を2種以上含有する合金を原料の一部として用いて製造できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−190066号公報
【特許文献2】WO2008/132954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
合金を、窒化物蛍光体の原料として用いる場合、構成金属元素がすべて同一合金中に、均一に存在することが好ましい。しかしながら、本発明者等の検討によれば、上記式[A]の金属構成元素を所定の比率で含有する合金を得ることは、単に構成金属を秤量して溶融する方法では非常に難しく、所定量の原料を仕込んだ原料合金を窒化物とした場合、蛍光体を構成する各金属の分析値に、仕込み組成からの乖離があることが判明した。その理由は、構成金属の融点や沸点がそれぞれ大きく異なるため、これらの構成金属を単に混合して溶融する方法では、高融点金属が溶融する前に低融点金属の揮散等が生じ、仕込み組成とおりの均一な組成の合金が得られないと考えられた。
【0010】
例えば、式[A]の組成を構成する主な金属元素の融点は、La:921℃、Ca:839℃、Si:1410℃、Ce:799℃であり、沸点は、La:3500℃、Ca:1480℃、Si:2360℃、Ce:3430℃であり、大きく異なっている。さらに、これら金属の金属間化合物、例えば、SiとLaの金属間化合物の融点や沸点は、Siのそれよりも更に高く、これら金属の溶湯を調製する場合、Siの融点よりも更に高い温度まで加熱する必要がある。なお、本明細書において、各元素の融点及び沸点は、岩波「理化学辞典」第4版(株式会社岩波書店、1987年10月12日発行)に記載されている値である。
【0011】
このように、各金属の融点や沸点が大きく異なると、単に混合して溶融する方法では、偶然に所望の組成で、組成分布が均一になることはあっても、これを工業製品として安定に得ることは困難であった。本発明は、かかる従来技術の問題が解決された、原料金属の仕込み組成と合金中の金属組成との差が少なく、組成分布が均一な蛍光体合成用合金の製造方法を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、LaSiとLaの共融点を利用して、原料金属の溶湯を調製、すなわちLaとSiを、LaSiとSiの共晶組成付近の量比で含む原料金属を、LaSiとSiの共融点付近の温度で融解して溶湯とした後、残りの元素を、目的とする組成となるように添加して溶融混合すれば、仕込み組成とおりの均一な組成を有する合金が得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は、次の(1)〜(6)に存する。
(1)下記式[1]:
3-x-y-z+w2z1.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2 [1]
〔式[1]中、
Rは少なくともLaを含み、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも
1種類の元素を含んでいてもよい希土類元素を示し、
MはCe、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示し、
AはBa、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示し、
x、y、z、w1及びw2は、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
(1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)
0≦(1.5x+y−w2)/6<(9/2)
0≦x<3
0≦y<2
0<z<1
0≦w1≦5
0≦w2≦5
0≦w1+w2≦5〕
で表される組成を有する蛍光体合成用合金の製造方法であって、
少なくともR元素の一部、M元素、A元素及びSiを含み、かつLaとSiを、LaSiとSiの共晶組成付近の量比で含む原料混合物を、LaSiとSiの共融点以上Siの融点未満の温度で融解して溶湯とした後、残りの元素を、目的とする組成となるように添加した後に昇温し、金属元素全体を溶融混合することを特徴とする合金の製造方法。
(2)LaSiとSiの共晶組成付近の量比が、SiとLaの原子比で、82:12〜27である、(1)に記載の製造方法。
(3)LaSiとSiの共融点以上Siの融点未満の温度が、1205℃以上1350℃以下である、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)残りの元素を添加した後に、1730℃以上1900℃以下の温度に昇温する、(1)ないし(3)の何れかに記載の製造方法。
【0014】
(5)下記式[1]:
3-x-y-z+w2z1.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2 [1]
〔式[1]中、
Rは、少なくともLaを含み、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を含んでいてもよい希土類元素を示し、
Mは、Ce、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示し、
Aは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示し、
x、y、z、w1及びw2は、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
(1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)
0<(1.5x+y−w2)/6<(9/2)
0≦x<3
0≦y<2
0<z<1
0≦w1≦5
0≦w2≦5
0≦w1+w2≦5〕
で表される組成を有する蛍光体合成用合金であって、
該合金の粉砕粉の任意の部分の縦180μmで横240μmの長方形の領域から選んだ任意の20個の粒子にについて、エネルギー分散型X線スペクトル分析により元素組成の分析を行ったとき、A元素濃度の分析値が仕込み濃度の50%以上であることを特徴とする蛍光体合成用合金。
(6)M元素がCeであり、A元素がCaである、(5)に記載の合金。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、融解操作中に低融点元素の揮散が抑えられ、原料金属の仕込み組成との誤差がなく、組成分布が均一な蛍光体合成用合金を安定して得ることができる。また、本発明による合金を上記式[A]で表される蛍光体の原料とすれば、青色光源で励起され、黄緑色〜橙色に高輝度に発光する安定な窒化物蛍光体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0017】
[1.蛍光体合成用合金]
本発明の蛍光体合成用合金の組成は、下記式[1]で表されるとおりである。
3-x-y-z+w21.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2 [1]
(式[1]中、
Rは、少なくともLaを含み、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を含んでいてもよい希土類元素を示し、
Mは、Ce、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示し、
Aは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示し、
x、y、z、w1及びw2は、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
(1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)
0≦(1.5x+y−w2)/6<(9/2)
0≦x<3
0≦y<2
0<z<1
0≦w1≦5
0≦w2≦5
0≦w1+w2≦5)
【0018】
本発明の式[1]で表される組成を有する蛍光体合成用合金を窒化することにより、窒化物蛍光体を得ることができる。
ここで、上記式[1]において、R元素、M元素、A元素の好ましい種や含有割合、各構成元素の原子比等は、これを原料とする窒化物蛍光体におけるものと同様である。以下、式[1]で表される組成を有する合金相と、該合金相を窒化して得られる窒化物蛍光体の組成等について説明する。
【0019】
[1−1.合金相と窒化物蛍光体相]
本発明の合金を窒化して得られる蛍光体は、下記式[A]で表わされる組成を有する結晶相を含有するものである。
3-x-y-z+w21.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2y+w111-y-w1 [A]
〔式[A]中、
Rは、少なくともLaを含み、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を含んでいてもよい希土類元素を示し、
Mは、Ce、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示し、
Aは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示し、
x、y、z、w1及びw2は、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
(1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)
0≦(1.5x+y−w2)/6<(9/2)
0≦x<3
0≦y<2
0<z<1
0≦w1≦5
0≦w2≦5
0≦w1+w2≦5〕
【0020】
即ち、式[A]で表される結晶相は、本発明の合金の式[1]における金属元素R、M、A、Si、Alの組成に加えて、主たるアニオンである窒素が導入され、さらに、酸素は、存在しないか、又は、窒化後のカチオンR、M、A、Si、Alを電荷補償する分だけ微量導入された化合物であり、これが高輝度な黄緑〜橙色の蛍光体となる。このように、式[1]の合金を窒化するだけで、高輝度な黄緑〜橙色の蛍光体が得られる。この蛍光体に、青色LED等の青色光源を組み合わせれば、白色発光装置を製造することができる。
【0021】
式[1]の合金の主たる相は、La1−xCaSi(0≦x<0.8)に代表されるような正方晶で、空間群がI41/amdの構造をとる。但し、式[1]における、Caに代表されるAの割合が小さい場合は、このLa1−xCaSi型の単一相となり、Aの割合が大きい場合は、La1−xCaSi型結晶相に対して、Ca等のAの濃度が非常に高い相が0.001〜1μmのレベルで緻密に混じり合ったものとなる。
【0022】
後述する本願発明の製造方法により、La等のR元素やCa等のA元素を仕込みどおりに、かつ、最大限に均一に配列された合金を実現することができる。このLa等のR元素、Ca等のA元素、Siがお互いに近くに位置する合金であるため、合金窒化時に、R元素、A元素、Siが窒化物用の結晶相の原子配列に切り替わるために、固相内移動するとき、非常にわずかな移動ですむため、目的の窒化物が容易にでき上がると考えられる。
【0023】
本発明の合金を窒化して得られる式[A]の窒化物の結晶相は、本質的には、アルカリ土類金属元素A−希土類金属元素R−Si−N相又はR−Si−N相であり、正方晶で、P4bmの空間群をもつものである。かかる結晶相として、Ce付活LaSi11を一つの例として挙げることができる。この結晶相は、LaがSiN四面体に囲まれ、Laの一部をCeが置換した構造となっている。Caが存在する場合、CaはLaの一部を置換するし、Caが多い場合は、それに加えて、挿入型でCaが相内に存在する場合もある。
【0024】
以下、式[1]の合金、及び、それを窒化して得られる式[A]の蛍光体についてより詳細に説明する。
式[1]及び式[A]において、Rは、少なくともLaを含み、Gd、LuY及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素(以下これを「他の希土類元素」ということがある)を含んでいてもよい希土類元素を示す。中でも、Rは、Laを含み、Gd、Lu及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を含む希土類元素であることが好ましく、その中でも、Rは、La及びGdからなることが好ましく、Laであることが特に好ましい。
【0025】
上記のとおり、Rは、少なくともLaを含み、さらに1種以上の他の希土類元素を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。Rとして、Laと他の希土類元素を使用することにより、本発明の合金を窒化して得られる蛍光体の励起波長や発光波長を調節すること
ができる。
【0026】
但し、Rが、Laと他の希土類元素からなる場合、La又はLaとGdの混合物のRに占める割合は、通常70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。これにより、輝度や発光強度を向上させることができる。また、輝度や発光強度の点から、LaとGdの総量に対するLaの割合は、通常70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。
【0027】
式[1]及び式[A]において、Mは、Ce、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示す。このとき、Mは付活元素として機能するものである。また、Mは、上記の金属元素のうち、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
中でも、Mとしては、本発明の合金を窒化して得られる蛍光体の発光効率及び発光ピーク波長の点で、少なくともCeを含有するものが好ましく、Ceのみがより好ましい。
【0028】
また、Ce以外の他の付活元素である、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbについてもCeと同様に共存する場合がある。これらの元素の微量添加により本発明の合金を窒化して得られる蛍光体の増感効果が発現し、輝度が向上する場合がある。
【0029】
式[1]及び式[A]において、Aは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示す。中でも、Aは、好ましくはBa、Sr、Ca及びMgからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素であり、より好ましくはCa及びMgであり、更に好ましくはCaである。なお、上記Aとしては、これらの元素のうちいずれか1種類のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0030】
また、A元素に占めるCa割合は、通常70のモル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0031】
式[1]の合金を窒化して得られる式[A]の窒化物においては、A元素を含む合金を窒化物とする場合、3価のR元素が減少して2価のA元素が導入された形をとるが、R元素とA元素の価数が異なるために、その組成に応じて複数の置換形式が可能である。一つ目は、R3++N3−→1.5A2++N3−形式、二つ目は、R3++N3−→A2++O2−形式である。その置換のモル数が、式[1]及び式[A]における、それぞれx、yに相当する。いずれも電荷補償のために起こる置換形式である。この二つ目は、窒化時にわずかにリーク混入する酸素と合金が反応して得られる置換形式である。もともとの式[1]の合金中にも、現実的には微量の酸素が存在する場合が多いが、式[1]においてはそれを省略している。
【0032】
式[1]の合金を窒化して得られる式[A]の窒化物においては、Alを含む合金からの窒化物の場合、AlはSiのサイトを置換した形をとるが、一つ目は、A2++Si4+→R3++Al3+形式、二つ目は、Si4++N3−→Al3++O2−形式である。その置換のモル数が、式[1]及び式[A]における、それぞれ、w2、w1に相当する。いずれも電荷補償のためにおこる置換形式である。
【0033】
式[1]の合金と式[A]の窒化物蛍光体とは、そのx値が異なることがある。これは、焼成中に元素Aが主相から抜けていくことがあるためと考えられる。従って、式[1]と式[A]のx値は必ずしも一致しない。
式[1]の合金中のx値は、小さすぎると、焼成時に副生物ができやすくなり、大きすぎると、窒化された式[A]の窒化物蛍光体の輝度が低下する傾向がある。窒化を受けて
得られる蛍光体の輝度の観点から、式[1]のx値は、赤み成分を含む黄色発光の蛍光体を望む場合は、通常2.5以下、好ましくは2.2以下、より好ましくは1.5以下である。一方、純黄色発光の蛍光体を望む場合は、通常1.5以下、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下である。x値の下限は0でもよく、窒化時の副生物抑制の観点から、0を超える値でもよい。
【0034】
また、y値は、0でもよいが、通常0より大きく、好ましくは0.002以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.008以上であり、また、赤み成分を含む黄色発光を利用する場合は、通常2.5以下、好ましくは2.2以下、より好ましくは1.5以下である。一方、黄色発光そのものを利用する場合は、通常1.5以下、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは、0.2以下である。
【0035】
式[1]は、見かけ上、酸素は含有されていない式となっているが、現実的には微量の酸素を含む場合がある。酸素含有量は、原子比で、通常0より大きく、0.002以上の場合が多く、0.005以上の場合がより多く、0.008以上の場合が更により多い。窒化して得られる窒化物蛍光体の輝度の観点から、好ましくは0.008以下、より好ましく0.005以下、更により好ましく0.002以下、最も好ましくは0である。
【0036】
式[1]の合金を窒化して得られる式[A]の窒化物蛍光体の輝度の観点から、その付活元素Mの量を表わす数値zは、通常0より大きく、好ましくは0.002以上、より好ましくは0.007以上、更により好ましくは0.02以上、最も好ましくは0.07以上、また、通常1未満、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下である。zの値が大きすぎると、得られる蛍光体の輝度が濃度消光により低下する可能性がある。
【0037】
式[1]の合金を窒化して得られる式[A]の窒化物の発光色の色調の調節の観点から、w1は、通常0以上、好ましくは0.002以上、より好ましくは0.005以上であり、また、通常5以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下であり、w2は、通常0以上、好ましくは0.002以上であり、また、通常5以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下である。Alの置換により、得られる蛍光体の発光色の色調を調節することができる。式[1]の合金を窒化して得られる式[A]の窒化物の輝度の観点からは、w1、w2はともに小さいほど好ましく、0が最も好ましい。
【0038】
さらに、式[1]の合金を窒化して得られる式[A]の窒化物蛍光体の輝度の観点から、式[1]のSiの一部をGe及び/又はCに置換えることができる。その置換率は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、0モル%が更に好ましい。
また、得られる蛍光体の発光強度の大幅な減少を招かないという理由により、式[A]におけるR、A、Si、Al、O、Nの各サイトには、2モル%以下で元素が置換されていてもよいし、各サイトに10モル%以下で欠損が起こっていてもよい。但し、両者とも0モル%がより好ましい。
【0039】
ただし、本発明の利点を顕著に得るために、当該合金全体が、上述した式[1]の化学組成を有することが好ましい。
【0040】
式[1]の合金を窒化して得られる式[A]の窒化物蛍光体の発光色の色調の調節の観点から、上記式[1]の化学組成のうち、好ましいものの具体例を表1に挙げるが、本発明の蛍光体が有する結晶相の組成は以下の例示に限定されるものではない。
【0041】
【表1】

【0042】
[1−2.組成の均一性]
本発明の蛍光体合成用合金は、上記式[1]で表される組成を有すものであって、該合金の粉砕粉の任意の部分の縦180μmで横240μmの長方形の領域から選んだ任意の20個の粒子にについて、エネルギー分散型X線スペクトル分析により元素組成の分析を行ったとき、以下に示す組成や組成分布をもつものである。
【0043】
ここで、合金組成の分析に用いるエネルギー分散型X線スペクトル分析方法とは、走査電子顕微鏡−エネルギー分散形X線分析装置(Scanning Electron Microscope - Energy Dispersive X-ray spectrometer;以下これを「SEM−EDX」ということがある。)
を用いる分析方法である。この分析方法の詳細、分析値と仕込み組成(濃度)、標準偏差等の詳細については、後記[実施例]の項において説明する。
【0044】
本発明の合金が、A元素を含む場合、A元素濃度の分析値は、仕込み濃度に対して、通常50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは95%以上である。また、La濃度の分析値は特に限定されないが、仕込み濃度に対して、通常は93%以上、好ましくは
96%以上、より好ましくは99%以上である。さらに、M元素濃度の分析値も特に限定されないが、仕込み濃度に対して、通常は80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
これらA元素、M元素の中で、好ましいものは、上記[1−1.合金相と窒化物蛍光体相]の項で詳述したとおりである。
なお、本明細書において、合金中の各元素の濃度は、特に明記しない限り、Siを6モルとしたときの相対濃度である。
【0045】
本発明の合金の他の態様において、該合金のSiに対するA元素のモル比の分析値の平均に対する分析値の標準偏差の百分率は、通常35%以内、好ましくは30%以内、より好ましくは25%以内である。また、該合金のSiに対するLaのモル比の分析値の平均に対する分析値の標準偏差の百分率は特に限定されないが、通常75%以内、好ましくは65%以内、より好ましくは60%以内である。さらに、該合金のSiに対するM元素のモル比の分析値の平均に対する分析値の標準偏差の百分率も特に限定されないが、通常15%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。
これらA元素、M元素の中で、好ましいものは、上記[1−1.合金相と窒化物蛍光体相]の項で詳述したとおりである。
【0046】
[2.合金の製造方法]
本発明の方法は、式[1]で表される組成を有する蛍光体合成用合金の製造方法であって、少なくともR元素の一部、M元素、A元素及びSiを含み、かつLaとSiを、LaSiとSiの共晶組成付近の量比で含む原料混合物を、LaSiとSiの共融点以上Siの融点未満の温度で融解して溶湯とした後、残りの元素を、目的とする組成となるように添加して昇温し、金属元素全体を溶融混合することに特徴を有するものである。
本発明の合金は、如何なる方法で製造されたものでもよいが、例えば、上記方法により、原料金属の仕込み組成と合金中の金属組成との差が特に少なく、均一な組成を有する合金を得ることができる。
以下、この発明の合金の製造方法について説明する。
【0047】
[2−1.原料金属の純度]
合金の製造に使用する金属の純度は、合成される蛍光体の発光特性の点から、付活元素の金属原料としては、不純物が、通常0.1モル%以下、好ましくは0.01モル%以下まで精製された金属を使用することが好ましい。付活元素としてCeを使用する場合には、Ce原料としてCe金属を使用することが好ましい。付活元素以外の元素の原料としては、2価、3価、4価の各種金属等を使用するが、同様の理由から、いずれも含有される不純物濃度は0.1モル%以下が好ましく、0.01モル%以下の高純度の金属原料を使用することが発光特性の高い蛍光体を製造できる点で好ましい。
【0048】
[2−2.原料金属の形状]
アルカリ土類金属原料としては、粒状、塊状等形状は問わないが、原料の化学的性質に応じて適切な形状を選択するのが好ましい。例えば、Caは粒状、塊状のいずれでも大気中で安定であり、使用可能であるが、Srは化学的により活性であるため、塊状の原料を用いることが好ましい。
Si、その他の金属、付活剤原料金属の形状に制限はないが、通常、直径数mmから数十mmの粒状又は塊状のものが用いられる。
【0049】
[2−3.原料金属の融解]
原料金属の融解にあたっては、特にSiとLa等の希土類元素とアルカリ土類元素を含む蛍光体合成用合金を製造する場合、次の問題点がある。
【0050】
Siの融点は1410℃、Laの融点は921℃であるが、La−Si系状態図によれば、金属間である化合物LaSiは融点が1730℃付近まで上昇する(M.V. Bulanova et al., Journal of Alloys and Compounds 329 (2001) 214-223参照)。このため組成によってはアルカリ土類金属の沸点を超える場合がある(例えば、Caの沸点は1480℃、Srの沸点は1380℃、Baの沸点は1640℃である)。従って、これらアルカリ土類金属を揮散させずに、Siと同時に融解させることは極めて困難である。
【0051】
そこで、本発明ではLaSiとSiの共晶点における融点(共融点)が1205℃付近であることを利用し、この問題点を解決した。
即ち、先ず、LaとSiを、LaSiとSiの共晶組成〔Si:La=82:18(原子比)〕となるような比率で秤量し、これにM元素、及びA元素を、それぞれ、前記式[1]の組成となるよう添加する。
【0052】
次いで、秤量物を各金属と反応しない材質の坩堝、例えば、黒鉛坩堝に仕込む。そして、この坩堝内の金属原料をアルゴン雰囲気で高周波誘導式溶融炉等の溶融炉を用いて、LaSiとSiの共融点(1205℃)以上でSiの融点(2360℃)未満の温度で、原料金属を溶融する。そして、引き続き溶融状態に金属溶湯を保持したまま、残りのLaや他の元素を前記式[1]の目的の組成となるように添加した後に昇温し、金属元素全体を溶融混合する。
【0053】
金属全体の溶融混合は、LaSiの融点(1730℃)付近まで温度を上昇させて行うのが好ましい。各金属が十分に混合した後に、坩堝から金型へ金属溶湯を注湯して冷却し凝固させ板状の合金を得る。
このようにLa金属を2段階に分けて添加し、融解を行うことにより、アルカリ土類金属の揮散を抑えることができ、得られる合金が所望の組成となる。
【0054】
ここで、最初に溶融するLaとSiの比率は、厳密にLaSiとSiの共晶組成、すなわちSi:La=82:18(原子比)でなくともよく、通常82:12〜27、好ましくは82:15〜23程度であればよい。
【0055】
また、上記したLaSiとSiの共融点(1205℃)、Siの融点(2360℃)、LaSiの融点(1730℃)は、目安の温度であり、本発明の方法の実施に際して、厳密に、これら温度である必要はなく、目的とする合金組成に応じて、これら温度を目安として、本発明の方法が実施可能な温度を選べばよい。
【0056】
具体的には、LaSiとSiの共融点以上Siの融点未満の温度は、通常1205℃以上、好ましくは1240℃以上、より好ましくは1280℃以上であり、また上限は、通常1400℃以下、好ましくは1350℃以下、より好ましくは1320℃以下である。
【0057】
残りの元素を添加した後の昇温は、金属元素全体を溶融混合することができる温度であれば特に制限はなく、通常1730℃以上、好ましくは1770℃以上、より好ましくは1810℃以上であり、また上限は、通常1900℃以下、好ましくは1860℃以下、より好ましくは1820℃以下である。
【0058】
原料金属の融解法については、特に制限はないが、通常、アーク融解法や高周波融解法等を用いることができる。本発明においては、高周波融解法が好ましい。
【0059】
[2−4.溶湯の鋳造]
原料金属の融解により製造された合金溶湯は、通常、金型に注入して成型する鋳造工程
を経て、凝固体(鋳塊)として取得する。但し、この鋳造工程において溶融金属の冷却速度によって偏析が生じ、溶融状態で均一組成であったものが組成分布に偏りが生じることもある。従って、冷却速度はできるだけ速いことが望ましい。また、金型は銅等の熱伝導性のよい材料を使用することが好ましく、形状も熱が放散しやすいことが好ましい。また、必要に応じて水冷等の手段により金型を冷却する工夫をすることも好ましい。
【0060】
このような工夫により、例えば、厚さに対して底面積の大きい金型を用い、溶湯を金型への注湯後できるだけ早く凝固させることが好ましい。
【0061】
また、合金の組成によって偏析の程度は異なるので、必要な分析手段、例えば、SEM−EDXやICP〔Inductively Coupled Plasma(誘導結合プラズマ)発光分光分析〕法等によって、得られた凝固体の数箇所より試料を採取して組成分析を行い、偏析の防止に必要な冷却速度を定めることが好ましい。
【0062】
鋳造時の雰囲気は、不活性雰囲気が好ましく、中でもAr雰囲気が好ましい。
【0063】
[2−5.鋳塊の粉砕]
鋳造工程で得られた鋳塊をそのままの形態で蛍光体化することは蛍光体化反応の進行速度が遅く実用的でないため、この鋳塊をしかるべき粒度分布になるよう粉砕、分級して反応に供するのが好ましい。なお、鋳塊の粉砕の詳細については、「3.蛍光体の合成」の項で説明する。
【0064】
[2−6.アトマイズ法等による合金の製造]
ところで、蛍光体合成用合金は、上述した方法のほか、以下に説明する(a)〜(c)の工程を経て製造することもできる。これにより、安息角が45度以下である合金粉末を得ることができる。
(a)蛍光体を構成する金属に対応した原料金属を前述の方法で溶融させて、これらの元素を含む合金溶湯を用意する(融解工程)。
(b)合金溶湯を不活性ガス中で微細化する(微細化工程)。
(c)微細化した合金溶湯を凝固させ、合金粉末を得る(凝固工程)。
【0065】
即ち、この方法は、合金溶湯をガス中で微細化し、これを凝固させて粉末を得るものである。前記(b)微細化工程及び(c)凝固工程は、例えば、合金溶湯を噴霧する方法、ロールやガス流により急冷し、リボン状に微細化する方法やアトマイズ法等により粉末化することが好ましく、中でもアトマイズ法を用いることが好ましい。
具体的には、WO2007/135975号公報に記載の公知の方法を、適宜変更して用いることができる。
【0066】
[3.蛍光体の合成]
本発明の合金を、窒化することにより、式[A]で表される組成の結晶相を有する蛍光体を調製することができる。合金の窒化は、通常、前記合金に、必要に応じて他の原料を混合し、それを窒素含有雰囲気下で焼成する窒化処理工程を経て行われる。
【0067】
ここで、工業的に広く使用されている金属単体の精製方法には、昇華精製、フローティングゾーン法、蒸留法等が知られている。このように金属単体は金属化合物に比べ精製が容易となる元素が多く存在する。従って、蛍光体を製造するに当たり必要な金属元素単体を出発原料として用い、これらを合金化し、得られた蛍光体合成用合金から蛍光体を製造する方法の方が、金属化合物を原料とする方法よりも純度の高い原料を得やすい点で優れている。また、付活元素の結晶格子内での均一分散という観点においても、構成元素となる原料が金属単体であれば、これらを融解し合金とすることにより、付活元素を容易に均
一分布させることができる。
【0068】
以上の観点から、好ましくは目的とする蛍光体を構成する金属元素の全てを含有する蛍光体合成用合金を原料とし、これを窒化して蛍光体を製造することにより、高性能な蛍光体を工業的に生産することができる。
【0069】
[3−1.合金塊(鋳塊)の粉砕]
窒素含有雰囲気下での焼成(焼成工程)に先立ち、鋳造工程で得られた合金塊を粉砕することにより(粉砕工程)、所望の粒径、粒度分布を有する蛍光体合成用合金粉末(以下これを「合金粉末」と称することがある。)とすることが好ましい。
【0070】
粉砕方法に特に制限はないが、例えば、乾式法や、エチレングリコール、ヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いる湿式法で行うことが可能である。
【0071】
以下、乾式法を例に詳しく説明する。
この粉砕工程は、必要に応じて、粗粉砕工程、中粉砕工程、微粉砕工程等の複数の工程に分けてもよい。この場合、全粉砕工程を同じ装置を用いて粉砕することもできるが、工程によって使用する装置を変えてもよい。
【0072】
ここで、粗粉砕工程とは、合金粉末のおおよそ90重量%が粒径1cm以下になるように粉砕する工程であり、例えば、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、クラッシングロール、インパクトクラッシャー等の粉砕装置を使用することができる。中粉砕工程とは、合金粉末のおおよそ90重量%が粒径1mm以下になるように粉砕する工程であり、例えば、コーンクラッシャー、クラッシングロール、ハンマーミル、ディスクミル等の粉砕装置を使用することができる。微粉砕工程とは、合金粉末が後述する重量メジアン径になるように粉砕する工程であり、例えば、ボールミル、チューブミル、ロッドミル、ローラーミル、スタンプミル、エッジランナー、振動ミル、ジェットミル等の粉砕装置を使用することができる。
【0073】
中でも、不純物の混入を防止する観点から、最終の粉砕工程においては、ジェットミルを使用することが好ましい。ジェットミルを用いるためには、粒径2mm程度より小さくなるまで予め合金塊を粉砕しておくことが好ましい。ジェットミルでは、主に、ノズル元圧から大気圧に噴射される流体の膨張エネルギーを利用して粒子の粉砕を行うため、粉砕圧力により粒径を制御すること、不純物の混入を防止することが可能である。粉砕圧力は、装置によっても異なるが、ゲージ圧で通常0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上であり、通常2MPa以下、好ましくは0.4MPa未満、より好ましくは0.3MPa以下である。ゲージ圧が低すぎると得られる粒子の粒径が大きすぎる可能性があり、高すぎると得られる粒子の粒径が小さすぎる可能性がある。
【0074】
更にいずれの場合も粉砕工程中に鉄等の不純物の混入が起こらないよう、粉砕機の材質と被粉砕物の関係を適切に選択することが好ましい。例えば、接粉部は、セラミックライニングが施されていることが好ましく、セラミックの中でも、アルミナ、窒化ケイ素、タングステンカーバイド、ジルコニア等が好ましい。なお、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0075】
また、合金粉末の酸化を防ぐため、粉砕工程は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスの種類に特に制限はないが、通常、窒素、アルゴン、ヘリウム等の気体のうち1種単独雰囲気又は2種以上の混合雰囲気を用いることができる。中でも、経済性の観点から窒素が特に好ましい。
【0076】
更に雰囲気中の酸素濃度は合金粉末の酸化が防止できる限り制限はないが、通常10体積%以下、特に5体積%以下が好ましい。また、酸素濃度の下限としては、通常10ppm程度である。特定の範囲の酸素濃度とすることによって、粉砕中に合金の表面に酸化被膜が形成され、安定化すると考えられる。酸素濃度が5体積%より高い雰囲気中で粉砕工程を行う場合、粉砕中に粉塵が爆発する可能性があるため、粉塵を生じさせないような設備を設けることが好ましい。
【0077】
なお、粉砕工程中に合金粉末の温度が上がらないように必要に応じて冷却してもよい。
【0078】
[3−2.合金粉末の分級]
得られた合金粉末は、例えば、バイブレーティングスクリーン、シフター等の網目を使用した篩い分け装置;エアセパレータ等の慣性分級装置;サイクロン等の遠心分離機などを使用して、所望の重量メジアン径D50及び粒度分布に調整(分級工程)してから、これ以降の工程に供することが好ましい。
【0079】
なお、粒度分布の調整においては、粗粒子を分級し、粉砕機にリサイクルすることが好ましく、分級及び/又はリサイクルが連続的であることが更に好ましい。
【0080】
この分級工程についても、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスの種類に特に制限はないが、通常、窒素、アルゴン、ヘリウム等の1種単独雰囲気又は2種以上の混合雰囲気が用いられ、経済性の観点から窒素が特に好ましい。また、不活性ガス雰囲気中の酸素濃度は10体積%以下、特に5体積%以下が好ましい。
【0081】
前記の分級によって調整される粒径は、合金粉末を構成する金属元素の活性度に応じて様々であるが、その重量メジアン径D50は、通常100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下、また、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。また、蛍光体合成用合金がSrを含有する場合は、雰囲気ガスとの反応性が高いため、合金粉末の重量メジアン径D50は、通常5μm以上、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは13μm以上とする。合金粉末の粒径が前述の重量メジアン径D50の範囲よりも小さいと、窒化等の反応時の発熱速度が上昇する傾向にあるので、反応の制御が困難となる場合がある。また、合金粉末が大気中で酸化されやすくなるので、得られる蛍光体に酸素が取り込まれやすくなる等、取り扱いが難しくなる場合がある。一方で、合金粉末の粒径が前述の重量メジアン径D50の範囲よりも大きいと、合金粒子内部での窒化等の反応が不十分となる場合がある。
【0082】
なお、アトマイズ法等により粉末として調製された合金は、粉砕工程や分級工程を経ることなく、焼成工程に供することができる。
【0083】
[3−3.蛍光体焼成工程]
得られた蛍光体合成用合金は、窒素含有雰囲気下で焼成することにより窒化され、窒化物蛍光体となる。この焼成工程では、後述の窒化処理工程を必須とし、必要に応じて、一次窒化工程を行ってもよい。
【0084】
[3−3−1.原料の混合]
蛍光体合成用合金に含有される金属元素の組成、即ち、式[1]の組成が、式[A]の金属元素の組成に一致していれば蛍光体合成用合金のみを焼成すればよい。一方、一致していない場合には、別の組成を有する蛍光体合成用合金、金属単体、金属化合物等を蛍光体合成用合金と混合して、原料中に含まれる金属元素の組成が式[A]で表される結晶相
に含まれる金属元素の組成に一致するように調整し、焼成を行う。
【0085】
なお、蛍光体合成用合金に含有される金属元素の組成が、式[A]で表される組成の結晶相に含まれる金属元素の組成に一致している場合であっても、蛍光体合成用合金に窒化物又は酸窒化物を混合すると、WO2007/135975号公報に記載されている通り、窒化時の単位体積当たりの発熱速度を抑制し、窒化反応を円滑に進行させることができるようになるため、高特性の蛍光体が高い生産性で得られるようになる。かかる蛍光体を製造するにあたっては、WO2007/135975号公報を参照し、適宜変更を加えることにより適切な窒化物又は酸窒化物の存在下で後述する窒化工程を行なえばよい。
【0086】
本発明の蛍光体合成用合金とともに使用しうる合金としては、例えば、LaSi、CeLa1−xSi(0<x<1)、LaSi、LaSi、LaSi、Ca24Si60、Ca28Si60、CaSi、Ca31Si60、Ca14Si19、CaSi、CaSi、CaSi、CaSi、CaLa3−xSi(0<x<3)、CeCaLa3−x−ySi(0<x<3、0<y<3)等の組成を有するものが挙げられる。これらの安定に存在する合金相を適宜組み合わせることが好ましい。
【0087】
また、別の具体例としては、CaSi、CaSi、CaSi、CaSi、CaSi、Ca14Si19、CaSi、SrSi、SrSi、SrSi、SrSi、SrSi等のSiとアルカリ土類金属とを含む合金;Ca(Si1−xAl、Sr(Si1−xAl、Ba(Si1−xAl、Ca1−xSr(Si1−yAl等のSi、アルミニウム及びアルカリ土類金属を含む合金等が挙げられる。
これらの中で、A(B0.5Si0.5(A=Ca,Sr,Ba、B=Al,Ga)は、その超伝導特性に関して、特開2005−54182号公報、M.Imai, "Applied Physics Letters" 80 (2002), 1019-1021, M.Imai "Physical Review B" 68, (2003), 064512等において検討が行なわれている。
【0088】
また、本発明の蛍光体合成用合金と混合して用いることができる金属化合物に制限はなく、例えば、窒化物、酸窒化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。具体的な種類は、これらの金属化合物の中から、目的物への反応性や焼成時におけるNO、SO等の発生量の低さ等を考慮して適宜選択すればよいが、蛍光体が窒素含有蛍光体である観点から、窒化物及び/又は酸窒化物を用いることが好ましい。中でも、窒素源としての役割も果たすため、窒化物を用いることが好ましい。なお、上記の混合する蛍光体合成用合金、金属単体、金属化合物等は、いずれも1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0089】
[3−3.窒化工程(窒化処理工程)]
窒化工程において、蛍光体合成用合金に対して窒化処理を施すことにより、窒化物蛍光体を得ることができる。この際、蛍光体合成用合金としては、一次窒化工程を経た蛍光体合成用合金(即ち、窒素含有合金、好ましくは、その合金粉末)を用いてもよく、一次窒化工程を経ていない蛍光体合成用合金(好ましくは、その合金粉末)を用いてもよく、両者を併用してもよい。更に必要に応じて蛍光体合成用合金以外の原料(例えば、金属単体、金属化合物等)を混合してもよい。以下、本発明の蛍光体の原料となる蛍光体合成用合金(窒素含有合金を含む)及びその他の原料をまとめて、適宜「蛍光体原料」という。
【0090】
窒化工程における窒化処理は、蛍光体原料を、例えば、坩堝、トレイ等の焼成容器に充填して窒素含有雰囲気下で加熱することにより行なう。具体的には、以下の手順により行なう。
【0091】
即ち、まず、蛍光体原料を焼成容器に充填する。ここで使用する焼成容器の材質は、例えば、窒化ホウ素、窒化珪素、炭素、窒化アルミニウム、タングステン等が挙げられる。中でも、窒化ホウ素が耐食性に優れることから好ましい。なお、前記の材質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0092】
また、ここで使用する焼成容器の形状は任意である。例えば、焼成容器の底面が、円形、楕円形等の角のない形や、三角形、四角形等の多角形であってもよいし、焼成容器の高さも加熱炉に入る限り任意であり、低いものでも高いものでもよい。中でも、放熱性のよい形状を選択することが好ましい。
【0093】
この蛍光体原料を充填した焼成容器を、焼成装置(加熱炉)に納める。ここで使用する焼成装置としては、本発明の効果が得られる限り任意であるが、装置内の雰囲気を制御できる装置が好ましい。更に圧力も制御できる装置、例えば、熱間等方加圧装置(HIP)、抵抗加熱式真空加圧雰囲気熱処理炉等も使用できる。
また、加熱開始前に、焼成装置内に窒素を含むガス(窒素含有ガス)を流通して系内を十分にガス置換することが好ましい。必要に応じて、系内を真空排気した後、窒素含有ガスを流通してもよい。
【0094】
窒化処理の際に使用する窒素含有ガスとしては、窒素元素を含むガス、例えば、窒素、アンモニア、或いは窒素と水素の混合気体等が挙げられる。なお、窒素含有ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。これらの中で、窒素含有ガスとしては、水素を含む窒素ガス(水素含有窒素ガス)が好ましい。なお、水素含有窒素ガスにおける水素の混合割合は4体積%以下が爆発限界外で有り、安全上好ましい。
【0095】
系内の酸素濃度は製造される蛍光体の酸素含有量に影響し、余り高い含有量となると高い発光が得られなくなるため、窒化処理雰囲気中の酸素濃度は、低いほど好ましく、体積として、通常0.1%以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。
【0096】
窒化処理は、窒素含有ガスを充填した状態或いは流通させた状態で蛍光体原料を加熱することにより行なうが、その際の圧力は大気圧よりも幾分減圧、大気圧或いは加圧のいずれの状態でもよい。但し、大気中の酸素の混入を防ぐためには大気圧以上とすることが好ましい。圧力を大気圧未満にすると加熱炉の密閉性が悪い場合には多量の酸素が混入して特性の高い蛍光体を得ることができない可能性がある。窒素含有ガスの圧力は少なくともゲージ圧で0.1MPa以上が好ましい。あるいは、20MPa以上の高圧下で加熱することもできる。また、200MPa以下が好ましい。
【0097】
ところで、金属の窒化反応は、通常は発熱反応である。従って、合金からの蛍光体の製造時には、急激に放出される反応熱により合金が再度融解し、気体窒素と合金との反応を遅延させることがある。このため合金法では、合金が融解しない反応速度を維持することが、高性能の蛍光体を安定に製造することができるために好ましい。特にその窒化熱生成が激しい1150〜1400℃なる焼成温度領域の少なくとも発熱ピークの立ち上がりがおこる温度領域において、1.5℃/分以下の低速度で昇温させて焼成することが好ましい。昇温速度の上限は、通常1.5℃/分以下、好ましくは0.5℃/分以下、より好ましくは0.1℃/分以下である。また、下限に特に制限はなく、工業生産としての経済的観点より定めればよい。
【0098】
また、加熱温度は、蛍光体合成用合金の組成等によっても異なるが、通常1000℃以
上1800℃以下であり、1400℃以上1700℃以下がより好ましい。また、上記の温度は、加熱処理の際の炉内温度、即ち、焼成装置の設定温度を指す。
【0099】
合金の窒化時にフラックスを添加してもよい。フラックスの種類としては、CeF、MgF、GdF、LaF、CaF等のハロゲン化物が主に挙げられる。フラックスの使用量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは5重量%以下である。高輝度の蛍光体を得るために、一回のみならず、2回、3回焼成してもよい。この場合、フラックスの使用は適宜行う。
【0100】
窒化処理時の加熱時間(最高温度での保持時間)は、蛍光体原料と窒素との反応に必要な時間でよいが、通常1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは60分以上である。加熱時間が1分より短いと窒化反応が完了せず特性の高い蛍光体が得がたい可能性がある。また、加熱時間の上限は生産効率の面から決定され、通常50時間以下であり、好ましくは24時間以下である。
【0101】
[3−4.後処理]
上述した工程以外にも、必要に応じてその他の工程を行ってもよい。例えば、上述の焼成工程後、必要に応じて粉砕工程、洗浄工程、分級工程、表面処理工程、乾燥工程等を行なってもよい。
【0102】
洗浄工程は、例えば、脱イオン水等の水、エタノール等の有機溶剤、アンモニア水等のアルカリ性水溶液等で行うことができる。洗浄は、使用したフラックスの除去等、蛍光体の表面に付着した不純物相を除去し発光特性を改善する等の目的のために、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、王水、フッ化水素酸と硫酸との混合物等の無機酸;酢酸等の有機酸等を含有する酸性水溶液を使用することもできる。
かくして上述した結晶相、特性をもつ窒化物蛍光体を得ることができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0104】
なお、以下の例において、各元素濃度は、SEM−EDX(Scanning Electron Microscope - Energy Dispersive X-ray spectrometer、走査電子顕微鏡−エネルギー分散形X
線分析装置;日立製作所社製S−3400N)により、次のとおり分析した値である。
【0105】
先ず、粉砕した合金粒子が敷き詰められた縦180μm、横240μmの視野中、アットランダムに選んだ20個の粒子の中央部に、横2.5μm×2.5μmの照射面積の電子ビームを照射し、各元素から発生してくるX線の検出により、各元素濃度を求めた。このとき、各元素から発生するX線の自己吸収の違いによる測定値のぶれを解消するため、2.5μm×2.5μmのビームエリアが1個の粒子の中にすっぽり含まれ、急斜面となる粒子の縁がビームエリア内に入らないように実施した。
【0106】
[比較例1]
WO2008/132954号公報の実施例II−13に記載の方法に準じて、次のとおり、蛍光体合成用合金を製造した。
高純度のLa、Ca、Si、Ceの各金属粒をLa:Ca:Si:Ce=2.50:0.75:6.00:0.10の原子比で秤量し、各金属粒を混合した後、アークメルター融解装置内の銅製皿に仕込んだ。そして、アルゴン雰囲気とし、高電流をかけ、原料金属
を全て溶融した後、電流を停止し、自然冷却させ、合金を得た。主合金塊の付近に別種の粉状金属がついているのが判明した。
【0107】
この主合金塊を乳鉢で、平均粒径約10.3μmに粉砕し、試料台平面に敷き詰めた。粉砕の粉は十分混合してあるので、試料台上の粉は無作為に抽出された粉といえる。
この試料台上の合金粉の各元素濃度を、上記のとおり、SEM−EDXで求めた。その結果を、表2に示す。なお、下記の表において、各元素濃度(原子比)は、Siを6.00とする値である。また、対仕込値(%)は仕込値に対する分析値の百分率、標準偏差は20回の測定値に基づく値である。
【0108】
【表2】

【0109】
表2のとおり、各元素濃度(原子比)の平均値は、La:Ca:Si:Ce=2.42:0.18:6.00:0.14となり、特にCa濃度の分析値は仕込み濃度の24%程度であり、仕込み濃度と大幅に異なっていた。La、Ca、Ce各濃度の標準偏差は0.37、0.10、0.03と小さく、上記平均値が、多数の粒子の実際の元素平均濃度をほぼ正しく反映したものと判断された。
【0110】
[実施例1]
原料金属を比較的低温で溶融するために、まず、LaSiとSiの共晶組成近傍のSi/(Si+La+Ce)割合が0.82となるように、高純度のLa、Ca、Si、Ceの各金属をLa:Ca:Si:Ce=1.217:0.45:6:0.1の原子比で秤量し、黒鉛るつぼに仕込んだ。そして、この坩堝内の金属原料をアルゴン雰囲気で高周波誘導式溶融炉を用いて1205℃以上の高温で原料金属を溶融した。そして、引続き高温の溶融状態に金属溶湯を保持したまま、原子比がLa:Ca:Si:Ce=2.6:0.45:6:0.1となるようにLa金属を添加し、1730℃以上に昇温して金属全体を溶融して混合した。十分に金属が混合した後に、るつぼから金型へ金属溶湯を注湯して冷却し凝固させ板状の合金を得た。
【0111】
これをジェットミルにより粉砕(平均粒径:4.7μm)して、試料台平面に敷き詰めた。粉砕の粉は十分混合してあるので、試料台上の粉は無作為に抽出された粉といえる。
この試料台上の合金粉の各元素濃度を、上記のとおり、SEM−EDXで求めた。その結果を、表3に示す。
【0112】
【表3】

【0113】
表3のとおり、元素濃度(原子比)の平均値は、La:Ca:Si:Ce=2.50:0.48:6:0.14であり、仕込み組成にほぼ一致した。また、La、Ca、Ce各濃度の標準偏差は、それぞれ、0.60、0.29、0.04と小さく、上記平均値が、多数の粒子の実際の元素平均濃度をほぼ正しく反映したものと判断された。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、照明、画像表示装置等に使用する窒化物蛍光体の工業的製造に、特に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[1]:
3-x-y-z+w2z1.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2 [1]
〔式[1]中、
Rは少なくともLaを含み、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を含んでいてもよい希土類元素を示し、
MはCe、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示し、
AはBa、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示し、
x、y、z、w1及びw2は、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
(1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)
0≦(1.5x+y−w2)/6<(9/2)
0≦x<3
0≦y<2
0<z<1
0≦w1≦5
0≦w2≦5
0≦w1+w2≦5〕
で表される組成を有する蛍光体合成用合金の製造方法であって、
少なくともR元素の一部、M元素、A元素及びSiを含み、かつLaとSiを、LaSiとSiの共晶組成付近の量比で含む原料混合物を、LaSiとSiの共融点以上Siの融点未満の温度で融解して溶湯とした後、残りの元素を、目的とする組成となるように添加した後に昇温し、金属元素全体を溶融混合することを特徴とする合金の製造方法。
【請求項2】
LaSiとSiの共晶組成付近の量比が、SiとLaの原子比で、82:12〜27である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
LaSiとSiの共融点以上Siの融点未満の温度が、1205℃以上1350℃以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
残りの元素を添加した後に、1730℃以上1900℃以下の温度に昇温する、請求項1ないし3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
下記式[1]:
3-x-y-z+w2z1.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2 [1]
〔式[1]中、
Rは、少なくともLaを含み、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を含んでいてもよい希土類元素を示し、
Mは、Ce、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示し、
Aは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示し、
x、y、z、w1及びw2は、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
(1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)
0<(1.5x+y−w2)/6<(9/2)
0≦x<3
0≦y<2
0<z<1
0≦w1≦5
0≦w2≦5
0≦w1+w2≦5〕
で表される組成を有する蛍光体合成用合金であって、
該合金の粉砕粉の任意の部分の縦180μmで横240μmの長方形の領域から選んだ任意の20個の粒子にについて、エネルギー分散型X線スペクトル分析により元素組成の分析を行ったとき、A元素濃度の分析値が仕込み濃度の50%以上であることを特徴とする蛍光体合成用合金。
【請求項6】
M元素がCeであり、A元素がCaである、請求項5に記載の合金。

【公開番号】特開2011−68956(P2011−68956A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221287(P2009−221287)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)