説明

蛍光素子、照明装置、表示装置および電子機器

【課題】付活剤の使用量を抑えつつ、光取出効率の低下を最低限に抑えるか、もしくは、付活剤の使用量を今までと同程度とした場合と同程度の光取出効率を実現することの可能な蛍光素子ならびにそれを備えた照明装置、表示装置および電子機器を提供する。
【解決手段】液晶パネル20の上面に蛍光素子48が設けられている。蛍光素子48は、蛍光体層45と、蛍光体層45を間にして互いに対向するフィルタ層44,47とを有している。蛍光体層45では、光入射面側の部位が光射出面側の部位よりも、蛍光体の光吸収率が高くなっており、かつ蛍光体の内部量子効率が低くなっている。さらに、蛍光体層45に入射した光が蛍光体層45の光射出側にまで透過してくる量が多くなるので蛍光体層45の光射出側の部位での発光量が多くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を含む蛍光素子、ならびにそれを備えた照明装置および表示装置に関する。また、本発明は、上述の表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶表示装置では、冷陰極管や白色LED(Light Emitting Diode)などを光源とするバックライトからの光が液晶層にてサブピクセルごとに変調されたのち、カラーフィルタを通過することにより、カラー表示が行われる。白色LEDは、冷陰極管と比べて長寿命であり、低損失であることから、特に中小型の液晶表示装置のバックライトの光源として多く用いられている。
【0003】
ところで、バックライトの光源として使用される白色LEDは、一般的には、青色LEDと、黄色蛍光体とを組み合わせたもので構成されている。このような構成の白色LEDでは、青色LEDから青色光が発せられるとともに、青色LEDから発せられた青色光が黄色蛍光体で黄色光に変換されたのち、これら2色の光が混合されることにより白色光が得られる。なお、蛍光体として、黄色蛍光体および赤色蛍光体が用いられている場合には、青色光、黄色光および赤色光の3色の光が混合されることにより白色光が得られる。しかし、上記の白色LEDでは、蛍光体は、青色LEDを覆う封止樹脂の中に埋め込まれているので、青色LEDの発熱により蛍光体の発光効率が低下する。従って、白色LEDでは、冷陰極管と比べると光損失は少ないが、いわゆる温度消光による光損失が多い。
【0004】
また、液晶表示装置に使用されるカラーフィルタでは、特定の波長帯(例えば、赤色波長帯、緑色波長帯または青色波長帯)の光だけが透過され、それ以外の光が遮断される。そのため、光エネルギーの多くが内部損失となっている。以上のことから、白色LEDを光源として用いた液晶表示装置では、温度消光による光損失と、カラーフィルタによる光損失とにより、光利用効率が低いという問題があった。
【0005】
そこで、従来から、多くの方策が提案されている。例えば、特許文献1では、バックライトの光源として紫外光源を用い、カラーフィルタの代わりに、赤色、緑色および青色の各色の蛍光体層を設けることが提案されている。また、例えば、特許文献2では、バックライトの光源として青色LEDを用い、青色光については青色LEDから発せられた光をそのまま用い、赤色光および緑色光については、青色LEDから発せられた光を赤色および緑色の蛍光体層で色変換することによる得ることが提案されている。
【0006】
しかし、特許文献1では、液晶表示装置内の各種構成部材において紫外光の透過率が可視光の透過率よりも低いので、光利用効率を高くするのが容易ではないという問題がある。また、液晶表示装置内の各種構成部材において紫外光が吸収されると、各種構成部材の劣化が進行し、各種構成部材の信頼性が低下するという新たな問題が生じる。また、紫外光は人体に悪影響を及ぼす虞があるので、紫外光の漏れ光を遮断するフィルタを設けることが必要となり、さらに、紫外光を発生させる光源として、高価な高圧水銀ランプやブラックライトを使用することが必要となる。従って、製造コストが高騰するという問題もある。
【0007】
また、特許文献2では、青色光については、青色LEDから発せられた光がそのまま用いられているので、青色光の視野角特性が他の色の視野角特性と異なってしまうという問題がある。もっとも、その問題については、特許文献3に記載されているように、青色LEDから発せられた光の視野角を補正する青色光ルミネセンスND層を設けることにより、改善することが可能である。しかし、そのようにした場合であっても、青色光ルミネセンスND層によって視野角特性を完全に補正することは難しく、しかも、青色光ルミネセンスND層による光損失が発生してしまう。
【0008】
そこで、本願発明者らは、バックライトの光源として、ピーク波長が380nm〜420nmの波長帯内にある光源を用い、その光を赤色、緑色および青色の各色の蛍光体層に照射することにより、カラー表示を行うことを特許文献4において提案している。なお、上述の光源としては、例えば、ピーク波長が405nmのブルーレイDVD(Digital Versatile Disc)用の光源が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平08−036158号公報
【特許文献2】特開2003−005182号公報
【特許文献3】特開2006−301632号公報
【特許文献4】特開2010−250259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、赤色、緑色および青色の各色の蛍光体層に含まれる蛍光体の付活剤には、一般に、希土類元素が使用されている。希土類元素は、資源として中国等の地域に偏在しており、輸出制限や価格高騰などのリスクを有している。そのため、蛍光体層に含まれる付活剤の量をできるだけ少なくすることが、上記リスクの低減の観点から好ましい。しかし、蛍光体層内の単位体積当たりの付活剤の量(つまり、付活剤濃度)には最適な量があり、付活剤濃度は、通常、外部量子効率が最大となる量に設定されている。そのため、蛍光体層に含まれる付活剤の量を単純に少なくした場合には、外部量子効率が最大値よりも小さくなり、光取出効率が低くなってしまう虞がある。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、付活剤の使用量を抑えつつ、光取出効率の低下を最低限に抑えるか、もしくは、付活剤の使用量を今までと同程度(つまり外部量子効率が最大となる量)とした場合と同程度の光取出効率を実現することの可能な蛍光素子ならびにそれを備えた照明装置、表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の蛍光素子は、互いに対向する光入射面および光射出面を有する蛍光体層を備えたものである。蛍光体層は、母材の一部を付活剤で置換することにより形成された蛍光体を含んで構成されている。蛍光体層は、さらに、所定の波長帯の光に対して、光入射面側の方が光射出面側の方よりも蛍光体の光吸収率が高く、かつ蛍光体の内部量子効率が低くなるように構成されている。
【0013】
本発明の第1の照明装置は、所定の波長帯の光を発する面発光源と、面発光源からの光を波長変換する蛍光素子とを備えたものである。蛍光素子は、面発光源の直上に、面発光源と所定の空隙を介して対向配置されており、上記の第1の蛍光素子と同一の構成要素を有している。
【0014】
本発明の第1の表示装置は、映像信号に基づいて駆動される表示パネルと、表示パネルを背後から照明すると共に、所定の波長帯の光を発するバックライトとを備えたものである。表示パネルは、第1偏光板、第1基板、液晶層、第2基板、第2偏光板および蛍光素子をバックライト側から順に有している。蛍光素子は、上記の第1の蛍光素子と同一の構成要素を有している。
【0015】
本発明の第1の電子機器は、上記の第1の表示装置を備えたものである。
【0016】
本発明の第1の蛍光素子、第1の照明装置、第1の表示装置および第1の電子機器では、蛍光体層において、光入射面側の部位が光射出面側の部位よりも、蛍光体の光吸収率が高くなっており、かつ蛍光体の内部量子効率が低くなっている。これにより、蛍光体層の光入射側の部位において、入射光が高率で吸収され、所定の波長の光が発せられる。ここで、蛍光体層の光射出側では、蛍光体の光吸収率が低く、かつ蛍光体の内部量子効率が高くなっている。そのため、蛍光体層全体における蛍光体の光吸収率および内部量子効率が本発明における蛍光体層の光入射側の蛍光体の光吸収率および内部量子効率と同程度となっている場合と比べると、蛍光体層の光入射側で発生した光が、蛍光体層の光射出側に位置する蛍光体によって進行を阻害される割合が少ない。さらに、蛍光体層に入射した光が蛍光体層の光射出側にまで透過してくる量が多くなるので蛍光体層の光射出側の部位での発光量が多くなる。
【0017】
本発明の第2の蛍光素子は、互いに対向する光入射面および光射出面を有する蛍光体層を備えたものである。蛍光体層は、光射出面側の方が光入射面側の方よりも蛍光体内の付活剤の濃度が低くなるように構成されている。
【0018】
本発明の第2の照明装置は、所定の波長帯の光を発する面発光源と、面発光源からの光を波長変換する蛍光素子とを備えたものである。蛍光素子は、面発光源の直上に、面発光源と所定の空隙を介して対向配置されており、上記の第2の蛍光素子と同一の構成要素を有している。
【0019】
本発明の第2の表示装置は、映像信号に基づいて駆動される表示パネルと、表示パネルを背後から照明すると共に、所定の波長帯の光を発するバックライトとを備えたものである。表示パネルは、第1偏光板、第1基板、液晶層、第2基板、第2偏光板および蛍光素子をバックライト側から順に有している。蛍光素子は、上記の第2の蛍光素子と同一の構成要素を有している。
【0020】
本発明の第2の電子機器は、上記の第2の表示装置を備えたものである。
【0021】
本発明の第2の蛍光素子、第2の照明装置、第2の表示装置および第2の電子機器では、蛍光体層において、光入射面側の方が光射出面側の方よりも、蛍光体内の付活剤の濃度が低くなっている。これにより、蛍光体層全体における蛍光体内の付活剤の濃度が本発明における蛍光体層の光入射側の蛍光体内の付活剤の濃度と同程度となっている場合と比べると、蛍光体層の光入射側で発生した光が、蛍光体層の光射出側に位置する蛍光体によって進行を阻害される割合が少ない。さらに、蛍光体層に入射した光が蛍光体層の光射出側にまで透過してくる量が多くなるので蛍光体層の光射出側の部位での発光量が多くなる。
【0022】
また、本発明の第1および第2の照明装置、第1および第2の表示装置ならびに第1および第2の電子機器では、蛍光素子は、面発光源と所定の空隙を介して対向配置されている。これにより、面発光源の熱が蛍光素子に直接に伝わらないので、蛍光素子が高温になるのを抑制することができ、温度消光を少なくすることができる。また、本発明の第1および第2の照明装置、第1および第2の表示装置ならびに第1および第2の電子機器では、所定の色のカラー表示のために色変換効率の良い蛍光素子が用いられているので、光損失の大きなカラーフィルタは不要である。
【0023】
ところで、本発明の第1および第2の表示装置ならびに第1および第2の電子機器において、バックライトが380nm〜420nmの波長帯の光を発するようになっており、かつ蛍光体層が、380nm〜420nmの波長帯の光を吸収し、吸収した光の波長よりも大きな波長の光を発光するようになっていることが好ましい。通常、表示装置に使用される各種透明部材は、380nmよりも短い波長帯の光を吸収し易く、380nm以上の波長帯の光を透過し易い。そのため、バックライトおよび蛍光体層が上述の構成となっている場合に、表示装置に各種透明部材が用いられているときには、表示装置内の各種透明部材による光吸収を抑制することができる。また、紫外光の吸収によって生じるような表示装置内の各種透明部材に対するダメージを低減することもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1および第2の蛍光素子、第1および第2の照明装置、第1および第2の表示装置ならびに第1および第2の電子機器によれば、蛍光体層の光入射側で発生した光が、蛍光体層の光射出側に位置する蛍光体によって進行を阻害される割合が少なくなるようにしたので、付活剤の使用量を抑えつつ、光取出効率の低下を最低限に抑えるか、または、付活剤の使用量を今までと同程度とした場合(つまり、蛍光体層全体における付活剤の濃度が本発明における蛍光体層の光入射側の付活剤の濃度と同程度となっている場合)と同程度の光取出効率を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成の一例を表す上面図および断面図である。
【図2】図1のバックライトの構成の一例を表す断面図である。
【図3】図1の液晶表示パネルの各画素の構成の一例を表す断面図である。
【図4】図3の蛍光素子の構成の一例を表す断面図である。
【図5】図3の蛍光素子の構成の他の例を表す断面図である。
【図6】蛍光体内の付活剤の濃度と、光吸収率、内部量子効率および外部量子効率との関係の一例を表す関係図である。
【図7】蛍光体層に対して光を入射させたときに蛍光体層から出てくる光の種類について説明するための模式図である。
【図8】蛍光体層が単層構造となっているときの蛍光体層およびフィルタ層の作用について説明するための模式図である。
【図9】蛍光体層が積層構造となっているときの蛍光体層およびフィルタ層の作用について説明するための模式図である。
【図10】一変形例に係る照明装置の構成の一例を表す断面図である。
【図11】一適用例に係る電子機器の構成の一例を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(表示装置)
液晶表示パネルに蛍光素子が設けられている例(図1〜図9)
2.変形例(照明装置)
バックライト上に蛍光素子が設けられている例(図10)
3.適用例(電子機器)
映像表示のために上記表示装置が用いられている例(図11)
【0027】
<1.実施の形態>
[構成]
図1(A)は、本発明の一実施の形態に係る表示装置1の上面構成の一例を表すものである。図1(B)は、図1(A)の表示装置1のA−A矢視方向の断面構成の一例を表すものである。なお、図1(A),(B)は模式的に表したものであり、実際の寸法、形状と同一とは限らない。
【0028】
表示装置1は、例えば、図1(A),(B)に示したように、バックライト10と、液晶表示パネル20とを備えたものである。この表示装置1において、バックライト10は液晶表示パネル20の背後に配置されている。液晶表示パネル20の表面のうち所定の領域(後述のシール材60で囲まれた領域と対向する部分)が各種画像やデータ等を表示する表示領域1Aとなっており、液晶表示パネル20の表面のうち表示領域1Aの周縁が非表示領域1Bとなっている。
【0029】
(バックライト10)
バックライト10は、例えば、図2(A)に示したように、光源11と、反射板12と、光学シート13とを有している。ここで、光源11は、例えば、一の面内に配置された複数の点状光源からなる。各点状光源は、380nm〜420nmの波長帯の光を発するものからなり、例えば、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲内にあるLEDからなる。そのようなLEDとしては、例えば、ピーク波長が405nmのブルーレイDVD用のLEDが挙げられる。反射板12は、光源11からの光を光学シート13側に戻すものであり、反射、散乱、拡散などの機能を有している。反射板12は、例えば、発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)などによって構成されている。反射板12の利用により、光源11からの光を効率的に利用することができる。光学シート13は、光源11からの光の面内輝度分布を均一化したり、光源11からの光の発散角や偏光状態を所望の範囲内に調整したりするものである。光学シート13は、例えば、図示しないが、拡散板、拡散シート、プリズムシート、反射型偏光素子、位相差板などから選ばれた1または複数の部材によって構成されている。なお、バックライト10は、例えば、図2(B)に示したように、導光板14の側面に光源11を設けたエッジライト型となっていてもよい。この場合には、光源11は、例えば、導光板14の側面に沿って一列に配列された複数の点状光源からなる。このとき、各点状光源は、380nm〜420nmの波長帯の光を発するものからなり、上述したようなLEDからなる。
【0030】
(液晶表示パネル20)
液晶表示パネル20は、複数の画素20Aが表示領域1A内に2次元配置された透過型の表示パネルであり、映像信号に応じて各画素20Aを駆動することによって画像を表示するものである。なお、図1(B)には、1つの画素20Aだけが例示されている。液晶表示パネル20は、例えば、図1(B)に示したように、所定の間隙を介して互いに対向する基板30,40と、基板30と基板40との間に設けられた液晶層50およびシール材60と、ドライバIC70とを備えている。なお、基板30が本発明の「第1基板および第1偏光板」を積層したものの一具体例に相当し、基板40が本発明の「第2基板および第2偏光板」を積層したものの一具体例に相当する。
【0031】
液晶層50は、バックライト10からの光を画素20Aごとに透過または遮断する機能を有している。液晶層50は、例えば、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super-twisted nematic)モード、ECB( Electrically Controlled Birefringence)モード、VA(Vertical Alignment)モードあるいはMVA(Multi-domain Vertical Alignment)モードで駆動するいわゆる縦電界方式の液晶分子を含んでいる。なお、液晶層50は、例えば、IPS(In Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード等の横電界方式の液晶分子を含んでいてもよい。シール材60は、液晶層50を封止するとともに、基板30および基板40を互いに貼り合わせるものである。シール材60は、例えば、図1(A)に示したように、液晶層50に使用される液晶を注入する注入口60Aを有している。シール材60によって区画された領域が、表示領域1Aに対応しており、シール材60によって区画された領域の外側の領域が、非表示領域1Bに対応している。なお、注入口60Aは封止材(図示せず)により封止されている。ドライバIC70は、各画素20Aを駆動するものであり、例えば、図1(A)に示したように、基板30の表面上に実装されている。
【0032】
図3は、液晶表示パネル20の断面構成をより具体的に表したものであり、具体的には、各画素20Aの断面構成の一例を表したものである。各画素20Aは、例えば、図3に示したように、赤色、緑色、青色の三原色を発光する3つのサブピクセル20R,20G,20Bで構成されている。ここで、サブピクセル20Rが赤色の光を発するものであり、後述する赤色蛍光体層45Rによる発光によって赤色の光を発する自発光タイプのサブピクセルである。また、サブピクセル20Gが緑色の光を発するものであり、後述する緑色蛍光体層45Gによる発光によって緑色の光を発する自発光タイプのサブピクセルである。また、サブピクセル20Bが青色の光を発するものであり、後述する青色蛍光体層45Bによる発光によって青色の光を発する自発光タイプのサブピクセルである。なお、各画素20Aは、3つのサブピクセル20R,20G,20Bとは異なる複数のサブピクセルからなっていてもよい。
【0033】
基板30は、例えば、図3に示したように、偏光板31、駆動基板32および配向膜33を液晶層50とは反対側から順に含むものである。基板40は、例えば、図3に示したように、配向膜41、透明基板42、偏光板43および蛍光素子48を液晶層50側から順に含むものである。
【0034】
ここで、偏光板31は、液晶表示パネル20の光入射側に配置された偏光板であり、偏光板43は液晶表示パネル20の光射出側に配置された偏光板である。偏光板31,43は、光学シャッターの一種であり、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。偏光板31,43はそれぞれ、例えば、偏光軸が互いに所定の角度だけ(例えば90度)異なるように配置されており、これによりバックライト10からの光が液晶層50を介して透過し、あるいは遮断されるようになっている。
【0035】
偏光板31の透過軸(図示せず)の向きは、バックライト10から射出された光を透過可能な範囲内に設定される。例えば、バックライト10から射出される光が垂直偏光光である場合には、偏光板31の透過軸は垂直方向を向いている。また、例えば、バックライト10から射出される光が水平偏光光である場合には、偏光板31の透過軸は水平方向を向いている。なお、バックライト10から射出される光は直線偏光光である場合に限られるものではなく、円偏光や、楕円偏光、無偏光であってもよい。
【0036】
偏光板43の透過軸(図示せず)の向きは、液晶層50を透過した光を透過可能な範囲内に設定される。例えば、偏光板31の透過軸の向きが水平方向となっている場合には、偏光板43の透過軸は偏光板31の透過軸と直交する方向(垂直方向)を向いている。偏光板31の透過軸の向きが垂直方向となっている場合には、偏光板43の透過軸は偏光板31の透過軸と直交する方向(水平方向)を向いている。
【0037】
駆動基板32は、可視光に対して透明な基板上に、信号線や走査線などの各種配線、スイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor)、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の透明導電性材料からなる画素電極、電極間絶縁膜などを備えたものである。TFTおよび画素電極は、画素20Aごとに設けられており、画素電極は、画素20Aごとの電極として機能する。透明基板42は、例えば、可視光に対して透明な基板上に、ITOやIZO等の透明導電性材料からなる共通電極などを備えたものである。共通電極は、当該共通電極および画素電極に印加された電圧によって生じる電界によって液晶層50を部分的に(画素20Aごとに)駆動するために設けられたものである。なお、液晶表示パネル20が横電界方式となっている場合には、上述の共通電極が透明基板42には形成されておらず、駆動基板32に形成されている。
【0038】
配向膜33,41は、液晶層50に接しており、液晶層50に含まれる液晶分子の配向を規制するものである。配向膜33,41は、例えば、ポリイミドなどの高分子材料をラビング処理することにより形成されたものである。
【0039】
ところで、液晶表示パネル20には、バックライト10からの光を、例えば、赤、緑および青の三原色にそれぞれ色分離するカラーフィルタは設けられておらず、その代わりに、上述した蛍光素子48が設けられている。蛍光素子48は、液晶表示パネル20の光射出側に設けられており、例えば、図3に示したように、蛍光体層45を有している。蛍光素子48は、さらに、蛍光体層45を間にして互いに対向するフィルタ層44,47を有している。なお、フィルタ層44,47は、必要に応じて省略することが可能である。
【0040】
蛍光体層45は、母材の一部を付活剤で置換することにより形成された蛍光体を含んで構成されており、例えば、硫化物またはリン酸塩を母材とし、希土類元素を付活剤として含む蛍光体を含んで構成されている。蛍光体層45は、例えば、そのような蛍光体の粉末をエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂などの樹脂に混合して構成されたものである。蛍光体層45は、例えば、上述した蛍光体の粉末をエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂などの樹脂に混合し薄膜状にしたものを、熱または紫外線などにより硬化し、それをパターニングすることにより形成されたものである。なお、蛍光体層45は、例えば、上述した蛍光体の粉末をエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂などの樹脂に混合したものを、スクリーン印刷、インクジェット印刷またはスプレイ塗布法などにより部分的に塗布し、それを熱または紫外線などにより硬化することにより形成されたものであってもよい。
【0041】
蛍光体層45は、サブピクセル20R,20G,20Bごとに蛍光体材料を異ならせた赤色蛍光体層45R、緑色蛍光体層45Gおよび青色蛍光体層45Bを有している。赤色蛍光体層45Rは、サブピクセル20Rに対応して設けられており、緑色蛍光体層45Gは、サブピクセル20Gに対応して設けられており、青色蛍光体層45Bは、サブピクセル20Bに対応して設けられている。赤色蛍光体層45Rは、例えば、Eu付活硫化物系の赤色蛍光体を含んで構成されている。緑色蛍光体層45Gは、例えば、Eu付活硫化物系の緑色蛍光体を含んで構成されている。青色蛍光体層45Bは、例えば、Eu付活リン酸塩系の青色蛍光体を含んで構成されている。
【0042】
蛍光体層45は、380nm〜420nmの波長帯の光を吸収し、吸収した光の波長よりも大きな波長の光を発光するようになっている。赤色蛍光体層45Rは、380nm〜420nmの波長帯の光を吸収し、赤色帯の波長の光を発光するようになっている。緑色蛍光体層45Gは、380nm〜420nmの波長帯の光を吸収し、緑色帯の波長の光を発光するようになっている。青色蛍光体層45Bは、380nm〜420nmの波長帯の光を吸収し、青色帯の波長の光を発光するようになっている。
【0043】
蛍光体層45は、例えば、図4に示したように、単層構造となっていてもよいし、例えば、図5(A),(B)に示したように、積層構造となっていてもよい。なお、図4、図5(A),(B)は、蛍光素子48の断面構成の一例をサブピクセル20R,20G,20B単位で表したものである。ここで、蛍光体層45が単層構造となっている場合には、蛍光体層45の厚さ方向の内部構成が連続的に変化している。蛍光体層45が積層構造となっている場合には、蛍光体層45の厚さ方向の内部構成が層ごとに段階的に変化している。なお、蛍光体層45の厚さ方向の内部構成については、後に詳述する。
【0044】
蛍光素子48は、さらに、例えば、図3に示したように、赤色蛍光体層45Rと緑色蛍光体層45Gとの間や、緑色蛍光体層45Gと青色蛍光体層45Bとの間、さらには、青色蛍光体層45Bと赤色蛍光体層45Rとの間に、遮光層46を有している。遮光層46は、それぞれ隣り合う蛍光体層が発光したときに混色が生じるのを抑制し、色純度を向上させるものである。なお、遮光層46は、蛍光体層45と同一層内に設けられていてもよいし、蛍光体層45とは異なる層内に設けられていてもよい。また、遮光層46は、必要に応じて省略することも可能である。
【0045】
フィルタ層44,47は、蛍光体層45を間にして互いに対向するように配置されたものである。フィルタ層44,47は、各サブピクセル20R,20G,20Bにおいて共通して設けられている。フィルタ層44は、蛍光体層45との関係で、液晶層50側(光入射側)に配置されたものであり、380nm〜420nmの波長帯の光を透過させ、蛍光体層45で発光した光を反射するバンドパスフィルタである。一方、フィルタ層47は、蛍光体層45との関係で、液晶層50とは反対側(光射出側)に配置されたものであり、380nm〜420nmの波長帯の光を反射または吸収し、蛍光体層45で発光した光を透過するバンドパスフィルタである。
【0046】
次に、蛍光体層45の厚さ方向の内部構成について説明する。
【0047】
通常、蛍光体の光吸収率は、例えば、図6(A)に示したように、付活剤の蛍光体内の濃度が大きくなるに従って大きくなる。一方、蛍光体の内部量子効率は、例えば、図6(B)に示したように、付活剤の蛍光体内の濃度が大きくなるに従って小さくなる。なお、蛍光体の光吸収率と蛍光体の内部量子効率とを互いに掛け合わせた値が蛍光体の外部量子効率となることから、蛍光体の外部量子効率は、例えば、図6(C)に示したように、付活剤の蛍光体内の濃度が大きくなるにつれて大きくなり、付活剤の蛍光体内の濃度が所定の大きさとなったときに最も大きくなり、付活剤の蛍光体内の濃度がさらに大きくなるにつれて小さくなる。つまり、付活剤の蛍光体内の濃度には、蛍光体の外部量子効率が最大となる濃度が存在する。
【0048】
従来の手法では、通常、付活剤の蛍光体内の濃度は、蛍光体の外部量子効率が最大となるように設定される。これは、このようにした方が、蛍光体層から取り出すことのできる光量を最大化することができると考えられていたためである。しかし、実際には、蛍光体層に含まれる蛍光体の濃度および粒径ならびに蛍光体層の厚さによって、蛍光体層から取り出すことのできる光量が大きく変動する。例えば、特許文献4の段落0088等に記載されているように、蛍光体層に含まれる蛍光体の濃度が中程度となっている場合には、蛍光体層が厚くなるにつれて、蛍光体層から取り出すことのできる光量が徐々に飽和し、蛍光体層に含まれる蛍光体の濃度が高い場合には、蛍光体層が厚くなるにつれて、蛍光体層から取り出すことのできる光量が徐々に低下する。そのため、従来の手法では、蛍光体層の光取出効率を大きくすることが容易ではなかった。
【0049】
一方、本実施の形態の蛍光体層45では、蛍光体層の光取出効率を大きくすることが容易であり、付活剤の使用量をできるだけ少なくした場合であっても、蛍光体層45全体としての光取出効率の低下を最低限に抑えるか、または、付活剤の使用量を今までと同程度とした場合と同程度の光取出効率を実現することができるようになっている。具体的には、蛍光体層45では、蛍光体層45の厚さ方向において、付活剤の蛍光体内の濃度が不均一となっている。
【0050】
例えば、図6(C)に示したように、蛍光体の外部量子効率が最も大きくなるときの付活剤の蛍光体内の濃度をAとし、濃度Aよりも小さな濃度をBとし、濃度Aよりも大きな濃度をCとする。なお、付活剤の蛍光体内の濃度がCとなっているときの蛍光体の外部量子効率が、付活剤の蛍光体内の濃度がBとなっているときの蛍光体の外部量子効率よりも大きいものとする。このとき、蛍光体層45は、付活剤の蛍光体内の濃度が光入射側において濃度Aとなっており、光射出側において濃度Bとなっていることが好ましい。なお、蛍光体層45は、付活剤の蛍光体内の濃度が光入射側において濃度Cとなっており、光射出側において濃度Bとなっていてもよい。いずれにおいても、蛍光体層45は、光射出側の方が光入射側の方よりも蛍光体内の付活剤の濃度が低くなるように構成されている。
【0051】
蛍光体層45は、例えば、光入射面(例えば、蛍光体層45とフィルタ層44との界面)において蛍光体内の付活剤の濃度が最も高くなるとともに光射出面(例えば、蛍光体層45とフィルタ層47との界面)において蛍光体内の付活剤の濃度が最も低くなるように構成されている。ここで、蛍光体層45が単層構造となっている場合には、蛍光体層45は、例えば、光入射面から光射出面に向かうにつれて蛍光体内の付活剤の濃度が連続して変化(減少)するような構成となっている。また、蛍光体層45が積層構造となっている場合には、蛍光体層45は、例えば、蛍光体内の付活剤の濃度が互いに異なる複数の層を積層して構成されている。例えば、図5(A)に示したように、蛍光体層45が2つの層45a、45bの積層体となっている場合に、光射出側の層45bにおける蛍光体内の付活剤の濃度が光入射側の層45aにおける蛍光体内の付活剤の濃度よりも低くなっている。また、例えば、図5(B)に示したように、蛍光体層45が5つの層45c〜45gの積層体となっている場合に、蛍光体内の付活剤の濃度が、45c、45d、45e、45f、45gの順に低くなっている。なお、蛍光体内の付活剤の濃度が複数の層で同一となっていてもよい。例えば、蛍光体内の付活剤の濃度が45c、45d、45eにおいて同一となっており、かつ45e、45f、45gの順に低くなっていてもよい。
【0052】
ところで、蛍光体層45は、上述したような濃度分布に起因して、蛍光体層45の厚さ方向において、蛍光体の光吸収率および蛍光体の内部量子効率が不均一となっている。具体的には、蛍光体層45は、図4、図5(A),(B)に示したように、所定の波長帯の光に対して、光入射側の方が光射出側の方よりも蛍光体の光吸収率が高く、かつ蛍光体の内部量子効率が低くなるように構成されている。
【0053】
蛍光体層45は、例えば、光入射面(例えば、蛍光体層45とフィルタ層44との界面)において蛍光体の光吸収率が最も高くなるとともに光射出面(例えば、蛍光体層45とフィルタ層47との界面)において蛍光体の内部量子効率が最も高くなるように構成されている。ここで、蛍光体層45が単層構造となっている場合には、蛍光体層45は、例えば、光入射面から光射出面に向かうにつれて蛍光体の光吸収率および蛍光体の内部量子効率が連続して変化するような構成となっている。具体的には、例えば、蛍光体層45は、例えば、光入射面から光射出面に向かうにつれて蛍光体の光吸収率が連続して変化(減少)するとともに、光入射面から光射出面に向かうにつれて蛍光体の内部量子効率が連続して変化(増加)するような構成となっている。また、蛍光体層45が積層構造となっている場合には、蛍光体層45は、例えば、蛍光体の光吸収率および蛍光体の内部量子効率が互いに異なる複数の層を積層して構成されている。例えば、図5(A)に示したように、蛍光体層45が2つの層45a、45bの積層体となっている場合に、光入射側の層45aにおける蛍光体の光吸収率が光射出側の層45bにおける蛍光体の光吸収率よりも高くなっており、かつ光射出側の層45bにおける蛍光体の内部量子効率が光入射側の層45aにおける蛍光体の内部量子効率よりも高くなっている。また、例えば、図5(B)に示したように、蛍光体層45が5つの層45c〜45gの積層体となっている場合に、蛍光体の光吸収率は、45g、45f、45e、45d、45cの順に高くなっており、蛍光体の内部量子効率は、45c、45d、45e、45f、45gの順に高くなっている。なお、蛍光体の光吸収率が複数の層で同一となっていたり、蛍光体の内部量子効率が複数の層で同一となっていたりしてもよい。例えば、蛍光体の光吸収率が45c、45d、45eにおいて同一となっており、かつ45g、45f、45eの順に高くなっていてもよい。同様に、例えば、蛍光体の内部量子効率が45c、45d、45eにおいて同一となっており、45e、45f、45gの順に高くなっていてもよい。
【0054】
次に、蛍光素子48の作用および効果について、比較例に係る蛍光素子の作用と対比して説明する。
【0055】
図7は、蛍光体層100に対して所定の入射光L1が入射したときに、蛍光体層100から出てくる光の種類を模式的に表したものである。なお、入射光L1は、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲内にあるLED光である。図7において、発光光L2は、入射光L1のうち蛍光体層100で吸収されたのち、波長変換されて入射光L1の進行方向に出力された光を指している。また、図7において、発光光L3は、入射光L1のうち蛍光体層100で吸収されたのち、波長変換されて入射光L1の進行方向とは反対側に出力された光を指している。また、図7において、透過光L4は、入射光L1のうち蛍光体層100で吸収されずに入射光L1の進行方向に出力された光を指している。また、図7において、戻り光L5は、入射光L1のうち蛍光体層100で反射、散乱されることにより入射光L1の進行方向とは反対側に出力された光を指している。
【0056】
図8(A)〜(C)は、比較例に係る蛍光素子の作用について模式的に表したものである。図8(A)は、付活剤の蛍光体内の濃度が厚さ方向において均一となっている蛍光体層145のみからなる蛍光素子の作用について模式的に表したものである。図8(B)は、蛍光体層145の光入射側にフィルタ層44が設けられた蛍光素子の作用について模式的に表したものである。図8(C)は、蛍光体層145の光入射側にフィルタ層44が設けられ、蛍光体層145の光射出側にフィルタ層47が設けられた蛍光素子の作用について模式的に表したものである。図9は、本実施の形態の表示装置1に使用されている蛍光素子48の作用について模式的に表したものである。
【0057】
図8(A)の蛍光素子では、入射光L1が蛍光体層145に入射すると、入射光L1の一部は、蛍光体層145内に分布する蛍光体粒子145Aに吸収され、蛍光体粒子145Aが可視光領域の所定の色の可視光を発光する。この可視光は蛍光体粒子145Aに対して等方的に広がっていくので、入射光L1の進行方向に進む可視光(発光光L2)のほかに入射光L1の進行方向とは反対側に進む可視光(発光光L3)も存在する。入射光L1の一部は、蛍光体粒子145Aに吸収されずに蛍光体層145を透過し、入射光L1の進行方向に出力されたり、蛍光体粒子145Aによって反射、散乱されることにより入射光L1の進行方向とは反対側に出力されたりする。このとき、蛍光体粒子145Aに吸収されなかった光は、観測者に観測されることなく、光のロスとして無駄な発光となる。
【0058】
図8(B)の蛍光素子では、入射光L1がフィルタ層44を介して蛍光体層145に入射すると、入射光L1の一部は、蛍光体層145内に分布する蛍光体粒子145Aに吸収され、蛍光体粒子145Aが可視光領域の所定の色の可視光を発光する。また、入射光L1のうち、蛍光体粒子145Aによって反射、散乱されることにより入射光L1の進行方向とは反対側に向かう光(戻り光L5)は、フィルタ層44での反射により蛍光体層145に戻される。その結果、反射光は蛍光体粒子145Aに吸収され、蛍光体粒子145Aが可視光領域の所定の色の可視光を発光する。このように、図8(B)の蛍光素子では、戻り光L5も所定の色の可視光に変換されるので、その分だけ光のロスが減少する。
【0059】
図8(C)の蛍光素子では、入射光L1がフィルタ層44を介して蛍光体層145に入射すると、入射光L1の一部は、蛍光体層145内に分布する蛍光体粒子145Aに吸収され、蛍光体粒子145Aが可視光領域の所定の色の可視光を発光する。また、入射光L1のうち、蛍光体粒子145Aによって反射、散乱されることにより入射光L1の進行方向とは反対側に向かう光(戻り光L5)は、フィルタ層44での反射により蛍光体層145に戻される。その結果、反射光は蛍光体粒子145Aに吸収され、蛍光体粒子145Aが可視光領域の所定の色の可視光を発光する。さらに、入射光L1のうち、蛍光体粒子145Aに吸収されずに蛍光体層145を透過し、入射光L1の進行方向に出力された光(透過光L4)は、フィルタ層47での反射により蛍光体層145に戻される。その結果、反射光は蛍光体粒子145Aに吸収され、蛍光体粒子145Aが可視光領域の所定の色の可視光を発光する。このように、図8(C)の蛍光素子では、戻り光L5だけでなく透過光L4も所定の色の可視光に変換されるので、その分だけ光のロスがさらに減少する。
【0060】
一方、本実施の形態の蛍光素子48(図9の蛍光素子48)では、蛍光体層45において、光射出側の方が光入射側の方よりも蛍光体内の付活剤の濃度が低くなっている。また、蛍光体層45において、光入射面側の部位が光射出面側の部位よりも、蛍光体の光吸収率が高くなっており、かつ蛍光体の内部量子効率が低くなっている。そのため、戻り光L5および透過光L4が所定の色の可視光に変換されるだけでなく、蛍光体層45内において入射光L1の進行方向に向かう所定の色の可視光が蛍光体層45のうち光射出側に分布する蛍光体粒子45Aによって進行を阻害される割合が少なくなっている。さらに、蛍光体層45に入射した光が蛍光体層45の光射出側にまで透過してくる量が多くなるので蛍光体層45の光射出側の部位での発光量が多くなる。加えて、蛍光体層45のうち光射出側で蛍光体粒子45Aによって反射、散乱されることにより入射光L1の進行方向とは反対側に向かう光(戻り光L5)が、蛍光体層45のうち光入射側で、光吸収率の高い蛍光体粒子45Aに吸収され、蛍光体粒子45Aが可視光領域の所定の色の可視光を発光する。その結果、付活剤の使用量を、付活剤濃度が外部量子効率が最大となる量に設定されているときの付活剤の使用量よりも抑えつつ、光取出効率の低下を最低限に抑えるか、または、付活剤の使用量を、付活剤濃度が外部量子効率が最大となる量に設定されているときの付活剤の使用量と同程度とした場合と同程度の光取出効率を実現することができる。
【0061】
<2.変形例>
上記実施の形態では、蛍光素子48は、バックライト10からの光を変調する液晶層50を含んだ液晶パネル20内に設けられていたが、例えば、図10に示したように、単独で、バックライト10の直上に設けられていてもよい。この場合、蛍光素子48はバックライト10とともに、照明装置2を構成することになる。
【0062】
また、上記実施の形態では、フィルタ層44,47が蛍光体層45に直接に接している場合が例示されていたが、蛍光体層45に直接に接していなくてもよい。例えば、図示しないが、フィルタ層44,47がともに、ガラス板や樹脂フィルムなどの基材の上に形成され、基材を介して蛍光体層45に接するようになっていてもよい。
【0063】
<3.適用例>
次に、上記実施の形態およびその変形例に係る表示装置1の一適用例について説明する。図11は、本適用例に係る電子機器3の概略構成の一例を表す斜視図である。電子機器3は、携帯電話機であり、例えば、図11に示したように、本体部111と、本体部111に対して開閉可能に設けられた表示体部112とを備えている。本体部111は、操作ボタン115と、送話部116を有している。表示体部112は、表示装置113と、受話部117とを有している。表示装置113は、電話通信に関する各種表示を、表示装置113の表示画面114に表示するようになっている。電子機器3は、表示装置113の動作を制御するための制御部(図示せず)を備えている。この制御部は、電子機器3全体の制御を司る制御部の一部として、またはその制御部とは別に、本体部111または表示体部112の内部に設けられている。
【0064】
表示装置113は、上記実施の形態に係る表示装置1と同一の構成を備えている。これにより、表示装置113において、低消費電力で、高輝度が得られる。
【0065】
なお、上記実施の形態およびその変形例に係る表示装置1を適用可能な電子機器としては、以上に説明した携帯電話機等の他にも、パーソナルコンピュータ、液晶テレビ、ビューファインダ型またはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話機、POS端末器等が挙げられる。
【符号の説明】
【0066】
1…表示装置、1A…表示領域、1B…非表示領域、2…照明装置、3…電子機器、10…バックライト、11…光源、12…反射板、13…光学シート、14…導光板、20…液晶表示パネル、20A…画素、30,40…基板、31,43…偏光板、32…駆動基板、33,41…配向膜、44,47…フィルタ層、45,100,145…蛍光体層、45A,145A…蛍光体粒子、45a〜45g…層、45R…赤色蛍光体層、45G…緑色蛍光体層、45B…青色蛍光体層、46…遮光層、48…蛍光素子、50…液晶層、60…シール材、60A…注入口、70…ドライバIC、111…本体部、112…表示体部、113…表示装置、114…表示画面、115…操作ボタン、116…送話部、117…受話部、L1…入射光、L2,L3…発光光、L4…透過光、L5…戻り光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する光入射面および光射出面を有する蛍光体層を備え、
前記蛍光体層は、母材の一部を付活剤で置換することにより形成された蛍光体を含んで構成されており、かつ所定の波長帯の光に対して、前記光入射面側の方が前記光射出面側の方よりも前記蛍光体の光吸収率が高く、かつ前記蛍光体の内部量子効率が低くなるように構成されている
蛍光素子。
【請求項2】
前記蛍光体層は、前記蛍光体の光吸収率および前記蛍光体の内部量子効率が互いに異なる複数の層を積層して構成されている
請求項1に記載の蛍光素子。
【請求項3】
前記蛍光体層は、前記光入射面において前記蛍光体の光吸収率が最も高くなるとともに前記光射出面において前記蛍光体の内部量子効率が最も高くなるように構成されている
請求項2に記載の蛍光素子。
【請求項4】
前記蛍光体層は、前記光射出面側の方が前記光入射面側の方よりも前記蛍光体内の付活剤の濃度が低くなるように構成されている
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の蛍光素子。
【請求項5】
前記蛍光体層は、前記蛍光体内の付活剤の濃度の互いに異なる複数の層を積層して構成されている
請求項4に記載の蛍光素子。
【請求項6】
前記蛍光体層は、前記蛍光体内の付活剤の濃度が前記光入射面において最も高くなるとともに前記光射出面において最も低くなるように構成されている
請求項5に記載の蛍光素子。
【請求項7】
互いに対向する光入射面および光射出面を有する蛍光体層を備え、
前記蛍光体層は、母材の一部を付活剤で置換することにより形成された蛍光体を含んで構成されており、かつ前記光射出面側の方が前記光入射面側の方よりも前記蛍光体内の付活剤の濃度が低くなるように構成されている
蛍光素子。
【請求項8】
前記蛍光体層は、前記蛍光体内の付活剤の濃度の互いに異なる複数の層を積層して構成されている
請求項7に記載の蛍光素子。
【請求項9】
前記蛍光体層は、前記蛍光体内の付活剤の濃度が前記光入射面において最も高くなるとともに前記光射出面において最も低くなるように構成されている
請求項8に記載の蛍光素子。
【請求項10】
前記蛍光体層は、前記光入射面側の方が前記光射出面側の方よりも、前記蛍光体の外部量子効率が高くなるように構成されている
請求項1、請求項2、請求項3、請求項7、請求項8または請求項9に記載の蛍光素子。
【請求項11】
前記蛍光体層は、前記蛍光体の外部量子効率が前記光入射面において最も高くなるとともに前記光射出面において最も低くなるように構成されている
請求項10に記載の蛍光素子。
【請求項12】
前記蛍光体層は、380nm〜420nmの波長帯の光を吸収し、吸収した光の波長よりも大きな波長の光を発光するようになっており、
当該蛍光素子は、前記蛍光体層との関係で前記光入射面側に、380nm〜420nmの波長帯の光を透過させ、前記蛍光体層で発光した光を反射するフィルタ層をさらに備えた
請求項1、請求項2、請求項3、請求項7、請求項8または請求項9に記載の蛍光素子。
【請求項13】
前記蛍光体層は、380nm〜420nmの波長帯の光を吸収し、吸収した光の波長よりも大きな波長の光を発光するようになっており、
当該蛍光素子は、前記蛍光体層との関係で前記光射出面側に、380nm〜420nmの波長帯の光を反射または吸収し、前記蛍光体層で発光した光を透過させるフィルタ層を備えた
請求項1、請求項2、請求項3、請求項7、請求項8または請求項9に記載の蛍光素子。
【請求項14】
所定の波長帯の光を発する面発光源と、
前記面発光源の直上に、前記面発光源と所定の空隙を介して対向配置され、かつ前記面発光源からの光を波長変換する蛍光素子と
を備え、
前記蛍光素子は、
互いに対向する光入射面および光射出面を有する蛍光体層を有し、
前記蛍光体層は、母材の一部を付活剤で置換することにより形成された蛍光体を含んで構成されており、かつ所定の波長帯の光に対して、前記光入射面側の方が前記光射出面側の方よりも前記蛍光体の光吸収率が高く、かつ前記蛍光体の内部量子効率が低くなるように構成されている
照明装置。
【請求項15】
前記蛍光体層は、前記光射出面側の方が前記光入射面側の方よりも前記蛍光体内の付活剤の濃度が低くなるように構成されている
請求項14に記載の照明装置。
【請求項16】
所定の波長帯の光を発する面発光源と、
前記面発光源の直上に、前記面発光源と所定の空隙を介して対向配置され、かつ前記面発光源からの光を波長変換する蛍光素子と
を備え、
前記蛍光素子は、
互いに対向する光入射面および光射出面を有する蛍光体層を有し、
前記蛍光体層は、母材の一部を付活剤で置換することにより形成された蛍光体を含んで構成されており、かつ前記光射出面側の方が前記光入射面側の方よりも前記蛍光体内の付活剤の濃度が低くなるように構成されている
照明装置。
【請求項17】
映像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルを背後から照明すると共に、所定の波長帯の光を発するバックライトと
を備え、
前記表示パネルは、第1偏光板、第1基板、液晶層、第2基板、第2偏光板および蛍光素子を前記バックライト側から順に有し、
前記蛍光素子は、
互いに対向する光入射面および光射出面を有する蛍光体層を有し、
前記蛍光体層は、母材の一部を付活剤で置換することにより形成された蛍光体を含んで構成されており、かつ所定の波長帯の光に対して、前記光入射面側の方が前記光射出面側の方よりも前記蛍光体の光吸収率が高く、かつ前記蛍光体の内部量子効率が低くなるように構成されている
表示装置。
【請求項18】
前記蛍光体層は、前記光射出面側の方が前記光入射面側の方よりも前記蛍光体内の付活剤の濃度が低くなるように構成されている
請求項17に記載の表示装置。
【請求項19】
映像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルを背後から照明すると共に、所定の波長帯の光を発するバックライトと
を備え、
前記表示パネルは、第1偏光板、第1基板、液晶層、第2基板、第2偏光板および蛍光素子を前記バックライト側から順に有し、
前記蛍光素子は、
互いに対向する光入射面および光射出面を有する蛍光体層を有し、
前記蛍光体層は、母材の一部を付活剤で置換することにより形成された蛍光体を含んで構成されており、かつ前記光射出面側の方が前記光入射面側の方よりも前記蛍光体内の付活剤の濃度が低くなるように構成されている
表示装置。
【請求項20】
表示装置を備え、
前記表示装置は、
映像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルを背後から照明すると共に、所定の波長帯の光を発するバックライトと
を有し、
前記表示パネルは、第1偏光板、第1基板、液晶層、第2基板、第2偏光板および蛍光素子を前記バックライト側から順に有し、
前記蛍光素子は、
互いに対向する光入射面および光射出面を有する蛍光体層を有し、
前記蛍光体層は、母材の一部を付活剤で置換することにより形成された蛍光体を含んで構成されており、かつ所定の波長帯の光に対して、前記光入射面側の方が前記光射出面側の方よりも前記蛍光体の光吸収率が高く、かつ前記蛍光体の内部量子効率が低くなるように構成されている
電子装置。
【請求項21】
前記蛍光体層は、前記光射出面側の方が前記光入射面側の方よりも前記蛍光体内の付活剤の濃度が低くなるように構成されている
請求項20に記載の電子機器。
【請求項22】
表示装置を備え、
前記表示装置は、
映像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルを背後から照明すると共に、所定の波長帯の光を発するバックライトと
を有し、
前記表示パネルは、第1偏光板、第1基板、液晶層、第2基板、第2偏光板および蛍光素子を前記バックライト側から順に有し、
前記蛍光素子は、
互いに対向する光入射面および光射出面を有する蛍光体層を有し、
前記蛍光体層は、母材の一部を付活剤で置換することにより形成された蛍光体を含んで構成されており、かつ前記光射出面側の方が前記光入射面側の方よりも前記蛍光体内の付活剤の濃度が低くなるように構成されている
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−118239(P2012−118239A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267078(P2010−267078)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】