説明

血液成分吸着用担体

【課題】従来品と比較して、活性化した白血球及びサイトカインの双方を高効率に血液から吸着除去できる血液成分吸着担体を提供すること。
【解決手段】本発明は、水不溶性担体の表面の官能基に糖鎖が共有結合している、血液成分吸着用担体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液成分吸着用担体に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性サイトカイン等の液性因子は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病等の炎症性疾患の病因に深く関与していることが知られており、これらの液性因子を低分子医薬品や抗体等の生物製剤で不活化することで炎症性疾患を治療する試みがなされている。しかしながら、これらの液性因子は、単独で炎症部位に作用しているのではなく、複数の液性因子が相乗的に作用することで炎症性疾患を発症及び進行させるため、最近では、液性因子の供給源である活性化した白血球を生体から除去することに注目が集まっている。
【0003】
活性化した白血球等の血液成分を生体から除去する方法としては、吸着用担体を充填したカラムを用いて炎症性疾患患者の血液を体外循環させ、所望の血液成分を選択的に吸着除去する方法が知られ、吸着用担体としては、顆粒球を吸着する担体(特許文献1)や活性化した白血球とサイトカインを同時に吸着する担体(特許文献2及び3)が開発されている。
【0004】
一方、単球等の白血球が糖鎖を特異的に認識し、糖鎖と親和性を有することが報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−168706号公報
【特許文献2】特開2006−312804号公報
【特許文献3】特開平7−080062号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Largentら、J. Biol. Chem.、1984年、第259巻、p.1764−1769
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、既存の吸着担体については、液性因子の供給源である活性化した白血球の吸着性能のさらなる向上が望まれていた。
【0008】
一方で、既存の吸着担体の表面に糖鎖を結合することは、例えば、水不溶性担体にサイトカイン吸着性能を付与するアミノ基の数を減少させ、サイトカイン吸着性能を低下させることなるため、サイトカインの吸着性能を維持した状態で白血球の吸着性能を上げることは困難なことであった。
【0009】
そこで本発明は、従来品と比較して、活性化した白血球及びサイトカインの双方を高効率に血液から吸着除去できる血液成分吸着担体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、サイトカイン吸着性能を維持しながらも活性化した白血球を高効率で吸着可能な血液成分吸着用担体を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(8)に記載した血液成分吸着用担体及び血液成分吸着カラムを提供する。
(1) 水不溶性担体の表面の官能基に糖鎖が共有結合している、血液成分吸着用担体。
(2) サイトカイン及び白血球の双方を吸着除去するための、(1)記載の血液成分吸着用担体。
(3) 上記糖鎖は、上記官能基が有するアミノ基と還元末端側で共有結合している、(1)又は(2)記載の血液成分吸着用担体。
(4) 上記糖鎖は、ラクトース又はマルトースである、(1)〜(3)のいずれかに記載の血液成分吸着用担体。
(5) 上記アミノ基は、ポリエチレンポリアミンの官能基である、(1)〜(4)のいずれかに記載の血液成分吸着用担体。
(6) 上記ポリエチレンポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びテトラエチレンペンタミンからなる群から選択される、(5)記載の血液成分吸着用担体。
(7) 上記サイトカインは、インターロイキン−6又はインターロイキン−8である、(1)〜(6)のいずれかに記載の血液成分吸着用担体。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の血液成分吸着用担体が充填された、血液成分吸着カラム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の血液成分吸着用担体によれば、サイトカインの供給源である活性化した白血球を高効率で吸着することで、炎症性疾患患者の血液からこれを除去し、炎症性疾患を治療することができる。さらには、活性化した白血球のみならずサイトカインについても、これを血液から吸着除去することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の血液成分吸着用担体は、水不溶性担体の表面の官能基に糖鎖が共有結合していることを特徴とする。
【0014】
「水不溶性担体」としては、例えば、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート若しくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、テフロン等のフッ素化ポリマー、ポリ(p−フェニレンエーテルスルホン)等のポリスルホン系重合体、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン又はアクリルポリマーあるいはこれら高分子化合物をブレンド、アロイ化したものが挙げられるが、水不溶性担体の表面の修飾容易性の観点からはポリスチレンが好ましく、耐熱性又は不織布の形状保持の観点からはポリプロピレン又はポリプロピレン−ポリエチレン共重合体が好ましい。
【0015】
「官能基」は、水不溶性担体に直接結合した反応性官能基部分と、反応性官能基部分に結合したアミノ基部分とから構成されることが好ましい。
【0016】
水不溶性担体とアミノ基部分との結合を媒介する反応性官能基としては、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基若しくはハロゲン化アルキル基等の活性ハロゲン基、エポキサイド基、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン酸基又は酸無水物基が挙げられるが、適度な反応性を有する観点から、活性ハロゲン基が好ましく、ハロアセトアミドメチル基がより好ましい。
【0017】
アミノ基部分は、水不溶性担体にサイトカイン吸着性能を付与する役割を果たすが、上記のアミノ基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N−メチル−N−エチル−ヘキシルアミン又は直鎖状アミノ基であるポリエチレンポリアミンが挙げられる。
【0018】
水不溶性担体へのアミノ基部分の結合密度は、小さすぎる場合にはサイトカイン吸着性能が発揮されない一方で、大きすぎる場合には水不溶性担体の物理的強度が低下してしまうことから、水不溶性担体の繰り返し単位当たり0.01〜2.0モルが好ましく、0.1〜1.0モルがより好ましい。
【0019】
「糖鎖」とは、各種の糖がグリコシド結合によってつながりあった一群の化合物をいい、例えば、コスト及び入手の容易さからスクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等の2糖類が挙げられるが、炎症性疾患に直接関与している好中球や単球に対して親和性があるガラクトース又はグルコースを末端に含む、ラクトース又はマルトースが好ましい。
【0020】
また、本発明の血液成分吸着用担体は、上記糖鎖が、上記官能基が有するアミノ基と還元末端側で共有結合していることが好ましい。
【0021】
上記のアミノ基は、ポリエチレンポリアミン由来のアミノ基であることが好ましく、該ポリエチレンポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミンであることがより好ましい。
【0022】
「血液成分吸着用担体」とは、血液から血液成分を吸着除去可能な材料をいう。
【0023】
血液成分とは、血液を構成する成分のことをいい、例えば、赤血球、白血球若しくは血小板等の血球成分又はサイトカイン等の液性因子が挙げられるが、炎症性疾患の治療を目的とする場合には、活性化した白血球及びサイトカインが選択的に吸着除去されることが好ましい。
【0024】
サイトカインとは、特定の細胞に情報を伝達する、細胞から分泌されるタンパク質をいい、例えば、インターロイキン、腫瘍壊死因子−α、トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ、血管新生増殖因子および免疫抑制酸性蛋白が挙げられる。
【0025】
インターロイキンとは、白血球が分泌し、免疫系の調節に機能するサイトカインをいい、例えば、インターロイキン−1、インターロイキン−6(以下、IL−6)、インターロイキン−8(以下、IL−8)、インターロイキン−10が挙げられるが、炎症性疾患の治療を目的とする場合には、代表的な炎症性サイトカインであるIL−6及び炎症部位に好中球を呼び寄せる走化性因子であるIL−8が吸着除去されることが好ましい。
【0026】
白血球は、顆粒球、リンパ球及び単球の3つに分類され、さらに顆粒球はギムザ染色による染色のされ方の違いによって、好中球、好酸球及び好塩基球の3つに分類されるが、炎症性疾患の治療を目的とする場合には、炎症部位に直接作用している好中球及び単球が選択的に吸着除去されることが好ましい。
【0027】
吸着とは、血液成分が血液成分吸着用担体に付着し、容易に剥離しない状態をいう。
【0028】
上記血液成分吸着用担体の形状としては、例えば、繊維又は粒子が挙げられる。
【0029】
上記繊維の形状としては、例えば、織布、不織布、綿布又は中空糸が挙げられる。
【0030】
繊維形状が不織布の場合には、その形状保持のためにポリプロピレン等の骨格材繊維を入れることも好ましい。
【0031】
上記繊維の繊維径は、白血球の貪食能発揮の観点から0.5〜20μmが好ましく、吸着性能安定化の観点から4〜20μmがより好ましく、好中球の選択的な吸着除去の観点から4〜10μmがさらに好ましい。
【0032】
白血球の貪食能とは、活性化した好中球等の白血球が、ヒト等の体内に侵入した細菌等を捕らえ、これを食べようとする性質をいう。
【0033】
上記繊維の繊維径が10μm未満である場合、血液成分吸着用担体の強度を確保する観点からより太径の繊維を混合してもよいが、このような太径の繊維の繊維径は、10〜50μmが好ましい。
【0034】
繊維径とは、繊維の小片サンプル10個をランダムに採取して、走査型電子顕微鏡を用いて1000〜3000倍の写真をそれぞれ撮影し、各写真あたり10箇所(計100箇所)の繊維の直径を測定した値の平均値をいう。
【0035】
上記血液成分吸着用担体が充填された本発明の血液成分吸着カラムの容器形状としては、血液の入口と出口を有する容器であればよいが、例えば、円柱状、三角柱状、四角柱状、六角柱状、八角柱状等の角柱状容器が挙げられ、血液成分吸着用担体を積層状に充填できる容器、血液成分吸着用担体を円筒状に巻いたものを充填できる容器又は血液が円筒の外周より入り内側へと流れて容器外に出る容器が好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の血液成分吸着カラムについて、実験例により具体的に説明する。
【0037】
(PP製不織布の作製)
36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合によりなるものを次の成分を用いて、紡糸速度800m/min、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。

島の芯成分;ポリプロピレン
島の鞘成分;ポリスチレン90wt%、ポリプロピレン10wt%
海成分;エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸3wt%含む共重合ポリエステル
複合比率(重量比率);芯:鞘:海=45:40:15

【0038】
この繊維85wt%と直径20μmのポリプロピレン繊維15wt%からなる不織布を作製した後、この不織布2枚の間にシート状のポリプロピレン製ネット(厚み0.5mm、単糸径0.3mm、開口部2mm角)を挟み、ニードルパンチすることによって3層構造の不織布(以下、PP製不織布)を得た。
【0039】
(PSt+PP製不織布の作製)
PP製不織布を95℃、3wt%の水酸化ナトリウム水溶液で処理し、海成分を溶解することによって、芯鞘繊維の直径が5μmで、嵩密度が0.02g/cmの不織布(PSt+PP製不織布、以下、不織布A)を作製した。
【0040】
(テトラエチレンペンタミン結合PSt+PP製不織布の作製)
不織布Aに、ニトロベンゼン46wt%、硫酸46wt%、パラホルムアルデヒド1wt%、N−メチロール−α−クロルアセトアミド(以下、NMCA)7wt%を10℃以下で混合、撹拌、溶解しNMCA化反応液を調製した。このNMCA化反応液を5℃にし、不織布A1gに対し、約40mLの固液比でNMCA化反応液を加え、水浴中で反応液を5℃に保ったまま2時間反応させた。その後、反応液から不織布を取り出し、NMCA反応液と同量のニトロベンゼンに浸漬し洗浄した。続いて不織布を取り出し、メタノールに浸漬し洗浄を行い、α−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン不織布(中間体1)を得た。また、テトラエチレンペンタミン(以下、TEPA)の濃度が20mM、トリエチルアミンの濃度が473mMとなるようにそれぞれをジメチルスルホキシド(以下、DMSO)500mLに溶解した液に、10gの中間体1を浸し、反応は40℃で3時間行い、DMSO・メタノールで洗浄した後で水洗し、真空乾燥することにより、TEPA結合PSt+PP製不織布(以下、不織布B)を得た。
【0041】
(エチレンジアミン結合PSt+PP製不織布の作製)
TEPAの代わりにエチレンジアミン(以下、EDA)を用いた以外は、不織布Bを得るのと同様の方法で、EDA結合PSt+PP製不織布(以下、不織布C)を得た。
【0042】
(マルトース結合不織布Bの作製)
マルトノラクトン200mg(0.586mmol)を20mLのメタノールに溶解させ、これを不織布Cを浸した20mLのメタノールに加えて3日間振盪し、その後純水で洗浄してマルトース結合不織布B(以下、不織布D)を得た。
【0043】
(マルトース結合不織布Cの作製)
マルトノラクトン200mg(0.586mmol)を20mLのメタノールに溶解させ、これを不織布Cを浸した20mLのメタノールに加えて3日間振盪し、その後純水で洗浄してマルトース結合不織布C(以下、不織布E)を得た。
【0044】
(ラクトース結合不織布Bの作製)
ラクトノラクトン200mg(0.586mmol)を20mLのメタノールに溶解させ、これを不織布Cを浸した20mLのメタノールに加えて3日間振盪し、その後純水で洗浄してラクトース結合不織布B(以下、不織布F)を得た。
【0045】
(ラクトース結合不織布Cの作製)
ラクトノラクトン200mg(0.586mmol)を20mLのメタノールに溶解させ、これを不織布Cを浸した20mLのメタノールに加えて3日間振盪し、その後純水で洗浄してラクトース結合不織布C(以下、不織布G)を得た。
【0046】
(実施例1)
上下に血液の出入り口のある円筒状カラム(内径1cm×高さ5.14cm)に、直径1cmの円板状に切り抜いた不織布Dを3枚積層して充填したカラムを作製した。このカラムに、37℃(外温)で保温したヒト血液を、流量0.57mL/minで30分間循環させ、各血液成分の吸着率を算出した。結果を表1に示す。なお、各血液成分数の測定は、多項目自動血球分析装置XT−1800i(シスメックス株式会社)を用いて行った。各血液成分の吸着率は、以下の式1〜3により算出した。結果を表1に示す。

好中球吸着率(%)={(循環前血液中の顆粒球数)−(循環後血液中の顆粒球数)}/(循環前血液中の顆粒球数)×100 ・・・・・・式1

単球吸着率(%)={(循環前血液中の単球数)−(循環後血液液中の単球数)}/(循環前血液中の単球数)×100 ・・・・・・式2

リンパ球吸着率(%)={(循環前血液中のリンパ球数)−(循環後血液液中のリンパ球数)}/(循環前血液中のリンパ球数)×100 ・・・・・・式3

【0047】
(実施例2)
上下に血液の出入り口のある円筒状カラム(内径1cm×高さ5.14cm)に、直径1cmの円板状に切り抜いた不織布Eを3枚積層して充填したカラムを作製した。このカラムに、37℃(外温)で保温したヒト血液を、流量0.57mL/minで30分間循環させ、実施例1と同様に各血液成分の吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例3)
上下に血液の出入り口のある円筒状カラム(内径1cm×高さ5.14cm)に、直径1cmの円板状に切り抜いた不織布Fを3枚積層して充填したカラムを作製した。このカラムに、37℃(外温)で保温したヒト血液を、流量0.57mL/minで30分間循環させ、実施例1と同様に各血液成分の吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例4)
上下に血液の出入り口のある円筒状カラム(内径1cm×高さ5.14cm)に、直径1cmの円板状に切り抜いた不織布Gを3枚積層して充填したカラムを作製した。このカラムに、37℃(外温)で保温したヒト血液を、流量0.57mL/minで30分間循環させ、実施例1と同様に各血液成分の吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0050】
(比較例1)
上下に血液の出入り口のある円筒状カラム(内径1cm×高さ5.14cm)に、直径1cmの円板状に切り抜いた不織布Bを3枚積層して充填したカラムを作製した。このカラムに、37℃(外温)で保温したヒト血液を、流量0.57mL/minで30分間循環させ、実施例1と同様に各血液成分の吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0051】
(比較例2)
上下に血液の出入り口のある円筒状カラム(内径1cm×高さ5.14cm)に、直径1cmの円板状に切り抜いた不織布Cを3枚積層して充填したカラムを作製した。このカラムに、37℃(外温)で保温したヒト血液を、流量0.57mL/minで30分間循環させ、実施例1と同様に各血液成分の吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1の結果から、水不溶性担体の表面の官能基に糖鎖を共有結合させた本発明の血液成分吸着担体は、糖鎖を有しない血液成分吸着担体と比較した場合において、好中球及び単球の選択性を維持しながら、好中球及び単球の吸着率を顕著に向上させていることが明らかとなった。
【0054】
(実施例5)
不織布Dを直径8mmの円板状に切り抜いた後、これを2枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、IL−6とIL−8の濃度が共に500pg/mLなるように調製したウシ胎児血清(以下、FBS)を0.8mL添加し、37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和してからELISA法にてIL−6及びIL−8の残濃度を測定し、以下の式4及び5によりIL−6吸着率及びIL−8吸着率を算出した。結果を表2に示す。

IL−6吸着率(%)={(転倒混和前のIL−6濃度)−(転倒混和後のIL−6濃度)}/(転倒混和前のIL−6濃度)×100 ・・・・・・式4

IL−8吸着率(%)={(転倒混和前のIL−8濃度)−(転倒混和後のIL−8濃度)}/(転倒混和前のIL−8濃度)×100 ・・・・・・式5

【0055】
(実施例6)
不織布Eを直径8mmの円板状に切り抜いた後、これを2枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、IL−6とIL−8の濃度が共に500pg/mLなるように調製したFBSを0.8mL添加し、37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和してからELISA法にてIL−6及びIL−8の残濃度をそれぞれ測定し、実施例2と同様にそれらの吸着率を算出した。結果を表2に示す。
【0056】
(実施例7)
不織布Fを直径8mmの円板状に切り抜いた後、これを2枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、IL−6とIL−8の濃度が共に500pg/mLなるように調製したFBSを0.8mL添加し、37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和してからELISA法にてIL−6及びIL−8の残濃度をそれぞれ測定し、実施例2と同様にそれらの吸着率を算出した。結果を表2に示す。
【0057】
(実施例8)
不織布Gを直径8mmの円板状に切り抜いた後、これを2枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、IL−6とIL−8の濃度が共に500pg/mLなるように調製したFBSを0.8mL添加し、37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和してからELISA法にてIL−6及びIL−8の残濃度をそれぞれ測定し、実施例2と同様にそれらの吸着率を算出した。結果を表2に示す。
【0058】
(比較例3)
不織布Bを直径8mmの円板状に切り抜いた後、これを2枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、IL−6とIL−8の濃度が共に500pg/mLなるように調製したFBSを0.8mL添加し、37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和してからELISA法にてIL−6及びIL−8の残濃度をそれぞれ測定し、実施例2と同様にそれらの吸着率を算出した。結果を表2に示す。
【0059】
(比較例4)
不織布Cを直径8mmの円板状に切り抜いた後、これを2枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、IL−6とIL−8の濃度が共に500pg/mLなるように調製したFBSを0.8mL添加し、37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和してからELISA法にてIL−6及びIL−8の残濃度をそれぞれ測定し、実施例2と同様にそれらの吸着率を算出した。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表2の結果から、水不溶性担体の表面の官能基に糖鎖を共有結合させた本発明の血液成分吸着担体は、糖鎖を有しない血液成分吸着担体と比較した場合において、IL−6及びIL−8の吸着率が同等であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、医療分野の血液成分吸着カラムとして用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性担体の表面の官能基に糖鎖が共有結合している、血液成分吸着用担体。
【請求項2】
サイトカイン及び白血球の双方を吸着除去するための、請求項1記載の血液成分吸着用担体。
【請求項3】
前記糖鎖は、前記官能基が有するアミノ基と還元末端側で共有結合している、請求項1又は2記載の血液成分吸着用担体。
【請求項4】
前記糖鎖は、ラクトース又はマルトースである、請求項1〜3のいずれか一項記載の血液成分吸着用担体。
【請求項5】
前記アミノ基は、ポリエチレンポリアミンの官能基である、請求項3又は4記載の血液成分吸着用担体。
【請求項6】
前記ポリエチレンポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びテトラエチレンペンタミンからなる群から選択される、請求項5記載の血液成分吸着用担体。
【請求項7】
前記サイトカインは、インターロイキン−6又はインターロイキン−8である、請求項2〜6のいずれか一項記載の血液成分吸着用担体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項記載の血液成分吸着用担体が充填された、血液成分吸着カラム。

【公開番号】特開2011−194014(P2011−194014A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63653(P2010−63653)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】