説明

血管可視化装置

【課題】
本発明の課題は、施術者が表示面と被施術者の注射対象部を別々に見る面倒がなく、施術者と注射対象部の間に施術に邪魔になるような配置の装置もなく、(近)赤外光画像と可視光画像と肉眼像間の位置、大きさ、角度を合わせが正確で簡単な血管可視化装置を提供することである。
【解決手段】
本発明の血管可視化装置は、施術者の頭部にマウントされ、(近)赤外光画像を取得する手段と、取得した画像を表示する表示手段と、表示手段の表示面を透過して施術部を肉眼で見ることで、表示画像と肉眼像を重ねて同時に見ることで表示と実体を同時に見ることを可能とし、施術部上の基準マークを介して、この位置、大きさ、向き(角度)を表示画像と肉眼像の間で合わせるように表示画像を計算して出力する基準マーク整合手段を有することを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療従事者が、注射や点滴で針を挿入する際に皮膚の下に隠れて見えにくい血管を見えるようにする血管可視化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野では、患者の血管への注射針や点滴針の挿入においては、駆血帯を腕等に巻いて血管を膨張させ、血管を肉眼で見えるようにして行うのが通常である。しかしながら、幼児・老齢者・皮下脂肪の多い者など多くの患者において血管が見えにくく、医療従事者は、指で触った感覚を頼りに、針先を何度か挿抜して探りを入れて行うことが多く見受けられる。血管の周りには、神経もあることからこれらに傷を付けないで1回で針の挿入をすることが望ましい。
【0003】
このような観点で血管探索を行って、針の挿入を補助する装置の提案が多く見られている。
特許文献1では、発光部から光を照射し、受光部で反射光を受光する。血管部での反射では、反射光強度が減少するのでこれが閾値以下ではランプを点灯するものが開示されている。その点に血管があるのが分かるが、血管の巾や伸びる方向、奥行きなどが分からない。注射時にランプ点灯と場所を確認しながら行う煩わしさと不確かさが欠点である。
【0004】
特許文献2では、光源および赤外線カメラが表示装置の裏面に配置され、一体構成されたものと、光線反射手段として赤外線を反射し可視光線を透過するハーフミラーを配置することで、表示画像と肉眼像を合成してみることが提示されている。前者は、施術者が施術部位を肉眼で確認する場合に光源および赤外線カメラが設置された表示装置を他の位置に移動、又は施術者が施術部位が見える位置に移動する必要があった。施術部位から視線をはずして表示装置を見るのは施術の不確かさに繋がる。後者では、表示画像と肉眼像を合成して見えるので、前者の欠点は回避されるが、施術者と患者の患部の間にはハーフミラーが配置され、表示装置が横(特許文献2の図2の例)又は、ハーフミラーと施術者の間(特許文献2の図3の例)に配置されていて、施術者にとって施術上邪魔である。
又、対象物体に表示像を合わせる基準が、腕の像であり、これは平面ではなく丸まった断面の曲面であるため、大きさや外形形状が判然としない。特に腕の長手方向でどこにあるかは、太さが変化している腕を見ているため、長手方向にはどの位置にあるかも不確かになる。このため血管像を肉眼像に合わせにくく、肉眼像と血管像が合っているという十分な確信が持てず、不安を秘めた施術となる欠点がある。合わせの目安となりえる腕表面上の皺も注射位置にはほとんどないのが普通であるため利用できない。
特許文献2の段落番号0011の下から4行目に記述している「非常に太い腕の患者と細い腕の患者では」の文言は、サイズや位置の基準が腕の輪郭以外に想定していないための記述になっていて、腕の太さ等は、確かな基準にはなりにくいことを示していて、肉眼像と血管像の位置以外にも倍率での合わせにおいても問題となり、距離を測って調節することが書かれている。
【0005】
特許文献3では、近赤外光で血管画像、可視光で注射器画像をカメラ撮影し、合成表示する血管位置に穿刺した針の先端位置表示する装置を開示している。血管の内部に入っている針の可視光では見えない先端を計算により表示している点は、良い点ではあるが、以下の欠点がある。特許文献3の段落番号0079から0081に示されるように、先ず、針の先端を計算により出すため、注射針を血管に挿入前に血管の近くに持ってきた状態で一度、針の長さを求める映像を撮るためにボタンを押してキャリブレーションという動作を行うが、例えば、左手を軽く患者の腕に添えて、右手で注射器を患者の腕に近づけて、ボタンを押す。その後、通常モードとして注射器を離して(注射器のない)近赤外血管像を撮影する。その後、可視光と近赤外光を交互に切り替えて、これから挿入すべき注射針を動かすと、先に撮影された血管画像の上に、針の先端位置が示されるため、位置関係を見ながら挿入する。表示される血管画像は最初に撮影した像であり、針は、先端位置を示すことに重点を置いている。実際の腕や注射針は、最初にとった位置より動いているのが普通なので、この動きの差を動きベクトルを検出することで調整しているので、血管と針先端の位置関係ということでは問題がない。然しながら、先ず、注射に至る手順が複雑で面倒であり実施面で手間が掛かりやりたくない特徴となっている。又、注射針を血管画像に合成するにも、位置や倍率のあわせが、腕の形状のみであるため合わせ精度に問題がある。又、表示面上の血管像と注射針の位置関係を(実際の針と腕の関係を見ないで)探ることになり、操作が実感に乏しく探りの時間も掛かる。この技術では、後で注射針や腕が動いてしまうこと補正することが重要なので、動きベクトルをとることが必須である。
表示画像がリアルタイムで毎回取った画像を示しているわけではないからである。
更に、この装置(特許文献3の図2、図3)を患者ごとに着脱するのは、面倒であり、使用により接触面が汚れるため不衛生である。施術者の観点からは、施術に邪魔なものが、患者の腕と施術者の間にあることになる。又、表示面を見たり、実際の腕の面を見たり視線を動かす動作も面倒であるなど多くの欠点がある。
【0006】
特許文献4では、赤外線画像入力手段とその画像を表示する画像表示手段と表示手段を施術者の頭部に固定する固定手段と画像データの表示を制御する手段からなる血管視認システムが提案されている。その中、ヘッドマウントの表示器は、いずれかの片目に対応し、他の目は、肉眼で施術面を見るようになっている。表示像と施術面の肉眼像を同一視線方向で比較しながら施術を行える点では好ましい。然しながら、表示面から実体像を透視するのとは違って、右目と左目で表示面と施術面を分担して見ているため観測角度が違い両眼の像は本質的に合うことはない。又、施術に当たり単眼視により立体感(奥行き深さ)がつかめないため、注射針を当てるのに不便である。又他の文献と同様に、赤外線像と他の画像、ここでは、肉眼像の間の位置や倍率や角度の補正基準がなく、腕の輪郭など画像により合わせているため、きわめて精度が悪く、人間の健康や命を預かる装置にしては、大雑把な合わせといえる。これは、その他の例でも同じであるが、この文献で写真像を示しているので、この事情が理解しやすいので以下に示すと特許文献4の図6は赤外線画像による血管と腕の画像であり、図7は肉眼で見たときの腕を画像化したものである。両者を比較して分かることは、赤外線による表示画像は肉眼で見たものに、位置、倍率、角度などがあっていなければならない。これらが不確かだと両目で違った位置や大きさや角度で見ていて、針という共通の媒体によって確認をしているだけになり、確認のための確かさや合わせの所要時間において不都合である。然しながら、両者の腕の画像を比べた場合、輪郭はぼやけ、腕の長手方向もあっているのかどうか全く分からない。輪郭は、腕が平面でないので、カメラのピントが合わないのでこのようになり、長手方向はもともと特徴となる兆候がないので、両画像があっているかどうかは全く分からない。ここに注射針を加えて初めて相対関係が分かるわけで、極めて位置等の合わせが大雑把なものであったといえる。特許文献1から特許文献3や他の先行文献についてもこの点は、特許文献4と同じ事情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−255847
【特許文献2】特開2004−267534
【特許文献3】特開2006−130201
【特許文献4】特開2009−89876
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、施術者が表示面と被施術者の注射対象部を別々に見る面倒がなく、従って短時間で施術の確かさを有し、又、施術者と注射対象部の間に施術に邪魔になるような配置の装置になることもなく、施術の手順が複雑で手間時間が掛かる面倒が無く、(近)赤外光画像と可視光画像と肉眼像間の位置、大きさ、角度を合わせが大雑把であり、合わせの手間、正確さなどにおいて不都合であったことを回避した血管可視化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の血管可視化装置は、施術者の頭部にマウントされ、(近)赤外光画像(可視光画像も加わることあり)を取得する手段と、取得した画像を表示する表示手段と、表示手段の表示面を透過して、被施術者の画像を取った施術部を肉眼で見ることで、前記の表示画像と実体の肉眼像を重ねて同時に見ることを可能とし、施術部上の基準マークを介して、この位置、大きさ、向き(角度)を表示画像と肉眼像の間で合わせるように表示画像を計算して出力する基準マーク整合手段を有することを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明は、血管可視化装置であって、
被施術者の施術部に向け赤外線を照射する照明光源と前記照明光源の光で施術部から反射された前記施術部の血管像を含む反射光を取得する画像取得器と、この画像を加工する画像加工器と、前記画像加工器の画像出力を表示面に表示し、その表示面を透視して前記施術部を目視することが可能なヘッドマウントされる透視表示器と、これらの動作を行わせ制御する制御器を有し、前記画像加工器は画像整合手段を含む画像演算部と画像データを記憶する画像メモリを有し、前記画像整合手段は、前記画像取得器から得られた前記施術部の画像を前記透視表示器に表示する際の表示画像を、施術者が前記透視表示器を透視して前記施術部を見た肉眼像と一致させるように、前記表示画像の位置、大きさ、向きを調整した画像を作成することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血管可視化装置において、
前記画像整合手段は、前記施術部に備えられ少なくとも可視光を前記施術部より反射又は吸収することで認識可能である基準マークで前記透視表示器の前記表示面に表示されたものを前記透視表示器を透視して目視で得られる基準マークに合うように、前記表示面に表示された前記基準マークと前記血管像を含む前記施術部の画像を整合する基準マーク整合手段であることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血管可視化装置において、前記基準マークは、被施術者又は施術者の認識記号の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の血管可視化装置において、前記施術部に備えられる前記基準マークは、貼り付け取り外しが可能なマークシールであるか又は、前記血管可視化装置にマークプロジェクタを備えることで光投影されたマーク光パターンであることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の血管可視化装置において、前記画像整合手段は、前記調整の補正値を前記画像メモリの数値テーブルに保存し、前記画像加工器がこの補正値を前記画像取得器が取得した画像データに適用して加工し、前記透視表示器に表示可能としたことを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の血管可視化装置において、前記画像整合手段は、前記画像取得器で得られた前記基準マークの大きさをみて、予め前記画像メモリの数値テーブルに記憶された施術部との距離の差異による基準マークの大きさに対するデータに基づいて前記表示画像を自動調整することを可能としたことを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の血管可視化装置において、前記画像整合手段は、前記調整のための外部補正入力を有し、補正値を前記画像メモリの数値テーブルに保存可能としたことを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求7のいずれか一つに記載の血管可視化装置において、前記透視表示器は、前記表示面に画像を表示する画像表示部と前記表示面の裏側にある物体の反射光を透過してくる透過窓部が交互に前記表示面に分布して存在することで、前記表示面の表側から見たときに表示画像と裏面の透視像が重複して見えるようにしたことを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の発明は、請求項1から請求8のいずれか一つに記載の血管可視化装置において、前記画像表示部と前記透過窓部が映像のフレーム毎或いは複数のフレーム毎に交換することを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の発明は、請求項1から請求9のいずれか一つに記載の血管可視化装置において、前記透視表示器の前記表示面の裏側(前記施術部のある側)に乱反射体を置いて、一旦この乱反射体で施術部から来る可視光を受けて、前記乱反射体を透過してくる光を前記透視表示器を透過して見ることを可能としたことを特徴とする。
【0020】
請求項11記載の発明は、請求項1から請求10のいずれか一つに記載の血管可視化装置において、前記被施術者の血管像として被施術者を区別して画像ファイルとして保存された前記施術部画像を、次の施術時に前記被施術者の同じ部位のデータと照合することで被施術者の取り違えを未然に防止する照合結果を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上の様に構成されているので、本発明の血管可視化装置では、
施術者が表示面と被施術者の施術部を別々に見る面倒がなく、従って短時間で施術ができ、施術の確かさを有し、又、施術者と施術部の間に施術の邪魔になる配置の装置もなく、施術の手順が複雑で手間時間が掛かる面倒が無く、取得した画像からの表示血管像と施術部の肉眼像間で位置、大きさ、向きなどが整合された状態で観測でき、素早く確信を持った施術が出来る。
又、その結果も画像として残せる。基準マークに患者を識別する番号を入れると、後でのトレースも可能となるなどの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による血管可視化装置の一実施態様を示す図である。
【図2】本発明による血管可視化装置の基準マーク整合の一実施態様を説明する図である。
【図3】本発明による血管可視化装置の施術場面のイメージの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による血管可視化装置では、被施術者の施術部に向け赤外線を照射する照明光源と前記照明光源の光で施術部から反射された反射光を取得する画像取得器と、この画像を加工する画像加工器と画像加工器の画像出力を表示面に表示し、その表示面を透視して施術部を目視することが可能なヘッドマウントされる透視表示器と、これらの動作を制御する制御器を有し、画像加工器において、この画像取得器から得られ透視表示器の表示面に表示される画像に含まれた施術部に備えられた基準マークを透視表示器を透視して目視で得られる基準マークに合うように整合することで、画像取得で得られたこの基準マークを含む血管像を含む施術部の画像を整合し、表示画像と目視画像を一致させた状態で見ることを可能とした血管可視化装置であり、以下、実施例で説明する。
【0024】
図1は、本発明による血管可視化装置の一実施態様を示す図である。
1−Aにおいて、血管可視化装置100と被施術者の施術部101(ここでは腕)と施術具102(ここでは注射器)が示されている。血管可視化装置100は、施術者(医師や看護士)の頭部103に搭載されるものとなっていて、赤外光、好ましくは近赤外光(波長760〜2000nm)を照射する照明光源104(必要に応じて可視光光源も含むこともある)と、その光の施術部101による反射光を画像として取り込む画像取得器105と、この画像を加工する画像加工器106と画像加工器106の画像出力を表示面に表示し、その表示面を透視して施術部を目視することが可能なヘッドマウントされる透視表示器107と、これらの動作を制御する制御器108を有し、更に画像加工器106は、
画像演算部109と画像メモリ112を有し、画像演算部109は、画像整合手段110を有し、この画像整合手段110において、透視表示器107の表示面に表示される(画像取得器105から得られた)施術部画像を透視表示器107を透視して目視で得られる(肉眼の)施術部画像に合うように整合することで、画像取得で得られた血管像を含む施術部の画像を整合し、表示画像と目視画像を一致させた状態で見て施術を行うことを可能とするものである。
又、画像整合手段110は、表示面に表示される画像に含まれた施術部に備えられた基準マークを透視表示器を透視して目視で得られる基準マークに合うように整合することで、画像取得で得られたこの基準マークを含む血管像を含む施術部の画像を整合する基準マーク整合手段であることが好適な特徴となっている。
【0025】
1−Bには、本発明による血管可視化装置の構成例のブロック図が示されている。これを用いて動作を説明する。照明光源104としては、最小限でも赤外光ランプ104A、好ましくは近赤外光(波長760〜2000nm)ランプがあり、これが被施術者の施術部101に照射される。施術部101は、照射光を反射し、画像取得器105により画像として取得されるが、画像取得器105は、少なくとも赤外光に感度を持ったカメラか赤外光を透過する赤外光透過フィルタを有するカメラを有している。
赤外光ランプ又は近赤外光ランプの施術部101による反射光には、血管のある部分は、血管の無い他の部分に比べて吸収があるため暗くなり、施術部101の皮膚の内側にある血管像を得ることが出来る。基準マークが赤外光や近赤外光で識別できる(反射又は吸収を持つ)ようにすると、得られた画像には不鮮明な輪郭の施術部101上に明確な基準マークと血管像が得られる。
尚、画像取得器105に可視光カメラを付加した場合には、一つのカメラで赤外光透過フィルタと可視光透過フィルタを高速に切り替えて使用するほうが、各々備えるよりは両者の画像の位置、縮尺、向きなどが一致し都合がよい。
可視光カメラを付加しない場合は、基準マークは肉眼でも識別できることが前提であることを考慮すると、赤外光と可視光の両方で識別できる(反射又は吸収を持つ)ことが必要である。可視光カメラを付加した場合には血管像が写った赤外光の像と可視光のカメラ像(肉眼像にほぼ同じ)が得られて、基準マークは可視光のカメラ像にも映っている。もし、可視光像と赤外光像が1台のカメラで取られていると、両画像は合っているため、そのまま重ね合わせ一体化され、見やすい表示像になる。この場合、基準マークは可視光で識別できる(反射又は吸収を持つ)だけでも足りる。そして、肉眼でも見るため、基準マークは最小限、可視光で識別できる(反射又は吸収を持つ)ことだけでも十分である。このように、可視光カメラは必須とはいえないが、あると肉眼に近い像が取れ表示が見やすいことと、基準マークが可視光で識別できるだけでよいという利点を与える。
【0026】
画像取得器105で得られた画像は、画像加工器106で処理され、表示面を透視して施術部を目視することが可能な透視表示器107に表示される。この場合、画像加工器106において、その中の画像演算部109には、画像整合手段110と画像処理手段111があるが、画像整合手段110では必須の構成部であり、画像取得器105から得られた施術部の画像を透視表示器107に表示する場合に、施術者が透視表示器107を透視して施術部を見た肉眼像と一致させるために、像の位置、大きさ(縮尺)、向きを調整した画像を作成するか、又は、そのための補正を行う数値を決めて、画像メモリ112に記憶し、透視表示器107に表示するものである。画像整合手段110の動作の例として、施術部の赤外光像又は可視光像と透視表示器107を透視した肉眼像が合うようにしても良いが、前述したように施術部は腕のように輪郭が不明確なので、施術者にマウントした本血管可視化装置と施術部の間を通常の間隔にした状態で、施術部の上に明確な目印を一旦おいて、目印の画像と透視表示器107を透視した肉眼での目印の像を一致するように位置、大きさ(縮尺)、向きを調整し、その補正の数値を画像メモリ112の数値テーブルに保存して、通常は施術者が同じであれば、被施術者との間は同じ状態で使うことが多いので、常にこの数値を適用して補正することが出来る。この場合の補正数値入力は、距離とカメラ画像系の理論的計算から求めた規定値を入れてもよいが、外部から数値を調整可能なように調整入力113があると便利である。然しながら、このような臨時の補正は、補正自体は正確に出来たが、補正後の幾度かの使用時にも補正が現在もあっているかという保証が無いこと、更に、施術者の目にはどの部分を見ているか正確には針を当ててみるまで分からない欠点が依然として存在する。
【0027】
これに対応して、さらに本願の最も好適なものとして、施術部に基準マーク114を付して画像取得器105で画像を取得し、画像整合手段110は、これに対応して透視表示器107に表示された基準マーク114の像と透視表示器107を透視した肉眼での基準マーク114の像をあわせるように、像の位置、大きさ(縮尺)、向きを調整した画像を作成して画像メモリ112に記憶するか、又は、そのための補正を行う数値を決めて画像メモリ112の数値テーブルに記憶し、透視表示器107に表示するものが挙げられる。施術部101に付す基準マーク114は、例えば、マークシール115aのように、施術部101に施術ごとに貼り付け外すシールでも良いが、最も好ましいのは、血管可視化装置の構成としてマーク光を投影するマークプロジェクタ115bを備えることである。このようにすると、施術中(施術者が施術部を本血管可視化装置を通じて見ている間)はマーク光の像が施術部に存在するため、常時これを見て参照しつつ、同時に透視表示器107に表示されたマーク光の像が一致していることが確認でき、針を当てるまでも無くその前に血管像とマーク位置を確信をもって観測し施術が出来る。尚、マークプロジェクタ115bの場合には、マークシール115aのように貼り付け剥がしの操作が無くてよいので、簡単であり接触部がないので汚染や汚れも気にする必要が無い利点がある。マークプロジェクタ115bでは、施術部101との距離の違いによって大きさが変わらないように光が発散しない(広がらない)物がよい。このため、コリメータレンズを用いて焦点に光源を置いて平行光線をつくるか、光の発散が少ないのでレーザー光源を用いることが出来る。
又、基準マーク114には、画像取得器105が取得した画像の位置、大きさ(縮尺)、向きを調整するための参照基準であるので、例えば円形1個のマークでは、向きの調整には対応できない。円形はどの方向にも対称だからである。しかし、円の形状でも2点では、方向にも対応できるので基準マークとして都合がよい。
1点でも形状が対称でなければ方向にも対応ができ基準マークになる。例えば三角形や十字形など利用できる。
基準マーク114には、被施術者を識別する識別記号116を振っておくと、後で、施術記録画像を見たときに誰に施した場合の画像かのトレースができる。トレース画像は、患者ファイルなど被施術者ごとの記録データにファイル可能となる。
尚、マークプロジェクタ115bを液晶表示器を使い、ここに画像メモリに予め内蔵した基準マーク114と識別記号116を表示し平行光を照射してこれらの像を施術部に投影することができる。同じ使い方で透視表示器107の一部の表示器を兼用することも可能である。
【0028】
画像整合手段110の整合において、数値テーブルにいれる数値について距離とカメラ画像系の理論的計算から求めた規定値を入れてもよいが、外部から数値を調整可能なように調整入力113があると便利であることを前述した。基準マークがある場合も無い場合も、施術者の手が塞がっていることを考慮すると、調整入力113は、例えば、フットスイッチのように手を使わない構成が好ましい。上下左右の移動(位置)、縮尺(大きさ)、向き(傾斜角)を各スイッチと足踏の回数や時間に応じて基準マークの画像データが補正(例えば、右旋回スイッチを1回踏むと右回り1度回転など)され透視表示器107に表示され、最終補正値は数値テーブルに記憶され、特に補正入力を動かさず固定した場合は、毎回この同じデータが適用される。肉眼での基準マークと画像での基準マークが施術者には常に見えているので何ら心配はない。偶々ずれている場合だけ調整すればよい。
又、施術者と施術部の距離が離れた場合には、カメラで取った像も肉眼像も小さくなるが、距離と像の大きさの間には一定の関係があるため、取得画像の基準マークの大きさから割り出して、又は実際に調整して補正数値を求め、数値テーブルに入れてしまうと、このデータを参照して自動的に補正をすることも可能となる。
【0029】
画像処理手段111は、一般に言われる画像処理手段であって必須ではないがあると便利である。画像取得器105で取得した画像の血管像を見やすくするため、コントラストを上げる処理をしたり、カラー化(赤外光像のそのものは白黒なので、例えば血管像には赤の色にするなど)したり、血管像の輪郭を明確にするため輪郭強調処理(輪郭のみ色が濃くなるとか黒にする)を行ったり、透視表示器107を通じて見た肉眼像と表示像の明暗を見やすく調整する、或いは、取得像を透明表示するなどの処理が可能であり、多くの市販のプログラムが利用できる。
【0030】
制御器108は、照明光源104、画像取得器105、画像加工器106、透視表示器107、(マークプロジェクタ115bがある場合にはこれも含む)の動作をコントロールするもので、通常は、コンピュータと処理プログラムを有している。
電源は示していないが、当然装置として含んでいるものとする。
【0031】
透視表示器107は、画像を表示する部分と表示面の裏側にある物体の反射光を透過してくる透過窓部分が交互に表示平面に分布して存在することで、表示面の表側から見たときに表示画像と裏面の透視像が重複して見えるようにしたものが適用できる。他にも、αブレンディングなどの画像処理を使って、表示部分自体を透明表示にしてここからも透視できるようにし透過窓を特別に作らないものも適用できる。前者の例として、適当な透過窓は常に光が透過するようにし、周りに表示部を配置し、これが交互に繰り返しあるもので、例えば液晶表示器を使うと、液晶の電極が透過窓の邪魔にならないように配置又はITO膜のような導電性透明膜を使って透過窓上を這わせた構成のものが利用できる。又、液晶の表示ピクセルを表示部と透過窓部に分け、これを交互に配置された部分で構成する。表示部は画像を表示する。透過窓部は、裏側の光が通過するように液晶ピクセルが常時完全開の状態である。例えば、これは以下のようにしてもよい。画像メモリの1画面に対応して、交互に表示データ部と完全白のデータを入れる白部を作成しておく。画像はデータ部のみに置き換わる。白部は常に変わらない。
これを液晶表示器に表示すると、データ部は表示部になり、白部はスイッチが完全に開いて裏からの透過光を完全に通す状態になる。
このようにして透過型(この場合はバックライトが透過するという意味で本願の透過窓(裏側が透視できるという意味)とは意味が違います)液晶を使うと透視表示器107が実現できる。又、データ部と白部を映像のフレーム毎或いは複数のフレーム毎に交換する(例えば、通常の画像放送の30フレーム/秒では、1秒間に15フレームづつ、1フレームごとにデータ部と白部が交換された画面が交互にできるので、目には表示面全面に表示と肉眼の透視像が重なって見えることになる。尚、血管像の輪郭強調画像処理において、ピクセル(画素)が本来透過窓に対応しても、それが輪郭になった部分だけデータピクセルにすることで見やすくすることもできる。
【0032】
図2は、本発明による血管可視化装置の基準マーク整合の一実施態様を説明する図である。(a)には、(近)赤外光カメラ画像を示し、血管像201と、基準マーク202a(赤外光で認識できるように吸収又は反射がある場合)が写っている。(b)では、可視光カメラを備えた場合の可視光像であり、施術部の表面に基準マーク202bが写っている。可視光カメラが無い場合は、(b)の画像は無い。
両方のカメラを一つのカメラで対応した場合には、両方の画像は位置や大きさ、向きの関係があっている。(c)はこの両者を合成した画像である。(d)は透視表示器107を透視してみた施術部の肉眼の像である。(c)と(d)では、基準マークの位置や縮尺(大きさ)、向きが違うので分かりやすいように大きくずらせて書いてある。本来基準マークは一つのものを見ているので同じで一致しなければならない。(e)では、画像整合手段110が基準マークを介して整合する基準マーク整合手段として整合した結果を示す。(c)の画像は、基準マークが肉眼像(d)の基準マークに合うように整合されている。見た目通りの位置、大きさ、向きで基準マークと血管画像を見ることができ、(f)ではそこに注射器が投入され、施術を行っている像である。この像は、画像保存を行うことで、被施術者又は施術者を区別して画像ファイルとして保存することができる。前述のように基準マークに被施術者又は施術者の認識記号を入れておけばこれを確実に行える。
【0033】
尚、透視表示器107に表示した画像が外部表示モニタ117にも表示可能である。
少なくとも透視表示器107は、施術者の頭部にマウントされるのが好ましいが、更に照明光源104、画像取得器105、マークプロジェクタ115bなど施術者と一体に動いた方がよいものは透視表示器同様にマウントされる構成、特に一体構成が好ましい。
勿論、全てのものが一体構成でマウントされることが最も好ましい。
尚、最後に図3に本発明による血管可視化装置の施術場面のイメージの例を示す。
施術に邪魔になるものは、施術部と施術者の間には何も無く、施術者は施術部のみを透視表示器を透視して基準マーク(像)と血管像と注射針を見ながら確実に施術が可能である。
【0034】
透視表示器の表示面の裏側(施術部のある側)に乱反射体を置いて、一旦この乱反射体で施術部から来る可視光を受けて、これを透過してくる光を透視表示器を透過して見ることも可能である。この場合は、乱反射体上に施術部像があるのと同じ像を透視して見ることができる。
【0035】
本血管可視化装置で取得した施術部画像は、被施術者の血管像として被施術者又は施術者を区別して画像ファイルとして保存されるため、次の施術時に施術者間でこのデータを参考又は共有して使用することも可能となる。又、このデータに被施術者のどの部位のデータかなどの情報を付すことで、被施術者の同じ部位に施術をする場合に、画像ファイルに蓄えられた前回のデータと今回のデータを自動照合することで、被施術者の取り違えを未然に防止するための照合結果を出力(表示や警報等)することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように本発明に係る血管可視化装置は、透視表示器を透視して施術部の基準マークと表示面の基準マークを一致させた状態で同時に血管像が観測でき施術ができるので、表示器と施術面を別々に見ることも無く、施術に邪魔な状態も無く、常に施術面を確実に見ながら安心して施術ができるので、産業上利用性が極めて大きい。
【符号の説明】
【0037】
100 血管可視化装置
101 施術部
102 施術具
103 頭部
104 照明光源
105 画像取得器
106 画像加工器
107 透視表示器
108 制御器
109 画像演算部
110 画像整合手段
111 画像処理手段
112 画像メモリ
113 調整入力
114、202a、202b、202d 基準マーク
115a マークシール
115b マークプロジェクタ
116 識別記号
117 外部表示モニタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施術者の施術部に向け赤外線を照射する照明光源と前記照明光源の光で施術部から反射された前記施術部の血管像を含む反射光を取得する画像取得器と、この画像を加工する画像加工器と、前記画像加工器の画像出力を表示面に表示し、その表示面を透視して前記施術部を目視することが可能なヘッドマウントされる透視表示器と、これらの動作を行わせ制御する制御器を有し、前記画像加工器は画像整合手段を含む画像演算部と画像データを記憶する画像メモリを有し、前記画像整合手段は、前記画像取得器から得られた前記施術部の画像を前記透視表示器に表示する際の表示画像を、施術者が前記透視表示器を透視して前記施術部を見た肉眼像と一致させるように、前記表示画像の位置、大きさ、向きを調整した画像を作成することを特徴とする血管可視化装置。
【請求項2】
前記画像整合手段は、前記施術部に備えられ少なくとも可視光を前記施術部より反射又は吸収することで認識可能である基準マークで前記透視表示器の前記表示面に表示されたものを前記透視表示器を透視して目視で得られる基準マークに合うように、前記表示面に表示された前記基準マークと前記血管像を含む前記施術部の画像を整合する基準マーク整合手段であることを特徴とする請求項1記載の血管可視化装置。
【請求項3】
前記基準マークは、被施術者又は施術者の認識記号の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血管可視化装置。
【請求項4】
前記施術部に備えられる前記基準マークは、貼り付け取り外しが可能なマークシールであるか又は、前記血管可視化装置にマークプロジェクタを備えることで光投影されたマーク光パターンであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の血管可視化装置。
【請求項5】
前記画像整合手段は、前記調整の補正値を前記画像メモリの数値テーブルに保存し、前記画像加工器がこの補正値を前記画像取得器が取得した画像データに適用して加工し、前記透視表示器に表示可能としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の血管可視化装置。
【請求項6】
前記画像整合手段は、前記画像取得器で得られた前記基準マークの大きさをみて、予め前記画像メモリの数値テーブルに記憶された施術部との距離の差異による基準マークの大きさに対するデータに基づいて前記表示画像を自動調整することを可能としたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の血管可視化装置。
【請求項7】
前記画像整合手段は、前記調整のための外部補正入力を有し、補正値を前記画像メモリの数値テーブルに保存可能としたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の血管可視化装置。
【請求項8】
前記透視表示器は、前記表示面に画像を表示する画像表示部と前記表示面の裏側にある物体の反射光を透過してくる透過窓部が交互に前記表示面に分布して存在することで、前記表示面の表側から見たときに表示画像と裏面の透視像が重複して見えるようにしたことを特徴とする請求項1から請求7のいずれか一つに記載の血管可視化装置。
【請求項9】
前記画像表示部と前記透過窓部が映像のフレーム毎或いは複数のフレーム毎に交換することを特徴とする請求項1から請求8のいずれか一つに記載の血管可視化装置。
【請求項10】
前記透視表示器の前記表示面の裏側(前記施術部のある側)に乱反射体を置いて、一旦この乱反射体で施術部から来る可視光を受けて、前記乱反射体を透過してくる光を前記透視表示器を透過して見ることを可能としたことを特徴とする請求項1から請求9のいずれか一つに記載の血管可視化装置。
【請求項11】
前記被施術者の血管像として被施術者を区別して画像ファイルとして保存された前記施術部画像を、次の施術時に前記被施術者の同じ部位のデータと照合することで被施術者の取り違えを未然に防止する照合結果を出力することを特徴とする請求項1から請求10のいずれか一つに記載の血管可視化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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