説明

行動支援システム

【課題】行動特性の内容に係る情報を一つのシステムに集約させることなく、行動特性に基づくユーザの行動を支援する行動支援システムを提供する。
【解決手段】トリガとなるイベントを検知するトリガ提供者システム20と、行動特性に基づいた行動を実行するサービスを提供するサービス提供者システム30と、トリガと行動に対応するキー情報を連携させる連携サーバ10とを有し、トリガ提供者システム20はトリガを抽出するフィルタ24とトリガキーを保持し、サービス提供者システム30はサービス内容33とサービスキーを保持し、連携サーバ10はトリガキーとサービスキーとの行動特性13を保持し、トリガ提供者システム20はトリガ発生を検知してトリガキーを連携サーバ10に通知し、連携サーバ10はトリガキーに対応するサービスキーをサービス提供者システム30に通知し、サービス提供者システム30はサービスキーに対応するサービスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの日常生活における行動を支援する技術に関し、特に、ユーザ以外の第三者に知られたくない特定の行動特性に基づく行動が円滑に行われるよう支援する行動支援システムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在では、物品購入などを始め、日常生活における様々な行動が情報処理システムによってその一部もしくは全部が実行されたりサポートされたりするようになっており、ユーザの利便性の向上に役立っている。
【0003】
さらに、ユーザの実際の行動を直接支援するだけでなく、このようなユーザの行動に基づいて情報処理システムに蓄積された履歴を分析することで、ユーザの行動特性や嗜好等を抽出し、これらの情報に基づいて例えばユーザに対して嗜好に合致する商品購入を勧めるなどのマーケティングを行ったり、行動のレコメンデーションや誘導を行ったりという形での支援も行われている。
【0004】
例えば、特開2008−217459号公報(特許文献1)には、コンピュータ装置と顧客端末装置を有し、ネットワークを介して商品を複数の方法により購入できる商品購入支援システムであって、コンピュータ装置は、それぞれの方法で購入された複数の商品についての商品情報を一連の購入行動として関連付けて記憶し、関連付けられた購入情報に基づいて商品傾向を分析して、ユーザに推奨する商品の商品情報を生成し、顧客端末装置は、コンピュータ装置で生成された商品情報を取得してユーザに知らせることで、ユーザにより適切な商品を紹介することができるシステムが記載されている。
【0005】
また、特開2006−12115号公報(特許文献2)には、複数の推奨対象及び各推奨対象間の関係に関する推奨対象情報を記憶しており、また顧客が推奨対象に係るリンクをクリックするまたは推奨対象を購入する等を行った場合、その行動に関する行動情報を記憶し、これらの推奨対象情報及び行動情報を用いることで、従来の場合のように膨大な数のルール又はデータを必要とすることなく、各推奨対象夫々の推奨度を算出することにより顧客に対して推奨すべき推奨対象を決定し、その決定した推奨対象に係る推奨情報を顧客へ提供する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−217459号公報
【特許文献2】特開2006−12115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術などを利用すれば、ユーザの行動履歴などに基づいて分析される行動特性や嗜好等に基づいてユーザに適切な商品を紹介したり行動を推奨したりすることが可能である。しかしながら、このような単独のシステムで得られる行動履歴に基づく分析では、ユーザの日常生活における実行動の特性まで得ることは困難である。
【0008】
例えば、日常生活における定型的、ルーチン的な行動では、「会社へ行くときには、会社の最寄りのコンビニで商品Aと商品Bを購入する」「お酒を飲んで帰る日は家族にお土産を買って帰る」などの行動特性(パターン)があり得るが、このような行動特性は基本的には当該ユーザ自身だけが認識・把握しているものであり、システム的な分析によって得ることが困難なものである。また、ここでは、「会社へ行く」「お酒を飲んで帰る」など、実際の行動(商品やお土産の購入など)を起こすためのトリガとなるイベントが存在するが、これらのイベントは商品購入などの実際の行動を行うためのシステムとは異なる情報処理システムによって検知することができるものである。
【0009】
さらに、近年ではプライバシーや個人情報保護の意識の高まりなどから、このような行動特性の内容や、行動特性を抽出する基礎となる行動履歴の蓄積情報などについて、ユーザ以外の他の第三者等にはできる限り知られたくないという場合も多く、行動特性の具体的な内容に係る情報が一つのシステム等で集約して保持されることを望まない場合も多い。
【0010】
そこで本発明の目的は、特定のイベントの発生をトリガとして特定の行動をとるというユーザ毎の行動特性について、行動特性の具体的な内容に係る情報を一つのシステムに集約させることなく、行動特性に基づいて行われるユーザの行動を支援する行動支援システムを提供することにある。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0013】
本発明の代表的な実施の形態による行動支援システムは、特定のイベントの発生をトリガとして特定の行動をとるという行動特性に基づいて行われるユーザの行動を支援する行動支援システムであって、以下の特徴を有するものである。
【0014】
すなわち、行動支援システムは、前記ユーザの前記行動特性においてトリガとなるイベントを検知する1つ以上のトリガ提供者システムと、前記トリガに対して、前記ユーザによる前記行動特性に基づいた行動を実行もしくは支援するためのサービスを提供する1つ以上のサービス提供者システムと、前記行動特性における前記トリガと前記行動との対応関係に基づいて、それぞれに対応するキー情報を前記トリガ提供者システムと前記サービス提供者システムとの間で中継して連携させる連携サーバとを有する。
【0015】
前記トリガ提供者システムは、前記ユーザについての前記トリガとなるイベントを抽出するためのフィルタと、前記フィルタに対応するトリガキーの情報とを保持し、前記サービス提供者システムは、提供する前記サービスの内容と、前記サービスの内容に対応するサービスキーの情報とを保持し、前記連携サーバは、前記トリガキーと対応する前記サービスキーとの組み合わせからなる前記行動特性を保持する。
【0016】
さらに、前記トリガ提供者システムは、前記ユーザについての前記トリガとなるイベントの発生を検知して、対応する前記トリガキーを取得して前記連携サーバに通知するトリガ通知部を有し、前記連携サーバは、前記トリガ提供者システムから通知された前記トリガキーに対応する前記サービスキーを取得して対象となる前記サービス提供者システムに通知する情報連携部を有し、前記サービス提供者システムは、前記連携サーバから通知された前記サービスキーに対応する前記サービスの内容を取得して前記ユーザに対して前記サービスを提供するサービス処理部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
本発明の代表的な実施の形態によれば、特定のイベントの発生をトリガとして特定の行動をとるというユーザ毎の行動特性について、行動特性の具体的な内容に係る情報を一つのシステムに集約させることなく、行動特性に基づいて行われるユーザの行動を支援することが可能となる。これにより、ユーザは、他の第三者等に行動特性の具体的な内容全体を把握されることなく、行動特性に基づく行動を円滑に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態である行動支援システムの構成例について概要を示した図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるトリガ提供者システムのフィルタのデータ構成について例を示した図である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるサービス提供者システムのサービス内容のデータ構成について例を示した図である。
【図4】本発明の一実施の形態における連携サーバの行動特性のデータ構成について例を示した図である。
【図5】本発明の一実施の形態におけるユーザが行動特性を登録する際の処理の流れの例について概要を示した図である。
【図6】本発明の一実施の形態におけるユーザが行動特性に基づいた行動を行う際に支援する処理の流れの例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
本発明の一実施の形態である行動支援システムは、特定のイベントの発生をトリガとして特定の行動をとるというユーザ毎の行動特性について、行動特性の具体的な内容に係る情報を一つのシステムに集約させることなく、行動特性に基づいて行われるユーザの行動を支援するシステムである。
【0022】
ここでの行動特性とは、原則としてユーザ自身だけが把握している、日常生活において定型的、ルーチン的に行われる行動のパターンであり、例えば、上述したような「会社へ行くときには、会社の最寄りのコンビニで商品Aと商品Bを購入する」「お酒を飲んで帰る日は家族にお土産を買って帰る」や、「残業が多くなると、自宅最寄り駅のマッサージ店へ行く」「会社に一日いると、たばこを1箱消費する」など、特定のイベントの発生や条件の成立をトリガとして特定の行動をとるという形式を有する。
【0023】
例えば、「会社へ行くときには、会社の最寄りのコンビニで商品Aと商品Bを購入する」という行動特性の場合、ユーザは、詳細な行動として、会社へ行く際に会社の最寄りのコンビニに赴き、商品Aと商品Bが陳列されている棚まで行って(場合によっては該当の棚を探して)商品を棚から取り出し、レジに並んで料金を支払って購入する、というパターンの行動をとる。また、例えば「会社に一日いると、たばこを1箱消費する」という行動特性の場合、ユーザは会社において自身が持っているたばこの残り本数を把握し、残り本数が少なくなるとたばこを購入できる場所(コンビニや自販機など)へ赴いてたばこを購入する、というパターンの行動をとる。
【0024】
本実施の形態の行動支援システムは、上記のようなユーザの行動特性について、特定のイベント(例えば「会社へ行くために最寄り駅の改札を通過した」等)が発生したことをトリガ提供側のシステム(例えば鉄道会社の改札システム等)で検知した場合に、当該イベントの発生をトリガとして、対応する行動(例えば「会社の最寄りのコンビニで商品を購入する」)をユーザが実行する、もしくは実行を支援するためのサービスを提供するシステム(例えば会社の最寄りのコンビニの販売受付システムやPOS(Point Of Sale)システム等)に対してサービスの提供を指示することで、行動特性に基づくユーザの行動が円滑に行われるよう支援する(例えば「ユーザが会社へ行くために最寄り駅の改札を通過したら、会社の最寄りのコンビニは当該ユーザのためにレジに商品Aと商品Bを用意しておく」等)。
【0025】
このとき、行動特性の具体的な内容(トリガ発生の元となったイベントと対応する行動の内容)に係る情報を一つのシステムに集約させないよう、すなわち、トリガ提供側のシステムとサービス提供側のシステムが、相互に行動特性の具体的な内容を把握できないよう、行動特性の具体的な内容に係る情報を含まないキー情報のみでやり取りを行うものとする。このため、トリガ提供側のシステムとサービス提供側のシステムとの間でやり取りされるキー情報を、行動特性におけるトリガと行動との対応関係に基づいて中継して連携させる連携サーバを有する。
【0026】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態である行動支援システムの構成例について概要を示した図である。図1において、行動支援システム1は、ユーザ3の行動特性においてトリガとなるイベントや条件の発生を検知する1つ以上のトリガ提供者システム20と、各トリガに対して行動特性に基づいた行動をユーザ3が実行する、もしくは実行を支援するためのサービスを提供する1つ以上のサービス提供者システム30とを有する。さらに、行動特性におけるトリガと行動との対応関係に基づいて、それぞれに対応するキー情報をトリガ提供者システム20とサービス提供者システム30との間で中継して連携させる連携サーバ10とを有し、これらがインターネット等のネットワーク2に接続され相互に通信可能な構成を有する。
【0027】
トリガ提供者システム20は、上述したように、例えば、鉄道会社の改札システムや、施設等の入退館管理システム、携帯端末等のGPS(Global Positioning System)機能を利用した位置検出システム、ユーザが各種処理や操作等を行うWebサイトなど、行動特性において特定の行動をとるためのトリガとなるイベントや条件、アクション(例えば、駅の改札や会社のゲートの通過、特定の店やスポットへの移動、Web上での特定の操作など)の発生を検知することができるシステムである。
【0028】
このトリガ提供者システム20は、当該トリガ提供者システム20上での複数のユーザによるイベントやアクション等の中から、各ユーザについてトリガとなるイベント等に該当するものを抽出するためのフィルタをユーザ3がそれぞれ登録するためのインタフェースを提供するソフトウェアプログラムであるフィルタ登録部21と、登録されたフィルタを保持するデータベースやファイル等からなるフィルタ24とを有する。また、複数のユーザによる各種イベントの発生や条件の成立、アクションなどの発生履歴を保持するデータベースやファイル等からなるイベント履歴23を有し、イベント履歴23の内容からフィルタ24の条件に該当するものを抽出して、トリガとして連携サーバ10に通知するソフトウェアプログラムであるトリガ通知部22を有する。
【0029】
なお、トリガ通知部22は、上述のようにトリガ提供者システム20上でのユーザによるイベントの発生やアクション等とは非同期にイベント履歴23からトリガを抽出するのに限らず、ユーザによるイベントの発生時やアクションの処理中に随時フィルタ24の条件に該当するか否かを判定してトリガを通知することで、イベント履歴23を保持しないようにしてもよい。
【0030】
また、トリガ通知部22は、トリガを連携サーバ10に通知する際に、上述したように、行動特性の具体的な内容に係る情報を含まないキー情報として通知する。これにより、トリガ提供者システム20以外のサービス提供者システム30や連携サーバ10に対してトリガ発生の元となったイベントや対応する行動の具体的な内容を知られずに、「特定種類のトリガが発生した」ということのみを連携サーバ10に通知することができる。
【0031】
一方、サービス提供者システム30は、例えば、コンビニやスーパー、キオスク(登録商標)など物品を販売する企業のPOSシステムや、Amazon.com(登録商標)などのネット通販業者の商品販売システム、美容院やマッサージ店などのサービス提供業者の予約・受付システムなど、行動特性に基づいた特定の行動(物品の購入やサービスの利用など)をユーザ3が行うため、もしくは行うのを支援するためのサービスを提供するシステムである。
【0032】
このサービス提供者システム30は、行動特性に基づいた特定の行動を実行もしくは支援するためのサービスの内容を予めユーザ3が登録するためのインタフェースを提供するソフトウェアプログラムであるサービス登録部31と、登録されたサービスの内容を保持するデータベースやファイル等からなるサービス内容33とを有する。また、連携サーバ10から送られる行動(サービス提供)の指示を受け取り、これに従ってユーザ3に対して所定の内容のサービスを提供するソフトウェアプログラムであるサービス処理部32を有する。
【0033】
なお、サービス処理部32は、サービス提供の指示を連携サーバ10から受け取る際に、上述したように、行動特性の具体的な内容に係る情報を含まないキー情報として受け取る。その後、受け取ったキー情報に基づいてサービス内容33に予め登録されているサービスから対応するものを参照して実行する。これにより、サービス提供者システム30以外のトリガ提供者システム20や連携サーバ10に対してトリガ発生の元となったイベントや対応する行動の具体的な内容を知られずに、「特定の内容のサービスを提供する」ということのみをサービス提供者システム30に通知することができる。
【0034】
連携サーバ10は、トリガ提供者システム20およびサービス提供者システム30とは異なる運営主体によって運営されるサーバ機器であり、ユーザ3が自身の行動特性としてトリガと行動との対応関係を登録するためのインタフェースを提供するソフトウェアプログラムである行動特性登録部11と、登録された行動特性を保持するデータベースやファイル等からなる行動特性13とを有する。また、トリガ提供者システム20から通知されたトリガを受け取り、行動特性13の内容に基づいて受け取ったトリガに対応するサービス提供の指示を対象となるサービス提供者システム30に通知するソフトウェアプログラムである情報連携部12を有する。
【0035】
ここでの行動特性13は、上述したトリガ提供者システム20が連携サーバ10に対してトリガとして通知するキー情報(以下では“トリガキー”と記載する場合がある)と、連携サーバ10がサービス提供者システム30に対してサービス提供の指示として通知するキー情報(以下では“サービスキー”と記載する場合がある)との組み合わせとして保持する。すなわち、行動特性の具体的な内容(トリガ発生の元となったイベントと対応する行動の内容)については保持しない。これにより、トリガ提供者システム20とサービス提供者システム30の双方および連携サーバ10のそれぞれが、行動特性の具体的な内容全体を把握できないようにする。
【0036】
なお、ユーザ3が連携サーバ10、およびトリガ提供者システム20、サービス提供者システム30にアクセスするためのインタフェース(行動特性登録部11、およびフィルタ登録部21、サービス登録部31)は、例えば、図示しないWebサーバプログラム等により実装され、ユーザ3は、PC(Personal Computer)や携帯端末等からWebブラウザ等を利用してアクセスすることができる。また、連携サーバ10、およびトリガ提供者システム20、サービス提供者システム30は、それぞれ個別にユーザ3を認証するための図示しない認証部を有していてもよい。
【0037】
<データ構成>
図2は、トリガ提供者システム20のフィルタ24のデータ構成について例を示した図である。フィルタ24は、トリガ提供者システム20上でのイベントやアクションの中から、対象のユーザ3について行動特性におけるトリガとなるイベント等に該当するものを抽出するための条件(フィルタ)を保持するテーブルであり、例えば、ユーザID、フィルタ、トリガキーなどの項目を有する。
【0038】
ユーザIDの項目は、トリガ提供者システム20において対象のユーザ3を一意に識別することができるIDの情報を保持する。このIDは、例えば、ユーザ3に対してトリガ提供者システム20によって付与されたIDであってもよいし、ユーザ3が保持する機器や媒体(例えばICカード等)に設定されたIDやシリアル番号等であってもよい。
【0039】
フィルタの項目は、対象のユーザ3によってフィルタ登録部21から登録されたフィルタの内容を保持する。図2の例では、説明の便宜上、対象の時間帯や改札を通過した駅の情報を条件とするフィルタが文章表現によって登録されているが、トリガ提供者システム20のトリガ通知部22においてイベント履歴23等との比較が可能なフォーマットであれば特に内容やカラムの構成は限定されず、トリガ提供者システム20の内容や仕様等によって種々のフィルタを構成することができる。
【0040】
トリガキーの項目は、対象のユーザ3の行動特性におけるトリガとなるイベントに対応するものとして、対象のユーザ3およびフィルタの組み合わせを一意に識別するためのトリガキーの情報を保持する。このトリガキーは、例えば対象のユーザ3が対象のフィルタをトリガ提供者システム20に登録する際に、フィルタ登録部21によって割り当てられる。このとき、トリガキーの値のみでは第三者が対象のユーザ3やフィルタの内容を把握できないようなランダムなデータ配列とする。このようなデータであれば形式は特に限定されず、文字配列やバイナリデータなど各種データ形式を利用することができる。
【0041】
図3は、サービス提供者システム30のサービス内容33のデータ構成について例を示した図である。サービス内容33は、トリガとなるイベントの発生に伴って対象のユーザ3が行動特性に基づいて実際に行動を実行する、もしくはユーザ3の行動の実行を支援するためにサービス提供者システム30が提供するサービスの内容を保持するテーブルであり、例えば、ユーザID、サービス内容、サービスキーなどの項目を有する。
【0042】
ユーザIDの項目は、サービス提供者システム30において対象のユーザ3を一意に識別することができるIDの情報を保持する。図2のフィルタ24におけるユーザIDの項目と同様に、例えば、ユーザ3に対してサービス提供者システム30によって付与されたIDであってもよいし、ユーザ3が保持する機器や媒体に設定されたIDやシリアル番号等であってもよい。
【0043】
サービス内容の項目は、対象のユーザ3によってサービス登録部31から登録されたサービスの内容を保持する。図3の例では、説明の便宜上、購入する物品や数、場所の情報からなるサービスの内容が文章表現によって登録されているが、サービス提供者システム30のサービス処理部32における処理の実行を指示・制御する情報であれば特に内容やカラムの構成は限定されず、サービス提供者システム30の内容や仕様等によって種々の内容を設定することができる。例えば、サービス提供に係る処理を実行するためのプログラムやスクリプト、テンプレート、およびこれらに設定するパラメータなどを指定することができる。
【0044】
サービスキーの項目は、対象のユーザ3の行動特性に基づく行動を実行もしくは支援するためのサービスの内容に対応するものとして、対象のユーザ3およびサービス内容の組み合わせを一意に識別するためのサービスキーの情報を保持する。このサービスキーは、例えば対象のユーザ3が対象のサービス内容をサービス提供者システム30に登録する際に、サービス登録部31によって割り当てられる。このとき、上述したトリガキーと同様に、サービスキーの値のみでは第三者が対象のユーザ3やサービス内容を把握できないようなランダムなデータ配列とする。
【0045】
図4は、連携サーバ10の行動特性13のデータ構成について例を示した図である。行動特性13は、対象のユーザ3がトリガとなるイベントの発生に伴って特定の行動をとるという行動特性のパターンの内容を保持するテーブルであり、例えば、ユーザID、トリガキー、サービスキー、連携先などの項目を有する。
【0046】
ユーザIDの項目は、連携サーバ10において対象のユーザ3を一意に識別することができるIDの情報を保持する。このIDは、例えば、ユーザ3に対して連携サーバ10によって付与される。
【0047】
トリガキー、およびサービスキーの項目は、それぞれ、対象のユーザ3の対象の行動特性のパターンにおけるトリガとなるイベント、および対応する行動を実行もしくは支援するためのサービス内容を特定するトリガキー、およびサービスキーの値を保持する。このように、行動特性はトリガキーとサービスキーとの組み合わせによって表現され、トリガとなるイベントやサービス内容の具体的な内容についての情報は含まない。従って、連携サーバ10においても、行動特性の具体的な内容については把握することはできない。
【0048】
連携先の項目は、対象の行動特性においてサービスキーによって特定されるサービス内容を実際に提供するサービス提供者システム30を特定する情報を保持する。すなわち、連携サーバ10が、あるトリガ提供者システム20から通知されたトリガキーの情報に対して、対象の行動特性において対応するサービスキーの情報を通知する相手方となるサービス提供者システム30を特定する情報を保持する。なお、図4の例では便宜上“コンビニY”という名称によって登録されているが、対象のサービス提供者システム30を一意に識別してサービスキーを通知することができる情報であれば、例えば、サービス提供者システム30のシステムIDやURL(Uniform Resource Locator)、IPアドレス、ホスト名など各種データによって登録することができる。
【0049】
なお、トリガ提供者システム20のイベント履歴23については、トリガ提供者システム20における複数のユーザ3による各種イベントの発生や条件の成立、アクションなどの履歴を保持するテーブルであるが、各トリガ提供者システム20がその仕様や処理内容等に特化してそれぞれ固有に有しているものであり、内容やデータ構成はそれぞれ異なるため、ここでの説明は省略する。
【0050】
なお、上述の図2〜図4で示した各テーブルのデータ構成(項目)はあくまで一例であり、同様のデータを保持・管理することが可能な構成であれば、他のテーブル構成やデータ構成であってもよい。
【0051】
<処理の流れ(行動特性登録時)>
図5は、行動支援システム1におけるユーザ3が行動特性を登録する際の処理の流れの例について概要を示した図である。図中では、ユーザ3自身が把握している行動特性として「平日の朝に会社へ行くときは会社近くの最寄りのコンビニYで缶コーヒーABCを2缶購入する」というパターンがあった場合を例としている。
【0052】
まずユーザ3は、トリガ提供者システム20、およびサービス提供者システム30に対して、行動特性においてトリガとなるイベント、およびトリガに対応するユーザ3の行動を実行もしくは支援するサービスの内容を登録する。
【0053】
トリガとなるイベントについては、まず「平日の朝に会社へ行くとき」というイベントを抽出することができるフィルタとして、例えば「平日7:30〜8:30に会社の最寄りのX鉄道のX1駅の改札を通過した場合」というようなシステム的に検知可能な形式のフィルタを作成する。すなわち、ここでは例えば、“X鉄道”の自動改札システムが検知可能な形式でフィルタを作成する。従って、ここでのトリガ提供者システム20は、“X鉄道”の自動改札システムや、これを管理する(自動改札システムでのイベントを把握することができる)管理システム等が該当することになる。
【0054】
ユーザ3は、トリガ提供者システム20(“X鉄道”のシステム)にアクセスし、フィルタ登録部21を介して「平日7:30〜8:30にX1駅の改札を通過する」というフィルタを登録する。このとき、フィルタ登録部21は、指定されたフィルタとユーザ3(具体的には例えばユーザ3の保持する乗車券機能付ICカードの識別IDなど)の組み合わせに対してトリガキーを生成し、これらの情報を上述の図2の例に示すようにフィルタ24に登録するとともに、生成したトリガキー(図5の例では“XX123”)をユーザ3に応答する。これによりユーザ3はトリガキーを取得する。
【0055】
一方、トリガに対応するユーザ3の行動を実行もしくは支援するサービスの内容については、「会社近くの最寄りのコンビニYで缶コーヒーABCを2缶購入する」という行動が該当する。ここでも、サービスの内容はシステム的に実行可能な形式で作成する。例えば、「X1駅前店で缶コーヒーABCを2缶購入する」という購買内容を“コンビニY”の販売受付システム等に登録するといような形式となる。従って、ここでのサービス提供者システム30は、“コンビニY”の販売受付システム等が該当することになる。
【0056】
ユーザ3は、サービス提供者システム30(“コンビニY”のシステム)にアクセスし、サービス登録部31を介して「缶コーヒーABCを2缶購入する」というサービス内容を登録する。このとき、サービス登録部31は、指定されたサービス内容とユーザ3の組み合わせに対してサービスキーを生成し、これらの情報を上述の図3の例に示すようにサービス内容33に登録するとともに、生成したサービスキー(図5の例では“YY456”)をユーザ3に応答する。これによりユーザ3はサービスキーを取得する。
【0057】
その後、ユーザ3は、連携サーバ10にアクセスし、行動特性登録部11を介して取得したトリガキーとサービスキーとの組み合わせからなる行動パターンを行動特性として登録する。ここでは、行動特性におけるトリガとなるイベントや対応する行動の具体的な内容を開示せず、「“XX123”というトリガキーが通知されたら“コンビニY”に対して“YY456”というサービスキーを通知する」というように内容を隠蔽した形式で指定する。行動特性登録部11は、指定された行動特性のパターンを行動特性13に登録する。
【0058】
なお、図5の例では、上述したように、ユーザ3がトリガ提供者システム20およびサービス提供者システム30から、それぞれトリガキーおよびサービスキーを取得して、これらの組み合わせからなる行動特性を上述の図4の例に示すように連携サーバ10に登録することで、行動特性におけるトリガとなるイベントや対応する行動の具体的な内容を連携サーバ10に開示せずに行動特性を登録する構成としている。
【0059】
これに対して、ユーザ3が連携サーバ10にアクセスして、行動特性として、トリガとなるイベントを抽出するフィルタの情報や、対応する行動を実行もしくは支援するサービスの内容を指定し、連携サーバ10においてこれらに対してトリガキーやサービスキーを生成した上で、トリガ提供者システム20やサービス提供者システム30に対してフィルタやサービス内容の登録をそれぞれ行うことで、ユーザ3によるアクセス先を連携サーバ10に集約する構成としてもよい。この場合も連携サーバ10には行動特性におけるトリガとなるイベントや対応する行動の具体的な内容については保持せず、また、これらの内容をトリガ提供者システム20やサービス提供者システム30に登録する際にはデータを暗号化するなどの対応を行うのが望ましい。
【0060】
<処理の流れ(行動支援時)>
図6は、行動支援システム1におけるユーザ3が行動特性に基づいた行動を行う際に支援する処理の流れの例について概要を示した図である。図中では、上述の図5の例で示した行動特性に対応する行動として、「平日の朝に会社へ行くときに会社近くの最寄りのコンビニYで缶コーヒーABCを2缶購入する」という行動を支援する場合を例としている。
【0061】
例えば、対象のユーザ3が、平日の朝に会社へ行くために“X鉄道”における会社の最寄り駅である“X1駅”の自動改札を乗車券機能付ICカード等を利用して通過した場合に、“X鉄道”のトリガ提供者システム20xである自動改札システム等が、当該イベントを履歴としてイベント履歴23に記録する。このときトリガ提供者システム20xのトリガ通知部22は、例えばイベント履歴23を定期的に参照し、フィルタ24に登録された各フィルタの内容と比較することで、トリガとなるイベントを抽出する。
【0062】
ここでは、対象のユーザ3が「平日の朝8:15にX1駅の改札を通過した」というイベント履歴23が、上述の図5の例において登録されているフィルタの条件に該当し、トリガとなるイベントが発生したことを検知する。トリガとなるイベントの検知により、トリガ通知部22は対応するトリガキー“XX123”のみを連携サーバ10に通知する。
【0063】
連携サーバ10では、トリガ提供者システム20xからのトリガキーの通知を受けた情報連携部12が、行動特性13を参照し、トリガキー“XX123”に対応するサービスキーと連携先のサービス提供者システム30の情報を取得する。ここでは上述の図5の例において登録された行動特性のパターンから、対応するサービスキーとして“YY456”が取得され、また、連携先として“コンビニY”の情報が取得される。従って、情報連携部12は、サービスキー“YY456”のみを連携先の“コンビニY”のサービス提供者システム30yである販売受付システム等に通知する。
【0064】
“コンビニY”のサービス提供者システム30yである販売受付システム等では、連携サーバ10からのサービスキーの通知を受けたサービス処理部32が、サービス内容33を参照し、サービスキー“YY456”に対応するサービス内容の情報を取得する。ここでは上述の図5の例において登録された、「X1駅前店で缶コーヒーABCを2缶購入する」というサービス内容が取得され、また、サービスの提供対象として、対象のユーザ3を識別するユーザIDの情報が取得される。
【0065】
サービス処理部32は、サービスの提供として、対象のユーザ3が「X1駅前店で缶コーヒーABCを2缶購入する」という処理を実行する。具体的には、例えば、“コンビニY”の販売受付システム等において、対象のユーザ3が“缶コーヒーABC”を2缶購入し、“X1駅前店”で引き渡しするという購入内容がエントリされる。エントリされた情報は、例えばPOSシステム等を介して“コンビニY X1駅前店”に通知され、この情報に基づいて店員が“缶コーヒーABC”2缶をレジの近辺等に予め準備しておく。これにより、対象のユーザ3は、“缶コーヒーABC”を購入するために“コンビニY X1駅前店”に立ち寄った際に、商品陳列棚から“缶コーヒーABC”を取ってくる等の手間をとらずにレジで直ちに“缶コーヒーABC”を効率よく受け取ることができる。
【0066】
なお、図6の例では、“コンビニY X1駅前店”のレジにて商品を準備するものとしているが、例えば、“コンビニY X1駅前店”がロッカータイプの無人の購入ボックス等を有しており、このボックスに予め対象の商品を入れておくようにすることで、ユーザ3はレジでの店員との対面を要さずに商品の購入と受領を行うことも可能である。
【0067】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態である行動支援システム1によれば、特定のイベントの発生をトリガとして特定の行動をとるというユーザ3毎の行動特性について、トリガ提供者システム20とサービス提供者システム30が、相互にトリガキーとサービスキーというキー情報のみでやり取りを行い、連携サーバ10によって、これらのキー情報を行動特性におけるトリガと行動との対応関係に基づいて中継して連携させる。
【0068】
これにより、行動特性におけるトリガとなるイベントや対応する行動の具体的な内容に係る情報を一つのシステム(連携サーバ10やトリガ提供者システム20、サービス提供者システム30)に集約させることなく、行動特性に基づいて行われるユーザ3の行動を支援することが可能となる。すなわち、ユーザ3は、他の第三者等に行動特性の具体的な内容全体を把握されることなく、行動特性に基づく行動を円滑に行うことが可能となる。
【0069】
別な表現をとると、行動特性においてトリガの発生元となるトリガ提供者システム20と、行動を実行もしくは支援するためのサービスを提供するサービス提供者システム30との間で、行動特性に係る情報を共有できない、あるいはすべきでない場合に、連携サーバ10によって、これらの間でトリガの発生情報とサービスの提供指示とを中継することで、行動特性に基づく行動を支援するよう連携させることが可能となる。
【0070】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0071】
例えば、本実施の形態では、行動特性として日常生活において定型的、ルーチン的に行われる商品やサービスの購入を例として説明したが、行動特性はこれらに限られず、例えば、自身や近親者等に事故や病気、死亡等の事情が発生したことを、病院や自治体、官公庁などのシステムがトリガとして通知し、保険会社のシステムに保険請求を行うという行動をとる場合など、多様な内容を含めることができる。また、日常的に繰り返される行動ではないものの、あるイベントが発生した場合には必ず行う、という行動パターンが予め明確になっている場合にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、ユーザ以外の第三者に知られたくない特定の行動特性に基づく行動が円滑に行われるよう支援する行動支援システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…行動支援システム、2…ネットワーク、3…ユーザ、
10…連携サーバ、11…行動特性登録部、12…情報連携部、13…行動特性、
20、20x…トリガ提供者システム、21…フィルタ登録部、22…トリガ通知部、23…イベント履歴、24…フィルタ、
30、30y…サービス提供者システム、31…サービス登録部、32…サービス処理部、33…サービス内容。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定のイベントの発生をトリガとして特定の行動をとるという行動特性に基づいて行われるユーザの行動を支援する行動支援システムであって、
前記ユーザの前記行動特性においてトリガとなるイベントを検知する1つ以上のトリガ提供者システムと、
前記トリガに対して、前記ユーザによる前記行動特性に基づいた行動を実行もしくは支援するためのサービスを提供する1つ以上のサービス提供者システムと、
前記行動特性における前記トリガと前記行動との対応関係に基づいて、それぞれに対応するキー情報を前記トリガ提供者システムと前記サービス提供者システムとの間で中継して連携させる連携サーバとを有し、
前記トリガ提供者システムは、前記ユーザについての前記トリガとなるイベントを抽出するためのフィルタと、前記フィルタに対応するトリガキーの情報とを保持し、前記サービス提供者システムは、提供する前記サービスの内容と、前記サービスの内容に対応するサービスキーの情報とを保持し、前記連携サーバは、前記トリガキーと対応する前記サービスキーとの組み合わせからなる前記行動特性を保持し、
さらに、前記トリガ提供者システムは、前記ユーザについての前記トリガとなるイベントの発生を検知して、対応する前記トリガキーを取得して前記連携サーバに通知するトリガ通知部を有し、前記連携サーバは、前記トリガ提供者システムから通知された前記トリガキーに対応する前記サービスキーを取得して対象となる前記サービス提供者システムに通知する情報連携部を有し、前記サービス提供者システムは、前記連携サーバから通知された前記サービスキーに対応する前記サービスの内容を取得して前記ユーザに対して前記サービスを提供するサービス処理部を有することを特徴とする行動支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の行動支援システムにおいて、
さらに、前記トリガ提供者システムは、前記ユーザから指定された前記行動特性における前記フィルタに対して前記トリガキーを割り当ててこれらを対応付けて保持するとともに前記ユーザに前記トリガキーを応答するフィルタ登録部を有し、
前記サービス提供者システムは、前記ユーザから指定された前記行動特性における前記サービスの内容に対して前記サービスキーを割り当ててこれらを対応付けて保持するとともに前記ユーザに前記サービスキーを応答するサービス登録部を有し、
前記連携サーバは、前記ユーザから指定された前記トリガキーと前記サービスキーとの組み合わせを前記行動特性として保持する行動特性登録部を有することを特徴とする行動支援システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−155580(P2012−155580A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14895(P2011−14895)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)