説明

衛生洗浄装置

【課題】装置が大型化すること、あるいはコストがかかることを抑制しつつ、水抜きを自動的に実行することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く流路と、前記流路の通水を制御し、外部電源からの電力の供給が停止すると開状態となり前記流路の通水を可能とするノーマルオープン式の電磁弁と、前記流路の途中に設けられ、前記水をヒータで加熱する貯湯タンクと、前記貯湯タンクよりも下流側の前記流路に設けられたバキュームブレーカと、外部電源からの電力の供給が開始すると前記電磁弁を閉じる制御を実行する制御部と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、衛生洗浄装置に関し、具体的には、例えば洋式腰掛便器に腰掛けた使用者の「おしり」などを水で洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生洗浄装置は、洗浄水を噴射する吐水ノズルを進退自在に収容し、腰掛便器の上に設置して使用者の「おしり」などを温水で洗浄することができる。このような衛生洗浄装置は、その内部に水路系を有するため、例えば、保守点検や、寒冷地において凍結を防ぐために、衛生洗浄装置の給水部の水抜きを行う必要がある。
【0003】
そこで、衛生洗浄装置への給水圧が低下すると、第2流路開閉弁が閉状態から開状態に遷移し、貯湯タンクの水を自動的に上流側に排出することができる衛生洗浄装置が開示されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1に記載された衛生洗浄装置では、吐水ノズルへの水の供給を制御する第1流路開閉弁と、給水圧が低下すると自動的に開状態となる第2流路開閉弁と、を第1流路および第2流路にそれぞれ設ける必要がある。そのため、装置が大型化したり、コストがかかるという点においては改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−63728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、装置が大型化すること、あるいはコストがかかることを抑制しつつ、水抜きを自動的に実行することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く流路と、前記流路の通水を制御し、外部電源からの電力の供給が停止すると開状態となり前記流路の通水を可能とするノーマルオープン式の電磁弁と、前記流路の途中に設けられ、前記水をヒータで加熱する貯湯タンクと、前記貯湯タンクよりも下流側の前記流路に設けられたバキュームブレーカと、外部電源からの電力の供給が開始すると前記電磁弁を閉じる制御を実行する制御部と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0007】
この衛生洗浄装置によれば、ノーマルオープン式の電磁弁が設けられている。そして、外部電源からの電力の供給が停止すると、電磁弁は、開状態となり流路の通水を可能とする。そのため、本発明の衛生洗浄装置では、外部電源からの電力の供給が停止した場合には、自動的にノーマルオープン式の電磁弁は開き、貯湯タンクの水を流路の上流側に排水することができる。すなわち、本発明の衛生洗浄装置は、貯湯タンクの水を給水源側に排水することができる。そのため、給水源から供給される水の水圧が低下することにより、衛生洗浄装置は、給水源側へ水抜きをより確実に実行することができる。
【0008】
より具体的には、家屋以外の用途、例えばキャンピングカーや列車、航空機などに衛生洗浄装置を搭載した場合、これらを低温環境下で駐車・駐機する際には、給水源を停止させ、また電源の供給も停止する場合が多い。つまり、キャンピングカーや列車、航空機などのトータルスイッチが切られ、電力の供給が停止されると、衛生洗浄装置の電源が切られ、給水源からの水の供給が停止される場合が多い。本発明の衛生洗浄装置は、このように水道以外(例えば貯水タンクなど)の給水源の水をポンプなどにより供給する場合などに有効な装置の1つであり、外部電源からの電力の供給の停止、あるいは給水源の水圧の低下に対応して衛生洗浄装置の水抜きを自動的に実行することができる。
【0009】
したがって、使用者は、水抜きを実行するための特別な操作をする必要がなく、外部電源から衛生洗浄装置への電力の供給を停止するだけで、水抜きを実行することができる。これにより、水抜き作業の手間が軽減され、使い勝手のよい衛生洗浄装置を提供できる。そして、水抜きを実行するための特別な電磁弁やバイパス流路や排水流路などを設ける必要がないため、衛生洗浄装置が大型化すること、あるいはコストがかかることを抑制しつつ、水抜きを自動的に実行することができる。
【0010】
一方、外部電源からの電力の供給が開始すると、制御部は、ノーマルオープン式の電磁弁へ通電し、その電磁弁を閉状態とする。これにより、給水源から供給された水は、電磁弁により止水される。そのため、外部電源から電力が供給されているときに、給水源から供給される水が吐水ノズルから垂れ流されることを抑制することができる。これにより、使用者は、より安心して衛生洗浄装置を使用することができる。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記制御部は、チョッパ制御を実行することにより、前記電磁弁の閉状態を維持することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0012】
この衛生洗浄装置によれば、制御部は、電磁弁の閉状態を維持するためにチョッパ制御を実行するため、電磁弁のソレノイドにおいて発生する熱を低減することができる。これによれば、電磁弁のソレノイドにおいて発生する熱を低減するための特別な放熱板や冷却装置などを設ける必要はないため、衛生洗浄装置が大型化すること、あるいはコストがかかることを抑制することができる。
【0013】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記バキュームブレーカと、前記吐水ノズルと、の間の前記流路に設けられ、前記外部電源からの電力の供給が停止すると前記流路内の水を止水可能な弁装置をさらに備えたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0014】
この衛生洗浄装置によれば、外部電源からの電力の供給が停止している場合に、給水源から水が供給されたときでも、弁装置は、流路内の水を止水することができる。そのため、給水源から供給される水が吐水ノズルから垂れ流されることを抑制することができる。これにより、使用者は、より安心して衛生洗浄装置を使用することができる。また、弁装置は、バキュームブレーカと吐水ノズルとの間の流路に設けられているため、貯湯タンクの給水源側への水抜きを支障なく実行することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、装置が大型化すること、あるいはコストがかかることを抑制しつつ、水抜きを自動的に実行することができる衛生洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の水路系の要部構成を表すブロック図である。
【図3】本実施形態の電磁弁の内部構造を例示する断面模式図である。
【図4】変形例の電磁弁の内部構造を例示する断面模式図である。
【図5】本実施形態の具体例にかかる衛生洗浄装置の要部構成を例示するブロック図である。
【図6】衛生洗浄装置の電源が切れた場合の動作を例示するフローチャート図である。
【図7】衛生洗浄装置の電源が入った場合の動作を例示するフローチャート図である。
【図8】電磁弁のソレノイドに印加する電圧の一例を例示するグラフ図である。
【図9】電磁弁のソレノイドに印加する電圧の他の一例を例示するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【0018】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下、単に「便器」ともいう)950と、その上に設置された衛生洗浄装置10と、を有する。洋式腰掛便器950は、いわゆる「ロータンク式」のものでもよく、または水道などの給水源に直結されて洗浄水を流す「直圧式」のものでもよい。便器950の上に設置された衛生洗浄装置10は、本体部12と、この本体部12に対して開閉自在に軸支された便座14及び便蓋16と、を備える。ただし便蓋16は、設けなくてもよい。本体部12からは、使用者のスイッチ操作などに応じて吐水ノズル410が便器950のボウル内に伸出し、その先端付近に設けられた吐水口から水を噴射して、使用者の「おしり」などを洗浄可能とされている。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0019】
図2は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の水路系の要部構成を表すブロック図である。
衛生洗浄装置10は、貯水タンクなどの給水源20から供給される水をノズルユニット400に導く流路110を有する。流路110の上流側には、まず止水栓112が設けられている。止水栓112は、手動による開閉が可能とされ、例えば、衛生洗浄装置10の取付・取り外しや保守点検の際などに水路を随時遮断することができる。なお、止水栓112は、衛生洗浄装置10に設けてもよく、または、衛生洗浄装置10とは別体の要素として貯水タンクなどの給水源20の供給口の側に設けてもよい。
【0020】
止水栓112の下流には、ストレーナ114と、電磁弁120と、調圧弁130と、が設けられている。ストレーナ114は、例えば80メッシュ程度のフィルタであり、給水に混入した異物を除去する。電磁弁120は、非通電時において開状態となるノーマルオープン式のバルブであり、制御部(図5参照)からの指令に基づいて流路110の通水を制御する。つまり、電磁弁120は、非通電時において流路110を開き、流路110の通水を可能とする。ここで、本願明細書において「ノーマルオープン式の電磁弁」とは、バルブを開状態から閉状態に変化させる場合には電力を必要とする一方で、バルブを閉状態から開状態に変化させる場合には電力を必ずしも必要とはしないものをいう。さらに、本願明細書において「ノーマルオープン式の電磁弁」とは、バルブを開状態に維持するためには電力を必ずしも必要とはせず、バルブを閉状態に維持するためには電力を必要とするものをいう。この電磁弁120については、後に詳述する。調圧弁130は、給水圧が高い場合に、所定の圧力範囲に調整する役割を有する。
【0021】
調圧弁130の下流には、安全弁140が設けられている。安全弁140は、水路の圧力が上昇した時に開いて、水を便器950のボウルに排出する。安全弁140を設けることにより、例えば調圧弁130の故障などによりその2次側の水路の圧力が上昇した場合でも、衛生洗浄装置10の内部に漏水が生ずることを防止できる。
【0022】
安全弁140の下流には、熱交換ユニット200が設けられている。熱交換ユニット200は、流路110の途中に設けられた貯湯タンク201を有する。貯湯タンク201は、供給された水をヒータで加熱し、所定の温水にする。熱交換ユニット200の下流には、バキュームブレーカ210、230から、流量調整弁ユニット(弁装置)300を経てノズルユニット400が接続されている。バキュームブレーカ210、230は、熱交換ユニット200とノズルユニット400との間の流路110の水抜きを促進させる。流量調整弁ユニット300は、ノズルユニット400に設けられている吐水ノズルやノズル洗浄室(図5参照)への給水の切替や水勢の調整をする。なお、流量調整弁ユニット300の2次側に、水に脈動を与える脈動ユニットなどを設けてもよい。
【0023】
そして、本実施形態では、外部電源(図5参照)からの電力の供給が停止すると、電磁弁120は、開状態となり流路110の通水を可能とする。これによれば、本実施形態にかかる衛生洗浄装置10では、外部電源からの電力の供給が停止された場合には、自動的にノーマルオープン式の電磁弁120は開き、貯湯タンク201の水を流路110の上流側に排水することができる。すなわち、衛生洗浄装置10は、図2に表した矢印A1のように、貯湯タンク201の水を給水源20側に排水することができる。そのため、給水源20から供給される水の水圧が低下することにより、衛生洗浄装置10は、給水源20側へ水抜きをより確実に実行することができる。
【0024】
より具体的には、家屋以外の用途、例えばキャンピングカーや列車、航空機などに衛生洗浄装置を搭載した場合、これらを低温環境下で駐車・駐機する際には、給水源を停止させ、また電源の供給も停止する場合が多い。つまり、キャンピングカーや列車、航空機などのトータルスイッチが切られ、電力の供給が停止されると、衛生洗浄装置の電源が切られ、給水源からの水の供給が停止される場合が多い。本実施形態にかかる衛生洗浄装置10は、このように水道以外(例えば貯水タンクなど)の給水源20の水をポンプなどにより供給する場合などに有効な装置の1つであり、外部電源からの電力の供給の停止、あるいは給水源の水圧の低下に対応して衛生洗浄装置10の水抜きを自動的に実行することができる。
【0025】
したがって、使用者は、衛生洗浄装置10の止水栓112や図示しない水抜き弁をわざわざ操作する必要がなく、外部電源から衛生洗浄装置10への電力の供給を停止するだけで、水抜きを実行することができる。これにより、水抜き作業の手間が軽減され、使い勝手のよい衛生洗浄装置を提供できる。そして、水抜きを実行するための特別な電磁弁やバイパス流路や排水流路などを設ける必要がないため、衛生洗浄装置10が大型化すること、あるいはコストがかかることを抑制しつつ、水抜きを自動的に実行することができる。
【0026】
一方、外部電源からの電力の供給が開始すると、制御部は、ノーマルオープン式の電磁弁120へ通電し、その電磁弁120を閉状態とする。これにより、給水源20から供給された水は、電磁弁120により止水される。そのため、外部電源から電力が供給されているときに、給水源20から供給される水が吐水ノズル410から垂れ流されることを抑制することができる。これにより、使用者は、より安心して衛生洗浄装置10を使用することができる。
【0027】
ここで、衛生洗浄装置10の電源が入っているときには、電磁弁120の閉状態を維持するために、制御部は電磁弁120へ常時通電しておく必要がある。そうすると、電磁弁120のソレノイドがより高温に発熱するおそれがある。これに対して、本実施形態にかかる衛生洗浄装置10は、例えばチョッパ制御などにより電磁弁120の閉状態を維持することができる。そのため、電磁弁120のソレノイドにおいて発生する熱を低減することができる。これによれば、電磁弁120のソレノイドにおいて発生する熱を低減するための特別な放熱板や冷却装置などを設ける必要はないため、衛生洗浄装置10が大型化すること、あるいはコストがかかることを抑制することができる。
【0028】
なお、貯湯タンク201には、約700ミリリットル程度の水が残留していることもあるが、この場合でも、本実施形態にかかる衛生洗浄装置10は、より確実に水抜きを自動的に実行することができる。なお、本発明は貯湯タンクを用いたものには限定されず、いわゆる瞬間加熱式の熱交換機を有するものも包含する。
【0029】
次に、本実施形態のノーマルオープン式の電磁弁120の一例について、図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態の電磁弁の内部構造を例示する断面模式図である。
また、図4は、変形例の電磁弁の内部構造を例示する断面模式図である。
なお、図3(a)および図4(a)は、電磁弁が閉じた状態を表す断面模式図であり、図3(b)および図4(b)は、電磁弁が開いた状態を表す断面模式図である。
【0030】
図3および図4には、ノーマルオープン式の電磁弁120の一例として、ノーマルオープン式ソレノイドバルブを表した。この電磁弁120は、弁本体121を有し、その弁本体121の周縁部には、ソレノイド123が設けられている。また、弁本体121の内部には、弁体124aを一端部に有するプランジャ124と、プランジャ124を上流側(1次側)へ付勢するスプリング127と、が設けられている。このスプリング127は、プランジャ124と、弁本体121の下流側(2次側)の内壁と、に接続されている。そのため、スプリング127は、プランジャ124を1次側へ押すように付勢力を作用させる。
【0031】
弁本体121には、給水源20から供給された水を流入させる流入路121aと、電磁弁120から水を流出させる流出路121cと、が形成されている。さらに、流入路121aと流出路121cとの間には、2次側へ移動したプランジャ124の弁体124aと接触する弁座121bが形成されている。つまり、プランジャ124は、弁座121bに対して接離自在に1次側および2次側へ移動することができる。
【0032】
このような構造を有する電磁弁120において、外部電源からの電力の供給が開始し、ソレノイド123への通電が開始すると、ソレノイド123は磁界を発生する。そうすると、この磁界により、プランジャ124は、図3(a)に表したように、スプリング127の付勢力に対抗して2次側へ移動する。そして、弁体124aと弁座121bとは接触し、流出路121cは弁体124aにより閉塞される。また、給水源20から供給された水は、図3(a)に表した矢印A2のように、流入路121aから弁本体121の内部へ流入し、図3(a)に表した矢印A3のように、プランジャ124に2次側へ向かう力(1次圧)を与える。
【0033】
これらにより、電磁弁120は閉状態となり、給水源20から供給された水は、電磁弁120により止水される。この状態(電磁弁120が閉じた状態)は、ソレノイド123への通電が継続あるいは断続されることにより維持される。つまり、電圧が一定値として連続的に印加される場合だけではなく、例えばチョッパ制御のように、電圧が異なる値に切り替えられつつ所定時間の間隔で繰り返し印加される場合に、電磁弁120の閉状態は維持される。ここで、本願明細書において「チョッパ制御」とは、異なる値の電圧を所定時間の間隔で繰り返し印加する制御をいうものとする。なお、ソレノイド123への通電の具体例については後に詳述する。
【0034】
続いて、外部電源からの電力の供給が停止し、ソレノイド123への通電が停止すると、ソレノイド123は磁界を発生しない。また、外部電源からの電力の供給が停止し、給水源20からの水の供給が停止する場合には、プランジャ124に作用する1次圧は低下する。そうすると、プランジャ124は、図3(b)に表したように、スプリング127の付勢力により1次側へ移動する。そして、弁体124aと弁座121bとは離間し、流出路121cが開口する。そのため、流入路121aと流出路121cとは連通する。これにより、電磁弁120は、非通電時において自動的に開状態となり、貯湯タンク201の水は、図3(b)に表した矢印A4およびA5のように、流出路121cおよび流入路121aを介して給水源20側に排水される。この状態(電磁弁120が開いた状態)は、ソレノイド123への非通電が継続されることにより維持される。
【0035】
このように、ノーマルオープン式の電磁弁120では、ソレノイド123への通電を停止することにより、電磁弁120を開状態に維持することができ、一方で、ソレノイド123への通電を継続あるいは断続することにより、電磁弁120を閉状態に維持することができる。
ここで、スプリング127は、図4に表した変形例の電磁弁120のように、プランジャ124と、弁本体121の上流側の内壁と、に接続され、プランジャ124を上流側へ付勢してもよい。つまり、この場合には、スプリング127は、プランジャ124を流入路121a側へ引っ張るように付勢力を作用させる。本変形例の場合には、図4(a)に表したように、弁体124aが流出路121cを閉塞する際に、スプリング127が邪魔になりにくいという点で有利である。そのため、より少ない消費電力で電磁弁120の閉状態を維持することができる。
【0036】
また、本実施形態の電磁弁120では、スプリング127のばね定数を適宜設定することにより、流入路121aから流入する水の1次圧だけで電磁弁120の閉状態が維持されてもよい。この場合には、ソレノイド123への通電を継続あるいは断続することなく、流出路121cが弁体124aにより閉塞された状態(電磁弁120の閉状態)が維持される。そのため、より少ない消費電力で電磁弁120の閉状態を維持することができる。
【0037】
次に、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図5は、本実施形態の具体例にかかる衛生洗浄装置の要部構成を例示するブロック図である。
なお、図5は、水路系および電気系の要部構成を併せて表している。
【0038】
本具体例にかかる衛生洗浄装置10には、図2に関して前述したノーマルオープン式の電磁弁120と、調圧弁130と、熱交換ユニット200と、流量調整弁ユニット300と、ノズルユニット400と、が適宜設けられている。ノズルユニット400には、吐水ノズル410と、これを伸出・後退させるノズルモータ480と、吐水ノズル410の外周に水を噴射してその胴体を洗浄するノズル洗浄室490と、が設けられている。これら各要素の動作は、制御部500により制御される。また、制御部500には、便座14に使用者が座っていることを検知する着座センサ600からの信号や、操作部(リモコン)700などによるスイッチ操作の情報などが入力される。
【0039】
さらに、本具体例にかかる衛生洗浄装置10には、電源回路570が設けられている。電源回路570は、外部電源30と接続されており、外部電源30から供給される電力を衛生洗浄装置10の動作に使用することができる。
【0040】
次に、本具体例にかかる衛生洗浄装置10の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図6は、衛生洗浄装置の電源が切れた場合の動作を例示するフローチャート図である。
【0041】
まず、例えばキャンピングカーや列車、航空機などのトータルスイッチが切られ、外部電源30からの電力の供給が停止すると、衛生洗浄装置10の電源が切れる(ステップS101)。そうすると、給水源20からの水の供給が停止する(ステップS103)。
【0042】
このとき、衛生洗浄装置10の電源が切れ、ソレノイド123への通電が停止するため、ソレノイド123は磁界を発生しない。また、給水源20からの水の供給が停止するため、プランジャ124に作用する1次圧は、給水源20から水が供給されているときよりも低下する。これらにより、プランジャ124および弁体124aは、スプリング127の付勢力により1次側へ移動する(ステップS105)。そして、弁体124aと弁座121bとは離間し、流出路121cが開口する。これにより、電磁弁120は、開状態となる(ステップS107)。そして、電磁弁120が開いた状態は、ソレノイド123への通電が停止している間において維持される。
【0043】
これにより、電磁弁120は、非通電時において自動的に開状態となり、貯湯タンク201の水は、流出路121cおよび流入路121aを介して給水源20側に排水される。すなわち、貯湯タンク201の水を給水源20側へ水抜きすることができる(ステップS109)。
【0044】
本具体例の動作によれば、外部電源30からの電力の供給の停止、あるいは給水源20の水圧の低下に対応して衛生洗浄装置10の水抜きを自動的に実行することができる。したがって、使用者は、衛生洗浄装置10の止水栓112や図示しない水抜き弁をわざわざ操作する必要がなく、外部電源30から衛生洗浄装置10への電力の供給を停止するだけで、水抜きを実行することができる。これにより、水抜き作業の手間が軽減され、使い勝手のよい衛生洗浄装置を提供できる。そして、水抜きを実行するための特別な電磁弁やバイパス流路や排水流路などを設ける必要がないため、衛生洗浄装置10が大型化すること、あるいはコストがかかることを抑制しつつ、水抜きを自動的に実行することができる。
【0045】
図7は、衛生洗浄装置の電源が入った場合の動作を例示するフローチャート図である。 また、図8は、電磁弁のソレノイドに印加する電圧の一例を例示するグラフ図である。 また、図9は、電磁弁のソレノイドに印加する電圧の他の一例を例示するグラフ図である。
【0046】
まず、例えばキャンピングカーや列車、航空機などのトータルスイッチが入れられ、外部電源30からの電力の供給が開始すると、衛生洗浄装置10の電源が入る(ステップS201)。なお、ここでいう「衛生洗浄装置10の電源が入る」という範囲には、衛生洗浄装置10が設置された後に初めて電源が入る場合だけではなく、再び電源が入る場合も包含される。すなわち、例えばキャンピングカーや列車、航空機などのトータルスイッチが再び入れられることにより、衛生洗浄装置10の電源が再び入り、衛生洗浄装置10の動作を再開させる場合も包含される。
【0047】
ここで、衛生洗浄装置10の電源が入り、ソレノイド123への通電が開始すると、ソレノイド123は磁界を発生する。そうすると、この磁界により、プランジャ124および弁体124aは、スプリング127の付勢力に対抗して2次側へ移動する(ステップS203)。そして、弁体124aと弁座121bとは接触し、流出路121cは弁体124aにより閉塞される。これにより、電磁弁120は、閉状態となる(ステップS205)。
【0048】
このとき、ソレノイド123へ印加される電圧は、図8および図9に表した「閉動作」における電圧のように、例えば24ボルトである。プランジャ124をスプリング127の付勢力に対抗して2次側へ移動させるためには、電磁弁120の閉状態を維持するときよりも大きな力が必要である。そのため、プランジャ124を2次側へ移動させる動作(閉動作)を実行するときには、制御部500は、ソレノイド123へ一定の電圧(ここでは、24ボルト)を連続的に印加する。
【0049】
続いて、制御部500は、ソレノイド123への通電を継続あるいは断続することにより、電磁弁120の閉状態を維持する。本具体例では、ソレノイド123へ印加される電圧は、図8に表した「閉状態維持」における電圧のように、例えば24ボルトと5ボルトとを交互に所定時間の間隔で繰り返される。すなわち、制御部500は、チョッパ制御を実行することにより電磁弁120の閉状態を維持する(ステップS207)。このときのチョッパ制御の周期やデューティ比については、電磁弁120の閉状態を維持できる範囲において適宜設定可能である。
【0050】
また、衛生洗浄装置10の電源が入ると、給水源20からの水の供給が開始するため、流入路121aから流入する水によりプランジャ124には1次圧が作用する。そのため、プランジャ124をスプリング127の付勢力に対抗して2次側へ移動させるときよりも小さな力で電磁弁120の閉状態を維持することができる。これにより、制御部500は、図8に表したグラフ図のように、チョッパ制御を実行することにより電磁弁120の閉状態を維持することができる。
【0051】
あるいは、プランジャ124には1次圧が作用しているため、スプリング127のばね定数を適宜設定することにより、制御部500は、例えば図9に表した「閉状態維持」における電圧のように、「閉動作」のときよりも低い電圧(ここでは、5ボルト)を連続的に印加することで電磁弁120の閉状態を維持することができる。そして、衛生洗浄装置10の動作の準備が完了する(ステップS209)。
【0052】
本具体例の動作によれば、外部電源30からの電力の供給が開始すると、制御部500は、電磁弁120へ通電し、その電磁弁120を閉状態とする。これにより、給水源20から供給された水は、電磁弁120により止水される。そのため、外部電源30から電力が供給されているときに、給水源20から供給される水が吐水ノズル410から垂れ流されることを抑制することができる。これにより、使用者は、より安心して衛生洗浄装置10を使用することができる。
【0053】
また、制御部500は、電磁弁120の閉状態を維持するためにソレノイド123への通電を継続あるいは断続するが、例えば図8に表したグラフ図のように、チョッパ制御を実行することにより電磁弁120の閉状態を維持することができる。あるいは、制御部500は、例えば図9に表したグラフ図のように、「閉動作」のときよりも低い電圧を連続的に印加することにより電磁弁120の閉状態を維持することができる。そのため、電磁弁120のソレノイド123において発生する熱を低減することができる。これによれば、電磁弁120のソレノイド123において発生する熱を低減するための特別な放熱板や冷却装置などを設ける必要はないため、衛生洗浄装置10が大型化すること、あるいはコストがかかることを抑制することができる。
【0054】
さらに、本具体例にかかる衛生洗浄装置10では、バキュームブレーカ210、230とノズルユニット400との間に、より具体的には、バキュームブレーカ210、230と吐水ノズル410との間に、流量調整弁ユニット(弁装置)300が設けられている(図2参照)。流量調整弁ユニット300は、外部電源30からの電力の供給が停止すると閉状態となり、流路110内の水を止水することができる。流量調整弁ユニット300は、給水の切替や水勢の調整を行うだけであるため、より多くの消費電力を必要とせず、より少ない消費電力で動作することができる。
【0055】
これによれば、外部電源30からの電力の供給が停止している場合に、給水源20から水が供給されたときでも、流量調整弁ユニット300は、流路110内の水を止水することができる。そのため、この場合でも、給水源20から供給される水が吐水ノズル410から垂れ流されることを抑制することができる。これにより、使用者は、より安心して衛生洗浄装置10を使用することができる。また、流量調整弁ユニット300は、バキュームブレーカ210、230と吐水ノズル410との間に設けられているため、貯湯タンク201の給水源20側への水抜きを支障なく実行することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、衛生洗浄装置10は、ノーマルオープン式の電磁弁120を有する。そして、外部電源30からの電力の供給が停止すると、電磁弁120は、開状態となり流路110の通水を可能とする。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置10では、外部電源30からの電力の供給が停止した場合には、自動的にノーマルオープン式の電磁弁120は開き、貯湯タンク201の水を流路110の上流側に排水することができる。すなわち、衛生洗浄装置10は、貯湯タンク201の水を給水源20側に排水することができる。そのため、給水源20から供給される水の水圧が低下することにより、衛生洗浄装置10は、給水源20側へ水抜きをより確実に実行することができる。
【0057】
したがって、使用者は、衛生洗浄装置10の止水栓112や図示しない水抜き弁をわざわざ操作する必要がなく、外部電源から衛生洗浄装置10への電力の供給を停止するだけで、水抜きを実行することができる。これにより、水抜き作業の手間が軽減され、使い勝手のよい衛生洗浄装置を提供できる。そして、水抜きを実行するための特別な電磁弁やバイパス流路や排水流路などを設ける必要がないため、衛生洗浄装置10が大型化すること、あるいはコストがかかることを抑制しつつ、水抜きを自動的に実行することができる。
【0058】
一方、外部電源30からの電力の供給が開始すると、制御部500は、ノーマルオープン式の電磁弁120へ通電し、その電磁弁120を閉状態とする。これにより、給水源20から供給された水は、電磁弁120により止水される。そのため、外部電源30から電力が供給されているときに、給水源20から供給される水が吐水ノズル410から垂れ流されることを抑制することができる。これにより、使用者は、より安心して衛生洗浄装置10を使用することができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、ノーマルオープン式の電磁弁120などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや電磁弁120や調圧弁130の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。すなわち、図2および図5に表したブロック図では、電磁弁120は、調圧弁130よりも上流側に設けられているが、調圧弁130よりも下流側に設けられていてもよい。
また、図8および図9に表したグラフ図では、24ボルトと5ボルトとの電圧が印加される場合を例に挙げて説明したが、ソレノイド123に印加される電圧はこれだけに限定されるわけではない。これらの電圧については、電磁弁120の閉動作を実行できる範囲、および電磁弁120の閉状態を維持できる範囲において適宜変更可能である。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0060】
10 衛生洗浄装置、 12 本体部、 14 便座、 16 便蓋、 20 給水源、 30 外部電源、 110 流路、 112 止水栓、 114 ストレーナ、 120 電磁弁、 121 弁本体、 121a 流入路、 121b 弁座、 121c 流出路、 123 ソレノイド、 124 プランジャ、 124a 弁体、 127 スプリング、 130 調圧弁、 140 安全弁、 200 熱交換ユニット、 201 貯湯タンク、 210、230 バキュームブレーカ、 300 流量調整弁ユニット、 400 ノズルユニット、 410 吐水ノズル、 480 ノズルモータ、 490 ノズル洗浄室、 500 制御部、 570 電源回路、 600 着座センサ、 700 操作部、 950 洋式腰掛便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、
給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く流路と、
前記流路の通水を制御し、外部電源からの電力の供給が停止すると開状態となり前記流路の通水を可能とするノーマルオープン式の電磁弁と、
前記流路の途中に設けられ、前記水をヒータで加熱する貯湯タンクと、
前記貯湯タンクよりも下流側の前記流路に設けられたバキュームブレーカと、
外部電源からの電力の供給が開始すると前記電磁弁を閉じる制御を実行する制御部と、
を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、チョッパ制御を実行することにより、前記電磁弁の閉状態を維持することを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記バキュームブレーカと、前記吐水ノズルと、の間の前記流路に設けられ、前記外部電源からの電力の供給が停止すると前記流路内の水を止水可能な弁装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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