衛生洗浄装置
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、局部洗浄機能を備えた衛生洗浄装置に係り、特に洗浄水の流量を調整するバルブユニットの改良に関する。
〔従来の技術〕
従来から、局部洗浄機能を持つ衛生洗浄装置をたとえば腰掛式の水洗便器等に据付けたものが利用されている。衛生洗浄装置は、そのケーシング内に局部洗浄用のノズルを備え、このノズルに洗浄用の温水を供給するための温水タンク又は熱交換器等を設けたものである。そして、ノズルの作動及び洗浄水の温度や流量を制御するための制御部を設けて快適な洗浄が行える構成を持たせている。
温水タンク又は熱交換器等から加熱された洗浄水をノズルへ送り込むための配管系には、電磁弁やニードル弁等を含む流路開閉及び流量調整用のバルブユニットを備えている。そして、外部の給水源に連絡する給水管や温水タンクへの供給管がこのバルブユニットに接続される。
このようなバルブユニットを備えた衛生洗浄装置としては、本出願人が先に出願して実開昭61−164382号として公開されたものがある。これは、バルブユニットに流量調整用として設けたニードル弁をケーシングに設けた調整摘みによって操作する構成としたものである。そして、調整摘みとニードル弁との間には可撓性のケーブルを設け、手動による操作で洗浄水の流量を調整できるようにしている。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところが、ケーシングに調整摘みを設けると、その軸部がケーシングを貫通した構造となる。一方、水周り機器の一種である衛生洗浄装置では、内蔵した制御部や操作部等の電気回路に水が浸入することは漏電事故等の原因となるため、軸部周りをシールする必要がある。このため、ケーシングの形状自体も複雑となるほか、調整摘みが突き出るので、埃等が積りやすく、掃除もし難いという面がある。
また、調整摘みからバルブユニットまでにケーブルを設けるので、そのための配線スペースを必要とし、組立も煩雑になる。更に、ケーブルによって機械的な遠隔操作によってバルブユニットの弁体を動かすので、ケーブルの配線が不良であったり弁体との機械的な接続が不十分であると、調整摘みの回転量に対応しない弁開度となって適正な流量調整に支障をきたしてしまう。
ニードル弁を用いる場合、流路内へ向けて進退する弁体の回転角度によって流路面積を変更する構造が一般的である。そして、調整摘みの回転角度に比例して流路面積を増減させることで流量調整することが基本である。しかし、バルブユニット内に設ける洗浄水の流路は、製作加工の面から円形断面が一般的であり、弁体をこの流路断面を横切るように配置したり、流路端に同軸配置される。このため、弁体が完全に流路を閉じた状態から一定速度で開く方向へ移動させるときには、流路面積の増加率を一様とすることは困難であり、流量特性はたとえば第12図の(a)及び(b)等のパターンとなることが通常である。
このようなニードル弁を用いたときの流量特性に対し、流量調整摘みの回転角度に対して流路面積をほぼ比例して増減させることが必要となる。しかし、調整摘みの機械的な回転をケーブルによってニードル弁に直結した構成では、調整摘みの回転角度に対応してニードル弁が回転するので、流路面積をリニアに変化させることは不可能である。このため、調整摘み周りに流量の大小を判別する表示部を設けるにしても、定量的に正確な数値表示とすることはできない。したがって、表示も正確なものではないために、適正な洗浄水の量の設定に支障をきたすことが多い。
そこで、本発明は、電動機をニードル弁の弁体に直結して構造を簡単にすると共に流量の設定が定量的に確実に行えるようにすることを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明の衛生洗浄装置は、洗浄水を人体の局部に対して吐出する衛生洗浄装置において、回転可能であって、回転角度に応じて一次流路(11)から二次流路(12)に導く洗浄水量を制御する弁体(9)を内蔵するバルブユニット(3)と、該バルブユニット(3)に固定され、使用者の操作に応じて前記弁体(9)に回転力を与えるモータ(8)とを備えたことを特徴とする。
また、前記モータ(8)は、前記バルブユニット(3)に固定されるための平坦面を備え、さらに、前記平坦面から突出し、前記弁体(9)と結合するための出力軸(I5)を備えることができる。
〔実施例〕
以下、図面に示す実施例により本発明の特徴を具体的に説明する。
第1図は本発明の衛生洗浄装置を備えた水洗便器の斜視図である。
図において、腰掛式の便器本体Aの後部側の上面を跨いで局部洗浄用の衛生洗浄装置Bが配置され、そのケーシング1に便座1a及び便蓋1bを開閉自在に備え、更にノズル1cがほぼ中央部分に配置されている。
第2図はケーシング1の内部を示す概略平面図であり、内部の左端にはヒータや温度センサ等を内蔵した温水タンク2を配置し、その右側にバルブユニット3を設けている。このバルブユニット3には外部の給水源に連絡する給水管4aが接続されると共に、温水タンク2との間に供給管4bを配管している。また、温水タンク2によって加熱された洗浄水は、給送管4cによってノズル1cに送られる。なお、ノズル1cは電動機を備えたノズル駆動装置1dに含まれ、図示の収納位置から第1図の洗浄位置まで進出して洗浄水を噴出可能に構成されている。
第3図はバルブユニット3を経由して送り込まれる洗浄水の流れを示すブロック図であり、バルブユニット3には減圧弁,電磁開閉弁及びニードル弁が収納され、この他に不感水量対策としての流路系が備えられている。
第4図及び第5図はバルブユニット3の全体を示す平面図及び正面図である。
図において、給水管4aに接続される流入管3aに連通する減圧弁5から順に電磁開閉弁6及び流量調整用のニードル弁7を経る流路が内部に形成されている。そして、流出管3bが温水タンク2への供給管4bに接続され、設定された流量の水が温水タンク2へ送り込まれる。
減圧弁5は、給水管4aから流入する水に抵抗を与えて適切な供給水圧となるまで減圧する機能を果たす。そして、その具体的な構造は、一般に利用されている絞り弁の機構を利用し、その弁体による流路の絞りを据え付け条件に合わせて予め設定しておくもの等が採用される。また、電磁開閉弁6は、温水タンク2への流路を開いて水の供給を可能とするもので、減圧弁5側の流路とニードル弁7側の流路を開閉することによって、水の供給及び停止を行なう。この電磁開閉弁6の構造例としては、減圧弁5と同様に従来から利用されている電磁コイルへの通電によって弁体を移動させるもの等が利用できる。
ニードル弁7は、電磁開閉弁6からの流路と流出管3bとの間に位置し、弁体の絞りによって温水タンク2への水の供給流量を調整し、ノズル1cからの洗浄温水の水勢を調節する機能を果たす。そして、このニードル弁7の弁体は、バルブユニット3に一体化したモータ8に直結され、その出力軸の正逆回転により弁体を進退させ、流路面積を変えることによって温水タンク2への流量を調節する構造となっている。
第6図はモータ8を除いてその取付面側から見たバルブユニット3の側面図、第7図は第6図のII−II線矢視位置による要部の拡大縦断面図である。
図において、バルブユニット3の側面にはモータ8をビス8aで固定するための固定座8bを設け、このモータ8の出力軸に直結されて回転する弁体9がチャンバ10の中に挿入されている。チャンバ10は、壁側に大径の雌ネジ10aを形成すると共に先端側に向けて小径の流路孔10bを同軸上に設けている。そして、流路孔10bは、電磁開閉弁6側に連絡した一次流路11と流出管3b側に連絡した二次流路12とが接続可能となるように形成され、流路孔10bと一次流路11との間の隔壁13には弁孔14が開けられている。
一方、弁体9はその基端部に雄ネジ9aを形成してチャンバ10の雌ネジ10aに螺合され、回転によって軸線方向へ移動可能である。また、弁体9の先端には、隔壁13の弁孔14に嵌まり込むヘッド9bが円錐台状に形成され、図示の状態では弁孔14を閉じている。そして、弁体9を回転させながら左側へ移動させると、ヘッド9bの外周壁がテーパ状となっているので、弁孔14の内周壁との間にできる環状流路の断面が次第に大きくなり、通過流量を増やすことができる。また、弁体9の基端部には、モータ8の出力軸を嵌め込むための連結孔9cを軸線方向に穿つと共に、その周壁には係合溝9dを半径方向に突き出して設けている。
第8図及び第9図はモータ8を示すもので、バルブユニット3の側壁に固定するために一面を平坦面として、出力軸15を突き出している。出力軸15は、弁体9の連結孔9cに嵌まり込むと同時に係合ピン15aを半径方向に突き出してこれを係合溝9dに挿入して一体化される。また、係合ピン15aとは別にストッパピン15bを出力軸15の基端側に設け、これをバルブユニット3の側壁に突き出した円弧状のストッパ3cに係合させ、出力軸15の回転を一定範囲に規制する。
更に、バルブユニット3には、温水タンク2への水の供給系以外に、第3図のブロック図に示すように、不感水量対策として逆止弁16を経て捨水管17に向かう流路を分岐させている。第10図は第4図のI−I線矢視断面図であって逆止弁16部分の流路構造を示している。逆止弁16の弁体16aへの流路16bは電磁開閉弁6の下流側でニードル弁7方向への流路と分岐したものである。また、逆止弁16の下流側であって捨水管17へ向かう捨水流路16cには、オリフィス18が設けられている。なお、第3図のように、このオリフィス18と並列して安全弁を設けることもできる。
温水タンク2内のヒータ,ノズル駆動装置1d及びニードル弁7用のモータ8への通電の制御は、ケーシング1の表面に設けた操作パネル19によって行う。この操作パネル19の下には、第2図に示すようにインシュレータ19aが配置され、ノズル1cによる洗浄開始,停止,乾燥開始等のスイッチ20がこのインシュレータ19aに設けられている。また、モータ8を作動してニードル弁7の弁体9の移動量を設定することにより流量調整するための第1設定ボタンスイッチ21及び第2設定ボタンスイッチ22も設けられている。そして、これらの第1,第2設定ボタンスイッチ21,22の間には、洗浄水の流量の大きさを表示するための表示部23が配置されている。
なお、操作パネル19は、薄肉の合成樹脂製のシート19bをケーシング1の表面に貼り付けたものであり、その表面に各スイッチに対応して機能の表示を設けている。そして、これらの機能表示部分を押すことで、各スイッチやボタンを作動させることができる。
第1設定ボタンスイッチ21は、洗浄水の流量を減らすためのもので、これを押したときの通電によって、第7図R>図において弁体9が右側へ移動するようにモータ8の出力軸15を回転させる。また、第2設定ボタンスイッチ22は洗浄水の流量を増やすもので、出力軸15を逆転させて弁体9が弁孔14から離れる方向へ移動させる。そして、第1,第2設定ボタンスイッチ21,22は、これらを押し続けることで出力軸15を連続的に回転させ、流量を任意の値に設定可能である。
表示部23は、7個のパイロットランプ23a〜23gを配列したもので(第11図参照)、これらの点灯によって洗浄水の流量を定量的に知ることができる。つまり、前記のように第1,第2設定ボタンスイッチ21,22のいずれかを押し続ければ、モータ8の正逆回転によって弁体9が移動し、流路面積の増減によって洗浄水の流量を変えることができ、流量をパイロットランプ23a〜23gによって目で確認できる。
ここで、ニードル弁を利用した場合には、流量特性が必ずしもリニアでなく、第12図に示したような特性曲線となることは既に述べた。したがって、パイロットランプ23a〜23gによって適正に流量の表示を行なうには、単に弁体9の回転角度を基準として表示しても、流量を定量的に知ることはできない。
第11図は、ニードル弁7がが第12図(a)の流量特性を持つと仮定したときの、各パイロットランプ23a〜23jによる表示を示すものである。パイロットランプ23a〜23gによる表示可能な流量の大きさは7個なので、最小流量から最大流量までをΔqで7区画に分割し、このときの縦軸の流量に対応する弁体9の回転角度θをそれぞれ求める。そして、回転角度θの値の範囲0〜6までに対応するように各パイロットランプ23a〜23gを点灯させれば、流量が一定量すなわちΔqだけ増減していることを確認できる。たとえば流量が「3」の範囲にあるときには、パイロットランプ23dが点灯し、隣のパイロットランプ23cが点灯するとΔqだけ流量が減り、またパイロットランプ23eが点灯すれば同様にΔqだけ流量が増えたことが確認できる。このように、各パイロットランプ23a〜23gの点灯によって、流量特性がリニアでなくても、流量の増加又は減少割合をΔqという一定値の変化分として確認できる。
〔発明の効果〕
以上に説明したように、本発明の衛生洗浄装置においては、バルブユニットに組み込んだ流量調整用弁体を操作部のスイッチによって作動するモータにより駆動して洗浄水の流量を設定することができるので、従来構造に比べると、ケーブル等の部材が不要となり構造の簡略化が図られる。そして、モータが弁体を内蔵するバルブユニットに固定されているため、互いに接近しているので、装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の衛生洗浄装置を備えた水洗便器の斜視図、第2図は衛生洗浄装置のケーシング内部を示す概略平面図、第3図はバルブユニットによる洗浄水のフローを示すブロック図、第4図はバルブユニットの平面図、第5図は同正面図、第6図は同側面図、第7図は第4図のII−II線矢視による要部拡大断面図、第8図はモータの正面図、第9図は同側面図、第10図は第4図のI−I線矢視断面図、第11図は流量特性と表示の関係を示す説明図、第12図はニードル弁を用いたときの流量特性の例を示すものである。
1:ケーシング、1a:便座
1b:便蓋、1c:ノズル
1d:ノズル駆動装置、2:温水タンク
3:バルブユニット、3a:流入管
3b:流出管、3c:ストッパ
4a:給水管、4b:供給管
5:減圧弁、6:電磁開閉弁
7:ニードル弁、8:モータ
8a:ビス、8b:固定座
9:弁体、9a:雄ネジ
9b:ヘッド、9c:連結孔
9d:係合溝、10:チャンバ
10a:雌ネジ、10b:流路孔
11:一次流路、12:二次流路
13:隔壁、14:弁孔
15:出力軸、15a:係合ピン
15b:ストッパピン、16:逆止弁
16a:弁体、16b:流路
16c:捨水流路、17:捨水管
18:オリフィス、19:操作パネル
19a:インシュレータ
19b:シート、10:スイッチ
21:第1設定ボタンスイッチ
22:第2設定ボタンスイッチ
23:表示部
23a〜23g:パイロットランプ
A:便器本体、B:衛生洗浄装置
〔産業上の利用分野〕
本発明は、局部洗浄機能を備えた衛生洗浄装置に係り、特に洗浄水の流量を調整するバルブユニットの改良に関する。
〔従来の技術〕
従来から、局部洗浄機能を持つ衛生洗浄装置をたとえば腰掛式の水洗便器等に据付けたものが利用されている。衛生洗浄装置は、そのケーシング内に局部洗浄用のノズルを備え、このノズルに洗浄用の温水を供給するための温水タンク又は熱交換器等を設けたものである。そして、ノズルの作動及び洗浄水の温度や流量を制御するための制御部を設けて快適な洗浄が行える構成を持たせている。
温水タンク又は熱交換器等から加熱された洗浄水をノズルへ送り込むための配管系には、電磁弁やニードル弁等を含む流路開閉及び流量調整用のバルブユニットを備えている。そして、外部の給水源に連絡する給水管や温水タンクへの供給管がこのバルブユニットに接続される。
このようなバルブユニットを備えた衛生洗浄装置としては、本出願人が先に出願して実開昭61−164382号として公開されたものがある。これは、バルブユニットに流量調整用として設けたニードル弁をケーシングに設けた調整摘みによって操作する構成としたものである。そして、調整摘みとニードル弁との間には可撓性のケーブルを設け、手動による操作で洗浄水の流量を調整できるようにしている。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところが、ケーシングに調整摘みを設けると、その軸部がケーシングを貫通した構造となる。一方、水周り機器の一種である衛生洗浄装置では、内蔵した制御部や操作部等の電気回路に水が浸入することは漏電事故等の原因となるため、軸部周りをシールする必要がある。このため、ケーシングの形状自体も複雑となるほか、調整摘みが突き出るので、埃等が積りやすく、掃除もし難いという面がある。
また、調整摘みからバルブユニットまでにケーブルを設けるので、そのための配線スペースを必要とし、組立も煩雑になる。更に、ケーブルによって機械的な遠隔操作によってバルブユニットの弁体を動かすので、ケーブルの配線が不良であったり弁体との機械的な接続が不十分であると、調整摘みの回転量に対応しない弁開度となって適正な流量調整に支障をきたしてしまう。
ニードル弁を用いる場合、流路内へ向けて進退する弁体の回転角度によって流路面積を変更する構造が一般的である。そして、調整摘みの回転角度に比例して流路面積を増減させることで流量調整することが基本である。しかし、バルブユニット内に設ける洗浄水の流路は、製作加工の面から円形断面が一般的であり、弁体をこの流路断面を横切るように配置したり、流路端に同軸配置される。このため、弁体が完全に流路を閉じた状態から一定速度で開く方向へ移動させるときには、流路面積の増加率を一様とすることは困難であり、流量特性はたとえば第12図の(a)及び(b)等のパターンとなることが通常である。
このようなニードル弁を用いたときの流量特性に対し、流量調整摘みの回転角度に対して流路面積をほぼ比例して増減させることが必要となる。しかし、調整摘みの機械的な回転をケーブルによってニードル弁に直結した構成では、調整摘みの回転角度に対応してニードル弁が回転するので、流路面積をリニアに変化させることは不可能である。このため、調整摘み周りに流量の大小を判別する表示部を設けるにしても、定量的に正確な数値表示とすることはできない。したがって、表示も正確なものではないために、適正な洗浄水の量の設定に支障をきたすことが多い。
そこで、本発明は、電動機をニードル弁の弁体に直結して構造を簡単にすると共に流量の設定が定量的に確実に行えるようにすることを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明の衛生洗浄装置は、洗浄水を人体の局部に対して吐出する衛生洗浄装置において、回転可能であって、回転角度に応じて一次流路(11)から二次流路(12)に導く洗浄水量を制御する弁体(9)を内蔵するバルブユニット(3)と、該バルブユニット(3)に固定され、使用者の操作に応じて前記弁体(9)に回転力を与えるモータ(8)とを備えたことを特徴とする。
また、前記モータ(8)は、前記バルブユニット(3)に固定されるための平坦面を備え、さらに、前記平坦面から突出し、前記弁体(9)と結合するための出力軸(I5)を備えることができる。
〔実施例〕
以下、図面に示す実施例により本発明の特徴を具体的に説明する。
第1図は本発明の衛生洗浄装置を備えた水洗便器の斜視図である。
図において、腰掛式の便器本体Aの後部側の上面を跨いで局部洗浄用の衛生洗浄装置Bが配置され、そのケーシング1に便座1a及び便蓋1bを開閉自在に備え、更にノズル1cがほぼ中央部分に配置されている。
第2図はケーシング1の内部を示す概略平面図であり、内部の左端にはヒータや温度センサ等を内蔵した温水タンク2を配置し、その右側にバルブユニット3を設けている。このバルブユニット3には外部の給水源に連絡する給水管4aが接続されると共に、温水タンク2との間に供給管4bを配管している。また、温水タンク2によって加熱された洗浄水は、給送管4cによってノズル1cに送られる。なお、ノズル1cは電動機を備えたノズル駆動装置1dに含まれ、図示の収納位置から第1図の洗浄位置まで進出して洗浄水を噴出可能に構成されている。
第3図はバルブユニット3を経由して送り込まれる洗浄水の流れを示すブロック図であり、バルブユニット3には減圧弁,電磁開閉弁及びニードル弁が収納され、この他に不感水量対策としての流路系が備えられている。
第4図及び第5図はバルブユニット3の全体を示す平面図及び正面図である。
図において、給水管4aに接続される流入管3aに連通する減圧弁5から順に電磁開閉弁6及び流量調整用のニードル弁7を経る流路が内部に形成されている。そして、流出管3bが温水タンク2への供給管4bに接続され、設定された流量の水が温水タンク2へ送り込まれる。
減圧弁5は、給水管4aから流入する水に抵抗を与えて適切な供給水圧となるまで減圧する機能を果たす。そして、その具体的な構造は、一般に利用されている絞り弁の機構を利用し、その弁体による流路の絞りを据え付け条件に合わせて予め設定しておくもの等が採用される。また、電磁開閉弁6は、温水タンク2への流路を開いて水の供給を可能とするもので、減圧弁5側の流路とニードル弁7側の流路を開閉することによって、水の供給及び停止を行なう。この電磁開閉弁6の構造例としては、減圧弁5と同様に従来から利用されている電磁コイルへの通電によって弁体を移動させるもの等が利用できる。
ニードル弁7は、電磁開閉弁6からの流路と流出管3bとの間に位置し、弁体の絞りによって温水タンク2への水の供給流量を調整し、ノズル1cからの洗浄温水の水勢を調節する機能を果たす。そして、このニードル弁7の弁体は、バルブユニット3に一体化したモータ8に直結され、その出力軸の正逆回転により弁体を進退させ、流路面積を変えることによって温水タンク2への流量を調節する構造となっている。
第6図はモータ8を除いてその取付面側から見たバルブユニット3の側面図、第7図は第6図のII−II線矢視位置による要部の拡大縦断面図である。
図において、バルブユニット3の側面にはモータ8をビス8aで固定するための固定座8bを設け、このモータ8の出力軸に直結されて回転する弁体9がチャンバ10の中に挿入されている。チャンバ10は、壁側に大径の雌ネジ10aを形成すると共に先端側に向けて小径の流路孔10bを同軸上に設けている。そして、流路孔10bは、電磁開閉弁6側に連絡した一次流路11と流出管3b側に連絡した二次流路12とが接続可能となるように形成され、流路孔10bと一次流路11との間の隔壁13には弁孔14が開けられている。
一方、弁体9はその基端部に雄ネジ9aを形成してチャンバ10の雌ネジ10aに螺合され、回転によって軸線方向へ移動可能である。また、弁体9の先端には、隔壁13の弁孔14に嵌まり込むヘッド9bが円錐台状に形成され、図示の状態では弁孔14を閉じている。そして、弁体9を回転させながら左側へ移動させると、ヘッド9bの外周壁がテーパ状となっているので、弁孔14の内周壁との間にできる環状流路の断面が次第に大きくなり、通過流量を増やすことができる。また、弁体9の基端部には、モータ8の出力軸を嵌め込むための連結孔9cを軸線方向に穿つと共に、その周壁には係合溝9dを半径方向に突き出して設けている。
第8図及び第9図はモータ8を示すもので、バルブユニット3の側壁に固定するために一面を平坦面として、出力軸15を突き出している。出力軸15は、弁体9の連結孔9cに嵌まり込むと同時に係合ピン15aを半径方向に突き出してこれを係合溝9dに挿入して一体化される。また、係合ピン15aとは別にストッパピン15bを出力軸15の基端側に設け、これをバルブユニット3の側壁に突き出した円弧状のストッパ3cに係合させ、出力軸15の回転を一定範囲に規制する。
更に、バルブユニット3には、温水タンク2への水の供給系以外に、第3図のブロック図に示すように、不感水量対策として逆止弁16を経て捨水管17に向かう流路を分岐させている。第10図は第4図のI−I線矢視断面図であって逆止弁16部分の流路構造を示している。逆止弁16の弁体16aへの流路16bは電磁開閉弁6の下流側でニードル弁7方向への流路と分岐したものである。また、逆止弁16の下流側であって捨水管17へ向かう捨水流路16cには、オリフィス18が設けられている。なお、第3図のように、このオリフィス18と並列して安全弁を設けることもできる。
温水タンク2内のヒータ,ノズル駆動装置1d及びニードル弁7用のモータ8への通電の制御は、ケーシング1の表面に設けた操作パネル19によって行う。この操作パネル19の下には、第2図に示すようにインシュレータ19aが配置され、ノズル1cによる洗浄開始,停止,乾燥開始等のスイッチ20がこのインシュレータ19aに設けられている。また、モータ8を作動してニードル弁7の弁体9の移動量を設定することにより流量調整するための第1設定ボタンスイッチ21及び第2設定ボタンスイッチ22も設けられている。そして、これらの第1,第2設定ボタンスイッチ21,22の間には、洗浄水の流量の大きさを表示するための表示部23が配置されている。
なお、操作パネル19は、薄肉の合成樹脂製のシート19bをケーシング1の表面に貼り付けたものであり、その表面に各スイッチに対応して機能の表示を設けている。そして、これらの機能表示部分を押すことで、各スイッチやボタンを作動させることができる。
第1設定ボタンスイッチ21は、洗浄水の流量を減らすためのもので、これを押したときの通電によって、第7図R>図において弁体9が右側へ移動するようにモータ8の出力軸15を回転させる。また、第2設定ボタンスイッチ22は洗浄水の流量を増やすもので、出力軸15を逆転させて弁体9が弁孔14から離れる方向へ移動させる。そして、第1,第2設定ボタンスイッチ21,22は、これらを押し続けることで出力軸15を連続的に回転させ、流量を任意の値に設定可能である。
表示部23は、7個のパイロットランプ23a〜23gを配列したもので(第11図参照)、これらの点灯によって洗浄水の流量を定量的に知ることができる。つまり、前記のように第1,第2設定ボタンスイッチ21,22のいずれかを押し続ければ、モータ8の正逆回転によって弁体9が移動し、流路面積の増減によって洗浄水の流量を変えることができ、流量をパイロットランプ23a〜23gによって目で確認できる。
ここで、ニードル弁を利用した場合には、流量特性が必ずしもリニアでなく、第12図に示したような特性曲線となることは既に述べた。したがって、パイロットランプ23a〜23gによって適正に流量の表示を行なうには、単に弁体9の回転角度を基準として表示しても、流量を定量的に知ることはできない。
第11図は、ニードル弁7がが第12図(a)の流量特性を持つと仮定したときの、各パイロットランプ23a〜23jによる表示を示すものである。パイロットランプ23a〜23gによる表示可能な流量の大きさは7個なので、最小流量から最大流量までをΔqで7区画に分割し、このときの縦軸の流量に対応する弁体9の回転角度θをそれぞれ求める。そして、回転角度θの値の範囲0〜6までに対応するように各パイロットランプ23a〜23gを点灯させれば、流量が一定量すなわちΔqだけ増減していることを確認できる。たとえば流量が「3」の範囲にあるときには、パイロットランプ23dが点灯し、隣のパイロットランプ23cが点灯するとΔqだけ流量が減り、またパイロットランプ23eが点灯すれば同様にΔqだけ流量が増えたことが確認できる。このように、各パイロットランプ23a〜23gの点灯によって、流量特性がリニアでなくても、流量の増加又は減少割合をΔqという一定値の変化分として確認できる。
〔発明の効果〕
以上に説明したように、本発明の衛生洗浄装置においては、バルブユニットに組み込んだ流量調整用弁体を操作部のスイッチによって作動するモータにより駆動して洗浄水の流量を設定することができるので、従来構造に比べると、ケーブル等の部材が不要となり構造の簡略化が図られる。そして、モータが弁体を内蔵するバルブユニットに固定されているため、互いに接近しているので、装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の衛生洗浄装置を備えた水洗便器の斜視図、第2図は衛生洗浄装置のケーシング内部を示す概略平面図、第3図はバルブユニットによる洗浄水のフローを示すブロック図、第4図はバルブユニットの平面図、第5図は同正面図、第6図は同側面図、第7図は第4図のII−II線矢視による要部拡大断面図、第8図はモータの正面図、第9図は同側面図、第10図は第4図のI−I線矢視断面図、第11図は流量特性と表示の関係を示す説明図、第12図はニードル弁を用いたときの流量特性の例を示すものである。
1:ケーシング、1a:便座
1b:便蓋、1c:ノズル
1d:ノズル駆動装置、2:温水タンク
3:バルブユニット、3a:流入管
3b:流出管、3c:ストッパ
4a:給水管、4b:供給管
5:減圧弁、6:電磁開閉弁
7:ニードル弁、8:モータ
8a:ビス、8b:固定座
9:弁体、9a:雄ネジ
9b:ヘッド、9c:連結孔
9d:係合溝、10:チャンバ
10a:雌ネジ、10b:流路孔
11:一次流路、12:二次流路
13:隔壁、14:弁孔
15:出力軸、15a:係合ピン
15b:ストッパピン、16:逆止弁
16a:弁体、16b:流路
16c:捨水流路、17:捨水管
18:オリフィス、19:操作パネル
19a:インシュレータ
19b:シート、10:スイッチ
21:第1設定ボタンスイッチ
22:第2設定ボタンスイッチ
23:表示部
23a〜23g:パイロットランプ
A:便器本体、B:衛生洗浄装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】洗浄水を人体の局部に対して吐出する衛生洗浄装置において、回転可能であって、回転角度に応じて一次流路(11)から二次流路(12)に導く洗浄水量を制御する弁体(9)を内蔵するバルブユニット(3)と、該バルブユニット(3)に固定され、使用者の操作に応じて前記弁体(9)に回転力を与えるモータ(8)とを備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】請求項1に記載の衛生洗浄装置において、前記モータ(8)は、前記バルブユニット(3)に固定されるための平坦面を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項3】請求項2に記載の衛生洗浄装置において、前記モータ(8)は、前記平坦面から突出し、前記弁体(9)と結合するための出力軸(I5)を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項1】洗浄水を人体の局部に対して吐出する衛生洗浄装置において、回転可能であって、回転角度に応じて一次流路(11)から二次流路(12)に導く洗浄水量を制御する弁体(9)を内蔵するバルブユニット(3)と、該バルブユニット(3)に固定され、使用者の操作に応じて前記弁体(9)に回転力を与えるモータ(8)とを備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】請求項1に記載の衛生洗浄装置において、前記モータ(8)は、前記バルブユニット(3)に固定されるための平坦面を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項3】請求項2に記載の衛生洗浄装置において、前記モータ(8)は、前記平坦面から突出し、前記弁体(9)と結合するための出力軸(I5)を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【第1図】
【第4図】
【第2図】
【第3図】
【第5図】
【第6図】
【第7図】
【第8図】
【第9図】
【第10図】
【第11図】
【第12図】
【第4図】
【第2図】
【第3図】
【第5図】
【第6図】
【第7図】
【第8図】
【第9図】
【第10図】
【第11図】
【第12図】
【特許番号】第2989825号
【登録日】平成11年(1999)10月8日
【発行日】平成11年(1999)12月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−216970
【出願日】昭和63年(1988)8月30日
【公開番号】特開平2−66225
【公開日】平成2年(1990)3月6日
【審査請求日】平成7年(1995)8月30日
【出願人】(999999999)東陶機器株式会社
【出願人】(999999999)小糸工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭62−107126(JP,A)
【文献】特開 昭63−194040(JP,A)
【文献】特開 昭63−184626(JP,A)
【文献】特開 昭61−186632(JP,A)
【登録日】平成11年(1999)10月8日
【発行日】平成11年(1999)12月13日
【国際特許分類】
【出願日】昭和63年(1988)8月30日
【公開番号】特開平2−66225
【公開日】平成2年(1990)3月6日
【審査請求日】平成7年(1995)8月30日
【出願人】(999999999)東陶機器株式会社
【出願人】(999999999)小糸工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭62−107126(JP,A)
【文献】特開 昭63−194040(JP,A)
【文献】特開 昭63−184626(JP,A)
【文献】特開 昭61−186632(JP,A)
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