説明

衝合型乾式変圧器

【課題】衝合型乾式変圧器の冷却効率を低減することなく小型化することができるようにすること。
【解決手段】入力コイルと出力コイルとを混触防止板を介して巻回した断面円形状の脚鉄心を配列し、配列した各脚鉄心の上面と下面を継鉄心で衝合連結してなる衝合型乾式変圧器において、入力コイル3a1と出力コイル3a2及び3a3との間に配置する混触防止板12に冷却媒体通流する流路を形成し、また、混触防止板12と前記各コイル間および前記各コイルの層間に気泡が発生しない無溶剤系絶縁接着剤13を全面に塗着したポリイミド系フイルムからなる絶縁紙11を挿入し、前記各コイルが発生する熱を、無溶剤系絶縁接着剤13を介して冷却媒体の通流により冷却された混触防止板12へ伝達させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝合型乾式変圧器、詳細には該変圧器の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
入力コイルと出力コイルを巻回した断面円形状の脚鉄心を三角状あるいは直線状に配列し、各脚鉄心の上面と下面を継鉄心で衝合連結してなる衝合型変圧器は周知である。図4〜図6は、このような三相衝合型乾式変圧器の一例を示すもので、図5および図6において、1a、1b、1cは断面円形または擬似円形をなし、円形の中心にボルト挿通用の貫通孔を形成した脚鉄心、2aは外形三角形状の上部継鉄心、2bは外形三角形状の下部継鉄心、3aは脚鉄心1aに巻装した導線コイル部、3bは脚鉄心1bに巻装した導線コイル部、3cは脚鉄心1cに巻装した導線コイル部、4は容器、5は風洞板、6は排気扇、7は通風孔である。
【0003】
変圧器本体は、図6に示すように導線コイルを巻装した脚鉄心1a、1b、1cを三角状に配置し、三角状に配置された各脚鉄心1a、1b、1cの上下端面のそれぞれに、外形三角状の環状継鉄2a、2bが、各脚鉄心1a、1b、1cを貫通する図示しないボルトにより衝合固定されて構成されている。
【特許文献1】実開昭62−30317号公報
【特許文献2】特開昭48−57161号公報
【0004】
変圧器は、図5に示すように、この変圧器本体を容器4内に収納して構成されている。その容器内には変圧器本体を囲む穴を形成した風洞板5が配置され、容器4の上面には排気扇6が設けられている。容器4内に収納した変圧器本体は、排気扇6の駆動により容器4の下部側壁に設けた通風孔7から空気を導入し、その空気を風洞板5で案内して変圧器本体内を通流させ、その通流で変圧器本体は冷却される。
【0005】
図4は、この変圧器の脚鉄心1a、1b、1cに巻回した導線コイル部3a、3b、3cの構成を、脚鉄心1aを代表して示すもので、3a1は入力コイル(一次コイル)、3a2は出力コイル(二次コイル)で、一次コイル3a1および二次コイル3a2をそれぞれ2層巻とした場合を示している。8はアラミド系フィルムからなる絶縁紙、9は絶縁スペーサ、10は一次コイル3a1と二次コイル3a2との間を電気的に隔離する円筒状の銅板からなる混触防止板である。絶縁スペーサ9は脚鉄心1aの周方向に所定の間隔を隔てて複数は位置されており、隣接の絶縁スペーサ9間の、脚鉄心1aと平行して延びる間隙を冷却風の通路とし、この通路に通風孔7から導入した冷却風を通流させ、その通流で変圧器本体を冷却するようにされている。
【0006】
このように従来は変圧器本体を冷却するために絶縁スペーサ9を脚鉄心1aと一次コイル3a1間、一次コイル3a1の層間、一次コイル3a1と二次コイル3a2間、二次コイル3a2の層間に配置しており、そのために必然的にコイル径が大きくなり変圧器が大型化し、また、導線コイルの径も大きく使用する導線量も多く必要とするといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、衝合型乾式変圧器の冷却効率を低減することなく小型化することができるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、入力コイルと出力コイルとを混触防止板を介して巻回した断面円形状の脚鉄心を配列し、配列した各脚鉄心の上面と下面を継鉄心で衝合連結してなる衝合型乾式変圧器において、前記混触防止板の肉厚内に冷却用の流体を通流する冷却媒体通流路を設けるとともに、前記混触防止板と前記各コイル間および前記各コイルの層間に無溶剤系絶縁接着剤を全面に塗着した絶縁紙を挿入したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、入力コイルと出力コイルとの間に配置する混触防止板に冷却媒体通流路を形成し、その冷却媒体通流路に水や油などの冷却流体を通流するので、冷却能力が高められ、また、無溶剤系絶縁接着剤を全面に塗着した絶縁紙を混触防止板と前記各コイル間および前記各コイルの層間に配置するので、コイルから発生する熱を混触防止板に効率よく伝導することができ、コイル層間に配置するスペーサを省くことができる。これによりコイルの径を小さくすることができ、導線の使用量が低減され、また、変圧器を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
衝合型乾式変圧器の冷却効率を低減することなく小型化することができるようにする目的を、入力コイルと出力コイルとの間に配置する混触防止板に冷却媒体通流路を形成し、また、混触防止板と前記各コイル間および前記各コイルの層間に気泡が発生しない無溶剤系絶縁接着剤を全面に塗着したポリイミド系フイルムからなる絶縁紙を挿入その冷却媒体通流孔に水や油などの冷却流体を通流することにより実現した。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明に係る衝合型乾式変圧器の脚鉄心に巻回した導線コイル部の構成を示す断面図である。図1において、1aは断面円形状の脚鉄心、2aおよび2bは継鉄、3a1は入力コイル(一次コイル)、3a2は第1の出力コイル(二次コイル)、3a3は第2の出力コイル(三次コイル)、11はポリイミド系フイルムからなる絶縁紙、12は混触防止板、13は絶縁紙11の全面に塗着した無溶剤系絶縁接着剤層である。
【0012】
脚鉄心1aに絶縁紙11を巻き、その上に第2の出力コイル3a3の1層目を巻き、無溶剤系絶縁接着剤層13を両面に塗着した絶縁紙11を巻き、第2の出力コイル3a3の2層目を巻く。第2の出力コイル3a3の2層目の上に無溶剤系絶縁接着剤層13を両面に塗着した絶縁紙11を巻き、その上に混触防止板12を配置して無溶剤系絶縁接着剤層13を両面に塗着した絶縁紙11を巻き、入力コイル3a1の1層目を巻き、その上に無溶剤系絶縁接着剤層13を両面に塗着した絶縁紙11を巻き、入力コイル3a1の2層目を巻く。以下、無溶剤系絶縁接着剤層13を両面に塗着した絶縁紙11を巻き混触防止板12を配置して無溶剤系絶縁接着剤層13を両面に塗着した絶縁紙11を巻き、第1の出力コイル3a2の1層目を巻き、その上に無溶剤系絶縁接着剤層13を両面に塗着した絶縁紙11を巻き、第1の出力コイル3a2の2層目を巻き、絶縁紙11を巻き付けてコイル部を作成する。なお、この実施例では、第2の出力コイル3a3を設けているが、この出力コイルの数は適宜である。
【0013】
混触防止板12は、絶縁処理した細い中空導体管12aからなり、これを螺旋状に巻回して円筒体に形成されている。この場合、中空導体管12aを出力コイル3a3および3a2と入力コイル3a1間で巻回することとなり、その円筒体の両端で電位差が発生し、混触防止板としては不都合のときがある。このときには、図2に示すように螺旋状に巻回した中空導体管12aを上側円筒体12bと下側円筒体12cの巻数を同一にして二つに分け、上側円筒体12bに位置する中空導体管12aの巻き方向と下側円筒体12cに位置する巻き方向を逆方向に巻回し、中央部で電気的に接続すれば、円筒体の両端の電位は同電位となる。なお、螺旋状に巻回した中空導体管12aを上側円筒体12bと下側円筒体12cの二つに分けているが、より多く分けるようにしてもよく、この場合、偶数個に分けると中空導体管11eを螺旋状に巻回して形成した円筒体の上下端部を同電位とすることができる。
【0014】
この混触防止板12を有する衝合型乾式変圧器の運転時には、中空導体管12aに水または油などの冷却された流体を流す。この冷却流体の通流により混触防止板12は冷却され、その冷却により入力コイル3a1および出力コイル3a2、3a3を冷却する。この場合、導体間に配置した無溶剤系絶縁接着剤層13を両面に塗着したポリイミド系フイルムからなる絶縁紙11は断熱効果が低く、熱伝導性が高いのでその冷却効果を高めることができる。なお、図示しないが中空導体管12aを通流した流体は冷却機を循環して、中空導体管12aへ通流するようにしている。
【0015】
図3は、他の例の混触防止板12を示すもので、この例の混触防止板12は、図3に示すように肉厚内部を中空とし、円周方向を分断する(誘導電流の発生を防止)が開口12dを形成した円筒体12eをなし、脚鉄心の1aの中心軸と平行する方向の上下端面に中空内と連通する開孔12f、12gが形成されている。このような円筒体12eは、たとえば周囲端部縁に低い凸部を形成した矩形状の銅板に、他の矩形状の銅板を凸部の上に貼り重ねて一体化し、一辺の凸部と、この凸部と対向する他辺の凸部のそれぞれにドリルなどで開孔12f、12gを形成し、これを円筒状に変形して作成される。なお、円筒体12eの肉厚内にドリルなどで複数の貫通孔を形成するようにしてもよい。
【0016】
この混触防止板12を有する衝合型乾式変圧器の運転時には、円筒体12eの下端面の開孔12gから水または油などの冷却された流体を円筒体12eの中空内部に注入し、また、中空内部に注入された流体は円筒体12eの上端面の開孔12fから排出する。この冷却流体の通流により円筒体12eは冷却され、その冷却により入力コイル3a1および出力コイル3a2、3a3を冷却する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る衝合型乾式変圧器の脚鉄心に巻回した導線コイル部の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す衝合型乾式変圧器の混触防止板の側面図である。
【図3】本発明の実施例に係る他の混触防止板の斜視図である。
【図4】従来の衝合型乾式変圧器の脚鉄心に巻回した導線コイル部の構成を示す断面図である。
【図5】衝合型乾式変圧器の説明図である。
【図6】衝合型乾式変圧器の鉄心の配置の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0018】
1a、1b、1c 脚鉄心
2a 2b 継鉄心
3a1 入力コイル
3a2 第1の出力コイル
3a3 第2の出力コイル
11 絶縁紙
12 混触防止板
12a 中空導体管
12e 円筒体
13 無溶剤系絶縁接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力コイルと出力コイルとを混触防止板を介して巻回した断面円形状の脚鉄心を配列し、配列した各脚鉄心の上面と下面を継鉄心で衝合連結してなる衝合型乾式変圧器において、前記混触防止板の肉厚内に冷却用の流体を通流する冷却媒体通流路を設けるとともに、前記混触防止板と前記各コイル間および前記各コイルの層間に無溶剤系絶縁接着剤を全面に塗着した絶縁紙を挿入したことを特徴とする衝合型乾式変圧器。
【請求項2】
絶縁紙がポリイミド系フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の衝合型乾式変圧器。
【請求項3】
混触防止板が、脚鉄心の中心軸と平行する方向の上下端面に内部の冷却媒体通流路に連通する通流開孔を有し、円周方向を分断する開口を形成した円筒体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の衝合型乾式変圧器。
【請求項4】
混触防止板が、絶縁処理した細い中空導体管を螺旋巻回した円筒体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の衝合型乾式変圧器。
【請求項5】
絶縁処理した細い中空導体管を螺旋巻回した円筒体が、巻数同数で互いに逆巻きに螺旋巻回した円筒体の偶数個からなり、隣接の該円筒体の端部を電気的に接続してなることを特徴とする請求項4に記載の衝合型乾式変圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−206254(P2009−206254A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46063(P2008−46063)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】