説明

衝撃吸収パッド及びそれを取り付けた衣類

【課題】 衝撃吸収性に優れ、装着感が良く、毒性の少ない衝撃吸収パッドおよびそれを装着した衣類を提供すること。
【解決手段】 シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体からなることを特徴とする衝撃吸収パッド、および、腰回りにおける前身頃、脇部、後身頃、臀部の少なくとも1以上に対応する部位に該衝撃吸収パッドを取り付けてなる衣類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下着等の衣類の腰回りの適宜な部位に取り付けることにより、転倒時の骨折、とりわけ骨粗鬆症等の患者が転倒した際の骨折を未然に防止するなどの目的に用い得る衝撃吸収パッドおよびそれを取り付けてなる衣類、特にパンツのごとき衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者人口の増加に伴い、寝たきりを予防する介護予防という概念が取り入れられている。これは、要介護状態を予防するという考えである。高齢者が要介護状態に陥る一つの要因として、転倒による骨折、特に大腿骨頚部骨折が挙げられる。高齢者の転倒による骨折の中でも、特に大腿骨頚部骨折は寝たきりの要因となることが知られている(例えば、非特許文献1)。大腿骨付近の骨折の発生には、骨強度と転倒外力の二つが関わっており、転倒外力を上回っていた若年成人の骨強度が高齢期には転倒外力の半分ほどまでに低下することが、高齢者の骨折増加の要因となっている(例えば、非特許文献2)。骨強度を超える転倒外力が大腿骨頚部外側部に加わると、高率に大腿骨骨折が生じることが実験的に確認されており、大腿骨の大転子部に外力拡散や吸収のための素材をおけば骨に伝播する外力が低下して、骨折リスクが減少することが示唆されている(例えば、非特許文献3)。
【0003】
具体的には、若年成人の大腿骨頚部が7200Nで骨折するのに対して、高齢者の大腿骨頚部は2100〜3100N程度の強度まで低下していることが報告されている(例えば、非特許文献4)。立位からの転倒で大転子部に加わる荷重が5600N程度であるため、高齢者の骨強度においては骨折を免れない。そこで、大転子部に外力減衰装置を付けておくという発想は合理的かつ実用的であるとされている(例えば、非特許文献5)。
【0004】
これまでに同様の技術として、スポーツを行う際に身体にかかる衝撃や傷の発生を防ぐ目的で、衣類の各部位に防護具を設けた衣類が見られる。しかしながら、上記衣類の各部位に防護具を直接装着したものは、スポーツ用としては適当であるが、日常に用いる衣類としては、外観上や装着時の快適性などの点で適していない。
【0005】
また、高齢者の大腿骨頚部骨折防止を目的とした衝撃吸収パッド付きの衣類も開発されている。従来の衝撃吸収パッド付きの衣類は、硬質のパッドを用いたものと軟質のパッドを用いたものに大別される。硬質パッドは外力拡散型であり、外力の加わる面積を増やすと同時に素材の持つ弾性による外力減衰を得るものである(例えば、特許文献1)。硬質パッドを用いた場合、衝撃吸収性能は優れているが、通気性が悪く、装着感が悪いなどの問題がある。骨折防止効果を十分に発揮するには、常時着用が要求されるが、硬質パッドのように装着感が悪い場合には、例えば就寝時などに意識的、もしくは無意識的に脱いでしまい、その隙に転倒し、骨折してしまう恐れがある。一方、軟質パッドは、外力吸収型であり、外力は素材の変形により熱変換されて外力減衰が得られる。軟質パッドの場合は、装着感は良いが衝撃吸収性能が低いものが多い。これまで、軟質パッドには主にポリウレタン発泡体が用いられている(例えば、特許文献2)が、ポリウレタンは加水分解性を有するために洗濯には向いておらず、また残存する反応触媒の臭気や未反応のイソシアネートが有する毒性が危惧されている。
【特許文献1】特表平9−508824号公報
【特許文献2】特開2001−123311号公報
【非特許文献1】Lauritzen JB, 林泰史,折茂肇:ヒッププロテクターによる転倒・骨折の予防.Osteoporosis Japan,10:149-157,2002.
【非特許文献2】原田敦:高齢者の転倒・骨折予防.日本医師会雑誌,122:1955-1959,1999.
【非特許文献3】Okuizumi H., Harada A., Iwata H., et al: Effect on the femur of a new hip fracture preventive system using dropped-weight impact testing. J Bone Miner Res, 13:1940-1945; 1998.
【非特許文献4】Cheng X., Lowet G., Boonen S., et al: Assessment of the strength of proximal femur in vitro: Relationship to femoral bone mineral density and femoral geometry. Bone, 20:213-218; 1997
【非特許文献5】原田敦,奥泉宏康:大腿骨近位部骨折に対するヒッププロテクターの効用.関節外科,23:1548−1554,2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、衝撃吸収性に優れ、装着感が良く、毒性の少ない衝撃吸収パッドおよびそれを装着した衣類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題の解決のため鋭意研究を重ねた結果、衝撃吸収パッドの素材として、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体を用いることにより、衝撃吸収性に優れ、装着感が良く、毒性の少ない衝撃吸収パッドが得られ、該衝撃吸収パッドを取り付けてなる衣類は装着感が良好であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体からなることを特徴とする衝撃吸収パッドに関する。好ましい実施態様は、基材樹脂が、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位またはオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、を含んでなる樹脂組成物を硬化させたものであることを特徴とする前記記載の衝撃吸収パッドに関する。より好ましくは、前記樹脂組成物に、性状が気体である発泡剤(D)を分散させ、気体含有樹脂組成物とした後、該気体含有樹脂組成物を型枠に注入して硬化させてなることを特徴とする前記記載の衝撃吸収パッド、あるいは、別の好ましい態様として、前記樹脂組成物に性状が液体および/または固体である発泡剤(D)を添加し、発泡性樹脂組成物とした後、該発泡性樹脂組成物を硬化させる前、又は、硬化と同時に発泡させてなることを特徴とする前記記載の衝撃吸収パッドに関し、より好ましい態様としては、前記性状が液体およびまたは固体である発泡剤(D)が、活性水素基含有化合物である前記記載の衝撃吸収パッドに関する。
【0009】
本発明の第二は、シリコン系重合体を構成する成分と発泡剤を混合した、型枠に注入してから発泡させることを特徴とする衝撃吸収パッドの製造方法に関する。好ましい実施態様は、シリコン系重合体と構成する成分が、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位またはオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)を含んでなる樹脂組成物であることを特徴とする前記記載の衝撃吸収パッドの製造方法に関する。より好ましくは、前記樹脂組成物を硬化させる前、又は、硬化させると同時に発泡させることを特徴とする前記記載の衝撃吸収パッドの製造方法、あるいは、発泡剤(D)として気体を用い、前記樹脂組成物に発泡剤(D)を分散させて気体含有樹脂組成物とした後、型枠に注入してから硬化させることを特徴とする前記記載の衝撃吸収パッドの製造方法に関する。
【0010】
本発明の第三は、前記記載の衝撃吸収パッドを腰回りにおける前身頃、脇部、後身頃、臀部の少なくとも1以上に対応する部位に取り付けてなる衣類に関する。好ましい実施態様は、衝撃吸収パッドを着脱自在に取り付けてなる上記記載の衣類に関する。より好ましくは、パンツ類である上記記載の衣類に関する。
【0011】
本発明の第四は、大腿骨頚部外側部の大転子部を保護できる位置に、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体からなる衝撃吸収パッドを取り付けてなる衣類を着用する大腿骨骨折を防止する方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の衝撃吸収パッドは衝撃吸収性に優れ、装着感が良く、毒性が少ない。また、本発明の衝撃吸収パッドを取り付けてなる衣類は、装着感が良好であるため、長時間着用することが可能となり、不意に起こる転倒による骨折防止に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の衝撃吸収パッドは、その素材として、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体を用いることが特徴で、それを身体の所定の部位に対応するように衣類に取り付けることで効果を発揮できる。その理由は、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体は軽量かつ柔軟性があり、毒性が殆ど無いからである。
【0014】
本発明のシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体は、分子骨格中にシロキサン単位を有した樹脂を基材樹脂として用いた発泡体であれば、特に制限されるものではないが、例えば、シリコン系重合体を構成する成分として、ヒドロシリル基を有する化合物、アルケニル基を有する化合物、ヒドロシリル化触媒を含んでなる樹脂組成物を硬化してなる樹脂を基材樹脂とすることが、発泡成形性や機械物性、および衝撃吸収パッドとしての諸物性のバランスに優れることから好ましい。中でも、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位またはオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、を含んでなる樹脂組成物を硬化させたものを基材樹脂として用いることが、発泡成形性や機械物性など諸物性の調整がしやすく、優れた物性バランスを得やすいため、好ましい。
【0015】
そして、本発明の衝撃吸収パッドは、前記基材樹脂と発泡剤を含んでなる発泡体からなる。基材樹脂には、本発明の効果をなくさない程度に、気泡調整剤、充填材、貯蔵安定剤、増粘剤などを必要に応じて添加してもよい。
【0016】
前記ヒドロシリル基を有する化合物としては、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(以下、単に「硬化剤(A)」と称す場合がある)が好ましい。即ち、硬化剤(A)は、後述する分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位またはオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)(以下、単に「重合体(B)」と称す場合がある)の硬化剤として作用する。
【0017】
前記硬化剤(A)は、分子鎖中に少なくとも2個、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個、さらに好ましくは2〜15個、特に好ましくは3〜12個のヒドロシリル基を有し、そのため、それぞれのヒドロシリル基が重合体(B)の分子鎖中に存在するアルケニル基と反応して硬化する。前記ヒドロシリル基の数が2個より少ないと、本発明の分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位またはオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、を含んでなる樹脂組成物をヒドロシリル化反応により硬化させる場合の硬化速度が遅くなり、硬化不良を起こす場合がある。また、前記ヒドロシリル基の個数が50個より多くなると、硬化剤(A)の安定性、即ち前記樹脂組成物の安定性が悪くなり、その上、硬化後も多量のヒドロシリル基が基材樹脂中に残存しやすい傾向があり、クラックの原因となりやすくなる。
【0018】
なお、本発明において、ヒドロシリル基を1個有するとは、SiH結合を1個有することを言い、SiHの場合にはヒドロシリル基を2個有することになるが、1つのSiに結合するHの数は、1つである方が硬化性は良くなり、また、柔軟性の点からも好ましい。本発明において「分子鎖中に平均して1個のヒドロシリル基」とは、1gあたりのヒドロキシル基量にその物質の数平均分子量を乗じたものである。本発明においては、ヒドロシリル基以外の官能基についても特に断りのない限り同様に、分子鎖中の官能基数を計算する。
【0019】
硬化剤(A)の分子量は、後述する発泡剤(D)成分の分散性や衝撃吸収パッドを作製する際の加工性などの点から、数平均分子量(Mn)で30000以下であることが好ましく、20000以下、15000以下であることがより好ましい。重合体(B)との反応性や相溶性まで考慮すると、300〜10000が特に好ましい。
【0020】
前記のごとき硬化剤(A)の構造について特に制限はないが、例えば、炭化水素系硬化剤やポリシロキサン系硬化剤が例示できる。
【0021】
炭化水素系硬化剤とは、一般式(1)
(1)
(式中、Xは少なくとも1個のヒドロシリル基を含む基、Rは炭素数2〜150の1〜4価の炭化水素基、aは1〜4から選ばれる整数、ただし、Xに1個のヒドロシリル基しか含まれない場合、aは2以上である)
で示されるものである。具体的には、平均分子量が30000以下である炭化水素系硬化剤が好適に挙げられる。
【0022】
一般式(1)におけるXの具体例としては、例えば、―SiH(CH3−n、―SiH(C3−n、―SiHn(C3−n(以上のn=1〜3)、―SiH(C13)などのケイ素原子を1個だけ含有するヒドロシリル基、
【0023】
【化1】

例えば、化1で示されるケイ素原子を2個以上含むヒドロシリル基、
【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

例えば、化2〜化4などで示される鎖状、枝分かれ状、環状の各種の多価ハイドロジェンシロキサンより誘導されたヒドロシリル基などが挙げられる。なお、式中、m個の単位とp個の単位、n個の単位とq個の単位、m個の単位とp個の単位とx個の単位、n個の単位とq個の単にとy個の単位、m個の単位とn個の単位、さらにはm個の単位とn個の単位とp個の単位とq個の単位がブロック結合で結合しているように記載されているが、これらはブロック結合でもランダム結合でもよい。以下の記載においても同様である。
【0027】
前述の各種のヒドロシリル基のうち、硬化剤(A)である炭化水素系硬化剤が他の成分との相溶性を損なう可能性が少ないという点から、一般式(1)のXの部分の分子量が500以下であるのが好ましく、さらにヒドロシリル基の反応性も考慮すれば、以下の化5で示されるヒドロシリル基が好ましい。
【0028】
【化5】

一般式(1)中、Rは炭素数2〜150で1〜4価の炭化水素基を表し、重合体からなる基であってもよい。重合体でない具体例としては、
【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

化6、化7に示すもの(これらは特開平3−95266号公報などに記載されている化合物である)などが挙げられる。
【0031】
また、重合体からなるRの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素数2〜6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させたもので、結合手を1〜4個有するもの、ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させたり、前記オレフィン系化合物とジエン系化合物とを共重合させた後、水素添加したもので、結合手を1〜4個有するものなどが挙げられる。
【0032】
前記のごとき一般式(1)で表される炭化水素系硬化剤の中でも、Rが炭素数5〜20の炭化水素基で、Xが化5で示される基の場合の組み合わせが、重合体(B)との相溶性が良好である点、および、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、を含んでなる樹脂組成物を硬化させる際の反応性を上げ、良好な網目構造を形成することができる点から好ましい。また、これらのなかでもRの炭素数が5〜12の炭化水素基であることが、原料が容易に入手できる点からより好ましく、Xが化5で示される基の中でも環状ポリシロキサン化合物であることが、重合体(B)との相溶性が特に良くなる点からより好ましい。この組み合わせによって得られる化合物が、炭化水素系硬化剤としては好ましい。その具体例としては、例えば、化8に示す化合物などが挙げられる。
【0033】
【化8】

炭化水素系硬化剤の製法については特に制限はなく、任意の方法で製造すればよい。例えば、(i)分子中にSiCl基を持つ炭化水素系化合物をLiAlH、NaBHなどの還元剤で処理して該化合物中のSiCl基をSiH基に還元する方法、(ii)分子内にある官能基Xを持つ炭化水素系化合物と分子内に前記官能基Xと反応する官能基Yおよびヒドロシリル基の両者を有する化合物とを反応させる方法、(iii)アルケニル基を含有する炭化水素系化合物に対して少なくとも2個のヒドロシリル基を持つポリヒドロシラン化合物を選択ヒドロシリル化することにより、反応後もヒドロシリル基を炭化水素系化合物の分子中に残存させる方法、などが例示される。前記方法のうち、(iii)の方法が、製造工程が簡便なため好適に用いることができる。この場合、一部のポリヒドロシラン化合物に含まれるヒドロシリル基の2個以上が、炭化水素系化合物中のアルケニル基と反応して分子量が増大することがあるが、このように、分子量が増大したものを含むものを硬化剤(A)として用いても何ら差し支えない。
【0034】
硬化剤(A)として、ポリシロキサン系硬化剤も使用することができる。具体例としては、ポリオキシアルキレン変性体、スチレン類変性体、オレフィン変性体などを含む化9〜化11に示すような、鎖状、環状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンが挙げられる。
【0035】
【化9】

(m、nは整数、2≦m+n≦50、2≦m、0≦n、Rはメチル基、分子量が100〜10000のポリオキシアルキレン基または炭素数2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有していてもよい。Rが複数個含まれる場合、これらは同じでなくともよい。)
【0036】
【化10】

(m、nは整数、2≦m+n≦50、0≦m、0≦n、Rはメチル基、分子量が100〜10000のポリオキシアルキレン基または炭素数2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有していてもよい。Rが複数個含まれる場合、これらは同じでなくともよい。)
【0037】
【化11】

(m、nは整数、3≦m+n≦20、2≦m≦19、0≦n≦18、Rはメチル基、分子量が100〜10000のポリオキシアルキレン基または炭素数2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有していてもよい。Rが複数個含まれる場合、これらは同じでなくともよい。)
重合体(B)との相溶性をより良くするためには、前記Rがフェニル基を含有しているものが好ましい。さらに入手のしやすさからRは、―CH―CH―C、―CH―CH(CH)―C、また、貯蔵安定性の点から―CH―CH(CH)―Cであることが好ましい。
【0038】
本発明における分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有する化合物は、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位である重合体(B)であることが好ましい。重合体(B)は、硬化剤(A)とヒドロシリル化反応して硬化する成分であり、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有するため、ヒドロシリル化反応が起こって高分子状となり、硬化する。重合体(B)に含まれるアルケニル基の数は、硬化剤(A)とヒドロシリル化反応するという点から少なくとも1個必要であるが、硬化性、柔軟性の点からは分子鎖の両末端にアルケニル基を有することが好ましい。
【0039】
重合体(B)の分子量としては、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位からなる場合は、取り扱いやすさなどの点から数平均分子量で500〜50000程度が好ましく、さらには1000〜30000程度の液状物〜流動性を有するものであるのが好ましい。なお、本明細書にいう、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位からなるとは、芳香環以外の炭素―炭素不飽和結合を実質的に含有していない状態を意味する概念である。したがって、前記のように重合体(B)の主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位からなる場合の主鎖は、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素数2〜6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させる、(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させたり、前記オレフィン系化合物とジエン系化合物とを共重合させた後、水素添加する、などの方法により得ることができる。
【0040】
繰返し単位が飽和炭化水素系単位である主鎖としては、末端に官能基を導入しやすい、分子量を制御しやすい、末端官能基の数を多くすることができるなどの点から、イソブチレン系重合体、水添ポリブタジエン系重合物、水添ポリイソプレン系重合体のいずれかであることが好ましい。
【0041】
前記イソブチレン系重合体は、単量体単位の全てがイソブチレン単位から形成されていても良く、イソブチレンと共重合性を有する単量体単位をイソブチレン系重合体の好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下の範囲で含有してもよい。イソブチレンと共重合性を有する単量体成分としては、例えば、炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アクリルシラン類などが挙げられる。このような共重合成分の具体例としては、例えば、1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。前記イソブチレンと共重合性を有する単量体成分の中でも、ビニルメチルメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、アリルジメチルメトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなど、アルコキシシリル基を含む化合物以外の化合物は、共重合が容易であり、好ましい。
【0042】
前記水添ポリブタジエン系重合体や水添ポリイソプレン系重合体などにおいても、前記イソブチレン系重合体の場合と同様に、主成分となる単量体単位の他に、前記のごとき他の単量体単位を含有させてもよい。
【0043】
また、重合体(B)として用いる、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位である重合体には、本発明の目的が達成される範囲でブタジエン、イソプレンのようなポリエン化合物のごとき重合後二重結合の残るような単量体単位を少量、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下の範囲で含有させてもよい。
【0044】
アルケニル基を、飽和炭化水素単位からなる主鎖に導入して重合体(B)とする方法については、種々提案されている方法を用いることができるが、主鎖を重合した後にアルケニル基を導入する方法と重合中にアルケニル基を導入する方法とに大別することができる。
【0045】
重合後にアルケニル基を導入する方法としては、例えば、末端、主鎖または側鎖の水酸基を―ONaや―OKなどの基にした後、一般式(2):
CH=CH―R―Y (2)
(式中、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、Rは―R―、―R―OCO―または―R―CO―(Rは炭素数1〜20の2価の炭化水素基で、好ましい具体例としてはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる)で示される2価の有機基で、化12(Rは炭素数1〜10の炭化水素基)より選ばれた2価の基が特に好ましい)
【0046】
【化12】

で示される有機ハロゲン化合物を反応させることにより、末端、主鎖または側鎖にアルケニル基を有する主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位からなる重合体重合体が製造できる。前記重合体の好ましい具体例としては、両末端にアルケニル基を2個有する直鎖状の数平均分子量(Mn)が2000〜20000で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが1.1〜1.2程度のポリイソブチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン系重合体などが挙げられる。
【0047】
重合体(B)の主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位である場合、主鎖を形成する出発物質として活性水素基を2個以上有する化合物、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノール化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールなどを用い、C〜Cのアルキレンオキシドを重合させることにより製造される。主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位である重合体(B)の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドの2種以上のランダムまたはブロック共重合体などが挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種の末端に、飽和炭化水素系単位からなる主鎖にアルケニル基を導入した場合と同様に、アルケニル基が導入することが好ましい。
【0048】
前記主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位である重合体の好ましい具体例としては、硬化物の低硬度化の点から、主鎖の繰返し単位がオキシプロピレン単位のものが好ましい。主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位である重合体の分子量としては、反応性および低硬度化のバランスの点から、数平均分子量(Mn)で500〜50000が好ましく、さらには1000〜30000が好ましい。
【0049】
本発明の衝撃吸収パッドとなる発泡体においては、硬化剤(A)、重合体(B)とともに、ヒドロシリル化触媒(C)が使用されることが好ましい。ヒドロシリル化触媒(C)としては、ヒドロシリル化触媒として使用しうるものである限り、特に制限はなく、任意のものを使用し得る。ヒドロシリル化触媒(C)の具体例としては、白金の担体;アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体;例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHClなどの白金−オレフィン錯体;例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO)などの白金−ビニルシロキサン錯体;例えば、Pt(PPh、Pt(PBuなどの白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu)などの白金−ホスファイト錯体;ジカルボニルジクロロ白金などが挙げられる。なお、以上の式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、m、nは1以上の整数を表している。
【0050】
また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3,159,601号および同第3,159,662号の各明細書に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3,220,972号明細書に記載された白金アルコラート触媒、モディック(Modic)の米国特許第3,516,946号明細書に記載された塩化白金酸−オレフィン複合体なども本発明に有用に使用し得る。さらに、白金化合物以外の触媒も使用することができ、その具体例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al2O、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiClなど(Phはフェニル基を表す)が挙げられる。上記で挙げられたヒドロシリル化触媒群より選ばれる少なくとも1種を、ヒドロシリル化触媒(C)として用いることが好ましい。それらの中でも、触媒活性および安全性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体から選ばれる1以上を使用することがより好ましい。
【0051】
硬化剤(A)および重合体(B)の含有割合は、重合体(B)中のアルケニル基1モル当り硬化剤(A)中のヒドロシリル基が0.1〜50モルが好ましく、0.2〜30モルがより好ましい。
【0052】
ヒドロシリル化触媒(C)の含有量としては、重合体(B)のアルケニル基1モルに対して10−8〜10−1モルが好ましく、10−6〜10−3モルがより好ましい。前記含有量が10−8モルより少ないと十分に硬化が進行しない場合がある。また10−1モルよりも多いと、樹脂組成物の硬化の制御が困難である場合や、得られた発泡体が着色する場合がある。
【0053】
本発明におけるシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体の製法としては、シリコン系重合体を構成する成分と発泡剤を混合した後、型枠に注入してから発泡させる。シリコン系重合体を構成する成分は、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)を含んでなる樹脂組成物であることが好ましく、前記樹脂組成物を硬化させる前、又は、硬化させると同時に発泡させることがより好ましく、前記樹脂組成物に性状が液体および/または固体である発泡剤(D)を添加し、発泡性樹脂組成物とした後、該発泡性樹脂組成物を硬化と同時に発泡させる方法が、発泡成形性や生産効率の観点から好ましい。
【0054】
本発明における発泡剤(D)としては、特に限定するものではないが、常温(23℃)において性状が、気体、液体、固体の発泡剤が挙げられる。また、別の側面で発泡剤を分類すると、例えば、通常、ポリウレタン、フェノール、ポリスチレン、ポリオレフィン等の有機発泡体に用いられる、揮発性液体や気体の物理発泡剤、加熱分解もしくは化学反応により気体を発生させる化学発泡剤、ヒドロシリル基と反応して水素を発生させる活性水素基含有化合物などが挙げられる。発泡剤(D)としては、物理発泡剤、化学発泡剤、活性水素基含有化合物より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。これらのうちでも、活性水素基含有化合物が、連続気泡率の向上や柔軟性等の物性発現に寄与するため、好ましく用いられる。
【0055】
前記物理発泡剤としては、ヒドロシリル化反応を阻害しないものであれば特に限定はないが、発泡性、および作業性と安全性の点から、物理発泡剤の沸点は、100℃以下であることが好ましく、50℃以下がより好ましい。具体的には、炭化水素、フロン、塩化アルキル、エーテルなどの有機化合物、二酸化炭素、窒素、空気などの無機化合物が挙げられるが、環境適合性の観点から、炭化水素、エーテル、二酸化炭素、窒素、空気から選ばれる化合物を用いることが好ましい。このうち、炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタンクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。また、エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、1,1−ジメチルプロピルメチルエーテル等が挙げられる。なお、発泡体製造時に、空気中で機械的な攪拌を行う場合は、攪拌に伴って巻き込まれた空気により気泡が形成される場合があり、これもまた物理発泡剤のひとつであると考える。ただし、これら物理発泡剤を使用する場合、発泡剤の残存物による発泡体成形後の物性変化が懸念されることなどから、発泡体製造後、使用した物理発泡剤の沸点以上の温度で加熱養生することにより、取り除いておくことが好ましい。
【0056】
前記化学発泡剤としては、ヒドロシリル化反応を阻害しないものであれば特に限定はないが、例えば、NaHCOなどの無機系化学発泡剤や有機系化学発泡剤などが挙げられる。
【0057】
前記活性水素基含有化合物としては、ヒドロシリル基と反応して水素を発生する活性水素基を含有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、以下のものが例示できる。即ち、活性水素基含有化合物としては、アルコール類、カルボン酸類、フェノール性ヒドロキシル基を有する化合物、水が例示できる。具体例としては、水;
【0058】
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテルなどの1価のアルコール;
【0059】
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,9−ノナメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、グリセリンモノアリルエーテルなどの多価アルコール;
ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、これらの共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、スクロース、テトラエチレンジアミン、エチレンジアミン等を開始剤とした1分子内にヒドロキシル基を3個以上含む化合物などのポリエーテルポリオール;
【0060】
アジペート系ポリオール、ポリカプロラクトン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールなどのポリエステルポリオール;
【0061】
エポキシ変性ポリオール;ポリエーテルエステルポリオール;ベンジリックエーテル型フェノールポリオールなどのフェノール系ポリオール;ルミフロン(旭硝子社製)などのフッ素ポリオール;ポリブタジエンポリオール;水添ポリブタジエンポリオール;ひまし油系ポリオール;ハロゲン含有難燃性ポリオール;リン含有難燃性ポリオール;
【0062】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、東亜合成化学工業(株)製「アロニクス5700」、4−ヒドロキシスチレン、日本触媒化学工業(株)製「HE−10」、「HE−20」、「HP−10」および「HP−20」[いずれも末端にヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルオリゴマー]、日本油脂(株)製のブレンマーシリーズとして、PPシリーズ[ポリプロピレングリコールメタクリレート]、ブレンマーPEシリーズ[ポリエチレングリコールモノメタクリレート]、ブレンマーPEPシリーズ[ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート]、ブレンマーAP−400[ポリプロピレングリコールモノアクリレート]、ブレンマーAE−350[ポリエチレングリコールモノアクリレート]、ブレンマーNKH−5050[ポリプロピレングリコールポリトリメチレンモノアクリレート]およびブレンマーGLM[グリセロールモノメタクリレート]、ヒドロキシル基含有ビニル系化合物とε−カプロラクトンとの反応により得られるε−カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系モノマーなどのヒドロキシル基含有ビニル系モノマー[なお、ヒドロキシル基含有ビニル系モノマーは、硬化剤(A)成分と発泡剤(D)の何れとしても利用できる];前記ヒドロキシル基含有ビニル系モノマーとアクリル酸、メタクリル酸、それらの誘導体などとの共重合により得ることが可能なヒドロキシル基を有するアクリル樹脂;その他アルキド樹脂、エポキシ樹脂などのヒドロキシル基を有する樹脂;
等のアルコール類;
【0063】
酢酸、プロピオン酸等の一価の飽和カルボン酸等のカルボン酸類;
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールS、フェノール樹脂などのフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物;
等が挙げられる。
【0064】
これらの活性水素基含有化合物のなかでも、反応性や取り扱い性の点から、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの1級飽和炭化水素アルコール、ポリエーテルポリオール、水よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、また、柔軟性や透湿性付与の観点から、酸素が直接炭素に結合している化合物または水が好ましい。とりわけ、水、エタノール、ポリエチレングリコールの何れかが好ましい。
【0065】
本発明における活性水素基含有化合物中の水酸基当量は、該水酸基当量が小さくなると、添加する活性水素基含有化合物の体積が大きくなり、発泡倍率が上がりにくくなるため、0.1mmol/g以上が好ましく、さらに、反応性の点から0.5mmol/g以上がより好ましい。
【0066】
本発明においては、ヒドロシリル基を有する硬化剤(A)中のヒドロシリル基との脱水素反応を容易に行うために、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類を用いることもできる。また、発泡速度の調整のために、2種類以上の活性水素基含有化合物を併用することも可能である。
【0067】
さらに基材樹脂が、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、を含有する場合、架橋度や、発泡成形性、透湿性などの物性調整のために、エチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールプロプレングリコール共重合体のモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の、分子内にヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合と、ヒドロキシル基との両方を併せ持つ化合物を、使用することもできる。
【0068】
なお、発泡剤(D)として、例えば、ポリエチレングリコールやポリエチレングリコールモノアリルエーテルのような1分子内に2個以上のヒドロキシル基、もしくはヒドロキシル基とアルケニル基を有する活性水素基含有化合物を用いた場合は、ヒドロシリル基を有する硬化剤(A)中のヒドロシリル基と、発泡剤(D)中の活性水素基含有化合物中のヒドロキシル基との反応により、水素ガスを発生すると共に架橋構造を形成するため、発泡性の低下や発泡体の機械強度が低下する場合があるので、下記のように配合に注意を要する。
【0069】
本発明において発泡剤(D)として、1分子内に2個以上のヒドロキシル基、もしくはヒドロキシル基とアルケニル基を有する活性水素基含有化合物を用いる場合、硬化剤(A)、重合体(B)および発泡剤(D)の配合割合は、各化合物の構造、目的とする発泡倍率、目的とする物性により適宜選択されるものであって特に限定はされないが、硬化剤(A)中のヒドロシリル基のモル数xと、重合体(B)中のアルケニル基のモル数yおよび発泡剤(D)中のヒドロキシル基のモル数zの和との比率が、x/(y+z)=1/10〜50/1であることが好ましく、x/(y+z)=1/5〜30/1であることがより好ましく、x/(y+z)=1/2〜20/1であることがさらに好ましい。x/(y+z)が50/1を越えると、架橋密度が低くなり、十分な機械的強度が得られない場合があり、x/(y+z)が1/10未満であると、十分な発泡、硬化が起こらない場合がある。
【0070】
また、重合体(B)のアルケニル基のモル数yと発泡剤(D)のヒドロキシル基のモル数zとの比率には特に限定はなく、目的とする発泡倍率、目的とする物性、硬化剤(A)の骨格、発泡剤(D)の種類により、適宜選定することが出来るが、一般的には、y:z=100:1〜1:100が好ましく、y:z=10:1〜1:20がより好ましい。
【0071】
本発明のシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体には、必要に応じて、さらに、充填剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、ポリジメチルシロキサン―ポリアルキレンオキシド系界面活性剤あるいは有機界面活性剤(ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル等)などの整泡剤、酸あるいは塩基性化合物(ヒドロシリル基とヒドロキシル基との反応調整のための添加剤であり、酸で縮合反応を抑制し、塩基で加速する。)、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤などを、本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0072】
また、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体の整泡性や、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)を含んでなる樹脂組成物を用いる場合の、これらの相溶性を向上させる目的で、界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤の種類としては特に限定されるものではないが、具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエ一テル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルコキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム液、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0073】
さらには、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)を含んでなる樹脂組成物に、必要であれば貯蔵安定性を改良するために貯蔵安定性改良剤を添加してもよい。貯蔵安定性改良剤としては、硬化剤(A)の貯蔵安定剤として知られている通常の安定剤で所期の目的を達成するものであれば使用することができる。このような貯蔵安定性改良剤の好ましい例としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、チッ素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。具体例としては、例えばベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、ジメチルアセチレンジカルボキシレート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン、キノリンなどが挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができるが、これらに限定されるわけではない。これらの中では、ポットライフおよび速硬化性の両立という点から、チアゾール、ベンゾチアゾール、ジメチルマレートが特に好ましい。
【0074】
前記貯蔵安定性改良剤の使用量は、硬化剤(A)および重合体(B)に均一に分散するかぎりほぼ任意に選ぶことができるが、硬化剤(A)のSiH基含有化合物中SiH基1モルに対し、10−6〜10−1モルの範囲で用いるのが好ましい。前記使用量が10−6モル未満では硬化剤(A)の貯蔵安定性が充分に改良されない場合があり、また10−1モルを超えると硬化性が不充分になることがある。
【0075】
さらには、本発明のシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体には、必要であれば、気泡調整剤を添加しても良い。該気泡調整剤の種類には特に限定はなく、通常使用される、例えばタルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、シリカなどの無機固体粉末や、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル系化合物、フッ素系化合物などが挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種用いることができる。気泡調整剤の使用量は、通常使用される量でよい。具体的には、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)の合計量を100重量部としたときに、0.1〜100重量部が好ましく、0.5〜50重量部がより好ましい。
【0076】
本発明の衝撃吸収パッドの製造方法は、特に限定はないが、例えば以下のように製造できる。
【0077】
<シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体の製造>
発泡剤(D)として気体を用いる場合には、まず、シリコン系重合体を構成する成分、たとえば、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、必要に応じて気泡調整剤などの任意成分のを撹拌混合して調整し、樹脂原料とする。
【0078】
次に、この樹脂原料と気体である発泡剤(D)とを密閉状態で共存させてから0.001〜50MPa程度の範囲内、好ましくは0.01〜40MPa程度の範囲で圧縮する。直ちに圧縮された樹脂原料をミキサーに移送し、高速撹拌する。このとき、気体は樹脂原料中に分散する。次に、気体が分散した樹脂原料を加圧する。加圧後に得られた樹脂原料を型枠内に、圧入などの手段によって注入し、加熱することにより本発明のシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体が得られる。
【0079】
加圧条件、加熱条件は発泡倍率や粘度により変わるので、適宜調整する。泡立ち(分散させる気体量)と泡立ち後の気泡の維持の点から、例えば室温(23℃)でB型粘度計を用い4rpmで測定した液状樹脂組成物の粘度は、100〜3000P(ポイズ)が好ましく、300〜1500Pの液状樹脂組成物がより好ましい。粘度が100Pより低いと、破泡してパッドとして好適な発泡体が得られない場合があり、3000Pよりも高いと、気体の分散不良を起こす場合がある。
【0080】
発泡剤(D)として液体や固体を用いる場合には、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)、および、必要に応じてその他の任意成分を加えて混合した後、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)を添加、混合した後、型枠内に注入し、加熱することにより、硬化する前、又は、硬化しながら発泡し、本発明のシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体が得られる。
【0081】
<発泡体を用いた衝撃吸収パッドの製造>
前記で得られたシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体を用いて、たとえば、以下のようにして衝撃吸収パッドを得る。まず、得られた発泡体は、そのまま、あるいは発泡成形時に形成される表皮層を切除したり、適当な形状に切り出したりしたものを衝撃吸収パッドとして使用する。ただし、通気性を効果的に発現させることが必要な用途に関しては、表皮層を切除するか、もしくは表皮層に開孔部を設けるか、貫通孔をあけることが好ましい。成形時の発泡体の形態としては、特に限定するものではないが、たとえば板状、シート状、不定形塊状、ビーズ状、あるいは袋状や衣服の形態に成形したものなどが挙げられる。また、発泡体は単独で用いても良く、未発泡体であるプラスチック、発泡倍率の異なる発泡体、フィルム、布、不織布、紙等の素材と一体成形して用いても良い。
【0082】
またさらには、本発明のシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体に関しては、発泡体の表面に綿、アクリル繊維、毛、ポリエステル繊維等でできた布や不織布を、適宜、接着剤を使って貼り合わせてから衝撃吸収パッドに用いても良い。この様に貼り合わせることで、発泡体の感触を良好にし、さらに、運動時や高温・多湿時の発汗時にこの張り合わされた生地によって吸汗作用を施すことができる。
【0083】
本発明の衝撃吸収パッドは、衣類へ取り付けることで好適に用いられる。該衝撃吸収パッドを取り付ける衣類は特に限定されるものではないが、下半身の一部または全部を覆う衣類が好ましく、例えば、スラックス、ジーンズ、トレーニングパンツ、サブリナパンツ、ニッカポッカ、ハーフパンツ、半ズボン、ホットパンツなどのスボン類、スカート類、袴類などの、下半身に着用するアウターウェアとしてのボトムス類、ショーツ、トランクス、ボクサーブリーフ、ブリーフなどのパンツ類、ガードル類、ふんどしなどの下半身用インナーウェア類、靴下類、足袋、タイツ、レッグウォーマー、脚絆などの足につける衣類、ワンピース、ドレス、合羽、つなぎ、着ぐるみ、全身タイツなどの全身を覆う衣類、エプロン、割烹着、白衣、外装用プロテクターなどの防護用衣類などが挙げられる。このうち、骨折しやすい部位での衝撃を吸収する目的から、スボン類もしくはパンツ類が好ましく、特にパンツ類が好ましい。
【0084】
衣類への衝撃吸収パッドの取り付け方法も特に限定しないが、該パッドが着用時や洗濯時にかかるせん断力等によってずれないように、また、身体へのフィット性の向上、運動のしやすさを付与するためにキルト状に該パッドを生地に縫い付ける方法が例示できる。このために、該パッドを糸で縫いつけて固定してもよい。このときに、該パッドは、身体に触れるようにしても良いし、あるいは、生地を介しても良い。また、例えば、ポケットを作り、その中で着脱自在に取り付ける方法も挙げられる。
【0085】
衝撃吸収パッドを衣類に取り付ける位置としては、腰回りにおける前身頃、脇部、後身頃、臀部の対応する部位の任意の1以上の箇所に取り付けることが好ましい。このような部位に衝撃吸収パッドを取り付けることで大腿骨頚部を中心に保護することができる。したがって、大腿骨頚部外側部の大転子部を保護できる位置に、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体からなる衝撃吸収パッドを取り付けてなる衣類を着用することで大腿骨骨折を防止することが可能となるのである。
【0086】
また、本来転倒等によって受ける衝撃を緩和する皮下脂肪が比較的薄く骨に対し衝撃が強くかかるところには、衝撃吸収性を重視し、厚手の発泡体を用いた衝撃吸収パッドを、また皮下組織は厚く、本来の衝撃吸収能力は多少あるが、尻もち等によっての衝撃を受けやすい臀部等には着用性を重視して1つのパンツに2種類以上のパッドを組み合わせて使用しても良い。また、着用性等の点で必要であれば衝撃を強く受ける場所には、本発明のシリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体を用いた衝撃吸収パッドを用い、さらに、衝撃の比較的緩和されるようなところには、他のパッドを用いてもかまわない。他のパッドとしては、例えば、ウレタン発泡体やポリエチレン発泡体、アクリル発泡体、不織布、立体織物等が挙げられる。
【0087】
本発明の衝撃吸収パッドの形状としては、特に限定されるものではないが、長方形、正方形、円形、楕円形、ひし形などの多角形や、短冊状やドーナツ型の内部がくりぬいてあるもの、表面に任意の凹凸を付けたもの等が挙げられる。また、通気性を持たせるために、適宜貫通孔をあけても良い。衝撃吸収パッドの大きさは特に限定されるものではないが、1cm〜1000cmが好ましく、50cm〜500cmがより好ましい。
【0088】
衝撃吸収パッドの密度は特に限定されるものではないが、着用感の観点からはできるだけ密度が小さいものが好適に使用されるが、極端に密度が小さい場合は衝撃吸収性が不十分となる可能性がある。この観点から、密度は30kg/m〜1000kg/mが好ましく50kg/m〜800kg/mがより好ましい。
【0089】
また、衣類に用いられる生地も、素材、編繊方法など、特に限定されるもではないが、例えば、通気性、衝撃吸収性を向上させるために、生地の表面に凹凸を付けたものを用いることができ、表面に凹凸の形状が現れる編み組織、パイル編み等が好ましい。特に、これらの生地を衣類の身体側に位置する場所に装着することによって上記のような効果を発揮できることが判明した。さらに、パッドを身体に密着させることで効率的に衝撃を緩和させるために、パッドの回りにストレッチ素材を用いても良い。
【実施例】
【0090】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例中の測定、評価は、次の条件・方法により行った。なお、特にことわりがない場合、実施例および比較例の部や%は重量基準である。
【0091】
<衝撃吸収特性評価>
転倒衝撃を吸収する評価は、簡易的に以下の方法により行った。人体を用いた実験およびシミュレーションにより解析した結果、転倒による衝撃力は最大で10000N程度にまで達することが報告されている(Robinovitch S. N., Hayes W. C., McMahon T. A.: A prediction of femoral impact forces in falls on the hip. J Biomech Eng, 113:366-374; 1991、など)。また、ダミーモデルを用いた実験では、畳の上での転倒では200Gの加速度を受けることが報告されており(小山憲路,元田英一,豊永敏宏:転倒用ダミーを用いたヒッププロテクターの評価.日職災医誌,49(5):451−455,2001、など)、病院等で一般的に用いられている床材の上での転倒で受ける加速度は、さらに大きくなると思われる。このため、転倒衝撃による加速度を400Gと仮定し、衝撃吸収パッドによりどれだけ減衰させることができるかを評価した。
【0092】
実験方法としては、落下衝撃試験機において、衝撃吸収パッドがない状態で衝撃時に400Gとなる条件で錘を自然落下させた。衝撃吸収パッドによる加速度減衰率を、衝撃吸収率として、式(3):
衝撃吸収率={(400−k)/400}×100 (3)
により算出した。式中、kは衝撃吸収パッドがあるときの衝撃による加速度である。
【0093】
<硬さ測定法>
衝撃吸収パッドの硬さは、ASKER FP型硬度計を、試料の上にそっとのせて、その指示値により評価した。試料によっては、経時的に指示値が下がっていく場合もあるため、硬度計に試料を載せた直後の値を読み取った。
【0094】
<反発弾性評価>
反発弾性は、JISK6400−3に準拠して測定を行い、反発弾性率を算出した。反発弾性の測定には、鋼球(直径16±0.5mm、質量16±0.5g)を、回転させずに試験片に落下させる方法にて行った。鋼球の落下高さは500±0.5mmであり、跳ね返った高さの測定は、鋼球の最上部の位置とした。得られた測定結果から、以下の式(4)を用いて反発弾性率を算出した。
R=(L−16)/500×100 (4)
式中、Rは反発弾性率(%)であり、Lは測定時の跳ね返り高さ(mm)である。
【0095】
<装着感評価>
装着感の評価は、パンツの左右脇部、つまり大腿骨頚部を覆う部位の内側に、上部に開口部を持つポケットを形成した綿生地のパンツを作製し、これに衝撃吸収パッドを入れ、20人のパネラーに着用してもらい、日常の動作を邪魔しないか、違和感の有無、24時間の着用による蒸れや肌触りの快・不快感により官能評価を行い、結果を集約した。その際の評価基準は、以下の通りであった。
A:違和感がなく、長時間の着用でも不快感がない
B:違和感はないが、長時間の着用では蒸れが生じ、不快感がある
C:違和感があり、長時間の着用が難しい
【0096】
<使用化合物>
実施例・比較例においては、表1に示す化合物を用いた。
【0097】
【表1】

(実施例1)
まず、100部の重合体B−1に対して、シリカ(商品名:ニップシールSS−50A、東ソー・シリカ(株)製)を25部、さらに酸化防止剤(商品名:IRGANOX245、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を1部配合し、撹拌・混合した。また、別に100部の重合体B−1に対して炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製MCコートS−20)200部および上記と同様の酸化防止剤を1部配合し、撹拌・混合した。それぞれの混合物をそれぞれ混合物B−1a、混合物B−1bとした。
【0098】
重合体B−1を950g、混合物B−1aを1000g、混合物B−1bを750g混合し、さらに、硬化剤A−1を40.33g、遅延剤マレイン酸ジメチル(ナカライテスク(株)製)および3−メチル−1−ペンチン−3−オール(日信科学工業(株)製オルフィンP)をそれぞれ29.78μL、403.93μL加え、触媒C−1を900μL配合し、減圧下で脱泡することにより樹脂原料を得た。
【0099】
機械発泡機を用いて、発泡剤の導入圧力を0.41MPaに設定し、発泡剤D−1を上記で得た樹脂原料に導入してから高速攪拌させることにより水アメ状樹脂組成物を得た。この水アメ状樹脂組成物を、厚さ18mm、長辺132mm、短辺112mmの長方形をした型枠に注入し、140℃の温度に設定したオーブンにて30分程度加熱硬化させることにより、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体からなる衝撃吸収パッドを得た。得られた衝撃吸収パッドの密度は206kg/mであった。得られた衝撃吸収パッドの評価結果は表2に示す。
【0100】
【表2】

(実施例2)
100部の重合体B−2に対して、発泡剤D−2を7.5部、触媒C−2を0.08部加えて十分に混合し、さらに、硬化剤A−2を13部添加してすばやく混合した。この混合物を厚さ20mm、長軸165mm、短軸115mmの楕円形型枠に注入し、40℃に設定したオーブンで60分加熱硬化し、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体、即ち衝撃吸収パッドを得た。得られた衝撃吸収パッドの密度は171kg/mであった。また、得られた衝撃吸収パッドの評価結果は表2に示す。
【0101】
(比較例1)
厚み7mmのポリウレタン発泡体(商品名:Hip Protector、Lyds International社製)を実施例1と同様に評価し、結果を表2に示した。
【0102】
(比較例2)
ポリウレタン発泡体とポリエチレン発泡体、およびステンレスコイルからなる衝撃吸収パッド(商品名:ほねガード、(株)ナイガイ製、厚み7.2mm)を実施例1と同様に評価し、結果を表2に示した。
【0103】
(実施例3)
パンツの左右脇部、つまり大腿骨頚部を覆う部位の内側に、上部に開口部を設け、衝撃吸収パッドを入れることができるポケットを形成した綿生地のパンツを作製した。こうすることにより、パッドの取り外しが容易にできる。このポケットに実施例1で得られた衝撃吸収パッドを入れた。このパンツは着用感が優れ、常時着用しても違和感がなく、衝撃吸収パッドが肌に当たる部分は肌触りが良好であった。
【0104】
(実施例4)
ポケットに入れた衝撃吸収パッドを、実施例2で得られたものにした以外は実施例3と同様にしてパンツを作製し、その使用感を評価した。このパンツは着用感が優れ、常時着用しても違和感がなく、パッドが肌に当たる部分は肌触りが良好であった。
【0105】
(比較例3)
ポケットに入れた衝撃吸収パッドを、比較例1のものにした以外は実施例3と同様にして、パンツを作製し、その使用感を評価した。このパンツにおける衝撃吸収パッドは、反発弾性率が低く、低反発材であるが、衝撃吸収性が低く、硬度が高く硬かった。
【0106】
(比較例4)
ポケットに入れた衝撃吸収パッドを、比較例2のものにした以外は実施例3と同様にして、パンツを作製し、その使用感を評価した。このパンツにおける衝撃吸収パッドは、衝撃吸収性に優れているが、硬く、装着感が悪かった。
【0107】
上記結果より、実施例の衝撃吸収パッドは、比較例に比べて装着感が良く、衝撃吸収性と硬さや装着感とのバランスが取れており、衝撃吸収パッドに好適であった。従って、本発明の衝撃吸収パッドは、衝撃吸収性に優れ、装着感が良く、毒性の少なく、また、該衝撃吸収パッドを取り付けた衣類は、身体への装着感が良好であることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体からなることを特徴とする衝撃吸収パッド。
【請求項2】
基材樹脂が、
分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、
分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、
ヒドロシリル化触媒(C)、
を含んでなる樹脂組成物を硬化させたものであることを特徴とする請求項1記載の衝撃吸収パッド。
【請求項3】
前記樹脂組成物に、性状が気体である発泡剤(D)を分散させ、気体含有樹脂組成物とした後、該気体含有樹脂組成物を型枠に注入して硬化させてなることを特徴とする請求項2に記載の衝撃吸収パッド。
【請求項4】
前記樹脂組成物に、性状が液体および/または固体である発泡剤(D)を添加し、発泡性樹脂組成物とした後、該発泡性樹脂組成物を硬化させる前、又は、硬化と同時に、発泡させてなることを特徴とする請求項2記載の衝撃吸収パッド。
【請求項5】
前記性状が液体および/または固体である発泡剤(D)が、活性水素基含有化合物である請求項4記載の衝撃吸収パッド。
【請求項6】
シリコン系重合体を構成する成分と発泡剤を混合した後、型枠に注入してから発泡させることを特徴とする衝撃吸収パッドの製造方法。
【請求項7】
前記シリコン系重合体を構成する成分が、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)を含んでなる樹脂組成物であることを特徴とする請求項6記載の衝撃吸収パッドの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂組成物を硬化させる前、又は、硬化させると同時に発泡させることを特徴とする請求項7に記載の衝撃吸収パッドの製造方法。
【請求項9】
性状が気体である発泡剤(D)を用い、前記樹脂組成物に発泡剤(D)を分散させて気体含有樹脂組成物とした後、型枠に注入してから硬化させることを特徴とする請求項7に記載の衝撃吸収パッドの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5何れか一項に記載の衝撃吸収パッドを、腰回りにおける前身頃、脇部、後身頃、臀部の少なくとも1以上に対応する部位に取り付けてなる衣類。
【請求項11】
衝撃吸収パッドを着脱自在に取り付けてなる請求項10記載の衣類。
【請求項12】
パンツ類である請求項10又は11記載の衣類。
【請求項13】
大腿骨頚部外側部の大転子部を保護できる位置に、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡体からなる衝撃吸収パッドを取り付けてなる衣類を着用する大腿骨骨折を防止する方法。

【公開番号】特開2008−266867(P2008−266867A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60973(P2008−60973)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】