説明

衝撃吸収材付き履物

外部の物体との衝撃から足を保護する履物であり、その履物は、衝撃を受けた場合に、足あるいは外部ボディーからの圧力による変形に適する保護部品(20)を備える。保護部品は、永続的かつ不可逆的な構造上の変化に反応する方式で作成されており、そのため、衝撃を受けている間に受けたエネルギーを吸収すると同時に分散する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃に抗する保護部品を有する履物、特に実施形態に述べられたモトクロスブーツのようなスポーツ活動のための履物に関する。但し、この発明は、サンダル、スリッパ、ブーツなどのような異なる履物にも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
モータサイクル、特にモトクロスにおいて、ライダーは、クラッシュの場合に、地面、他のライダ達、あるいは同じモータサイクルに対して起り得る衝撃を吸収するように補強されたブーツを使用している。そのような補強は、例えば、履物の側部には、例えば変形しない素材からなるプレートとして、また、履物の底部には、厚い靴底及び/又は剛体材料として提供され得る。垂直な落下の場合、ライダーの足の靴底、特に踵は、同一の補強材の剛性が原因にもなって、好ましくない打撲あるいは骨折さえも引き起こす大きな衝撃を受け易い。モトクロスと同様に、スケートボードのような他のスポーツでも、踵は強い垂直な衝撃にさらされ、従って、特殊な形状の踵を有する履物を製造することによって前記問題を解消する試みがなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1からすると、靴底には、ポリエチレンまたはその他の弾性変形可能な素材、すなわち、衝撃またはクラッシュの後に所与の一定の時間で元の形状または構造に戻る、衝撃吸収成分からなるインサートを踵に持つものが知られている。しかしながら、この種のインサートは、衝撃によって発生したエネルギーを完全に消散していない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の主な目的は、衝撃またはクラッシュに抗する保護能力を高めた履物を提供することにある。
【0005】
この目的または他の目的は、衝撃の間に足および/または外部の物体からの圧力に基づいてそれ自身を変形させるに適する保護部品を備える履物のような、外部の物体とのクラッシュに抗して足を保護可能とする履物によって達成され、保護部品は、衝撃の間に受けたエネルギーを吸収すると同時に消散する構造的な変化により、前記圧力に対応可能な永久的かつ不可逆的に変化可能な構成を有することを特徴とする。
【0006】
従って、この発明の明白な効果は、衝撃発生時に、保護部品によって受け止められた全てのエネルギーが消散され、基本的には戻ってくるエネルギーがゼロになる、という効果がある。
【0007】
前記保護部品は、前記圧力(クラッシュによって発生した)により、凹みかつ永続的に変形するに適した中空構造を備えている。従って、クラッシュの間に受けたエネルギーは、保護部品の変形(および熱の形態)を通じて消散される。空洞が座屈すると、それはもはや衝撃前の状態を留めず、その戻りエネルギーは実質的に0となる。
【0008】
中空構造の効果は、中空構造が二つ以上の間隙容積を区切る壁を備える場合に効果的に調整される。従って、衝撃を受けた場合に、副空洞の連続的かつ漸進的な変形が、前記保護部品のエネルギー吸収効果を変化させるためにもたらされる。
【0009】
従って、この場合、平行に座屈可能な壁で保護部品を構成し、かつ可能な衝撃力の準線(例えば分割された層の集まり)と概ね直交する面にそれらを位置させることは、有効である。従って、衝撃が徐々に進行するとき、その後、壁は順次座屈(及び/又は破壊)する。
【0010】
従って、圧力によって永続的に屈曲することが可能な素材を有する保護部品を作成することは、非常に便利である。
【0011】
他の選択は、前述の一つとの適当な組み合わせにおいて、前記圧力によって不可逆的に破壊する可能性がある脆弱な素材を用いる保護部品を作成することにある。この場合、衝撃の際に受けたエネルギーは、保護部品(またはその部分)の破壊へと向けられ、そのようなエネルギーは、戻されることはなく、全体に消散される。
【0012】
有利には、その保護部品は履物に取り外し可能に結合され得るインサートから構成されることが良く、そのような部品は、好ましくは、履物の中のシート(seat)に収容され、かつ見えないように置かれることが良い。従って、クラッシュによってダメージを受けた場合には、そのインサートは新たなものに交換することができる。内部ではあるが、そのシートは、インサートをその中に置くか、あるいは取り替えるために、例えば、壁をそこから取り外し可能にすることによってアクセス可能である。
【0013】
保護部品の作用をサポートするために、それを保持しているシートであっても、同一の保護装置に対して同一及び/又は異なる保護の特徴を持つことが可能である。効果的な解決手段は、圧力によって座屈する方法で前記シートの少なくとも一つの壁を作成することにある。従って、シートの壁でさえも衝撃のエネルギーを消散することができる。
【0014】
優位に、保護部品は、特有の素材、混合素材を用いて作ることが可能であり、また、異なる素材の種々の層によって構成される。加えて、弾性部材が、インサートに結合され、弾性的な作用を持ち、軽い衝撃を緩和する方法で提供され得る。従って、保護部品の破壊は、大きな衝撃のためだけに保持され、それによって、絶え間ない交換を回避している。明らかなように、保護部品の各部及び/又は素材の介入閾値は、最終用途、作成されるべき履物、及びトポロジーによってテスト及び/又は設計されるべきである。
【0015】
シートの少なくとも一つの壁は、圧力による屈曲に適した薄いストリップを有することが好ましい。これは、インサートに対して影響を及ぼすストリップであることを確保し、それによってより高い安全性を保証する。
【0016】
選択として、薄いストリップと少なくとも一つの壁との間に調整された破壊剛性を有する結合点を備えることがある。そのような結合点は、薄いストリップが自由に屈曲しかつインサートに対して当接するのを維持しつつ圧力によって破壊する方式で設計されるべきである。これをもとにして、前記ストリップが切り離されるべき最大加重と、保護部品の介入閾値は、決定され得る。
【0017】
本発明の形態及び効果は、以下の明細書の記載、与えられた図示の実施形態から、添付の図面を参照することによってさらに明確に表されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5983529号明細書
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るモーターサイクリングブーツの分解図である。
【図2】組み立てられた図1のブーツの(踵から先端)の縦断面の概略図である。
【図3】図2におけるI−I面に係る図1のブーツの断面の概略図である。
【図4】本発明に係るインサートの側断面図である。
【図5】衝撃の開始における図4のインサートの図である。
【図6】衝撃の最後における図5のインサートの図である。
【図7】インサートがないブーツの変形の内部の図である。
【図8】インサートを有するブーツの変形の内部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図を参照するに、10は、覆い(hull)30,トレッド40およびその二つの間に置かれたインサートを有するブーツ(部分的に表された)を示す。
【0021】
伝統的な履物に見られるように、ソール(分離されたトレッドを設けることが可能な)に連結されたアッパーを持たず、履物10は、射出成型されたプラスチック材料のような剛性材を用いている一体成形品として作られた単一部材である覆い30を提供している。適正なカバー要素(図示せず)を完成したとき、ブーツ10はライダーの足を収容し、場合によっては布製の履物(図2参照)に適合可能である。覆い30は、アッパー先端部36、ソール低部31を有し、そこには金属プレート(又はコア)51が補強機能と共に埋設され得る(図3)。踵32に対応する範囲において、ソール31はインサート20を受けるシート33(図2)を有している。実際には、圧力によって変形可能なストリップ(又は舌片)を備えている。そのストリップ50は、プレート51の全部または一部を備えても良く、そしてそれは剛性を有する結合周辺位置(即ちブリッジ)38(例えば、成形中に得られる)を通じて、永続的にシート33の周囲に結合しても良い。ブーツの低部10上で、トレッド40は、インサート20を覆い、かつシート33内にそれを保持するように(図2)、ソール31の全下面に結合する。
【0022】
インサート20は、実質的に平行6面体の要素であり、縁が丸く、脆い性質の素材、すなわち、その破壊加重を超える外力を受けたときに、少しも塑性変形することなく、破損する素材によって形成されている。そのような破壊は、衝撃エネルギーの優れた分散を保証する。使用された素材は、要求された破壊加重によって選択されるべきであり、それはインサートの保護干渉閾値を明確にする。
【0023】
本発明の異なる実施形態(図4−6参照)によれば、インサート120は、延性のある素材で有っても良く、弾性的挙動(及び復元)(図4)を欠くものであっても好い。それは内部空洞82を形成している外面6面体のケース80を備えている。その空洞は、二つの凹んだ壁86a,86bによって副空洞84a,84b,84cに分割されている。F方向に向かう衝撃(図5および図6参照)は、まず、壁86aを、それから壁86bを順次崩壊させる(及び/又は破壊させる)。それは空隙容量84a,b,cへの仕切り、および壁86a,86bの機械的特性が、いかに、衝撃の間のインサートの120の作用(挙動)を決定することが可能であるかということを明確にし、それによって、その干渉閾値および衝撃に対する応答性を調節する。
【0024】
本発明の他の実施形態によれば(図7、8参照)、ブーツ210の覆い230は、アッパーの先端部を備え、かつソールの低部231を備える。シート233は、ソール231の踵232の領域に得られ、それは周辺端部235および柔軟性のある浮動ストリップ250によって画成されている。
【0025】
第1の実施形態と同様に、インサート220(図8)は、シート233に収納され、ストリップ250によって上側でブロックされ、図示されているないトレッドによって下側でブロックされる。
【0026】
3つの歯239があり、それらは周辺端部235の後方部から突出し、シート233に永続的にインサート220を保持するように調整されている。
【0027】
突出歯239に対する反対位置に、ソール231の全体的厚さを通じて走っている2つの切り込み260があり、ストリップ250の長さに沿って平行に延在している。その切り込み260はストリップ250、およびソール231の一部の中にも、より大きな柔軟性を保証する。
【0028】
本発明に係るブーツは、モトクロスのようなスポーツ活動に非常に有効であり、そこでは、ライダーがしばしば縦方向の落下に曝されて、踵に対する衝撃を受ける。インサート20,120,220に対する衝撃によって、踵はインサートを破損または変形させる。これは、クラッシュの間に発生したエネルギーのほぼ完全な吸収と分散に導き、それによってライダーの怪我の危険性を削減し、少なくとも踵の骨折の危険性を削減する。インサート20,120,220が介在することによって、より大きな度合いの衝撃が吸収される一方、踵32,232は、ストリップ50,250によって軽い衝撃を弾性的に緩和することが可能である。
【0029】
加えて、第1および第2の実施形態では、発生したエネルギーが結合点38の破損を通じて均等に消散される可能性がある。実際に、インサート20,120上の踵によって発生した力の量は、前記点38の静的応答性を越え、後の破損は不可逆的にエネルギーを消失させる。そのような破壊の前または後において、ストリップ50は、振動可能に形成されており、従って衝撃を緩和する(そしてストリップがわずかに曲がるのを許容して、前記点38がわずかに伸縮することを可能にする。)
機能的にまたは概念的に均等な変更および変形が、かつ特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内において提供可能である。例えば、本発明において、一つまたはそれ以上の保護装置が踵の領域上だけでなく、履物の他の部分にも配置することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃の間に足及び/又は外部の物体からの圧力によりそれ自体を変形させるのに適合する保護部品(20,120,220)を備え、外側本体との衝撃に抗して足を保護する履物(10,210)であって、
保護部品(20,120,220)は、永続的かつ不可逆的な構造的変化に基づいて作用するように配置され、その結果、衝撃の間に受けたエネルギーを吸収すると同時に消散させることを特徴とする履物。
【請求項2】
前記保護部品(220)は、前記圧力により撓み、かつ永続的に変形するのに適合する中空構造を備えることを特徴とする請求項1に記載の履物(10)。
【請求項3】
前記中空構造は、2つ以上の空隙容積(84a,84b,84c)を画成する撓む壁(86a,86b)を有することを特徴とする請求項2に記載の履物(10)。
【請求項4】
前記撓む壁(86a,86b)は、互いに並行であって、起り得る衝撃力に対して基本的に直交する面上に置かれていることを特徴とする請求項2または3に記載の履物(10)。
【請求項5】
前記保護部品(20,120,220)は、圧力の下で永続的に屈曲し得る素材を市よして作られていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の履物(10,20)。
【請求項6】
前記保護部品(20,120,220)は、側方からの圧力によって不可逆的に破損することを可能とする脆弱な素材で形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の履物(10,210)。
【請求項7】
前記保護部材は、履物に取り外し可能に結合可能なインサート(20,120,220)からなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の履物(10,210)。
【請求項8】
前記インサート(20,120,220)を前記履物内の見えない位置に保持するシート(33,233)を備えることを特徴とする請求項7に記載の履物(10,210)。
【請求項9】
前記シート(33,233)の少なくとも一つの壁は、前記圧力により座屈するような方式で作られていることを特徴とする請求項8に記載の履物。
【請求項10】
前記シートの前記少なくとも一つの壁は、圧力によって屈曲するように調整された薄いストリップ(50,250)を備えることを特徴とする請求項9に記載の履物(10,210)。
【請求項11】
前記薄いストリップの自由な屈曲を維持しつつ、前記薄いストリップ(50)と前記圧力による破壊に適した少なくとも一つの壁との間に、調整された破壊剛性を有する結合点を備えることを特徴とする請求項10に記載の履物(10,210)。
【請求項12】
前記薄いストリップ(50)は、金属製のコア(51)を有することを特徴とする請求項10または11に記載の履物(10,210)。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の履物のための保護部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−537704(P2010−537704A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522516(P2010−522516)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/IT2007/000595
【国際公開番号】WO2009/028001
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(502016471)アルパインスターズ リサーチ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (9)
【Fターム(参考)】