説明

衝撃吸収材

【課題】繊維分散体からなり、見かけ密度が小さく、厚みが小さな、新規な衝撃吸収材を提供する。
【解決手段】単繊維の数平均直径が1〜1000nmである繊維分散体を含有したスポンジ状構造体からなり、衝撃吸収率が80%以上である衝撃吸収材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維を分散状態で3次元に配したスポンジ状構造による衝撃吸収材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からポリマーと発泡剤を混合し、これを型枠に入れて加熱して発泡させた各種発泡フォームからなる衝撃吸収材が知られており(特許文献1参照)、具体的にはウレタンやポリオレフィン、メラミンからなる発泡フォームなどを基材とした衝撃吸収材が挙げられる。
【0003】
さらに、前記発泡フォームからなる衝撃吸収材の他に、繊維を利用し、不織布構造体とした衝撃吸収材も知られている(特許文献2参照)。
【0004】
上記不織布からなる衝撃吸収材は、熱融着繊維を利用して繊維を三次元に配した構造であるため、発泡フォームのように発泡剤を利用していないことによって、分解ガスが発生しないために環境にやさしく、さらに発泡剤などの高価な薬剤を用いる必要がないために工業的に低コストで製造できるといったメリットがある。
【0005】
しかしながら、ある程度の衝撃吸収性能を実現するためには不織布構造体としてある程度の厚みが必要であり、さらに構造体の力学的強度を持たせるには見かけ密度がある程度大きくなければならないので、薄型で軽量なものを求められる用途に適用するのは困難であった。
【0006】
そこで、繊維を極細化して不織布を薄型化する検討も行われているが、一般に極細繊維を用いた不織布では繊維が細いために不織布中での繊維の充填密度が高くなりやすく、構造体としては緻密化した2次元のシート状物となる傾向にあるため、多数の空隙を有する構造が求められる衝撃吸収材としては不向きであった。
【0007】
一方、極細繊維を用いて高い空隙を有する特殊な三次元の多孔質体が知られている(特許文献3参照)。これは、炭素繊維をゲル化物質に分散させた後、溶媒を除去して得られた三次元の多孔質体であり、フィルターや触媒担体としての利用を想定しているが、このような構造体を衝撃吸収材の用途に適用したとしても、繊維自体が長手方向の引張りには強い炭素繊維であっても、それと垂直な方向の衝撃には弱いために、炭素繊維が折れるなどして、衝撃を吸収できない可能性が非常に高く、十分な衝撃吸収性能が求められる用途においては適用することは困難であったと考えられる。
【0008】
そのため、極細繊維を三次元に配した構造体であっても、空隙率が高く、衝撃吸収性に優れた構造体が求められていたのである。
【特許文献1】特開2004−107519号公報
【特許文献2】特開2003−253549号公報
【特許文献3】特開2004−359936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、構造体として衝撃を和らげるような高い空隙率を有し、さらに薄型で軽量な高性能の衝撃吸収材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る衝撃吸収材は、数平均直径が1〜1000nmである繊維が分散状態で固定されたスポンジ状構造体からなり、衝撃吸収率が80%以上である衝撃吸収材により達成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、衝撃吸収性能に優れ、さらに従来よりも薄型で軽量な衝撃吸収材を得ることができる。
【0012】
そのため、シューズやマットなどに代表されるスポーツ製品、サポーターなどに代表される医療用製品、道路やスポーツ施設のフェンスや防護壁などに代表される産業資材製品、緊急用の人命救助製品、衝突時の衝撃を緩和する車両用安全製品など幅広く用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る衝撃吸収材について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
【0014】
本発明の衝撃吸収材はスポンジ状構造体から構成されている。ここでいう、スポンジ状構造体とは、3次元の構造体内部に微細孔や空隙を有している構造体のことである。そのため、構造体内部に多数の空隙(気泡)を含むことにより、その構造体上に物体が落下したり、衝突した際に、衝撃を吸収する作用を有する。三次元の形状としては、特に限定はなく、立方体、直方体、円筒形、球形および錐形など、どのような形をしていても良い。
【0015】
本発明において、スポンジ状構造体は、数平均直径が1〜1000nmである繊維が分散状態で固定されて構成されたものである。
ここで、「分散状態」とは繊維が分散した形態のものを指し、具体的には単繊維が実質的に凝集していない状態である。実質的とは、単繊維間が完全にバラバラで無配向の状態である場合、もしくは、部分的に結合しているものの大部分がバラバラで無配向の状態である場合をいい、いわゆる単繊維レベルで繊維状の形態であればよい。以下、繊維が分散した状態のものを繊維分散体と呼ぶことがある。また、後述の実施例1で得られた、繊維が分散された状態で固定化されたスポンジ状構造体のSEM写真を、繊維分散体の一例として、図1に示す。
【0016】
本発明において、繊維分散体は、それを構成する繊維の繊維長や断面形状などは特に限定されないものの、繊維(実質的には単繊維)の数平均直径が1〜1000nmであることが重要である。繊維の数平均直径をかかる範囲内にすることで、製造工程上、分散媒中に繊維が分散し易くなるため、繊維がスポンジ状構造体において部分的に偏在することなく均一に存在し易くなり、等質なスポンジ状構造体を得ることができる。また、分散媒中に繊維が分散しやすくなるので、スポンジ状構造体とした場合にも個体差が小さくなる。
【0017】
繊維の数平均直径としては500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。また、50nm以上であることが好ましい。
【0018】
本発明において、単繊維の数平均直径は以下のようにして求めることができる。すなわち、スポンジ状構造体の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で少なくとも150本以上の単繊維が1視野中に観察できる倍率で観察し、撮影した写真の1視野において、無作為に抽出した150本の単繊維の繊維長手方向に対して垂直な方向の繊維幅を繊維の直径とし、数平均を計算する。
【0019】
本発明で用いる繊維の種類としては特に限定はないが、繊維は有機繊維からなることが好ましい。ここでいう有機繊維とは無機繊維や炭素繊維とは異なり、有機ポリマーから構成されているものであり、衝撃吸収時に繊維がしなやかに曲がることによって衝撃吸収性能を高めやすく、衝撃吸収後に繊維が破断したり折れ曲がったりすることがないため、繰り返し衝撃を受ける用途にも好適な衝撃吸収材とすることができる。
【0020】
具体例としては、木材パルプなどから製造されるセルロース、コットンや、麻、ウール、シルクなどの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ナイロンやポリエステル、アクリルなどに代表される合成繊維などが挙げられ、繊維を構成するポリマーが熱可塑性ポリマーからなることが好ましい。これにより、繊維分散体を溶融紡糸法を利用して製造することができるために、生産性を非常に高くすることができる。
【0021】
本発明でいう熱可塑性ポリマーとは、ポリエチレンレタフタレート(以下、PETと呼ぶことがある)、ポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと呼ぶことがある)、ポリブチレンレフタレート(以下、PBTと呼ぶことがある)、ポリ乳酸(以下、PLAと呼ぶことがある)などのポリエステルやナイロン6(以下、N6と呼ぶことがある)、ナイロン66などのポリアミド、ポリスチレン(以下、PSと呼ぶことがある)、ポリプロピレン(以下、PPと呼ぶことがある)などのポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと呼ぶことがある)等が挙げられるが、ポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは融点が高いものが多く、より好ましい。ポリマーの融点が165℃以上であると繊維分散体の耐熱性が良好であり好ましい。例えば、該融点はPLAは170℃、PETは255℃、N6は220℃である。また、ポリマーには粒子、難燃剤、帯電防止剤等の添加物を含有させていてもよい。またポリマーの性質を損なわない範囲で他の成分が共重合されていてもよい。さらに、溶融紡糸の容易さから、融点が300℃以下のポリマーが好ましい。
【0022】
本発明において、衝撃吸収率は80%以上であることが重要である。衝撃吸収率を80%以上とすることで、衝撃時のクッション性が格段に向上するため、後述するような各種用途に用いられる衝撃吸収材とすることができる。衝撃吸収率は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
【0023】
本発明において、衝撃吸収率の求め方については後述の実施例中に詳述するが、以下のようにして求めることができる。すなわち、JIS K6400−3(2004)の軟質発泡材料の反発弾性試験に準じ、高さ50cmの位置から呼び5/8の硬球(直径16±0.5mm、質量16±0.5g)を衝撃吸収材上に落下させ、跳ね返った高さを測定して、3回の試験で得られた高さの平均値Hrを求め、次式(1)によって算出する。
衝撃吸収率(%)=((50−Hr)/50)×100 (1)
なお、跳ね返った高さは、目視で測定可能であるが、高速度カメラを用いて写真撮影することで測定することもできる。
【0024】
本発明におけるスポンジ状構造体は見かけ密度ρが0.001〜0.05g/cmであることが好ましい。見かけ密度を上記範囲にすることで、構造体としての強度を保ちながら、薄型でかつ軽量性を有し、衝撃吸収性能に優れた構造体となるため、高い要求特性が求められる各種衝撃吸収用途に幅広く使用することが可能となる。見かけ密度は0.005〜0.03g/cmであることがより好ましく、0.008〜0.02g/cmであることがさらに好ましい。
【0025】
本発明において見かけ密度ρ(g/cm)は次のようにして求めることができる。すなわち、スポンジ状構造体を例えば立方体や直方体などの形状に切り出し、定規やノギス等を用いて各辺の大きさを測定し、該スポンジ状構造体の体積を求め、これをV(cm)とする。また、切り出した該スポンジ状構造体の重量を測定し、これをW(g)とする。WをVで除すことにより見かけ密度ρを求めることができる。
【0026】
上記のスポンジ状構造体は、単独でも衝撃吸収材として使用可能であるが、一般的な衝撃吸収材と組み合わせて使用して、さらに性能を高めることも可能である。一般的な衝撃吸収材としては、ポリオレフィンフォーム、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォームなどの各種発泡体や各種合成繊維の不織布などが挙げられる。
【0027】
本発明の衝撃吸収材は厚みが0.5〜50mmと薄型でありながら衝撃吸収率80%以上を達成できるものであり、このような材料は従来にはなかったものである。厚みのより好ましい範囲としては1〜30mmであり、さらに好ましい範囲としては2〜15mmである。
【0028】
次に、上記のような本発明のスポンジ状構造体の製造方法について説明する。
【0029】
本発明のスポンジ状構造体は、数平均直径が1〜1000nmである繊維を分散媒中に分散させた繊維分散液を用意し、その繊維分散液を乾燥させて分散媒を除去することで得られる。
【0030】
前述のとおり、繊維の数平均直径としては、1〜1000nmであるが、500nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。また、50nm以上であることが好ましい。この範囲内にすることで、後述するような分散媒中に繊維を分散させやすくなる。
【0031】
本発明において用いられる繊維の製造方法は特に限定されず、常法の溶融紡糸法や静電紡糸法、湿式紡糸法、乾式紡糸法等により得ることが可能である。たとえば、単繊維の数平均直径が1000nm以下の極細繊維を得るための製造方法の一例としては、次の方法を挙げることができる。
【0032】
すなわち、溶剤に対する溶解性の異なる2種類以上のポリマーをポリマーアロイ溶融体となし、これを紡糸した後、冷却固化して繊維化する。そして必要に応じて延伸・熱処理を施しポリマーアロイ繊維を得る。そして、易溶解性ポリマーを溶剤で除去することにより本発明で使用する極細繊維を得ることができる。
【0033】
上述のようにして得られた繊維は、ギロチンカッターやスライスマシンおよびクライオスタットなどの切断機を使用して、所望の繊維長にカットする。上述のような溶融紡糸法により得られた繊維は、繊維同士が一定方向に揃った繊維束として得られるため、すべてのカット繊維を所望の繊維長に揃えることが可能である。
【0034】
繊維分散液中での繊維分散性を向上させるためには、カット繊維の繊維長は長すぎると分散性が不良となる傾向がある。一方、カット繊維の繊維長が短すぎるとスポンジ状構造体とした時に繊維の絡み合いの程度が小さくなり、その結果として構造体の強度が低くなる。そのため、これらを改善する観点から、繊維長としては0.2〜30mmにカットすることが好ましい。繊維長はより好ましくは0.5〜10mm、さらに好ましくは0.8〜5mmである。
【0035】
次に得られたカット繊維を分散媒中に分散させる。分散媒としては水だけでなく、繊維との親和性も考慮してヘキサンやトルエンなどの炭化水素系溶媒、クロロホルムやトリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、エタノールやイソプロピルアルコール、ブチルアルコールおよびヘキサノールなどのアルコール系溶媒、エチルエーテルやテトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸メチルや酢酸エチルなどのエステル系溶媒、エチレングリコールやプロピレングリコールなどの多価アルコール系溶媒、トリエチルアミンやN,N−ジメチルホルムアミドなどのアミンおよびアミド系溶媒などの一般的な有機溶媒を好適に用いることができる。但し、安全性や環境等に考慮すると、分散媒として水を用いることが好ましい。また、スポンジ状構造体を後述するように分散媒の除去により作製する観点から、常圧あるいは低圧状態で昇華できるような性質をもつ分散媒が好ましいが、このような観点からも水を使用することが好ましい。なお、分散媒は、単独でも2種類以上を組み合わせても良い。
【0036】
カット繊維を分散媒中に分散させる方法としては、ミキサーやホモジナイザーおよび超音波型攪拌機等の攪拌機を用いることができる。溶融紡糸法で得られたナノファイバーのように、カット繊維中の単繊維同士が強固に凝集した形態の場合には、撹拌による分散の前処理工程として、分散媒中で叩解することが好ましい。ナイアガラビータ、リファイナー、カッター、ラボ用粉砕器、バイオミキサー、家庭用ミキサー、ロールミル、乳鉢、PFI叩解機、バス型超音波処理機およびプローブ型超音波処理機などでせん断力を与え、繊維1本1本まで分散させる。
繊維分散液中での繊維の分散性を均一にするため、あるいはスポンジ状構造体とした際に構造体の力学的強度を向上させるためには、分散液中の繊維濃度は分散液全重量に対して0.001〜30重量%にすることが好ましい。特に構造体の力学的強度は分散液中の繊維の存在状態、すなわち繊維間距離に大きく依存するため、分散液中の繊維濃度を上記範囲に制御することが好ましい。分散液中の繊維濃度はより好ましくは0.01〜10重量%であり、さらに好ましくは0.05〜5重量%である。
【0037】
繊維同士の再凝集を抑制したり、繊維の表面状態を改善したり、繊維同士の接着性を向上させたり、繊維に機能性を付与するためには、必要に応じて分散液中に分散剤などの添加剤を用いてもよい。添加剤の種類としては天然ポリマー、合成ポリマー、有機化合物および無機化合物等が挙げられる。例えば、水系の分散液に添加するポリマー系の添加剤としては、ポリカルボン酸塩などのアニオン系化合物、第4級アンモニウム塩などのカチオン系化合物、ポリオキシエチレンエーテルやポリオキシエチレンエステルなどのノニオン系化合物などを例示できる。これらは繊維同士の凝集を抑制して分散性を高めることができる。このような分散性を向上させる添加剤の分子量としては1000〜50000であることが好ましく、分子量はより好ましくは5000〜15000である。
【0038】
添加剤の濃度は、分散液全体に対し0.00001〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは0.0001〜5重量%であり、さらに最も好ましくは0.01〜1重量%である。これにより十分な分散効果が得られる。
【0039】
極細繊維同士の接着性を向上させて構造体強度を向上させる添加剤としては、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート基および水酸基を持つような反応性ポリマーや疎水性ポリマーを例示できる。また、スポンジ状構造体内に、孔を形成させる物質として無機塩を添加してもかまわない。また、後で述べる繊維の表面に吸着させるような機能性物質を、分散液中に添加しても構わない。これら添加剤の濃度は、その目的や用途によってさまざまな濃度で添加することが可能であるが、繊維が構造を維持できる範囲の濃度で添加することが好ましい。
【0040】
続いて、繊維分散液中の繊維を分散状態で固定してスポンジ状に成形するために、該繊維分散液を適当な容器や型枠に入れる。容器や型枠の形状を任意に変更することにより、スポンジ状構造体を所望の形状に成型することが可能である。
【0041】
その後、容器や型枠に入れた繊維分散液から分散媒を除去する。乾燥方法としては、自然乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等が挙げられるが、成形性の点や見かけ密度の小さいスポンジ状構造体とするためには、凍結乾燥が好ましい。凍結乾燥による方法としては、例えば分散液を液体窒素、ドライアイスおよび超低温フリーザーなどで、分散媒が凍結する温度以下で凍結させる。これにより、繊維分散液が凍結した状態、すなわち分散媒の固体中で繊維が3次元の分散状態で固定される。その後、真空化で分散媒を昇華させるが、このとき、繊維が3次元の分散状態で固定されたままで分散媒のみが除去されるため、見かけ密度が小さく、空隙率が高いスポンジ状構造体を得ることが可能となる。そして、上記のような本発明の方法によれば、繊維分散液を入れる容器や型枠を適宜選択することで、所望の形状のスポンジ状構造体を作製することも容易であり、すなわち、本発明は成形性が高い。
【0042】
繊維分散液を凍結させる温度は、分散媒が凍結する温度であれば構わないが、凍結温度によりスポンジ状構造体の微細孔の構造や繊維の分散状態を制御することも可能である。例えば、分散媒として水を使用した場合、水の凝固温度以下(例えば0℃以下)であれば凍結が可能であるが、凍結温度を低くすれば、分散媒である水が瞬時に凍結され、凍結中に形成される氷の結晶が小さくなり、繊維の再凝集も抑制される傾向にある。その結果、その後の真空化により氷を昇華させることによって得られるスポンジ状構造体は、微細孔が小さくなり、非常に空隙率の高いスポンジ状構造体を得ることができる。
また、本発明で用いられる極細繊維は、使用する用途に応じて様々な処理を行うことも可能である。処理としては、加熱処理、冷却処理、凍結処理、酸やアルカリによる加水分解処理、溶媒処理、熱水処理、グロー放電処理、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、γ線処理、電子線処理、レーザー処理、紫外線処理、赤外線処理、オゾン処理、加圧処理、減圧処理、加圧蒸気処理、ガス処理、蒸気処理、火炎処理、コーティング処理、グラフト重合処理、延伸処理、真空処理、架橋処理、化学的修飾処理およびイオン注入等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
処理方法として、スポンジ状構造体を形成させた極細繊維同士が絡み合った状態で、極細繊維表面を軟化、溶融あるいは溶解させ、再凝固させることにより、極細繊維同士を部分的に融着することにより接着させることも可能である。このような処理の代表例として、熱処理、電子線処理および溶媒処理があるが、中でも加圧蒸気処理がもっとも好ましく用いられる。この場合、極細繊維の原料として使用する合成ポリマーのガラス転移温度以上、溶融温度以下の温度条件で処理することが好ましい。
【0044】
また、これらの処理は、スポンジ状構造体を作製する前の状態であっても後の状態であっても、いずれの時点で行っても良い。本発明の衝撃吸収材は見かけ密度が小さく、空隙率が高いために衝撃吸収性能に優れる。さらに従来よりも薄型で軽量な衝撃吸収材を得ることができる。
【0045】
そのため、シューズやマットなどに代表されるスポーツ製品、サポーターなどに代表される医療用製品、道路やスポーツ施設のフェンスや防護壁などに代表される産業資材製品、緊急用の人命救助製品、衝突時の衝撃性を緩和する車両用安全製品などに好適である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
【0047】
A.ポリマーの溶融粘度
東洋精機製作所製キャピログラフ1Bによりポリマーの溶融粘度を測定した。なお、サンプル投入から測定開始までのポリマーの貯留時間は10分とした。
【0048】
B.融点
Perkin Elmaer社製 DSC−7を用いて2nd runでポリマーの融解を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。
【0049】
C.SEM観察
サンプルに白金を蒸着し、超高分解能電解放射型走査型電子顕微鏡で観察した。
SEM装置:日立製作所(株)製UHR−FE−SEM
D.繊維の数平均直径
上記SEMで少なくとも150本以上の単繊維を1視野中に観察できる倍率で観察し、その観察画像から、三谷商事(株)製の画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、繊維長手方向に対して垂直な方向の繊維幅を繊維の直径として算出した。この際、同一視野内で無作為に150本の繊維を抽出し、それらの直径を解析し、単純な平均値を求めた。
【0050】
E.力学特性
室温(25℃)で、初期試料長=200mm、引っ張り速度=200mm/分とし、JIS L1013に示される条件で荷重−伸長曲線を求めた。次に、破断時の荷重値を初期の繊度で割り、それを強度とし、破断時の伸びを初期試料長で割り、伸度として強伸度曲線を求めた。
【0051】
F.見かけ密度
スポンジ状構造体の見かけ密度ρ(g/cm)は次のようにして求めた。すなわち、スポンジ状構造体を例えば立方体や直方体などの形状に切り出し、定規やノギス等を用いて各辺の大きさを測定し、該スポンジ状構造体の体積を求め、これをV(cm)とする。また、切り出した該構造体の重量を測定し、これをW(g)とする。WをVで除すことにより見かけ密度ρを求める。
【0052】
G.衝撃吸収率
衝撃吸収率についてはJIS K6400−3(2004)の軟質発泡材料の反発弾性試験に準じて試験を行い求めた。すなわち、厚さ10mmのステンレス板の上に、任意の厚みを持つ10cm角の試験片を置き、その上に高さ50cmの位置から呼び5/8の硬球(直径16±0.5mm、質量16±0.5g)を衝撃吸収材上に落下させ、跳ね返った高さを測定し、これを3回の試験片で行って単純平均した高さをHrとして、次式によって算出した。
衝撃吸収率(%)=((50−Hr)/50)×100 (1)
<分散液の製造例1>
溶融粘度57Pa・s(240℃、剪断速度2432sec-1)、融点220℃のN6(20重量%)と重量平均分子量12万、溶融粘度30Pa・s(240℃、剪断速度2432sec-1)、融点170℃のポリL乳酸(光学純度99.5%以上)(80重量%)を2軸押出混練機で220℃で溶融混練してポリマーアロイチップを得た。尚、N6の262℃、剪断速度121.6sec-1での溶融粘度は53Pa・sであった。また、このポリL乳酸の215℃、剪断速度1216sec-1での溶融粘度は86Pa・sであった。また、このときの混練条件は以下のとおりであった。
【0053】
ポリマー供給 :N6とポリL乳酸を別々に計量し、別々に混練機に供給した。
【0054】
スクリュー型式:同方向完全噛合型 2条ネジ
スクリュー :直径37mm、有効長さ1670mm、
L/D :45.1
混練部長さはスクリュー有効長さの1/3より吐出側に位置
温度 :220℃
ベント :2箇所
このポリマーアロイチップを230℃の溶融部で溶融し、紡糸温度230℃のスピンブロックに導いた。そして、限界濾過径15μmの金属不織布でポリマーアロイ溶融体を濾過した後、口金面温度215℃とした口金から紡糸速度3500m/分で溶融紡糸した。この時、口金としては口金孔径0.3mm、吐出孔長0.55mmのものを使用したが、バラス現象はほとんど観察されなかった。また、この時の単孔あたりの吐出量は0.94g/分とした。さらに、口金下面から冷却開始点(チムニーの上端部)までの距離は9cmであった。吐出された糸条は20℃の冷却風で1mにわたって冷却固化され、口金から1.8m下方に設置した給油ガイドで給油された後、非加熱の第1引き取りローラーおよび第2引き取りローラーを介して巻き取った。その後、糸条を、温度90℃の第1ホットローラーと、温度130度の第2ホットローラーとで延伸熱処理した。この時、第1ホットローラーと第2ホットローラーによる延伸倍率を1.5倍とした。得られたポリマーアロイ繊維は62dtex、36フィラメント、強度3.4cN/dtex、伸度38%の優れた特性を示した。
【0055】
得られたポリマーアロイ繊維を95℃の5%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することでポリマーアロイ繊維中のポリL乳酸成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥し、N6の極細繊維束を得た。この繊維束をSEM写真から解析した結果、N6極細繊維の数平均直径は60nmと従来にない細さであった。
【0056】
得られたN6の極細繊維束を2mm長に切断して、カット繊維を得た。タッピースタンダードナイヤガラ試験ビータ((株)東洋精機製作所製)に水23Lと先に得られたカット繊維30gを仕込み、5分間予備叩解し、その後余分な水を切って繊維を回収した。この繊維の重量は250gであり、その含水率は88重量%であった。含水状態の繊維250gをそのまま自動式PFIミル(熊谷理機工業(株)製)に仕込み、回転数1500rpm、クリアランス0.2mmで6分間叩解した。オスターブレンダー(オスター社製)に、叩解した繊維42g、分散剤としてアニオン系分散剤であるシャロール(登録商標)AN−103P(第一工業製薬(株)製:分子量10000)を0.5g、および水500gを仕込み、回転数13900rpmで30分間撹拌し、N6極細繊維の含有率が1.0重量%の分散液1を得た。
【0057】
<分散液の製造例2>
分散液の製造例1のN6を溶融粘度212Pa・s(262℃、剪断速度121.6sec-1)、融点220℃のN6(45重量%)とした以外は分散液の製造例1と同様に溶融混練し、ポリマーアロイチップを得た。次いで、これを分散液の製造例1と同様に溶融紡糸、延伸熱処理しポリマーアロイ繊維を得た。得られたポリマーアロイ繊維は67dtex、36フィラメント、強度3.6cN/dtex、伸度40%の優れた特性を示した。
【0058】
得られたポリマーアロイ繊維を、分散液の製造例1と同様にしてポリマーアロイ繊維中のポリL乳酸成分の99%以上を加水分解除去、酢酸で中和した後、水洗、乾燥し、N6の極細繊維束を得た。この繊維束をSEM写真から解析した結果、N6ナノファイバーの数平均直径は120nmと従来にない細さであった。
【0059】
得られたN6の極細繊維束を2mm長に切断して、カット繊維を得た。これを分散液の製造例1と同様に予備叩解を施し、含水率88重量%の極細繊維を得た後、さらに分散液の製造例1と同様に叩解した。オスターブレンダー(オスター社製)に、叩解した繊維21g、分散剤としてアニオン系分散剤であるシャロール(登録商標)AN−103P(第一工業製薬(株)製:分子量10000)を0.5g、および水500gを仕込み、回転数13900rpmで30分間撹拌して、N6極細繊維の含有率が0.5重量%の分散液2を得た。
【0060】
<分散液の製造例3>
オスターブレンダー(オスター社製)に仕込む水および分散剤の量は変えずに、叩解後の繊維量を変更することで、N6極細繊維の含有率を0.1重量%とした以外は分散液の製造例2と同様にして分散液3を得た。
【0061】
<分散液の製造例4>
溶融粘度120Pa・s(262℃、121.6sec-1)、融点225℃のPBT(ポリブチレンテレフタレート)と2エチルヘキシルアクリレートを22%共重合したポリスチレン(PS)を用い、PBTの含有率を20重量%とし、混練温度を240℃として分散液の製造例1と同様に溶融混練し、ポリマーアロイチップを得た。この時、共重合PSの262℃、121.6sec-1での溶融粘度は140Pa・s、245℃、1216sec-1での溶融粘度は60Pa・sであった。
【0062】
これを溶融温度260℃、紡糸温度260℃(口金面温度245℃)、紡糸速度1200m/分で分散液の製造例1と同様に溶融紡糸を行った。この時、口金として吐出孔上部に直径0.3mmの計量部を備えた、吐出孔径が0.7mm、吐出孔長が1.85mmのものを使用した。紡糸性は良好であり、1tの紡糸で糸切れは1回であった。この時の単孔あたりの吐出量は1.0g/分とした。得られた未延伸糸を延伸温度100℃、延伸倍率を2.49倍とし、熱セット温度115℃として分散液の製造例1と同様に延伸熱処理した。得られた延伸糸は161dtex、36フィラメントであり、強度1.4cN/dtex、伸度33%であった。
【0063】
得られたポリマーアロイ繊維をトリクレンに浸漬することにより、海成分である共重合PSの99%以上を溶出し、これを乾燥して、PBTの極細繊維束を得た。この繊維束をSEM写真から解析した結果、PBT極細の数平均直径は85nmと従来にない細さであった。
【0064】
得られた極細繊維束を2mm長に切断して、カット繊維を得た。これを分散液の製造例1と同様に予備叩解を施し、含水率80重量%のPBT極細繊維を得た後、さらに分散液の製造例1と同様に叩解した。この叩解した繊維25g、分散剤としてノニオン系分散剤であるノイゲン(登録商標)EA−87(第一工業製薬(株)製:分子量10000)を0.5g、水500gをオスターブレンダー(オスター社製)に仕込み、回転数13900rpmで30分間撹拌して、PBT極細繊維の含有率が1.0重量%の分散液4を得た。
【0065】
<分散液の製造例5>
溶融粘度220Pa・s(262℃、121.6sec-1)、融点225℃のPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)と新日鐵化学(株)製共重合PS(ポリスチレン)(“エスチレン”KS−18、メチルメタクリレート共重合、溶融粘度110Pa・s、262℃、121.6sec-1)を、PTTの含有率を25重量%とし、混練温度を240℃として分散液の製造例1と同様に溶融混練し、ポリマーアロイチップを得た。また、この共重合PSの245℃、1216sec-1での溶融粘度は76Pa・sであった。
【0066】
これを溶融温度260℃、紡糸温度260℃(口金面温度245℃)、紡糸速度1200m/分で分散液の製造例1と同様に溶融紡糸を行った。この時、口金としては吐出孔上部に直径0.23mmの計量部を備えた、吐出孔径が2mm、吐出孔長が3mmの紡糸口金を使用した。紡糸性は良好であり、1tの紡糸で糸切れは1回であった。この時の単孔吐出量は1.0g/分とした。得られた未延伸糸を90℃の温水バス中で2.6倍延伸を行いポリマーアロイ繊維を得た。得られたポリマーアロイ繊維は単繊維繊度3.9dtex、強度1.3cN/dtex、伸度25%であった。
【0067】
得られたポリマーアロイ繊維を分散液の製造例7と同様にしてポリマーアロイ繊維中のPS成分の99%以上を溶出、乾燥し、PTTの極細繊維束を得た。この繊維束をSEM写真から解析した結果、PTT極細繊維の数平均直径は95nmと従来にない細さであった。
【0068】
得られた極細繊維束を2mm長に切断して、カット繊維を得た。これを分散液の製造例1と同様に予備叩解を施し、含水率80重量%のPTT極細繊維を得た後、さらに分散液の製造例1と同様に叩解した。この叩解した繊維25g、分散剤としてノニオン系分散剤であるノイゲン(登録商標)EA−87(第一工業製薬(株)製:分子量10000)を0.5g、および水500gオスターブレンダー(オスター社製)に仕込み、回転数13900rpmで30分間撹拌して、PTT極細繊維の含有率が1.0重量%の分散液5を得た。
【0069】
<分散液の製造例6>
分散液の製造例1のN6を溶融粘度350Pa・s(220℃、121.6sec-1)、融点162℃のPP(ポリプロピレン)(23重量%)とした以外は分散液の製造例1と同様に溶融混練し、ポリマーアロイチップを得た。なお、ポリL乳酸の220℃、121.6sec-1における溶融粘度は107Pa・sであった。このポリマーアロイチップを溶融温度230℃、紡糸温度230℃(口金面温度215℃)、単孔吐出量1.5g/分、紡糸速度900m/分で分散液の製造例1と同様に溶融紡糸を行った。得られた未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率を2.7倍、熱セット温度130℃として分散液の製造例1と同様に延伸熱処理した。得られたポリマーアロイ繊維は、77dtex、36フィラメント、強度2.5cN/dtex、伸度50%であった。
【0070】
得られたポリマーアロイ繊維を98℃の5%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することでポリマーアロイ繊維中のポリL乳酸成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥し、PPの極細繊維束を得た。この繊維束をSEM写真から解析した結果、PP極細繊維の数平均直径は240nmであった。
【0071】
得られた極細繊維束を2mm長に切断して、カット繊維を得た。これを分散液の製造例1と同様に予備叩解を施し、含水率75重量%のPP極細繊維を得た後、さらに分散液の製造例1と同様に叩解した。この叩解した繊維を20g、分散剤としてノニオン系分散剤であるノイゲン(登録商標)EA−87(第一工業製薬(株):分子量10000)を0.5g、および水500gをオスターブレンダー(オスター社製)に仕込み、回転数13900rpmで30分間撹拌して、PP極細繊維の含有率が1.0重量%の分散液6を得た。
【0072】
<分散液の製造例7>
海成分にアルカリ可溶型共重合ポリエステル樹脂60重量%、島成分にN6樹脂40重量%を用い、溶融紡糸で島成分を400島とし、5.3dtexの高分子配列体複合繊維(以後複合繊維)を作成後、3.0倍の倍率で延伸して2.0dtexの複合繊維を得た。この複合繊維の強度は2.5cN/dtex、伸度は32%であった。その後、この複合繊維を分散液の製造例1と同様にして、複合繊維中のポリエステル成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥してN6の極細繊維束を得た。得られた極細繊維の平均単糸繊度をSEM写真から解析したところ、900nm相当であった。
【0073】
得られたN6極細繊維束を2mm長に切断してカット繊維とした後、このカット繊維50g、分散剤としてアニオン系分散剤であるシャロール(登録商標)AN−103P(第一工業製薬(株)製:分子量10000)を0.5g、および水500gをオスターブレンダー(オスター社製)に仕込み、回転数13900rpmで30分間撹拌して、N6極細繊維の含有率が1.0重量%の分散液7を得た。
【0074】
<分散液の製造例8>
海成分にアルカリ可溶型共重合ポリエステル樹脂60重量%、島成分にN6樹脂40重量%を用い、溶融紡糸で島成分を100島とし、5.3dtexの高分子配列体複合繊維(以後複合繊維)を作成後、2.5倍の倍率で延伸して2.1dtexの複合繊維を得た。この複合繊維の強度は2.6cN/dtex、伸度は35%であった。その後、この複合繊維を分散液の製造例1と同様にして、98℃の3%濃度の水酸化ナトリウム水溶液にて1時間処理することで、複合繊維中のポリエステル成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥してN6の極細繊維束を得た。得られた極細繊維の平均単糸繊度をSEM写真から解析したところ、0.02dtex(平均繊維径2μm)相当であった。
【0075】
得られたN6極細繊維束を2mm長に切断してカット繊維とした後、このカット繊維50g、分散剤としてアニオン系分散剤であるシャロール(登録商標)AN−103P(第一工業製薬(株)製:分子量10000)を0.5g、および水500gをオスターブレンダー(オスター社製)に仕込み、回転数13900rpmで30分間撹拌して、N6極細繊維の含有率が1.0重量%の分散液8を得た。

以上説明した製造例で作製した各分散液をまとめて表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
<実施例1>
分散液の製造例1で得られた繊維分散液1を用い、この分散液1をステンレス製のトレイ(サイズ:295mm×231mm×49mm)に入れ、さらに液体窒素(−196℃)で急速凍結した後、−80℃の超低温フリーザー中に30分間静置した。
【0078】
凍結したサンプルを宝製作所製の凍結乾燥機(TF5−85TPNNNS)で0.1kPa以下の真空度で凍結乾燥して厚さ2.5mmのスポンジ状構造体を得た。
【0079】
得られたスポンジ状構造体の繊維分散体をSEMで観察したところ、数平均直径は60nmであり、非常に小さいものであった。
【0080】
また、スポンジ状構造体の見かけ密度は0.0125g/cmと非常に小さく、厚みも2.5mmと十分に薄いものであった。図1に実施例1のスポンジ状構造体のSEM写真を示した。
【0081】
得られたスポンジ状構造体の衝撃吸収率を測定したところ90%であり、衝撃吸収材として優れた性能を示すことがわかった。
【0082】
<実施例2〜5>
実施例2〜5については分散液の製造例1で得られた繊維分散液1を用い、トレイに入れる繊維分散液の量を変更した以外は実施例1と同様に凍結乾燥を行い、実施例1とは見かけ密度が同じで厚みの異なるスポンジ状構造体を得た。繊維分散体の数平均直径、微細孔の数平均孔径、見かけ密度、空隙率は表2に示したとおりであった。
【0083】
<実施例6、7>
実施例6、7については分散液の製造例2あるいは3で得られた繊維分散液2あるいは3をそれぞれ用い、トレイに入れる繊維分散液の量を調整して実施例1と同様に凍結乾燥を行い、実施例1とは繊維の数平均直径、見かけ密度、厚みの異なるスポンジ状構造体を得た。繊維分散体の数平均直径、微細孔の数平均孔径、見かけ密度、空隙率は表2に示したとおりであった。
【0084】
<実施例8〜10>
実施例8〜10については分散液の製造例4〜6で得られた繊維分散液4〜6をそれぞれ用い、トレイに入れる繊維分散液の量を調整して実施例1と同様に凍結乾燥を行い、実施例1とは繊維を構成するポリマー基質、繊維の数平均直径、見かけ密度、厚みの異なるスポンジ状構造体を得た。繊維分散体の数平均直径、微細孔の数平均孔径、見かけ密度、空隙率は表2に示したとおりであった。
【0085】
<実施例11>
分散液の製造例7で得られた極細繊維の分散液7を用い、トレイに入れる繊維分散液の量を調整して実施例1と同様に凍結乾燥を行い、スポンジ状構造体を得た。繊維分散体の数平均直径、微細孔の数平均孔径、見かけ密度、空隙率は表2に示したとおりであった。
【0086】
<比較例1>
分散液の製造例8で得られた繊維分散液8を用い、トレイに入れる水分散液の量を調整して、実施例1と同様に凍結乾燥を行ないスポンジ状構造体を得たが、繊維分散体の数平均直径が大きすぎるため、スポンジ状構造体中の繊維の分散性が不良であり、構造体中の空隙の数が不足しているため、衝撃吸収率を評価したところ表2に示した通り、75%であり、衝撃吸収性能に劣るものであった。
【0087】
<比較例2、3>
発泡倍率が30倍、厚みが10mmである東レ(株)製のポリオレフィンフォーム(商標名:トーレペフ)を用い、比較例2ではこれをそのまま用い、比較例3においてはこれを3枚重ねて厚みを30mmとしたものを用い、衝撃吸収率を評価したところ、それぞれ64%、66%であり、衝撃吸収性能に劣るものであった。
【0088】
以上説明した各実施例および比較例をまとめて表2に示す。
【0089】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の衝撃吸収材は、シューズやマットなどに代表されるスポーツ製品、サポーターなどに代表される医療用製品、道路やスポーツ施設のフェンスや防護壁などに代表される産業資材製品、緊急用の人命救助製品、衝突時の衝撃性を緩和する車両用安全製品などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例1の衝撃吸収材のSEMによる観察結果(5000倍)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均直径が1〜1000nmである繊維が分散状態で固定されたスポンジ状構造体からなり、下記(1)式で算出される衝撃吸収率が80%以上であることを特徴とする衝撃吸収材。
衝撃吸収率(%)=((50−Hr)/50)×100 (1)
【請求項2】
前記繊維が有機繊維からなることを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収材。
【請求項3】
見かけ密度が0.001〜0.05g/cmであることを特徴とする請求項1または2に記載の衝撃吸収材。
【請求項4】
厚みが0.5〜50mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の衝撃吸収材。

【図1】
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【公開番号】特開2008−179914(P2008−179914A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14600(P2007−14600)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】