説明

衣服のスチーム仕上げ方法とその装置

【課題】従来、人体型成形仕上機では、首部中央に人体型を支える支持金具があるため、衣服の内部に蒸気と熱風を充分に流入させることが困難であり、ハウジング室内に複数の蒸気噴射口や熱源を設けたりしても完璧な仕上効果を得られない問題があった。
【解決手段】首肩部人体型2の上端にスチーム噴出ノズル31との嵌合部22を設け、ハウジング屋上に上下動可能に設けたスチーム噴出ノズルを下降させて人体型の嵌合部22と嵌合させて人体型を通じて衣服内に蒸気と熱風を噴出してスチーム仕上げするように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は梱包搬送時に皺になった衣服の皺取りや完成衣服の最終仕上げを目的とする衣服のスチーム仕上げ方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服の皺取りや完成衣服の最終仕上げを目的とする衣服のスチーム仕上げ方法は、密閉された室内に衣服を吊るして蒸気と熱風を送り込む方法(例えば特許文献1)、プレス時に空気流が充填される風袋を備えた人体型に衣服を着掛して衣服内に空気を還流させる方法(例えば特許文献2)が行なわれている。
【特許文献1】特開平7ー144096号公報
【特許文献2】特表2004−516085号公報 また、成形目的を兼ねた人体型成形仕上機では、密閉された室内に衣服を吊るして蒸気と熱風を送り込む方法を基本とし、回転ドアー機構を用いて室外でドアー面に設定された人体型に衣服製品を着せ掛け、着せた衣服製品の背中や袖回りを確認して180度ドアーを回転させると密閉されたハウジング室内に衣服製品を着せ掛けた人体型が入り、室内に蒸気と熱風を送り込んで製品仕上げを行ってドアーを室外に反転させ仕上げを完了した製品と仕上げを行う製品の着替えを行うことも行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、密閉された室内に衣服を吊るして蒸気と熱風を送り込む方法では衣服の内部に蒸気と熱風を充分に入れることができず、温度も低温となってしまうため仕上がり具合が悪く、しかも、仕上がりに長時間を要するという問題があった。
【0004】
特に、回転ドアー機構を用いた人体型成形仕上機では、首部中央に人体型を支える支持金具があるため、衣服の内部に蒸気と熱風を充分に流入させることが困難であり、ハウジング室内に複数の蒸気噴射口や熱源を設けたりしても完璧な仕上効果を得られない問題がある。
【0005】
また、プレス時に空気流が充填される風袋を備えた人体型に衣服を着掛して衣服内に空気を還流させる方法は、風袋を介するため温度的な制約もあって乾燥が主目的であり、スチーム仕上効果が得られない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題に対応してこれを解決するため、上端にスチーム噴出ノズルとの嵌合部を設け、下面を開放した首肩部人体型に衣服を着掛して、スチーム噴出ノズルを下降させて人体型の嵌合部と嵌合させると共に、蒸気供給機構に熱風を送ることにより人体型を通じて衣服内に蒸気と熱風を噴出してスチーム仕上げすることにより、人体型空洞部によって押し広げられた衣服内に直接蒸気と熱風が噴射され、回流して仕上効果が高められるように構成した。
【0007】
また、首肩部の人体型に複数のスチーム通孔を設け、これに端部が閉鎖された人体型風袋を着掛してその上に製品衣服を着掛するようにし、スチーム噴出ノズルから人体型内に噴射される蒸気と熱風が先ず人体型風袋に充填されて膨張と温度上昇が行なわれ、これを通じて製品衣服の内部に蒸気と熱風を流入させることにより短時間に温度上昇とスチーム効果が得られるように構成した。
【0008】
更に、首部中央に人体型を支える支持金具があるため、衣服の内部に蒸気と熱風を充分に流入させることが困難であった回転ドアー機構を用いた人体型成形仕上機については、回転ドアー面に首肩部人体型の首部を回動可能に支持する支持リングを設定して首肩部人体型を回動可能に支持するようにして、首肩部人体型の首部にスチーム噴出ノズルとの嵌合部を設けられるように構成して首肩部人体型内にスチーム噴射ノズルを挿入できるように構成した。
【0009】
また、上記回転ドアー機構を用いた仕上機については、回転ドアー面の表裏に首肩部人体型を設定し、ハウジング内にある一方の首肩部人体型に着掛した製品衣服に仕上げ作動が行なわれている間に、ハウジング外にある他方の首肩部人体型に製品衣服を着掛し衣服製品の背中や袖回りの確認作業を行なって、仕上げ作動が完了した製品衣服の取り出しのためのドアー反転により、準備の終わって直ちに仕上げ作動を行なえる他方の首肩部人体型がハウジング内に入り、作業能率が高められるように構成した。
【0010】
以上のような構成により、従来、衣服の外側から蒸気と熱風を雰囲気的に作用させていた仕上げを、スチーム噴出ノズルと人体型のスチーム吹き込み嵌合部との嵌合により、衣服の内側からも積極的に蒸気と熱風を噴射流入させて万遍なくスチーム仕上効果を行き渡らせるように構成したものである。
【実施例】
【0011】
以下図面に従って本発明の実施の形態を説明する。1はハウジングで、正面が回転ドアー11となっており、中軸12によりドアー11が180度回動するとその表面と裏面が反転するようになっている。
【0012】
回転ドアー11には、その表裏に首肩部人体型2の首部を回動可能に支持する支持リング21が設定され、首肩部人体型2に製品衣服を着掛して衣服製品の背中や袖回りの確認作業を行なえるようにドアー前面スペースにおいて回動できるように人体型2を支持している。
【0013】
ハウジング1の天井板15の上部には、上下スライドカイド13が設定され、上下動シリンダー機構14に支持されて上下動する蒸気供給機構3の上下作動を案内し、これに連絡する蒸気と熱風の噴出ノズル31が天井板15を挿通して首肩部人体型2のスチーム吹き込み嵌合部22に挿脱するための円滑な動作を助けている。
【0014】
また、この首肩部人体型2には複数のスチーム通孔23が穿設され、嵌合部22を通じて吹き込まれる蒸気と熱風が通孔23を通じて着掛した風袋24、衣服製品の内部に噴出されて回流するようになっている。
【0015】
蒸気供給機構3は、蒸気チャンバー32と送風ファン33とからなり、蒸気チャンバー32と、これに接合する噴出ノズル31が上下動シリンダー機構14に支持されて上下動し、上昇時には送風ファン33のダクト部が蒸気チャンバー32と分離されて自動的に蒸気供給作動が停止される。
【0016】
蒸気チャンバー32と、これに接合する噴出ノズル31が下降すると、蒸気供給作動が開始され、ボイラーから送られ蒸気チャンバー32内に回流貯留された蒸気は、必要に応じて蒸気再加熱ラジエーター34によって再加熱され、送風ファン33とラジエーター35から送られる熱風と合流して噴出ノズル31によって人体型のスチーム吹き込み嵌合部22から首肩部人体型2内に噴射されて着掛されている人体型風袋、製品衣服に内側から充填され、更に掛ハウジング1内に充満し、排気ダクト4と蒸気排出口5から排出される。
【0017】
以上のように構成されたスチーム仕上げ装置は、回転ドアー11に設定された首肩部人体型2に、先ず目の詰んだ耐熱性布地、或いはポリエステル等により人体型袋状に構成した人体型風袋24を着掛し、その上から製品衣服(図示しない。)を着掛して嵌合部22から首肩部人体型2内にスチームを吹込む。
【0018】
首肩部人体型2への製品衣服着掛は、回転ドアー面の表裏に設定しされた首肩部人体型2のハウジング内にある一方の首肩部人体型2aに着掛した製品衣服に仕上げ作動が行なわれている間に、ハウジング外にある他方の首肩部人体型2bに製品衣服を着掛し衣服製品の背中や袖回りの確認作業を行なって、仕上げ作動が完了した製品衣服の取り出しのためのドアー反転により、準備の終わって直ちに仕上げ作動を行なえる他方の首肩部人体型2bがハウジング内に入るように構成されている。
【0019】
また、スチームの吹込みは、仕上げ装置に設定された操作部16により、製品衣服の種類や性状に応じてスチーム温度、噴射時間を予め設定して行なう。
【0020】
本発明は以上のように人体型風袋24を着掛した首肩部人体型2に衣服製品を着掛して製品の背中や袖回りを確認し、ドアー11を180度反転させて衣服製品を着せ掛けた人体型2a、2bを交互にハウジング室内に入れ、噴射ノズル3を通じて蒸気と熱風をハウジング室内に送り込んで衣服製品の仕上げをし、仕上げを終わった段階でドアー11を回動させて製品を取り出せるようにしたものである。
【0021】
なお、上記の実施例では回転ドアー機構を用い、ドアー面に首肩部人体型を設定するようにしたが、首肩部人体型を設定環境がこれに限られないものであることは勿論である。
【0022】
本発明は以上のように構成したので、衣服製品の内側と外側から蒸気と熱風を万遍なく噴射回流させ、従来に比して極めて高い仕上効果を得ることができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例を示すもので、スチーム仕上げ装置の全体正面図
【図2】同じく、首肩部人体型がハウジング室外に位置した状態におけるスチーム仕上げ装置の全体側面図
【図3】同じく、首肩部人体型がハウジング室外に位置した状態におけるスチーム仕上げ装置の平面図
【図4】同じく、噴射ノズル機構と首肩部人体型の嵌合関係を示すハウジング屋上蒸気供給機構の部分模式図
【図5】同じく、回転ドアー機構による回転ドアーの回動状况を示すスチーム仕上げ装置の平面図
【符号の説明】
【0024】
1 ハウジング
11 回転ドアー
12 回転ドアーの中軸
13 噴射ノズル機構の上下スライドカイド
14 上下動シリンダー機構
15 ハウジングの天井板
16 蒸気供給機構操作部
17 回転ドアーの回動シリンダー
2 首肩部人体型
21 首肩部人体型をドアー面に支持する支持リング
22 人体型のスチーム吹き込み嵌合部
23 人体型のスチーム通孔
24 人体型風袋
3 蒸気供給機構
31 蒸気と熱風の噴出ノズル機構
32 蒸気チャンバー
33 送風ファン
34 蒸気再加熱ラジエーター
35 送風ファンの加熱ラジエーター
4 排気ダクト
5 蒸気排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋上に上下動機構によって支持される蒸気供給機構を備えた密閉ハウジング内に、上端にスチーム噴出ノズルとの嵌合部を設け下面を開放した首肩部の人体型を回動可能に支持し、人体型に衣服を着掛して蒸気供給機構のスチーム噴出ノズルを下降させて前記人体型の嵌合部と嵌合させると共に、蒸気供給機構に熱風を送ることにより人体型を通じて衣服内に蒸気と熱風を噴出して仕上げすることを特徴とする衣服のスチーム仕上げ方法
【請求項2】
首肩部の人体型に複数のスチーム通孔を設け、これに端部が閉鎖された人体型風袋を着掛してその上に製品衣服を着掛するようにした請求項1記載の衣服のスチーム仕上げ方法
【請求項3】
屋上に上下動機構によって支持される蒸気供給機構を備えた密閉ハウジング内に、上端にスチーム噴出ノズルとの嵌合部を設けた首肩部人体型を回動可能に設定し、前記蒸気供給機構に連結するスチーム噴出ノズルが蒸気供給機構の上下動によって人体型のスチーム噴出ノズル嵌合部に挿脱するように構成したことを特徴とする衣服のスチーム仕上げ装置
【請求項4】
ハウジング一側に回転ドアー機構を設け、同回転ドアー面に首肩部人体型の首部を回動可能に支持する支持リングを設定して人体型を回動可能に支持すると共に、回転ドアーの反転によって首肩部人体型がハウジング内に位置したとき、蒸気供給機構に連結するスチーム噴出ノズルが首肩部人体型内に下降して首肩部人体型のノズル嵌合部に挿入されるように構成した請求項3記載の衣服のスチーム仕上げ装置
【請求項5】
首肩部人体型を回転ドアーの表裏に設定するように構成した請求項4記載の衣服のスチーム仕上げ装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−34565(P2006−34565A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218322(P2004−218322)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(592244723)アサヒ繊維機械株式会社 (5)