説明

衣服

本発明は、特にスポーツ活動、たとえばジョギング、スケート、サイクリングなどの際に使用するための、少なくとも1本の糸から製造されている衣服に関する。糸(3)は、熱反射性のコーティング(5)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にスポーツ活動、たとえばジョギング、スケート、サイクリングなどの際に使用され、少なくとも1本の糸から製造される衣服に関する。
【0002】
スポーツ活動用の衣服には多くの要求が課せられる。一方では、この衣服は重量によるスポーツ選手の追加的な負担を避けるために、僅かな重量を有するよう所望され、他方では、この衣服は機能的で、つまりあらゆる種類のスポーツに適するよう所望される。このために、衣服には、あらゆる種類のスポーツに適した最適な機能性を保証する、たとえば詰め物や伸縮要素などが設けられている(たとえばドイツ連邦共和国実用新案登録第7914614号明細書参照)。さらに、スポーツ活動用の衣服は、望ましくは衣服内の気候の調整機能を実現する。これに関して、衣服の通気が公知である(たとえばアメリカ合衆国特許第6263510号明細書参照)。衣服の気候特性を改善するために、衣服内の特定の箇所で所望に放熱することも公知である。
【0003】
スポーツ活動用の衣服を製造する際に、これまで、スポーツ選手を取り巻く外気については重要視されなかった。特に持久性のスポーツ、たとえばジョギング、スケート、サイクリングなどの場合には、スポーツ選手は、夏季には場合によっては極めて高温の空気にさらされる。この高温の空気は太陽光線によるものである。またこの太陽光線は、路面や建物壁面なども加熱する。したがって空気は、追加的に、路面または建物壁面の放熱によって加熱される。
【0004】
高温の空気は肉体に直接影響を及ぼす。それというのも、公知の衣服は周辺の熱の遮蔽に関する設計が為されておらず、したがって高温の空気はスポーツ選手の皮膚に直接触れるからである。このことはスポーツ選手の能力低下をもたらす。それというのも、肉体がスポーツ選手自身のスポーツ活動による付加的な熱だけでなく、付加的に周辺空気の熱にさらされるからである。その結果体温が上昇する。人体にとって37℃のときが快適な温度であり、この快適な温度は、同時に最も能力を発揮できる温度でもあるから、体温の上昇は通常、能力の低下につながる。したがって高温の周辺空気を遮断することによって、持久性のスポーツにおいて能力の上昇が得られる。
【0005】
たとえば炎による熱を遮断できる衣服、ならびに高い耐熱性を有し、したがってその衣服の着用者を高温から保護する衣服を製造することが公知である。ここでは、特に溶鉱炉労働者または消防士用の衣服が挙げられる(たとえばアメリカ合衆国特許第4034417号明細書参照)。こうした衣服は通常多数の層から形成されており、これらの層のうち少なくとも1層は耐熱性を有している。同時にこれらの衣服は通常撥水性を有している。この場合合成繊維が使用される。また、セラミック材料やガラスなどを用いた、別の難燃性材料を使用することもできる(たとえば旧東ドイツ経済特許第247637号明細書参照)。このような公知の衣服は、確かに耐熱性もしくは断熱性を有しているが、スポーツ活動、特にジョギング、スケート、サイクリングなどの持久性のスポーツには不適切である。それというのも、公知の材料から成るこのような衣服は重く、僅かな可動性しか実現しないからである。
【0006】
したがって本発明の課題は、スポーツ活動時に、高温の周辺空気を遮断することによって能力の上昇をもたらす衣服を提供することである。本発明によれば、この課題は、糸が、熱反射性のコーティングを有していることによって解決される。
【0007】
本発明によれば、特にスポーツ活動時に使用するための、高温の周辺空気を肉体から遮断することのできる衣服が提供される。熱反射性のコーティングを有する第2の糸を設けることによって、高温の空気を外側、つまり肉体から離れる方向へ逸らすことが可能であり、高温の空気は肉体から遮断される。このことによってスポーツ選手の皮膚は、活動によって生じる高められた熱量の他には、周辺空気の熱に付加的にさらされることがなく、このことによって能力の上昇が実現される。
【0008】
本発明の1形態では、コーティングは貴金属から成っている。特に貴金属は、熱反射に関する検査において好適であることが判明した。その上貴金属の利点によれば、太陽光を反射することができるので、このようにしてスポーツ選手を取り巻く気候条件の改善も達成される。
【0009】
有利には、コーティングは金から形成される。熱反射コーティングの検査では、金を使用した場合に最良の結果が得られた。
【0010】
本発明の別の1形態では、糸と編成された別の糸が設けられている。このことによって多層の衣服が提供され、その結果、別の糸を選択することによって、衣服をその都度の要求に的確に適合させることができる。
【0011】
有利には、別の第2の糸が皮膚の側に位置していて、第1の糸が皮膚とは反対側に位置している。この構成によって、熱反射性かつ光反射性の糸がその役割を果たすために外側に設けられる、ということが保証される。
【0012】
本発明の構成では、第1の糸はポリアミドから成っている。ポリアミドは、スポーツ時に生じる汗としての湿気の吸収を妨げるので、この衣服自体は、湿気を完全に吸収してその重量を増してしまうことはない。むしろポリアミドの使用によって、汗が皮膚に沿って面状に均一に分散される。大面積で分散することによって、冷却効果ならびに汗の速乾性が得られ、またこのことによって能力の上昇が得られる。
【0013】
本発明の別の改良形および構成は従属請求項に記載した。本発明の1実施例を図示し、以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】衣服に作用して反射される熱と共に、衣服を示す概略図である。
【図2】編成された2本の糸から成る衣服の一部を示す概略図である。
【0015】
図1に示した実施例として選択した衣服は、スポーツ活動時の使用に適する半袖シャツ1である。半袖シャツ1は糸3から製造されており、この糸3は、熱反射性のコーティング5を有している。図2に示した実施例では、衣服1は2本の糸2,3から製造されており、これらの糸2,3は相互に編成されている。本発明では編成(経編)とは、糸2,3が相互に織合わされているということも、緯編も含むものとする。織合わされた材料は高い強度を提供するのに対して、緯編された材料は極めて高い柔軟性を実現する。糸2は、符号4で示した皮膚の側に位置しており、糸3は皮膚4とは反対側に位置している。
【0016】
本実施例において糸2はポリアミドから成っている。ポリアミドはポリマであり、ポリマは通常、合成の、技術的に使用可能な熱可塑性のプラスチックを含む。使用されるポリアミドは、繊維状のポリアミドだけでなく非繊維状のポリアミドであってもよい。図2から看取されるように、使用されるポリアミドは皮膚に接触する。ポリアミドは湿気を吸収せず、したがって汗も吸収しない。このことによって、スポーツ活動時に、汗の吸収に基づいて衣服が次第に重量を増してしまい、その結果スポーツ選手に大きな負担をかける、ということが防止される。これに関して、使用されるポリアミドから成る糸2は、皮膚に沿って汗を良好に分散させる。これによって大きな蒸発表面積が得られるので、汗は皮膚から素早く蒸発することができる。同時に、大面積で蒸発熱が生じ、冷却効果が得られる。この冷却効果によって体温が低下し、これによってスポーツ選手の能力レベルが高められる。本実施例の変化形では、糸2のために、ポリアミドの代わりにポリエステルを使用してもよい。さらに本実施例の変化形では、編成された糸に後で皮膚に向いた側(内側)でコーティングを施してもよく、これによって特定の効果、たとえば抗カビまたは抗菌作用が得られる。
【0017】
本実施例においては、糸3も同様にポリアミドから成っている。しかしながら糸3に別の材料を使用してもよい。糸3は、熱反射性のコーティング5を有している。このコーティング5は、本実施例では貴金属から成っており、ここでは金から成っている。別の貴金属、たとえば銀を使用してもよい。このコーティング5は、塗布されたラッカまたは色料から形成してもよい。コーティング5は、熱を反射し、コーティング5の種類によっては太陽光も反射する。糸3は、この糸3に施されたコーティング5に基づいて、比喩的に述べると鏡のように作用する。図1において、作用する熱を記号化して示した矢印6から判るように、外部から衣服1に作用する熱または太陽光が反射される。反射は、貴金属の場合には光沢のある表面によってもたらされ、ラッカおよび色料の場合には被着成分によって達成される。糸3の比較的密な度目によって、衣服1の、ほぼ熱および/または光に関して密に閉じた表面が形成される。
【0018】
本実施例の変化形では、付加的な糸層を使用してもよく、たとえば3層または4層の織物も製造可能である。さらに多層の織物の構成では、皮膚4の側に位置する層(図2に示した本実施例では糸2)と、皮膚4とは反対側に位置する層(図2に示した本実施例では糸3)との間に分離層7が形成されており、この分離層7は、本実施例では糸2と糸3との混合領域から形成されている。3層または4層の構成では、この分離層は、糸2と糸3との間に配置された糸から形成されている。分離層7には、高温時もしくはスポーツ活動時に、汗として分泌された湿気が溜まる。これによって蒸発面積が付加的に拡大され、ひいてはさらなる蒸発熱が得られる。したがって気候調整効果がさらに改善される。
【0019】
本発明によれば、熱反射および光反射を実現し、これによって上述の効果を達成するために、熱反射性のコーティング5が皮膚とは反対側に位置する層を形成すればよい。本発明による衣服によって、高温または太陽光線の強い場合に、スポーツ選手の能力の大幅な改善が可能である。それというのも、肉体が付加的な高温の周辺空気によって負担を掛けられることなく、この高温の周辺空気がコーティングされた糸によって反射されるからである。皮膚に向いた側では、特に多層の織物の構成では、同時に汗の大面積にわたる分散が行われるので、肉体の最適な冷却能力にとって必要な蒸発熱が大面積にわたって得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にスポーツ活動、たとえばジョギング、スケート、サイクリングなどの際に使用するための衣服であって、当該衣服が、少なくとも1本の糸から製造されている形式のものにおいて、
前記糸(3)は、熱反射性のコーティング(5)を有していることを特徴とする、衣服。
【請求項2】
前記コーティング(5)は、貴金属から成っている、請求項1記載の衣服。
【請求項3】
前記コーティング(5)は、金から成っている、請求項1または2記載の衣服。
【請求項4】
前記コーティング(5)は、銀から成っている、請求項1または2記載の衣服。
【請求項5】
前記コーティング(5)は、ラッカから形成されている、請求項1または2記載の衣服。
【請求項6】
前記コーティング(5)は、色料から形成されている、請求項1または2記載の衣服。
【請求項7】
別の糸(2)が設けられており、該別の糸(2)は、前記糸(3)と編成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の衣服。
【請求項8】
前記別の糸(2)は、前記皮膚(4)の側に位置しており、前記糸(3)は、前記皮膚(4)とは反対側に位置している、請求項1から7までのいずれか1項記載の衣服。
【請求項9】
前記糸(2)と前記糸(3)との間に、分離層(7)が形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の衣服。
【請求項10】
皮膚の側に位置する前記別の糸(2)は、ポリアミドから成っている、請求項1から9までのいずれか1項記載の衣服。
【請求項11】
皮膚の側に位置する前記別の糸(2)は、ポリエステルから成っている、請求項1から10までのいずれか1項記載の衣服。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−523836(P2010−523836A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502409(P2010−502409)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際出願番号】PCT/DE2007/001613
【国際公開番号】WO2008/122254
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(504303687)エクス−テクノロジー スイス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (23)
【氏名又は名称原語表記】X−Technology Swiss GmbH
【住所又は居所原語表記】Samstagernstrasse 45, CH−8832 Wollerau, Switzerland
【Fターム(参考)】