説明

衣類乾燥機

【課題】ペルチェ素子および電極が水を介して電気的に接続されることを防止できる衣類乾燥機を提供する。
【解決手段】衣類乾燥機は、静電霧化を利用してミストを発生するミスト発生装置を備え、衣類を収容する乾燥室内の空気を循環させる送風装置の動作によりミストを乾燥室内に供給することが可能な構成である。ミスト発生装置は、ペルチェ素子と、ペルチェ素子に印加するペルチェ用電圧を生成するペルチェ用電源回路と、吸水性を有する電極と、電極に印加する高電圧を生成する高電圧電源回路とを備えている。ミスト発生装置は、ペルチェ素子にペルチェ用電圧を印加することにより得られる結露水を電極に供給し、電極に高電圧を印加することによりミストを発生する。ミスト発生装置において、ペルチェ素子に対するペルチェ用電圧の印加および電極に対する高電圧の印加は、いずれか一方が行われている期間には他方は行われない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、衣類乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、除菌や脱臭などの作用を有するミストを発生させ、そのミストを所定の空間に供給し、その空間内の除菌、脱臭などを行う装置が考案されている。また、このような装置を衣類乾燥機に適用することも考えられている。上記ミストを発生する手段として、次のような構成のミスト発生ユニットが用いられることが多い。すなわち、ミスト発生ユニットは、ペルチェ素子に対して電圧を印加することにより、その冷却面における結露水を取水し、その結露水に高電圧を印加することにより霧化させてミストを発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−149538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えばペルチェ素子の冷却面と、結露水に高電圧を印加するための電極との間が結露水などの水分を介して電気的に接続された場合、ペルチェ素子に印加する電圧を生成する電源回路などに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
そこで、ペルチェ素子および電極が水を介して電気的に接続されることを防止できる衣類乾燥機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の衣類乾燥機は、静電霧化を利用してミストを発生するミスト発生装置を備え、衣類を収容する乾燥室内の空気を循環させる送風装置の動作によりミストを乾燥室内に供給することが可能な構成である。ミスト発生装置は、ペルチェ素子と、ペルチェ素子に印加するペルチェ用電圧を生成するペルチェ用電源回路と、吸水性を有する電極と、電極に印加する高電圧を生成する高電圧電源回路とを備えている。ミスト発生装置は、ペルチェ素子にペルチェ用電圧を印加することにより得られる結露水を電極に供給し、電極に高電圧を印加することによりミストを発生する。ミスト発生装置において、ペルチェ素子に対するペルチェ用電圧の印加および電極に対する高電圧の印加は、いずれか一方が行われている期間には他方は行われない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態を示すもので、洗濯機の外観を示す斜視図
【図2】洗濯機のトップカバーの一部を切り欠いて示す平面図
【図3】洗濯機の水槽、回転槽、温風供給装置およびミスト発生装置の接続態様を概略的に示す図
【図4】ミスト発生装置の縦断側面図
【図5】洗濯機の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図6】除菌脱臭運転における各部の動作タイミングを示す図
【図7】第2の実施形態を示す図6相当図
【図8】第3の実施形態を示す図6相当図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について図1〜図6を参照しながら説明する。
図1に示すように、洗濯機10(衣類乾燥機に相当)は、トップカバー11、外箱12、水槽13および回転槽14(乾燥室に相当)を備えている。洗濯機10は、回転槽14の回転軸が地面に対して重力方向へ延びるいわゆる縦軸型であり、乾燥機能を備えた全自動洗濯機である。トップカバー11は、図2にも示すように、枠体111、外蓋112、後カバー113、および操作パネル114などから構成されている。以下、重力方向を基準に上下を定め、また操作パネル114側(図2における下側)を洗濯機10の前方として説明する。
【0009】
トップカバー11は、全体として上面が前方へ向かって下降傾斜する形状に形成されている。具体的には、枠体111は、例えば合成樹脂製であり、全体として上下方向に連通する矩形の筒状に形成され、上側部分が前方へ向かって下降傾斜している。図示しないが、枠体111は、矩形の筒状を形成する周壁が二重構造になっており、その周壁の内部には下側が開口した空間が形成されている。外蓋112は、合成樹脂製であり、矩形の板状に形成されて枠体111の上側を覆っている。外蓋112は、後端部分を支点にして枠体111に対し回動可能であるとともに、中心部分で前後に分割されて、その中心部分を支点に折れ曲がる二つ折れ式である。これにより、外蓋112は、枠体111の上下方向の連通部分の上側、すなわち枠体111の開口を開閉する。
【0010】
また、後カバー113は、例えば合成樹脂製などで構成されている。後カバー113は、左右方向に長い矩形の板状に形成された上面部と、その上面部と同様に板状に形成されて上面部の後端部に直角に設けられた背面部とを一体にして構成されている。この後カバー113は、枠体111の上側であって外蓋112の後方に固定され、外蓋112とともに枠体111の上側を覆い、さらに枠体111の後側を覆っている。
【0011】
操作パネル114は、左右方向に長い矩形の板状に形成され、外蓋112に対して後カバー113とは反対側に設けられている。外蓋112、後カバー113および操作パネル114により、トップカバー11の上面が構成されている。詳細は図示しないが、操作パネル114は、操作部や表示部などを有し、洗濯機10の動作全般を制御する図示しない制御装置に接続されている。使用者は、操作パネル114の操作部を操作することで、例えば洗い運転や乾燥運転などの運転モードを選択することができる。その選択結果や運転状態などは表示部に表示される。
【0012】
外箱12は、鋼板などにより、上側が開口した矩形の箱体に形成されている。トップカバー11は、外箱12の上側に設けられ、外箱12の上側の開口を覆っている。つまり、トップカバー11および外箱12により、洗濯機10の外殻が構成されている。外箱12の内部には、槽として水槽13および回転槽14が設けられている。水槽13は、中心軸が上下方向へ延びる円筒状に形成されて、外箱12の内部に収容されている。水槽13の上面は、図3に示す水槽カバー131によって構成されている。水槽カバー131には、その一部に図示しないほぼ円形の開口が形成されているとともに、その開口を開閉する図示しない内蓋が設けられている。
【0013】
図3に示すように、水槽カバー131には、排気口15および給気口16が設けられている。排気口15および給気口16は、水槽カバー131を貫いて水槽13の内部に連通している。また、水槽13は、詳細は図示しないが、外箱12の四隅から垂れ下がる防振装置に吊り下げられている。これにより、水槽13は外箱12に対して弾性的に支持されている。
【0014】
回転槽14は、上側が開口した円筒状に形成されて、水槽13の内部に収容されている。回転槽14は、上下方向へ延びる回転軸を水槽13の中心軸と一致させて、その回転軸を中心に水槽13に対して相対的に回転する。この場合、詳細は図示しないが、回転槽14の底部付近には、撹拌羽根いわゆるパルセータが回転槽14に対して相対回転可能に設けられている。そのパルセータは、回転されることにより回転槽14内の洗濯水に水流を起こし、これにより回転槽14内に収容された洗濯物(衣類)が洗濯される。
【0015】
水槽13の下面外側には、上記パルセータおよび回転槽14を回転駆動する駆動装置が設けられている。その駆動装置は、モータやクラッチなどで構成されている。上記駆動装置は、洗濯、すすぎ運転時には、回転槽14に対して上記パルセータを相対的に回転させて、回転槽14内部の洗濯水に水流を起こす。また、脱水運転時には、回転槽14および上記パルセータを一体的に一方向へ高速回転させて、これにより洗濯物を遠心脱水する。この場合、モータは、例えばその回転力を回転槽14および上記パルセータに対して直接伝達する、いわゆるダイレクトドライブモータでもよいし、また、例えばブラシレスモータと減速機とを組み合わせたものでもよい。
【0016】
この構成において、洗濯物は、外蓋112、および水槽13の内蓋を開放した状態で、枠体111の内側、水槽カバー131の開口、および回転槽14の開口を通して出し入れされる。また、詳細は図示しないが、回転槽14は、円筒状の筒状部分の全域に複数の孔が形成されている。それら複数の孔は、洗濯運転時および脱水運転時には水が出入りする通水孔として機能し、乾燥運転時には空気が出入りする通風孔として機能する。
【0017】
トップカバー11には、図2にも示すように、後カバー113の左側部分に位置して給水口17および風呂水給水口18が設けられている。給水口17および風呂水給水口18は、図示しない給水装置に接続されている。その給水装置は、給水口17および風呂水給水口18の下方に位置してトップカバー11の内部に設けられている。給水口17は、図示しないホースを介して水道の蛇口に接続される。一方、風呂水給水口18には、図示しない風呂水取水用のホースが接続され、図示しないポンプによって風呂水が汲み上げられる。水道水や風呂水は、それら給水口17または風呂水給水口18を通し、図示しない給水装置を介して水槽13および回転槽14内へ供給される。
【0018】
また、洗濯機10は、温風供給装置19を備えている。温風供給装置19は、水槽13および回転槽14内へ洗濯物の乾燥用の温風を供給する。図2に示すように、温風供給装置19は、後カバー113の右側部分に位置してトップカバー11の内部に設けられている。図3に示すように、温風供給装置19は、ケース20によって外殻が構成されている。温風供給装置19は、ケース20の内部に、第1フィルタ21、第2フィルタ22、送風装置23、ヒータ24、およびサーミスタ25などを収容して構成されている。
【0019】
具体的には、ケース20は、その内部において上流側から順に、フィルタケース部201と、ファンケース部202と、ヒータケース部203とが一体に構成されている。ケース20内における最上流側つまりフィルタケース部201の上流側には、排気ダクト26の一端側が接続されている。排気ダクト26の他端側は、水槽13の上面に設けられた排気口15に接続されている。また、ケース20内における最下流側、つまりヒータケース部203の下流側には、給気ダクト27の一端側が接続されている。給気ダクト27の他端側は、水槽13の上面に設けられた給気口16に接続されている。これにより、ケース20は、その内部において、上流側および下流側がともに水槽13内および回転槽14内に連通している。水槽13および回転槽14内の空気は、図3の矢印Cに示すように、排気ダクト26、ケース20、および給気ダクト27内を通って循環する。この場合、これら排気ダクト26、ケース20、および給気ダクト27のそれぞれの内部によって、水槽13および回転槽14に連通する風路、この場合循環風路が形成されている。
【0020】
第1フィルタ21および第2フィルタ22は、フィルタケース部201内において上流側から順に設けられている。第2フィルタ22は、例えば第1フィルタ21よりも目の細かいものとしている。この場合、糸くずなど比較的大きな異物を第1フィルタ21で捕獲し、第1フィルタ21で逃した比較的小さな異物を第2フィルタ22で捕獲するようにしている。
【0021】
送風装置23は、例えば複数の羽根を有するいわゆるシロッコファンなどであり、送風羽根231およびファンモータ232などから構成されている。送風羽根231は、ファンケース部202内における上流側、つまりファンケース部202内にあってフィルタケース部201との接続部分の近傍に設けられている。この場合、送風羽根231は、風路内に設けられている。送風装置23は、送風羽根231がファンモータ232によって回転されることに基づき、フィルタケース部201側の空気をヒータケース部203側へ送風する。また、ファンケース部202の途中部分には、ファンケース部202と外部とを連通する排出口204が形成されているとともに、排出口204を開閉するダンパ28が設けられている。排出口204を開放した状態で送風装置23が駆動されると、送風装置23から送風される空気の一部は、矢印Dに示すように、排出口204を通って外部へ排出される。
【0022】
ヒータ24およびサーミスタ25は、ヒータケース部203内において上流側から順に設けられている。ヒータ24は、ヒータケース部203内の空気を加熱する。また、サーミスタ25は、ヒータケース部203内の空気の温度を検出する。これにより、送風装置23の駆動によってファンケース部202から送風された空気は、ヒータ24およびサーミスタ25によって、洗濯物の乾燥に適した温度に加熱される。
【0023】
図2および図3に示すように、洗濯機10は、ミスト発生装置29を備えている。ミスト発生装置29は、いわゆる静電霧化装置であり、静電霧化を利用して、除菌や脱臭などの作用を有するミスト、この場合ヒドロキシラジカルを含むミストを発生させる。図2に示すように、ミスト発生装置29は、外箱12の右側上部に設けられ、トップカバー11内部すなわち枠体111の周壁の内側に収容されている。
【0024】
ミスト発生装置29は、具体的には図4に示すように、外ケース30の内部に電源ユニット31および霧化ユニット32を収容して構成されている。電源ユニット31は、外ケース30の前部(図4における左側部)に配置され、霧化ユニット32は、外ケース30の後部(図4における右側部)に配置されている。また、電源ユニット31および霧化ユニット32は、互いに隣接している。詳細は後述するが、電源ユニット31は、霧化ユニット32に対して例えば−4kV〜−5kV程度の負の高電圧(高圧電圧)を出力する。外ケース30には、電源ユニット31と霧化ユニット32との間に位置して開口部301が形成されている。この場合、図3および図4の矢印Eに示すように、開口部301を通して外ケース30内に外気が取り込まれる。
【0025】
図4に示すように、霧化ユニット32は、霧化ユニットケース33内に、ミスト発生部34および給水部35などを収容して構成されている。霧化ユニットケース33は、上下に分割された上ケース331および下ケース332から構成されている。上ケース331および下ケース332の接続部分は、下ケース332の上側部分が上ケース331の下側部分の内側に入り込んだ、いわゆるラビリンス構造に構成されている。これにより、霧化ユニットケース33の外部で発生した水滴などが、上ケース331と下ケース332との接続部分から霧化ユニットケース33内へ浸入することを抑制している。
【0026】
霧化ユニットケース33内には、ミスト発生室36およびミスト放出室37が形成されている。ミスト放出室37は、ミスト発生室36に対して横方向、この場合水平方向における後方に併設されてミスト発生室36に連通している。また、ミスト発生室36の底面は、ミスト放出室37の底面に対して下方に位置している。霧化ユニットケース33には、ミスト発生室36の前側部分(図4における左側部分)に、上側取込み口333、および上側取込み口333の下方に位置する下側取込み口334が形成されている。開口部301から外ケース30内に取込まれた外気は、図4の矢印F、Gに示すように、上側取込み口333および下側取込み口334からミスト発生室36内へ取り込まれる。
【0027】
ミスト発生部34は、ミスト発生室36内の下側部分に設けられている。具体的には、ミスト発生部34は、保水部材38、導電部材39および複数のミスト放出電極40(電極に相当)などから構成されている。この場合、ミスト発生室36の底面側から上方へ向かって、保水部材38、導電部材39、複数のミスト放出電極40の順に配置されている。
【0028】
保水部材38は、多孔質材料、例えばポリエステルなどの樹脂繊維から構成されるフェルト材や、微小な連続気泡を有する樹脂の発泡体などで構成され、吸水性および保水性を有している。保水部材38は、ほぼ矩形のシート状に形成され、ミスト発生室36内の底面の上側に配置されているとともに、その一部がミスト発生室36内の下側部分の側面に沿って配置されている。
【0029】
導電部材39は、例えば、ポリエステルなどの樹脂繊維と導電性物質としてのカーボン繊維とを混紡したものや、微小な連続気泡を有する樹脂の発泡体に導電性物質としてのカーボン粉末を添加したものなどで構成され、吸水性、保水性および導電性を有している。導電部材39は、ほぼ矩形のシート状に形成されて、保水部材38の上側に設けられている。導電部材39は、図示しないケーブルを介して、電源ユニット31の高電圧の出力端子に電気的に接続されている。これにより、電源ユニット31から出力された高電圧が、導電部材39に印加される。
【0030】
ミスト放出電極40は、例えば、ポリエステルなどの樹脂繊維と導電性物質としてのカーボン繊維とを撚り合せたもので構成され、吸水性、保水性、水の吸い上げ特性および導電性を有している。この場合、ミスト放出電極40に、白金ナノコロイドを担持させてもよい。ミスト放出電極40は、上下方向へ延びるピン状に形成され、支持部材41を上下方向へ貫いて設けられている。これにより、ミスト放出電極40は、支持部材41に支持されている。この場合、支持部材41には、4本のミスト放出電極40が設けられている(図4では2本を示す)。
【0031】
ミスト放出電極40の上側部分は、支持部材41の上面から上方へ向かって突出し、上側へ向かって先細るとともに、その先端部が滑らかな曲面に形成されている。また、ミスト放出電極40の下側部分は、支持部材41の下面から下方へ向かって突出している。この場合、ミスト放出電極40は、底面および下側の外周面の一部が導電部材39に接触している(図示省略)。これにより、ミスト放出電極40は、導電部材39を介して、保水部材38に保水された水を吸い上げる。また、ミスト放出電極40には、導電部材39を介して、電源ユニット31から出力された負の高電圧が印加される。
【0032】
ミスト放出電極40は、内部に水を含んだ状態で負の高電圧が印加されると、静電霧化現象を発生させる。つまり、内部に保水した状態のミスト放出電極40に対して負の高電圧を印加すると、ミスト放出電極40の先端部に電荷が集中する。ミスト放出電極40の先端部に集中した電荷は、その先端部に含まれる水に対して表面張力を超えるエネルギーを与える。すると、ミスト放出電極40の先端部では、エネルギーを与えられた水がレイリー分裂を起こして微細な霧状の粒子に分裂する静電霧化現象が発生する。このとき、ミスト放出電極40の先端部からは、ヒドロキシラジカルを含み負に帯電した水粒子つまりミストが放出される。そのミストは、ヒドロキシラジカルの強い酸化作用によって、除菌や脱臭などの効果を発揮する。
【0033】
この場合、ミスト発生部34は、ミスト放出電極40に対応する対極を設けていない。そのため、ミスト放出電極40からの放電は非常に穏やかなものになる。これにより、放電電極と対極との間でコロナ放電が発生することなく、オゾンなどの有害ガスの発生を抑制することができる。
【0034】
給水部35は、ミスト発生室36内の上側部分において、ミスト発生部34の上方に設けられている。具体的には、給水部35は、ペルチェモジュールであり、ペルチェ素子42、冷却板43、および放熱器44などから構成されている。この場合、冷却板43は、ペルチェ素子42の下側に設けられ、放熱器44は、ペルチェ素子42の上側に設けられている。
【0035】
ペルチェ素子42は、冷却面421および発熱面422を構成する二種の金属片を接合して板状に構成されている。ペルチェ素子42は、電圧が印加されると、冷却面421側から発熱面422側へ熱が移動するペルチェ効果が生じ、これにより冷却面421が冷却されるとともに、発熱面422が発熱する。ペルチェ素子42は、冷却面421を下方、すなわちミスト放出電極40側へ向けるとともに、発熱面422を上方へ向けて設けられている。ペルチェ素子42の下側には、冷却面421に接触させて冷却板43が設けられている。冷却板43は、例えばアルミなどの熱伝導率が高い金属板などで構成されている。ペルチェ素子42および冷却板43は、保持部材45の内部に保持されている。保持部材45は、例えば絶縁性および耐熱性に優れる樹脂などで構成されている。
【0036】
また、冷却板43の下側の面には絶縁シート46が設けられている。絶縁シート46は、例えば、50μm程度の厚さのポリエステルフィルムで構成され、電気絶縁縁性に加え、耐水性および耐熱性にも優れている。絶縁シート46は、冷却板43よりも大きなシート状に形成され、その一方の面つまり冷却板43側の面に粘着面を有して冷却板43の下側の面に貼り付けられている。このように、絶縁シート46は、冷却板43の下側の面を覆うことにより、冷却板43とミスト放出電極40との間を電気的に絶縁している。つまり、絶縁シート46によって、ミスト発生部34と、ペルチェ素子42との間が電気的に絶縁されている。この場合、絶縁シート46は電気絶縁部として機能している。
【0037】
ペルチェ素子42の上側には、放熱器44が設けられている。放熱器44は、例えばアルミなどの熱伝導率の高い材料で構成されている。放熱器44は、台座部441および複数の放熱部442を一体に形成されている。台座部441は、ペルチェ素子42の発熱面422に平行な板状に形成され、発熱面422に近接または接触して設けられている。放熱部442は、板状に形成され、台座部441に対して直角に設けられている。
【0038】
この構成において、ペルチェ素子42に電圧が印加されると、ペルチェ素子42は、ペルチェ効果によって冷却面421が冷却されるとともに発熱面422が発熱する。発熱面422に生じた熱は、放熱器44の台座部441から放熱部442へ伝わり、放熱部442から空気中へ放熱される。この場合、上側取込み口333からミスト発生室36内の上部に取り込まれた空気が複数の放熱部442の間を流れることによって、放熱部442に伝わった熱が効率よく空気中へ放熱される。
【0039】
一方、ペルチェ素子42は、冷却面421が冷却されることにより、冷却板43および絶縁シート46を介して絶縁シート46周辺の空気を冷却する。すると、絶縁シート46の下面には、周囲の空気中の水分が結露して水滴が生じる。その結露水が、ミスト発生用の水として、ミスト放出電極40に供給される。このように、給水部35は、ペルチェ素子42の駆動によって絶縁シート46に生じる結露水を、ミスト発生用の水としてミスト発生部34のミスト放出電極40へ供給する。この場合、下側取込み口334からミスト発生室36内の下部に新鮮な外気を取り込むことによって、効率よく水滴を発生させることができる。
【0040】
絶縁シート46の下面とミスト放出電極40の先端との間の寸法は、絶縁シート46の下方にミスト放出電極40が存在しない場合において、絶縁シート46の下面に生じる水滴がその自重によって落下する直前の大きさに成長した場合の、その水滴の上下方向の寸法よりも十分に小さい寸法、例えば0.5mm程度に設定されている。これにより、絶縁シート46の下面に生じる水滴は、その自重によって落下する大きさに成長する前に、ミスト放出電極40の先端に接触して、ミスト放出電極40に吸い込まれる。なお、絶縁シート46の下面に生じる水滴の大きさは、絶縁シート46の表面状態、例えば粗さや濡れ性によって異なる。そのため、絶縁シート46の下面とミスト放出電極40の先端との間の寸法は、絶縁シート46の表面状態などの特性に応じて適宜変更することが好ましい。
【0041】
ミスト発生室36の下部壁、つまり下ケース332には、下ケース332を上下方向貫いて水抜き口361が形成されている。水抜き口361は、ミスト発生室36内において、ミスト発生部34のミスト放出電極40に対してミスト放出室37とは反対側に位置し、ミスト発生室36内と外部、この場合外ケース30の内側とを連通している。保水部材38の保水許容量を超える水がミスト発生室36内に生じると、その水は、水抜き口361を通して霧化ユニット32の下方へ排出され、さらに外ケース30内の底面に滴下されて蒸発する。
【0042】
図4に示すように、霧化ユニットケース33は、接続部47、突出部48および外筒部49を有している。接続部47、突出部48および外筒部49は、上ケース331と一体に形成されている。具体的には、接続部47は、管状に形成され、ほぼ水平方向へ延びる管状の一方の端が直角に曲げられてミスト放出室37の上部壁、すなわち上ケース331の上側に接続されている。接続部47の一方の端は、ミスト放出室37内において下方へ向かって開口している。また、接続部47は、他方の端が、接続管50の一方の端に接続されている。図3に示すように、接続管50の他方の端は、風路を形成するケース20に接続されている。この場合、接続管50の他方の端は、フィルタケース部201における第1フィルタ21と第2フィルタ22との間に接続されている。これにより、接続部47は、他方の端が、接続管50を介して風路を形成するケース20における送風羽根231の上流側に接続されている。
【0043】
突出部48は、円筒状に形成されている。図4に示すように、突出部48は、ミスト放出室37内の天井面、すなわち上ケース331のミスト放出室37部分における下側の面から、ミスト放出室37内において下方へ突出して設けられている。突出部48は、その内周面が接続部47の内周面と滑らかに連続している。突出部48は、ミスト放出室37内と接続部47内とを連通させている。つまり、ミスト放出室37内は、突出部48、接続部47および接続管50を介して、ケース20に連通している。なお、この場合、突出部48の内径は接続部47の内径と一致しているが、突出部48の内径は接続部47の内径よりも小さくてもよい。
【0044】
突出部48は、その下側端部が、ミスト放出室37内の底面、すなわち下ケース332のミスト放出室37部分における上側の面から所定寸法よりも大きく離間している。この場合、所定寸法とは、突出部48の下側端部に結露などによって生じる水滴が、その自重で落下する直前の大きさに成長した場合の、その水滴の上下方向の寸法を意味している。この所定寸法は、突出部48の内周面の表面状態、例えば粗さや濡れ性などの特性に基づいて決定される。本実施形態の場合、突出部48の下側端部は、ミスト放出室37の底面から例えば5mm以上離間している。
【0045】
外筒部49は、その内径が突出部48の外径よりも大きい円筒状に形成されている。外筒部49は、ミスト放出室37内の天井面からミスト放出室37内において下方へ向かって、突出部48の突出量と同程度突出して設けられている。また、外筒部49の内周面は、突出部48の外周面から離間している。これにより、外筒部49の内周面と突出部48の外周面との間に隙間が形成されている。その隙間は、下側においてミスト放出室37内と連通している。このように、外筒部49は、突出部48の外周を離間して囲んでいる。
【0046】
霧化ユニットケース33は、隔壁51を有している。隔壁51は、下ケース332と一体に形成されている。具体的には、隔壁51は、ミスト放出室37内の底面、すなわち下ケース332のミスト放出室37側部分における上側の面であって、接続部47の開口に対してミスト発生室36側に位置して設けられている。また、この場合、隔壁51は、外筒部49の外周面よりもミスト発生室36側に位置している。隔壁51は、板状に形成されて、ミスト放出室37内の下部における両側面、すなわち下ケース332のミスト放出室37側部分における左右両側の面を繋いでいる。そのため、ミスト放出室37内の下側部分は、隔壁51によって前後に区分けされている。この場合、ミスト放出室37内の下側部分において隔壁51よりも後側、すなわち接続部47側は、隔壁51および下ケース332の内側面によって囲まれた貯水部52を形成している。
【0047】
図5は、本実施形態の洗濯機における電気的構成の一部を示している。図5に示すように、洗濯機10には、例えば単相100Vの商用の交流電源61からリレー62を介して交流電力が供給される。その交流電力は、直流電源回路63、64、ヒータ24および電源ユニット31に供給される。リレー62は、自己保持用のものであり、その駆動は図示しない制御装置により制御される。使用者により操作パネル114の操作部が操作されることで洗濯機10に対する電源供給が開始されると、制御装置が起動してリレー62をオン駆動する。これにより、制御装置が自らリレー62をオフ駆動するまでの期間、洗濯機10に対する交流電力の供給が継続される。
【0048】
直流電源回路63は、整流器66およびコンデンサ67により構成される。整流器66は、例えば4つのダイオードをブリッジ状に接続して構成される。整流器66の一方の入力端子は、交流母線68およびリレー62を通じて交流電源61の一方の出力端子に接続される。整流器66の他方の入力端子は、交流母線69を通じて交流電源61の他方の出力端子に接続される。整流器66の各出力端子は、それぞれ直流母線70、71に接続される。直流母線70、71間には、平滑用のコンデンサ67が接続される。このような構成により、直流電源回路63は、入力される交流を整流および平滑して直流に変換し、直流母線70、71を通じて出力する。直流電源回路63から出力される直流は、温風供給装置19のファンモータ232およびモータ駆動回路72に供給される。モータ駆動回路72は、図示しない制御装置から与えられる制御指令に従い、直流母線70、71からファンモータ232に対する電力供給を制御してファンモータ232の駆動を制御する。
【0049】
温風供給装置19のヒータ24の一方の端子は、交流母線68に接続される。ヒータ24の他方の端子は、リレー73を介して交流母線69に接続される。リレー73の接点部の開閉は、図示しない制御装置により制御される。具体的には、制御装置は、ヒータ24への通電を実行する際、接点部を閉じるようにリレー73を制御する。また、制御装置は、ヒータ24への通電を停止する際、接点部を開くようにリレー73を制御する。
【0050】
直流電源回路64は、整流器74およびコンデンサ75により構成される。整流器74は、整流器66と同様の構成である。整流器74の一方の入力端子は、交流母線68およびリレー62を通じて交流電源61の一方の出力端子に接続される。整流器74の他方の入力端子は、交流母線69を通じて交流電源61の他方の出力端子に接続される。整流器74の各出力端子は、それぞれ直流母線76、77に接続される。直流母線76、77間には、平滑用のコンデンサ75が接続される。このような構成により、直流電源回路64は、入力される交流を整流および平滑して直流に変換し、直流母線76、77を通じて出力する。直流電源回路64から出力される直流は、制御用電源回路78およびペルチェ用電源回路79に供給される。
【0051】
制御用電源回路78は、直流電源回路64から出力される直流電圧を所定の電圧値まで降圧し、その降圧した電圧を制御用電圧として出力する。制御用電源回路78から出力される制御用電圧は、温風供給装置19のサーミスタ25およびダンパ28に供給される。
ペルチェ用電源回路79は、直流電源回路64から出力される直流電圧を所定の電圧値まで降圧し、その降圧した電圧をペルチェ用電圧として出力する。ペルチェ用電源回路79から出力されるペルチェ用電圧は、一対の直流母線80、81を通じてミスト発生装置29のペルチェ素子42に印加される。ただし、一対の直流母線80、81に対し、直列に介在するようにリレー82(出力遮断用スイッチに相当)が設けられている。
【0052】
リレー82は、いわゆる両切りの構成である。すなわち、リレー82は、ペルチェ用電源回路79の正側および負側の出力端子と、ペルチェ素子42の各入力端子との間に、それぞれ介在する2つの接点部82a、82bを備えている。リレー82の接点部82a、82bの開閉は、図示しない制御装置により制御される。具体的には、制御装置は、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加を実行する際、接点部82a、82bの双方を閉じるようにリレー82を制御する。また、制御装置は、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加を停止する際、接点部82a、82bの双方を開くようにリレー82を制御する。
【0053】
電源ユニット31は、高圧電源回路83およびフォトトライアック84、85(入力遮断用スイッチに相当)を備えている。高圧電源回路83の各入力端子は、フォトトライアック84、85を介して交流母線68、69に接続される。フォトトライアック84、85の駆動は、図示しない制御装置により制御される。高圧電源回路83は、交流電源61から交流母線68、69を通じて与えられる交流電圧を昇圧する昇圧回路などを備えている。高圧電源回路83は、商用交流電源の周波数(50Hzまたは60Hz)を持つパルス状の電圧を生成する。高圧電源回路83により生成されるパルス状の電圧は、−4kV〜−5kV(対地間の電圧値)程度の高いピーク値を持つ高電圧である。
【0054】
高圧電源回路83から出力される高電圧は、ミスト発生装置29の導電部材39、ひいてはミスト放出電極40に印加される。制御装置は、ミスト放出電極40に対する高電圧の印加を実行する際、フォトトライアック84、85の各出力側素子(トライアック)が導通状態となるように各入力側素子(フォトダイオード)への通電を制御する。また、制御装置は、ミスト放出電極40に対する高電圧の印加を停止する際、フォトトライアック84、85の各出力側素子が非導通状態となるように各入力側素子への通電を制御する。
【0055】
次に、上記構成の作用について説明する。
図示しない制御装置は、使用者が操作パネル114を操作することで運転モードが設定されると、設定された運転モードに応じて、洗い、すすぎ、脱水運転の他、乾燥運転および除菌脱臭運転の各運転を実行する。以下、そのうちの乾燥運転および除菌脱臭運転について説明する。
【0056】
まず、乾燥運転について説明する。
図示しない制御装置は、乾燥運転を開始すると、送風装置23およびヒータ24を駆動するとともに、ダンパ28を駆動して排出口204を開放する。水槽13および回転槽14内の空気は、送風装置23が駆動されると、その送風作用によって、水槽13および回転槽14内と、ケース20内とを循環する。つまり、水槽13および回転槽14内の空気は、送風装置23の送風作用によって、排気口15から排気ダクト26を介してフィルタケース部201内に吸い込まれる。そして、フィルタケース部201内に吸い込まれた空気は、ファンケース部202およびヒータケース部203を通り、給気ダクト27を介して再び給気口16から水槽13および回転槽14内へ送風される。
【0057】
このとき、空気中に含まれる糸くずなどの異物は、フィルタケース部201内において第1フィルタ21および第2フィルタ22を通る際に取り除かれる。また、送風装置23によって送風される空気は、ヒータケース部203内を通る際に、ヒータ24によって加熱される。これにより、給気口16から洗濯物の乾燥用の温風が供給される。回転槽14内の洗濯物は、この温風と熱交換するとともに湿気が奪われることによって乾燥される。乾燥作用を終えて湿気を含んだ空気は、送風装置23の送風作用によって、再びフィルタケース部201内に吸い込まれる。
【0058】
この場合、送風装置23の上流側となるフィルタケース部201内には、送風装置23の送風作用により負圧が生じる。その負圧により、フィルタケース部201内に外気が取り込まれる。つまり、外気は、外ケース30の開口部301から外ケース30内に入り、さらに、霧化ユニットケース33の上側取込み口333および下側取込み口334から霧化ユニットケース33内に入る。そして、霧化ユニットケース33内において、ミスト発生室36、ミスト放出室37、接続部47を通り、さらに接続管50を通ってフィルタケース部201内に吸い込まれる。このとき、接続部47および接続管50を流れる空気によって、接続部47や接続管50に存在する結露水などが蒸発する。
【0059】
一方、送風装置23によって下流側へ送風された空気は、その一部が、ファンケース部202内において排出口204から外部へ排出される。これにより、乾燥作用を終えて湿気を含んだ空気の一部が外部へ排出される。このようにして、水槽13および回転槽14内と、ケース20内とを循環する空気の一部が、新鮮な外気に入れ替えられる。
【0060】
次に、除菌脱臭運転について説明する。
図6は、除菌脱臭運転が行われる際の動作タイミングチャートであり、(a)はファンモータの駆動状態、(b)はペルチェ用電圧の印加状態、(c)は高電圧の印加状態を示している。図6において、「ON」は駆動または印加されている状態であり、「OFF」は駆動または印加されていない状態である。図示しない制御装置は、除菌脱臭運転を開始すると、まず、送風装置23(ファンモータ232)の駆動を開始するとともに、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加を開始する(図6の時刻t1)。これにより、ミスト放出電極40にミスト発生用の水が供給される。この場合、送風装置23の送風作用によって生じるフィルタケース部201内の負圧により、ミスト発生室36内には、矢印F、Gに示すように、上側取込み口333および下側取込み口334からミスト放出室37側へ向かう空気の流れが生じる。上側取込み口333から取り込まれる空気は、放熱器44の複数の放熱部442の間を通って放熱器44を冷却する。これにより、ペルチェ素子42の発熱面422は冷却される。
【0061】
給水部35からミスト発生部34への給水は、所定時間Ta(例えば10分程度)継続される。制御装置は、所定時間Taの経過後、ペルチェ素子42に対する電圧供給を停止してミスト発生部34への給水を終了する(図6の時刻t2)。なお、この際、送風装置23の駆動は継続されている。給水が終了した時刻t2の時点から所定の待機時間Tb(例えば5分程度)が経過する時点(図6の時刻t3)までの期間、高電圧の印加は開始されない。すなわち、時刻t2〜t3の期間、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加およびミスト放出電極40に対する高電圧の印加は、いずれも行われない。
【0062】
制御装置は、待機時間Tbの経過後、ミスト放出電極40に対する負の高電圧の印加を開始する(図6の時刻t3)。この場合、ファンケース部202の排出口304は、ダンパ28によって閉鎖されている。ミスト放出電極40は、負の高電圧が印加されると、先端部で静電霧化現象が発生して、除菌や脱臭などの作用を有するミストを発生する。このとき、送風装置23の送風作用によって、ケース20内のフィルタケース部201には負圧が生じている。ミスト放出電極40で発生したミストは、その負圧によって、図4の矢印Hに示すようにミスト放出室37へ流れ、さらに図3および図4の矢印Iに示すように、接続部47および接続管50を通ってファンケース部202内に吸い込まれる。
【0063】
そして、ファンケース部202内に吸い込まれたミストは、送風装置23の送風作用によって、給気口16から回転槽14内へ供給される。このように、ミスト発生部34で発生したミストは、水槽13および回転槽14内へ連通する風路つまりケース20内を通って、水槽13および回転槽14内へ供給される。回転槽14内の洗濯物は、上記ミストが触れることによって除菌および脱臭される。ミスト放出電極40に対する高電圧の印加は、所定時間Tc(例えば45分程度)継続される。制御装置は、所定時間Tcの経過後、ミスト放出電極40に対する高電圧の印加を停止するとともに、送風装置23の駆動を停止する(図6の時刻t4)。なお、所定時間Ta、Tcおよび待機時間Tbは、上記した一例に限らずともよく、適宜変更可能である。ただし、所定時間Tcが所定時間Taよりも長くなるように設定されることが望ましい。
【0064】
さて、絶縁シート46とミスト放出電極40との間が結露水などの水分を介して電気的に接続された状態において、ミスト放出電極40に対する高電圧の印加が行われると、次のような問題が生じる可能性がある。すなわち、ミスト放出電極40に印加される高電圧に対し、絶縁シート46の絶縁が不十分である場合、ミスト放出電極40と、冷却板43、ひいてはペルチェ素子42の冷却面421との間が、水分を介して電気的に接続されてしまう。このとき、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加が行われていると、ミスト放出電極40に印加されている高電圧が、ペルチェ素子42を通じてペルチェ用電源回路79に印加される。これにより、最悪の場合には、ペルチェ用電源回路79が故障するおそれがある。
【0065】
このような問題の対策として、本実施形態では、前述したように、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加が停止してから待機時間Tbが経過した後、ミスト放出電極40に対する高電圧の印加が開始されるようになっている。すなわち、本実施形態では、ペルチェ用電圧の印加および高電圧の印加は同時に行われない。そのため、仮に、例えば劣化などが原因で絶縁シート46の絶縁耐圧が上記高電圧に対して不十分な状態となっても、ミスト放出電極40に印加されている高電圧がペルチェ素子42を通じてペルチェ用電源回路79に印加されることはない。従って、本実施形態によれば、絶縁シート46およびミスト放出電極40の間が結露水などの水分を通じて電気的に接続されたとしても、ミスト放出電極40に印加されている高電圧によりペルチェ用電源回路79が故障してしまうことを防止できる。
【0066】
上述したように、本実施形態のミスト発生装置29は、ミスト放出電極40およびペルチェ素子42の間が水分により電気的に接続された場合であっても電子回路(ペルチェ用電源回路79)の故障を防止できる安全な構成となっている。そのため、絶縁シート46として絶縁耐圧が比較的低いものを用いたり、あるいは、絶縁シートそのものを無くしたりすることが可能となり、その分だけ製造コストが低減できるという効果が得られる。
【0067】
一般に、一対の電極間に高電圧を印加する構成においては、電極間の短絡に起因して生じる短絡電流を制限するため、その高電圧を生成する高圧電源回路に垂下特性を持たせるなどの対策が施される。これに対し、本実施形態のミスト発生部34は、ミスト放出電極40に対応する対極を設けていない構成であるため、高圧電源回路83に垂下特性を持たせる必要がない。このような本実施形態の構成において、敢えて高圧電源回路83に垂下特性を持たせれば、上記したミスト放出電極40およびペルチェ素子42の間が水分などにより電気的に接続された(短絡された)場合における短絡電流が制限され、短絡電流によりペルチェ用電源回路79が故障する可能性を低減できるかもしれない。しかし、本実施形態では、上述したように、ペルチェ用電圧および高電圧の印加のタイミングを工夫することにより、高電圧によりペルチェ用電源回路79が故障することを抑制している。従って、本実施形態によれば、高圧電源回路83の構成を複雑化することなく、高電圧によりペルチェ用電源回路79などの電子回路の故障を防止できるという効果が得られる。
【0068】
また、ペルチェ用電源回路79からペルチェ素子42に対してペルチェ用電圧を供給するための直流母線80、81の双方に対して接点部82a、82bが直列に介在する、いわゆる両切り構成のリレー82を設けた。そして、リレー82は、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加を停止する際、接点部82a、82bの双方を開くように制御される。このようにすれば、ペルチェ用電圧の印加が停止される際、ペルチェ素子42とペルチェ用電源回路79との間は、電気的に完全に遮断された状態となる。従って、仮にペルチェ素子42に対してミスト放出電極40に印加されている高電圧が印加されたとしても、ペルチェ素子42から電気的に切り離された状態のペルチェ用電源回路79が故障する事態は発生しない。
【0069】
高圧電源回路83の各入力端子は、フォトトライアック84、85を介して交流母線68、69に接続されるようにした。そして、高電圧の印加を停止する際、フォトトライアック84、85の各出力側素子が非導通状態となるように各入力側素子への通電が制御される。このようにすれば、万が一、フォトトライアック84、85のうち、いずれか一方が故障した場合(特に短絡故障した場合)であっても、他方を制御することにより、高圧電源回路83に対する電源供給を停止することができる。従って、フォトトライアック84、85のうち、いずれか一方が故障した場合に、ミスト発生電極40に対して高電圧が必要以上に印加されてしまうことを防止できる。
【0070】
さて、結露による水滴がミスト放出電極40に取り込まれる(吸水される)前には、その水滴を介してミスト放出電極40およびペルチェ素子42が電気的に接続された状態になる可能性が高い。そこで、本実施形態では、ミスト発生装置29によりミストを発生する際、まず、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加が行われる。そして、ペルチェ用電圧の印加が停止された時点から待機時間Tbの経過後にミスト放出電極40に対する高電圧の印加が行われる。このようにすれば、ペルチェ素子42の冷却面421が冷却されることにより結露した水滴が、ミスト放出電極40に十分に取り込まれてから(吸水されてから)、高電圧の印加が行われることになるので、ミスト放出電極40およびペルチェ素子42が結露した水滴を介して電気的に接続された状態になる可能性を低減することができる。さらに、ミスト放出電極40に水分が取り込まれていない状態で高電圧が印加される事態の発生を防止することもできる。なお、このような動作は、ミスト放出電極40として吸水性を有したものを用いることにより可能となっている。
【0071】
ミスト発生装置29によりミストを発生する際において、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加時間(=所定時間Ta)に対し、ミスト放出電極40に対する高電圧印加時間(=所定時間Tc)が長く設定されている。このように、高電圧印加時間を長く設定することにより、除菌脱臭運転の全体としての動作時間(例えば1時間)に対し、実際にミストが発生して除菌および脱臭作用が発揮される時間(例えば45分)が占める割合が増える。しかし、ペルチェ用電圧の印加時間をむやみに短くすることは、ミストの元となる結露水の量の不足に繋がる。そこで、ペルチェ素子42の冷却能力(冷却面421の面積)やミスト放出電極40の吸水能力などを考慮した上で、所定時間Taの値(給水動作の時間)および所定時間Tcの値(除菌脱臭作用が発揮される時間)を最適な値に設定するとよい。すなわち、所定時間Taの給水動作によってミスト発生動作を所定時間Tcだけ継続的に実行できるように、各所定時間の値を設定するとよい。なお、一般に家電用途に用いられるペルチェ素子の冷却能力によれば、上記した一例の条件(所定時間Ta=10分、所定時間Tc=45分)を十分に満たすことが可能である。
【0072】
高圧電源回路83は、交流電源61から供給される交流電圧からパルス状の高電圧を生成する、いわゆるACタイプのものを用いた。従って、ミスト放出電極40に印加される高電圧は、瞬間的には−4kV〜−5kVといった高い値を示すものの、その他の期間は接地電位(0V)となっている。このように、ミスト放出電極40に印加される高電圧が高い値を示す期間が短いため、前述した高電圧による問題が生じ難い構成であるとともに、より安全性の高い構成となっている。
【0073】
(第2の実施形態)
以下、第1の実施形態に対し、除菌脱臭運転における動作タイミングを変更した第2の実施形態について、図7を参照しながら説明する。
洗濯機10は、例えば最大で6時間程度の除菌脱臭運転を行うことが可能となっている。従って、除菌脱臭運転は、1時間程度のものだけでなく、それよりも長い時間(長時間)行われる場合もある。図6に示した動作タイミングでもって除菌脱臭運転を長時間実行しようとする場合、所定時間Ta、Tb、Tcを長くすることにより対応可能である。しかし、このようにした場合、給水が連続して行われる期間が長くなる。そして、その期間には除菌および脱臭が行われない。そのため、ミスト放出電極40に対する高電圧の印加が開始されて除菌および脱臭作用が働くまでに雑菌等が繁殖することも考えられる。
【0074】
これに対し、本実施形態では、以下のようにして除菌脱臭運転を行う。すなわち、長時間の除菌脱臭運転を行う際には、上記した1時間程度の除菌脱臭運転における動作タイミングを基本パターンとし、その基本パターンが繰り返し実行される。図7は、2時間の除菌脱臭運転が行われる際における各部の動作タイミングを示している。図7に示すように、基本パターンが一通り終了してミスト放出電極40に対する高電圧の印加が停止されると、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加が開始される(図7の時刻t4)。その後は、基本パターンと同様の動作が実行される(図7の時刻t4〜t7)。ただし、送風装置23の駆動は、図7の時刻t1において開始されてから最後の高電圧の印加が停止される時点(図7の時刻t7)まで継続される。
【0075】
本実施形態によれば、長時間の除菌脱臭運転が行われる場合には、ミストが発生しない給水期間およびミストが発するミスト発生期間が交互に繰り返される。すなわち、本実施形態では、除菌脱臭運転が長時間行われる場合であっても、ミストが発生しない期間が長期間連続して存在しないようになっている。従って、雑菌等の繁殖を抑えつつ、長時間の除菌脱臭運転を効率よく行うことが可能となる。
【0076】
(第3の実施形態)
以下、第1の実施形態に対し、除菌脱臭運転における動作タイミングを変更した第3の実施形態について、図8を参照しながら説明する。
除菌脱臭運転が行われる前の時点において、ミスト発生装置29の内部の高温多湿の空気が、外気との温度差によって冷却されることにより、結露して水滴が生じている可能性がある。そこで、本実施形態では、以下のようにして除菌脱臭運転を行う。すなわち、図8に示すように、図示しない制御装置は、まず、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加を開始する(図8の時刻t1)。このとき、制御装置は、送風装置23の駆動を開始しない。送風装置23の駆動は、ペルチェ用電圧の印加が開始されてから所定の遅延時間Td(例えば2分程度)経過した後に開始される(図8の時刻t2’)。その後は、図6に示した第1の実施形態と同様の動作が行われる。
【0077】
本実施形態によれば、除菌脱臭運転が行われる際、運転開始から遅延時間Tdが経過するまでの期間、送風装置23を駆動することなく、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加が行われる。この場合、送風装置23が駆動されていないため、ミスト発生室36内には空気の流れは生じない。従って、ペルチェ素子42の発熱面422から放熱器444を通じて熱が放射される。そして、その熱によりミスト発生装置29内の温度が上昇し、その内部(空間や壁面など)に発生している結露水が蒸発する。従って、ミスト放射電極40に対する高電圧の印加が行われる際、ミスト発生装置29の内部に存在する結露水を通じて、ペルチェ素子42に高電圧が印加される事態や、他の装置(例えば、送風装置23など)に高電圧が印加される事態などの発生を未然に防止できる。
【0078】
なお、上述した除菌脱臭運転における動作タイミングは、長時間運転の際に基本パターンを繰り返し実行する第2の実施形態に対しても適用することができる。図示は省略するが、その場合、最初に基本パターンが実行される際に、送風装置23の駆動を停止した状態でペルチェ用電圧の印加を行えばよい。その理由は、2回目以降の基本パターンが実行される際、ミスト発生装置29内の温度条件は既に安定しており、結露が生じ難い状態となっているからである。このようにすれば、2回目以降の基本パターンにおける給水期間、すなわち取水量を十分に確保することができる。
【0079】
(その他の実施形態)
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
除菌脱臭運転が行われる際の各部の動作タイミングについては、上記各実施形態において示したものに限らずともよく、ペルチェ素子42に対するペルチェ用電圧の印加動作と、ミスト放出電極40に対する高電圧の印加動作とが、同時に実行されないようなタイミングであれば適宜変更可能である。
【0080】
両切り構成のリレー82に代えて、高圧電源回路83から出力される高電圧に対して十分に高い耐圧を持つ2つの半導体スイッチング素子(例えば、バイポーラトランジスタやパワーMOSFETなど)を用いてもよい。その場合、2つの半導体スイッチング素子が、直流母線80、81に直列に介在するような構成とすればよい。
フォトトライアック84、85に代えて、両切り構成のリレーを用いてもよい。その場合、リレーの一方の接点部が溶着した場合であっても、他方の接点部を制御することにより、高圧電源回路83に対する電源供給を停止することができる。また、フォトトライアック84、85のいずれか一方だけを設ける構成や、片切り構成のリレーを用いた構成でもよい。
高圧電源回路83に代えて、交流電源61から供給される交流電圧を整流するとともに昇圧して一定の高電圧を生成する高圧電源回路や、入力される直流電圧を昇圧して一定の高電圧を生成する高圧電源回路など、いわゆるDCタイプのものを用いてもよい。
【0081】
洗濯機10は、水槽13の中心軸および回転槽14の回転軸が水平または傾斜するいわゆるドラム式洗濯機でもよい。
ミスト発生装置29は、乾燥機能を備えた洗濯機10に限らず、衣類乾燥機にも適用可能である。
除菌脱臭運転時において、回転槽14は、静止させていてもよいし、モータを駆動させて回転させてもよい。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
図面中、10は洗濯機(衣類乾燥機)、14は回転槽(乾燥室)、23は送風装置、29はミスト発生装置、40はミスト放出電極(電極)、42はペルチェ素子、79はペルチェ用電源回路、83は高圧電源回路、61は交流電源、68、69は交流母線、80、81は直流母線、82はリレー(出力遮断用スイッチ)、84、85はフォトトライアック(入力遮断用スイッチ)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電霧化を利用してミストを発生するミスト発生装置を備え、衣類を収容する乾燥室内の空気を循環させる送風装置の動作により前記ミストを前記乾燥室内に供給することが可能な衣類乾燥機であって、
前記ミスト発生装置は、
ペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子に印加するペルチェ用電圧を生成するペルチェ用電源回路と、
吸水性を有する電極と、
前記電極に印加する高電圧を生成する高圧電源回路と、
を備え、
前記ペルチェ素子にペルチェ用電圧を印加することにより得られる結露水を前記電極に供給し、前記電極に高電圧を印加することにより前記ミストを発生するものであり、
前記ペルチェ素子に対するペルチェ用電圧の印加および前記電極に対する高電圧の印加は、いずれか一方が行われている期間には他方は行われないことを特徴とする衣類乾燥機。
【請求項2】
請求項1に記載の衣類乾燥機において、
前記高圧電源回路は、交流電源から一対の交流母線を通じて交流電圧の供給を受け、その交流電圧をもとに前記高電圧を生成する構成であり、
前記一対の交流母線の少なくとも一方に対し、直列に介在する入力遮断用スイッチと、
前記ペルチェ用電源回路から前記ペルチェ素子に対して前記ペルチェ用電圧を供給するための一対の直流母線の双方に対し、直列に介在する出力遮断用スイッチと、
を備え、
前記ペルチェ用電圧の印加を停止する際、前記出力遮断用スイッチをオフし、
前記高電圧の印加を停止する際、前記入力遮断用スイッチをオフすることを特徴とする衣類乾燥機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の衣類乾燥機において、
前記ミスト発生装置により前記ミストを発生させる際、前記ペルチェ素子に対するペルチェ用電圧の印加が行われ、その後、予め定められた所定の待機時間の経過後に、前記電極に対する高電圧の印加が行われることを特徴とする衣類乾燥機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の衣類乾燥機において、
前記ミスト発生装置により前記ミストを発生させる際、前記ペルチェ素子に対するペルチェ用電圧の印加と、前記電極に対する高電圧の印加とが交互に繰り返されることを特徴とする衣類乾燥機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の衣類乾燥機において、
前記ミスト発生装置により前記ミストを発生させる際、前記ペルチェ素子に対するペルチェ用電圧の印加が行われる時間に対し、前記電極に対する高電圧の印加が行われる時間が長く設定されていることを特徴とする衣類乾燥機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の衣類乾燥機において、
前記ミスト発生装置により前記ミストを発生させる際、前記ペルチェ素子に対するペルチェ用電圧の印加が開始された後、予め定められた所定の遅延時間は、前記送風装置の動作が停止されることを特徴とする衣類乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−48675(P2013−48675A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187334(P2011−187334)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】