説明

衣類

【課題】衣類を衣類メーカが指定する溶剤でクリーニングしたのか否か簡単且つ確実に確認できる実用性に秀れたクリーニング方式判別方法を実現できる衣類を提供すること。
【解決手段】衣類に、所定の溶剤でクリーニングした際には変化せず、前記所定の溶剤とは別の溶剤でクリーニングした際に消去,変色若しくは退色等の変化を生じ得る文字,模様若しくは色彩等の表示を設けて、この表示の変化の有無によりこの衣類が前記所定の溶剤でクリーニングされたか否かを判別できるように構成したことを特徴とする衣類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーニング店では、衣類の伸縮を防止する為、水を使用しないドライクリーニングが採用されている。また、このドライクリーニングでは、衣類に付着した油脂等の汚れをきれいに除去する為、洗浄力(即ち、油脂溶解力)の強力な溶剤が使用されている。また、この洗浄力の強力な溶剤として、石油系溶剤(例えば、n−パラフィン)、塩素系やフロン系の有機溶剤(例えば、パークロルエチレン)が用いられている。
【0003】
ところで、石油系溶剤と塩素系若しくはフロン系の有機溶剤は、洗浄力が異なり、一般的に、石油系溶剤よりも塩素系やフロン系の有機溶剤の方が強力な洗浄力を発揮する。しかし、塩素系やフロン系の有機溶剤を使用すると、その強力な洗浄力の為、衣類の変色や退色が発生してしまうおそれがある。
【0004】
従って、衣類メーカは、クリーニング時に不適な溶剤が使用されることを防止する為、石油系溶剤の使用を指定する旨の表示(マーク)や、塩素系やフロン系の有機溶剤の使用不可を指定する旨の表示を印刷したタグを付設し、前記衣類の変色や退色を防止する努力をしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、それでも次の問題点が発生している。
【0006】
クリーニング店は、衣類の汚れをきれいに除去することが要求されている(汚れを除去できない場合、クリーニング店はお客からクリーニング能力を疑われる。)。従って、クリーニング店は、石油系溶剤の使用で汚れの除去が不十分である場合、塩素系やフロン系の有機溶剤を使用してしまう。
【0007】
この際、当然ながら、前記変色や退色が発生する。
【0008】
この変色や退色は、前記衣類メーカの指定よりも強力な溶剤を使用した為に発生した現象である。しかし、クリーニング店としては、この変色や退色を自己の責任と認めることはできない(自己の責任と認めれば、やはりお客からクリーニング能力を疑われる。)。従って、クリーニング店は、変色や退色は衣類メーカの責任であると主張する。
【0009】
衣類メーカは、変色や退色がクリーニング店の責任であると考えるが、果たして本当にそうであるか、実証する方法は無い。
【0010】
従って、衣類メーカとクリーニング店との間に、しばしばトラブルが発生してしまう。
【0011】
本発明は、上記トラブルの発生を防止すべく達成したもので、衣類を衣類メーカが指定する溶剤でクリーニングしたのか否か簡単且つ確実に確認できる実用性に秀れたクリーニング方式判別方法を実現できる衣類を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0013】
衣類に、所定の溶剤でクリーニングした際には変化せず、前記所定の溶剤とは別の溶剤でクリーニングした際に消去,変色若しくは退色等の変化を生じ得る文字,模様若しくは色彩等の表示を設けて、この表示の変化の有無によりこの衣類が前記所定の溶剤でクリーニングされたか否かを判別できるように構成したことを特徴とする衣類に係るものである。
【0014】
また、衣類に、洗浄力が弱い溶剤を用いてクリーニングした際には変化せず、洗浄力が強い溶剤でクリーニングした際に消去,変色若しくは退色等の変化を生じる文字,模様若しくは色彩等の表示を設けて、この表示の変化の有無によりこの衣類が前記洗浄力が弱い溶剤と前記洗浄力が強い溶剤とのどちらでクリーニングされたかを判別できるようにしたことを特徴とする衣類に係るものである。
【0015】
また、前記衣類の取り扱い絵表示により指示された溶剤を用いてクリーニングした際には変化せず、この指示溶剤とは別の洗浄力の強い溶剤でクリーニングした際に消去,変色若しくは退色等の変化を生じる文字,模様若しくは色彩等の表示を設けて、この表示の変化によりこの衣類が前記衣類の取り扱い絵表示により指示された溶剤よりも洗浄力が強い溶剤でクリーニングされたことを判別できるように構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の衣類に係るものである。
【0016】
また、前記表示は、衣類に設ける取り扱い絵表示タグ,品質表示タグ,PLタグ若しくはこの表示を行うために設けるタグなどの衣類の着用時には見えにくい位置に付設するタグ1に所定のインクにより表示して衣類に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衣類に係るものである。
【0017】
また、前記表示は、衣類に設ける取り扱い絵表示タグ,品質表示タグ,PLタグ若しくはこの表示を行うために設けるタグなどの衣類の着用時には見えにくい位置に付設するタグ1に所定のインクにより印刷して衣類に設けたことを特徴とする請求項4記載の衣類に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、衣類を、所定の溶剤でクリーニングしたのか、前記所定の溶剤とは別の溶剤でクリーニングしたのかを、表示の変化の有無により簡単且つ確実に判別でき、これにより、衣類の変色や退色の原因究明を良好に行える実用性に秀れたクリーニング方式判別方法が実現できる衣類となる。
【0019】
請求項4記載の発明においては、判別する為の表示を、形成の簡単なタグに設けたから、衣類の生産性が悪化したりせず、この点においても実用性に秀れることになる。
【0020】
請求項5記載の発明においては、判別する為の表示を印刷により設けたから、この点においても本発明を簡単に実施することができ、それだけ実用性に秀れることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0022】
衣類に、所定の溶剤でクリーニングした際には変化せず、前記所定の溶剤とは別の溶剤でクリーニングした際に消去,変色若しくは退色等の変化を生じ得る文字,模様若しくは色彩等の表示を設ける。
【0023】
この表示は、前記所定の溶剤でクリーニングした際には、当然ながら変化しないが、前記所定の溶剤とは別の溶剤でクリーニングした際には、当然ながら消去,変色若しくは退色等の変化を生じる。
【0024】
従って、クリーニング後の表示を見るだけで、衣類が、所定の溶剤でクリーニングされたのか、別の溶剤でクリーニングされたのか、を簡単に判別することができる。
【0025】
尚、例えば、所定の溶剤でクリーニングした際に変化し、別の溶剤でクリーニングした際に変化しない表示であってもよさそうであるが、この場合には、別の溶剤でクリーニングした後に所定の溶剤でクリーニングすることで表示を変化させることができる。即ち、この方法では、所定の溶剤でクリーニングされたのか、別の溶剤でクリーニングされたのか、を正確に判別することができない。
【0026】
一方、本発明は、所定の溶剤とは別の溶剤でクリーニングした際にのみ表示が変化するから、一度でも別の溶剤でクリーニングすれば表示が変化することになり、よって、別の溶剤でクリーニングした事実を確実に判別することができる。
【実施例1】
【0027】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0028】
本実施例は、所定の溶剤、具体的には石油系溶剤でクリーニングした際には変色や退色等の劣化が発生せず、この石油系溶剤よりも強力な洗浄力を有する塩素系若しくはフロン系の有機溶剤の溶剤、具体的にはパークロルエチレンでクリーニングした際には変色や退色等の劣化が発生するおそれのある衣類について、この衣類が、前記石油系溶剤でクリーニングされたか、前記パークロルエチレンでクリーニングされたか、を判別するものである。
【0029】
衣類の一部に、前記石油系溶剤でクリーニングした際には変化せず、前記パークロルエチレンでクリーニングした際に消去,変色若しくは退色等の変化を生じ得る文字,模様若しくは色彩等の表示を設ける。
【0030】
この表示は、衣類に直接印刷等によって設けても良いが、この場合、衣類の量産性が低下してしまうことが懸念される。従って、この表示は、一般に衣類に設ける取り扱い絵表示タグ(アイロン禁止等),品質表示タグ(素材がなにであるか等),PLタグ(PL法に基づく注意書き)若しくはこの表示を行うために設けるタグなどの衣類の着用時には見えにくい位置に付設するタグ1に設けると良い。このタグ1は、小さくて扱い易く、且つ、製造工程に、取り扱い絵,品質若しくはPL法等に基づく表示を印刷する工程が存在する為、前記石油系溶剤でクリーニングした際には変化せず、前記パークロルエチレンでクリーニングした際に消去,変色若しくは退色等の変化を生じ得る文字,模様若しくは色彩等の表示を簡単に設けることができる。
【0031】
また、この表示は、一度パークロルエチレンでクリーニングして変化した後には元の状態に戻らないようなものを採用すると良い。
【0032】
また、この表示は、印刷によって設けると良い。
【実施例2】
【0033】
本発明の具体的な実施例2について図面に基づいて説明する。
【0034】
また、この表示は、前記石油系溶剤と混合した際には溶出したり変質したりせず、前記パークロルエチレンと混合した際には溶出したり変質したりする性質のインク(例えば、ウレタン系のインク)を用いて形成すると良い。この場合、インクの性質により、前記表示は、前記石油系溶剤でクリーニングした際には変化せず、前記パークロルエチレンでクリーニングした際に消去,変色若しくは退色等の変化を生じ得ることになる。
【0035】
また、このインクは、衣類に用いられる染料,艶出し剤若しくは蛍光剤と同じ成分(若しくは類似の成分)を含むものとすると良い。この場合、クリーニングの際に衣類の変色や退色が発生すると、即ち、クリーニングの際に衣類に付着している染料,艶出し剤若しくは蛍光剤が溶出若しくは変質すると、当然ながら、前記表示が確実に消去,変色若しくは退色することになる。
【0036】
また、このインクは、衣類の前記パークロルエチレン以外の変色や退色の原因となる溶剤によっても溶出したり変質したりするものを採用すると良い。
【0037】
また、このインクは、衣類の前記石油系溶剤以外の変色や退色を発生させない溶剤によって溶出したり変質したりしないものを採用すると良い。
【0038】
図面は、衣類のタグ1に前記表示を設けた場合を図示しており、衣類をパークロルエチレンでクリーニングした際、「注意」という文字が消去されるものである(図1は適正なクリーニングを行った後の状態、図2は不適正なクリーニングを行った後の状態、即ち、パークロルエチレンでクリーニングした後の状態を示す。)。
【0039】
また、この表示の全てが、消去,変色若しくは退色等の変化をしてしまうと、元々の状態がどうであったかが争点になる可能性が考えられる。従って、例えば、表示の半分だけが消去されたり(図面に示す「注意」の文字の内、「注」だけが消去されたり、文字の上半分が消去されたり)するように構成すると良い。
【0040】
本実施例は上述のようにするから、衣類を、変色や退色の原因となるパークロルエチレンでクリーニングすると、前記表示が消去,変色若しくは退色等を変化をすることになり、よって、衣類の変色や退色がパークロルエチレンでのクリーニングによるものなのか否かを、前記表示がどのような状態となっているか確認するだけで簡単且つ確実に判別できる実用性に秀れた技術となる。
【0041】
尚、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施例の適正なクリーニングを行った後の説明図である。
【図2】本実施例の不適正なクリーニングを行った後の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 タグ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーニング店では、衣類の伸縮を防止する為、水を使用しないドライクリーニングが採用されている。また、このドライクリーニングでは、衣類に付着した油脂等の汚れをきれいに除去する為、洗浄力(即ち、油脂溶解力)の強力な溶剤が使用されている。また、この洗浄力の強力な溶剤として、石油系溶剤(例えば、n−パラフィン)、塩素系やフロン系の有機溶剤(例えば、パークロルエチレン)が用いられている。
【0003】
ところで、石油系溶剤と塩素系若しくはフロン系の有機溶剤は、洗浄力が異なり、一般的に、石油系溶剤よりも塩素系やフロン系の有機溶剤の方が強力な洗浄力を発揮する。しかし、塩素系やフロン系の有機溶剤を使用すると、その強力な洗浄力の為、衣類の変色や退色が発生してしまうおそれがある。
【0004】
従って、衣類メーカは、クリーニング時に不適な溶剤が使用されることを防止する為、石油系溶剤の使用を指定する旨の表示(マーク)や、塩素系やフロン系の有機溶剤の使用不可を指定する旨の表示を印刷したタグを付設し、前記衣類の変色や退色を防止する努力をしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、それでも次の問題点が発生している。
【0006】
クリーニング店は、衣類の汚れをきれいに除去することが要求されている(汚れを除去できない場合、クリーニング店はお客からクリーニング能力を疑われる。)。従って、クリーニング店は、石油系溶剤の使用で汚れの除去が不十分である場合、塩素系やフロン系の有機溶剤を使用してしまう。
【0007】
この際、当然ながら、前記変色や退色が発生する。
【0008】
この変色や退色は、前記衣類メーカの指定よりも強力な溶剤を使用した為に発生した現象である。しかし、クリーニング店としては、この変色や退色を自己の責任と認めることはできない(自己の責任と認めれば、やはりお客からクリーニング能力を疑われる。)。従って、クリーニング店は、変色や退色は衣類メーカの責任であると主張する。
【0009】
衣類メーカは、変色や退色がクリーニング店の責任であると考えるが、果たして本当にそうであるか、実証する方法は無い。
【0010】
従って、衣類メーカとクリーニング店との間に、しばしばトラブルが発生してしまう。
【0011】
本発明は、上記トラブルの発生を防止すべく達成したもので、衣類を衣類メーカが指定する溶剤でクリーニングしたのか否か簡単且つ確実に確認できる実用性に秀れたクリーニング方式判別方法を実現できる衣類を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0013】
衣類に、石油系溶剤でクリーニングした際には変化せず、この石油系溶剤より洗浄力が強い塩素系溶剤若しくはフロン系有機溶剤でクリーニングした際に消去されるか若しくは退色する文字,模様若しくは色彩等の表示を設けて、この表示の変化の有無によりこの衣類が前記石油系溶剤でクリーニングされたか否かを判別できるように構成したことを特徴とする衣類に係るものである。
【0014】
また、前記表示は、前記石油系溶剤と混合した際には溶出したり変質したりせず、この石油系溶剤より洗浄力が強い塩素系溶剤若しくはフロン系有機溶剤と混合した際には溶出若しくは変質するインクを用いて形成したことを特徴とする請求項1記載の衣類に係るものである。
【0015】
また、前記衣類の取り扱い絵表示により指示された溶剤を用いてクリーニングした際には変化せず、この指示溶剤とは別の洗浄力の強い溶剤でクリーニングした際に消去されるか若しくは退色する文字,模様若しくは色彩等の表示を設けて、この表示の変化によりこの衣類が前記衣類の取り扱い絵表示により指示された溶剤よりも洗浄力が強い溶剤でクリーニングされたことを判別できるように構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の衣類に係るものである。
【0016】
また、前記表示は、衣類に設ける取り扱い絵表示タグ,品質表示タグ,PLタグ若しくはこの表示を行うために設けるタグなどの衣類の着用時には見えにくい位置に付設するタグ1に所定のインクにより表示して衣類に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衣類に係るものである。
【0017】
また、前記表示は、衣類に設ける取り扱い絵表示タグ,品質表示タグ,PLタグ若しくはこの表示を行うために設けるタグなどの衣類の着用時には見えにくい位置に付設するタグ1に所定のインクにより印刷して衣類に設けたことを特徴とする請求項4記載の衣類に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、衣類を、所定の溶剤(石油系溶剤)でクリーニングしたのか、前記所定の溶剤とは別の溶剤でクリーニングしたのかを、表示の変化の有無により簡単且つ確実に判別でき、これにより、衣類の変色や退色の原因究明を良好に行える実用性に秀れたクリーニング方式判別方法が実現できる衣類となる。
【0019】
請求項4記載の発明においては、判別する為の表示を、形成の簡単なタグに設けたから、衣類の生産性が悪化したりせず、この点においても実用性に秀れることになる。
【0020】
請求項5記載の発明においては、判別する為の表示を印刷により設けたから、この点においても本発明を簡単に実施することができ、それだけ実用性に秀れることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0022】
衣類に、石油系溶剤でクリーニングした際には変化せず、前記石油系溶剤とは別の溶剤(石油系溶剤より洗浄力が強い塩素系溶剤若しくはフロン系有機溶剤)でクリーニングした際に消去されるか若しくは退色する文字,模様若しくは色彩等の表示を設ける。
【0023】
この表示は、前記石油系溶剤でクリーニングした際には、当然ながら変化しないが、前記石油系溶剤とは別の溶剤でクリーニングした際には、当然ながら変化する(消去されるか若しくは退色する。)。
【0024】
従って、クリーニング後の表示を見るだけで、衣類が、所定の溶剤でクリーニングされたのか、別の溶剤でクリーニングされたのか、を簡単に判別することができる。
【0025】
尚、例えば、所定の溶剤でクリーニングした際に変化し、別の溶剤でクリーニングした際に変化しない表示であってもよさそうであるが、この場合には、別の溶剤でクリーニングした後に所定の溶剤でクリーニングすることで表示を変化させることができる。即ち、この方法では、所定の溶剤でクリーニングされたのか、別の溶剤でクリーニングされたのか、を正確に判別することができない。
【0026】
一方、本発明は、所定の溶剤とは別の溶剤でクリーニングした際にのみ表示が変化するから、一度でも別の溶剤でクリーニングすれば表示が変化することになり、よって、別の溶剤でクリーニングした事実を確実に判別することができる。
【実施例1】
【0027】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0028】
本実施例は、所定の溶剤、具体的には石油系溶剤でクリーニングした際には変色や退色等の劣化が発生せず、この石油系溶剤よりも強力な洗浄力を有する塩素系若しくはフロン系の有機溶剤の溶剤、具体的にはパークロルエチレンでクリーニングした際には変色や退色等の劣化が発生するおそれのある衣類について、この衣類が、前記石油系溶剤でクリーニングされたか、前記パークロルエチレンでクリーニングされたか、を判別するものである。
【0029】
衣類の一部に、前記石油系溶剤でクリーニングした際には変化せず、前記パークロルエチレンでクリーニングした際に消去されるか若しくは退色する文字,模様若しくは色彩等の表示を設ける。
【0030】
この表示は、衣類に直接印刷等によって設けても良いが、この場合、衣類の量産性が低下してしまうことが懸念される。従って、この表示は、一般に衣類に設ける取り扱い絵表示タグ(アイロン禁止等),品質表示タグ(素材がなにであるか等),PLタグ(PL法に基づく注意書き)若しくはこの表示を行うために設けるタグなどの衣類の着用時には見えにくい位置に付設するタグ1に設けると良い。このタグ1は、小さくて扱い易く、且つ、製造工程に、取り扱い絵,品質若しくはPL法等に基づく表示を印刷する工程が存在する為、前記石油系溶剤でクリーニングした際には変化せず、前記パークロルエチレンでクリーニングした際に変化する(消去されるか若しくは退色する)文字,模様若しくは色彩等の表示を簡単に設けることができる。
【0031】
また、この表示は、一度パークロルエチレンでクリーニングして変化した後には元の状態に戻らないようなものを採用すると良い。
【0032】
また、この表示は、印刷によって設けると良い。
【実施例2】
【0033】
本発明の具体的な実施例2について図面に基づいて説明する。
【0034】
また、この表示は、前記石油系溶剤と混合した際には溶出したり変質したりせず、前記パークロルエチレンと混合した際には溶出したり変質したりする性質のインク(例えば、ウレタン系のインク)を用いて形成すると良い。この場合、インクの性質により、前記表示は、前記石油系溶剤でクリーニングした際には変化せず、前記パークロルエチレンでクリーニングした際に変化(消去若しくは退色)を生じ得ることになる。
【0035】
また、このインクは、衣類に用いられる染料,艶出し剤若しくは蛍光剤と同じ成分(若しくは類似の成分)を含むものとすると良い。この場合、クリーニングの際に衣類の変色や退色が発生すると、即ち、クリーニングの際に衣類に付着している染料,艶出し剤若しくは蛍光剤が溶出若しくは変質すると、当然ながら、前記表示が確実に消去されるか若しくは退色することになる。
【0036】
また、このインクは、衣類の前記パークロルエチレン以外の変色や退色の原因となる溶剤によっても溶出したり変質したりするものを採用すると良い。
【0037】
また、このインクは、衣類の前記石油系溶剤以外の変色や退色を発生させない溶剤によって溶出したり変質したりしないものを採用すると良い。
【0038】
図面は、衣類のタグ1に前記表示を設けた場合を図示しており、衣類をパークロルエチレンでクリーニングした際、「注意」という文字が消去されるものである(図1は適正なクリーニングを行った後の状態、図2は不適正なクリーニングを行った後の状態、即ち、パークロルエチレンでクリーニングした後の状態を示す。)。
【0039】
また、この表示の全てが、消去若しくは退色してしまうと、元々の状態がどうであったかが争点になる可能性が考えられる。従って、例えば、表示の半分だけが消去されたり(図面に示す「注意」の文字の内、「注」だけが消去されたり、文字の上半分が消去されたり)するように構成すると良い。
【0040】
本実施例は上述のようにするから、衣類を、変色や退色の原因となるパークロルエチレンでクリーニングすると、前記表示が消去されるか若しくは退色することになり、よって、衣類の変色や退色がパークロルエチレンでのクリーニングによるものなのか否かを、前記表示がどのような状態となっているか確認するだけで簡単且つ確実に判別できる実用性に秀れた技術となる。
【0041】
尚、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施例の適正なクリーニングを行った後の説明図である。
【図2】本実施例の不適正なクリーニングを行った後の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類に、所定の溶剤でクリーニングした際には変化せず、前記所定の溶剤とは別の溶剤でクリーニングした際に消去,変色若しくは退色等の変化を生じ得る文字,模様若しくは色彩等の表示を設けて、この表示の変化の有無によりこの衣類が前記所定の溶剤でクリーニングされたか否かを判別できるように構成したことを特徴とする衣類。
【請求項2】
衣類に、洗浄力が弱い溶剤を用いてクリーニングした際には変化せず、洗浄力が強い溶剤でクリーニングした際に消去,変色若しくは退色等の変化を生じる文字,模様若しくは色彩等の表示を設けて、この表示の変化の有無によりこの衣類が前記洗浄力が弱い溶剤と前記洗浄力が強い溶剤とのどちらでクリーニングされたかを判別できるようにしたことを特徴とする衣類。
【請求項3】
前記衣類の取り扱い絵表示により指示された溶剤を用いてクリーニングした際には変化せず、この指示溶剤とは別の洗浄力の強い溶剤でクリーニングした際に消去,変色若しくは退色等の変化を生じる文字,模様若しくは色彩等の表示を設けて、この表示の変化によりこの衣類が前記衣類の取り扱い絵表示により指示された溶剤よりも洗浄力が強い溶剤でクリーニングされたことを判別できるように構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の衣類。
【請求項4】
前記表示は、衣類に設ける取り扱い絵表示タグ,品質表示タグ,PLタグ若しくはこの表示を行うために設けるタグなどの衣類の着用時には見えにくい位置に付設するタグに所定のインクにより表示して衣類に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衣類。
【請求項5】
前記表示は、衣類に設ける取り扱い絵表示タグ,品質表示タグ,PLタグ若しくはこの表示を行うために設けるタグなどの衣類の着用時には見えにくい位置に付設するタグに所定のインクにより印刷して衣類に設けたことを特徴とする請求項4記載の衣類。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類に、石油系溶剤でクリーニングした際には変化せず、この石油系溶剤より洗浄力が強い塩素系溶剤若しくはフロン系有機溶剤でクリーニングした際に消去されるか若しくは退色する文字,模様若しくは色彩等の表示を設けて、この表示の変化の有無によりこの衣類が前記石油系溶剤でクリーニングされたか否かを判別できるように構成したことを特徴とする衣類。
【請求項2】
前記表示は、前記石油系溶剤と混合した際には溶出したり変質したりせず、この石油系溶剤より洗浄力が強い塩素系溶剤若しくはフロン系有機溶剤と混合した際には溶出若しくは変質するインクを用いて形成したことを特徴とする請求項1記載の衣類。
【請求項3】
前記衣類の取り扱い絵表示により指示された溶剤を用いてクリーニングした際には変化せず、この指示溶剤とは別の洗浄力の強い溶剤でクリーニングした際に消去されるか若しくは退色する文字,模様若しくは色彩等の表示を設けて、この表示の変化によりこの衣類が前記衣類の取り扱い絵表示により指示された溶剤よりも洗浄力が強い溶剤でクリーニングされたことを判別できるように構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の衣類。
【請求項4】
前記表示は、衣類に設ける取り扱い絵表示タグ,品質表示タグ,PLタグ若しくはこの表示を行うために設けるタグなどの衣類の着用時には見えにくい位置に付設するタグに所定のインクにより表示して衣類に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衣類。
【請求項5】
前記表示は、衣類に設ける取り扱い絵表示タグ,品質表示タグ,PLタグ若しくはこの表示を行うために設けるタグなどの衣類の着用時には見えにくい位置に付設するタグに所定のインクにより印刷して衣類に設けたことを特徴とする請求項4記載の衣類。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−116346(P2006−116346A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6997(P2006−6997)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【分割の表示】特願2002−65000(P2002−65000)の分割
【原出願日】平成14年3月11日(2002.3.11)
【出願人】(391023758)オンヨネ株式会社 (7)