説明

表示シート、表示装置および電子機器

【課題】粒子同士のカップリングを防止し、高いコントラストを表現することのできる表示シート、この表示シートを用いた表示装置および電子機器を提供する。
【解決手段】表示装置20は、複数の収容部40を有する表示層400を備え、各収容部400は、複数の第1の粒子5aを第1の分散媒6aに分散してなる第1の分散液10aが封入された第1の収容部401と、第1の収容部401および第1の粒子5aと色彩が異なり正または負に帯電する複数の第2の粒子5bを第2の分散媒6bに分散してなる第2の分散液10bが封入された第2の収容部402とを有し、第1の収容部401、各第1の粒子5aおよび第1の分散媒6aの電荷の総和の絶対値が、各第2の粒子5bの電荷の総和の絶対値よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示シート、表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子ペーパーの画像表示部を構成するものとして、粒子の電気泳動を利用した電気泳動ディスプレイが知られている(例えば、特許文献1参照)。電気泳動ディスプレイは、優れた可搬性および省電力性を有しており、電子ペーパーの画像表示部として特に適している。
特許文献1には、対向配置された一対の電極と、これら一対の電極間に設けられ、複数のマイクロカプセルを平面状に配列してなるマイクロカプセル表示層とを有する電気泳動表示装置が記載されている。また、各マイクロカプセルは、第1のカプセルに、正に帯電した白色粒子と第2のカプセルとを分散媒に分散してなる分散液を封入することにより構成されており、さらに第2のカプセルには、負に帯電した黒色粒子を分散媒に分散してなる分散液が封入されている。
【0003】
特許文献1の電気泳動表示装置では、マイクロカプセル表示層に電界を作用させ、マイクロカプセルごとに、一方の電極側に白色粒子が偏在し、他方の電極側に第2のカプセル殻(黒色粒子)が偏在した状態と、一方の電極側に第2のカプセル殻(黒色粒子)が偏在し、他方の電極側に白色粒子が偏在した状態とを選択することにより、所望の白黒画像を表示するように構成されている。このような構成とすることにより、白色粒子と黒色粒子とのカップリング(電気的な吸着)を抑制している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電気泳動表示装置では、黒色粒子が負に帯電しているため、第2のカプセル全体として負に帯電しているに等しい。そのため、実質的に、負に帯電し、粒子径の大きい黒色の粒子を使用しているに過ぎず、白色粒子と第2のカプセルとのカップリングが発生してしまう(すなわち、前述したようなカップリングの抑制効果を発揮することができない)。そのため、特許文献1に記載の電気泳動表示装置では、高いコントラストを表現することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−206145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、粒子同士のカップリングを防止し、高いコントラストを表現することのできる表示シート、この表示シートを用いた表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の表示シートは、複数の収容部を有する表示層を備える表示シートであって、
各前記収容部は、複数の第1の粒子を第1の分散媒に分散してなる第1の分散液が封入された少なくとも1つの第1の収容部と、少なくとも1つの前記第1の収容部および前記第1の粒子と色彩が異なり正または負に帯電する複数の第2の粒子を第2の分散媒に分散してなる第2の分散液が封入された第2の収容部とを有し、
前記第1の収容部、前記複数の第1の粒子および前記第1の分散媒の電荷の総和の絶対値が、前記複数の第2の粒子の電荷の総和の絶対値よりも小さいことを特徴とする。
これにより、粒子同士のカップリングを防止し、高いコントラストを表現することのできる表示シートを提供することができる。
【0008】
本発明の表示シートでは、前記第1の収容部、前記複数の第1の粒子および前記第1の分散媒の電荷の総和は、0であることが好ましい。
これにより、より確実に、粒子同士のカップリングを防止することができる。
本発明の表示シートは、複数の収容部を有する表示層を備える表示シートであって、
各前記収容部は、複数の第1の粒子を第1の分散媒に分散してなる第1の分散液が封入された少なくとも1つの第1の収容部と、少なくとも1つの前記第1の収容部および前記第1の粒子と色彩が異なり正または負に帯電する複数の第2の粒子を第2の分散媒に分散してなる第2の分散液が封入された第2の収容部とを有し、
前記第1の収容部、前記複数の第1の粒子および前記第1の分散媒の電荷の総和は、略0であることを特徴とする。
これにより、粒子同士のカップリングを防止し、高いコントラストを表現することのできる表示シートを提供することができる。
【0009】
本発明の表示シートでは、前記表示層に印加する電界パターンを選択することにより、前記第2の粒子が前記表示層の一方の面側に偏在する状態と、前記第2の粒子が前記表示層の他方の面側に偏在する状態とを選択することができることが好ましい。
これにより、第1の粒子の色と、第2の粒子の色との2色で画像を表示することができる。
【0010】
本発明の表示シートでは、前記第1の収容部は、前記第2の分散媒中に浮遊していることが好ましい。
これにより、第2の分散媒中の第2の粒子の泳動が阻害されるのを防止することができる。そのため、表示シートは、優れた表示特性を発揮することができる。
本発明の表示シートでは、前記表示層の平面視にて、第1の収容部の面積をS1とし、第2の収容部の面積をS2としたとき、0.4S2≦S1≦0.9S2なる関係を満足することが好ましい。
これにより、第1の粒子の色を表示した状態にて、第1の収容部によって、より確実に、第2の粒子を塞ぎ隠すことができる(すなわち、第2の粒子が視認されてしまうのを防止することができる)。さらには、第2の粒子の移動空間を比較的大きく確保することができるため、第2の粒子を円滑に泳動させることができる。
【0011】
本発明の表示シートでは、前記第1の収容部および前記第2の収容部のすくなくとも一方は、マイクロカプセルであることが好ましい。
これにより、収容部の構成が簡単となる。
本発明の表示シートでは、前記第1の分散媒および前記第2の分散媒の少なくとも一方は、水系の分散媒であり、他方は、非水系の分散媒であることが好ましい。
これにより、収容部の製造が簡単となる。
【0012】
本発明の表示シートでは、前記第1の粒子は、白色の粒子であることが好ましい。
これにより、明るい(反射率の高い)白色を表示することができる。すなわち、表示コントラストを高めることができる。
本発明の表示シートでは、前記第1の粒子は、非帯電粒子であることが好ましい。
これにより、より明るい白色を表示することができる。
【0013】
本発明の表示シートでは、前記第2の収容部には、複数の前記第1の収容部が収容されていることが好ましい。
これにより、第2の収容部内で複数の第1の収容部が分散するため、第2の収容部内での第1の粒子の分散性を向上させることができる。
本発明の表示装置は、本発明の表示シートを備えることを特徴とする。
これにより、粒子同士のカップリングを防止し、高いコントラストを表現することのできる表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、粒子同士のカップリングを防止し、高いコントラストを表現することのできる電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の表示装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示す表示装置が有するマイクロカプセルの製造方法を示す図である。
【図3】図1に示す表示装置が有するマイクロカプセルの製造方法を示す図である。
【図4】図1に示す表示装置の作動を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる表示装置が有するマイクロカプセルを示す断面図である。
【図6】本発明の表示装置の第3実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の表示装置の第4実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の表示シート、表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
1.表示装置
まず、本発明の表示シートを組み込んだ表示装置(本願発明の表示装置)について説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の表示装置の第1実施形態を示す断面図、図2および図3は、それぞれ、図1に示す表示装置が有するマイクロカプセルの製造方法を示す図、図4は、図1に示す表示装置の作動を示す断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1および図2中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0017】
図1に示す表示装置(電気泳動表示装置)20は、表示シート(フロントプレーン)21と、回路基板(バックプレーン)22とを有している。
表示シート21は、平板状の基部2および基部2の下面に設けられた第2の電極4を備える基板12と、基板12上に設けられ、マイクロカプセル(収容部)40とバインダー41とで構成された表示層400と、基板12と回路基板22との間の間隙を気密的に封止する封止部7とを有している。
一方、回路基板22は、平板状の基部1と基部1の上面に設けられた複数の第1の電極3とを備える対向基板11と、この対向基板11(基部1)に設けられた、例えばTFT等のスイッチング素子を含む回路(図示せず)とを有している。
【0018】
以下、各部の構成について順次説明する。
基部1および基部2は、それぞれ、シート状(平板状)の部材で構成され、これらの間に配置される各部材を支持および保護する機能を有する。各基部1、2は、それぞれ、可撓性を有するもの、硬質なもののいずれであってもよいが、可撓性を有するものであるのが好ましい。可撓性を有する基部1、2を用いることにより、可撓性を有する表示装置20、すなわち、例えば電子ペーパーを構築する上で有用な表示装置20を得ることができる。
【0019】
各基部(基材層)1、2を可撓性を有するものとする場合、その構成材料としては、それぞれ、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のポリエステル、ポリエチレン等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
このような基部1、2の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、可撓性を有するものとする場合、20μm以上、500μm以下程度であるのが好ましく、25μm以上、250μm以下程度であるのがより好ましい。これにより、表示装置20の柔軟性と強度との調和を図りつつ、表示装置20の小型化(特に、薄型化)を図ることができる。
【0021】
これらの基部1、2の表示層400側の面、すなわち、基部1の上面および基部2の下面に、それぞれ、層状(膜状)をなす第1の電極3および第2の電極4が設けられている。本実施形態では、第2の電極4が共通電極とされ、第1の電極3がマトリックス状(行列状)に分割された個別電極(スイッチング素子に接続された画素電極)とされており、第2の電極4と1つの第1の電極3とが重なる部分が1画素を構成する。なお、第2の電極4も、第1の電極3と同様に複数に分割するようにしてもよい。また、第1の電極3がストライプ状に分割され、第2の電極も同様にストライプ状に分割され、これらが交差するように配置された形態であってもよい。
【0022】
各電極3、4の構成材料としては、それぞれ、実質的に導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、金、銀、銅、アルミニウムまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンブラック等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリフルオレンまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等のマトリックス樹脂中に、NaCl、Cu(CFSO等のイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム酸化物(IO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような電極3、4の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、0.01μm以上、10μm以下程度であるのが好ましく、0.02μm以上、5μm以下程度であるのがより好ましい。
【0023】
ここで、各基部1、2および各電極3、4のうち、表示面121側に配置される基部および電極(本実施形態では、基部2および第2の電極4)は、それぞれ、光透過性を有するもの、すなわち、実質的に透明(無色透明、有色透明または半透明)とされる。これにより、後述する電気泳動分散液10中における電気泳動粒子5の状態、すなわち表示装置20に表示された情報(画像)を目視により容易に認識することができる。
【0024】
表示シート21では、第2の電極4の下面に接触して、表示層400が設けられている。表示層400は、複数のマイクロカプセル(収容部)40がバインダー41により保持された構成をなしている。
図1に示すように、マイクロカプセル40は、対向基板11と基板12との間に、縦横に並列するように単層で(厚さ方向に重なることなく1個ずつ)、かつ、表示層400の厚さ方向全体に配設されている。すなわち、マイクロカプセル40は、表示層400において、その面方向に隣接するもの同士が互いに接触し、かつ、厚さ方向に積層することなく配列している。そして、以上のように配置された各マイクロカプセル40は、対向基板11と基板12とで挟持されても、上下方向に圧縮(圧迫)されることなく、ほぼ球状(球形状)をなしている。
【0025】
このようなマイクロカプセル(収容部)40は、第1のマイクロカプセル(第1の収容部)401と第2のマイクロカプセル(第2の収容部)402とを有しており、1つの第1のマイクロカプセル401が第2のマイクロカプセル402内に封入されている。このように、第1の収容部および第2の収容部を共にマイクロカプセルによって構成することにより、収容部の構成が簡単となる。
【0026】
具体的には、第1のマイクロカプセル401は、カプセル本体401aを有しており、このカプセル本体401a内に、複数の白色粒子(第1の粒子)5aを第1の分散媒(液相分散媒)6aに分散(懸濁)してなる第1の分散液10aが封入されている。一方、第2のマイクロカプセル402は、カプセル本体402aを有しており、このカプセル本体402a内に、複数の着色粒子(第2の粒子)5bと1つの第1のマイクロカプセル401とを第2の分散媒(液相分散媒)に分散してなる第2の分散液10bが封入されている。
【0027】
マイクロカプセル40の粒子径(平均粒子径)、すなわち第2のマイクロカプセル402の粒子径(平均粒子径)は、特に限定されないが、5μm以上、300μm以下程度であるのが好ましく、10μm以上、200μm以下程度であるのがより好ましく、10μm以上、100μm以下程度であるのがさらに好ましい。マイクロカプセル40の粒子径が5μm未満であると、第2のマイクロカプセル402内に収容された第2の粒子5bの色相、粒径および量(数)等にもよるが、充分な表示濃度が得られないおそれがある。逆に、マイクロカプセル40の粒子径が300μmを超えると、第2のマイクロカプセル402の構成(構成材料等)にもよるが、マイクロカプセル40のカプセル強度が低下することがある。また、第2のマイクロカプセル402に封入した分散液10b中における第2の粒子5bの移動特性(電気泳動特性)が充分に発揮されず、表示のための起動電圧も高くなるおそれがある。
【0028】
また、マイクロカプセル40の粒子径の変動係数(粒度分布の狭さ)、すなわち第2のマイクロカプセル402の粒子径の変動係数は、特に限定されないが、15%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましく、0%であるのがさらに好ましい。マイクロカプセル40の粒子径の変動係数が25%を超えると、有効な粒子径を有するマイクロカプセル40の存在が少なく、多数のマイクロカプセル40を用いる必要が生じることがある。また、第1の電極3および第2の電極4の間に、同一の電圧を印加した場合でも、作用する電界の大きさが複数のマイクロカプセル40間でそれぞれ異なってしまうたた、表示特性が低下するおそれがある。
【0029】
第1のマイクロカプセル401のカプセル本体401aおよび第2のマイクロカプセル402のカプセル本体402aの構成材料としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、ゼラチン、アラビアゴムとゼラチンとの複合材料、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリエーテルのような各種樹脂材料が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、カプセル本体401a、402aは、メラミン系樹脂を主材料して構成されているのが好ましい。メラミン系樹脂は3次元網目構造を形成することから、かかる樹脂を用いて形成されたカプセル本体401a、402aは、優れた硬度を有し、球形を維持できる。
前述したように、カプセル本体401a内に封入された第1の分散液10aは、白色粒子5aを第1の分散媒6aに分散してなる。また、カプセル本体402a内に封入された第2の分散液10bは、第1のマイクロカプセル401および着色粒子5bを第2の分散媒6bに分散してなる。
【0030】
第1の分散媒6aとしては、カプセル本体401aに対する溶解性が低く、かつ比較的高い絶縁性を有するものが好適に使用される。また、第2の分散媒6bとしては、カプセル本体401a、402aに対する溶解性が低く、かつ比較的高い絶縁性を有するものが好適に使用される。これら分散媒6a、6bとしては、特に限定されず、水系溶媒、非水系溶媒を用いることができる。
【0031】
水系溶媒としては、例えば、各種水(例えば、蒸留水、純水、イオン交換水、RO水等)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール類等が挙げられる。低級アルコール類には、メトキシ基等の疎水性の低い置換基が導入されていてもよい。また水系溶媒としては、水と親水性有機溶媒との混合溶媒も挙げられる。混合溶媒に混合される親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等のエステル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
非水系溶媒としては、オクタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸メチル等のエステル類、ペンタン等の脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン等の芳香族復素環類、アセトニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、カルボン酸塩またはその他の各種油類等の非水系溶媒(油系溶媒)が挙げられる。
【0033】
また、分散媒6a、6b(分散液10a、10b)中には、必要に応じて、例えば、電解質、アルケニルコハク酸エステルのような界面活性剤(アニオン性またはカチオン性)、金属石鹸、樹脂材料、ゴム材料、油類、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。また、分散媒6a、6bを着色する場合には、分散媒6a、6bに、必要に応じて、アントラキノン系染料、アゾ系染料、インジゴイド系染料等の各種染料を溶解するようにしてもよい。
【0034】
このように、第1の分散媒6aおよび第2の分散媒6bとしては、水系溶媒、非水系溶媒のいずれを用いてもよいが、第1の分散媒6aおよび第2の分散媒6bの一方を水系溶媒とし、他方を非水系溶媒とすることが好ましい。すなわち、第1の分散媒6aを水系溶媒とすれば、第2の分散媒6bを非水系溶媒とするのが好ましく、反対に、第1の分散媒6aを非水系溶媒とすれば、第2の分散媒6bを水系溶媒とするのが好ましい。第1の分散媒6aおよび第2の分散媒6bをこのような組み合わせとすることにより、後述するように、乳化重合法を用いて、簡単に、マイクロカプセル40(カプセル本体の中に別のマイクロカプセルを封入した構成のマイクロカプセル)を製造することができる。
【0035】
第1の分散媒6aに分散された白色粒子5aおよび第2の分散媒6bに分散された着色粒子5bのうちの、少なくとも着色粒子5bは、正または負に帯電する帯電粒子(電気泳動粒子)である。すなわち、白色粒子5aは、電荷を有さない非帯電粒子であるか、正または負に帯電する帯電粒子(電気泳動粒子)である。白色粒子5aおよび着色粒子5bが共に帯電粒子である場合には、これらは、互いに反対の極に帯電している。すなわち、白色粒子5aが正に帯電している場合には、着色粒子5bが負に帯電し、白色粒子5aが負に帯電している場合には、着色粒子5bが正に帯電している。
【0036】
ここで、白色粒子5aとして、帯電粒子を用いても非帯電粒子を用いてもよいが、非帯電粒子を用いることが好ましい。非帯電粒子は、第1の電極3および第2の電極4間に電圧が印加されても、当該電圧印加により発生する電界の作用を受けずに、そのままの状態を維持する。そのため、後述する白色表示状態の時に、白色粒子5aが第1の分散媒6a中に分散したまま状態となり、より明るい白色(すなわち、より反射率の高い白色)を表示することができる。その結果、表示装置20の表示コントラストを高めることができる。
【0037】
白色粒子5aおよび着色粒子5bは、それぞれ、所望の電荷を有することとなれば、いかなるものをも用いることができ、特に限定はされないが、顔料粒子、樹脂粒子、セラミックス粒子、金属粒子、金属酸化物粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に使用される。これらの粒子は、製造が容易であるとともに、荷電の制御を比較的容易に行うことができるという利点を有している。
【0038】
顔料粒子を構成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック、亜クロム酸銅等の黒色顔料、二酸化チタン、三酸化アンチモン、硫化亜鉛、亜鉛華等の白色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー等の黄色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、紺青、群青、コバルトブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
また、樹脂粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ロジン樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、スチレンとアクリロニトリルを共重合したAS樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。
【0040】
また、白色粒子5aの第1の分散媒10a中での分散性を向上させることを目的に、第1の分散媒10aと相溶性の高い高分子を物理的に吸着させたり、化学的に結合させたりすることができる。これらの中でも、白色粒子5aの表面からの離脱着の問題から、前記高分子が化学的に結合しているものが特に好ましい。かかる構成とすれば、白色粒子5aの見かけの比重が小さくなる方向に作用して、白色粒子5aの第1の分散媒6aでの親和性、すなわち分散性を向上させることができる。このことは、着色粒子5bの第2の分散媒10b中での分散性を向上させる場合についても同様である。
【0041】
また、白色粒子5aの形状は、特に限定されないが、球形状であるのが好ましい。白色粒子5aは、第1の分散媒6a中での分散性を考慮した場合、より小さいものが好適に用いられ、具体的には、その平均粒径が、10nm以上、500nm以下程度であるのが好ましく、20nm以上、300nm以下程度であるのがより好ましい。白色粒子5aの平均粒径を前記範囲とすることにより、白色粒子5a同士の凝集や、第1の分散媒6a中における沈降を確実に防止して、第1の分散媒6a中に分散させることができ、その結果、表示装置20の表示品質の劣化を好適に防止することができる。着色粒子5bの形状や粒径についても、白色粒子5aと同様である。
【0042】
なお、本実施形態のように、2種の異なる粒子を用いる場合、2種の粒子の平均粒径を異ならせること、特に、白色粒子5aの平均粒径を着色粒子5bの平均粒径より大きく設定するのが好ましい。これにより、表示装置20の表示コントラストをより向上させることや、保持特性を向上させることができる。具体的には、着色粒子5bの平均粒径を20nm以上、100nm以下程度、白色粒子5aの平均粒径を150nm以上、300nm以下程度とするのが好ましい。
【0043】
また、白色粒子5aの比重は、第1の分散媒6aの比重とほぼ等しくなるように設定されているのが好ましい。これにより、白色粒子5aは、第1の分散媒6a中において一定の位置に長時間滞留することができる。そのため、白色表示状態の時に、白色粒子5aが第1の分散媒6a中に分散した状態となり、より明るい白色(すなわち、より反射率の高い白色)を表示することができる。
【0044】
これと同様に、着色粒子5bの比重は、第2の分散媒6bの比重とほぼ等しくなるように設定されているのが好ましい。これにより、第1の電極3および第2の電極4間への電圧の印加を停止した後においても、第2の分散媒6b中において一定の位置に長時間滞留することができる。すなわち、表示装置20にメモリー性を付与することができ、表示面121に表示された情報が長時間保持されることとなる。
【0045】
このようなマイクロカプセル40においては、第1のマイクロカプセル401全体の電荷、すなわち、カプセル本体401aが有する電荷、各白色粒子5aが有する電荷および第1の分散媒6aが有する電荷の総和の絶対値(以下、単に「第1のマイクロカプセル401の電荷」とも言う。)が、各着色粒子5bが有する電荷の総和の絶対値よりも小さいことが好ましい。さらには、第1のマイクロカプセル401の電荷が0(ゼロ)であることがより好ましい。これにより、第2の分散媒6b中にて、第1のマイクロカプセル401と着色粒子5bとのカップリング(静電力による吸着、凝集)を防止することができる。そのため、後述するように、表示装置20は、高い表示コントラストを発揮することができる。
【0046】
また、表示層400の平面視にて、第1のマイクロカプセル401の面積をS1とし、第2のマイクロカプセル402の面積をS2としたとき、S1は、0.4S2≦S1≦0.9S2なる関係を満足するのが好ましく、0.6S2≦S1≦0.8S2なる関係を満足するのがより好ましい。このような範囲を満足することにより、後述する白色表示状態となっているマイクロカプセル40を表示面121側から見たときに、第1のマイクロカプセル401によって、確実に、着色粒子5bを塞ぎ隠すことができる(すなわち、白色表示状態の時に、着色粒子5bが視認されてしまうのを防止することができる)。さらには、着色粒子5bの移動空間を比較的大きく確保することができるため、着色粒子5bを円滑に泳動させることができる。そのため、白色表示状態の時に、より明るい白色を表示することができ、その結果、表示装置20の表示コントラストを高めることができる。また、表示色切り替えの反応速度の低下を防止することができる。
【0047】
また、第1のマイクロカプセル410は、第2のマイクロカプセル402のカプセル本体402aの内面と接触せずに、第2の分散媒6b中に浮遊していることが好ましい。これにより、第2の分散媒6b中の着色粒子5bの泳動がスムーズになる。具体的には、仮に、第1のマイクロカプセル401とカプセル本体402aとが接触していると、その接触部に着色粒子5bがぶつかって移動が阻止されたり、接触部に着色粒子5bが挟まってしまったりして、着色粒子5bを所望の位置まで泳動させることができない場合が発生する。第1のマイクロカプセル410が、第2の分散媒6b中に浮遊していれば上述の問題が発生しないため、表示装置20は、優れた表示特性を発揮することができる。なお、第1のマイクロカプセル410を、第2のマイクロカプセル402と接触させずに、第2の分散媒6b中に浮遊させるためには、第1のマイクロカプセル401全体(すなわち、カプセル本体401aと分散液10aとを合わせたもの)の比重を、第2の分散媒6bの比重と等しくすることが好ましい。
このようなマイクロカプセル40は、例えば、次のような乳化重合法により製造することができる。
【0048】
まず、図2(a)に示すように、非水系の第1の分散媒6aに複数の白色粒子5aを分散させてなる非水系分散液91を作成する。次いで、非水系分散液91と水系の溶媒92(例えば、水や、水と親水性有機溶媒との混合溶媒)とを混合し、第1の混合液93を得る。次いで、第1の混合液93を攪拌することにより、図2(b)に示すように、非水系分散液91が水系溶媒92中で液滴(小滴)状となって分散した状態とする。このような攪拌を続けながら、第1の混合液93に第1の重合性界面活性剤を加えることにより、図2(c)に示すように、液滴状の非水系分散液91の表面付近に樹脂層(カプセル本体401a)が形成される。これにより、第1のマイクロカプセル401が得られる。なお、第1の重合性界面活性剤は、カプセル本体401aの構成材料に応じて、アニオン性のもの、カチオン性のものなど、適宜選択することができる。
【0049】
次いで、図3(a)に示すように、水系の第2の分散媒6bに、前述のようにして製造した複数の第1のマイクロカプセルおよび着色粒子5bを分散させてなる水系分散液94を作成する。次いで、水系分散液94と非水系の溶媒95とを混合し、第2の混合液96を得る。次いで、第2の混合液96を攪拌することにより、図3(b)に示すように、水系分散液94が非水系溶媒95中で液滴(小滴)状となって分散した状態とする。このような攪拌を続けながら、第2の混合液96に第2の重合性界面活性剤を加えることにより、図3(c)に示すように、液滴状の水系分散液94の表面付近に樹脂層(カプセル本体402a)が形成される。これにより、第2のマイクロカプセル402が得られるとともに、マイクロカプセル40が得られる。なお、第2の重合性界面活性剤は、カプセル本体402aの構成材料に応じて、アニオン性のもの、カチオン性のものなど、適宜選択することができる。
【0050】
なお、上述の製造方法では、第1の分散媒6aおよび溶媒95を非水系とし、第2の分散媒6bおよび溶媒92を水系としたが、逆に、第1の分散媒6aおよび溶媒95を水系とし、第2の分散媒6bおよび溶媒92を非水系としてもよい。これによっても、上記と同様にマイクロカプセル40を製造することができる。
このように、第1の分散媒6aおよび第2の分散媒6bのうちの一方を水系の分散媒とし、他方を非水系の分散媒とすることにより、乳化重合法を用いて、簡単に、マイクロカプセル40を製造することができる。
【0051】
表示層400に含まれるバインダー41は、例えば、基板11と基板12とを接合する目的、基板11と基板12との間にマイクロカプセル40を固定する目的、マイクロカプセル40同士を固定する目的、第1の電極3および第2の電極4同士間の絶縁性を確保する目的等により供給される。これにより、表示装置20の耐久性および信頼性をより向上させることができる。
【0052】
バインダー41には、基板11、第2の電極4およびカプセル本体402a(第2のマイクロカプセル402)との親和性(密着性)に優れ、かつ、絶縁性に優れる樹脂材料(絶縁性または微小電流のみが流れる樹脂材料)が好適に使用される。
このようなバインダー41としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーン系樹脂、シリコーンアルキド系樹脂、シリコーンウレタン系樹脂、シリコーンポリエステル系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂のような合成樹脂バインダー、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタンジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムのような合成ゴムまたは天然ゴムバインダー、硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースのような熱可塑性または熱硬化性高分子バインダー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
これらのバインダー41のうち、マイクロカプセル40の分散性が比較的良好であり、さらに、基板11、基板12およびマイクロカプセル40との密着性に優れる点で、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂が好ましく用いられ、さらに、(メタ)アクリル系樹脂が特に好ましく用いられる。
【0054】
さらに、基板12と基板11との間であって、それらの縁部に沿って、封止部7が設けられている。この封止部7により、第2の電極4および表示層400が気密的に封止されている。これにより、表示装置20(表示シート21)内への水分の浸入を防止して、表示装置20の表示性能の劣化をより確実に防止することができる。
封止部7の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂のような熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂のような熱硬化性樹脂等の各種樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、封止部7は、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
【0055】
2.表示装置の動作方法
このような表示装置20は、次のようにして作動する。
表示装置20の第1の電極3と第2の電極4との間に電圧を印加すると、これらの間に電界が生じる。この電界にしたがって、着色粒子5bは、電極3、4のいずれかに向かって移動(電気泳動)する。以下では、白色粒子5aとして非帯電粒子を用い、着色粒子(黒色粒子)5bとして負荷電の電気泳動粒子を用いた場合について代表して説明する。
【0056】
・白色表示状態
図4(A)に示すように、第1の電極3を正電位とすると、着色粒子5bは、第1の電極3側に移動して、第1の電極3に集まる。一方、白色粒子5aは、電解の作用を受けないため、第1のマイクロカプセル401中で分散状態を維持する。このため、表示装置20を上方(表示面121側)から見ると、白色粒子5aの色が見えること、すなわち、白色が見えることになる。
【0057】
・黒色表示状態
これとは逆に、図4(B)に示すように、第1の電極3を負電位とすると、着色粒子5bは、第1のマイクロカプセル401を回り込むようにして第2の電極4側に移動し、第2の電極4に集まる。このため、表示装置20を上方(表示面121側)から見ると、着色粒子5bの色が見えること、すなわち、黒色が見えることになる。
【0058】
なお、着色粒子5bは、前述のように、第1のマイクロカプセル40を回り込むよう、すなわち、第1のマイクロカプセル401の外壁面または第2のマイクロカプセル402の内壁面に沿うようにして第2の電極4側に移動するため、先に第2の電極4に到達した着色粒子4bから順に第2のマイクロカプセル402の内壁面に沿って平面的に広がるようにして集まるため、言い換えれば、1箇所に重なりあうように集まるのが防止されるため、より鮮明な黒色を表示することができる。
このような構成において、電極3、4間の電位差等を画素ごとに適宜設定することにより、表示装置20の表示面121には、白色粒子5aおよび着色粒子5bの色の組み合わせ等に応じた所望の画像が表示される。
【0059】
このように、本実施形態では、第1のマイクロカプセル401に封入される粒子を白色とし、第2のマイクロカプセル402に封入される粒子を黒色としているが、これとは反対に、第1のマイクロカプセル401に封入される粒子を黒色とし、第2のマイクロカプセル402に封入される粒子を白色としてもよい。しかしながら、より明るい白色を表示でき、表示コントラストを高くすることができるというメリットから、本実施形態の構成、すなわち、第1のマイクロカプセル401に封入される粒子を白色とし、第2のマイクロカプセル402に封入される粒子を黒色とするのが好ましい。
【0060】
具体的に説明すれば、本実施形態の白色表示状態では、白色粒子5aが第1の分散媒6a中に分散した状態となる。このように、分散媒6a中に分散している白色粒子5aによって光を散乱させて白色表示を行うことにより、分散媒6a中で光を効果的に散乱させることができ、優れた白色表示特性を発揮することができる。よって、本実施形態の表示装置20は、表示コントラストをより高くすることができる。一方、本実施形態の粒子5a、5bの色を反転した場合、白色表示状態では、白色の粒子(本実施形態の着色粒子5bに相当する粒子)が第2のマイクロカプセル402内の第2の電極4側に集まった状態となる。このように複数の粒子が集合した状態では、光を効果的に散乱させることができず、分散している場合と比較して表示される白色が暗くなる。このようなことから、本実施形態のように、第1のマイクロカプセル401に封入される粒子を白色とし、第2のマイクロカプセル402に封入される粒子を黒色とするのが好ましい。
【0061】
ここで、この表示装置20では、表示層400中において、マイクロカプセル40が、その面方向に隣接するもの同士が互いに接触し、かつ、厚さ方向に積層することなく配列しているので、かかる表示層400を備える表示装置20は、高いコントラストを発揮することができる。
また、表示装置20では、表示層400に含有されるマイクロカプセル40が球状をなして存在していることにより、耐圧性および耐ブリード性に優れている。したがって、このように表示装置20を作動させているとき、もしくは、表示装置20を保存している間に、表示装置20に衝撃が加わったり、表示面が押圧されたりした場合でも、マイクロカプセル40の破壊や電気泳動分散液10の散逸が防止され、長期間安定に動作することができる。
【0062】
<第2実施形態>
次に、本発明の表示装置の第2実施形態について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態にかかる表示装置が有するマイクロカプセルを示す断面図である。
以下、第2実施形態の表示装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0063】
本発明の第2実施形態にかかる表示装置は、第2のマイクロカプセル(第2の収容部)内に収容された第1のマイクロカプセルの数が異なる以外は、第1実施形態の表示装置と同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図5に示すように、本実施形態のマイクロカプセル40では、複数のマイクロカプセル40が、黒色粒子5bとともに第2の分散媒6bに分散した状態で第2のマイクロカプセル402内に封入されている。
【0064】
このように、第2のマイクロカプセル402に、複数の第1のマイクロカプセル401を封入すると、複数の第1のマイクロカプセル401が第2のマイクロカプセル402中で分散するため、結果として、第2のマイクロカプセル402内での白色粒子5aの分散性が向上する。その結果、より鮮明な白色を表示することができる。
特に、第1のマイクロカプセル40の電荷がゼロの場合には、第1のマイクロカプセル40同士の電気的な反発が生じず、第2のマイクロカプセル402内で複数の第1のマイクロカプセル40を均一に分散させることができる。その結果、上記効果がより顕著となる。
【0065】
第2のマイクロカプセル402内に封入する第1のマイクロカプセル401の数としては、第1のマイクロカプセル40の大きさによっても異なるが、2個以上、10個以下程度であるのが好ましい。
このような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0066】
<第3実施形態>
次に、本発明の表示装置の第3実施形態について説明する。
図6は、本発明の表示装置の第3実施形態を示す断面図である。
以下、第3実施形態の表示装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0067】
本発明の第3実施形態にかかる表示装置は、第2のマイクロカプセル(第2の収容部)の形状が異なる以外は、第2実施形態の表示装置と同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図6に示すように、本実施形態の第2のマイクロカプセル402’(カプセル本体402a’)は、水平方向に拡がった扁平形状となっている。換言すれば、第2のマイクロカプセル402’は、石垣構造を形成している。このような構成の表示層400’を有する表示装置20’では、有効表示領域が増大し、コントラストが良好なものとなる。また、着色粒子5bの上下方向への移動距離を短縮することができるため、表示色の切り替え速度の向上を図ることもできる。
【0068】
なお、このような形状の第2のマイクロカプセル402’は、例えば、球形のカプセル本体402a’を基板11、12で挟持し、上下方向に圧縮することにより形成することができる。
このような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0069】
<第4実施形態>
次に、本発明の表示装置の第4実施形態について説明する。
図7は、本発明の表示装置の第4実施形態を示す断面図である。
以下、第4実施形態の表示装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0070】
本発明の第4実施形態にかかる表示装置は、第2の収容部の構成が異なる以外は、第1実施形態の表示装置と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図7に示すように、本実施形態の第2の収容部は、マイクロカプセルではなく、セル403で構成されている。表示層400”は、複数の凹部404aを有する基体404と、基体404の各凹部404aの開口を覆うように設けられた蓋体405とを有しており、セル403は、各凹部404aを分散液10bで満たした後、蓋体405で蓋をする(封止する)ことにより形成されている。
【0071】
基体404および蓋体405の構成材料としては、比較的絶縁性の高い材料を用いることができ、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーなどが挙げられる。また、蓋体405には、実質的に無色透明なものが用いられる。
このような第4実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0072】
以上説明したような表示装置20は、それぞれ、各種電子機器に組み込むことができる。電気泳動表示装置を備える本発明の電子機器としては、例えば、電子ペーパー、電子ブック、テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等を挙げることができる。
これらの電子機器のうちから、電子ペーパーを例に挙げ、具体的に説明する。
【0073】
図8は、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
図8に示す電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、前述したような表示装置20で構成されている。
【0074】
次に、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態について説明する。
図9は、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。このうち、図9中(a)は断面図、(b)は平面図である。
図9に示すディスプレイ(表示装置)800は、本体部801と、この本体部801に対して着脱自在に設けられた電子ペーパー600とを備えている。なお、この電子ペーパー600は、前述したような構成、すなわち、図8に示す構成と同様である。
【0075】
本体部801は、その側部(図9中、右側)に電子ペーパー600を挿入可能な挿入口805が形成され、また、内部に二組の搬送ローラ対802a、802bが設けられている。電子ペーパー600を、挿入口805を介して本体部801内に挿入すると、電子ペーパー600は、搬送ローラ対802a、802bにより挟持された状態で本体部801に設置される。
【0076】
また、本体部801の表示面側(図9(b)中、紙面手前側)には、矩形状の孔部803が形成され、この孔部803には、透明ガラス板804が嵌め込まれている。これにより、本体部801の外部から、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を視認することができる。すなわち、このディスプレイ800では、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を、透明ガラス板804において視認させることで表示面を構成している。
【0077】
また、電子ペーパー600の挿入方向先端部(図9中、左側)には、端子部806が設けられており、本体部801の内部には、電子ペーパー600を本体部801に設置した状態で端子部806が接続されるソケット807が設けられている。このソケット807には、コントローラー808と操作部809とが電気的に接続されている。
このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600は、本体部801に着脱自在に設置されており、本体部801から取り外した状態で携帯して使用することもできる。これにより、利便性が向上する。
【0078】
以上、本発明の表示シート、表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
また、前述した実施形態では、第1の粒子が白色をなし、第2の粒子が黒色をなす形態について説明したが、第1の粒子および第2の粒子の色としては、互いに色が異なっていれば、特に限定されず、例えば、灰色等のむ彩色や、赤、青、緑等の有彩色や、金、銀等の金属色であってもよい。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色の組み合わせとしても、互いに色が異なっていれば、特に限定されない。
【符号の説明】
【0079】
1‥‥基部 2‥‥基部 3‥‥第1の電極 4‥‥第2の電極 4b‥‥着色粒子 5a‥‥白色粒子(第1の粒子) 5b‥‥着色粒子(第2の粒子) 6a‥‥第1の分散媒 6b‥‥第2の分散媒 7‥‥封止部 10a、10b‥‥分散液 11‥‥対向基板 12‥‥基板 121‥‥表示面 20、20’‥‥表示装置 21‥‥表示シート 22‥‥回路基板 400、400’、400”‥‥表示層 40‥‥マイクロカプセル 401‥‥第1のマイクロカプセル 401a‥‥カプセル本体 402、402’‥‥第2のマイクロカプセル 402a‥‥カプセル本体 403‥‥セル 404‥‥基体 404a‥‥凹部 405‥‥蓋体 41‥‥バインダー 600‥‥電子ペーパー 601‥‥本体 602‥‥表示ユニット 800‥‥ディスプレイ 801‥‥本体部 802a‥‥搬送ローラ対 803‥‥孔部 804‥‥透明ガラス板 805‥‥挿入口 806‥‥端子部 807‥‥ソケット 808‥‥コントローラー 809‥‥操作部 91‥‥非水系分散液 92、95‥‥溶媒 93‥‥第1の混合液 94‥‥水系分散液 96‥‥第2の混合液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の収容部を有する表示層を備える表示シートであって、
各前記収容部は、複数の第1の粒子を第1の分散媒に分散してなる第1の分散液が封入された少なくとも1つの第1の収容部と、少なくとも1つの前記第1の収容部および前記第1の粒子と色彩が異なり正または負に帯電する複数の第2の粒子を第2の分散媒に分散してなる第2の分散液が封入された第2の収容部とを有し、
前記第1の収容部、前記複数の第1の粒子および前記第1の分散媒の電荷の総和の絶対値が、前記複数の第2の粒子の電荷の総和の絶対値よりも小さいことを特徴とする表示シート。
【請求項2】
前記第1の収容部、前記複数の第1の粒子および前記第1の分散媒の電荷の総和は、0である請求項1に記載の表示シート。
【請求項3】
複数の収容部を有する表示層を備える表示シートであって、
各前記収容部は、複数の第1の粒子を第1の分散媒に分散してなる第1の分散液が封入された少なくとも1つの第1の収容部と、少なくとも1つの前記第1の収容部および前記第1の粒子と色彩が異なり正または負に帯電する複数の第2の粒子を第2の分散媒に分散してなる第2の分散液が封入された第2の収容部とを有し、
前記第1の収容部、前記複数の第1の粒子および前記第1の分散媒の電荷の総和は、略0であることを特徴とする表示シート。
【請求項4】
前記表示層に印加する電界パターンを選択することにより、前記第2の粒子が前記表示層の一方の面側に偏在する状態と、前記第2の粒子が前記表示層の他方の面側に偏在する状態とを選択することができる請求項1ないし3のいずれかに記載の表示シート。
【請求項5】
前記第1の収容部は、前記第2の分散媒中に浮遊している請求項1ないし4のいずれかに記載の表示シート。
【請求項6】
前記表示層の平面視にて、第1の収容部の面積をS1とし、第2の収容部の面積をS2としたとき、0.4S2≦S1≦0.9S2なる関係を満足する請求項1ないし5のいずれかに記載の表示シート。
【請求項7】
前記第1の収容部および前記第2の収容部のすくなくとも一方は、マイクロカプセルである請求項1ないし6のいずれかに記載の表示シート。
【請求項8】
前記第1の分散媒および前記第2の分散媒の少なくとも一方は、水系の分散媒であり、他方は、非水系の分散媒である請求項1ないし7のいずれかに記載の表示シート。
【請求項9】
前記第1の粒子は、白色の粒子である請求項1ないし8のいずれかに記載の表示シート。
【請求項10】
前記第1の粒子は、非帯電粒子である請求項9に記載の表示シート。
【請求項11】
前記第2の収容部には、複数の前記第1の収容部が収容されている請求項1ないし10のいずれかに記載の表示シート。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の表示シートを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項13】
請求項12に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−232452(P2011−232452A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101203(P2010−101203)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】