説明

表示シートの製造方法、表示シート、表示装置および電子機器

【課題】画素抜けを防止または抑制することにより、所望の表示特性を発揮することのできる表示シートの製造方法を提供する。
【解決手段】粒子を移動可能に収容する複数のマイクロカプセル40を含む表示層400を有する表示シートの製造方法であって、基材12の表面に複数のマイクロカプセル40を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、塗布膜中のマイクロカプセル40の均一度を検知する検知工程と、検知工程の検知結果に基づいて塗布液中のマイクロカプセルの密度を修正する修正工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示シートの製造方法、表示シート、表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子ペーパーの画像表示部を構成するものとして、粒子の電気泳動を利用した電気泳動表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。電気泳動表示装置は、優れた可搬性および省電力性を有しており、電子ペーパーの画像表示部として特に適している。
このような電気泳動表示装置は、例えば次のようにして製造されている。すなわち、まず、電極層が形成されたシート部材の表面(電極層の表面)に、電気泳動粒子を移動可能に収容した複数のマイクロカプセルを含む塗布液を塗布することにより表示層を形成する。次いで、マトリックス状に分割された電極層(複数の電極)および各電極に接続されたTFT等が形成されたバックプレーンを、表示層の表面(シート部材と反対側の表面)に接合することにより、電気泳動表示装置を製造することができる。
【0003】
上述した表示層を形成する工程では、前記塗布液をダイコーター等のノズルからシート部材上に供給し塗布する方法が用いられる場合がある。このような方法によれば、比較的簡単に表示層を形成することができる。
ここで、電気泳動表示装置に優れた表示特性を発揮させるには、表示層中にマイクロカプセルを均一に配列し、マイクロカプセルが欠損する欠損部(単位面積あたりにマイクロカプセルが1つも存在しない部分)がないようにするのが好ましい。
【0004】
しかしながら、上記のようなダイコーターを用いた方法で表示層を形成した場合、塗布液中でマイクロカプセルの凝集や沈降等が発生しているため、表示層中にマイクロカプセルが欠損する欠損部が生じるおそれがある。欠損部が生じると、表示層中の前記欠損部に対応する部位(画素)にて、いわゆる「ドット抜け(画素抜け)」が生じ、当該部位では色を表示することができない。そのため、製造された電気泳動表示装置の表示特性が低下する(所望の表示特性よりも悪化する)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−145615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、画素抜けを防止または抑制することにより、所望の表示特性を発揮することのできる表示シートの製造方法、かかる表示シートの製造方法で製造された表示シート、信頼性の高い表示装置、および信頼性の高い電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の表示シートの製造方法は、粒子を移動可能に収容する複数のマイクロカプセルを含む表示層を有する表示シートの製造方法であって、
基材の表面に前記複数のマイクロカプセルを含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
前記塗布膜中の前記マイクロカプセルの均一度を検知する検知工程と、
前記検知工程の検知結果に基づいて前記塗布液中の前記マイクロカプセルの密度を修正する修正工程とを有することを特徴とする。
画素抜けを防止または抑制することにより、所望の表示特性を発揮することのできる表示シートの製造方法を提供することができる。
【0008】
本発明の表示シートの製造方法では、前記検知工程では、単位面積当たりの前記マイクロカプセルの数が閾値以下のマイクロカプセル欠損部を検知し、前記補修工程では、前記マイクロカプセル欠損部に少なくとも1つの補修用マイクロカプセルを補填することが好ましい。
これにより、簡単に、マイクロカプセル欠損部を検知することができる。また、例えばマイクロカプセルが球形の場合には、複数のマイクロカプセルが互いに蜜に配列していても、それらの間には微少な隙間が形成されることとなるが、このような判断基準によれば、そのような微少な隙間がマイクロカプセル欠損部として検知されるおそれがない。そのため、誤検知が防止され、塗布膜中のマイクロカプセル欠損部をより精度よく検知することができる。
【0009】
本発明の表示シートの製造方法では、前記検知工程では、前記塗布膜中の前記マイクロカプセルの体積平均粒径以上の径を有する球体を収容可能な部位を前記マイクロカプセル欠損部として検知することが好ましい。
これにより、塗布膜中のマイクロカプセルを動かすことなく、少なくとも1つの補修用マイクロカプセルを充填可能な部位をマイクロカプセル欠損部とすることができ、補修用マイクロカプセルをマイクロカプセル欠損部に充填する際に、塗布膜中のマイクロカプセルが変形したり破壊したりするのを防止することができる。
【0010】
本発明の表示シートの製造方法では、前記塗布液中において、前記マイクロカプセルは、球状をなして存在していることが好ましい。
これにより、高いコントラストを発揮することのできる表示シートを製造することができる。
本発明の表示シートの製造方法では、前記補修用マイクロカプセルの粒径は、前記マイクロカプセルの前記体積平均粒径以下であることが好ましい。
これにより、マイクロカプセル欠損部に、少なくとも1つの補修用マイクロカプセルを、実質的な変形を伴わずに充填することができる。そのため、塗布膜中の各マイクロカプセルの形状を維持しつつ、かつ塗布膜中のマイクロカプセルの均一度を高めることができるため、優れた表示特性を有する表示シートを製造することができる。特に、補修用マイクロカプセルの粒径が、マイクロカプセルの粒径(体積平均粒径)と等しい場合には、補修用マイクロカプセルとマイクロカプセルとで粒子の移動度合いを等しくすることができる。これにより、優れた表示特性を有する表示シートを製造することができる。
【0011】
本発明の表示シートの製造方法では、前記マイクロカプセルのカプセル強度は、0.6MPa以上であることが好ましい。
これにより、マイクロカプセルの耐圧性および耐ブリード性の双方を高めることができ、また、例えばマイクロカプセルを球状で維持することもできる。そのため、表示シートが長期間安定的に動作し得るものとなる。
【0012】
本発明の表示シートの製造方法では、前記塗布膜中の前記マイクロカプセルの密度を検知する際、または前記塗布膜が形成されてから前記塗布膜中の前記マイクロカプセルの密度を検知するまでに、前記塗布膜中の前記マイクロカプセルに電界を作用させ、前記マイクロカプセル中の前記粒子を移動させ可視化することが好ましい。
これにより、各マイクロカプセルの輪郭を明確化することができ(はっきり確認することができ)、マイクロカプセル欠損部の検知をより正確に行うことができる。
【0013】
本発明の表示シートの製造方法では、前記修正工程は、前記補修用マイクロカプセルを吐出する吐出部によって、前記マイクロカプセル欠損部に向けて前記補修用マイクロカプセルを吐出することにより行われることが好ましい。
これにより、簡単かつ確実に、マイクロカプセル欠損部に補修用マイクロカプセルを充填することができる。また、その際に用いられる装置構成を簡単なものとすることができる。
【0014】
本発明の表示シートの製造方法では、前記基材は、所定方向に移動可能に設けられており、
前記吐出部は、前記基材の平面視にて、前記所定方向に直交する方向に複数設けられており、前記複数の吐出部のうち前記マイクロカプセル欠損部に対応する前記吐出部から前記補修用マイクロカプセルを吐出することが好ましい。
これにより、簡単かつ確実に、マイクロカプセル欠損部に補修用マイクロカプセルを充填することができる。また、その際に用いられる装置構成を簡単なものとすることができる。
【0015】
本発明の表示シートの製造方法では、前記吐出部は、前記基材の平面視にて、少なくとも一方向に移動可能に設けられており、前記吐出部を前記マイクロカプセル欠損部に対応する位置に移動するとともに前記吐出部から前記補修用マイクロカプセルを吐出することが好ましい。
これにより、簡単かつ確実に、マイクロカプセル欠損部に補修用マイクロカプセルを充填することができる。また、その際に用いられる装置構成を簡単なものとすることができる。
【0016】
本発明の表示シートは、本発明の表示シートの製造方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、表示ムラの無い、高いコントラストを有する表示シートとすることができる。
本発明の表示装置は、本発明の表示シートを備えることを特徴とする。
これにより、表示ムラの無い、高いコントラストを有する表示装置とすることができる。
本発明の電子機器は、本発明の表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態にかかる本発明の表示シートの製造方法により製造された表示シートを用いた表示装置の断面図である。
【図2】図1に示す表示装置の作動を示す断面図である。
【図3】表示シートの製造に用いられる装置の模式図である。
【図4】製造途中の表示シートの断面図である。
【図5】製造途中の表示シートの断面図である。
【図6】電圧の波形を示す図である。
【図7】図4に示す塗布膜の平面図である。
【図8】表示シートの製造方法を説明するための図である。
【図9】表示シートの製造方法を説明するための図である。
【図10】本発明の第2実施形態にかかる表示シート製造方法で用いられる装置の図である。
【図11】本発明の第3実施形態にかかる表示シート製造方法で用いられる装置の図である。
【図12】本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
【図13】本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、表示シートの製造方法、表示シート、表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
1.表示装置
まず、本発明の表示シートを適用した表示装置(本発明の表示装置)について説明する。
【0019】
図1は、第1実施形態にかかる本発明の表示シートの製造方法により製造された表示シートを用いた表示装置の断面図、図2は、図1に示す表示装置の作動を示す断面図、図3は、表示シートの製造に用いられる装置の模式図、図4および図5は、それぞれ、製造途中の表示シートの断面図、図6は、電圧の波形を示す図、図7は、図4に示す塗布膜の平面図、図8は、表示シートの製造方法を説明するための図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図5中の上側を「上」、下側を「下」とし、図8中の紙面手前側を「上」、奥側を「下」として説明を行う。
【0020】
図1に示す表示装置(電気泳動表示装置)20は、表示シート(フロントプレーン)21と、回路基板(バックプレーン)22とを有している。
表示シート21は、平板状の基部2と基部2の下面に設けられた第2の電極4とを備える基板(基材)12と、基板12上に設けられ、マイクロカプセル40とバインダー41とで構成された表示層400と、基板12と回路基板22との間の間隙を気密的に封止する封止部7とを有している。
一方、回路基板22は、平板状の基部1と基部1の上面に設けられた複数の第1の電極3とを備える対向基板11と、この対向基板11(基部1)に設けられた、例えばTFT等のスイッチング素子を含む回路(図示せず)とを有している。
【0021】
以下、各部の構成について順次説明する。
基部1および基部2は、それぞれ、シート状(平板状)の部材で構成され、これらの間に配置される各部材を支持および保護する機能を有する。各基部1、2は、それぞれ、可撓性を有するもの、硬質なもののいずれであってもよいが、可撓性を有するものであるのが好ましい。可撓性を有する基部1、2を用いることにより、可撓性を有する表示装置20、すなわち、例えば電子ペーパーを構築する上で有用な表示装置20を得ることができる。
【0022】
各基部(基材層)1、2を可撓性を有するものとする場合、その構成材料としては、それぞれ、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のポリエステル、ポリエチレン等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
このような基部1、2の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、可撓性を有するものとする場合、20μm以上、500μm以下程度であるのが好ましく、25μm以上、250μm以下程度であるのがより好ましい。これにより、表示装置20の柔軟性と強度との調和を図りつつ、表示装置20の小型化(特に、薄型化)を図ることができる。
これらの基部1、2のマイクロカプセル40側の面、すなわち、基部1の上面および基部2の下面に、それぞれ、層状(膜状)をなす第1の電極3および第2の電極4が設けられている。
【0024】
第1の電極3と第2の電極4との間に電圧を印加すると、これらの間に電界が生じ、この電界がマイクロカプセル40内の後述する電気泳動粒子5に作用する。本実施形態では、第2の電極4が共通電極とされ、第1の電極3がマトリックス状(行列状)に分割された個別電極(スイッチング素子に接続された画素電極)とされており、第2の電極4と1つの第1の電極3とが重なる部分が1画素を構成する。なお、第2の電極4も、第1の電極3と同様に複数に分割するようにしてもよい。また、第1の電極3がストライプ状に分割され、第2の電極も同様にストライプ状に分割され、これらが交差するように配置された形態であってもよい。
【0025】
各電極3、4の構成材料としては、それぞれ、実質的に導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、金、銀、銅、アルミニウムまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンブラック等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリフルオレンまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等のマトリックス樹脂中に、NaCl、Cu(CFSO等のイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム酸化物(IO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
このような電極3、4の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、0.01μm以上、10μm以下程度であるのが好ましく、0.02μm以上、5μm以下程度であるのがより好ましい。
ここで、各基部1、2および各電極3、4のうち、表示面側に配置される基部および電極(本実施形態では、基部2および第2の電極4)は、それぞれ、光透過性を有するもの、すなわち、実質的に透明(無色透明、有色透明または半透明)とされる。これにより、後述する電気泳動分散液10中における電気泳動粒子5の状態、すなわち表示装置20に表示された情報(画像)を目視により容易に認識することができる。
【0027】
表示シート21では、第2の電極4の下面に接触して、表示層400が設けられている。表示層400は、電気泳動分散液10をカプセル本体(殻体)401内に封入した複数のマイクロカプセル40がバインダー41により保持された構成をなしている。
図1に示すように、マイクロカプセル40は、対向基板11と基板12との間に、縦横に並列するように単層で(厚さ方向に重なることなく1個ずつ)、かつ、表示層400の厚さ方向全体に配設されている。すなわち、マイクロカプセル40は、表示層400において、その面方向に隣接するもの同士が互いに接触し、かつ、厚さ方向に積層することなく配列している。
【0028】
また、本実施形態では、1つのマイクロカプセル40が、隣り合う2つの第1の電極3にまたがるように配置されている。マイクロカプセル40がこのように配置されることにより、1つの第1の電極3で、それに重なる2つのマイクロカプセル40内の電気泳動粒子5を作動することができる。その結果、1つのマイクロカプセル40内で異なる色が表示されることとなる。
そして、以上のように配置されたマイクロカプセル40は、対向基板11と基板12とで挟持されても、上下方向に圧縮(圧迫)されることなく、ほぼ球状(球形状)をなしている。
【0029】
ここで、表示装置20を可撓性が求められる電子ペーパーに組み込んだ際には、電子ペーパーを撓ませる度に、表示装置20にも同様に撓みが生じることになるが、このたびに、回路基板22と表示シート21との間に圧力が付与される。このとき、図1に示すように、マイクロカプセル40は、第1の電極3および第2の電極4の双方に対して点接触で接触するため、この接触する部分の単位面積あたりにかかる荷重(圧力)が大きくなり、具体的には、0.2MPa以上、1.5MPa以下程度の圧力が、付与されることとなる。このような圧力が回路基板22と表示シート21との間に付与されたとしても、マイクロカプセル40は、対向基板11と基板12との間で、球状を維持するような強度を有するものであるのが好ましい。かかる構成とすることにより、マイクロカプセル40の耐圧性および耐ブリード性の双方を高めることができることから、表示装置20は、長期間安定的に動作し得るものとなる。
【0030】
具体的には、マイクロカプセル40のカプセル強度は、0.6MPa以上であるのが好ましく、1.0MPa以上であるのがより好ましく、3.0MPa以上であるのがさらに好ましい。カプセル強度の上限は、特に限定されるものではないが、例えば50MPa程度である。なお、マイクロカプセル40のカプセル強度とは、微小圧縮試験機(例えば、製品名:MCT−W500、(株)島津製作所製)を用いて測定したマイクロカプセル1個当たりの圧縮強度を意味する。
【0031】
また、マイクロカプセル40は、鋼球落下試験において、好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上、さらに好ましくは30cm以上の高さから鋼球を落下させても潰れることがないカプセル強度を有するのが好ましい。一般に、マイクロカプセル40が、鋼球落下試験において、上記の高さよりも低い高さから鋼球を落下させると潰れるようなカプセル強度しか有しない場合、このようなマイクロカプセル40を用いた表示装置20を誤って落下させると、落下の衝撃によっては、マイクロカプセル40が潰れてしまい、その部分(画素)でのデータ表示ができなくなるおそがある。なお、鋼球落下試験は、表示装置20を厚さ3mmのブタジエンゴムの上に載せた後、任意の高さから、直径11mm、質量5.468gの鋼球を表示装置20の表示層400に垂直落下させて、鋼球が当たった箇所に存在するマイクロカプセル40を光学顕微鏡で観察することにより行う。
【0032】
また、マイクロカプセル40は、ある程度の柔軟性を有しており、その形状は、外部圧力により変化するので、特に限定されるものではないが、外部圧力がない場合には、真球状などの粒子状であることが好ましい。すなわち、マイクロカプセル40は、対向基板11と基板12との間(表示層400中)で、より球状に近い形状を維持した状態で存在しているのが好ましい。
【0033】
マイクロカプセル40の球状の度合いは、マイクロカプセル40の幅とマイクロカプセル40の高さとの比(マイクロカプセル40の幅/マイクロカプセル40の高さ)を指標としてその程度を表すことができる。マイクロカプセル40の幅/マイクロカプセル40の高さ(平均値)は、例えば、表示層400における、各マイクロカプセル40の高さ(厚さ方向)および幅(面方向)に対する粒径の平均値をそれぞれ求め、これらの平均値の比(幅/高さ)を求めることにより得られる。
【0034】
このようにして求められたマイクロカプセル40の幅/マイクロカプセル40の高さ(平均値)は、特に限定されないが、1.0以上、1.2以下程度であるのが好ましく、1.0以上、1.15以下程度であるのがより好ましい。マイクロカプセル40の幅/マイクロカプセル40の高さが上記範囲内にある場合、マイクロカプセル40は、対向基板11と基板12との間で、ほぼ球状に近い形状を維持した状態で存在していると言うことができる。そして、このように、ほぼ球状に近い形状を維持したマイクロカプセル40が、表示層400中において、その面方向に隣接するもの同士が互いに接触し、かつ、厚さ方向に積層することなく配列していることにより、かかる表示層400を備える表示装置20は、高いコントラストを発揮するものとなる。
【0035】
また、マイクロカプセル40の粒子径は、特に限定されないが、5μm以上、300μm以下程度であるのが好ましく、10μm以上、200μm以下程度であるのがより好ましく、15μm以上、150μm以下程度であるのがさらに好ましい。マイクロカプセル40の粒子径が5μm未満であると、マイクロカプセル40内に収容された電気泳動粒子5の色相、粒径および量(数)等にもよるが、充分な表示濃度が得られないおそれがある。逆に、マイクロカプセルの粒子径が300μmを超えると、マイクロカプセル40の構成(構成材料等)にもよるが、マイクロカプセル40のカプセル強度が低下することがあり、また、マイクロカプセル40に封入した電気泳動分散液10中における電気泳動粒子5の電気泳動特性が充分に発揮されず、表示のための起動電圧も高くなるおそれがある。なお、マイクロカプセル40の粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、製品名:LA−910、(株)堀場製作所製、コールカウンターMultisizer3、ベックマン・コールター(株))で測定した体積平均粒子径を意味する。
【0036】
また、マイクロカプセル40の粒子径の変動係数(すなわち、粒度分布の狭さ)は、特に限定されないが、30%以下であるのが好ましく、20%以下であるのがより好ましく、10%以下であるのがさらに好ましい。マイクロカプセル40の粒子径の変動係数が30%を超えると、有効な粒子径を有するマイクロカプセル40が少なく、多数のマイクロカプセルを用いる必要が生じることがある。また、第1の電極3および第2の電極4の間に、同一の電圧を印加した場合でも、作用する電界の大きさが複数のマイクロカプセル40間でそれぞれ異なってしまい、表示特性が低下するおそれがある。
なお、上述したようなマイクロカプセル40の粒子径やその変動係数は、マイクロカプセル40を製造する際に水系媒体に分散させた分散液の粒子径や粒度分布に大きく依存する。それゆえ、分散液の分散条件を適宜調整することにより、所望の粒子径やその変動係数を有するマイクロカプセル40を得ることができる。
【0037】
このようなマイクロカプセル40において、電気泳動粒子5を含む電気泳動分散液10を内包するカプセル本体(殻体)401は、図1に示すように、第1のカプセル層402と、この第1のカプセル層402よりも外側に配置されている第2のカプセル層403とで構成されている。それぞれ球殻状をなす第1のカプセル層402と、その外側を覆うように設けられた第2のカプセル層403との2層でカプセル本体401を構成することにより、カプセル本体401に、これら2層がそれぞれ有する特性を相乗的に付与することができる。
【0038】
第1のカプセル層402の構成材料としては、例えば、メルカプト基を有するアミノ樹脂が挙げられる。このようなアミノ樹脂は、不浸透性が高く、電気泳動分散液10の滲出が起こりにくいという性質を有している。一方、第2のカプセル層403の構成材料としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、耐薬品性や機械的性質に優れている。しかも、第1のカプセル層402を構成するアミノ樹脂と、第2のカプセル層403を構成するエポキシ樹脂とは、メルカプト基を介して互いに強固に結合し、カプセル強度が向上する。そのため、このような構成のマイクロカプセル40は、電気泳動分散液10の滲出が起こりにくく、表示装置20を作製する際に印加されるラミネート圧力等により破壊されることもない。従って、このようなマイクロカプセル40を含有する表示層400を有する表示装置20は、高いコントラストを示すと共に、高温高湿条件下に長時間(例えば、60℃、90%RHで24時間)放置した場合であっても、低いリーク電流値を示す。また、例えば、バインダー樹脂と混合された形態、すなわち塗工液や表示シートの形態でも、長期間にわたり安定に室温保存することができる。
【0039】
第1のカプセル層402と第2のカプセル層403とをメルカプト基を介して化学的に結合させるには、例えば、後述する第1のカプセル層402の形成工程において、メルカプト基と、カルボキシル基および/またはスルホ基とを有する化合物を芯物質分散液に添加して、メルカプト基が導入された第1のカプセル層402を形成し、その後、エポキシ系樹脂材料で構成される第2のカプセル層403を形成すればよい。
【0040】
カプセル本体401の厚さ(本実施形態では、第1のカプセル層402の厚さd1と第2のカプセル層403の厚さd2の合計)は、特に限定されないが、湿潤状態で、0.1μm以上、5μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上、4μm以下であるのがより好ましく、0.1μm以上、3μm以下であるのがさらに好ましい。カプセル本体401の厚さが小さいと、第1のカプセル層402と第2のカプセル層403との構成材料の組み合わせによっては、十分なカプセル強度が得られないおそれがある。逆に、カプセル本体401の厚さが大きいと、第1のカプセル層402と第2のカプセル層403との構成材料の組み合わせによっては、透明性が低下して、電気泳動表示装置のコントラストの低下を招くおそれがある。
【0041】
また、第1のカプセル層402の厚さをd1とし、第2のカプセル層403の厚さをd2としたとき、これらの比率d1/d2は、1以上、1/5以下程度であるのが好ましく、1/2以上、1/3以下程度であるのがより好ましい。かかる関係を満足することにより、カプセル本体401に、第1のカプセル層402および第2のカプセル層403の双方の特性を確実に付与することができる。
なお、本実施形態では、カプセル本体401は、第1のカプセル層402と第2のカプセル層403からなる2層構成とされているが、このような2層構成に限らず、単層または3層以上の多層構成であっても構わない。
【0042】
カプセル本体401内に封入された電気泳動分散液10は、少なくとも1種の電気泳動粒子5(本実施形態では、着色粒子5bと白色粒子5aとの2種)を液相分散媒6に分散(懸濁)してなるものである。
電気泳動粒子5の液相分散媒6への分散は、例えば、ペイントシェーカー法、ボールミル法、メディアミル法、超音波分散法、撹拌分散法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて行うことができる。
【0043】
液相分散媒6としては、カプセル本体401に対する溶解性が低く、かつ比較的高い絶縁性を有するものが好適に使用される。かかる液相分散媒6としては、例えば、各種水(例えば、蒸留水、純水等)、メタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸メチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、ペンタン等の脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン等の芳香族複素環類、アセトニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、カルボン酸塩、シリコーンオイルまたはその他の各種油類等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0044】
中でも、液相分散媒6としては、脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)、またはシリコーンオイルを主成分とするものが好ましい。流動パラフィン、またはシリコーンオイルを主成分とする液相分散媒6は、電気泳動粒子5の凝集抑制効果が高く、かつカプセル本体401の構成材料との親和性が低い(溶解性が低い)ことから好ましい。これにより、表示装置20の表示性能が経時的に劣化するのをより確実に防止または抑制することができる。また、流動パラフィン、またはシリコーンオイルは、不飽和結合を有しないため耐候性に優れ、および安全性も高いという点からも好ましい。
【0045】
また、液相分散媒6(電気泳動分散液10)中には、必要に応じて、例えば、電解質、アルケニルコハク酸エステルのような界面活性剤(アニオン性またはカチオン性)、金属石鹸、樹脂材料、ゴム材料、油類、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。また、液相分散媒6を着色する場合には、液相分散媒6に、必要に応じて、アントラキノン系染料、アゾ系染料、インジゴイド系染料等の各種染料を溶解するようにしてもよい。
【0046】
電気泳動粒子5は、荷電を有し、電界が作用することにより、液相分散媒6中を電気泳動し得る粒子である。かかる電気泳動粒子5には、荷電を有するものであれば、いかなるものをも用いることができ、特に限定はされないが、顔料粒子、樹脂粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に使用される。これらの粒子は、製造が容易であるとともに、荷電の制御を比較的容易に行うことができるという利点を有している。
【0047】
顔料粒子を構成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック、亜クロム酸銅等の黒色顔料、酸化チタン、酸化アンチモン等の白色顔料、モノアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛等の黄色顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
また、樹脂粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料や他の顔料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。
【0049】
顔料粒子の表面を他の顔料で被覆した粒子としては、例えば、酸化チタン粒子の表面を、酸化珪素や酸化アルミニウムで被覆したものを例示することができ、かかる粒子は、白色粒子5aとして好適に用いられる。また、カーボンブラック粒子またはその表面を被覆した粒子は、着色粒子(黒色粒子)5bとして好適に用いられる。
また、電気泳動粒子5の形状は、特に限定されないが、球形状であるのが好ましい。
【0050】
電気泳動粒子5の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.1〜4μm、さらに好ましくは0.1〜3μmである。電気泳動粒子5の平均粒子径が0.1μm未満であると、充分な色度が得られず、電気泳動表示装置に用いた場合に、コントラストが低下して、表示が不鮮明になることがある。逆に、電気泳動粒子5の平均粒子径が5μmを超えると、粒子自体の着色度を必要以上に高くする必要があり、顔料などの使用量が増大することや、電気泳動表示装置に用いた場合に、表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の速やかな移動が困難となり、その応答速度(表示応答性)が低下することがある。
【0051】
なお、電気泳動粒子5の平均粒子径とは、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、製品名:LB−500、(株)堀場製作所製)で測定した体積平均粒子径を意味する。
【0052】
また、電気泳動粒子5の比重は、液相分散媒6の比重とほぼ等しくなるように設定されているのが好ましい。これにより、電気泳動粒子5は、電極3、4間への電圧の印加を停止した後においても、液相分散媒6中において一定の位置に長時間滞留することができる。すなわち、表示装置20にメモリー性を付与することができ、表示された情報が長時間保持されることとなる。
【0053】
表示層400に含まれるバインダー41は、例えば、対向基板11と基板12とを接合する目的、対向基板11と基板12との間にマイクロカプセル40を固定する目的、マイクロカプセル40同士を固定する目的、第1の電極3および第2の電極4同士間の絶縁性を確保する目的等により供給される。これにより、表示装置20の耐久性および信頼性をより向上させることができる。
【0054】
バインダー41には、対向基板11、第2の電極4およびカプセル本体401(マイクロカプセル40)との親和性(密着性)に優れ、かつ、絶縁性に優れる樹脂材料(絶縁性または微小電流のみが流れる樹脂材料)が好適に使用される。
このようなバインダー41としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーン系樹脂、シリコーンアルキド系樹脂、シリコーンウレタン系樹脂、シリコーンポリエステル系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂のような合成樹脂バインダー、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタンジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムのような合成ゴムまたは天然ゴムバインダー、硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースのような熱可塑性または熱硬化性高分子バインダー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
これらのバインダー41のうち、マイクロカプセル40の分散性が比較的良好であり、さらに、対向基板11、基板12およびマイクロカプセル40との密着性に優れる点で、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂が好ましく用いられ、さらに、(メタ)アクリル系樹脂が特に好ましく用いられる。
さらに、基板12と対向基板11との間であって、それらの縁部に沿って、封止部7が設けられている。この封止部7により、第2の電極4および表示層400が気密的に封止されている。これにより、表示装置20(表示シート21)内への水分の浸入を防止して、表示装置20(表示シート21)の表示性能の劣化をより確実に防止することができる。
【0056】
封止部7の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂のような熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂のような熱硬化性樹脂等の各種樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、封止部7は、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
【0057】
2.表示装置の動作方法
このような表示装置20は、次のようにして作動する。
表示装置20の第1の電極3と第2の電極4との間に電圧を印加すると、これらの間に電界が生じる。この電界にしたがって、電気泳動粒子5(着色粒子5b、白色粒子5a)は、電極3、4のいずれかに向かって移動(電気泳動)する。
【0058】
例えば、白色粒子5aとして正荷電を有するものを用い、着色粒子(黒色粒子)5bとして負荷電のものを用いた場合、図2(A)に示すように、第1の電極3を正電位とすると、白色粒子5aは、第2の電極4側に移動して、第2の電極4に集まる。一方、着色粒子5bは、第1の電極3側に移動して、第1の電極3に集まる。このため、表示装置20を上方(表示面側)から見ると、白色粒子5aの色が見えること、すなわち、白色が見えることになる。
【0059】
これとは逆に、図2(B)に示すように、第1の電極3を負電位とすると、白色粒子5aは、第1の電極3側に移動して、第1の電極3に集まる。一方、着色粒子5bは、第2の電極4側に移動して、第2の電極4に集まる。このため、表示装置20を上方(表示面側)から見ると、着色粒子5bの色が見えること、すなわち、黒色が見えることになる。
このような構成において、電気泳動粒子5(白色粒子5a、着色粒子5b)の帯電量や、電極3または4の極性、電極3、4間の電位差等を画素ごとに適宜設定することにより、表示装置20の表示面には、白色粒子5aおよび着色粒子5bの色の組み合わせや、電極3、4に集合する粒子の数等に応じた所望の画像が表示される。
【0060】
ここで、この表示装置20では、表示層400中において、マイクロカプセル40が、その面方向に隣接するもの同士が互いに接触し、かつ、厚さ方向に積層することなく配列しているので、かかる表示層400を備える表示装置20は、高いコントラストを発揮することができる。
また、表示装置20では、表示層400に含有されるマイクロカプセル40が球状をなして存在していることにより、耐圧性および耐ブリード性に優れている。したがって、このように表示装置20を作動させているとき、もしくは、表示装置20を保存している間に、表示装置20に衝撃が加わったり、表示面が押圧されたりした場合でも、マイクロカプセル40の破壊や電気泳動分散液10の散逸が防止され、長期間安定に動作することができる。
【0061】
3.表示装置の製造方法(本発明の表示シートの製造方法)
表示装置20は、次のようにして製造することができる。
表示装置20の製造方法は、マイクロカプセル40を作製するマイクロカプセル作製工程[A1]と、マイクロカプセル40を含むマイクロカプセル分散液(塗布液)を調製するマイクロカプセル分散液調製工程[A2]と、基板12の第2の電極4側に表示層400を形成する表示層形成工程[A3]と、表示層400の第2の電極4と反対の面に回路基板22を接合する接合工程[A4]と、基部2と対向基板11との間の端部に封止部7を形成する封止工程[A5]とを有している。
【0062】
[A1]マイクロカプセルの作製工程
[A1−1]第1のカプセル層の形成
まず、電気泳動分散液10を第1のカプセル層402に内包するマイクロカプセルを得る。なお、以下、説明の便宜上、このマイクロカプセルを「マイクロカプセル前駆体」と言うこととする。
【0063】
例えば、マイクロカプセル前駆体は、電気泳動粒子5と液相分散媒6とで構成される電気泳動分散液10を芯物質とし、この芯物質を水系媒体に分散させた後、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンよりなる群から選択される少なくとも1種とホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合物を用いて、メルカプト基とカルボキシ基またはスルホ基とを有する化合物の存在下で縮合反応を行うことにより形成することができる。なお、水系媒体としては、例えば、水、または、水と親水性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。
【0064】
このようにして得られたマイクロカプセル前駆体は、分級および洗浄することを目的に、水系媒体に分散した状態で次の工程に供してもよく、吸引濾過や自然濾過等の方法により、水系媒体から分離した後、次の工程に供するようにしてもよい。ただし、濾過に際する衝撃や圧力によって第1のカプセル層402が損傷・破壊してしまうのを確実に防止するという観点からは、水系媒体から分離せずに次の工程に供するのが好ましい。
【0065】
次に、マイクロカプセル前駆体を、分級および洗浄する。
マイクロカプセル前駆体の分級方法としては、特に限定されないが、例えば、ふるい式、フィルター式、遠心沈降式、自然沈降式等が挙げられる。このうち、回収するマイクロカプセル前駆体の粒子径が比較的大きい場合には、ふるい式を用いるのが好ましい。
マイクロカプセル前駆体の洗浄方法としては、特に限定されないが、例えば、遠心沈降式、自然沈降式等が挙げられる。このうち、マイクロカプセル前駆体の粒子径が比較的大きい場合には、マイクロカプセル前駆体の損傷・破壊を防止するために、自然沈降式を用いるのが好ましい。なお、洗浄は、1回に限らず、複数回行うようにしてもよい。
【0066】
[A1−2]第2のカプセル層の形成
次に、工程[A1−1]で得たマイクロカプセル前駆体(第1のカプセル層402)の外周面に、第2のカプセル層403を形成し、電気泳動分散液10を内包するマイクロカプセル40を得る。
例えば、第2のカプセル層403(マイクロカプセル40)は、第1のカプセル層402に芯物質が内包されたマイクロカプセル前駆体を水系媒体中に分散させた後、エポキシ基を有する化合物を添加することにより形成することができる。なお、第2のカプセル層403を形成する際に、エポキシ基を有する化合物に架橋剤を反応させるか、および/または、エポキシ基を有する化合物に加えて、エポキシ・メラミン縮合物を添加すれば、第2のカプセル層403の強度や不浸透性が向上し、マイクロカプセル40がより高い性能を有するようになるので好ましい。なお、マイクロカプセル前駆体を分散させる水系媒体としては、例えば、工程[A1−1]において電気泳動分散液10を分散させる水系媒体と同様のものを挙げることができる。
【0067】
以上のようにして得られたマイクロカプセル40は、水系媒体に分散した状態で次の工程に供してもよく、吸引濾過や自然濾過等の方法により、水系媒体から分離した後、次の工程に供するようにしてもよいが、マイクロカプセル40を乾燥状態にすると、電気泳動分散液10の溶媒がカプセル本体401から浸出して蒸発し、マイクロカプセル40が変形する可能性があるので、水系媒体から分離することなく、次の工程に供することが好ましい。
また、得られたマイクロカプセル40は、分級および洗浄するのが好ましい。これにより、粒度分布が狭く、不純物の少ないマイクロカプセル40を得ることができる。分級方法および洗浄方法は、例えば、前記工程[A1−1]の場合と同様の方法を挙げることができる。
【0068】
[A2]マイクロカプセル分散液(塗布液)100の調製工程
次に、バインダー41を用意し、このバインダー41と、前記工程[A1]で作製されたマイクロカプセル40とを混合してマイクロカプセル分散液(塗布液)100を調製する。マイクロカプセル分散液100中におけるマイクロカプセル40の含有量は、60wt%以上、90wt%以下程度であるのが好ましく、65wt%以上、90wt%以下程度であるのがより好ましい。
【0069】
[A3]表示層400の形成工程
表示層400の形成工程は、基板12上に前記マイクロカプセル分散液(塗布液)100を塗布し塗布膜80を形成する塗布工程[A3−1]と、塗布膜80中のマイクロカプセル40に電界を作用させる電界作用工程[A3−2]と、塗布膜80中のマイクロカプセル40の均一度を検知する検知工程[A3−3]と、検知工程の検知結果に基づいて塗布膜80中のマイクロカプセル40の密度を修正する修正工程[A3−4]とを有している。
【0070】
以下これら工程[A3−1]〜[A3−4]について説明するが、その説明に先立って、これら工程を行うための装置90の一例を、図3に基づいて説明する。なお、以下では、図3に示すように、基板12の平面視にて、基板12の搬送方向をx方向とも言い、x方向に直交する方向をy方向とも言う。
図3に示すように、装置90は、基板12を所定方向(x方向)に搬送するベルトコンベア等で構成された搬送ライン91と、搬送ライン91上に設けられたダイコーター92、電極93、撮像部94およびインクジェットヘッド95とを有している。ダイコーター92、電極93、撮像部94およびインクジェットヘッド95は、基板12の搬送方向上流側からこの順で配設されている。
【0071】
また、ダイコーター92およびインクジェットヘッド95は、それぞれ、貯留タンク96、97に接続されている。貯留タンク96には、マイクロカプセル分散液100が貯留されており、貯留タンク97には、補修用マイクロカプセル分散液100Aが貯留されている。なお、本実施形態では、補修用マイクロカプセル分散液100Aとして、マイクロカプセル分散液100と同様の構成のものを用いる。すなわち、補修用マイクロカプセル分散液100A中には、前述したマイクロカプセル40とバインダー41とが含まれている。なお、以下では、説明の便宜上、補修用マイクロカプセル分散液100A中のマイクロカプセルを「補修用マイクロカプセル40A」とも言う。
【0072】
ダイコーター92は、一対のヘッド921、922を僅かな隙間(スリット状の隙間)を隔てて対向配置することにより構成されている。また、前記隙間は、基板12の搬送方向に対して直交する方向(y方向)に延在するよう形成されている。このようなダイコーター92では、一対のヘッド921、922間の隙間がマイクロカプセル分散液100の流路923を形成し、基板12がダイコーター92の下を通過する際に、流路923を通過してマイクロカプセル分散液100をダイコーター92から吐出し、基板12の表面にマイクロカプセル分散液100を塗布(供給)し塗布膜80を形成する。
【0073】
電極93は、塗布膜80に含まれるマイクロカプセル40に電界を作用させるための電極である。電極93は、搬送ライン91により搬送される基板12が電極93と対向したときに基板12上の塗布膜80と接触しないように設けられている。また、電極93は、装置90が有する電源(図示せず)に電気的に接続されており、前記電源から電力が供給されるようになっている。このような電極93は、y方向に並んで設けられた多数の針状の電極部931を有している。電極93をこのような形状とすることにより、後述するように、塗布膜80の全域に均一に電界を作用させることができる。
【0074】
撮像部94は、塗布膜80の状態を撮像し、その結果から塗布膜80中のマイクロカプセル40の均一度(密度)を検知する機能を有する。このような撮像部94は、リニアイメージセンサであるスキャナー941を有している。スキャナー941は、y方向に1列(1次元)に配列する図示しない複数のフォトダイオード(撮像素子)を有している。撮像部94は、スキャナー941によって、搬送ライン91により搬送されてきた基板12上の塗布膜80をスキャンすることにより、塗布膜80の全域の画像を得るように構成されている。このようなスキャナー941によれば、搬送ライン91による基板12の搬送を、スキャンの走査に利用できるため、簡単かつ効率的に、塗布膜80全域の画像を得ることができる。
【0075】
なお、塗布膜80を撮像することができれば、上述のようなリニアイメージセンサに限定されず、例えばエリアイメージセンサを用いてもよい。この場合は、複数のフォトダイオードを縦横(2次元)に配置した撮像装置を用意し、搬送ライン91により搬送されてきた基板12を所定位置にて停止させた状態で、撮像装置により塗布膜80の全域を一度に撮像することにより、塗布膜80全域の画像を得ることができる。
撮像部94は、さらに、検知部942を備えており、この検知部942は、スキャナー941により撮像された塗布膜80の画像(画像データ)に基づいて、塗布膜80中のマイクロカプセル40の均一度を検知する。これについては後に詳述する。
【0076】
インクジェットヘッド95は、撮像部94の検知結果に基づいて、塗布膜80の所望箇所に補修用マイクロカプセル40Aを充填する機能を有している。このようなインクジェットヘッド95は、y方向に並んで形成された複数の吐出口(吐出部)951を有しており、各吐出口951からは、補修用マイクロカプセル40Aがバインダー41とともに吐出される。また、装置90は、吐出制御部98を有しており、吐出制御部98は、検知部942の検知結果に基づいて、複数の吐出口951の中から、補修用マイクロカプセル40Aを吐出する吐出口951を選択する。
以上、装置90の構成について簡単に説明した。
【0077】
次いで、工程[A3−1]〜[A3−4]について説明する。
[A3−1]塗布工程
まず、基板12を、第2の電極4を上側にして搬送ライン91に載置する。次いで、搬送ライン91により搬送される基板12が、ダイコーター92の下方を通過する際に、ダイコーター92からマイクロカプセル分散液100を吐出する。マイクロカプセル分散液100の吐出を、ダイコーター92の下方を基板12の先端が通過してから後端が通過するまで行うことにより、マイクロカプセル分散液100を基板12表面の全域に連続的に塗布し、図4に示すような塗布膜80を形成する。このとき、塗布膜80の厚さ方向に対してマイクロカプセル40が重なることなく1列に配列するように、ダイコーター92と基板12との離間距離やダイコーター92の流路923の幅等を調節する。なお、必要に応じて、基板12上に形成された塗布膜80の厚さが均一になるように、塗布膜80の表面をスキージ等によって均してもよい。
【0078】
[A3−2]電界作用工程
前述した工程[A3−1]で形成された塗布膜80中の複数のマイクロカプセル40は、それぞれ、内部に封入した電気泳動分散液10中の電気泳動粒子5の分散状態(偏在状態)が異なっている。具体的には、図4に示すように、塗布膜80中には、白色粒子5aが上側(基板12と反対側)に偏在するマイクロカプセル40aや、着色粒子5bが上側に偏在するマイクロカプセル40bや、白色粒子5aと着色粒子5bとが互いに混じり合ったマイクロカプセル40cが不規則に存在している。このような状態では、塗布膜80の表面に表示される色にムラが生じ、また、各マイクロカプセル40の輪郭がぼやけてしまうため、本工程の次に行われる工程[A3−3]において、撮像部94の撮像性能等によっては、塗布膜80(塗布膜80中のマイクロカプセル40)の観察を精度良く行うことができないおそれがある。
【0079】
そこで、本工程では、塗布膜80中の複数のマイクロカプセル40の電気泳動粒子5の分散状態(偏在状態)を、それぞれ、ほぼ同じとし、塗布膜80の表面に表示される色をムラのないほぼ単一色とすることにより(すなわち、電気泳動粒子5を可視化することにより)、各マイクロカプセル40の輪郭を明確化し、工程[A3−3]を精度良く行えるようにする。なお、以下では、塗布膜80の表面に白色を表示する場合について代表して説明する。
【0080】
搬送ライン91により搬送される基板12が、電極93の下方を通過する間、図示しない前記電源から交番電圧V1(以下、単に「電圧V1」ともいう)を印加する。このとき、基板12の第2の電極4は、接地(アース)されており、これにより、電極93と第2の電極4との間に電位差が生じ、これらの間に電界が発生する。そのため、前記電界が塗布膜80に含まれる全てのマイクロカプセル40にムラなく作用し、各マイクロカプセル40中にて電気泳動粒子5が移動(泳動)する。その結果、図5に示すように、各マイクロカプセル40中にて、白色粒子5aが上側(基板12と反対側)に偏在するとともに、着色粒子5bが下側(基板12側)に偏在することとなり、塗布膜80の表面に白色がムラなく表示される。
【0081】
特に、本実施形態では、電極93が複数の針状の電極部931を有しているため、電極93の先端に電気力線を集中させることができ、これにより、電極93および第2の電極4間に、効率的に、かつ均一な電界を発生させることができる。また、電極93が塗布膜80に接触しないため(すなわち、非接触でマイクロカプセル40に電界を作用させるので)、マイクロカプセル40の破壊を防止することができる。
【0082】
印加する電圧V1の強さは、マイクロカプセル40の粒径や、電極93と塗布膜80の離間距離等によって適宜選択すればよいが、マイクロカプセル40中の電気泳動粒子5の偏在状態が、着色粒子5bが上側に偏在し白色粒子5aが下側に偏在する状態から、白色粒子5aが上側に偏在し着色粒子5bが下側に偏在する状態となるのに十分な強さであるのが好ましい。また、電圧V1の強さの上限としては、カプセル本体401の内壁に電気泳動粒子5が焼き付いてしまわない程度の強さであるのが好ましい。
【0083】
電圧V1の波形としては、マイクロカプセル40中で上述のように電気泳動粒子5を移動させることができれば、特に限定されないが、図6(a)に示すノコギリ波状であるのが好ましい。このような電圧V1は、電圧の上昇と、急峻な電圧の下降(電圧の上昇に要する時間より短時間での電圧の下降)とを交互に、かつ周期的に繰り返す交番電圧である。このような電圧V1によれば、後述するように、電極93を塗布膜80に接触させなくても(すなわち、これらの間に後述する空気層が介在していても)、塗布膜80中のマイクロカプセル40に効率的に電界を作用させることができる。
【0084】
塗布膜80中のマイクロカプセル40と電極93との間には、空気層が存在するため、電極93に電圧V1を印加しても、電圧V1がそのままマイクロカプセル40に印加されるわけではなく、図6(b)に示すような電圧V1’がマイクロカプセル40に印加される。電圧V1’は、電圧V1が急峻に下降する際に発生する電圧(過渡応答電圧)V11’と、電圧V1が緩やかに上昇する際に発生する電圧V12’とを交互に、かつ周期的に繰り返す。
【0085】
ここで、前記空気層は抵抗が比較的高いため、電圧V1が緩やかに上昇する際には、電圧V1の大半が前記空気層に印加され、マイクロカプセル40にはほとんど印加されない(すなわち、電圧V12’は、ほぼ0である)。そのため、このような電圧V1’がマイクロカプセル40に印加されると、電圧V11’が発生しているときに、電極93が負電位、第2の電極4側が正電位となるような電界がマイクロカプセル40に作用し、白色粒子5aが電極93側に、着色粒子5bが第2の電極4側にそれぞれ移動する。このような電気泳動粒子5の移動により、図5に示すように、塗布膜80の表面のほぼ全域に白色を表示させる。
電圧V1に関して、電圧下降時における単位時間あたりの電圧の変化量は、大きいほど良いが、1V/ms以上であることが好ましく、∞/msであることがより好ましい。これにより、電圧V1を急激に変化(下降)させることができ、これに伴って、電圧V11’をより確実に発生させることができる。
【0086】
また、電圧V1に関して、電圧上昇時における単位時間当たりの電圧の変化量は、0.1V/s以上、1.0V/ms以下程度であることが好ましく、0.1V/s以上、0.5V/ms以下程度であることがより好ましい。これにより、電圧V1の急峻な上昇が防止され、電圧上昇時での過渡的な電圧(V11’のような電圧)の発生を防止することができる。そのため、塗布膜80の表面を白色表示とするためにマイクロカプセル40に作用させたい電界とは反対向きの電界の発生を防止することができ、白色粒子5aおよび着色粒子5bをそれぞれ所望の方向へスムーズに泳動させることができる。さらに、上記範囲とすることにより、電圧V1を所定値まで上昇させるために必要な時間を比較的短くすることができるため、単位時間あたりの電圧V11’の発生回数をより多くすることができる。そのため、より短時間で、塗布膜80の表面全域を白色表示とすることができる。
【0087】
また、電圧V1の周波数は、特に限定されないが、0.1Hz以上、100MHz以下程度であるのが好ましく、100Hz以上、10kHz以下程度であるのがより好ましい。これにより、電圧V1の各周期において電圧を上昇させる時間を十分に確保することができるため、電圧V1の最大高低差を大きくすることができる。その結果、より確実に、電圧V11’を発生させることができる。また、これに加えて、単位時間あたりの電圧V11’の発生回数を多くすることができ、単位時間あたりの電気泳動粒子5の泳動距離を長くすることができる。その結果、より短時間で、塗布膜80表面全域を白色表示とすることができる。
【0088】
[A3−3]検知工程
表示装置20の表示特性は、表示層400中に複数のマイクロカプセル40が均一に配置されるほど優れたものとなる。そのため、本工程では、塗布膜80中のマイクロカプセル40の均一度、すなわち、塗布膜80中で複数のマイクロカプセル40がどのように配列しているかを検知する。
【0089】
具体的には、搬送ライン91により搬送されてきた基板12上に形成された塗布膜80を、スキャナー941によりスキャンし、塗布膜80の表面(基板12と反対側の面)全域の画像データを取得する。塗布膜80を上方(すなわち基板12が形成されていない側)から撮像することにより、塗布膜80以外の別部材による光の吸収、反射、散乱等が防止され、より鮮明な塗布膜80の表面の画像データを取得することができる。
【0090】
撮像部94が有する検知部942は、スキャナー941によって取得された塗布膜80の画像データに基づいて、塗布膜80中にて複数のマイクロカプセル40がどのように配列しているのかを判断する。そして、検知部942は、図7に示すように、単位面積当たりのマイクロカプセル40の数が閾値以下の部位をマイクロカプセル欠損部S1として検知する。より具体的には、検知部942は、マイクロカプセル40の体積平均粒径以上の径を有する球体を、そのままの形状で収容可能な部位を発見した場合には、その部分をマイクロカプセル欠損部S1として検知する。また、検知部942は、検知したマイクロカプセル欠損部S1の塗布膜80中での位置および形状(大きさを含む)を記憶する。なお、マイクロカプセル欠損部S1には、バインダー41のみが存在しマイクロカプセル40が存在していない部分およびバインダー41もマイクロカプセルも存在していない部分が共に含まれる。
【0091】
塗布膜80(表示層400)中のマイクロカプセル欠損部S1に対応する画素では、マイクロカプセル40が存在せず、色の表示を行うことができない(いわゆる「画素抜け」が発生する)。このようなマイクロカプセル欠損部S1が存在すると、製造される表示装置20の表示特性が所望の特性よりも低下する。そのため、本工程では、このようなマイクロカプセル欠損部S1を検知し、次の工程[A3−4]にて、マイクロカプセル欠損部S1に補修用マイクロカプセル40Aを充填(補充)することにより、上述の表示特性の低下を防止する。
【0092】
本実施形態では、本工程に先立って工程[A3−2]を行い、塗布膜80の表面の全域(ただし、マイクロカプセル欠損部S1に対応する部分を除く)を白色状態としている。そのため、各マイクロカプセル40の輪郭がはっきりと画像データに映し出され、マイクロカプセル欠損部S1の検知をより正確に行うことができる。また、通常、塗布膜80の表面のマイクロカプセル欠損部S1に対応する部位は、マイクロカプセル40に対応する部位と異なり白色には映らないため、このような色の違いからも、マイクロカプセル欠損部S1を正確に検知することができる。
【0093】
ここで、貯留タンク96に貯留されたマイクロカプセル分散液100中では、マイクロカプセル40の凝集や沈降が発生し易く、このようなマイクロカプセル40の凝集、沈降が発生している状態のマイクロカプセル分散液100を基板12上に塗布すると、形成された塗布膜80中にマイクロカプセル40を均一に配列させることが難しい。また、基板12上に埃や塵が付着していた場合には、マイクロカプセル分散液100が、その埃等を避けるようにして基板12上に塗布されるため、埃等が付着した部分にマイクロカプセル40が供給されない。このようなことから、塗布膜80中に、マイクロカプセル欠損部S1が発生するおそれが高い。
【0094】
加えて、本実施形態においては、塗布膜80中に含まれるマイクロカプセル40は、比較的高いカプセル強度(好ましくは0.6MPa以上、より好ましくは1.0MPa以上、さらに好ましくは3.0MPa以上)を有している。このように、カプセル強度の比較的高いマイクロカプセル40は、塗布膜80中での移動度が低い。そのため、マイクロカプセル40は、ダイコーター92によって基板12上に塗布されると、塗布された位置からほとんど動くことはなく、塗布されたままの位置を保つ。このことから、カプセル強度が比較的高いマイクロカプセル40を用いる場合には、塗布膜80中に、マイクロカプセル欠損部S1が存在するおそれがより高くなる。
【0095】
なお、逆に、カプセル強度が比較的低い(例えば、0.1MPa以下程度)マイクロカプセルであると、その自重等による変形に伴って塗布膜80中を移動したり、隣のマイクロカプセルと結合(自己組織化)しようとして、当該マイクロカプセルに引きつけられるように移動したりする。そのため、塗布膜80が形成された直後にマイクロカプセル欠損部S1が存在していても、その後、塗布膜80中でマイクロカプセル40が変形、移動することよって、マイクロカプセル欠損部S1がある程度消滅する場合がある。
【0096】
検知部942は、前述したように、マイクロカプセル40の体積平均粒径以上の径を有する球体をそのままの形状で収容可能な部位をマイクロカプセル欠損部S1として検知する。換言すれば、塗布膜80中のマイクロカプセル40を動かすことなく、少なくとも1つの補修用マイクロカプセル40Aを充填することのできる部位(領域)をマイクロカプセル欠損部S1として検知する。
【0097】
このような判断基準によれば、撮像部94で撮像された塗布膜80の画像データから簡単に、マイクロカプセル欠損部S1を検知することができる。また、マイクロカプセル40は、球形であるため、複数のマイクロカプセル40が互いに蜜に配列していても、それらの間には微少な隙間が形成されることとなるが、上記判断基準によれば、そのような微少な隙間がマイクロカプセル欠損部S1として検知されるおそれがない。そのため、誤検知が防止され、塗布膜80中のマイクロカプセル欠損部S1をより精度よく検知することができる。また、前述したように、本実施形態のような比較的高いカプセル強度を有するマイクロカプセル40は、塗布膜80中でほとんど移動しない。反対に言えば、マイクロカプセル40は、実質的に塗布膜80中で移動することができない。そのため、塗布膜80中のマイクロカプセル40を動かすことなく、少なくとも1つの補修用マイクロカプセル40Aを充填可能な部位をマイクロカプセル欠損部S1とすることにより、後述する工程[A3−4]にて、補修用マイクロカプセル40Aをマイクロカプセル欠損部S1に充填する際に、塗布膜80中のマイクロカプセル40が変形したり破壊したりするのを防止することができる。
【0098】
[A3−4]修正工程
本工程は、前記工程[A3−3]で検知された塗布膜80中のマイクロカプセル欠損部S1に補修用マイクロカプセル40Aを少なくとも1つ充填することにより、塗布膜80中のマイクロカプセルの均一度を高める(すなわち製造させる表示装置20の表示特性を向上させる)工程である。
【0099】
具体的には、搬送ライン91により基板12が搬送され、基板12上に形成された塗布膜80中に存在するマイクロカプセル欠損部S1がインクジェットヘッド95の下方に位置したときに、インクジェットヘッド95が有する複数の吐出口951のうちから選択された少なくとも1つの吐出口951から補修用マイクロカプセル40Aを吐出し、マイクロカプセル欠損部S1に着弾させる。
【0100】
補修用マイクロカプセル40Aを吐出する吐出口951の選択と、選択した吐出口951からの補修用マイクロカプセル40Aの吐出は、吐出制御部98が検知部942の検知結果(マイクロカプセル欠損部S1の位置および形状)と、搬送ライン91の作動(すなわちインクジェットヘッド95に対する基板12の位置情報)に基づいて行う。吐出口951の選択としては、マイクロカプセル欠損部S1に補修用マイクロカプセル40Aを充填する(着弾させる)ことができれば、特に限定されないが、マイクロカプセル欠損部S1がインクジェットヘッド95の直下に搬送されてきたときに、基板12の平面視にて、マイクロカプセル欠損部S1に含まれる吐出口951(すなわち、マイクロカプセル欠損部S1の直上に位置する吐出口951)を、1つまたは複数選択すればよい。これにより、より確実に、マイクロカプセル欠損部S1に補修用マイクロカプセル40Aを充填することができる。
【0101】
例えば、図8に示すようなマイクロカプセル欠損部S1が存在する場合、まず、マイクロカプセル欠損部S1の先端部(搬送方向先端部)S11がインクジェットヘッド95の下方に位置した際に、先端部S11の直上に位置する吐出口951aおよび951bからそれぞれ補修用マイクロカプセル40Aを1粒吐出する。これにより、マイクロカプセル欠損部S1の先端部S11に補修用マイクロカプセル40Aが充填される。次いで、搬送ライン91によって基板12が補修用マイクロカプセル40Aの粒径とほぼ同じ距離を移動し、マイクロカプセル欠損部S1の後端部S12がインクジェットヘッド95の下方に位置した際に、後端部S12の直上に位置する吐出口951bから補修用マイクロカプセル40Aを1粒吐出する。これにより、マイクロカプセル欠損部S1の後端部S12に補修用マイクロカプセル40Aが充填される。以上により、図9に示すように、1つのマイクロカプセル欠損部S1に過不足なく補修用マイクロカプセル40Aが充填される。塗布膜80中に複数のマイクロカプセル欠損部S1が存在する場合には、各マイクロカプセル欠損部S1について前述と同様にして補修用マイクロカプセル40Aを充填する作業を行う。
【0102】
このような方法(補修用マイクロカプセル40Aの充填方法)によれば、簡単かつ確実に、マイクロカプセル欠損部S1にその大きさや形状に適した数の補修用マイクロカプセル40Aを充填することができる。そのため、補修用マイクロカプセル40Aが充填された後の塗布膜80中では、複数のマイクロカプセル(40、40A)を均一に配列させることができる。
【0103】
特に、本実施形態では、補修用マイクロカプセル40Aとして、マイクロカプセル40と同一のものを使用している。これにより、補修用マイクロカプセル40Aのカプセル強度を比較的高くすることができ、補修用マイクロカプセル40Aが、マイクロカプセル欠損部S1に着弾する際に衝撃で変形したり破壊したりするのを防止でき、補修用マイクロカプセル40Aを塗布膜80中に球形で存在させることができる。そのため、優れた表示特性を有する表示装置20を製造することができる。また、マイクロカプセル40と補修用マイクロカプセル40Aの電気泳動粒子の泳動特性を等しくすることができるため、この点によっても、優れた表示特性を有する表示装置20を製造することができる。
【0104】
また、補修用マイクロカプセル40Aの粒径が、マイクロカプセル40の粒径(体積平均粒径)とほぼ等しいため、マイクロカプセル欠損部S1に確実に少なくとも1つの補修用マイクロカプセル40Aを、実質的な変形を伴わずに充填することができる。そのため、塗布膜80中の各マイクロカプセル(40、40A)を球形に保ちつつ、かつ塗布膜80中のマイクロカプセル(40、40A)の均一度を高めることができるため、優れた表示特性を有する表示装置20を製造することができる。
【0105】
また、補修用マイクロカプセル40Aの粒径が、マイクロカプセル40の粒径(体積平均粒径)とほぼ等しいため、第1の電極3および第2の電極4間に所定電圧を印加した場合、塗布膜80(表示層400)中の各マイクロカプセル(40、40A)に同様の強さの電界を作用させることができる。そのため、各マイクロカプセル(40、40A)中の電気泳動粒子5の移動度合い(第1の電極3および第2の電極4間に所定電圧を印加した場合の単位時間当たりの移動距離)を互いに等しくすることができる。これにより、優れた表示特性を有する表示装置20を製造することができる。
【0106】
また、本工程で用いるインクジェットヘッド95のように、マイクロカプセル欠損部S1の形状や大きさに基づいて、複数の吐出口951から選択的に補修用マイクロカプセル40Aを吐出することにより、簡単かつ確実(高精度)に、マイクロカプセル欠損部S1に補修用マイクロカプセル40Aを充填することができる。また、装置90の構成が簡単なものとなる。
以上の工程により、基板12上に表示層400が形成された表示シート21が製造される。
【0107】
[A4]回路基板22の接合工程
次に、回路基板22と、前記工程[A3]で得られた表示シート21とを、基板12の反対側の面と第1の電極3とを接合することにより、表示シート21と回路基板22とが接合される。
[A5]封止部7の形成による封止工程
次に、基部2および対向基板11の縁部に沿って、封止部7を形成する。これは、基部2と対向基板11との間であって、これらの縁部に沿って封止部7を形成するための材料を、例えば、ディスペンサ等により供給し、固化または硬化させることにより形成することができる。
以上の工程を経て、図1に示す表示装置20が得られる。
【0108】
このようにして得られた表示装置20では、表示層400に含有されるマイクロカプセル40が球状をなし、表示層400中において、マイクロカプセル40(40A)は、表示層400の面方向に対して互いに接触した状態で配列し、かつ、その厚さ方向に対して重なることなく1列に配列している。その結果、表示装置20は、表示ムラの無い均一な表示と、優れたコントラストを発揮するものとなる。
【0109】
<第2実施形態>
次に、本発明の表示シートの製造方法の第2実施形態について説明する。
図10は、本発明の第2実施形態にかかる表示シート製造方法で用いられる装置の図である。
以下、第2実施形態の表示シートの製造方法について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0110】
本発明の第2実施形態にかかる表示シートの製造方法は、その製造に用いられる装置の構成が異なる以外は、第1実施形態の表示装置と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図10は、補修用マイクロカプセル40Aをマイクロカプセル欠損部S1に充填する工程[A3−4]で用いられるインクジェットヘッド95A(装置90の一部)である。同図に示すように、インクジェットヘッド95Aは、1つの吐出口951Aを有している。また、インクジェットヘッド95Aは、レール952Aに沿ってy方向に移動可能に設けられている。
【0111】
このようなインクジェットヘッド95Aは、マイクロカプセル欠損部S1の直上に吐出口951Aが位置するように移動しながら、吐出口951Aからマイクロカプセル欠損部S1に向けて補修用マイクロカプセル40Aを吐出する。この動作を繰り返すことにより1つのマイクロカプセル欠損部S1に複数の補修用マイクロカプセル40Aを充填したり、複数のマイクロカプセル欠損部S1にそれぞれ補修用マイクロカプセル40Aを充填したりする。
【0112】
なお、上記工程中、基板12は、搬送ライン91によって連続的に移動していてもよいし、移動と停止とを交互に繰り返し、停止している状態でインクジェットヘッド95Aから補修用マイクロカプセル40Aを吐出してもよい。
このような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0113】
<第3実施形態>
次に、本発明の表示シートの製造方法の第3実施形態について説明する。
図11は、本発明の第3実施形態にかかる表示シート製造方法で用いられる装置の図である。
以下、第3実施形態の表示シートの製造方法について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0114】
本発明の第3実施形態にかかる表示シートの製造方法は、その製造に用いられる装置の構成が異なる以外は、第1実施形態の表示装置と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図11は、補修用マイクロカプセル40Aをマイクロカプセル欠損部S1に充填する工程[A3−4]で用いられるインクジェットヘッド95B(装置90の一部)を示す。同図に示すように、インクジェットヘッド95Bは、1つの吐出口(吐出部)951Bを有している。また、インクジェットヘッド95Bは、レール952Bに沿ってy方向に移動可能に設けられている。また、レール952Bは、x方向に移動可能となっている。
【0115】
このような装置では、基板12を所定位置で停止させ、その状態でマイクロカプセル欠損部S1の直上に吐出口951Aが位置するようにレール952Bをx方向に移動させつつ、インクジェットヘッド95Bをy方向に移動させ、吐出口951Bからマイクロカプセル欠損部S1に向けて補修用マイクロカプセル40Aを吐出する。この動作を繰り返すことにより1つのマイクロカプセル欠損部S1に複数の補修用マイクロカプセル40Aを充填したり、複数のマイクロカプセル欠損部S1にそれぞれ補修用マイクロカプセル40Aを充填したりする。
このような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0116】
<電子機器>
以上のような表示装置20は、各種電子機器に組み込むことができる。以下、表示装置20を備える本発明の電子機器について説明する。
<<電子ペーパー>>
まず、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態について説明する。
【0117】
図12は、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
図12に示す電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。
このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、前述したような表示装置20で構成されている。
【0118】
<<ディスプレイ>>
次に、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態について説明する。
図13は、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。このうち、図13中(a)は断面図、(b)は平面図である。
図13に示すディスプレイ(表示装置)800は、本体部801と、この本体部801に対して着脱自在に設けられた電子ペーパー600とを備えている。なお、この電子ペーパー600は、前述したような構成、すなわち、図12に示す構成と同様のものである。
【0119】
本体部801は、その側部(図13(a)中、右側)に電子ペーパー600を挿入可能な挿入口805が形成され、また、内部に二組の搬送ローラ対802a、802bが設けられている。電子ペーパー600を、挿入口805を介して本体部801内に挿入すると、電子ペーパー600は、搬送ローラ対802a、802bにより挟持された状態で本体部801に設置される。
【0120】
また、本体部801の表示面側(図13(b)中、紙面手前側)には、矩形状の孔部803が形成され、この孔部803には、透明ガラス板804が嵌め込まれている。これにより、本体部801の外部から、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を視認することができる。すなわち、このディスプレイ800では、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を、透明ガラス板804において視認させることで表示面を構成している。
【0121】
また、電子ペーパー600の挿入方向先端部(図13中、左側)には、端子部806が設けられており、本体部801の内部には、電子ペーパー600を本体部801に設置した状態で端子部806が接続されるソケット807が設けられている。このソケット807には、コントローラー808と操作部809とが電気的に接続されている。
このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600は、本体部801に着脱自在に設置されており、本体部801から取り外した状態で携帯して使用することもできる。
【0122】
また、このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600が、前述したような表示装置20で構成されている。
なお、本発明の電子機器は、以上のようなものへの適用に限定されず、例えば、テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等を挙げることができ、これらの各種電子機器の表示部に、表示装置20を適用することが可能である。
【0123】
以上、本発明の表示シートの製造方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明の表示装置の製造方法は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成を組み合わせたものであってもよい。
【0124】
また、前記実施形態では、補修用マイクロカプセルをマイクロカプセル欠損部に充填する方法として、インクジェットヘッドを用いたインクジェット法を用いた形態について説明したがこれに限定されない。補修用マイクロカプセルをマイクロカプセル欠損部に充填する方法としては、例えば、ディスペンサ(液体定量吐出装置)を用いる方法や、マニュピュレーターを用いる方法等が挙げられる。これらの方法によっても、インクジェット法と同様に、高精度に補修用マイクロカプセルをマイクロカプセル欠損部に充填することができる。特に、実施形態中で述べたようなカプセル強度の補修用マイクロカプセルによれば、マニュピュレーターで補修用マイクロカプセルを挟んでも、補修用マイクロカプセルが潰れず、補修用マイクロカプセルの破壊を防止することができる。
【0125】
また、前記実施形態では、補修用マイクロカプセルとして、塗布膜中に含まれるマイクロカプセルと同様の構成のものを用いたが、これに限定されない。例えば、補修用マイクロカプセルのカプセル本体の構成がマイクロカプセルと異なっていてもよい。また、補修用マイクロカプセルの粒径が、マイクロカプセルの粒径と異なっていてもよい。ただし、マイクロカプセル欠損部へ充填されるため、補修用マイクロカプセルの粒径は、マイクロカプセルの粒径(体積平均粒径)以下であるのが好ましい。
【0126】
また、前記実施形態では、補修用マイクロカプセル分散液として、マイクロカプセル分散液と同様の構成のものを用いているが、これに限定されず、補修用マイクロカプセル分散液の構成をマイクロカプセル分散液の構成と異ならせてもよい。補修用マイクロカプセル分散液の構成としては、例えば、マイクロカプセル分散液に含まれているようなバインダーを用いずに、粘度の比較的低い水系媒体に補修用マイクロカプセルを分散させたものを用いてもよい。このような構成とすることにより、例えば吐出部から吐出させ易い粘度の補修用マイクロカプセル分散液を調整することができる。また、例えば、補修用マイクロカプセルのマイクロカプセル欠損部への充填をマニュピュレーターを用いて行う場合には、工程[A1−2]のようにして得られた補修用マイクロカプセルを、水系媒体に分散した状態で保存し、必要時(充填時)に前記水系媒体から補修用マイクロカプセルを取り出すようにしてもよい。
【0127】
また、前記第1実施形態では、複数の吐出口がy方向に1列に並んだインクジェットヘッドについて説明したが、インクジェットヘッドの構成としては、これに限定されず、例えば、y方向に配列した複数の吐出口を有する吐出口群が、x方向に複数列設けられている構成であってもよい。
また、前記実施形態では、撮像素子を用いてマイクロカプセル欠損部を検知し、インクジェットヘッドを用いてマイクロカプセル欠損部に補修用マイクロカプセルを充填する構成について説明したが、これに限定されず、例えば、作業者が目視によりマイクロカプセル欠損部を検知し、作業者がピンセット等の器具を用いて検知したマイクロカプセル欠損部に補修用マイクロカプセルを充填してもよい。
【符号の説明】
【0128】
1‥‥基部 2‥‥基部 3‥‥第1の電極 4‥‥第2の電極 5‥‥電気泳動粒子(表示粒子) 5a‥‥白色粒子 5b‥‥着色粒子(黒色粒子) 6‥‥液相分散媒 7‥‥封止部 10‥‥電気泳動分散液 100‥‥マイクロカプセル分散液 100A‥‥補修用マイクロカプセル分散液 11‥‥対向基板 12‥‥基板 20‥‥表示装置 21‥‥表示シート 22‥‥回路基板 40、40a、40b、40c‥‥マイクロカプセル 40A‥‥補修用マイクロカプセル 41‥‥バインダー 400‥‥表示層 401‥‥カプセル本体 402‥‥第1のカプセル層 403‥‥第2のカプセル層 600‥‥電子ペーパー 601‥‥本体 602‥‥表示ユニット 80‥‥塗布膜 800‥‥ディスプレイ 801‥‥本体部 802a、802b‥‥搬送ローラ対 803‥‥孔部 804‥‥透明ガラス板 805‥‥挿入口 806‥‥端子部 807‥‥ソケット 808‥‥コントローラー 809‥‥操作部 90‥‥装置 91‥‥搬送ライン 92‥‥ダイコーター 921、922‥‥ヘッド 923‥‥流路 93‥‥電極 931‥‥電極部 94‥‥撮像部 941‥‥スキャナー 942‥‥検知部 95、95A、95B‥‥インクジェットヘッド 951、951A、951a、951B、951b‥‥吐出口 952A、952B‥‥レール 96、97‥‥貯留タンク 98‥‥吐出制御部 S1‥‥マイクロカプセル欠損部 S11‥‥先端部 S12‥‥後端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を移動可能に収容する複数のマイクロカプセルを含む表示層を有する表示シートの製造方法であって、
基材の表面に前記複数のマイクロカプセルを含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
前記塗布膜中の前記マイクロカプセルの均一度を検知する検知工程と、
前記検知工程の検知結果に基づいて前記塗布液中の前記マイクロカプセルの密度を修正する修正工程とを有することを特徴とする表示シートの製造方法。
【請求項2】
前記検知工程では、単位面積当たりの前記マイクロカプセルの数が閾値以下のマイクロカプセル欠損部を検知し、前記補修工程では、前記マイクロカプセル欠損部に少なくとも1つの補修用マイクロカプセルを補填する請求項1に記載の表示シートの製造方法。
【請求項3】
前記検知工程では、前記塗布膜中の前記マイクロカプセルの体積平均粒径以上の径を有する球体を収容可能な部位を前記マイクロカプセル欠損部として検知する請求項2に記載の表示シートの製造方法。
【請求項4】
前記塗布液中において、前記マイクロカプセルは、球状をなして存在している請求項2または3に記載の表示シートの製造方法。
【請求項5】
前記補修用マイクロカプセルの粒径は、前記マイクロカプセルの前記体積平均粒径以下である請求項2ないし4のいずれかに記載の表示シートの製造方法。
【請求項6】
前記マイクロカプセルのカプセル強度は、0.6MPa以上である請求項2ないし5のいずれかに記載の表示シートの製造方法。
【請求項7】
前記塗布膜中の前記マイクロカプセルの密度を検知する際、または前記塗布膜が形成されてから前記塗布膜中の前記マイクロカプセルの密度を検知するまでに、前記塗布膜中の前記マイクロカプセルに電界を作用させ、前記マイクロカプセル中の前記粒子を移動させ可視化する請求項2ないし6のいずれかに記載の表示シートの製造方法。
【請求項8】
前記修正工程は、前記補修用マイクロカプセルを吐出する吐出部によって、前記マイクロカプセル欠損部に向けて前記補修用マイクロカプセルを吐出することにより行われる請求項2ないし7のいずれかに記載の表示シートの製造方法。
【請求項9】
前記基材は、所定方向に移動可能に設けられており、
前記吐出部は、前記基材の平面視にて、前記所定方向に直交する方向に複数設けられており、前記複数の吐出部のうち前記マイクロカプセル欠損部に対応する前記吐出部から前記補修用マイクロカプセルを吐出する請求項8に記載の表示シートの製造方法。
【請求項10】
前記吐出部は、前記基材の平面視にて、少なくとも一方向に移動可能に設けられており、前記吐出部を前記マイクロカプセル欠損部に対応する位置に移動するとともに前記吐出部から前記補修用マイクロカプセルを吐出する請求項8に記載の表示シートの製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の表示シートの製造方法により製造されたことを特徴とする表示シート。
【請求項12】
請求項11に記載の表示シートを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項13】
請求項12に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−232395(P2011−232395A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99993(P2010−99993)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】