説明

表示切替装置および電子機器

【課題】 表示車の表示を速やかに切り替えることができる表示切替装置および電子機器を提供する。
【解決手段】 第2ステップモータ14の回転が第4、第5の各中間車19、20を介して伝達されて回転する差動車23を備え、この差動車23が、第5中間車20に噛み合って回転する第1差動歯車26と、表示車4を回転させて表示を切り替えるための送り車24に噛み合って回転すると共に規制部材25によって回転が係脱可能に規制される第2差動歯車27と、この第2差動歯車27に対する第1差動歯車26の回転による位置ずれを回転力として第2差動歯車27に付与する回転力付与部材28とを備えている。従って、第2差動歯車27の回転が規制部材25によって規制されて、第1差動歯車26と第2差動歯車27とが回転方向に位置ずれし、この状態で第2差動歯車27に対する規制部材25の規制が解除されると、第2差動歯車27が速やかに回転し、表示車4を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、時計やカレンダー装置、あるいは計器類のメータなどの機器に用いられる表示切替装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計に用いられている表示切替装置においては、特許文献1に記載されているように、ステップモータの回転を中間車によって指針車に伝達し、この指針車の回転を他の中間車によってゼネバ車である伝達車に伝達し、この伝達車の回転に伴ってツメ車を回転させ、このツメ車によって送り車を間欠的に回転させることにより、この送り車によって表示車を回転させて、表示車の表示を切り替えるように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−198437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような腕時計の表示切替装置では、ツメ車が伝達車によって24時間で1回転し、このツメ車が1回転するごとに送り車を所定角度ずつ回転させ、この送り車の所定角度の回転によって表示車を所定角度回転させて表示を切り替えるように構成されているため、表示車が回転を開始してから表示の切り替わりが完了するまでに要する時間が、3時間〜4時間程度必要であり、その間は表示が中途半端にずれた状態で表示されているという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、表示車の表示を速やかに切り替えることができる表示切替装置および電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、駆動源の回転が伝達されて回転する伝達車と、この伝達車の回転によって回転する差動車と、この差動車の回転によって間欠的に回転する送り車と、この送り車の回転によって回転して表示が切り替わる表示車と、前記差動車の回転を係脱可能に規制する規制部材とを備えた表示切替装置であって、前記差動車は、前記伝達車に噛み合って回転する第1差動歯車と、この第1差動歯車と同一軸上に回転可能に設けられ、且つ前記送り車に噛み合って回転すると共に前記規制部材によって回転が係脱可能に規制される第2差動歯車と、この第2差動歯車に対する前記第1差動歯車の回転による位置ずれを回転力として前記第2差動歯車に付与する回転力付与部材とを備えていることを特徴とする表示切替装置である。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、表示車の表示が切り替わる際に、差動車の第1差動歯車が伝達車によって回転しても、第2差動歯車が規制部材によって回転が規制されて、第1差動歯車と第2差動歯車とが回転方向に位置ずれし、この位置ずれによる回転力を回転力付与部材によって第2差動歯車に付与することができる。このため、第2差動歯車に対する規制部材の規制が解除されると、第1差動歯車に対して位置ずれしている第2差動歯車を速やかに回転させることができ、これにより表示車の表示を速やかに切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明を指針式の電子腕時計に適用した一実施形態における時計モジュールを示した拡大裏面図である。
【図2】図1に示された時計モジュールにおける第1駆動系を示した要部の拡大断面図である。
【図3】図1に示された時計モジュールにおける第2駆動系を示した要部の拡大断面図である。
【図4】図1に示された時計モジュールの拡大平面図である。
【図5】図4に示された時計モジュールにおける表示切替装置の差動車を示し、(a)は第1差動歯車と第2差動歯車との回転位置がずれた状態を示した要部の分解平面図、(b)は第1差動歯車と第2差動歯車との各磁極が互いに引き合って一致した状態を示した要部の分解平面図である。
【図6】図4に示された時計モジュールにおける規制部材を示した要部の拡大断面図である。
【図7】図4に示された時計モジュールにおいて第2差動歯車に対する規制部材の規制が解除された状態を示した拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1〜図7を参照して、この発明を指針式の電子腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この電子腕時計は、図1に示すように、腕時計ケース内に組み込まれる時計モジュールMを備えている。この時計モジュールMは、図1〜図3に示すように、秒針1および分針2を駆動する第1駆動系5と、時針3および表示車4を駆動する第2駆動系6とを備えている。
【0010】
第1駆動系5は、図1および図2に示すように、第1ステップモータ7と、この第1ステップモータ7によって回転する五番車8と、この五番車8によって回転する四番車である秒針車9と、この秒針車9によって回転する三番車10と、この三番車10によって回転する二番車である分針車11とを備え、これらが地板12と輪列受け13との間に中受け29を介して配置された構成になっている。
【0011】
この場合、第1ステップモータ7は、図1および図2に示すように、ステータ7aと、このステータ7aに設けられたコイル部7bと、ステータ7aの間に配置されたロータ7cとを備え、コイル部7bによってステータ7aに発生する磁界により、ロータ7cがステップ回転するように構成されている。五番車8は、ロータ7cのロータカナ7dに噛み合って回転するように構成されている。
【0012】
四番車である秒針車9は、図1および図2に示すように、五番車8のカナ8aに噛み合って回転し、秒針1を運針させるように構成されている。この秒針車9は、秒針軸9aを備えている。この秒針軸9aは、地板12の上方に突出し、この突出した上端部に秒針1が取り付けられている。また、三番車10は、秒針車9のカナ9bに噛み合って回転するように構成されている。
【0013】
二番車である分針車11は、図1および図2に示すように、三番車10のカナ10aに噛み合って回転し、分針2を運針させるように構成されている。この分針車11は、筒状の分針軸11aを備えている。この分針軸11aは、その内部に秒針軸9aが回転可能に挿入されている。また、この分針軸11aは、秒針軸9aと共に地板12の上方に突出し、この突出した上端部に分針2が取り付けられている。
【0014】
一方、第2駆動系6は、図1および図3に示すように、第2ステップモータ14と、この第2ステップモータ14の回転が順次伝達される第1〜第3の各中間車15〜17と、この第3中間車17によって回転する筒車である時針車18と、この時針車18の回転が順次伝達される第4、第5の各中間車19、20と、この第5中間車20によって動作する表示切替装置21とを備えている。
【0015】
この場合、第2駆動系6の第2ステップモータ14および第1〜第3の各中間車15〜17は、第1駆動系5と同様、地板12と輪列受け13との間に中受け29を介して配置されている。また、この第2駆動系6における時針車18、第4、第5の各中間車19、20、および表示切替装置21は、図3に示すように、地板12と押え板22との間に配置されている。
【0016】
第2ステップモータ14は、図1および図3に示すように、ステータ14aと、このステータ14aに設けられたコイル部14bと、ステータ14aの間に配置されたロータ14cとを備え、コイル部14bによってステータ14aに発生する磁界により、ロータ14cがステップ回転するように構成されている。
【0017】
第1中間車15は、図1および図3に示すように、ロータ14cのロータカナ14dに噛み合って回転するように構成されている。第2中間車16は第1中間車15のカナ15aに噛み合って回転するように構成されている。第3中間車17は第2中間車16のカナ16aに噛み合って回転するように構成されている。筒車である時針車18は、図3に示すように、第3中間車17のカナ17aに噛み合って回転し、時針3を運針させるように構成されている。
【0018】
この時針車18は、図2および図3に示すように、筒状の時針軸18aを備えている。この時針車18は、その時針軸18aの内部に分針軸11aが回転可能に挿入された状態で、地板12上に配置された押え板22によって回転可能に押えられた構成になっている。この時針軸18aの上端部には、時針3が取り付けられている。この時針3は、12時間で1周回転して時刻を12時間表示するものであり、1日(24時間)に2周回転するように構成されている。
【0019】
この場合、押え板22の上面には、図2および図3に示すように、文字板30が配置されている。この文字板30には、秒針1、分針2、時針3の各針軸9a、11a、18aが下側から挿入して文字板30の上方に突出する貫通孔30aが設けられている。これにより、秒針1、分針2、時針3は、その各針軸9a、11a、18aが文字板30の貫通孔30aを通して文字板30の上方に突出し、この突出した各針軸9a、11a、18aの各上端部に取り付けられ、この状態で各針軸9a、11a、18aの回転に伴って文字板30の上方を運針するように構成されている。
【0020】
ところで、表示切替装置21は、図3および図4に示すように、時針車18に噛み合って回転する第4中間車19と、この第4中間車19のカナ19aに噛み合って回転する第5中間車20と、この第5中間車20のカナ20aによって回転する差動車23と、この差動車23によって間欠的に回転する送り車24と、この送り車24によって回転する表示車4と、差動車23の回転を係脱可能に規制する規制部材25とを備え、これらが地板12と押え板22との間に配置された構成になっている。
【0021】
差動車23は、図3〜図5に示すように、第5中間車20のカナ20aに噛み合って回転する第1差動歯車26と、この第1差動歯車26と同一軸上に回転可能に設けられ、且つ送り車24に噛み合って回転すると共に規制部材25によって回転が係脱可能に規制される第2差動歯車27と、この第2差動歯車27に対する第1差動歯車26の回転による位置ずれを回転力として第2差動歯車27に付与する回転力付与部材28とを備えている。
【0022】
この場合、第1差動歯車26は、着磁性を有する金属からなり、図3および図4に示すように、地板12と押え板22との間に設けられた支持軸23aに回転自在に取り付けられている。この第1差動歯車26は、その外周部の歯部26aが第5中間車20のカナ20aに噛み合い、この状態で第5中間車20の回転によって回転するように構成されている。この第1差動歯車26は、時針3が1日に2周回転する際に、所定角度、例えば30度〜55度の範囲で、好ましくは48度回転するように構成されている。
【0023】
第2差動歯車27は、着磁性を有する金属からなり、図3および図4に示すように、第1差動歯車26が取り付けられた支持軸23aに第1差動歯車26と重なり合う状態で回転自在に取り付けられている。この第2差動歯車27は、その外周部の歯部27aが送り車24に噛み合い、この状態で規制部材25による規制が解除された際に、回転して送り車24を回転させるように構成されている。
【0024】
これにより、第1差動歯車26と第2差動歯車27とは、図3〜図5に示すように、第2差動歯車27の回転が規制部材25によって規制された状態で、第1差動歯車26が第5中間車20によって回転することにより、第1差動歯車26の回転位置が第2差動歯車27に対してずれるように構成されている。
【0025】
回転力付与部材28は、図5(a)および図5(b)に示すように、第1差動歯車26に着磁された第1磁石部31と、第2差動歯車27に着磁された第2磁石部32とを備え、第1磁石部31の磁極(N、S)と第2磁石部32の磁極(S、N)とが互いに吸引し合うように構成されている。これにより、回転力付与部材28は、第2差動歯車27に対する第1差動歯車26の回転による位置ずれを回転力として第2差動歯車27に付与するように構成されている。
【0026】
すなわち、この回転力付与部材28は、図5(a)および図5(b)に示すように、第1差動歯車26の回転位置が第2差動歯車27に対してずれた状態で、第2差動歯車27に対する規制部材25による規制が解除された際に、第1磁石部31の磁極(N、S)に第2磁石部32の磁極(S、N)が吸引されることにより、第2差動歯車27を回転させるように構成されている。
【0027】
一方、規制部材25は、図4および図6に示すように、差動車23の第2差動歯車27の回転を規制する規制レバー33と、第2差動歯車27に対する規制レバー33による規制を解除する規制解除車34と、この規制解除車34を回転させる第6中間車35とを備えている。この場合、第6中間車35は、筒車である時針車18に噛み合って回転するように構成されている。
【0028】
規制解除車34は、図4および図6に示すように、地板12と押え板22との間に回転自在に設けられた回転軸36に取り付けられている。この規制解除車34は、その外周部の歯部34aが第6中間車35のカナ35aに噛み合い、この状態で第6中間車35の回転に伴って回転するように構成されている。また、この規制解除車34は、その中心にカム車37が設けられている。このカム車37は、その外周部にカム突起37aが設けられ、時針車18が1日に2周回転する際に、規制解除車34と共に1回転(360度回転)するように構成されている。
【0029】
規制レバー33は、図6に示すように、地板12と押え板22との間に回転自在に設けられた回転軸38に取り付けられている。この規制レバー33は、図4および図6に示すように、差動車23の第2差動歯車27の回転を規制する規制アーム部40と、規制解除車34のカム車37の外周部に配置される連動アーム部41と、規制アーム部40の先端部40aを第2差動歯車27の歯部27a間に弾接させると共に、連動アーム部41の先端部をカム車37の外周部に弾接させるばね部42とを備えている。
【0030】
この場合、ばね部42は、図4に示すように、その先端部が固定ピン43に当接して位置規制されている。これにより、規制レバー33は、図7に示すように、規制解除車34のカム車37が第6中間車35によって1回転すると、規制アーム部40の先端部40aがカム車37のカム突起37aによって押され、これによりばね部42のばね力に抗して規制アーム部40が回転軸38を中心に回転し、規制アーム部40の先端部40aが第2差動歯車27の歯部27aから離れ、第2差動歯車27に対する規制を解除するように構成されている。
【0031】
ところで、送り車24は、図3および図4に示すように、差動車23の外周面の近傍に配置された状態で、差動車23の第2差動歯車27が回転した際に、所定角度だけ間欠的に回転して、表示車4を所定角度だけ回転させるように構成されている。この送り車24は、図3に示すように、その中心部に回転軸24bが設けられ、この回転軸24bが地板12と押え板22との間に回転自在に取り付けられた構成になっている。
【0032】
この送り車24の外周には、図3および図4に示すように、差動車23の第2差動歯車27の歯部27aに噛み合うと共に、表示車4の後述する内歯4aに噛み合う複数の歯部24aが設けられている。この送り車24は、その複数の歯部24aが全部で6枚であり、そのいずれか1つの歯部24aが第2差動歯車27の歯部27aに噛み合って回転するように構成されている。
【0033】
表示車4は、図3および図4に示すように、例えば日車であり、平板状のリング形状に形成されている。この表示車4の表面には、1日〜31日に相当する日付表示(図示せず)が等間隔で表示されている。また、この表示車4は、図3に示すように、その内周部に内歯4aが設けられ、この内歯4aに送り車24の各歯部24aが順次噛み合うように構成されている。
【0034】
これにより、表示車4は、図3および図4に示すように、送り車24の間欠的な回転に伴って所定角度だけ回転し、文字板30の表示窓部30bに対応する日付表示が切り替わるように構成されている。この場合、表示窓部30bは、文字板30の3時位置に設けられている。また、表示車4は、図4および図5に示すように、表示窓部30bに対応する日付表示が切り替わる際に、差動車23の第2差動歯車27の回転によって速やかに回転して、表示窓部30bに対応する日付表示が切り替わるように構成されている。
【0035】
次に、このような指針式の電子腕時計における表示切替装置21の作用について説明する。
この表示切替装置21は、第2ステップモータ14の回転が筒車である時針車18に伝達され、この時針車18が1日に2周回転する際に、時針車18の回転が第4、第5の各中間車19、20によって差動車23の第1差動歯車26に伝達される。このときには、第1差動歯車26は回転するが、差動車23の第2差動歯車27はその回転が規制部材25によって規制されているので、回転しない。
【0036】
すなわち、規制部材25は、時針車18の回転が第6中間車35を介して規制解除車34に伝達され、この規制解除車34がカム車37と共に回転し、規制レバー33の連動アーム部41の先端部がカム車37の外周面に沿って摺動する。しかし、このときには、連動アーム部41の先端部がカム車37のカム突起37aに到達していない。このため、規制レバー33は、図4に示すように、その規制アーム部40の先端部40aがばね部42のばね力によって第2差動歯車27の歯部27a間に押し付けられている。これにより、第2差動歯車27は規制部材25によって回転が規制されている。
【0037】
このように、時針車18が1日に2周回転する際には、図5(a)に示すように、差動車23の第1差動歯車26が所定角度、例えば30度〜55度の角度範囲で、好ましくは48度回転しても、第2差動歯車27は、規制部材25の規制レバー33によって規制されていることにより、回転しない。
【0038】
このため、第1差動歯車26と第2差動歯車27とは、図5(a)に示すように、互いに重なり合う状態で、第1差動歯車26の回転位置が第2差動歯車27の回転位置に対してずれた状態になり、第1差動歯車26の第1磁石部31の磁極と第2差動歯車27の第2磁石部32の磁極とが、30度〜55度の角度範囲で、好ましくは48度の角度でずれた状態になる。
【0039】
この状態で、時針車18が2周回転すると、第2差動歯車27に対する規制部材25の規制が解除される。すなわち、時針車18が2周回転すると、図7に示すように、規制解除車34が1回転し、これに伴ってカム車37も1回転するので、このカム車37のカム突起37aによって連動アーム部41の先端部が押される。これにより、連動アーム部41がばね部42のばね力に抗して回転軸38を中心に回転し、規制アーム部40の先端部40aが第2差動歯車27の歯部27a間から離れ、第2差動歯車27に対する規制が解除される。
【0040】
このように第2差動歯車27に対する規制が解除されると、第1差動歯車26の第1磁石部31の磁極と第2差動歯車27の第2磁石部32の磁極とが、磁力の吸引力によって互いに引き合い、これにより図5(b)に示すように、第2差動歯車27が速やかに所定角度回転する。
【0041】
すなわち、第1差動歯車26の第1磁石部31の磁極と第2差動歯車27の第2磁石部32の磁極とが、図5(a)に示すように、ずれた状態であるため、第2差動歯車27の第2磁石部32の磁極が第1差動歯車26の第1磁石部31の磁極に、磁力の吸引力によって引き寄せられ、これにより図5(b)に示すように、第2差動歯車27が速やかに回転する。
【0042】
このように第2差動歯車27が速やかに回転すると、図4に示すように、この第2差動歯車27の回転によって送り車24が所定角度だけ速やかに回転し、この送り車24の回転によって表示車4が速やかに所定角度回転する。これにより、文字板30の表示窓部30aに対応する表示車4の日付表示が速やかに切り替わる。
【0043】
このように日付表示が切り替わった後は、時針車18の回転に伴って差動車23の第1差動歯車26が回転すると共に、規制部材25の規制解除車34もカム車37と共に回転する。このときには、規制部材25の規制レバー33における連動アーム部41の先端部がカム突起37aを乗り越えるので、規制アーム部40がばね部42のばね力によって第2差動歯車27に向けて押され、規制アーム部40の先端部40aが第2差動歯車27の歯部27a間に挿入して第2差動歯車27の回転が規制される。これにより、次の表示切替の準備が行われる。
【0044】
このように、この表示切替装置21によれば、駆動源である第2ステップモータ14の回転が伝達車である第4、第5の各中間車19、20を介して伝達されて回転する差動車23と、この差動車23の回転によって間欠的に回転する送り車24と、この送り車24の回転によって回転して表示が切り替わる表示車4と、差動車23の回転を係脱可能に規制する規制部材25とを備え、差動車23は、第5中間車20に噛み合って回転する第1差動歯車26と、この第1差動歯車26と同一軸上に回転可能に設けられ、且つ送り車24に噛み合って回転すると共に規制部材25によって回転が係脱可能に規制される第2差動歯車27と、この第2差動歯車27に対する第1差動歯車26の回転による位置ずれを回転力として第2差動歯車27に付与する回転力付与部材28とを備えていることにより、表示車4の表示を速やかに切り替えることができる。
【0045】
すなわち、この表示切替装置21では、表示車4の表示が切り替わる際に、差動車23の第1差動歯車26が第5中間車20によって回転しても、第2差動歯車27が規制部材25によって回転が規制されて、第1差動歯車26と第2差動歯車27とが回転方向に位置ずれし、この位置ずれによる回転力を回転力付与部材28によって第2差動歯車27に付与することができる。このため、第2差動歯車27に対する規制部材25の規制が解除されると、第1差動歯車26に対して位置ずれしている第2差動歯車27を速やかに回転させることができ、これにより表示車4の表示を速やかに切り替えることができる。
【0046】
この場合、回転力付与部材28は、第1差動歯車26に着磁された第1磁石部31と、第2差動歯車27に着磁された第2磁石部32とを備え、第1磁石部31の磁極(N、S)と第2磁石部32の磁極(S、N)とが互いに吸引し合う構成であるから、第2差動歯車27に対する第1差動歯車26の回転方向の位置ずれを磁力の吸引力による回転力として第2差動歯車27に確実に且つ良好に付与することができると共に、磁力による吸引力を利用していることにより、構造が簡単で、部品点数も少なく、組立作業も容易にできる。
【0047】
また、この表示切替装置21では、規制部材25が、差動車23の第2差動歯車27の回転を規制する規制レバー33と、第2差動歯車27に対する規制レバー33による規制を解除する規制解除車34とを備えていることにより、規制解除車34が1回転すると、第2差動歯車27に対する規制レバー33の規制を解除することができ、これにより第1差動歯車26に対して位置ずれしている第2差動歯車27を速やかに回転させることができる。
【0048】
この場合、規制レバー33は、差動車23の第2差動歯車27の回転を規制する規制アーム部40と、規制解除車34のカム車37の外周部に配置される連動アーム部41と、規制アーム部40の先端部40aを第2差動歯車27の歯部27a間に弾接させると共に、連動アーム部41の先端部をカム車37の外周部に弾接させるばね部42とを備えており、規制解除車34は、外周部にカム突起37aが設けられたカム車37を備えているので、規制解除車34が1回転する際に、カム車37によって規制レバー33の規制アーム部40の先端部40aを第2差動歯車27から確実に離すことができ、これにより第2差動歯車27に対する規制を確実に且つ良好に解除することができる。
【0049】
すなわち、規制レバー33は、規制解除車34がカム車37と共に1回転すると、カム突起37aによって連動アーム部41が押されて回転して規制アーム部40をばね部42のばね力に抗して引き離すことができ、これにより規制アーム部40の先端部40aを第2差動歯車27から離脱させることができるので、第2差動歯車27に対する規制を確実に且つ速やかに解除することができる。
【0050】
この場合、規制レバー33は、規制アーム部40の先端部40aが第2差動歯車27の歯部27a間に挿入して第2差動歯車27の回転を規制しているので、この第2差動歯車27によって送り車24の回転を確実に規制することができると共に、この送り車24によって表示車4の回転をも確実に規制することができる。これにより、表示車4の回転方向におけるガタツキを防ぐことができるので、表示車4の表示を常に安定させた状態で維持することができる。
【0051】
また、この表示切替装置21では、駆動源である第2ステップモータ14の回転が伝達されて回転する時針車18の回転に伴って第4、第5の各中間車19、20が回転し、この第4、第5の各中間車19、20の回転によって差動車23の第1差動歯車26が回転する構成であるか、差動車23の第1差動歯車26を回転させるための専用の駆動源を必要とせず、時針車18を回転させるための第2ステップモータ14で兼用することができ、これにより駆動源の簡素化を図ることができると共に、低コスト化をも図ることができる。
【0052】
さらに、この表示切替装置21では、駆動源である第2ステップモータ14の回転が伝達されて回転する時針車18の回転に伴って規制解除車34が第6中間車35を介して回転する構成であるから、規制解除車34を回転させるための専用の駆動源を必要とせず、時針車18を回転させるための第2ステップモータ14で兼用することができ、これによっても駆動源の簡素化を図ることができると共に、低コスト化をも図ることができる。
【0053】
なお、上述した実施形態では、第1、第2の各差動歯車26、27が着磁性を有する金属からなる場合について述べたが、これに限らず、第1、第2の各差動歯車26、27を合成樹脂で形成して、この第1、第2の各差動歯車26、27にそれぞれ第1、第2の各磁石を埋め込んだ構成であっても良く、また合成樹脂に磁性材を含有させて第1、第2の各磁石を着磁させた構成であっても良い。
【0054】
また、上述した実施形態では、第1駆動系5と第2駆動系6とを有する腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも第1、第2の各駆動系5、6を備えている必要はなく、1つの駆動系のみを有する腕時計にも適用することができる。
【0055】
さらに、上述した実施形態では、指針式の腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の指針式の時計に適用することができる。また、時計に限らず、カレンダー装置や、計器類のメータなどの各種の機器に広く適用することができる。
【0056】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0057】
(付記)
請求項1に記載の発明は、駆動源の回転が伝達されて回転する伝達車と、この伝達車の回転によって回転する差動車と、この差動車の回転によって間欠的に回転する送り車と、この送り車の回転によって回転して表示が切り替わる表示車と、前記差動車の回転を係脱可能に規制する規制部材とを備えた表示切替装置であって、
前記差動車は、前記伝達車に噛み合って回転する第1差動歯車と、この第1差動歯車と同一軸上に回転可能に設けられ、且つ前記送り車に噛み合って回転すると共に前記規制部材によって回転が係脱可能に規制される第2差動歯車と、この第2差動歯車に対する前記第1差動歯車の回転による位置ずれを回転力として前記第2差動歯車に付与する回転力付与部材とを備えていることを特徴とする表示切替装置である。
【0058】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の表示切替装置において、前記回転力付与部材は、前記第1差動歯車に着磁された第1磁石部と、前記第2差動歯車に着磁された第2磁石部とを備え、前記第1磁石部の磁極と前記第2磁石部の磁極とが互いに吸引し合うことを特徴とする表示切替装置である。
【0059】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の表示切替装置において、前記規制部材は、前記差動車の前記第2差動歯車の回転を規制する規制レバーと、前記第2差動歯車に対する前記規制レバーによる規制を解除する規制解除車とを備えていることを特徴とする表示切替装置である。
【0060】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表示切替装置において、前記伝達車は、前記駆動源の回転が伝達されて回転する指針車の回転に伴って回転することを特徴とする表示切替装置である。
【0061】
請求項5に記載の発明は、請求項3または請求項4に記載の表示切替装置において、前記規制解除車は、前記駆動源の回転が伝達されて回転する前記指針車の回転に伴って回転することを特徴とする表示切替装置である。
【0062】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の表示切替装置を機器ケースに設けていることを特徴とする電子機器である。
【符号の説明】
【0063】
1 秒針
2 分針
3 時針
4 表示車
5 第1駆動系
6 第2駆動系
14 第2ステップモータ
18 時針車
19、20 第4、第5の各中間車
21 表示切替装置
23 差動車
24 送り車
25 規制部材
26 第1差動歯車
27 第2差動歯車
28 回転力付与部材
30 文字板
31 第1磁石部
32 第2磁石部
33 規制レバー
34 規制解除車
37 カム車
40 規制アーム部
41 連動アーム部
42 ばね部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の回転が伝達されて回転する伝達車と、この伝達車の回転によって回転する差動車と、この差動車の回転によって間欠的に回転する送り車と、この送り車の回転によって回転して表示が切り替わる表示車と、前記差動車の回転を係脱可能に規制する規制部材とを備えた表示切替装置であって、
前記差動車は、前記伝達車に噛み合って回転する第1差動歯車と、この第1差動歯車と同一軸上に回転可能に設けられ、且つ前記送り車に噛み合って回転すると共に前記規制部材によって回転が係脱可能に規制される第2差動歯車と、この第2差動歯車に対する前記第1差動歯車の回転による位置ずれを回転力として前記第2差動歯車に付与する回転力付与部材とを備えていることを特徴とする表示切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示切替装置において、前記回転力付与部材は、前記第1差動歯車に着磁された第1磁石部と、前記第2差動歯車に着磁された第2磁石部とを備え、前記第1磁石部の磁極と前記第2磁石部の磁極とが互いに吸引し合うことを特徴とする表示切替装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表示切替装置において、前記規制部材は、前記差動車の前記第2差動歯車の回転を規制する規制レバーと、前記第2差動歯車に対する前記規制レバーによる規制を解除する規制解除車とを備えていることを特徴とする表示切替装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表示切替装置において、前記伝達車は、前記駆動源の回転が伝達されて回転する指針車の回転に伴って回転することを特徴とする表示切替装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の表示切替装置において、前記規制解除車は、前記駆動源の回転が伝達されて回転する前記指針車の回転に伴って回転することを特徴とする表示切替装置。
【請求項6】
請求項1に記載の表示切替装置を機器ケースに設けていることを特徴とする電子機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108795(P2013−108795A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252793(P2011−252793)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)