説明

表示媒体、表示素子、及び表示方法

【課題】広い明度範囲の色を呈示可能な表示媒体、表示素子、及び表示方法の提供。
【解決手段】表示媒体は12は、背面基板16、該背面基板16に間隙をもって対向して設けられた表示基板20、複数の間隙部材26、調光層18、第1の電極、第2の電極24を含んで構成され、調光層は分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子30と、前記電荷移動性微粒子30より移動度が小さく且つ前記電荷移動性微粒子30の呈示可能な明度範囲外の明度の色を呈する第1の異性粒子20と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体、表示素子、及び表示方法に係り、特に、分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子を用いた表示媒体、表示素子、及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高度情報化社会の進展にともない電子ペーパーシステム、カラー表示システム、大面積表示システムへのニーズが増大している。これらを実現する技術としてCRT、液晶、EL、LED、プラズマなどの表示技術が開発されてきた。また、これらの自発光システムのほかに、低消費電力で人間の目に違和感の少ない反射型表示システムの開発が検討されている。反射型表示システムとしては、反射型液晶技術などが有力なものとなっている。
【0003】
一方、次世代電子ペーパー表示システムに対するニーズは大きいが、それを実現する有望な技術が確立されていないのが現状である。候補方式としては、電気泳動方式、液晶方式、及び有機EL方式等が知られている。
【0004】
液晶方式はフィルター方式のため、媒体の厚さと重さを薄く軽くすることが困難であり、更に、有機EL方式は、自己発光性の為、メモリー性がなく用途の幅が制限されるという問題があった。
【0005】
一方、電気泳動方式を用いた表示媒体としては、以下のような技術が開示されている。
例えば、特許文献1及び特許文献2の技術に示されるように、一対の電極間に分散媒及び電気泳動粒子を封入したマイクロカプセルを配送する方法や、磁性流体を内包したマイクロカプセルを使用した磁気泳動方式が報告されている。
【0006】
さらに、単一のマイクロカプセル中に複数の着色粒子を混合状態で配設し、この粒子を選択的に駆動する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
しかしながら、いずれの方法もマイクロカプセルを使用するため、微細なドット表示やフルカラー表示が困難であった。また、特許文献1の技術では、粒子を選択的に駆動することは原理的に困難であった。
【0008】
フルカラー表示を実現可能な技術としては、特許文献4に示されるような、所定間隙を開けた状態に配置された一対の基板の面に沿って分割された複数の区画にほぼ等しい量ずつ帯電泳動粒子を配置し、分散媒を青色、帯電泳動粒子を黒色とする技術が開示されている。特許文献4の技術によれば、異なる色の分散媒を用意することにより、フルカラー表示が可能となる。
また、電気泳動した微粒子を収容する複数の収容部を設け、各収容部に異なる色の微粒子を収容することで、フルカラー表字を行う技術も知られている(例えば、特許文献5参照。)。
また、特許文献6には、複数の色を表現するために、各々異なる色を表示するためのセルまたはマイクロカプセルを並列的に配設してカラー表示を行う方法が開示されている。
【0009】
また、粒子を含むセルの配列方向により、高解像度のカラー化を目的とする様々な技術も開示されている。
例えば、特許文献7の技術では、光透過性を有する粒子/媒体を含む電気泳動部を2層以上積層することにより、カラー表示を行っている。
【0010】
更に、特許文献8の技術では、重畳する位置に配置される2つの表示電極と、2つのコレクト電極と2種類の透光性の着色粒子とを含むセルを積層配置、または並列配置することにより、カラー表示を行っている。
【0011】
また、特許文献9に示される技術では、粒子として、分散状態では無色であり、凝集状態において特定の色を呈する粒子を用い、粒子を凝集させることにより所定の色を得ることから、該粒子を封入したセルを複数用意することにより、カラー化を実現している。
【0012】
【特許文献1】特開昭64−86116号公報
【特許文献2】特開平4−199085号公報
【特許文献3】米国特許第6017584号明細書
【特許文献4】特開2000−322004号公報
【特許文献5】特開2002−162649号公報
【特許文献6】特開2000−35598号公報
【特許文献7】特開2002−333643号公報
【特許文献8】特開2004−20818号公報
【特許文献9】特表2004−522180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献4乃至特許文献9の技術によれば、カラー表示を実現することは可能であるものの、表示色の明度を変化させることは困難であり、十分な色表現が可能であるとはいえなかった。なお、特許文献9の技術によれば、分散状態における無色から凝集状態における有色への変化時には、明度の変化も生じるとは考えられるが、粒子の分散状態から凝集状態または凝集状態から分散状態への変化のみでは、表現可能な明度範囲が小さいという問題があった。
本発明は、上記事実を考慮してなされたものであり、広い明度範囲の色を呈示可能な表示媒体、表示素子、及び表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記実情に鑑み本発明者らは鋭意研究を行ったところ、分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子と、電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲外の明度の色を呈する第1の異性粒子と、を含む調光層を有する表示媒体、表示素子、または表示方法を用いることにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を解決した。
【0015】
<1> 本発明の表示媒体は、分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子と、前記電荷移動性微粒子より移動度が小さく且つ前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲外の明度の色を呈する第1の異性粒子と、を含む調光層を有する。
【0016】
<2> 前記第1の異性粒子は、前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する上記<1>に記載の表示媒体である。
【0017】
<3> 前記電荷移動性微粒子の移動度は、前記第1の異性粒子の移動度に比べて1×10-6cm/Vs以上大きい上記<1>に記載の表示媒体である。
<4> 前記第1の異性粒子は、黒色粒子である上記<1>に記載の表示媒体である。
【0018】
<5> 前記調光層は、前記第1の異性粒子より移動度が小さく、前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より高い明度の色を呈する第2の異性粒子を更に含む上記<2>に記載の表示媒体である。
【0019】
<6> 前記第1の異性粒子の移動度は、前記第2の異性粒子の移動度に比べて1×10-6cm/Vs以上大きい上記<5>に記載の表示媒体である。
<7> 前記第2の異性粒子は、前記電荷移動性微粒子及び前記第1の異性粒子より体積平均粒子径が大きい上記<5>に記載の表示媒体である。
【0020】
<8> 前記第2の異性粒子は、白色粒子である上記<5>に記載の表示媒体である。
<9> 前記電荷移動性微粒子がプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子である上記<1>に記載の表示媒体である。
【0021】
<10> 前記金属コロイド粒子が金又は銀である、上記<9>に記載の表示媒体である。
<11> 前記電荷移動性微粒子の体積平均粒子径が1nm〜100nmの範囲内である上記<1>に記載の表示媒体である。
【0022】
<12> 前記電荷移動性微粒子の体積平均粒子径が2nm〜50nmの範囲内である上記<11>に記載の表示媒体である。
【0023】
<13> 本発明の表示素子は、分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子と、前記電荷移動性微粒子より移動度が小さく且つ前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲外の明度の色を呈する第1の異性粒子と、を含む調光層と、前記調光層内に電界を形成する電界形成手段と、を備える。
【0024】
<14> 前記電界形成手段は、前記調光層を介して対向配置された少なくとも一対の電極を含む上記<13>に記載の表示素子である。
<15> 前記第1の異性粒子は、前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する上記<13>に記載の表示素子である。
【0025】
<16> 前記電荷移動性微粒子の移動度は、前記第1の異性粒子の移動度に比べて1×10-6以上大きい上記<13>に記載の表示素子である。
<17> 前記第1の異性粒子は、黒色粒子である上記<13>に記載の表示素子である。
【0026】
<18> 前記調光層は、前記第1の異性粒子より移動度が小さく前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より高い明度の色を呈する第2の異性粒子を更に含む、上記<15>に記載の表示素子である。
<19> 前記第1の異性粒子の移動度は、前記第2の異性粒子の移動度に比べて1×10-6cm/Vs以上大きい上記<18>に記載の表示素子である。
【0027】
<20> 前記第2の異性粒子は、前記電荷移動性微粒子及び前記第1の異性粒子より体積平均粒子径が大きい上記<18>に記載の表示素子である。
<21> 前記第2の異性粒子は、白色粒子である上記<18>に記載の表示素子である。
【0028】
<22> 前記電荷移動性微粒子がプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子である上記<13>に記載の表示素子である。
<23> 前記金属コロイド粒子が金又は銀である、上記<13>に記載の表示素子である。
【0029】
<24> 前記電荷移動性微粒子の体積平均粒子径が1nm〜100nmの範囲内である<13>に記載の表示素子である。
<25> 前記電荷移動性微粒子の体積平均粒子径が2nm〜50nmの範囲内である上記<24>に記載の表示素子である。
【0030】
<26> 本発明の表示方法は、分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子と、前記電荷移動性微粒子より移動度が小さく且つ前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度を呈する第1の異性粒子と、を調光層内に分散する工程と、前記電荷移動性微粒子と前記第1の異性粒子とを、前記調光層内の予め定められた表示方向に移動させる工程と、を有する。この表示方向とは、調光層がユーザによって視認されるときの、視認方向を示している。
【0031】
<27> 本発明の表示方法は、分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子と、前記電荷移動性微粒子より移動度が小さく且つ前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度を呈する第1の異性粒子と、前記第1の異性粒子より移動度が小さく前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より高い明度の色を呈する第2の異性粒子と、を調光層内に分散する工程と、前記電荷移動性微粒子、前記第1の異性粒子、及び前記第3の異性粒子を、前記調光層内の予め定められた表示方向に移動させる工程と、を有する表示方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の表示素子、表示媒体及び表示方法によれば、広い明度範囲の色を呈示可能な表示媒体、表示素子、及び表示方法を提供することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0034】
<表示媒体、及び表示素子>
本発明の表示媒体は、分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子と、前記電荷移動性微粒子より移動度が小さく且つ前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲外の明度の色を呈する第1の異性粒子と、を含む調光層を有する。
この第1の異性粒子は、電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈することが好ましい。
また、上記調光層と、該調光層内に電界を形成するための電界形成手段と、を備えることにより、表示素子として構成することができる。
【0035】
調光層に、分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子と、電荷移動性微粒子より移動度が小さく且つ電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲外の明度の色、好ましくは、電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する第1の異性粒子と、を少なくとも含むことにより、調光層内に同一強度の電界が形成されたときに、電荷移動性微粒子は、電荷移動性微粒子より移動度の小さい第1の異性粒子に比べて高速に調光層内を移動する。
【0036】
このため、調光層内に形成する電界強度、電界を形成する時間を調整し、電荷移動性微粒子と、電荷移動性微粒子より明度の低い第1の異性粒子とを調光層内において異なる移動速度で移動させることで、調光層が視認される視認側により近い方向に分散する電荷移動性微粒子と、電荷移動性微粒子より明度の低い第1の異性粒子との割合を調整することができる。
【0037】
このため、調光層が視認方向側から視認されたときの、調光層を含む表示媒体または表示素子の色の明度を、電荷移動性微粒子と第1の異性粒子との調光層内の移動に応じた明度範囲に調製することが可能となる。
従って、電荷移動性微粒子の分散状態に応じて呈示可能な明度範囲よりも、更に広い明度範囲の色を呈示することができる。
【0038】
また調光層には、第1の異性粒子より移動度が小さく、電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より高い明度の色を呈する第2の異性粒子を更に含むことができる。
【0039】
調光層に、電荷移動性微粒子、及び電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する第1の異性粒子に加えて、更に該明度範囲より高い明度の色を呈する第2の異性粒子を含むと、調光層内に同一強度の電界が形成されたときに、電荷移動性微粒子は第1の異性粒子に比べて高速に調光層内を移動し、第1の異性粒子は第2の異性粒子に比べて高速に調光層内を移動する。
【0040】
このため、調光層内に形成する電界強度、電界を形成する時間を調整し、電荷移動性微粒子と、電荷移動性微粒子より明度の低い第1の異性粒子と、電荷移動性微粒子より明度の高い第2の異性粒子と、を調光層内において異なる移動速度で移動させることで、調光層が視認される視認側により近い方向に分散する電荷移動性微粒子と、電荷移動性微粒子より明度の低い第1の異性粒子と、電荷移動性微粒子より明度の高い第2の異性粒子と、の割合を調整することができる。
【0041】
このため、調光層が視認方向側から視認されたときの、調光層を含む表示媒体または表示素子の色の明度を、電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子の調光層内の移動に応じた明度範囲に調製することが可能となる。
従って、電荷移動性微粒子の分散状態に応じて呈示可能な明度範囲よりも、更に広い明度範囲の色を呈示することができる。
【0042】
(調光層)
本発明の表示媒体または表示素子に含まれる調光層は、分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子と、電荷移動性微粒子より移動度が小さく且つ電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する第1の異性粒子と、を少なくとも含むと共に、第1の異性粒子より移動度が小さく電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より高い明度の色を呈する第2の異性粒子を含み、その他、必要に応じて絶縁性液体、高分子樹脂、高分子量顔料分散剤等を含んで構成されている。
調光層は、上記のような材料を含有する領域であり、表示素子として使用する場合には、種々の色を表示する機能を発揮する層である。
【0043】
上記移動度とは、電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子各々が単位電界強度当たり、単位時間内に移動可能な距離を示している。すなわち、移動度とは、単位電界当たりの電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子各々の平均移動速度を示している。
【0044】
本発明の表示媒体または表示素子の調光層に含まれる電荷移動性微粒子の移動度は、第1の異性粒子より大きい。また、第1の異性粒子の移動度は、第2の異性粒子より大きい。
この電荷移動性微粒子と第1の異性粒子との移動度の差、及び第1の異性粒子と第2の異性粒子との移動度の差は、1×10-6cm/Vs以上であることが好ましく、5×10-6cm/Vs以上であることが更に好ましく、1×10-5cm/Vsであることが特に好ましい。
【0045】
電荷移動性微粒子と第1の異性粒子との移動度の差、及び第1の異性粒子と第2の異性粒子との移動度の差が、1×10-6cm/Vs未満であると、調光層内に電界が形成されたときに、電荷移動性微粒子と、第1の異性粒子と、第2の異性粒子との間における単位時間あたりの移動距離の差が小さすぎて、調光層に良好な明度変化が生じ無いという問題が生じる。
【0046】
調光層内に含まれる電荷移動性微粒子、第1の異性微粒子、及び第2の異性微粒子各々の移動度の測定方法は、両端を電極で挟まれた詳細を後述する調光層の分散液中に、電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、または第2の異性粒子を充填し、これらの電極に電圧を印加することによって調光層内に形成された電界強度と、これらの電極に電界を印加した時間と、調光層中にこのような電界が形成された時間内において移動した電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子各々の移動距離を測定することによって測定可能である。
移動距離の測定は、例えば、CCDによって粒子の移動や、移動に伴う色の変化を観察、計測することによって測定することができる。
【0047】
また、移動度の測定方法としては、調光層に電界を印加し、調光層の明度が変化していく過程を透過率や反射率の時間変化として評価することによっても可能である。
具体的には、両端を電極で挟まれた詳細を後述する調光層の分散液中に、電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、または第2の異性粒子を充填し、これらの電極に電圧を印加することによって調光層内に形成された電界強度と、これらの電極に電界を印加した時間と、調光層中にこのような電界の形成が開始されてからの調光層の透過率または反射率の変化を、分光光度計、例えばキーエンス社製USB2000等によって測定することによって可能である。
【0048】
以下に、本発明の表示媒体または表示素子の調光層に含まれる電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子について詳細に説明する。
【0049】
(1)電荷移動性微粒子:
調光層に含有される電荷移動性微粒子は、分散状態に応じた明度の発色性を呈する。
具体的には、電荷移動性微粒子は、調光層中の分散媒に分散されている状態と、分散されていない状態(例えば、凝集した状態)と、では異なる明度の色を呈し、分散状態では明度の高い発色性を示し、凝集状態となるほど濃い(明度の低い)発色性を示す。
ここで、上記「異なる明度の色」とは、その濃淡、即ち明度が異なる場合を示すが、色相の変化が含まれていても良い。
従って、この電荷移動性微粒子の分散状態を調製することで、所望の色相及び明度の発現を調整することができる。
【0050】
電荷移動性微粒子としては、分散状態に応じた明度の発色性を呈し、調光層内に充填されたときに、電界(電圧)の印加が調整されることにより移動性を有する微粒子であることが必要であり、それ以外については特に限定されるものではない。電荷移動性微粒子としては、着色性、透明性、安定性の観点からプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子であることが好ましい。
以下、金属コロイド粒子を例に説明するがこれに限定されるものではない。
【0051】
前記色相は、電荷移動性微粒子、特に、金属コロイド粒子の金属の種類、形状、粒径(体積平均粒子径)等を選択することにより調整することができる。
金属コロイド粒子(例えば、金コロイド粒子等)による発色は、電子のプラズマ振動に起因し、プラズモン吸収と呼ばれる発色機構によるものである。このプラズモン吸収による発色は、金属中の自由電子が光電場により揺さぶられ、粒子表面に電荷が現れ、非線形分極が生じるためであるとされている。この金属コロイド粒子による発色は、彩度や光線透過率が高く、耐久性等に優れている。
【0052】
このような金属コロイド粒子による発色は、粒径が数nm〜数十nm程度の粒子、いわゆるナノ粒子において見られるものであり、着色材としての用途を考慮すると、その粒径分布が狭いコロイド粒子であることが有利である。
【0053】
金属コロイド粒子を構成する金属成分としては、貴金属(金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等)や銅等が挙げられる。前記金属の中でも、金、銀、白金、または、これらのうちの少なくとも1種を含む合金が好ましく、金および銀の少なくともいずれかを含むことがより好ましい。
【0054】
金属コロイド粒子を得る方法としては、金属イオンを還元して金属原子、金属クラスターを経てナノ粒子に調製する化学的方法や、バルク金属を不活性ガス中で蒸発させて微粒子となった金属をコールドトラップなどで捕捉したり、ポリマー薄膜上に真空蒸着させて金属薄膜を形成した後に加熱して金属薄膜を壊し、固相状態でポリマー中に金属微粒子を分散させる物理的方法が知られている。
化学的方法は、特殊な装置を使わなくても良く、当該金属コロイド粒子の調製に有利であるため、一般例を後述するが、これらに限定されるものではない。
【0055】
金属コロイド粒子は、既述のような金属成分を含む金属化合物を原料とすることが好ましい。金属化合物としては、前記金属成分を含むものであれば特に限定されず、例えば、塩化金酸、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)等を挙げることができる。
【0056】
金属コロイド粒子は、金属化合物を溶媒に溶解した後、金属に還元して分散剤で保護された金属コロイド粒子の分散液として得ることができるが、該分散液の溶媒を除去して固体ゾルの形態で得ることもできる。しかし、これら以外の形態であってもよい。
【0057】
金属化合物を溶解する際、後述の高分子量顔料分散剤を用いることも可能である。高分子顔料分散剤を用いることにより分散剤で保護された安定な金属コロイド粒子として得ることができる。
【0058】
本発明において金属コロイド粒子を用いる場合、前記で得られた金属コロイド粒子の分散液として用いても、また、溶媒を除去した固体ゾルを溶媒に再分散させて使用することもでき、本発明においては特に限定されるものではない。
【0059】
金属コロイド粒子の分散液として用いる場合、前記調製時の溶媒としては、後述の絶縁性液体であることが好ましい。また、固体ゾルを再分散して用いる場合、固体ゾル調製時の溶媒としては、後述の絶縁性液体のほか種々の溶媒を用いることができ、特に限定されるものではない。再分散する際の溶媒としては、後述の絶縁性液体であることが好ましい。
【0060】
電荷移動性微粒子の体積平均粒子径としては、1〜100nmであることが好ましく、2〜50nmであることが特に好ましい。1〜100nmの範囲にある電荷移動性微粒子は、実用的で色の強さが良好な点で有意である。特に、2〜50nmの範囲にあると、沈降しやすさを防ぎ、色の強さをより向上させることができる。そのため、視野角依存性をより低くし、コントラストをより向上させることができる。
【0061】
また、金属コロイド粒子は、その金属成分の種類や形状、体積平均粒子径により、様々な色に発色させることができる。そのため、金属の種類や、形状、体積平均粒子径を制御した電荷移動性微粒子を用いることにより、RGB発色を含む様々な色相を得ることができ、本発明の表示素子をカラー表示素子とすることができる。さらに、金属コロイド粒子の形状や粒径調製によりRGBフルカラー方式の表示素子または表示媒体とすることもできる。
【0062】
RGB方式のR、G、Bそれぞれの色を呈するための金属コロイド粒子の体積平均粒子径としては、用いる金属や、粒子の調製条件、形状等に依存するため、特に限定することができないが、例えば、金コロイド粒子の場合、体積平均粒子径は大きくなるに従って、R発色、G発色、B発色を呈する傾向にある。
【0063】
本発明における体積平均粒子径の測定方法としては、粒子群にレーザ光を照射し、そこから発せられる回折、散乱光の強度分布パターンから平均粒径を測定する、レーザ回折散乱法を採用する。
【0064】
前記金属コロイド粒子の調製は、例えば、文献「金属ナノ粒子の合成・調製、コントロール技術と応用展開」(技術情報協会出版、2004年)に記載されている一般的な調製方法にて金属コロイド粒子を調製することができる。以下に、その一例を説明するが、これに限定されるものではない。
【0065】
−固体ゾル−
以下に、前記金属コロイド粒子の調製における金属の固体ゾルの一例について説明する。
【0066】
本発明における金属コロイド粒子の固体ゾルにおいては、着色性の観点から、当該金属コロイド粒子は、後述の高分子量顔料分散剤1kgあたり、50mmol以上含有されることが好ましい。金属コロイド粒子が50mmol未満であると、着色性が不充分となる場合がある。より好ましくは、100mmol以上である。
【0067】
金属コロイドの固体ゾルにおいて、金属のコロイド粒子の体積平均粒子径は、既述のように1〜100nmであることが好ましく、2〜50nmであることがより好ましい。また、本発明における金属の固体ゾルは、狭い粒度分布を示すものであることが好ましい。粒度分布が広いものであると、彩度が低くなるので好ましくない。
【0068】
上記のような固体ゾルは、彩度が高く、金属コロイド粒子を高い濃度で含有しているので、着色性が良好となる。また、固体ゾルは、樹脂等の高分子樹脂(バインダー)との相溶性が良好であり、このような高分子樹脂(バインダー)に添加しても安定で凝集せず、充分な着色性を有している。必要に応じてその他の添加物を添加することもできる。更に、適当な溶媒に溶解して、ヒドロゾルやオルガノゾルとした形態も用いることができる。
【0069】
−固体ゾルの製造方法−
固体ゾルの製造方法の一例を以下に述べるがこれに限定されるものではない。すなわち、金属化合物を溶媒に溶解し、高分子量顔料分散剤を加えた後、金属に還元して上記高分子量顔料分散剤で保護された金属コロイド粒子を形成し、その後、上記溶媒を除去することにより固体ゾルとするものである。
【0070】
前記製造方法において、上記金属化合物は、溶媒に溶解して使用される。上記溶媒としては上記金属化合物を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、水、アセトン、メタノール、エチレングリコール等の水可溶性有機溶媒等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、水及び水可溶性有機溶媒を併用することが好ましい。
【0071】
上記溶媒が水及び水可溶性有機溶媒からなる混合溶媒である場合、まず、上記金属の化合物を水に溶解した後、水可溶性有機溶媒を添加して溶液とすることが好ましい。このとき、上記金属化合物は、50mM(50mmol/l)以上となるように水に溶解されることが好ましい。50mM未満であると、金属コロイド粒子を高い割合で含有した固体ゾルを得ることができない。より好ましくは、100mM以上である。
【0072】
金属成分として銀を使用する場合、上記水溶液はpH7以下であることが好ましい。pHが7を超えると、例えば、銀の化合物として硝酸銀を用いる場合、銀イオンを還元する際に酸化銀等の副生成物が生成し、溶液が白濁してしまう。上記水溶液のpHが7を超える場合には、例えば、0.1N程度の硝酸等を添加して、pHを7以下に調整することが好ましい。
【0073】
上記水可溶性有機溶媒は、上記金属化合物を溶解する水に対して、体積比が1.0以上となるように添加することが好ましい。1.0未満であると、水不溶性の高分子量顔料分散剤が溶解しない。より好ましくは、5.0以上である。
【0074】
本発明における金属コロイド粒子の調製においては、金属化合物の溶液に高分子量顔料分散剤を添加することも有効である。高分子量顔料分散剤は、溶媒が水及び水可溶性有機溶媒からなる混合溶媒である場合には、水不溶性のものであることが好ましい。水溶解性であると、水可溶性有機溶媒を除去して固体ゾルを得る際に、コロイド粒子を析出させるのが困難となる。水不溶性の高分子量顔料分散剤としては、例えば、ディスパービック161、ディスパービック166(ビックケミー社製)、ソルスパース24000、ソルスパース28000(ゼネカ社製)等を挙げることができる。
【0075】
上記高分子量顔料分散剤の添加量は、金属100質量部に対して20〜1000質量部が好ましい。20質量部未満であると、上記金属コロイド粒子の分散性が不充分であり、1000質量部を超えると、塗料や樹脂成型物に配合した際に、バインダー樹脂に対する高分子量顔料分散剤の混入量が多くなり、物性等に不具合を生じやすくなる。より好ましくは、50〜650質量部である。
【0076】
本発明における金属コロイド粒子の調製においては、上記金属化合物の溶液に上記高分子量顔料分散剤を添加した後、金属のイオンを還元する。還元の方法としては特に限定されず、例えば、化合物を添加して化学的に還元する方法、高圧水銀灯を用いた光照射により還元する方法等を挙げることができる。
【0077】
上記化合物としては特に限定されず、例えば、従来から還元剤として使用されている水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩;ヒドラジン化合物;クエン酸又はその塩、コハク酸又はその塩等を使用することができる。また、本発明においては、上記還元剤のほかに、アミンを使用することができる。
【0078】
上記アミンは、上記金属の化合物の溶液にアミンを添加して攪拌、混合することによって、金属イオン等が常温付近で金属に還元される。上記アミンを使用することにより、危険性や有害性の高い還元剤を使用する必要がなく、加熱や特別な光照射装置を使用することなしに、5〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度の反応温度で、金属の化合物を還元することができる。
【0079】
上記アミンとしては特に限定されず、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン;ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等を挙げることができる。また、上記アミンとして、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンも挙げることができる。これらのうち、アルカノールアミンが好ましい。
【0080】
アミンの添加量は、金属化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成した金属コロイド粒子の対凝集安定性が低下する。より好ましくは、2〜8molである。
【0081】
また、上記還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、常温で還元することができるので、加熱や特別な光照射装置を使用する必要がない。
【0082】
水素化ホウ素ナトリウムの添加量は、金属化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成した金属コロイド粒子の対凝集安定性が低下する。より好ましくは、1.5〜10molである。
【0083】
上記還元剤としてクエン酸又はその塩を使用する場合、アルコールの存在下で加熱還流することによって金属イオン等を還元することができる。クエン酸又はその塩としては、クエン酸ナトリウムを使用することが好ましい。
【0084】
クエン酸又はその塩の添加量は、金属化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成した金属コロイド粒子の対凝集安定性が低下する。より好ましくは、1.5〜10molである。
【0085】
本発明における金属コロイド粒子の調製においては、上記金属のイオンを還元した後、上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子を沈殿させてから上記溶媒を除去する。上記溶媒として水及び水可溶性有機溶媒を使用する場合には、使用する高分子量顔料分散剤の性質に応じて以下の方法に従って上記溶媒を除去することができる。
【0086】
上記高分子量顔料分散剤が水不溶性のものである場合、まず、上記水可溶性有機溶媒を蒸発等により除去して、高分子量顔料分散剤で保護された金属コロイド粒子を沈殿させた後、水を除去することが好ましい。高分子量顔料分散剤が水不溶性のものであるので、水可溶性有機溶媒を除去することにより、高分子量顔料分散剤により保護された金属のコロイド粒子が沈殿する。
【0087】
この場合において、水可溶性有機溶媒は、蒸発速度が水より大きいものであることが好ましい。蒸発速度が水より小さいものであると、高分子量顔料分散剤として水不溶性のものを使用した場合、溶媒を除去して固体ゾルとする際に、水可溶性有機溶媒を先に取り除くことができず、金属コロイド粒子を沈殿させることができない。
【0088】
上記高分子量顔料分散剤が溶剤型のものである場合、該高分子量顔料分散剤を溶解しない非極性有機溶媒を過剰量添加して高分子量顔料分散剤で保護された金属コロイド粒子を沈殿させた後、デカンテーション等により溶媒を除去することもできる。
【0089】
高分子量顔料分散剤で保護された金属コロイド粒子は、上記溶媒を除去した後、上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子をイオン交換水で洗浄しても良い。高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子が過剰量の上記非極性溶媒により沈殿された場合は、上記非極性有機溶媒で洗浄することができる。
【0090】
既述のような固体ゾルの製造方法において、得られる固体ゾルは、コロイド平均粒径が1〜100nmであり、粒度分布が狭いので、濃色かつ彩度の高いものとなる。
【0091】
本発明における金属の固体ゾルの製造方法は、上記金属の化合物を溶媒に溶解して溶液とし、上記高分子量顔料分散剤を加えた後、金属に還元し、その後、溶媒を除去するといった少ない工程で簡便に行うことができ、しかも、彩度が高く、従来の金属の固体ゾルと比較して、金属のコロイド粒子を高い濃度で含有する金属の固体ゾルを製造することができる。特に、アルカノールアミンを使用することにより、20〜80℃程度の温和な条件で簡便に製造することができる。
【0092】
以上の方法によって金属コロイド粒子を調製することができるが、本発明における金属コロイド粒子は、分散状態で発色性を呈し、且つ分散状態に応じた明度の発色性を呈する粒子であれば、市販の金属コロイド粒子を用いることができる。
【0093】
さらに、金属コロイド粒子は、具体的には、下記の方法(i)〜(iv)を用いることにより調製できるが、これに限定されるものではない。
【0094】
−金属コロイド粒子の分散液の調製方法−
本発明における前記金属コロイド粒子の分散液の調製方法としては、水系、非極性溶媒系のいずれの形態でも調製することができる。例えば、金及び銀を用いた金属コロイド粒子の分散液は、以下の調製方法により調製することができるが、これに限定されるものではない。
【0095】
(i)金属化合物(例えば、テトラクロロ金(III)酸・4水和物)を絶縁性液体(例えば、水)に溶解後、金属(例えば、金)に対して1.5倍質量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース20000)を含んだ水溶液を混合、攪拌する。この混合液に脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミノエタノール)を加えて金イオンの還元反応を開始した後、濾過、濃縮を行い、金コロイド粒子溶液を得る。
【0096】
(ii)金属化合物(例えば、テトラクロロ金(III)酸・4水和物)を水に溶解後、金属(例えば、金)に対して1.5倍質量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース24000を有機溶媒(例えば、アセトン)に溶解させた溶液を混合、攪拌する。
この混合液に脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミノエタノール)を加えて金イオンの還元反応を開始した後、前記有機溶媒を蒸発させ、金コロイド粒子と高分子量顔料分散剤からなる固体ゾルを得る。その後、デカンテーションにより固体ゾルを水で洗浄し、有機溶媒(例えば、エタノール)を加えて金コロイド粒子溶液を得る。
【0097】
(iii)金属化合物(例えば、硝酸銀(I))を水に溶解後、金属(例えば、銀)に対して1.5倍質量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース20000)を含んだ水溶液を混合、攪拌する。この混合液に脂肪族アミン(例えばジメチルアミノエタノール)を加えて銀イオンの還元反応を開始した後、濾過、濃縮を行い、水系銀コロイド粒子溶液を得る。
【0098】
(iv)金属化合物(例えば、硝酸銀(I))を水に溶解後、金属(例えば、銀)に対し
て1.5倍質量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース24000)を有機溶媒(例えば、アセトン)に溶解させた溶液を混合、攪拌する。この混合液に脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミノエタノール)を加えて銀イオンの還元反応を開始した後、有機溶媒を蒸発させ、銀コロイド粒子と高分子量顔料分散剤からなる固体ゾルを得る。その後、デカンテーションにより固体ゾルを水で洗浄し、有機溶媒(例えば、トルエン)を加えて溶媒系銀コロイド粒子溶液を得る。
【0099】
尚、前記金属コロイド粒子及びその溶液等については、特開平11−76800号公報に記載のものを好適に用いることができる。
【0100】
ここで、上述のように、本発明の調光層に含まれる電荷移動性微粒子は、第1の異性粒子及び第2の異性粒子より高い移動度を示す。
【0101】
電荷移動性微粒子の移動度を所定の移動度(すなわち、第1の異性粒子及び第2の異性粒子より高い移動度)に調製する方法としては、界面活性剤、顔料分散剤、電荷移動性微粒粒子の表面処理剤等の種類、これらの濃度、及びこれらを添加、撹拌している処理時間を適宜調整することによって、所定の移動度を示す電荷移動性微粒子を作製することができる。
【0102】
上記界面活性剤としては、カチオン型界面活性剤(アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等)、ノニオン型界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等)、アニオン型界面活性剤(アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルフホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、脂肪酸塩、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、芳香族スルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、β-ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等)、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0103】
界面活性剤や顔料分散剤の種類によって、界面活性剤や顔料分散剤の濃度や処理時間が金属コロイド粒子の移動度に与える影響は異なるため、一概に言うことはできないが、一般には、電荷移動性微粒子としての金属コロイド粒子の金属に対する界面活性剤や顔料分散剤の濃度が高くなるほど移動度は大きくなり、金属に対する界面活性剤や顔料分散剤の濃度が低くなるほど移動度を低くすることができる。
【0104】
また、界面活性剤や顔料分散剤の処理時間が長くなるほど移動度を大きくでき、処理時間が短くなるほど移動度を小さくすることができる。
このように、電荷移動性微粒子の調製方法を調整することにより、電荷移動性微粒子の移動度を所定値となるように調整することができる。更には、金属コロイド粒子の金属種や粒径、形状によっても、移動度を所定値となるように調整可能である。
【0105】
調光層中の全質量に対する電荷移動性微粒子の含有量(質量%)としては、所望の色相が得られる濃度であれば特に限定されるものではなく、調光層の厚さ(調光層が視認される視認方向の厚さ)により含有量を調整することが、表示媒体及び表示素子としては有効である。
即ち、所望の色相を得るために、調光層が厚い場合には含有量を多く、調光層が薄い場合には含有量を少なくすることができる。一般的には、調光層の全質量の0.01〜80質量%である。
【0106】
また、電荷移動性微粒子の調光層中の体積充填率は、0.01〜50vol%であることが好ましく、0.1〜40vol%であることがより好ましい。体積充填率が0.01〜50vol%であることで、電荷移動性微粒子のもつ発色性を十分に引き出すことができ、良好な着色性を有する表示素子とすることができる。
【0107】
第1の異性粒子:
調光層は、上記電荷移動性微粒子と、電荷移動性微粒子とは異なる特性を有する第1の異性粒子を少なくとも含んでいる。
第1の異性粒子は、電荷移動性微粒子とは異なる特性を有している。具体的には、第1の異性粒子は、調光層に含まれる電荷移動性微粒子の分散状態が変化されることにより呈示される該電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を示す。また、第1の異性粒子の移動度は、電荷移動性微粒子の移動度より小さい。
【0108】
このため、電荷移動性微粒子と第1の異性粒子とを調光層中において移動させて、調光層のユーザによって視認される視認方向側に位置する電荷移動性微粒子と第1の異性粒子との比率を調整することにより、表示媒体及び表示素子は、電荷移動性微粒子によって呈示可能な明度範囲より広い明度範囲の明度の色を呈示することが可能となる。
【0109】
なお、第1の異性粒子の呈する色の明度は、表示素子及び表示媒体の呈示可能な明度範囲を広げる事や、コントラストの向上を考慮すると、第1の異性粒子の色は黒色であることが好ましい。
第1の異性粒子が黒色である場合には、電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度範囲の中でも明度の低い黒色粒子を第1の異性粒子として調光層に含むことができるので、電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度範囲の中で明度の高い粒子を第1の異性粒子として含む場合に比べて、より広い明度範囲の明度の色を呈示することが可能となる。
【0110】
このように、調光層に、電荷移動性微粒子と、電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈し且つ電荷移動性微粒子より移動度の小さい第1の異性粒子と、を少なくとも含むので、より明度変化に顕著な影響を与える明度の低い粒子を電荷移動性微粒子と共に調光層に含むことができ、電荷移動性微粒子によって呈示可能な明度範囲より広い明度範囲の明度の色を呈示することが可能となる。
【0111】
第1の異性粒子の体積平均粒子径は、着色力、および移動性の観点から、1〜1000nmであることが好ましく、2〜500nmであることがより好ましい。1nmより小さい場合には、第1の異性粒子の着色力が低下し、十分な明度を発現する事が出来ない。また、1000nmより大きい場合には、第2の異性粒子の空隙を移動しにくくなり、移動性が低下する。
【0112】
第1の異性粒子の調光層中の体積充填率は、調光層の層厚、上記電荷移動性微粒子の体積充填率、及び第2の異性粒子の体積充填率に応じて定められる。
同一調光層中に、第1の異性粒子と電荷移動性微粒子とが含まれ、後述する第2の異性粒子が含まれない場合には、第1の異性粒子の調光層中の体積充填率(Z)と、電荷移動性微粒子の調光層中の体積充填率(Y)と、の比率は、表示素子としての色相の観点からZ=Yであることが好ましい。ZがYよりも大きい場合には、明度が低くなりすぎてしまい、表示素子としては、全体に暗い表示になってしまう。また、ZがYよりも小さい場合には、明度が低くなりにくく、十分な明度変化が得られない。
【0113】
具体的には、第1の異性粒子の調光層中の体積充填率は、0.01〜50vol%であることが好ましく、0.1〜45vol%であることがより好ましい。体積充填率が0.01〜50vol%であることで、電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の第1の異性粒子の色、例えば、黒色を効果的に呈示することができ、表現可能な明度幅を広げることができる。
【0114】
第1の異性粒子の材料としては、同一の調光層内に含まれる電荷移動性微粒子により呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する粒子であればよく、調光層内に充填される電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲に応じて、該明度範囲より低い明度の色を呈する粒子を有機物や無機物など特に限定されず、使用することができる。
例えば、カーボンブラック、鉄黒、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅クロムブラック、銅クロムマンガンブラック、黒色低次酸化チタン、アルミニウム紛、銅紛、鉛紛、錫紛、亜鉛紛等が挙げられる。これらの材料は、粉砕、造粒等の公知の方法によって粒子化したものを使用することが出来る。また、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等の高分子材料に、上記材料を含有したものを使用することも可能である。
【0115】
第1の異性粒子の作製は、懸濁重合、乳化重合、分散重合などの湿式製法により製造されてもよいし、従来の粉砕分級法により製造されてもよい。湿式製法により得られた粒子は球状粒子となり、粉砕分級法により得られた粒子は不定形粒子となる。
また、これらの製法により得られた球状粒子や不定形粒子の形状を揃えるために、熱処理を施してもよい。
粒度分布を揃える方法としては、上述の湿式製法における造粒条件を調整したり、一旦得られた粒子を分級操作する方法が挙げられる。
湿式製法における造粒条件を調整する場合には、水相中に、表示粒子を構成する材料を分散させた油相を分散させた際の攪拌速度を調整したり、界面活性剤を利用する場合には、その濃度を調整する等により粒子の粒度分布を制御することができる。
【0116】
ここで、上述のように、本発明の表示素子または表示媒体の調光層に含まれる第1の異性粒子は、電荷移動性微粒子より低い移動度を示し、且つ第2の異性粒子より高い移動度を示す。
第1の異性粒子の移動度を所定の移動度(すなわち、上述のように電荷移動性微粒子より低いく、且つ第2の異性粒子より高い移動度)に調製する方法としては、電荷移動性微粒子の移動度の調整と同様な方法、すなわち、界面活性剤、顔料分散剤等の種類、これらの濃度、及びこれらを添加、撹拌している処理時間を適宜調整することによって、所定の移動度を示す第1の異性粒子を作製することができる。
【0117】
第2の異性粒子:
調光層は、上記電荷移動性微粒子と、電荷移動性微粒子とは異なる特性を有する第1の異性粒子を少なくとも含み、更に第2の異性粒子を含むことが好ましい。
第2異性粒子は、電荷移動性微粒子とは異なる特性を有している。具体的には、第2の異性粒子は、調光層に含まれる電荷移動性微粒子の分散状態が変化されることにより呈示される該電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より高い明度の色を示す。また、第2の異性粒子は、第1の異性粒子及び電荷移動性微粒子より低い移動度を示す。
【0118】
このため、電荷移動性微粒子と、第1の異性粒子と、第2の異性粒子と、を調光層中において移動させて、調光層のユーザによって視認される視認方向側に位置する電荷移動性微粒子と第1の異性粒子と第2の異性粒子との比率を調整することにより、表示媒体及び表示素子は、電荷移動性微粒子によって呈示可能な明度範囲より広い明度範囲の明度の色を呈示することが可能となる。
【0119】
なお、第2の異性粒子の呈する色の明度は、表示素子及び表示媒体の呈示可能な明度範囲を広げる事や、コントラストの向上を考慮すると、第2の異性粒子の色は白色であることが好ましい。
第2の異性粒子が白色である場合には、電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より高い明度範囲の中でも明度の高い白色粒子を第2の異性粒子として調光層に含むことができるので、電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より高い明度範囲の中で明度の低い粒子を第2の異性粒子として含む場合に比べて、より広い明度範囲の明度の色を呈示することが可能となる。
【0120】
第2の異性粒子の体積平均粒子径は、調光層における明度の呈示範囲を広げるという観点から、電荷移動性微粒子及び第1の異性粒子が、第2の異性粒子間の間隙を移動可能となるような程度で、且つ電荷移動性微粒子及び第1の異性粒子より体積平均粒子径が大きくなるように定められる。
電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する第2の異性粒子は、該明度範囲より高い明度の色を呈する第1の異性粒子に比べて、調光層の明度変化に対する影響が小さいことから、第1の異性粒子より大きい体積平均粒子径とすることにより、明度の低い領域についても呈示することが可能となる。
また、第2の異性粒子の平均体積粒子径が電荷移動性微粒子及び第1の異性粒子より大きいと、電荷移動性微粒子及び第1の異性粒子が、第2の異性粒子同士の間隙を移動しやすくなり、電荷移動性微粒子による色表示の応答性及び第1の異性粒子による明度変化の応答性を向上させることができる。
【0121】
第2の異性粒子の体積平均粒子径及び調光層への充填量は、第2の異性粒子間の間隙を上記第1の異性粒子と上記電荷移動性微粒子とが通り抜けて移動可能となるような体積平均粒子径及び充填量であり、且つ第1の異性粒子及び電荷移動性微粒子より大きい体積平均粒子径であればよく、同一の調光層内に含まれる第1の異性粒子及び電荷移動性微粒子の体積平均粒子径、体積充填率、及び調光層の層厚等により定められる。
【0122】
第2の異性粒子の体積平均粒子径(X)は、上述のように、電荷移動性微粒子の体積平均粒子径(Y)よりも大きいことが好ましく、それらの比(X/Y)が、2〜50000であることが好ましく、20〜10000であることがより好ましい。
また、第2の異性粒子の体積平均粒子径(X)は、上述のように、第1の移動性微粒子の体積平均粒子径(Z)よりも大きいことが好ましく、それらの比(X/Z)が、2〜50000であることが好ましく、20〜10000であることがより好ましい。
【0123】
具体的には、第2の異性粒子の体積平均粒子径は、0.1〜50μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。0.1〜50μmであることで、第2異性粒子を、調光層の膜厚の均一化の観点から調光層の間隙を保つためのスペーサとして利用できるといった効果を発揮することができる。
【0124】
また、第2の異性粒子の調光層中の体積充填率(X)と、電荷移動性微粒子の調光層中の体積充填率(Y)と、第1の異性粒子の体積充填率(Z)と、の比率は、着色性、移動度の観点からX/(Y+Z)が、1〜9500であることが明度範囲を十分広くとれるので好ましい。
【0125】
具体的には、第2の異性粒子の調光層中の体積充填率は、30〜95vol%であることが好ましく、50〜90vol%であることがより好ましい。体積充填率が30〜95vol%であることで、第2の異性粒子の色、例えば、白色を効果的に呈示することができ、表現可能な明度幅を広げることができる。
【0126】
第2の異性粒子の材料としては、有機物や無機物など特に限定されず、使用することができる。例えば、有機物としては、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。無機物としては、酸化チタン、シリカ、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0127】
第2の異性粒子の作製は、懸濁重合、乳化重合、分散重合などの湿式製法により製造されてもよいし、従来の粉砕分級法により製造されてもよい。湿式製法により得られた粒子は球状粒子となり、粉砕分級法により得られた粒子は不定形粒子となる。
また、これらの製法により得られた球状粒子や不定形粒子の形状を揃えるために、熱処理を施してもよい。
粒度分布を揃える方法としては、上述の湿式製法における造粒条件を調整したり、一旦得られた粒子を分級操作する方法が挙げられる。
湿式製法における造粒条件を調整する場合には、水相中に、表示粒子を構成する材料を分散させた油相を分散させた際の攪拌速度を調整したり、界面活性剤を利用する場合には、その濃度を調整する等により粒子の粒度分布を制御することができる。
【0128】
上述のように、本発明の表示素子または表示媒体の調光層に含まれる第2の異性粒子は、電荷移動性微粒子より低い移動度を示し、且つ第1の異性粒子より低い移動度を示す。
第2の異性粒子の移動度を所定の移動度(すなわち、上述のように電荷移動性微粒子より低く、且つ第1の異性粒子より低い移動度)に調製する方法としては、電荷移動性微粒子の移動度の調整と同様な方法、すなわち、界面活性剤、顔料分散剤等の種類、これらの濃度、及びこれらを添加、撹拌している処理時間を適宜調整することによって、所定の移動度を示す第2の異性粒子を作製することができる。
【0129】
分散媒:
上記電荷移動性微粒子、上記第1の異性粒子、及び上記第2の異性粒子を調光層中に分散させるための分散媒としては、絶縁性液体を用いることができる。
【0130】
絶縁性液体として具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、シリコーンオイル、ジククロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、高純度石油、エチレングリコール、アルコール類、エーテル類、エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ベンジン、ジイソプロピルナフタレン、オリーブ油、イソプロパノール、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモテトラフルオロエタンなどや、それらの混合物が好適に使用できる。
【0131】
また、下記体積抵抗値となるよう不純物を除去することで、水(所謂、純水)も好適に使用することができる。その体積抵抗値としては、103Ωcm以上であることが好ましく、より好ましくは107Ωcm〜1019Ωcmであり、さらに好ましくは1010〜1019Ωcmである。このような体積抵抗値とすることで、より効果的に、電極反応に起因する液体の電気分解による気泡の発生が抑制され、通電毎に粒子の電気泳動特性が損なわれることがなく、優れた繰り返し安定性を付与することができる。
【0132】
なお、絶縁性液体には、必要に応じて、酸、アルカリ、塩、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加することができるが、上記で示した特定の体積抵抗値の範囲となるように添加することが好ましい。
【0133】
高分子樹脂:
電荷移動性微粒子(金属コロイド粒子)は、高分子樹脂に分散されていることも好ましい。該高分子樹脂としては、高分子ゲル、ネットワークポリマー等であることも好ましい。
【0134】
高分子樹脂としては、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、イソリケナン、インスリン、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カードラン、カゼイン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カロース、寒天、キチン、キトサン、絹フィブロイン、クアーガム、クインスシード、クラウンゴール多糖、グリコーゲン、グルコマンナン、ケラタン硫酸、ケラチン蛋白質、コラーゲン、酢酸セルロース、ジェランガム、シゾフィラン、ゼラチン、ゾウゲヤシマンナン、ツニシン、デキストラン、デルマタン硫酸、デンプン、トラガカントゴム、ニゲラン、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プスツラン、フノラン、分解キシログルカン、ペクチン、ポルフィラン、メチルセルロース、メチルデンプン、ラミナラン、リケナン、レンチナン、ローカストビーンガム等の天然高分子由来の高分子ゲルが挙げられる他、合成高分子の場合にはほとんどすべての高分子ゲルが挙げられる。
【0135】
更に、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、及びアミドの官能基を繰り返し単位中に含む高分子等が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミドやその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシドやこれら高分子を含む共重合体を挙げることができる。これら中でも、製造安定性、電気泳動特性等の観点から、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド等が好ましく用いられる。これら高分子樹脂は、絶縁性液体と共に用いることが好ましい。
【0136】
高分子量顔料分散剤:
上記高分子量顔料分散剤としては特に限定されないが、以下に説明するものを好適に使用することができる。
【0137】
すなわち、(i)顔料親和基を主鎖及び/又は複数の側鎖に有し、かつ、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を有する櫛形構造の高分子;(ii)主鎖中に顔料親和基からなる複数の顔料親和部分を有する共重合体;(iii)主鎖の片末端に顔料親和基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子;である。
【0138】
ここで、上記顔料親和基とは、顔料の表面に対して強い吸着力を有する官能基をいい、例えば、オルガノゾルにおいては、第3級アミノ基、第4級アンモニウム、塩基性窒素原子を有する複素環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基;ヒドロゾルにおいては、フェニル基、ラウリル基、ステアリル基、ドデシル基、オレイル基等を挙げることができる。本発明において、上記顔料親和基は、金属に対して強い親和力を示す。上記高分子量顔料分散剤は、上記顔料親和基を有することにより、金属の保護コロイドとして充分な性能を発揮することができる。
【0139】
櫛形構造の高分子(i)は、顔料親和基を有する複数の側鎖とともに、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を主鎖に結合した構造のものであり、これらの側鎖があたかも櫛の歯のように主鎖に結合されているものである。本明細書中、上述の構造を櫛形構造と称する。櫛形構造の高分子(i)において、顔料親和基は、側鎖末端に限らず、側鎖の途中や主鎖中に複数存在していてもよい。なお、溶媒和部分は、溶媒に親和性を有する部分であって、親水性又は疎水性の構造をいう。溶媒和部分は、例えば、水溶性の重合鎖、親油性の重合鎖等から構成されている。
【0140】
櫛形構造の高分子(i)としては特に限定されず、例えば、特開平5−177123号公報に開示されている1個以上のポリ(カルボニル−C3〜C6−アルキレンオキシ)鎖を有し、これらの各鎖が3〜80個のカルボニル−C3〜C6−アルキレンオキシ基を有しかつアミド又は塩架橋基によってポリ(エチレンイミン)に結合されている構造のポリ(エチレンイミン)又はその酸塩からなるもの;特開昭54−37082号公報に開示されているポリ(低級アルキレン)イミンと、遊離のカルボン酸基を有するポリエステルとの反応生成物よりなり、各ポリ(低級アルキレン)イミン連鎖に少なくとも2つのポリエステル連鎖が結合されたもの;特公平7−24746号公報に開示されている末端にエポキシ基を有する高分子量のエポキシ化合物に、アミン化合物と数平均分子量300〜7000のカルボキシル基含有プレポリマーとを同時に又は任意順に反応させて得られる顔料分散剤等を挙げることができる。
【0141】
上記櫛形構造の高分子(i)は、顔料親和基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなく、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、25〜1500個である。
【0142】
上記櫛形構造の高分子(i)は、溶媒和部分を構成する側鎖が1分子中に2〜1000存在するものが好ましい。2未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、5〜500である。
【0143】
上記櫛形構造の高分子(i)は、数平均分子量が2000〜1000000であることが好ましい。2000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、4000〜500000である。
【0144】
上記主鎖中に顔料親和基からなる複数の顔料親和部分を有する共重合体(ii)は、複数の顔料親和基が主鎖にそって配置されているものであり、上記顔料親和基は、例えば、主鎖にペンダントしているものである。本明細書中、上記顔料親和部分は、上記顔料親和基が1つ又は複数存在して、顔料表面に吸着するアンカーとして機能する部分をいう。
【0145】
共重合体(ii)としては、例えば、特開平4−210220号公報に開示されているポリイソシアネートと、モノヒドロキシ化合物及びモノヒドロキシモノカルボン酸又はモノアミノモノカルボン酸化合物の混合物、並びに、少なくとも1つの塩基性環窒素とイソシアネート反応性基とを有する化合物との反応物;特開昭60−16631号公報、特開平2−612号公報、特開昭63−241018号公報に開示されているポリウレタン/ポリウレアよりなる主鎖に複数の第3級アミノ基又は塩基性環式窒素原子を有する基がペンダントした高分子;特開平1−279919号公報に開示されている水溶性ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する立体安定化単位、構造単位及びアミノ基含有単位からなる共重合体であって、アミン基含有単量単位が第3級アミノ基若しくはその酸付加塩の基又は第4級アンモニウムの基を含有しており、該共重合体1g当たり0.025〜0.5ミリ当量のアミノ基を含有する共重合体;特開平6−100642号公報に開示されている付加重合体からなる主鎖と、少なくとも1個のC1〜C4アルコキシポリエチレン又はポリエチレン−コプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる安定化剤単位とからなり、かつ、2500〜20000の質量平均分子量を有する両親媒性共重合体であって、主鎖は、30質量%までの非官能性構造単位と、合計で70質量%までの安定化剤単位及び官能性単位を含有しており、上記官能性単位は、置換されているか又は置換されていないスチレン含有単位、ヒドロキシル基含有単位及びカルボキシル基含有単位であり、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とスチレン基及びヒドロキシル基とプロピレンオキシ基又はエチレンオキシ基との比率が、それぞれ、1:0.10〜26.1;1:0.28〜25.0;1:0.80〜66.1である両親媒性高分子等を挙げることができる。
【0146】
共重合体(ii)は、顔料親和基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなく、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、25〜1500個である。
【0147】
共重合体(ii)は、数平均分子量が2000〜1000000であることが好ましい。2000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、4000〜500000である。
【0148】
上記主鎖の片末端に顔料親和基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子(iii)は、主鎖の片末端のみに1つ又は複数の顔料親和基からなる顔料親和部分を有しているが、顔料表面に対して充分な親和性を有するものである。
【0149】
直鎖状の高分子(iii)としては特に限定されず、例えば、特開昭46−7294号公報に開示されている一方が塩基性であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4656226号明細書に開示されているAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子;米国特許第4032698号明細書に開示されている片末端が塩基性官能基であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4070388号明細書に開示されている片末端が酸性官能基であるA−Bブロック型高分子;特開平1−204914号公報に開示されている米国特許第4656226号明細書に記載のAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子の耐候黄変性を改良したもの等を挙げることができる。
【0150】
直鎖状の高分子(iii)は、顔料親和基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなく、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、金属コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、5〜1500個である。
【0151】
直鎖状の高分子(iii)は、数平均分子量が1000〜1000000であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、金属コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、2000〜500000である。
【0152】
高分子量顔料分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。市販品としては、例えば、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000(ゼネカ社製);ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190(ビックケミー社製);EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49(EFKAケミカル社製);ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453(EFKAケミカル社製);アジスパーPB711、アジスパーPA111、アジスパーPB811、アジスパーPW911(味の素社製);フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンTG−730W、フローレンG−700、フローレンTG−720W(共栄社化学社製)等を挙げることができる。
【0153】
高分子量顔料分散剤は、顔料親和基が側鎖に存在し、溶媒和部分を構成する側鎖を有するグラフト構造のもの〔上記櫛形構造の高分子(i)〕;主鎖に、顔料親和基を有するもの〔上記共重合体(ii)及び上記直鎖状の高分子(iii)〕であるので、コロイド粒子の分散性が良好であり、金属のコロイド粒子に対する保護コロイドとして好適である。上記高分子量顔料分散剤を使用することにより、金属のコロイド粒子を高い濃度で含有する金属のコロイド粒子分散体を得ることができる。
【0154】
本発明において、上記高分子量顔料分散剤は、軟化温度が、30℃以上であることが好ましい。30℃未満であると、得られる金属の固体ゾルが貯蔵中にブロッキングしてしまうことがある。より好ましくは、40℃以上である。
【0155】
高分子量顔料分散剤の含有量は、上記電荷移動性微粒子としての金属コロイド粒子の金属100質量部に対して20〜1000質量部が好ましい。20質量部未満であると、上記金属のコロイド粒子の分散性が不充分となりやすく、1000質量部を超えると、塗料や樹脂成型物に配合した際に、バインダー樹脂に対する高分子量顔料分散剤の混入量が多くなり、物性等に不具合が生じやすくなる。より好ましくは、50〜650質量部である。
【0156】
(表示素子)
以下、本発明の表示素子の構成について図1を参照しつつ説明する。尚、後述の図面の説明に関し、同様の機能を有する部材には、全図を通して同じ符合を付与し、その説明を省略する。
【0157】
図1には、本発明の表示素子10の一例を示した。
図1(A)に示すように、本発明の表示素子10は、調光層18を含んで構成される表示媒体12と、調光層18内に電界を形成するための電圧印加部14と、を含んで構成されている。
【0158】
表示媒体12は、背面基板16、該背面基板16に間隙をもって対向して設けられた表示基板20、複数の間隙部材26、調光層18、第1の電極22、及び第2の電極24を含んで構成されている。
【0159】
背面基板16には、第1の電極22、調光層18、第2の電極24、及び表示基板20が順に積層されている。
間隙部材26は、背面基板16と表示基板20との間隙を所定間隔となるように保持し、背面基板16と表示基板20との間に複数設けられている。
【0160】
調光層18は、背面基板16に積層された第1の電極22、間隙部材26、及び表示基板20に積層された第2の電極24によって囲まれることによって形成された各領域(以下、適宜、区画または調光単位セルと称する)の総称であり、種々の色を表示する機能を発揮する層である。
すなわち、間隙部材26によって、背面基板16と表示基板20との間の領域を、複数の区画に区切ることにより、調光層18は、複数の調光単位セルに分割することができる。
【0161】
調光層18は、分散状態に応じた明度の発色性を呈する上記電荷移動性微粒子30、上記第1の異性粒子32、上記第2の異性粒子34、及び分散媒36を少なくとも含む分散液により構成されている。
【0162】
第1の電極22及び第2の電極24には、第1の電極22及び第2の電極24に電圧を印加することにより、調光層18内に電界を形成するための電圧印加部14が信号授受可能に接続されている。なお、上記第1の電極22、第2の電極24、及び電圧印加部14は、本発明の表示媒体の電界形成手段に相当する。
【0163】
表示基板20及び背面基板16は、透明基板によって構成されている。表示素子を反射型で使用する場合には、背面基板は、透明基板でなくても構わない。
【0164】
この透明基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコーン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板、金属基板、セラミック基板等の無機基板などが好ましく用いられる。なお、透明基板としては、少なくとも50%以上の光透過率(可視光)を有することが好ましい。
【0165】
間隙部材26の材料としては、特に限定されず、公知の樹脂材料を用いることができるが、製造上の観点から、感光性樹脂を用いることが好ましい。
【0166】
間隙部材26の幅(表示媒体12の積層方向に直交する方向の長さ)は、特に限定されるものではないが、一般的には幅が小さい方が、表示素子10の解像度の観点より有効であり、通常、1μm〜1mm程度であることが好ましい。
【0167】
間隙部材26の高さ、すなわち、調光層18の層厚は、製造される表示媒体12のサイズや重さ、発色性等により、適宜決定され、一般的には、2〜1000μm程度である。
【0168】
上記部材及び各層は、図示を省略する接着層を介して接着されている。接着層の材料としては、特に限定されず、熱硬化性樹脂、紫外光硬化性樹脂等を使用することができるが、間隙部材26の材料や、調光層18に含まれる分散媒36等の表示媒体12を構成する各部材の材料に影響を与えない材料が選択される。
【0169】
第1の電極22及び第2の電極24としては、少なくとも50%以上の光透過率(可視光)を有する透明電極が用いられる。
具体的には、酸化錫−酸化インジウム(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛などに代表される金属酸化物層が好ましく用いられる。また、電極は、これらの材料を単独で用いて形成されていてもよいし、複数種の材料を積層したものであってもよい。
なお、第1の電極22及び第2の電極24の厚みや大きさは、表示媒体12によって様々なものが利用でき、特に限定されるものではない。
【0170】
調光層18内は、電荷移動性微粒子30と、該電荷移動性微粒子30より移動度が小さく且つ電荷移動性微粒子30の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する第1の異性粒子32と、第1の異性粒子32より移動度が小さく且つ電荷移動性微粒子30の呈示可能な明度範囲より高い明度の色を呈する第2の異性粒子34と、分散媒36と、を含んで構成されている。
【0171】
調光層18の同一の調光単位セルに含まれる電荷移動性微粒子30の移動度を、該調光単位セルと同一の調光単位セルに含まれる第1の異性粒子32及び第2の異性粒子34より高くなるように調製する方法としては、上述のように、電荷移動性微粒子30を構成する界面活性剤、及び電荷移動性微粒子30の表面処理剤等の種類、濃度、及び撹拌処理時間を適宜調整することによって可能である。
また、調光層18内に含まれる電荷移動性微粒子30より移動度が低くなるように、該電荷移動性微粒子30と同一の調光単位セル内に含まれる第1の異性粒子32の移動度を調製すると共に、同一の調光単位セル内に含まれる第2の異性粒子34の移動度を第1の異性粒子32より小さくなるように調製する方法としては、上述のように、
界面活性剤、及び電荷移動性微粒子30の表面処理剤等の種類、濃度、及び撹拌処理時間を適宜調整することによって調製することができる。
【0172】
なお、表示素子10の高解像度を実現するために、表示媒体12では、調光層18が、背面基板16の基板面に沿った方向に複数区画に区切られるように、間隙部材26によって背面基板16と表示基板20との間を複数の区画に区切ることによって、複数の調光単位セルを形成することにより、複数の調光単位セルが背面基板16の板面に沿った方向に配列された構成としてもよい(図2中、調光単位セル18〜調光単位セル18参照)。
なお、図2では、説明を簡略化するために、調光単位セルが背面基板16の板面に沿った方向に3個配列された構成である場合を説明するが、画素数に応じて複数設けるようにすることが好ましい。具体的には、各画素毎にR、G、B各々を呈示可能な調光単位セルを複数設けるようにすればよい。
【0173】
例えば、図2に示すように、表示素子21は、表示媒体15と、図示を省略する電圧印加部14(図1参照)と、を含んで構成されている。表示媒体15は、図1に示す表示媒体12と同様に、背面基板16、表示基板20、複数の間隙部材26、第1の電極22、及び第2の電極24を含んで構成されていると共に、複数の調光単位セル18〜調光単位セル18によって形成される調光層18を含んで構成されている。
【0174】
背面基板16には、第1の電極22、複数の調光単位セル18〜調光単位セル18によって形成される調光層18、第2の電極24、及び表示基板20が順に積層されている。
間隙部材26は、背面基板16と表示基板20との間隙を所定間隔となるように保持すると共に、背面基板16と表示基板20との間の領域を複数の区画(調光単位セル18〜調光単位セル18)に区切るために、背面基板16と表示基板20との間に複数設けられている。
【0175】
第1の電極22は、背面基板16の基板面に沿った方向にライン状に各々所定間隔を空けて複数設けられている。第2の電極24は、表示基板20の基板面に沿った方向で且つ第1の電極22の長尺方向に直交する方向に延びたライン状となるように、所定間隔を空けて複数設けられている。
なお、この第1の電極22及び第2の電極24の交差する領域の少なくとも1つが各調光単位セル18〜調光単位セル18各々に対応して設けられるようにすればよい。
【0176】
第1の電極22及び第2の電極24をライン状に形成する場合、第1の電極22及び第2の電極24の線幅は、特に限定されるものではないが、通常、2μm〜1mm程度である。第1の電極22及び第2の電極24の厚さとしては、特に限定されるものではないが、通常、10nm〜1μm程度である。
【0177】
表示素子21の表示媒体15に画像を表示したときの該画像の各画素に対応して、調光単位セル18〜調光単位セル18を設けるようにすれば、画素毎に広範囲な明度の調製が可能となる。
【0178】
また、調光単位セル18〜調光単位セル18各々に赤色、青色および緑色の少なくともいずれかの色を呈する電荷移動性微粒子30を充填するようにし、赤色、青色、緑色各々を呈しうる連続配置された調光単位セル18〜調光単位セル18を1単位として、該1単位を表示素子21に画像を表示したときの画像の1画素に対応するように設ければ、画素毎に、広範囲な明度の調整が可能であると共に、高解像度なカラー画像を表示素子21及び表示媒体15に表示することが可能となる。
【0179】
なお、このように表示媒体15が複数の調光単位セル18〜調光単位セル18を含んで構成される場合には、各調光単位セル18〜調光単位セル18の大きさとしては、調光単位セル18〜調光単位セル18のユーザによって視認される視認方向Xに直交する方向の面積が小さいほど高解像度な表示媒体15及び表示素子21を作製することができ、高解像度の実現という観点から10μm〜1mm程度であることが好ましい。
【0180】
本発明の表示素子10及び表示素子21には、その用途に応じて、基板には、配線、薄膜トランジスタ、金属・絶縁層・金属構造を持つダイオード、バリアブルコンデンサ、強誘電体等の駆動用スイッチング素子を形成してもよい。
【0181】
次に、図1に示す、本発明における表示素子10における、表示方法の一例を説明する。
なお、図1の例では、電荷移動性微粒子30は、分散状態において赤色を呈し、第1の異性粒子32は黒色粒子であり、第2の異性粒子34は白色粒子であるものとして説明する。
また、図1の例では、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、及び第2の異性粒子34の全てが、調光層18内を移動可能に充填されているものとして説明する。
【0182】
また、図1の例では、分散媒36として絶縁性液体を用い、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、及び第2の異性粒子34は同一極性に帯電され、電荷移動性微粒子30が最も移動度が高く、第1の異性粒子32の移動度が第2の異性粒子34より高くなるように予め調製されているものとして説明する。
【0183】
電圧印加部14によって第1の電極22及び第2の電極24に電圧が印加されず、調光層18内に電界が形成されていない状態では、図1(A)に示すように、調光層18内に含まれる電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、及び第2の異性粒子34各々は、共に調光層18内において一様に分散された状態にある。
【0184】
図1(A)に示す状態では、視認方向Xから視認されると、電荷移動性微粒子30の分散状態において発色される色、すなわち図1(A)の例では赤色が、表示媒体12の色として提示される。
【0185】
次に、最も移動度の低い第2の異性粒子34が調光層18内を移動可能程度の電界が調光層18内に形成され、且つ電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、及び第2の異性粒子34が表示基板20側に移動するような電界が調光層18内に形成されるように、電圧印加部14により第1の電極22及び第2の電極24に電圧を印加する。このような電界が調光層18内に形成されると、図1(B)に示すように、調光層18内に充填されている各粒子は、移動度の高い順に表示基板20側に到達する。すなわち、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、第2の異性粒子34、の順に、表示基板20側に各粒子が到達する。
【0186】
表示基板20側に、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、及び第2の異性粒子34が順に積層された状態となると、図1(B)に示す電荷移動性微粒子30は、図1(A)に示す分散された状態に比べて、凝集された状態となり、表示基板20の板面に沿って配列された状態となる。このため、視認方向Xから視認されると、電荷移動性微粒子30の凝集状態による色として、電荷移動性微粒子30の分散状態に比べて濃い赤色と、電荷移動性微粒子30の上の背面基板16に積層された第1の異性粒子32による黒色と、から、電荷移動性微粒子30が調光層18内に分散された状態に比べて、明度の低い(濃い)赤色が表示媒体12の色として呈示される。
【0187】
次に、最も移動度の低い第2の異性粒子34が調光層18内を移動可能程度の電界が調光層18内に形成され、且つ電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、及び第2の異性粒子34が背面基板16側に移動するような電界が調光層18内に形成されるように、電圧印加部14により第1の電極22及び第2の電極24に電圧を印加する。
【0188】
このような電界が調光層18内に形成されると、図1(C)に示すように、調光層18内に充填されている各粒子の内、最も移動度の高い電荷移動性微粒子30が背面基板16側に最初に到達する。
このような状態では、調光層18内の視認方向Xに近い領域では、第1の異性粒子32と第2の異性粒子34とが分散された状態にあることから、視認方向Xから視認されると、第1の異性粒子32と第2の異性粒子34との混合色、すなわち黒色と白色との混合色である灰色が、表示媒体12の色として呈示される。
【0189】
さらに、最も移動度の低い第2の異性粒子34が調光層18内を移動可能程度の電界が調光層18内に形成され、且つ電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、及び第2の異性粒子34が背面基板16側に移動するような電界が調光層18内に形成されるように、電圧印加部14により第1の電極22及び第2の電極24への電圧印加が継続されると、図1(D)に示すように、最初に背面基板16側に到達した電荷移動性微粒子30による層の表示基板20側に、順に第1の異性粒子32、及び第2の異性粒子34が積層される。このため、最も表示基板20側に近い方向には、第2の異性粒子34による層が形成されていることから、視認方向Xから視認されると、第2の異性粒子34による色、すなわち白色が、表示媒体12の色として呈示される。
【0190】
上記説明したように、調光層18内に、分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子30と、電荷移動性微粒子30より移動度が小さく且つ電荷移動性微粒子30の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する第1の異性粒子32と、第1の異性粒子32より移動度が小さく且つ電荷移動性微粒子30の呈示可能な明度範囲より高い明度の色を呈する第2の異性粒子34と、を含み、電圧印加部14の電界付与手段によって調光層18内に形成される電界強度、及び電界形成時間を調整することにより、電荷移動性微粒子30の分散状態を調製すると共に、調光層18の、ユーザによって視認される方向側を占める、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、及び第2の異性粒子34の割合を調整する。
【0191】
このため、第1の異性粒子32及び第2の異性粒子34によって、電荷移動性微粒子30の分散状態の変化により呈示可能な明度範囲より低い明度と、該明度範囲より高い明度と、を呈示することができ、明度範囲の広い表示素子、表示媒体、及び表示方法を提供することができる。
【0192】
なお、図1に示す例では、調光層18内に、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、第2の異性粒子34を含む場合を説明したが、調光層18内に第2の異性粒子34が含まれず、調光層18内に含まれる粒子が電荷移動性微粒子30及び第1の異性粒子32のみである場合についても、同様に、明度を好適に調製することができる。
【0193】
具体的には、第1の異性粒子32が調光層18内を移動可能程度の電界が調光層18内に形成され、且つ電荷移動性微粒子30、及び第1の異性粒子32が表示基板20側に移動するような電界が調光層18内に形成されるように、電圧印加部14により第1の電極22及び第2の電極24に電圧を印加すると、図1(B)と略同様に、調光層18内に充填されている各粒子は、移動度の高い順に表示基板20側に到達する。
すなわち、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32の順に、表示基板20側に各粒子が到達し、電荷移動性微粒子30及び第1の異性粒子32が調光層18内に分散されている状態に比べて、明度の低い濃い赤色が、表示媒体12の色として視認される。
【0194】
反対に、第1の異性粒子32が調光層18内を移動可能程度の電界が調光層18内に形成され、且つ電荷移動性微粒子30、及び第1の異性粒子32が背面基板16側に移動するような電界が調光層18内に形成されるように、電圧印加部14により第1の電極22及び第2の電極24に電圧を印加すると、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32の順に、背面基板16側に各粒子が到達する。このため、濃い赤色として視認されていた表示媒体12は、電荷移動性微粒子30及び第1の異性粒子32の背面基板16側への移動に伴って、該濃い赤色より明度の高い赤色(電荷移動性微粒子30の分散状態における色)として視認された後に、第1の異性粒子32による黒色として視認される。
【0195】
このように、調光層18内に、分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子30と、電荷移動性微粒子30より移動度が小さく且つ電荷移動性微粒子30の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する第1の異性粒子32と、を含み、電界付与手段としての電圧印加部14によって調光層18内に電界を形成することにより、第1の異性粒子32によって、電荷移動性微粒子30の分散状態の変化による呈示可能な明度範囲より高い明度を呈示することが可能となり、明度範囲の広い表示素子、表示媒体、及び表示方法を提供することができる。
【0196】
なお、図1(A)〜図1(D)に示す例では、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、及び第2の異性粒子34各々が、調光層18内を移動可能となるように調光層18内に充填されている場合を説明したが、調光層18内に含まれる第2の異性粒子34が、調光層18内を移動不可能に充填されるようにしてもよい。
【0197】
このような場合には、図3(A)に示すように、表示素子11は、電圧印加部14と表示媒体13とから構成されている。表示媒体13は、背面基板16、第1の電極22、間隙部材26、第2の電極24、表示基板20、及び調光層19を含んで構成されている。
なお、図3に示す構成は、図1に示す構成と、第2の異性粒子が調光層内を移動不可能となるように充填されている点以外は、同一の構成であるため、同一構成には同一番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0198】
調光層19は、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、第2の異性粒子35、及び分散媒36を含んで構成されている。
第2の異性粒子35は、第1の異性粒子32及び電荷移動性微粒子30より体積平均粒子径が大きく、且つ調光層19内を移動不可能となるような体積平均粒子径及び充填量となるように調製され、第2の異性粒子35間の隙間を介して、第1の異性粒子32と電荷移動性微粒子30とが、表示基板20側から背面基板側16、または背面基板16側から表示基板20側へと移動可能となるように充填されている。
【0199】
このように構成された表示素子11における表示方法の一例を説明する。
【0200】
電圧印加部14によって第1の電極22及び第2の電極24に電圧が印加されず、調光層19内に電界が形成されていない状態では、図3(A)に示すように、調光層19内に含まれる電荷移動性微粒子30及び第1の異性粒子32は、共に調光層19内において一様に分散された状態にある。
【0201】
図3(A)に示す状態では、視認方向Xから視認されると、電荷移動性微粒子30の分散状態において発色される色、すなわち図3(A)の例では赤色が、表示媒体13の色として提示される。
【0202】
次に、第1の電極22及び第2の電極24に電圧に、電荷移動性微粒子30より移動度の低い第1の異性粒子32が調光層19内を移動可能程度の電界が調光層19内に形成され、且つ電荷移動性微粒子30、及び第1の異性粒子32が表示基板20側に移動するような電界が調光層19内に形成されるように、電圧印加部14により第1の電極22及び第2の電極24に電圧を印加する。このような電界が調光層19内に形成されると、図3(B)に示すように、調光層19内に充填されている電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32は、移動度の高い順に、第2の異性粒子35間の隙間を通って表示基板20側に、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32の順に到達する。
【0203】
表示基板20側に、表示基板20側に近い方から離間される方向に向かって、電荷移動性微粒子30、及び第1の異性粒子32が順に積層された状態となると、図3(B)に示す電荷移動性微粒子30は、図3(A)に示すように電荷移動性微粒子30と第1の異性粒子32とが分散された状態に比べて、凝集された状態で表示基板20側に移動した状態となることから、視認方向Xから視認されると、電荷移動性微粒子30の凝集状態による色として、電荷移動性微粒子30の分散状態に比べて濃い赤色と、電荷移動性微粒子30による層上に積層された第1の異性粒子32による黒色と、から、図3(A)に示すような電荷移動性微粒子30が調光層19内に分散された状態に比べて、明度の低い(濃い)赤色が表示媒体13の色として呈示される。
【0204】
次に、第1の異性粒子32が調光層19内を移動可能程度の電界が調光層19内に形成され、且つ電荷移動性微粒子30、及び第1の異性粒子32が背面基板16側に移動するような電界が調光層19内に形成されるように、電圧印加部14により第1の電極22及び第2の電極24に電圧を印加する。このような電界が調光層19内に形成されると、図3(C)に示すように、調光層19内に充填されている各粒子の内、最も移動度の高い電荷移動性微粒子30が背面基板16側に最初に到達する。
【0205】
このような状態では、調光層19内の視認方向Xに近い領域では、第2の異性粒子35と第1の異性粒子32とが分散された状態にあることから、視認方向Xから視認されると、第1の異性粒子32と第2の異性粒子35との混合色、すなわち黒色と白色との混合色である灰色が、表示媒体13の色として呈示される。
【0206】
さらに、第1の異性粒子32が調光層19内を移動可能程度の電界を、調光層19内に形成し、且つ電荷移動性微粒子30、及び第1の異性粒子32が背面基板16側に移動するような電界を調光層19内に形成するように、電圧印加部14により第1の電極22及び第2の電極24への電圧印加を継続すると、図3(D)に示すように、第1の異性粒子32が第2の異性粒子35間の隙間を通って背面基板16側へと移動する。
このように、電荷移動性微粒子30及び第1の異性粒子32の双方が、背面基板16側へと移動されると、第2の異性粒子35は、調光層19内を移動不可能となるような体積平均粒子形及び充填量で充填されていることから、視認方向X側から視認されると、第2の異性粒子35による白色が、表示媒体13の色として呈示される。
【0207】
こように、第1の異性粒子32より明度が高く、且つ電荷移動性微粒子30の呈示可能な明度範囲より明度が高い第2の異性粒子35を、調光層19内を移動不可能となるような体積平均粒子径且つ充填量となり、且つ第2の異性粒子35の粒子間を介して第1の異性粒子32及び電荷移動性微粒子30が背面基板16と表示基板20との間を移動可能となるように、第2の異性粒子35の体積平均粒子径及び充填量を定める事により、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、及び第2の異性粒子34の全てが調光層19内を移動可能である場合に比べて、より明度の高い領域の色を呈示することが可能となり、より明度範囲の広い表示素子、表示媒体、及び表示方法を提供することができる。
【実施例】
【0208】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。但し、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0209】
(実施例1)
本発明の表示媒体の一例を、図3を参考にして説明する。
まず、厚さ0.7mmのガラスからなる背面基板16上に第1の電極22としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチンング法によりライン状にパターンニングした(線幅:300μm)。
続いて、第1の電極22が形成された背面基板16上に、光感光性ポリイミドワニスを用いて隔壁のための層を塗布したのち、露光、及びウエットエッチングを行うことにより高さ50μm幅20μmの複数の間隙部材26を形成した。
また、厚さ200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる表示基板20上に第2の電極24としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチンング法によりライン状にパターンニングした。線幅はおよそ300μmとした。
【0210】
前記間隙部材26と表示基板20との接合面に熱融着性の接着層を形成した後、第1の電極22が形成された背面基板16上の、複数の間隙部材26によって区切られる各区間内に、第1の異性粒子32として下記黒色粒子(以下、適宜黒色粒子32と称する)、第2の異性粒子35として下記白色粒子(以下、適宜白色粒子35と称する)、電荷移動性微粒子30としての金コロイド粒子を含む金コロイド粒子水溶液を充填した。
【0211】
次に、第2の電極24が形成された表示基板20を第2の電極24が形成された面が、背面基板16の第1の電極22が形成された面に対向するように熱をかけて貼り合わせることにより、表示媒体13を作製した。(図3参照)
なお、第1の電極22及び第2の電極24には、第1の電極22と第2の電極24とに電圧を印加することにより調光層19内に電界を形成するための電圧印加部14を授受可能に接続し、表示素子11を作製した。
【0212】
なお、電圧印加部14としては、横河電機製FG110を用いた。
【0213】
なお、金コロイド粒子の金コロイド水溶液中の金の含有量は、1.0質量%であった。
また、調光層19中の金コロイド粒子の体積充填率は、1.0vol%であり、第1の異性粒子としての黒色粒子の体積充填率は、1.0vol%であり、第2の異性粒子としての白色粒子(酸化チタン)の体積充填率は、75vol%であった。
【0214】
なお、金コロイド粒子30及び黒色粒子32は、調光層19内に封入された状態において、双方ともマイナスに帯電されていた。また、白色粒子35は、調光層19内に封入された状態において、プラス及びマイナスの何れにも帯電されていなかった。
この帯電状態、及び移動度は、各粒子を種類毎に調光層19内に封入して上記表示素子11を作製し、該表示素子の第1の電極22及び第2の電極24に、3Vの電圧を印加した時の粒子の移動に伴う色(反射スペクトル)の変化を、キーエンス社製USB2000を用いて観察、測定する事によって得られた。
【0215】
(金コロイド粒子の調製)
1wt%塩化金酸1mlと蒸留水79mlの混合溶液を70℃に保ち、1wt%クエン酸4mlと1wt%タンニン酸4mlの混合溶液を攪拌しながら加えた。その後、100℃で20分間加熱した後、金濃度として1.0wt%まで濃縮し、金コロイド粒子の分散した水溶液を調製した。このようにして調製した金コロイド粒子は、体積平均粒子径10nm、移動度2.1×10-6cm/Vs、分散状態における色は赤色を示していた。
【0216】
(第1の異性粒子の調製)
体積平均粒子径20μmのカーボン含有架橋含有架橋ポリメチルメタクリレートの球状微粒子(積水化成品工業製テクポリマーMBX−20−ブラック)を更に粉砕、分級することによって、体積平均粒子径100nmの第1の異性粒子を得た。この第1の異性粒子の移動度は1.1×10-6cm/Vsであった。
【0217】
(第2の異性粒子の調製)
イソプロピルメトキシシラン処理したチタニアの微粉末を重量比100対0.4の割合で混合した体積平均粒子径20μmの酸化チタン含有架橋ポリメチルメタクリレートの球状微粒子(積水化成品工業製テクポリマーMBX−20−ホワイト)を分級したものを使用した。この第2に異性粒子は、電界印加によってもほとんど移動せず、移動度1.0×10-7cm/Vs以下であった。
【0218】
このようにして作製した表示媒体13において、第1の電極22及び第2の電極24に電圧が印加されていない状態では、図3(A)に示すような、金コロイド粒子30が、調光層19内において分散状態であることが観察された。
視認方向Xから視認すると、金コロイド粒子30の分散状態において発色される赤色が、表示媒体13の色として視認された。
【0219】
この表示媒体12に、金コロイド粒子30に比べて移動度の小さい第1の異性粒子32が表示基板20側に移動可能な程度の電界が、調光層19内に形成されるように、第1の電極22側がマイナスとなり、第2の電極24側がプラスとなるように、第1の電極22と第2の電極24に3Vの電圧を印加した。
【0220】
このような電圧を、第1の電極22及び第2の電極24に印加すると、調光層19内の金コロイド粒子30及び第1の異性粒子32はマイナスに帯電され、且つ金コロイド粒子30の移動度が第1の異性粒子32より大きいことから、図3(B)に示すように、金コロイド粒子30及び第1の異性粒子32は第2の異性粒子35同士の間を通って第2の電極24側に移動し、移動度の大きい電荷移動性微粒子30が第1の異性粒子32より早く第2の電極24側、即ち、表示基板20側に移動した。
このような、金コロイド粒子30及び第1の異性粒子32の表示基板20側への移動に伴い、表示媒体13の色は、図3(A)に示すような金コロイド粒子30が調光層19内に分散された状態の赤色に比べて除々に明度が低くなり、濃赤色に変化することが観察された。
【0221】
次に、この表示媒体13に、金コロイド粒子30に比べて移動度の小さい第1の異性粒子32を背面基板16側に移動可能な程度の電界が調光層19内に形成されるように、第1の電極22側がプラスとなり、第2の電極24側がマイナスとなるように、第1の電極22と第2の電極24に3Vの電圧を印加した。
【0222】
このような電圧を、第1の電極22及び第2の電極24に印加すると、調光層19内の金コロイド粒子30及び第1の異性粒子32はマイナスに帯電され、且つ金コロイド粒子30の移動度が第1の異性粒子32より大きいことから、図3(C)に示すように、金コロイド粒子30及び第1の異性粒子32は第2の異性粒子35同士の間を通って第1の電極22側に移動し、移動度の大きい電荷移動性微粒子30が第1の異性粒子32より早く第1の電極22側、即ち、背面基板16側に移動することが観察された。
このような、金コロイド粒子30及び第1の異性粒子32の背面基板16側への移動に伴い、表示媒体13の色は、図3(B)に示すような状態による濃赤色から、金コロイド粒子30が第1の異性粒子32より高速に背面基板16側に移動することにより(図3(C)参照)、灰色に変化した後に、更に第1の異性粒子32もまた背面基板16側に移動することにより(図3(D)参照)、白色に変化した。
【0223】
上記図3(B)に示される状態における明度と、上記図3(D)に示される状態における明度と、を反射スペクトルの強度としてキーエンス社製 USB2000により測定したところ、 図3(B)における反射強度は15%、図3(D)における反射強度は40%であり、良好な明度範囲を示した。
【0224】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様に、本発明の表示媒体13の一例を、図3を参考に説明する。なお、実施例1とは、調光層19内に含まれる粒子の移動度の差が異なる(3.2×10−6cm/Vs)である場合を説明する。
【0225】
実施例2では、電荷移動性微粒子30、第1の異性粒子32、及び第2の異性粒子34各々の移動度の差が、実施例1とは異なる粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして表示媒体13を作製した。
なお、電圧印加部14としては、実施例1と同様に、横河電機製FG110を用いた。
【0226】
なお、銀コロイド粒子の銀コロイド水溶液中の金の含有量は、1.0質量%であり、調光層19中の銀コロイド粒子の体積充填率は、1.0vol%であり、第1の異性粒子としての黒色粒子の体積充填率は、1.0vol%であり、第2の異性粒子としての白色粒子の体積充填率は、75vol%であった。
【0227】
なお、銀コロイド粒子30及び黒色粒子32は、調光層19内に封入された状態において、双方ともプラスに帯電されていた。また、白色粒子35は、調光層19内に封入された状態において、プラス及びマイナスの何れにも帯電されていなかった。
【0228】
(銀コロイド粒子の調製)
2−エチルヘキシル酸銀のシクロヘキサン溶液(0.05wt%)の10mlに、ドデシル硫酸ナトリウムのエタノール溶液(0.5wt%)を5ml加えて撹拌した後、アスコルビン酸のエタノール溶液(0.02wt%)を5ml加え、50℃で10分間加熱した。このようにして作製した銀コロイド溶液を銀粒子濃度として1.0wt%まで濃縮した。このようにして調製した銀コロイド粒子は、体積平均粒子径5nm、移動度4.3×10-6cm/Vs、分散状態における色は黄色を示していた。
【0229】
(第1の異性粒子の調製)
実施例1と同様にして調製した。
(第2の異性粒子の調製)
実施例1と同様にして調製した。
【0230】
各粒子の移動度は、実施例1と同様にして求めた。また、各粒子の移動状態の確認についても、実施例1と同様にして行った。また、色の変化についても、実施例1と同様に、目視により行った。
【0231】
このようにして作製した表示媒体13において、第1の電極22及び第2の電極24に電圧が印加されていない状態では、図3(A)に示すように銀コロイド粒子30は、調光層19内において分散状態にあるため、視認方向Xから視認されると、銀コロイド粒子30の分散状態において発色される黄色が、表示媒体13の色として視認された。
【0232】
この表示媒体13に、銀コロイド粒子30に比べて移動度の小さい第1の異性粒子32が表示基板20側に移動可能な程度の電界が、調光層19内に形成されるように、第1の電極22側がプラスとなり、第2の電極24側がマイナスとなるように、第1の電極22と第2の電極24に5Vの電圧を印加した。
【0233】
このような電圧を、第1の電極22及び第2の電極24に印加すると、図3(B)に示すように、銀コロイド粒子30及び第1の異性粒子32は第2の異性粒子35間の隙間を通って第2の電極24側に移動し、移動度の大きい電荷移動性微粒子30が第1の異性粒子32より早く第2の電極24側、即ち、表示基板20側に移動することが観察された。
このような、銀コロイド粒子30及び第1の異性粒子32の表示基板20側への移動に伴い、表示媒体13の色は、図3(A)に示すような銀コロイド粒子30が調光層19内に分散された状態の黄色に比べて除々に明度が低くなり、濃黄色に変化した。
【0234】
次に、この表示媒体13に、銀コロイド粒子30に比べて移動度の小さい第1の異性粒子32が背面基板16側に移動可能な程度の電界が調光層19内に形成されるように、第1の電極22側がマイナスとなり、第2の電極24側がプラスとなるように、第1の電極22と第2の電極24に5Vの電圧を印加した。
【0235】
このような電圧を、第1の電極22及び第2の電極24に印加すると、図3(C)に示すように、銀コロイド粒子30及び第1の異性粒子32は第2の異性粒子35間の隙間を通って第1の電極22側に移動し、移動度の大きい電荷移動性微粒子30が第1の異性粒子32より早く第1の電極22側、即ち、背面基板16側に移動することが観察された。
このような、銀コロイド粒子30及び第1の異性粒子32の背面基板16側への移動に伴い、表示媒体13の色は、図3(B)に示すような状態による濃黄色から、銀コロイド粒子30が第1の異性粒子32より高速に背面基板16側に移動することにより(図3(C)参照)、灰色に変化した後に、更に第1の異性粒子32もまた背面基板16側に移動することにより(図3(D)参照)、白色に変化した。
【0236】
上記図3(B)に示される状態における明度と、上記図3(D)に示される状態における明度と、を実施例1と同様に反射スペクトル強度として測定したところ、図3(B)における反射強度は14%、図3(D)における反射強度は40%であり、良好な明度範囲を示した。
【0237】
(実施例3)
本発明の表示媒体の一例を、図2を参考に説明する。
まず、厚さ0.7mmのガラスからなる背面基板16上に第1の電極22としてITOをスパッタリング法により40nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチンング法によりライン状に、20μm毎にパターンニングした(電極線幅:200μm、第1の電極22間距離20μm)。
また、厚さ200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる表示基板20上に第2の電極24としてITOを、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチンング法によりライン状に、20μm毎にパターンニングした(電極線幅:200μm、第1の電極22間距離20μm)。
【0238】
続いて、第1の電極22が形成された背面基板16上に、光感光性ポリイミドワニスを用いて隔壁のための層を塗布したのち、露光、及びウエットエッチングを行うことにより高さ50μm幅20μmの複数の間隙部材26を、複数の間隙部材26によって区切られる各区画(調光単位セル)内に、少なくとも1本の第1の電極22及び、後述する少なくとも一本の第2の電極24が含まれるように形成した。
【0239】
前記間隙部材26と表示基板20との接合面に熱融着性の接着層を形成した後、第1の電極22が形成された背面基板16上の、間隙部材26によって区切られる各区間(調光単位セル18〜調光単位セル18)内に、第1の異性粒子32として下記黒色粒子、第2の異性粒子35として下記白色粒子と、分散媒36を含むと共に、分散状態で赤色を呈する電荷移動性微粒子30R、分散状態で緑色を呈する電荷移動性微粒子30G、及び分散状態で青色を呈する電荷移動性微粒子30B各々を含む調光単位セル18〜調光単位セル18が連続して配列されるように電荷移動性微粒子30(電荷移動性微粒子30R、電荷移動性微粒子30G、電荷移動性微粒子30Bを総称)としての金コロイド粒子を含む金コロイド粒子水溶液を含む混合溶液を充填した。
【0240】
次に、第2の電極24が形成された表示基板20を第2の電極24が形成された面が、背面基板16の第1の電極22が形成された面に対向するように、且つ第1の電極22の長尺方向に対して直交する方向が、第2の電極24の長尺方向と同一となるように、熱をかけて貼り合わせることにより、表示媒体12を作製した。(図3参照)
なお、第1の電極22と第2の電極24との交差する領域が、各調光単位セル18〜調光単位セル18内に少なくとも1つ含まれるように構成した。このように構成することで、各調光単位セル18〜調光単位セル18毎に、形成される電界を調整可能となるように構成した。
【0241】
また、第1の電極22及び第2の電極24には、第1の電極22と第2の電極24とに電圧を印加することにより各調光単位セル18〜調光単位セル18内に電界を形成するための電圧印加部14を信号授受可能に接続し、表示素子21を作製した。
【0242】
・黒色粒子(第1の異性粒子):実施例1と同様にして調製した。
・白色粒子(第2の異性粒子):実施例1と同様にして調製した。
・電圧印加部14:横河電機製FG110を用いた。
【0243】
なお、上記分散状態で、赤色、緑色、青色、各々を呈する金コロイド粒子30R、金コロイド粒子30B、及び金コロイド粒子30Gの、金コロイド水溶液中の金の含有量は、1.0質量%であり、調光層19中の金コロイド粒子の体積充填率は、1.0vol%であり、第1の異性粒子としての黒色粒子の体積充填率は、1.0vol%であり、第2の異性粒子としての白色粒子(酸化チタン)の体積充填率は、75vol%であった。
【0244】
なお、金コロイド粒子30R、金コロイド粒子30B、金コロイド粒子30G、及び黒色粒子32は、調光単位セル18〜調光単位セル18各々内に封入された状態において、双方ともマイナスに帯電されていた。また、白色粒子35は、調光単位セル18〜調光単位セル18各々内に封入された状態において、プラス及びマイナスの何れにも帯電されていなかった。
この帯電状態は、実施例1と同様にして測定した。
【0245】
(金コロイド粒子30Rの調製)
1wt%塩化金酸1mlと蒸留水79mlの混合溶液を70℃に保ち、1wt%クエン酸4mlと1wt%タンニン酸4mlの混合溶液を攪拌しながら加えた。その後、100℃で20分間加熱した後、金濃度として1.0wt%まで濃縮し、金コロイド粒子の分散した水溶液を調製した。このようにして調製した金コロイド粒子は、体積平均粒子径10nm、移動度2.1×10-6cm/Vs、分散状態における色は赤色を示していた。
【0246】
(金コロイド粒子30Gの調製)
1wt%塩化金酸1mlと蒸留水79mlの混合溶液を60℃に保ち、0.005wt%クエン酸4mlと1wt%タンニン酸4mlの混合溶液を攪拌しながら加えた。その後、ラウリル硫酸エステルナトリウムを金コロイド粒子に対して0.6wt%となるように加えて、100℃で30分間加熱した後、金濃度として0.1wt%まで濃縮し、金コロイド粒子の分散した水溶液を調製した。このようにして調製した金コロイド粒子は、体積平均粒子径50nm、移動度3.0×10-6cm/Vs、分散状態における色は緑色を示していた。
【0247】
(上記金コロイド粒子30Bの調製)
1wt%塩化金酸1mlと蒸留水79mlの混合溶液を60℃に保ち、0.1wt%クエン酸4mlと1wt%タンニン酸4mlの混合溶液を攪拌しながら加えた。その後、100℃で30分間加熱した後、金濃度として0.1wt%まで濃縮し、金コロイド粒子の分散した水溶液を調製した。このようにして調製した金コロイド粒子は、体積平均粒子径35nm、移動度5.1×10-6cm/Vs、分散状態における色は青色を示していた。
【0248】
(第1の異性粒子の調製)
実施例1と同様にして調製した。
(上第2の異性粒子の調製)
実施例1と同様にして調製した。
【0249】
各粒子の移動度は、実施例1と同様にして測定した。また、粒子の移動状態や、表示媒体の呈する色についても、実施例1と同様にして得た。
【0250】
このようにして作製した表示媒体15及び表示素子21において、第1の電極22及び第2の電極24に電圧が印加されていない状態では、図2(A)に示すように、金コロイド粒子30R、金コロイド粒子30B、及び金コロイド粒子30G各々は、調光単位セル18、調光単位セル18、調光単位セル18各々内において、分散状態にあるため、視認方向Xから視認されると、調光単位セル18は、金コロイド粒子30R粒子の分散状態における赤色を呈し、調光単位セル18は、金コロイド粒子30G粒子の分散状態における緑色を呈し、調光単位セル18は、金コロイド粒子30B粒子の分散状態における青色を呈した。
【0251】
この表示媒体15に、第1の異性粒子32が背面基板16側に移動可能な程度の電界が、分散状態で赤色を呈する金コロイド粒子30Rを含む調光単位セル18と、分散状態で青色を呈する金コロイド粒子30Bを含む調光単位セル18内に形成されるように、調光単位セル18及び調光単位セル18に対応する第1の電極22側がプラスとなり、調光単位セル18及び調光単位セル18に対応する第2の電極24側がマイナスとなるように、複数の第1の電極22及び複数の第2の電極24の内の、調光単位セル18及び調光単位セル18に対応する第1の電極22と第2の電極24に3Vの電圧を印加した。
【0252】
また、第1の異性粒子32が表示基板20側に移動可能な程度の電界が、分散状態で緑色を呈する金コロイド粒子30Gを含む調光単位セル18内に形成されるように、調光単位セル18に対応する第1の電極22側がプラスとなり、調光単位セル18及び調光単位セル18に相当する第2の電極24側がマイナスとなるように、複数の第1の電極22及び複数の第2の電極24の内の、調光単位セル18に対応する第1の電極22と第2の電極24に3Vの電圧を印加した。
【0253】
このような電圧を、調光単位セル18、調光単位セル18、調光単位セル18各々に対応する第1の電極22と第2の電極24に印加すると、図2(B)に示すように、調光単位セル18及び調光単位セル18内各々の金コロイド粒子30R、及び金コロイド粒子30Bは、第1の異性粒子32と共に且つ第1の異性粒子32より高速で、第2の異性粒子34の粒子間の隙間を通って第1の電極22側(背面基板16側)に移動することが観察された。
このような粒子の移動に伴い、調光単位セル18及び調光単位セル18は、各々赤色及び青色各々を呈する状態から、灰色に変化した後に、白色に除々に変化した。
【0254】
また、図2(B)に示すように、調光層18内の金コロイド粒子30Gは、第1の異性粒子32と共に且つ第1の異性粒子32より高速で、第2の異性粒子34の粒子間の隙間を通って第2の電極24側(表示基板側20)に移動することが観察された。
このような粒子の移動に伴い、調光層18は、緑色を呈する状態から、除々に明度が低くなり、濃緑色に除々に変化した。
【0255】
(比較例1)
比較例1では、調光層19中に、第1の異性粒子32としての黒色粒子と、第2の異性粒子35としての白色粒子を含まない以外は、実施例1と同様にして、表示媒体13及び表示素子11を作製した。
【0256】
このようにして作製した表示媒体13において、第1の電極22及び第2の電極24に電圧が印加されていない状態では、金コロイド粒子30は、調光層19内において分散状態にあるため、視認方向Xから視認されると、金コロイド粒子30の分散状態において発色される赤色が、表示媒体13の色として視認された。
【0257】
このときの明度を反射スペクトル強度としてキーエンス社製USB2000を用いて測定したところ、反射強度は30%であった。
【0258】
この表示媒体13に、第1の電極22側がマイナスとなり、第2の電極24側がプラスとなるように、第1の電極22と第2の電極24に15Vの電圧を印加したところ、調光層19内の金コロイド粒子30は第2の電極24側、即ち、表示基板20側に移動した。
このような、金コロイド粒子30の表示基板20側への移動に伴い、表示媒体13の色は、金コロイド粒子30が調光層19内に分散された状態の赤色に比べて除々に明度が低くなり、濃赤色に変化した。
【0259】
このときの明度を反射スペクトル強度としてキーエンス社製USB2000を用いて測定したところ、反射強度は25%であった。
【0260】
次に、この表示媒体13に、金コロイド粒子30が背面基板16側に移動可能な程度の電界が調光層19内に形成されるように、第1の電極22側がプラスとなり、第2の電極24側がマイナスとなるように、第1の電極22と第2の電極24に3Vの電圧を印加した。
【0261】
このような電圧を、第1の電極22及び第2の電極24に印加すると、調光層19内の金コロイド粒子30はマイナスに帯電されていることから、金コロイド粒子30は第1の電極22側、即ち、背面基板16側に移動した。
このような、金コロイド粒子30の背面基板16側への移動に伴い、表示媒体13の色は、上記濃赤色から、該濃赤色より明度の高い赤色に変化した後に、再度濃赤色に変化した。
この明度の高い赤色に変化したときの明度を反射スペクトル強度としてキーエンス社製USB2000を用いて測定したところ、反射強度は30%であった。
【0262】
一方、上記実施例1において、金コロイド粒子30及び第1の異性粒子32を表示基板20側へ移動させたときの明度を反射スペクトル強度としてキーエンス社製USB2000を用いて測定したところ、反射強度は15%であり、また、上記実施例1において、金コロイド粒子30及び第1の異性粒子32を背面基板16側へ移動させたときの明度を反射スペクトル強度としてキーエンス社製USB2000を用いて測定したところ、反射強度は40%であったことから、実施例1の方が、比較例1の呈示可能な最低明度に比べて、より広い範囲の明度を呈示することが可能であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0263】
【図1】本発明の表示媒体及び表示素子の一例を示す模式図であり、(A)は、調光層内の電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子の全てが分散された状態、(B)は、電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子が表示基板側に移動された状態、(C)は、電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子が背面基板側に移動する途中を示す状態、(D)は、電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子が背面基板側に移動した状態を示す模式図である。
【図2】本発明の表示媒体及び表示素子について、調光単位セルが背面基板の板面に沿った方向に配列された構成の一例を示す模式図であり、(A)は調光単位セル内に電界を形成する前の状態を示し、(B)は、調光単位セル内に電界を形成した後の状態の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の表示媒体及び表示素子の図1とは異なる一例を示す模式図であり、(A)は、調光層内の電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子の全てが分散された状態、(B)は、電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子が表示基板側に移動された状態、(C)は、電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子が背面基板側に移動する途中を示す状態、(D)は、電荷移動性微粒子、第1の異性粒子、及び第2の異性粒子が背面基板側に移動した状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0264】
10、11、21 表示素子
14 電圧印加部
12、13、15 表示媒体
18、19 調光層
22 第1の電極
24 第2の電極
30、30R、30G、30B 電荷移動性微粒子
32 第1の異性粒子
34、35 第2の異性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子と、前記電荷移動性微粒子より移動度が小さく且つ前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲外の明度の色を呈する第1の異性粒子と、を含む調光層を有する表示媒体。
【請求項2】
前記第1の異性粒子は、前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する請求項1に記載の表示媒体。
【請求項3】
前記電荷移動性微粒子の移動度は、前記第1の異性粒子の移動度に比べて1×10-6cm/Vs以上大きい請求項1に記載の表示媒体。
【請求項4】
前記第1の異性粒子は、黒色粒子である請求項1に記載の表示媒体。
【請求項5】
前記調光層は、前記第1の異性粒子より移動度が小さく、前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より高い明度の色を呈する第2の異性粒子を更に含む請求項2に記載の表示媒体。
【請求項6】
前記第1の異性粒子の移動度は、前記第2の異性粒子の移動度に比べて1×10-6cm/Vs以上大きい請求項5に記載の表示媒体。
【請求項7】
前記第2の異性粒子は、前記電荷移動性微粒子及び前記第1の異性粒子より体積平均粒子径が大きい請求項5に記載の表示媒体。
【請求項8】
前記第2の異性粒子は、白色粒子である請求項5に記載の表示媒体。
【請求項9】
前記電荷移動性微粒子がプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子である請求項1に記載の表示媒体。
【請求項10】
前記金属コロイド粒子が金又は銀である、請求項9に記載の表示媒体。
【請求項11】
前記電荷移動性微粒子の体積平均粒子径が1nm〜100nmの範囲内である請求項1に記載の表示媒体。
【請求項12】
前記電荷移動性微粒子の体積平均粒子径が2nm〜50nmの範囲内である請求項11に記載の表示媒体。
【請求項13】
分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子と、前記電荷移動性微粒子より移動度が小さく且つ前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲外の明度の色を呈する第1の異性粒子と、を含む調光層と、
前記調光層内に電界を形成する電界形成手段と、
を備えた表示素子。
【請求項14】
前記電界形成手段は、前記調光層を介して対向配置された少なくとも一対の電極を含む請求項13に記載の表示素子。
【請求項15】
前記第1の異性粒子は、前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する請求項13に記載の表示素子。
【請求項16】
前記電荷移動性微粒子の移動度は、前記第1の異性粒子の移動度に比べて1×10-6cm/Vs以上大きい請求項13に記載の表示素子。
【請求項17】
前記第1の異性粒子は、黒色粒子である請求項13に記載の表示素子。
【請求項18】
前記調光層は、前記第1の異性粒子より移動度が小さく前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より高い明度の色を呈する第2の異性粒子を更に含む、請求項15に記載の表示素子。
【請求項19】
前記第1の異性粒子の移動度は、前記第2の異性粒子の移動度に比べて1×10-6cm/Vs以上大きい請求項18に記載の表示素子。
【請求項20】
前記第2の異性粒子は、前記電荷移動性微粒子及び前記第1の異性粒子より体積平均粒子径が大きい請求項18に記載の表示素子。
【請求項21】
前記第2の異性粒子は、白色粒子である請求項18に記載の表示素子。
【請求項22】
前記電荷移動性微粒子がプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子である請求項13に記載の表示素子。
【請求項23】
前記金属コロイド粒子が金又は銀である、請求項13に記載の表示素子。
【請求項24】
前記電荷移動性微粒子の体積平均粒子径が1nm〜100nmの範囲内である請求項13に記載の表示素子。
【請求項25】
前記電荷移動性微粒子の体積平均粒子径が2nm〜50nmの範囲内である請求項24に記載の表示素子。
【請求項26】
分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子と、前記電荷移動性微粒子より移動度が小さく且つ前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度を呈する第1の異性粒子と、を調光層内に分散する工程と、
前記電荷移動性微粒子と前記第1の異性粒子とを、前記調光層内の予め定められた表示方向に移動させる工程と、
を有する表示方法。
【請求項27】
分散状態に応じた明度の発色性を呈する電荷移動性微粒子と、前記電荷移動性微粒子より移動度が小さく且つ前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度を呈する第1の異性粒子と、前記第1の異性粒子より移動度が小さく前記電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より高い明度の色を呈する第2の異性粒子と、を調光層内に分散する工程と、
前記電荷移動性微粒子、前記第1の異性粒子、及び前記第3の異性粒子を、前記調光層内の予め定められた表示方向に移動させる工程と、
を有する表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−156151(P2007−156151A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351994(P2005−351994)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)