説明

表示媒体および表示素子、並びに画像表示方法

【課題】磁気泳動方式の技術を採用しつつ、高い解像度とコントラストとを実現し得る表示媒体および表示素子、並びに画像表示方法を提供すること。
【解決手段】磁性粒子を含む炭素構造体からなる表示粒子2、および、表示粒子2を分散させる分散剤4を内部に有する表示層6を備えることを特徴とする表示媒体。少なくとも一方が光透過性を有する一対の基板12,14が対向配置され、該一対の基板12,14の間隙に表示層6が配されてなる表示媒体10と、該表示媒体のいずれかの表面に対して画像様に磁界を付与する表示用磁界付与手段と、を備えることを特徴とする表示素子。並びに表示媒体10に画像を書き込み表示させるための画像表示方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易的に画像を書き込み、表示し、かつ消去することが可能なリライタブルマーキング技術に関し、詳しくは、磁性粒子に対して磁力を作用させて簡易的に書き込み、表示および消去が可能な磁気泳動方式の表示媒体および表示素子、並びに画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
森林資源保護などの地球環境保全や、スペースセーブといった事務環境改善などの理由から、紙に替わるハードコピー技術として、リライタブルマーキング技術への期待が大きい。
リライタブルマーキング技術としては、従来より、各種電子ペーパーあるいはフレキシブルディスプレイの表示技術として、液晶を利用したものや有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)等先端技術を駆使したものの他に、粒子を電場あるいは磁場によって移動させることで画像を表示させる簡易的な方法も各種提案されている。
【0003】
磁性粒子を磁場によって移動させて画像を表示させる磁気泳動方式の技術として、透明又は半透明な描画面板(基板)とこれに対向する面材との間に多数の六角形のセルを有するハニカムコアを密封し、上記各セル内に磁性粒子を含む塑性分散液体を封入した磁気画板が開示されている。当該磁気画板では、ペン磁石の先端を描画面に接触させる等、前記塑性分散液体に画像様に磁界を作用させ、磁性粒子を描画面に浮上させて分散媒と磁性粒子とのコントラストの差で描画面に絵や文字を表示し、また基板の下で字消し棒を動かす等、背面から全面一様に磁界を付与することにより、浮上した磁性粒子を再び沈降させて絵や文字を消去するものである。
【0004】
磁気泳動方式の表示媒体においては、数十μmもの比較的大きな径の磁性粒子を用いており、解像度やコントラストが向上させることが困難であるという問題があった。また、コントラストを向上させるために、磁性粒子を着色することも行われているが、磁性粒子が泳動を繰り返すことによって、着色に供した塗料が剥がれて汚染物質となり、表示部分が不鮮明になってしまうという問題点もあった。
【0005】
解像度やコントラストの問題は、例えば、玩具としての使用であればあまり大きな問題とはならないが、例えば、電子ペーパーといった表示媒体ないし表示素子としての実用性を追求した場合にどうしても改善すべき性能上のハードルであり、これを飛躍的に向上させることが、実用性を兼ね備えた表示媒体ないし表示素子を実現するための重要な改善点となる。すなわち、紙に替わるリライタブルマーキング技術として確立させるためには、磁気泳動方式の表示媒体および表示素子の解像度およびコントラスト向上が必要不可欠の解決課題である。
【0006】
【特許文献1】特開2000−231348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、磁気泳動方式の技術を採用しつつ、高い解像度とコントラストとを実現し得る表示媒体および表示素子、並びに画像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1> 磁性粒子を含む炭素構造体からなる表示粒子、および、該表示粒子を分散させる分散剤を内部に有する表示層を備えることを特徴とする表示媒体である。
<2> 前記炭素構造体が、カーボンナノチューブであることを特徴とする<1>に記載の表示媒体である。
【0009】
<3> 前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブであることを特徴とする<2>に記載の表示媒体である。
<4> 前記表示粒子が、前記カーボンナノチューブに前記磁性粒子が付着した状態であることを特徴とする請求項2に記載の表示媒体である。
【0010】
<5> 前記磁性粒子の粒径が、50μm以下であることを特徴とする<1>に記載の表示媒体である。
<6> 磁性粒子を触媒として用いて製造したカーボンナノチューブを、用いた前記磁性粒子を分離することなく、前記表示粒子としてそのまま利用して得られたことを特徴とする<1>に記載の表示媒体である。
【0011】
<7> 少なくとも一方が光透過性を有する一対の基板が対向配置され、該一対の基板の間隙に、前記表示層が配されてなることを特徴とする<1>に記載の表示媒体である。
<8> 前記一対の基板の間隙を保持しつつ、前記表示層を平面上から見て複数に分画するスペーサーが配されてなることを特徴とする<7>に記載の表示媒体である。
【0012】
<9> 少なくとも一方が光透過性を有する一対の基板が対向配置され、該一対の基板の間隙に、磁性粒子を含む炭素構造体からなる表示粒子、および、該表示粒子を分散させる分散剤を内部に有する表示層が配されてなる表示媒体と、該表示媒体のいずれかの表面に対して画像様に磁界を付与する表示用磁界付与手段と、を備えることを特徴とする表示素子である。
【0013】
<10> 前記表示媒体における前記表示用磁界付与手段が磁界を付与する表面の裏面に対して、全面一様に磁界を付与する消去用磁界付与手段を備えることを特徴とする<9>に記載の表示素子である。
<11> 前記炭素構造体が、カーボンナノチューブであることを特徴とする<9>に記載の表示素子である。
【0014】
<12> 前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブであることを特徴とする<11>に記載の表示素子である。
<13> 前記表示粒子が、前記カーボンナノチューブに前記磁性粒子が付着した状態であることを特徴とする<11>に記載の表示素子である。
【0015】
<14> 前記磁性粒子の粒径が、50μm以下であることを特徴とする<9>に記載の表示素子である。
<15> 磁性粒子を触媒として用いて製造したカーボンナノチューブを、用いた前記磁性粒子を分離することなく、前記表示粒子としてそのまま利用して得られたことを特徴とする<9>に記載の表示素子である。
【0016】
<16> 前記一対の基板の間隙を保持しつつ、前記表示層を平面上から見て複数に分画するスペーサーが配されてなることを特徴とする<9>に記載の表示素子である。
<17> 前記表示用磁界付与手段が、前記表示媒体の表面を走査する磁気ヘッドであることを特徴とする<9>に記載の表示素子である。
【0017】
<18> <1>に記載の表示媒体に対して表示面側から画像様に磁界を付与することで、磁界を付与した部位のみ、前記表示粒子を表示面側に偏在させて黒色に表示させることを特徴とする画像表示方法である。
<19> 画像様に磁界を付与するに先立ち、表示面の裏面側に全面一様に磁界を付与することで、当該裏面側に前記表示粒子を予め偏在させておくことを特徴とする<18>に記載の画像表示方法である。
【0018】
<20> <1>に記載の表示媒体に対して、表示面側に全面一様に磁界を付与することで、当該表示面側に前記表示粒子を予め偏在させておき、その後、表示面の裏面側から画像様に磁界を付与することで、磁界を付与した部位を前記分散剤の色に表示させることを特徴とする画像表示方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高い解像度とコントラストとを実現し得る磁気泳動方式の表示媒体および表示素子、並びに画像表示方法を提供することができる。
特に、炭素構造体としてカーボンナノチューブを用い、そのカーボンナノチューブの製造に利用した触媒を磁性粒子としてそのまま転用することで、極めて簡便に表示媒体ないし表示素子を製造することができ、紙に替わるリライタブルマーキング技術として当該表示媒体を用いて画像を表示させる画像表示方法は、その将来性および実用性が極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の表示媒体および表示素子、並びに画像表示方法について詳細に説明する。
[表示媒体]
本発明の表示媒体は、磁性粒子を含む炭素構造体からなる表示粒子、および、該表示粒子を分散させる分散剤を内部に有する表示層を備えることを特徴とするものである。
図1に、本発明の一例である表示媒体の模式断面図を示す。当該図においては、表示媒体10の端部が拡大状態で表されている。
【0021】
図1に示されるように、本例において表示媒体10は、透明基板(基板)12と対向基板(基板)14との間隙に表示層6が配されてなる物である。表示層6は、スペーサー8により平面上(矢印A方向)から見て複数に分画されて形成されたセルC1,C2・・・が、二次元状に配された状態になっている。各セルC1,C2・・・内には、表示粒子2と、これを分散させる分散剤4とが充填されている。
以下に、本発明の表示媒体の構成要素について、図1を参考にその詳細態様について説明する。
【0022】
<表示粒子>
本発明においては、表示粒子2は、磁性粒子を含む炭素構造体からなるものが用いられる。
(炭素構造体)
本発明において炭素構造体とは、具体的には、カーボンナノチューブおよびフラーレンである。
【0023】
:カーボンナノチューブ:
一般にカーボンナノチューブとは、炭素の6角網目のグラフェンシートが、チューブの軸に平行に管を形成したものを言う。カーボンナノチューブは、さらに分類され、グラフェンシートが1枚の構造のものは単層カーボンナノチューブと呼ばれ、一方、多層のグラフェンシートから構成されているものは多層カーボンナノチューブと呼ばれている。どのような構造のカーボンナノチューブが得られるかは、合成方法や条件によってある程度決定される。
【0024】
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブでも、グラフェンシートが二層以上の多層カーボンナノチューブでも構わない。いずれのカーボンナノチューブを用いるか、あるいは双方を混合するかは、形成されるカーボンナノチューブ薄膜の用途により、あるいはコストを考慮して、適宜、選択すればよい。ただし、後述するように、製造適性からは、単層カーボンナノチューブを用いることが好適である。
【0025】
また、単層カーボンナノチューブの変種であるカーボンナノホーン(一方の端部から他方の端部まで連続的に拡径しているホーン型のもの)、カーボンナノコイル(全体としてスパイラル状をしているコイル型のもの)、カーボンナノビーズ(中心にチューブを有し、これがアモルファスカーボン等からなる球状のビーズを貫通した形状のもの)、カップスタック型カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンやアモルファスカーボンで外周を覆われたカーボンナノチューブ等、厳密にチューブ形状をしていないものも、本発明においてカーボンナノチューブとして用いることができる。
【0026】
さらに、カーボンナノチューブ中に金属等が内包されている金属内包カーボンナノチューブ、フラーレンまたは金属内包フラーレンがカーボンナノチューブ中に内包されるピーポッドカーボンナノチューブ等、何らかの物質をカーボンナノチューブ中に内包したカーボンナノチューブも、本発明においてカーボンナノチューブとして用いることができる。
【0027】
以上のように、本発明においては、一般的なカーボンナノチューブのほか、その変種や、種々の修飾が為されたカーボンナノチューブ等、いずれの形態のカーボンナノチューブでも問題なく使用することができる。したがって、本発明における「カーボンナノチューブ」には、これらのものが全て、その概念に含まれる。
【0028】
これらカーボンナノチューブの合成は、従来から公知のアーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法のいずれの方法によっても行うことができ、本発明においては制限されない。これらのうち、高純度なカーボンナノチューブが合成できるとの観点からは、磁場中でのアーク放電法が好ましい。
【0029】
用いられるカーボンナノチューブの直径としては、0.3nm以上100nm以下であることが好ましい。カーボンナノチューブの直径が、当該範囲を超えると、合成が困難であり、コストの点で好ましくない。カーボンナノチューブの直径のより好ましい上限としては、30nm以下である。
【0030】
一方、一般的にカーボンナノチューブの直径の下限としては、その構造から見て、0.3nm程度であるが、あまりに細すぎると合成時の収率が低くなる点で好ましくない場合もあるため、1nm以上とすることがより好ましく、10nm以上とすることがさらに好ましい。
【0031】
用いられるカーボンナノチューブの長さとしては、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。カーボンナノチューブの長さが、当該範囲をはずれると、合成が困難、もしくは、合成に特殊な方法が必要となりコストの点で好ましくない。カーボンナノチューブの長さの上限としては、10μm以下であることがより好ましく、下限としては、1μm以上であることがより好ましい。
【0032】
使用しようとするカーボンナノチューブの純度が高く無い場合には、後述する混合液の調製前に、予めカーボンナノチューブを精製して、純度を高めておくことが望ましい(精製工程)。カーボンナノチューブの精製方法に特に制限はなく、従来公知の方法をいずれも採用することができる。ただし、後述するように製造に際して用いた触媒をそのまま磁性粒子として転用する場合には、当該触媒を除去しない程度に精製することが望まれる。
【0033】
本発明には、官能基を有するカーボンナノチューブを用いることもできる。かかるカーボンナノチューブに付加可能な官能基としては、具体的には例えば、−COOH、−NH2、−OH、−CHO等の親水性の官能基や、−COOR(Rは炭化水素)、−SiR3(Rは炭化水素)等の疎水性の官能基が挙げられる。
これら官能基の導入方法としては、公知の手法を用いればよく、例えば、特表2002−503204号公報に記載の方法により、カーボンナノチューブに官能基を導入することができる。
【0034】
:フラーレン:
一般にフラーレンとは、炭素の6角網目が球形状(サッカーボール状)に配列して結合した分子を言い、サッカーボール分子等と称されている。炭素数が60個のC60が有名であるが、本発明において使用可能なフラーレンとしては、特に制限はなく、公知のフラーレン類ないしその誘導体をいずれも用いることができる。
【0035】
本発明において使用可能なフラーレンとして具体的には、C32、C50、C58、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C96からなる群から選ばれるいずれか1つ以上、もしくはその誘導体が挙げられる。また、多層のグラファイトからなる籠状のカーボンナノカプセル等もフラーレンの一種として挙げられる。具体的な誘導体としては、ノタノフラーレン、フラーレンエポキシド、アザヘテロフラーレン等のフラーレン二量体、あるいはそれらがさらに結合したフラーレン多量体等が挙げられる。これらフラーレン類の中でも、C60およびC70(特にC60)が、安定度の観点で好ましい。
【0036】
(磁性粒子)
磁性粒子とは、磁性(磁石に吸引する性質)を帯びることが可能な粒子を指し、一般的には強磁性を示す粒子であれば何でもよい。例えば、黒色マグネタイト、γ−ヘマタイト、二酸化クロム、フェライトなどの酸化物磁性材料や鉄、コバルト、ニッケル、ガドリニウム等の合金系、あるいはそれらの単一の金属性磁性材料の粒子等が挙げられる。
【0037】
磁性粒子の粒径としては、表示に関する限り画質が良好になる点で小さい方が有利であり、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。また、後述する通り、炭素構造体としてのカーボンナノチューブを製造する際に触媒として用いた磁性粒子を転用する場合には、1μm以下であることがさらに好ましい。なお、磁性粒子の粒径の下限には、特に制限はないが、一般的には10nm以上である。
【0038】
本発明において用いる磁性粒子として、カーボンナノチューブ製造時に用いた触媒を転用することもできる。
カーボンナノチューブの触媒として用いることが出来る元素としては、B、Si、S、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ge、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Th、U、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Lu等が挙げられる。これら触媒の粒径としては、10nm〜1μmの範囲が好ましく、20nm〜100nmの範囲がより好ましい。
これら触媒は、特に単層のカーボンナノチューブを製造する際に用いられる物である。
【0039】
カーボンナノチューブ製造の際の触媒として、強磁性を示すFe、Co、Ni、Gdを含む物を用い、得られたカーボンナノチューブを触媒ごと転用することによって、磁性粒子を含む炭素構造体からなる表示粒子を簡単に作製できるので、製造上非常に有利となる。
【0040】
カーボンナノチューブ製造の際における触媒の使用方法としては、製造方法によって異なるが、いずれの製造方法であっても従来公知の手法に従えばよい。例えば、アーク放電法による場合には、グラファイト等の炭素電極に混在させておけばよい。カーボンナノチューブ製造の際に触媒としての磁性粒子を用いることで、本発明の必須の構成である「磁性粒子を含む炭素構造体からなる表示粒子(詳しくはカーボンナノチューブ)」(表示粒子2)を容易に得ることができる。
【0041】
触媒を用いてカーボンナノチューブを製造すると、触媒としての金属粒子(磁性粒子)を種として、そこからカーボンナノチューブが伸びている構造の物が主として得られ、これを磁性粒子を含む炭素構造体からなる「表示粒子」としてそのまま用いることができる。この場合、合成時にカーボンナノチューブの炭素と触媒としての磁性粒子が化学的に結合しているので、カーボンナノチューブが磁性粒子から剥がれにくく、表示粒子2全体として極めて堅牢な物となる。
【0042】
このように、磁性粒子がカーボンナノチューブの成長起点となって、両者が化学的に安定に結合している状態のほか、磁性粒子がカーボンナノチューブに内包されている状態や、ファンデルワールス力等の物理的な力のみにより両者が付着しあっている状態、1本あるいは複数本のカーボンナノチューブが磁性粒子に巻き付くようにして絡み合っている状態等が見られ、いずれの状態も本発明において「表示粒子」としてそのまま用いることができる。
【0043】
ただし、実際にはカーボンナノチューブ(主として単層カーボンナノチューブ)以外にも、磁性粒子を含まない非磁性のアモルファスカーボン等が含まれているため、それらを取り除く作業を行うことが好ましい。例えば、合成したカーボンナノチューブをシャーレに取り出し、磁石をシャーレの底に接触させ、磁性粒子(触媒)を含むカーボンナノチューブをシャーレの底に磁力によって付着させ、磁石に付着しなかった成分(アモルファスカーボン等)を分離し、シャーレ内に磁性粒子と結合しているカーボンナノチューブのみを残す等の精製方法を挙げることができる。当該精製方法は、磁性粒子を含むカーボンナノチューブのみを選択的に得ることができる点で、極めて効率的かつ簡易的な方法であり、好適である。
【0044】
さらに、既述の金属内包カーボンナノチューブにおいて、所望の磁性粒子を内包させて、これを「表示粒子」として用いても構わない。あるいは、所望の磁性粒子を内包させたフラーレンをカーボンナノチューブ中に内包されるピーポッドカーボンナノチューブを、「表示粒子」として用いても構わない。
カーボンナノチューブに磁性粒子、フラーレン、フラーレン誘導体を内包させる方法としては、従来公知の方法を採用すればよい(例えば、「カーボンナノチューブの材料科学入門」齋藤弥八編著(コロナ社)に一般的な方法が記載されている。)。
【0045】
炭素構造体としてフラーレンを用いる場合には、所望の磁性粒子(原子もしくは複数個の原子)を内包させて、これを「表示粒子」として用いればよい。フラーレンに磁性粒子を内包させる方法としては、従来公知の方法、例えば、「ナノカーボン材料の新局面―加速する本格実用化―」篠原久典監修(シーエムシー出版)等に記載されている方法を採用することができる。
【0046】
これらの方法により、内包できる金属元素もしくは複数の原子は、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Ba、Hf、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Pa、U、Np、Pu、Am等である。一方フラーレンは、Fe、Ni、Coといった磁性材料は内包できないが、カーボンナノカプセルにはそれが安定に内包できるので、これらを「表示粒子」として用いることもできる。これらは、上述した金属内包フラーレンと同様に合成できる。合成方法が金属内包フラーレンと同じであることから、これらも金属内包フラーレンの一種とする。
【0047】
<分散剤>
本発明において分散剤(符号4)とは、表示粒子2を分散させるために、表示層6内(さらにはセルC1,C2内)に封入される液体または固体(粒子状)である。分散剤4には、磁界の作用により表示粒子2を自由に移動させる機能が求められ、かつ、非磁性であることおよび黒色以外の色相であることといった物性が要求されるが、これら機能および物性を有しさえすれば、用いる材料として特に制限を受けるものではない。また、分散剤4には、その他、安定性が高いこと、炭素構造体や磁性粒子、さらには透明基板12、対向基板14およびスペーサー8を溶解してしまったり、これらの各機能を損なわない材料であることが望まれる。
【0048】
液体の分散剤(以下、「分散媒」と称する場合がある。)として好適な材料としては、水、グリコール類等の極性分散媒や、アルコール類、有機溶剤、油類等の非極性分散媒等、各種分野で分散媒として用いられる材料が問題なく利用可能である。
液体の分散剤の場合、表示粒子2の自由な移動が確保できる範囲で、ある程度の粘度を有するものを用いても構わない。その点、本発明に言う「液体」とは、ゲル状の物を含む概念とする。
【0049】
ある程度の粘度を有する分散媒とするために、微粒子増稠剤を添加することもできる。微粒子増稠剤としては、例えば、無水けい酸、含水けい酸アルミニウム、含水けい酸カルシウム、シリカ、クレー、カオリン、ベンナイト、けい藻土等のけい酸塩微粒子や、アルミナ、極微細炭酸カルシウム、極微細活性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、含水塩基性炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0050】
カーボンナノチューブやフラーレン等の炭素構造体は黒色なので、これらと色相を異ならせるために、分散媒を適当な色に着色することが望ましい。黒色の炭素構造体との間で、高いコントラストを稼ぐには、特に白色に着色することが有利である。
分散媒を着色するには、公知の着色剤(各種染料、顔料)を適宜溶解ないし分散すればよい。好適な白色に着色するには、例えば酸化チタン粒子を着色剤として用い、これを分散させてコロイド溶液とすればよい。分散媒における着色剤の濃度は、特に制限されず、各種機能を損なわない範囲で所望の濃度とすればよい。
【0051】
固体(粒子状)の分散剤(以下、「分散粒子」と称する場合がある。)として好適な材料としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)等のポリマー粒子や、あるいは、酸化チタン、シリカ、酸化スズ等の金属酸化物粒子等、常温で固体状の各種材料が問題なく利用することができる。
【0052】
高精細な画像を得ようとする場合には、分散粒子の径はある程度小さいことが望まれ、具体的には、1mm以下が好ましく、1〜300μmの範囲がより好ましく、10〜100μmの範囲がさらに好ましい。このとき、粒径が極めて小さい分散粒子を分散剤4として用いて、表示層6内(さらにはセルC1,C2内)に表示粒子2および分散剤4を充填してしまうと、分散剤4が表示粒子2の動きを規制してしまう懸念があるが、これらを表示層6内(さらにはセルC1,C2内)に完全に充填せず、余裕を残して封入することで、表示粒子2の磁界による移動を確保することができる。そのため、このような場合には、表示層6内(さらにはセルC1,C2内)における充填率を」適宜調整してやることが望ましい。
【0053】
分散媒の場合と同様、分散粒子の場合も黒色とは異なる色相の材料を用いるか着色することが望ましい。ただし、着色する場合に塗料を塗布することで塗膜を形成すると、使用により当該塗膜が脱落して表示不良の原因となる懸念があるため、分散粒子を作製するに際して各種着色剤を材料組成に加えて混ぜ合わせることで着色することが望ましい。使用可能な着色剤としては、特に制限なく、公知の物を目的に応じて用いることができる。なお、分散粒子の場合も分散媒の場合と同様、高いコントラストを稼ぐには、特に白色の分散粒子を用いるか、白色に着色することが有利である。
【0054】
分散剤4と表示粒子2との混合割合は、それぞれ用いた材料や色相、充填率、さらに表示層6(ないしセルC1,C2)の厚さ等により変わって来るので、一概に言えないが、表示粒子2の量として、少なくとも表示層6(ないしセルC1,C2)の上下いずれかの基板(12,14)面を均一に被覆することができ、最低限所望とする濃度の黒色を色ムラ無く呈する量とすればよい。
【0055】
<透明基板および対向基板>
透明基板12および対向基板14の一対の基板の材料としては、少なくとも表示側となる透明基板12が透明であることが要求される他は特に制限はなく、基板として利用可能なあらゆる基板材料を用いることができる。ただし、書き込みないし消去のために付与される磁界に影響を与えないことが望まれるので、少なくとも非磁性の材料を用いることが望まれる。
【0056】
基板材料としては、ガラス、石英、各種樹脂材料(例えば、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、塩化ビニル等)、各種セラミックス材料(マコール、機械加工可能セラミックス等)など、形状保持性のある材料をいずれも用いることができる。
【0057】
基板の厚みとしては、書き込みないし消去のために付与される磁界が、内部の表示層6に十分に作用し得る程度、かつ、透明基板12については、表示画像に影響を与えない程度であれば特に制限はなく、表示媒体10として望まれる形状保持性や強度を確保し得るだけの厚みと、薄膜化の要求との双方を考慮しつつ、使用する材料に応じて適宜決定すればよい。具体的には、使用する材料によっても異なるが、概ね100μm〜1mm程度の範囲から選択される。
【0058】
既述の通り、一対の基板としては、少なくともその一方が透明であれば構わないが、双方とも透明の基板を採用することもできる。双方とも透明の基板を採用した場合、いずれの面についても表示面とすることができる。その場合、一方の面の画像に対して、そのネガの画像が他方の面には表示される。
【0059】
<スペーサー>
本発明においてスペーサー(符号8)とは、透明基板12および対向基板14の間隙を保持しつつ、表示層6をセルC1,C2・・・に分画する機能を有する部材である。スペーサー8を設けることにより、透明基板12および対向基板14の所定の間隙が保たれ、表示媒体10として望まれる形状保持性や強度を確保することができる。また、表示層6をセルC1,C2・・・に分画することにより、表示粒子2や分散剤4がセルごとに分かれるため、表示媒体10全体としての偏りが防止され、画像表示機能が担保される。さらに、表示層6をセルC1,C2・・・に分画することで、デジタル書き込み/表示に対応させることが可能となる。
【0060】
スペーサー8の材料としては、特に制限はないが、前記基板同様少なくとも非磁性の材料を用いることが望まれる。スペーサー材料としては、前記基板において例示した物が、同様に好ましく利用できる。表示画像に与える影響を最小限とするために、透明材料を用いることが望ましいが、スペーサーを十分に薄膜化することで、色を無視することができる場合もある。
基板材料とスペーサー8の材料は、同一であっても異なる物であっても構わないが、透明基板12および対向基板14のいずれか一方と同一の材料とすれば、一体成型することが可能となり、製造適性の観点から好ましい。
【0061】
スペーサー8の厚さとしては、表示画像の精細さに影響を与えないようにするためには、できる限り薄膜であることが望まれる。勿論、透明基板12および対向基板14の間隙を保持して、表示媒体10として望まれる形状保持性や強度を確保する機能や、セルごとに分画する機能を損なわないために要求される剛性があり、当該剛性を確保し得る範囲でできる限り薄膜であることが好ましい。
スペーサー8の具体的な厚さとしては、使用する材料によっても異なるが、高精細な表示画像を得ようとする場合には、1μm〜1mm程度の範囲から選択されることが好ましく、10μm〜0.5mm程度の範囲から選択されることがより好ましい。
【0062】
[表示素子]
本発明の表示素子は、少なくとも一方が光透過性を有する一対の基板が対向配置され、該一対の基板の間隙に、磁性粒子を含む炭素構造体からなる表示粒子、および、該表示粒子を分散させる分散剤を内部に有する表示層が配されてなる表示媒体と、該表示媒体のいずれかの表面に対して画像様に磁界を付与する表示用磁界付与手段と、を備えることを特徴とするものである。すなわち、本発明の表示素子は、必須構成として、既述の本発明の表示素子と表示用磁界付与手段とを備えるものである。
【0063】
図2は、本発明の一例である表示素子を示す図面であり、図2(a)は、その模式断面図である。当該図においては、図1を用いて説明した本発明の表示媒体10に対して画像の書き込みおよび表示が可能な表示素子の例が表されている。また、図2(b)は、図2(a)に示す表示素子の、透明基板12側から見た平面図である。表示媒体10は、図2(a)に示されるように、縦横11個ずつ計121個のセルが二次元的に配置されてなる物である。
図2に示されるように、本例の表示素子は、表示媒体10の表示面側(透明基板12側)に磁気ヘッド(表示用磁界付与手段)16が、表示媒体10の裏面側(透明基板12側)に長尺磁石(消去用磁界付与手段)18が、それぞれ備えられている。
【0064】
磁気ヘッド16は、表示媒体10の表示面に向けて磁界を作用させるように備えられ、横方向(矢印B方向)に走査しつつ画像様に磁界を付与する。そしてその行が走査し終わると次の行に移動して、また横方向に走査しつつ画像様に磁界を付与する。全ての行(図においては11行)が走査し終わると、磁気ヘッド16は、ホームポジション(例えば、図2(b)で磁気ヘッド16が位置する場所から左側の表示媒体10の外側領域)に戻って、次の画像書き込みまで待機する。もしくは、例えば、市販のインクジェットプリンターの様に、磁気ヘッド16は横方向の移動のみで、行の移動は磁気ヘッド16が1行走査した後、表示媒体10そのものが1行分移動するように構成されていても構わない。
【0065】
このようにして、画像が書き込まれ、表示される。画像の書き込み・表示の原理については、次項の[画像表示方法]にて詳述する。
なお、本例では、表示用磁界付与手段として磁気ヘッド16を例示したが、これに限定されない。例えば、端部に磁界が生ずる棒磁石などを用いてもよく、かかる棒磁石を表示用磁界付与手段として用いた場合、これをペンに見立てて、表示媒体10の表示面に手で画像(文字、絵、図形等)を描けば、手書きの画像を表示媒体10の表示面に書き込み・表示することができる。
【0066】
長尺磁石18は、その長手方向の面の内、表示媒体10の裏面に向けて磁界を作用させるように備えられ、横方向(矢印C方向)に移動可能に構成されている。磁気ヘッド16により一旦書き込まれた画像は、長尺磁石18が横方向に移動して、表示媒体10の裏面に全面一様に磁界が付与されることで消去される。
【0067】
長尺磁石18は、表示媒体10の全面を消去した後、ホームポジション(例えば、図2(b)で長尺磁石18が位置する場所)に戻って、次の画像消去まで待機する。ホームポジションを左右双方に設け、1回の消去動作で片道方向のみ移動して他方のホームポジションで待機し、次の消去動作で再度片道方向のみ移動して元のホームポジションに戻ってくる構成としても構わない。
【0068】
このようにして、一旦書き込まれた画像が消去される。画像の消去の原理についても、次項の[画像表示方法]にて詳述する。
この消去の動作は、消去目的ではなく、表示画像のノイズを防止すべく、画像書き込みに先立って、表示媒体10を一旦初期化させる目的で行っても構わない。
【0069】
なお、本例では、消去用磁界付与手段として長尺磁石18を例示したが、これに限定されない。例えば、表示媒体10の裏面全面に一度に磁界を付与できる平面状の磁石を用いて、画像書き込みないし表示時にはこれを退避させておき、消去時に表示媒体10の裏面に対向させるように構成しても構わない。あるいは、表示用磁界付与手段の変形例として説明した棒磁石を用いて、消去時に表示媒体10の裏面全面に走査させる構成しても構わない。
【0070】
その他、平面状の電磁石を表示媒体10の裏面に対向させておき、電源のオン−オフで消去動作を制御したり、表示媒体10の裏面全面には満たない大きさの平面状の磁石を用い、これを全面に移動させて消去する構成など、各種構成を例示することができる。いずれにしても、消去用磁界付与手段としては、表示媒体10の裏面に全面一様に磁界が付与し得る構成であれば、如何なる態様の物を用いても構わない。
【0071】
勿論、本発明においては、当該消去用磁界付与手段は必須の構成ではなく、永久画像を望む場合などがこれに当たる。また、消去する必要が生じたときのみ、任意の磁石を別途用意して、これを表示媒体10の裏面に全面一様に磁界を付与しても構わない。
【0072】
[画像表示方法]
本発明の画像表示方法は、既述の本発明の表示媒体に対して表示面側から画像様に磁界を付与することで、磁界を付与した部位のみ、前記表示粒子を表示面側に偏在させて黒色に表示させることを特徴とする。
【0073】
以下、図1に示す表示媒体並びに図2に示す表示素子を例に挙げ、表示媒体における2つのセルのみに着目して、本発明の画像表示方法について説明する。なお、本例において、分散剤4としては、酸化チタンのコロイド溶液を用いた。したがって、分散剤の色は白色である。
【0074】
図3(a)は、図1に示す表示媒体に対して書き込みを行っている様子を示す本発明の画像表示方法を説明するための模式断面図である。図中、磁気ヘッド16から放射状に放出されるように描かれている線は、磁力線の一部である。
磁気ヘッド16は、セルC2と対向する位置で磁界を発生させている。この磁界は磁性粒子を包含する表示粒子2に作用し、セルC2内では、透明基板12側に表示粒子2が引き付けられ、表示側に偏在した状態となる。なお、不図示ではあるが、矢印B方向に走査した磁気ヘッド16は、セルC1と対向する位置では磁界を発生させず、セルC1内では、表示粒子2が対向基板14側に偏在した状態のまま動かない。
【0075】
以上のようにして書き込みの操作が行われた後の表示媒体10の様子を、図3(b)に模式断面図で示す。図3(b)に示されるように、表示粒子2は、セルC1では対向基板14側に、セルC2では透明基板12側に、それぞれ偏在した状態となっている。そのため表示面側(透明基板12側)から見ると、セルC1が分散剤4の白色、セルC2が炭素構造体に由来する表示粒子2の黒色を呈した状態となる。このようにセルごとに白色/黒色がデジタル的に選択されて、表示媒体10の表示面全面に、白地に黒色の画像が形成される。
【0076】
なお、磁気ヘッド16がセルC1、C2よりも十分小さければ、セルごとに白色/黒色を選択するのではなく、1つのセル内において、部分的に磁界のオン−オフを制御して、表示粒子2を部分的に透明基板12側に移動させたり、対向基板14側に偏在させたままにしておいたりする、いわゆるアナログ的な書き込みをすることも可能である。
【0077】
このように、本発明によれば、表示粒子2として用いる炭素構造体(カーボンナノチューブまたはフラーレン)の粒径が非常に小さいので、アナログ的な書き込みの場合においては、表示粒子2の粒径がそのまま解像度に直結することから勿論、デジタル的な書き込みの場合においても、個々のセルを極めて微細にすることができるため、表示画像の解像度が高くなる。また、同様の理由により、画像の表示部の境界部分が、非常にシャープになる。
【0078】
本発明によれば、表示粒子2として用いる炭素構造体の粒径が非常に小さく、軽いために、磁気泳動するときの速度が速く(表示速度が速い)、また、駆動力が小さくてもよいため、エネルギーコスト的にも有利である。
また、表示粒子2として用いる炭素構造体の粒径が非常に小さく軽いため、静電気力やファンデルワールス力等が有効に作用し、これら力により表示粒子2の偏在が保持され、一旦形成された画像が長時間保持される。
【0079】
さらに、表示粒子2の色が炭素構造体(カーボンナノチューブまたはフラーレン)に由来して完全に黒色なので、白色の分散剤を用いる等、分散剤との組み合わせにより、コントラストを容易に高くすることができる。
その他、表示媒体10自身、表示粒子2として用いる炭素構造体が軽いため、また、表示層6を薄膜化することができるため、全体として軽量化することができる。
【0080】
加えて、表示粒子2として、磁性粒子を触媒として用いて製造したカーボンナノチューブを、用いた前記磁性粒子を分離することなくそのまま利用して転用した場合には、カーボンナノチューブ製造時にカーボンナノチューブの炭素と触媒である磁性粒子との多くが化学的に結合した状態となっているので、カーボンナノチューブが磁性粒子から剥がれにくく、表示層6を汚染する懸念が少ない。
【0081】
また、フェライト等の磁性粒子を塗装している物では、その塗膜が剥がれて粒子自身が酸化してしまう懸念があるが、炭素構造体たるカーボンナノチューブやフラーレンは酸化することが無く、勿論塗装しなくてもほとんど完全な黒色を呈呈し、さらに、触媒表面は炭素と固溶体を作っているため、磁性粒子が酸化されることはないので、表示粒子2自体の色も変化しない。フェライト等酸化してしまう磁性粒子を塗装せずにそのまま表示材として用いるためには、特許文献1にも記載されているように、保護層あるいは着色層が必要であるが、炭素構造体を表示材として用いる本発明では、これら層は勿論不要である。
【0082】
なお、上記例では、対向基板14が透明ではないことを前提として説明してきたが、これを透明基板12と同様の材質を用いて透明とし、表裏両面表示の表示媒体とした場合、上述の表示面に対して裏面側(対向基板14側)から見た画像は、図3(b)からわかるように、セルC1が炭素構造体に由来する表示粒子2の黒色、セルC2が分散剤4の白色を呈した状態となる。つまり、上述の表示面側(透明基板12側)では、白地に黒色の画像が形成された状態で、その裏面側(対向基板14側)では、黒地に白色の画像が形成された状態となっており、両者は結局ポジ−ネガの関係となっている。
【0083】
一旦書き込んだ画像を消去して次の書き込みに備えることで、リライタブルマーキング技術として確立する。上記説明した本発明の画像表示方法で形成された画像は、図4を用いて説明する消去方法によって消去することができる。ここで図4は、図3で説明される画像表示方法によって表示媒体に書き込まれた画像を消去している様子を示す模式断面図であり、図4(a)は消去動作の開始直後、図4(b)はその消去動作がやや進んだ状態を表すものである。図中、長尺磁石18から放射状に放出されるように描かれている線は、磁力線の一部である。
【0084】
消去動作の開始により、長尺磁石18が矢印C方向に移動すると、表示媒体10の表示面の裏面側(対向基板14側)から磁界が作用し、図4(a)から図4(b)へと経過するにしたがって、セルC1およびセルC2に全面一様に磁界が付与される。そのため」、セルC1内では既に、表示粒子2が対向基板14側に偏在した状態であるためそのまま動かないが、表示粒子2が透明基板12側に偏在した状態であるセルC2内では、当該表示粒子2が対向基板14側に引き付けられ、表示面の裏面側に偏在した状態となる。
【0085】
長尺磁石18の矢印C方向への移動により、順次各セルに磁界が付与され透明基板12側に偏在した状態の表示粒子2が対向基板14側に引き付けられ、やがて表示媒体10の全面一様に磁界が付与されると、全ての表示粒子2が対向基板14側に引き付けられて表示画像が消去される。
【0086】
なお、この消去の動作は、消去の目的のみならず、画像を書き込む前の表示媒体10の初期化の目的で行い、表示面の裏面側(対向基板14側)に表示粒子2を予め偏在させておくことも好ましい態様である。書き込み前の段階で、表示粒子2が、例えば一部が表示面側に移動していたりすると、それが表示画像の汚れ(ノイズ)となるが、初期化の目的で上記消去の動作をしておくと、そのような汚れの無い、高精細で高コントラストの画像を形成することができる。
【0087】
勿論、表示粒子2が表示面の裏面側に完全に偏在していなくても、例えば、表示層6中に分散状態で存在していても、表示面に偏在していない限り書き込み後の表示面偏在状態との間では十分なコントラストが得られるため、初期化目的の上記消去の動作は必須の構成ではない。
【0088】
ところで、図2に示す例の表示素子とは逆に、表示用磁界付与手段を表示面の背面側に配し、消去用磁界付与手段を表示面側に配して、表示媒体10に画像を書き込むことも可能である。図5は、そのような構成の変形例の表示素子の模式断面図である。なお、平面図は省略している。
図5に示されるように、変形例の表示素子は、表示媒体10の表示面側(透明基板12側)に長尺磁石(消去用磁界付与手段)18’が、表示媒体10の裏面側(透明基板12側)に磁気ヘッド(表示用磁界付与手段)16’が、それぞれ備えられている。
【0089】
長尺磁石18’は、その長手方向の面の内、表示媒体10の表示面に向けて磁界を作用させるように備えられ、横方向(矢印C’方向)に移動可能に構成されている。一方、磁気ヘッド16’は、表示媒体10の裏面に向けて磁界を作用させるように備えられ、横方向(矢印B’方向)に走査しつつ画像様に磁界を付与する。
【0090】
当該変形例の表示素子により画像を書き込むには、初期化目的のいわゆる消去の動作(以下、単に「初期化動作」という場合がある。)が必須の構成となる。
図5に示す表示素子に画像を書き込む、本発明の変形例の画像表示方法について、図6および図7を用いて説明する。
【0091】
図6は、実際に画像を書き込むに先立ち行われる初期化動作を説明するための模式断面図であり、図6(a)は初期化動作の開始直後、図6(b)はその初期化動作がやや進んだ状態を表すものである。図中、長尺磁石18’から放射状に放出されるように描かれている線は、磁力線の一部である。
【0092】
初期化動作の開始により、表示面側に配された長尺磁石18’が矢印C方向に移動すると、分散状態あるいは偏在状態にあった表示粒子2は、図6(b)に示されるように全て表示面側(透明基板12側)に引き付けられ偏在した状態となる。
図7(a)は、図5に示す表示素子を用いて書き込みを行っている様子を示す変形例の画像表示方法を説明するための模式断面図である。図中、磁気ヘッド16’から放射状に放出されるように描かれている線は、磁力線の一部である。
【0093】
磁気ヘッド16’は、セルC2と対向する位置で磁界を発生させている。この磁界は磁性粒子を包含する表示粒子2に作用し、セルC2内では、対向基板14側に引き付けられ、表示面の裏面側に偏在した状態となる。なお、不図示ではあるが、矢印B’方向に走査した磁気ヘッド16’は、セルC1と対向する位置では磁界を発生させず、セルC1内では、表示粒子2が透明基板12側に偏在した状態のまま動かない。
【0094】
以上のようにして書き込みの操作が行われた後の表示媒体10の様子を、図7(b)に模式断面図で示す。図7(b)に示されるように、表示粒子2は、セルC1では透明基板12側に、セルC2では対向基板14側に、それぞれ偏在した状態となっている。そのため表示面側(透明基板12側)から見ると、セルC1が炭素構造体に由来する表示粒子2の黒色、セルC2が分散剤4の白色を呈した状態となる。このようにセルごとに白色/黒色がデジタル的に選択されて、表示媒体10の表示面全面に、黒地に白色の画像が形成される。なお、アナログ的な書き込みをすることも可能である点は、図2の表示素子を用いた図3の例と同様である。
その後、初期化動作と同様にして消去の動作を行えば、次の書き込みに備えることができ、本変形例の場合でもリライタブルマーキング技術として実用可能であることがわかる。
【0095】
以上、本発明の表示媒体、表示素子および画像表示方法について、具体例を挙げて説明したが、本発明はこれら具体例に限定されるものではなく、従来公知の知見に従い種々の変更や改良を加えることができる。勿論、本発明の構成を具備する限り、各種変更や改良を加えても本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。
【実施例】
【0096】
次に、簡単な構成からなる本発明の表示媒体の実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。勿論、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
図8は、本実施例で作製した表示媒体の模式断面図である。該表示媒体は、フッ素樹脂からなる矩形の扁平容器24の開口部にスライドガラス22を貼り合わせた構造となっている。扁平容器24とスライドガラス22との間には空隙が生じており、これが表示層26を構成する。すなわち、スライドガラス22が本発明に言う透明の基板に相当し、扁平容器24の底がその対向基板に相当する。
【0097】
扁平容器24とスライドガラス22との間の空隙の寸法は、20mm×20mm×1mmである。表示層26を構成する当該空隙には、酸化チタンコロイド溶液(nano corp.製、NTS−20:粒径20〜30nmの酸化チタン粒子の10質量%水溶液)15mlに単層カーボンナノチューブ(MTR Ltd.製。磁石による精製済み。カーボンナノチューブの平均径約30nm、平均長さ約1μm。触媒はCo粒子で、個数平均粒径20nmのであった。)1mgを分散させたものを封入した。
上記構成の本実施例の表示媒体は、表示面がセルに分画されておらずアナログ的な画像書き込みに適した物となっている。
【0098】
図8に示されるように本実施例の表示媒体を鉛直に保持したまま、全表示面の半分の領域に対し、スライドガラス22側からネオジム磁石(Nd−Fe−B)を近づけることによって、カーボンナノチューブによる黒表示と、分散液による白表示を形成した。そして前記ネオジム磁石を表示媒体から離しても、形成された表示画像は消えることなくそのまま保持された。
【0099】
得られた表示画像の白表示と黒表示との境界部を目視で確認すると、きっちりと一直線状になっていた。
得られた表示画像の白表示と黒表示のコントラスト比を分光濃度計(X−Rite社製)を用いて比較した。白表示を0とすると、黒表示の時は0.7であった。
さらにそのまま1週間放置しておいたが、表示画像に何ら変化は現れず、コントラスト比も維持された。
【0100】
<実施例2>
実施例1と同様、図8に示される構造の表示媒体を作製した。ただし、以下の点について、変更を行っている。
【0101】
(1)扁平容器24として、機械加工が可能なセラミックス製の物を用いた。
(2)扁平容器24とスライドガラス22との間の空隙の寸法を、20mm×20mm×5mmとした。
(3)表示層26を構成する空隙には、ポリビニルアルコール(PVA)粒子(粒径1mm)50mgと単層カーボンナノチューブ(前記同様)1mgとを混合させたものを封入した。
【0102】
実施例1と同様にして、ネオジム磁石により表示媒体全表示面の半分の領域がカーボンナノチューブによる黒表示、残りが分散剤による白表示となるように表示画像を形成した。そして前記ネオジム磁石を表示媒体から離しても、形成された表示画像は消えることなくそのまま保持された。
得られた表示画像の白表示と黒表示との境界部を目視で確認すると、きっちりと一直線状になっていた。この結果から、分散剤が固体でも表示粒子(カーボンナノチューブ)は磁力により泳動し、表示可能であることがわかった。
【0103】
得られた表示画像の白表示と黒表示のコントラスト比を分光濃度計(X−Rite社製)を用いて比較した。白表示を0とすると、黒表示の時は0.9であった。分散剤が固体の粒子であるため、乱反射によって白色度が上がり、コントラスト比が向上したものと考えられる。
さらにそのまま1週間放置しておいたが、表示画像に何ら変化は現れず、コントラスト比も維持された。
【0104】
<実施例3>
実施例1において、表示層26を構成する空隙に、SiO2粒子(粒径:10〜30nm)200mgと単層カーボンナノチューブ(前記同様)1mgとを混合させたものを封入したことを除き、実施例1と同様にして、図8に示される構造の表示媒体を作製した。
【0105】
実施例1と同様にして、ネオジム磁石により表示媒体全表示面の半分の領域がカーボンナノチューブによる黒表示、残りが分散剤による白表示となるように表示画像を形成した。そして前記ネオジム磁石を表示媒体から離しても、形成された表示画像は消えることなくそのまま保持された。
得られた表示画像の白表示と黒表示との境界部を目視で確認すると、きっちりと一直線状になっていた。この結果から、分散剤が表示粒子(カーボンナノチューブ)と同程度の大きさでも、表示粒子は磁力により泳動し、表示可能であることがわかった。
【0106】
得られた表示画像の白表示と黒表示のコントラスト比を分光濃度計(X−Rite社製)を用いて比較した。白表示を0とすると、黒表示の時は0.9であった。分散剤が固体の粒子であるため、乱反射によって白色度が上がり、コントラスト比が向上したものと考えられる。
さらにそのまま1週間放置しておいたが、表示画像に何ら変化は現れず、コントラスト比も維持された。
【0107】
<実施例4>
実施例1において、表示粒子として以下の方法で作製したニッケル(Ni)内包フラーレン(カーボンナノカプセル)1mgを用い、これを実施例1と同じ分散液(酸化チタンコロイド溶液15ml)に分散させたものを表示層26を構成する空隙に封入したことを除き、実施例1と同様にして、図8に示される構造の表示媒体を作製した。
【0108】
(ニッケル内包フラーレンの作製)
Ni内包フラーレンは次の方法で合成した。
炭素ロッド(15mmφ)にドリルで1mmφの穴をあけ、その中にNi粒子(粒径100μm)を詰め、それを電極にして、真空中でアーク放電させて合成した。真空チャンバーの壁面に付いた黒色の煤を集め、単層カーボンナノチューブの時と同様に磁石で精製した。磁石に引き寄せられた煤を走査型透過電子顕微鏡で観察すると、カーボンナノカプセル内に、確かに、金属元素が存在することが確認された。
【0109】
さらに煤を元素分析(SEM―EDX)するとNiが検出され、確かにNi内包カーボンナノカプセルが合成できていることが確認できた。Ni内包カーボンナノカプセルはNi原子がカーボンからできている籠に内包されているので、金属内包フラーレンの一種と考えて差し支えない。
【0110】
実施例1と同様にして、ネオジム磁石により表示媒体全表示面の半分の領域がNi内包フラーレンによる黒表示、残りが分散剤による白表示となるように表示画像を形成した。そして前記ネオジム磁石を表示媒体から離しても、形成された表示画像は消えることなくそのまま保持された。
得られた表示画像の白表示と黒表示との境界部を目視で確認すると、きっちりと一直線状になっていた。この結果から、表示粒子がカーボンナノチューブだけではなく、金属内包フラーレンでも表示可能であることがわかった。
【0111】
得られた表示画像の白表示と黒表示のコントラスト比を分光濃度計(X−Rite社製)を用いて比較した。白表示を0とすると、黒表示の時は0.7であった。
さらにそのまま1週間放置しておいたが、表示画像に何ら変化は現れず、コントラスト比も維持された。
【0112】
<実施例5>
図9は、本実施例で作製した表示媒体の模式断面図である。該表示媒体は、フッ素樹脂からなる矩形の扁平容器34を4個横方向に並置して接続し、その開口部全部を覆うようにスライドガラス32を貼り合わせた構造となっている。各扁平容器34とスライドガラス32との間には空隙が生じており、これが表示層36を構成する。すなわち、スライドガラス32が本発明に言う透明の基板に相当し、扁平容器34の底がその対向基板に相当する。
【0113】
扁平容器34とスライドガラス32との間の各空隙相互の間隔は、約1mmであり、つまり、幅1mmフッ素樹脂で仕切られている構造となっている。各空隙の寸法は、10mm×10mm×1mmである。表示層36を構成する当該空隙には、実施例1同様、酸化チタンコロイド溶液15mlに単層カーボンナノチューブ1mgを分散させたものをそれぞれ封入した。
上記構成の本実施例の表示媒体は、表示面がセルに分画されたデジタル的な画像書き込みに適した物となっている。
【0114】
図9に示されるように本実施例の表示媒体を鉛直に保持したまま、4つのセルのうち、両端の2つに、スライドガラス32側からネオジム磁石(Nd−Fe−B)を近づけることによって、カーボンナノチューブによる黒表示を形成した。そして前記ネオジム磁石を表示媒体から離しても、形成された表示画像は消えることなくそのまま保持された。
【0115】
得られた表示画像の黒表示を目視で確認すると、セル全面が黒色になっていた。
次に、一端、扁平容器34側からネオジム磁石を近づけ、表示されていた黒表示を消去した。目視すると両端のセルは、酸化チタンの白表示に戻った。さらに、中心2つのセルにスライドガラス32側からネオジム磁石を近づけることによって、カーボンナノチューブによる黒表示を形成した。そして前記ネオジム磁石を表示媒体から離しても、形成された表示画像は消えることなくそのまま保持された。
【0116】
上記の結果から、セルに分割した場合の、いわゆるデジタル的な表示が可能であることが確認できた。
さらにそのまま1週間放置しておいたが、表示画像に何ら変化は現れず、コントラスト比も維持された。
【0117】
<比較例1>
実施例2において、表示層26を構成する空隙に、実施例1と同様の酸化チタンコロイド溶液:15mlにフェライト粒子(粒径50μm)50mgを分散させたものを封入したこと以外は、実施例2と同様にして、図8に示される構造の表示媒体を作製した。
【0118】
実施例1と同様にして、ネオジム磁石により表示媒体全表示面の半分の領域がカーボンナノチューブによる黒表示、残りが分散液による白表示となるように表示画像を形成した。そして前記ネオジム磁石を表示媒体から離すと、フェライト粒子の一部が脱落し、形成された表示画像が若干薄くなった。
【0119】
得られた表示画像の白表示と黒表示との境界部を目視で確認すると、フェライト粒子が確認され粗めのギザギザ状になっていた。
得られた表示画像の白表示と黒表示のコントラスト比を分光濃度計(X−Rite社製)を用いて比較した。白表示を0とすると、黒表示の時は0.6であった。
さらにそのまま放置しておいたが、3日後にはフェライト粒子が酸化して、黒色から茶色に変色してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の表示媒体は、以上説明したように、簡易に作製でき、低コストながら、高解像度、高コントラストである点から、手書きの簡易的な利用から磁気ヘッドによる高精細な画像書き込みまで、幅広い応用が期待され、リライタブルマーキング技術として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の一例である表示媒体の模式断面図である。
【図2】図1の表示媒体に画像を書き込む本発明の一例である表示素子を表す図面であり、(a)は模式断面図、(b)は平面図である。
【図3】図2の表示素子によって画像を書き込む、本発明の一例の画像表示方法を説明するための模式断面図であり、(a)は図1に示す表示媒体に対して書き込みを行っている様子を示し、(b)は書き込み操作後の表示媒体の様子を示す。
【図4】図3で説明される画像表示方法によって表示媒体に書き込まれた画像を消去している様子を示す模式断面図であり、(a)は消去動作の開始直後、(b)はその消去動作がやや進んだ状態を表すものである。
【図5】図1の表示媒体に画像を書き込む本発明の他の一例(変形例)である表示素子を表す図面であり、(a)は模式断面図、(b)は平面図である。
【図6】図5の表示素子によって画像を書き込む、本発明の変形例の画像表示方法おいて、画像書き込みに先立ち行われる初期化動作を説明するための模式断面図であり、(a)は初期化動作の開始直後、(b)はその初期化動作がやや進んだ状態を表すものである。
【図7】図5の表示素子によって画像を書き込む、本発明の変形例の画像表示方法おいて、画像書き込み動作を説明するための模式断面図であり、(a)は図5に示す表示媒体に対して書き込みを行っている様子を示し、(b)は書き込み操作後の表示媒体の様子を示す。
【図8】実施例1〜4および比較例1で作製した表示媒体の模式断面図である。
【図9】実施例5で作製した表示媒体の模式断面図である。
【符号の説明】
【0122】
2:表示粒子、 4:分散剤、 6,26,36:表示層、 8:スペーサー、 10:表示媒体、 12:透明基板(光透過性を有する基板)、 14:対向基板(基板)、 16:磁気ヘッド(表示用磁界付与手段)、 18:長尺磁石(消去用磁界付与手段)、 22,32:スライドガラス(光透過性を有する基板)、 24,34:扁平容器(基板)、 C1,C2:セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子を含む炭素構造体からなる表示粒子、および、該表示粒子を分散させる分散剤を内部に有する表示層を備えることを特徴とする表示媒体。
【請求項2】
前記炭素構造体が、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の表示媒体。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項2に記載の表示媒体。
【請求項4】
前記表示粒子が、前記カーボンナノチューブに前記磁性粒子が付着した状態であることを特徴とする請求項2に記載の表示媒体。
【請求項5】
前記磁性粒子の粒径が、50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の表示媒体。
【請求項6】
磁性粒子を触媒として用いて製造したカーボンナノチューブを、用いた前記磁性粒子を分離することなく、前記表示粒子としてそのまま利用して得られたことを特徴とする請求項1に記載の表示媒体。
【請求項7】
少なくとも一方が光透過性を有する一対の基板が対向配置され、該一対の基板の間隙に、前記表示層が配されてなることを特徴とする請求項1に記載の表示媒体。
【請求項8】
前記一対の基板の間隙を保持しつつ、前記表示層を平面上から見て複数に分画するスペーサーが配されてなることを特徴とする請求項7に記載の表示媒体。
【請求項9】
少なくとも一方が光透過性を有する一対の基板が対向配置され、該一対の基板の間隙に、磁性粒子を含む炭素構造体からなる表示粒子、および、該表示粒子を分散させる分散剤を内部に有する表示層が配されてなる表示媒体と、該表示媒体のいずれかの表面に対して画像様に磁界を付与する表示用磁界付与手段と、を備えることを特徴とする表示素子。
【請求項10】
前記表示媒体における前記表示用磁界付与手段が磁界を付与する表面の裏面に対して、全面一様に磁界を付与する消去用磁界付与手段を備えることを特徴とする請求項9に記載の表示素子。
【請求項11】
前記炭素構造体が、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項9に記載の表示素子。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項11に記載の表示素子。
【請求項13】
前記表示粒子が、前記カーボンナノチューブに前記磁性粒子が付着した状態であることを特徴とする請求項11に記載の表示素子。
【請求項14】
前記磁性粒子の粒径が、50μm以下であることを特徴とする請求項9に記載の表示素子。
【請求項15】
磁性粒子を触媒として用いて製造したカーボンナノチューブを、用いた前記磁性粒子を分離することなく、前記表示粒子としてそのまま利用して得られたことを特徴とする請求項9に記載の表示素子。
【請求項16】
前記一対の基板の間隙を保持しつつ、前記表示層を平面上から見て複数に分画するスペーサーが配されてなることを特徴とする請求項9に記載の表示素子。
【請求項17】
前記表示用磁界付与手段が、前記表示媒体の表面を走査する磁気ヘッドであることを特徴とする請求項9に記載の表示素子。
【請求項18】
請求項1に記載の表示媒体に対して表示面側から画像様に磁界を付与することで、磁界を付与した部位のみ、前記表示粒子を表示面側に偏在させて黒色に表示させることを特徴とする画像表示方法。
【請求項19】
画像様に磁界を付与するに先立ち、表示面の裏面側に全面一様に磁界を付与することで、当該裏面側に前記表示粒子を予め偏在させておくことを特徴とする請求項18に記載の画像表示方法。
【請求項20】
請求項1に記載の表示媒体に対して、表示面側に全面一様に磁界を付与することで、当該表示面側に前記表示粒子を予め偏在させておき、その後、表示面の裏面側から画像様に磁界を付与することで、磁界を付与した部位を前記分散剤の色に表示させることを特徴とする画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−121677(P2007−121677A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313727(P2005−313727)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)