説明

表示媒体の製造方法および表示媒体

【課題】 画像品質を向上させることができる表示媒体の製造方法および表示媒体を提供すること。
【解決手段】 各セルCに、電気泳動媒体よりも高粘度であって帯電粒子20が分散された帯電粒子分散体33を充填した後、セルCの各々が上部基板11と下部基板12との間に挟まれている状態で、分散媒34が隣り合うセルCを繋ぐ連通部13aを介してセルCの各々に注入されるので、各セルCにおける帯電粒子20の濃度等が均一となり、画像品質が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像品質を向上させることができる表示媒体の製造方法および表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気泳動現象を利用して表示面に画像の表示する表示媒体が知られている。この種の表示媒体に関し、例えば、次の特許文献1には、電気泳動表示素子が開示されている。この電気泳動表示素子は、少なくとも一方が表示面である一対の基板間を区画部材により複数の区画室に分割し、その区画室の各々に帯電粒子を含む表示液を封入して構成されている。また、区画部材には、隣合う区画室を連通する接続通路が形成されており、各区画室に封入される表示液を接続通路を介して隣り合う区画室に移動可能にすることで、帯電粒子の凝集、沈降および紫外線や熱などにより、分散液の変色等が発生することを低減できるように構成されている。
【特許文献1】特許第3189958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上述した電気泳動表示素子の各区画室に表示液を充填するには、例えば、区画部材を一対の基板で挟んだ状態で接続通路を介して各区画室に表示液を充填する方法が考えられる。
【0004】
しかしながら、表示液が接続通路を通過する際の圧力変化や流路抵抗等、及び表示液中の帯電粒子と分散媒との比重差に起因する沈降等によって、表示液に含まれる帯電粒子が各区画室に均一に分配されず、むらを生じて画像品質が低下するという問題点があった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、むらの発生を抑制することで画像品質を向上させることができる表示媒体の製造方法および表示媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の請求項1記載の表示媒体の製造方法は、表示面を構成する第1基板と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板及び第2基板の間に形成される液室と、前記液室内を複数のセルに分割し前記第1基板及び第2基板の厚さ方向に立設される隔壁状部材と、前記隔壁状部材で形成される前記セルの各々に充填される帯電粒子が有機溶媒に分散された電気泳動媒体とを備え、前記第1基板及び第2基板の間に発生する電界の方向に応じて前記帯電粒子を移動させて前記表示面に画像の表示を行うものであって、前記隔壁状部材が前記第1基板と前記第2基板とに挟まれる前に、前記帯電粒子が有機溶媒に分散された帯電粒子分散体を前記セルの各々に充填する充填工程と、前記充填工程によって前記帯電粒子分散体が充填されている前記セルの各々に、前記帯電粒子分散体の有機溶媒を溶解または分散する分散媒を注入する注入工程とを備えている。
【0007】
請求項2記載の表示媒体の製造方法は、請求項1記載の表示媒体の製造方法において、前記帯電粒子分散体は、前記電気泳動媒体よりも高粘度である。
【0008】
請求項3記載の表示媒体の製造方法は、請求項1又は2記載の表示媒体の製造方法において、前記注入工程の後で前記帯電粒子分散体と前記分散媒とを揺動する揺動工程を備えている。
【0009】
請求項4記載の表示媒体の製造方法は、請求項1から3のいずれかに記載の表示媒体の製造方法において、前記注入工程の後で又は前記揺動工程の最中に、前記セルの内部で前記帯電粒子を移動させるために前記第1基板及び第2基板の間に電圧を印加する電圧印加工程を備えている。
【0010】
請求項5記載の表示媒体の製造方法は、請求項1から4のいずれかに記載の表示媒体の製造方法において、前記セルの各々は、ほぼ同容量に構成されており、
前記充填工程は、前記注入工程によって前記分散媒が注入される注入空間を前記セルの各々に確保しつつ、前記セルの各々に前記帯電粒子分散体をほぼ同容量ずつ充填する。
【0011】
請求項6記載の表示媒体の製造方法は、請求項5記載の表示媒体の製造方法において、前記充填工程は、前記セルの容量とほぼ同量の前記帯電粒子分散体で前記セルの各々を充満させる充満工程と、その充満工程によって前記帯電粒子分散体で充満されている前記セルの各々に、前記注入空間を形成する空間形成工程とを備えている。
【0012】
請求項7記載の表示媒体の製造方法は、請求項6記載の表示媒体の製造方法において、前記空間形成工程は、前記充満工程によって前記セルの各々に充満された前記帯電粒子分散体をほぼ同量ずつ掻き取る掻取り工程である。
【0013】
請求項8記載の表示媒体の製造方法は、請求項6記載の表示媒体の製造方法において、前記空間形成行程は、前記充満工程によって前記セルの各々に充満された前記帯電粒子分散体を乾燥させる乾燥工程である。
【0014】
請求項9記載の表示媒体の製造方法は、請求項1から5のいずれかに記載の表示媒体の製造方法において、前記隔壁状部材は、前記第1基板または前記第2基盤とほぼ平行な面で接合する第1構造体と、第2構造体とを備え、前記セルの各々は、前記第1構造体に形成されるほぼ同容量を有する複数の第1セルと、前記複数の第1セルの各々に対応して前記第2構造体に形成されるほぼ同容量を有する複数の第2セルとによって形成されており、前記充填工程は、前記第1セルの容量とほぼ同量の前記帯電粒子分散体で前記第1セルの各々を充満させる充満工程と、前記充満工程によって前記第1セルの各々に前記帯電粒子分散体が充満されている状態で、前記第1構造体と前記第2構造体とを接合する接合工程とを備えている。
【0015】
請求項10記載の表示媒体の製造方法は、請求項1から9のいずれかに記載の表示媒体の製造方法において、前記セルの各々が前記第1基板と第2基板との間に挟まれている状態で隣り合う前記セルを連結する空間であって、前記分散媒の通過を許容し、かつ前記帯電粒子の通過を抑制する大きさに構成される連通部を備え、前記分散媒は、前記帯電粒子分散体よりも低粘度であり、前記注入工程は、前記セルの各々が前記第1基板と第2基板との間に挟まれている状態で、前記連通部を介して前記セルの各々に前記分散媒を注入する。
【0016】
請求項11記載の表示媒体は、表示面を構成する第1基板と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板及び第2基板の間に形成される液室と、前記液室内を複数のセルに分割し前記第1基板及び第2基板の厚さ方向に立設される隔壁状部材と、前記隔壁状部材で形成される前記セルの各々に充填される帯電粒子が分散された電気泳動媒体とを備え、前記第1基板及び第2基板の間に発生する電界の方向に応じて前記帯電粒子を移動させて前記表示面に画像の表示を行う表示媒体において、前記分散媒の通過を許容し、且つ前記帯電粒子の通過を抑制する大きさに形成され、かつ隣り合う前記セルを連結する空間である連通部を備えている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の表示媒体の製造方法によれば、隔壁状部材が第1基板と第2基板とに挟まれる前に、各セルに帯電粒子が分散された帯電粒子分散体を充填するので、各セルに帯電粒子分散体を均一に充填することができ、さらに充填工程において分散媒を注入し、帯電粒子分散体と分散媒とが混合することにより、所定の特性を均一に備えた電気泳動媒体を各セル内に満たすことができる。その結果、むらの発生が抑制されるので画像品質を向上させることができるという効果がある。
【0018】
請求項2記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項1記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、帯電粒子分散体が電気泳動媒体よりも高粘度であるので、帯電粒子分散体よりも低粘度である電気泳動媒体を直接にセルの各々に充填する場合に比べ、各セルから帯電粒子分散体が飛散する飛散量が抑制される。よって、各セルに帯電粒子分散体を効率的、かつ均一に充填することができる。よって、製造効率と画像品質を向上させることができるという効果がある。
【0019】
請求項3記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項1または2記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、帯電粒子分散体と分散媒とは、揺動工程によって揺動されるので、帯電粒子分散体に含まれる有機溶媒を分散媒に効率よく溶解または分散することができる。よって、よりむらの発生を抑制して画像品質を向上させることができるという効果がある。
【0020】
請求項4記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項1から3のいずれかに記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、注入工程の後で又は揺動工程の最中に、第1基板及び第2基板の間に電圧が印加されるので、セルの内部で帯電粒子が移動し、帯電粒子分散体に含まれる有機溶媒を分散倍に一層効率よく溶解または分散することができる。よって、よりむらの発生を抑制して画像品質を向上させることができるという効果がある。
【0021】
請求項5記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項1から4のいずれかに記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、セルの各々には、分散媒が注入される注入空間が確保されつつ、帯電粒子分散体がほぼ同容量ずつ充填されるので、セルの各々には帯電粒子がほぼ均一で、かつ粘度や表面張力や抵抗率等の特性がほぼ均一である電気泳動媒体が生成される。よって、よりむらの発生を抑制して画像品質を向上させることができるという効果がある。
【0022】
請求項6記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項5記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、セルの各々にほぼ同容量に形成される注入空間は、セルの各々にセルの容量とほぼ同量の帯電粒子分散体を充満させた後で形成される。即ち、セルの各々にセルの容量よりも少ない帯電粒子分散体をほぼ同容量ずつ充填することで、セルの各々にほぼ同容量の注入空間を形成することも可能である。しかし、セルの各々は密集して配置されているので、かかる方法によっては、セルの各々にほぼ同容量の注入空間を形成するのは困難である。一方、セルの各々にセルの容量とほぼ同量の帯電粒子分散体を充填し、その後でセルの各々にほぼ同容量の注入空間を形成する方が、容易に、且つ、高精度に、セルの各々にほぼ同容量の注入空間を形成することができるので、よりむらの発生を抑制して画像品質を向上させることができるという効果がある。
【0023】
請求項7記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項6記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、注入空間は充満工程によってセルの各々に充満された帯電粒子分散体をほぼ同量ずつ掻き取ることで形成されるので、簡単な機械的な操作で、容易に、且つ、高精度に、セルの各々にほぼ同容量の注入空間を形成することができ、よりむらの発生を抑制して画像品質を向上させることができるという効果がある。
【0024】
請求項8記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項6記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、注入空間は充満工程によってセルの各々に充満された帯電粒子分散体を乾燥することで形成されるので、容易に、且つ、高精度に、セルの各々にほぼ同容量の注入空間を形成することができ、よりむらの発生を抑制して画像品質を向上させることができるという効果がある。
【0025】
請求項9記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項1から5のいずれかに記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、注入空間を形成するための特別な工程は不要であるので、容易に、且つ、高精度に、セルの各々にほぼ同容量の注入空間を形成することができる。よって、むらの発生を抑制して画像品質を向上させることができると共に、製造効率を向上させることができるという効果がある。
【0026】
請求項10記載の表示媒体の製造方法によれば、請求項1から9のいずれかに記載の表示媒体の製造方法の奏する効果に加え、分散媒は、帯電粒子分散体よりも低粘度であり、セルの各々が第1基板と第2基板との間に挟まれている状態で、隣り合うセルを連結する空間である連通部を介してセルの各々に注入されるので、分散媒を短時間且つ低圧力でセルの各々に注入することができる。よって、セルの各々には帯電粒子がほぼ均一になり、よりむらの発生を抑制して画像品質を向上させることができるという効果がある。
【0027】
また、連通部は、分散媒の通過を許容し、且つ帯電粒子の通過を抑制する大きさに構成されているので、長時間にわたり表示媒体が水平面に対して傾けられた場合に、連通部を介して帯電粒子がセル間を移動し、各セルに配置されている帯電粒子の濃度が不均一になるのを防止するため、よりむらの発生を抑制して画像品質を向上させることができるという効果がある。
【0028】
請求項11記載の表示媒体によれば、隣り合うセルを連結する空間である連通部は、電気泳動媒体の通過を許容し、且つ帯電粒子の通過を抑制する大きさに構成されているので、長時間にわたり表示媒体が水平面に対して傾けられた場合に、連通部を介して帯電粒子がセル間を移動し、各セル内に配置されている帯電粒子の濃度が不均一になるのを防止するため、よりむらの発生を抑制して画像品質を向上させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。まず、図1乃至図3を参照して、本発明の表示媒体1の構成について説明する。図1(a)は表示媒体1の上面図であり、図1(b)は図1(a)に示すB−B断面線における表示媒体1の断面図である。図2は表示媒体1の分解斜視図である。図3は、図2に示す隔壁状部材13のA部分を拡大して示す拡大斜視図である。
【0030】
図1に示すように、表示媒体1は、主に、表示面10を有する上部基板11と、その上部基板11に対して所定間隔を空けて対向配置される下部基板12と、その上部基板11と下部基板12との間に配設されるフレーム部材14と、そのフレーム部材14に周囲を囲まれて配置される隔壁状部材13と、その隔壁状部材13によって形成されるセルCの各々内に充填される電気泳動媒体31とを備えている。
【0031】
上部基板11は、板状の第1基板11aと、その第1基板11aの下部基板12側の面に形成されるX電極11bと、そのX電極11bを覆う保護膜11cと、第1基板11aの角部において第1基板11aと保護膜11cとを貫通して形成される注入口11dおよび排出口11eとを備えている。なお、注入口11dおよび排出口11eは、封止部材15によって封止されている。下部基板12は、板状の第2基板12aと、その第2基板12aの上部基板11側の面に形成されるY電極12bと、そのY電極12bを覆う保護膜12cとを備えている。
【0032】
第1基板11a及び第2基板12aは、第1基板11aと第2基板12aとが並ぶ方向(以下、積層方向という)に、いずれも約50μmの厚みで構成され、ガラス、合成樹脂、天然樹脂などで構成されている。
【0033】
X電極11b及びY電極12bは、互いに直交するように、複数本の略平行なライン状に形成されている(図2参照)。X電極11b及びY電極12bを構成する材料としては、導電性を有するものであれば特にその材料には限定されず、金属、金属酸化物、導電性高分子等を用いることが可能であるが、表示面となる基板に形成されるX電極12bは光透過性が高いITO(インジウム・スズ酸化物)やポリチオフェン等で形成させるのが望ましい。また、X電極11b及びY電極12bは、周知の無電界メッキ法、スパッタ法、印刷法、エッチング法、インクジェット法などの方法によって、第1基板11a及び第2基板12a上に形成される。
【0034】
保護膜11cと保護膜12cは、耐薬品性などに優れているという点から、例えば、ポリカーボネートや、ポリアミドや、ポリメタクリル酸メチルや、ポリエチレンテレフタレートや、フッ素化合物、及びこれらを含有するコーティング剤を基板上に塗布することで構成されている。保護膜11cおよび保護膜12cによってX電極11bおよびY電極12bを覆うことで、X電極11bおよびY電極12bと電気泳動媒体31とが直接に接触するのが防止され、X電極11bおよびY電極12bが電気泳動媒体31と接触することに伴う電極の劣化を防止することができる。
【0035】
フレーム部材14は、図2に示すように、略長方形の枠状に形成され、その中央部に開口部14aが開口されており、積層方向に約50μmの厚みで構成されている。このフレーム部材14の開口部14aの両側が上部基板11と下部基板12とによって塞がれることで、密封空間としての液室Rが形成される。
【0036】
隔壁状部材13は、液室Rを複数のセルCに分割するものであり、フレーム部材14の開口部14a内に配置されており、積層方向に約50μmの厚みで構成されている。隔壁状部材13によって形成されるセルCの各々は、ほぼ同容量に構成されており、そのセルC内には電気泳動媒体31が充填されている。
【0037】
隔壁状部材13は、印刷法、フォトリソグラフィー法、成型法、切削法等の方法によって、第1基板11a及び第2基板12a上に形成される。また、このような方法で予め形成した隔壁状部材13を、接着法、融着法、圧着法等の方法によって、第1基板11a及び第2基板12a上に形成しても良い。
【0038】
また、図3に示すように、隔壁状部材13の上部基板11側の表面には、セルCの各々を繋ぐ連通部13aが凹設されている。連通部13aは、後述する注入工程において注入口11dから注入される分散媒34(図6(h)参照)を各セルC内に注入させるための通路を形成するものである。また、連通部13aは、分散媒34(電気泳動媒体31)の通過を許容し、且つ、電気泳動媒体31に分散されている帯電粒子20の通過を抑制する大きさに構成されている。具体的には、連通部13aの流路断面が帯電粒子20の大きさの約1倍から約5倍の大きさになるように構成されている。
【0039】
電気泳動媒体31は、電気抵抗が高い(絶縁性が高い)溶媒であって、後述する帯電粒子20が分散された帯電粒子分散体33(図4(b)参照)に、分散媒34(図6(h)参照)を溶解させて構成されている。
【0040】
帯電粒子20は、正に帯電されている白色の白色粒子21aと、負に帯電されている黒色の黒色粒子21bとから構成されている。白色粒子21aや黒色粒子21bとしては、白色の酸化チタンや黒色のカーボンブラックなど、あるいは、フタロシアニン系顔料などの有機顔料をポリマ樹脂で被覆したものや、アゾ染料又はキノリン系染料などの公知の染料で着色された微細なポリマビーズなどが使用できる。また、白色粒子20a及び黒色粒子20bの平均粒子径は約1μmである。
【0041】
上述したように構成される表示媒体1によれば、所定のX電極11b及び所定のY電極12bに電圧を印加すると、そのX電極11b及びY電極12bの交差する場所のセルCに電界が発生し、その電界によって白色粒子20a及び黒色粒子20bが上部基板11側又は下部基板12側に移動する。そして、白、黒のコントラストにより表示面10に画像を表示することができる。
【0042】
より具体的には、制御ユニット(非図示)により画像データに応じた電界を印加することによって、X電極11bがY電極12bに対して正となるように電界が形成された表示領域(画素)においては、負に帯電されている黒色帯電粒子20bは、上部基板11側(X電極11b側)へ泳動する。一方で、正に帯電されている白色帯電粒子20aは、下部基板12側(Y電極12b側)へ泳動する。この動作によって、上部基板11側へ泳動された黒色帯電粒子20bに起因する黒色の画像を表示させることができる。
【0043】
また、X電極11bがY電極12bに対して負となるように電界が形成された表示領域においては、負に帯電されている黒色帯電粒子20bは、下部基板12側(Y電極12b側)へ泳動し、一方で、正に帯電されている白色帯電粒子20aは、上部基板11側(X電極11b側)へ泳動する。この動作によって、上部基板11側へ泳動された白色帯電粒子20aに起因する白色の画像を表示させることができる。
【0044】
このようにして表示領域毎に白色や黒色の画像を表示させることによって、表示媒体1として任意の画像を表示することができる。
【0045】
次に、図4乃至図7を参照して、上述した表示媒体1の製造方法について説明する。図4乃至図7は、表示媒体1の製造方法を説明するための図であり、製造工程を順番に示している。なお、本実施例では、上部基板11および下部基板12は、予め製造され、用意されているものとして説明をする。
【0046】
まず、図4(a)に示すように、下部基板12の上に隔壁状部材13を接着剤等によって固着する。次に、図4(b)に示すように、充填装置50であるディスペンサを用いて帯電粒子分散体33を隔壁状部材13によって形成されるセルCの各々に配置し、図4(c)に示すように、全てのセルCに帯電粒子分散体33を充填する。なお、この際、セルCの各々には、セルCの各々の容量よりも多量の帯電粒子分散体33が充填される。
【0047】
ここで、帯電粒子分散体33は、帯電粒子20を分散した有機溶媒で構成されている。
【0048】
具体的には、帯電粒子分散体33は、パールリーム18(日本油脂(株)製)を40重量%、オレイルアルコール(関東化学(株)製)を10重量%、白色粒子20aを30重量%、及び、黒色粒子20bを20重量%の割合で構成することで電気泳動媒体31よりも高粘度なペースト状を示した。
【0049】
なお、有機溶媒としては、絶縁性が高い芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、シクロヘキサンなどの直鎖又は環状パラフィン系炭化水素溶媒、イソパラフィン系炭化水素溶媒、ケロシンなど)、ハロゲン化炭化水素溶媒(例えば、クロロホルム、トリクロロエチレン、ジクロロメタン、トリクロロトリフルオロエチレン、臭化エチルなど)、シリコーンオイルのようなオイル状のポリシロキサン、高純度石油等を用いてもよく、また、有機溶媒を除去する工程を有する場合には、絶縁性が低いアルコール(例えば、ブタノール、プロパノールなど)やグリコールエーテル(例えば、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなど)等を用いても良い。もちろん、これらの各溶媒を単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0050】
次に、図5(d)に示すように、スキージ51によって隔壁状部材13の表面を均し、セルCの各々の容量よりも多量に充填された余剰の帯電粒子分散体33を除去する(充満工程)。この充満工程により、ほぼ同容量で構成されているセルCの各々に、簡単にほぼ同容量の帯電粒子分散体33を充満させることができる。
【0051】
次に、図5(e)に示すように、充満工程によって帯電粒子分散体33が充満されているセルC内にスキージ51を挿入し、その状態でスキージ51を移動させることで、セルCの各々から帯電粒子分散体33をほぼ同量ずつ掻き取り(掻取り工程(空間形成工程))、図5(f)に示すように、セルCの各々にほぼ同容量の空間Sを形成する。
【0052】
次に、図6(g)に示すように、図5(f)に示す状態の下部基板12と隔壁状部材13とに、フレーム部材14と、上部基板11とを固着する。例えば、まずは、フレーム部材14と下部基板12とを固着し、次に、上部基板11をフレーム部材14と隔壁状部材13とに固着する。なお、上部基板11とフレーム部材14とを予め固着させておくようにしても良い。
【0053】
次に、図6(h)に示すように、注入装置52aによって分散媒34を注入口11dから注入すると共に、排出口11eから排出装置52bによって余分な分散媒34を排出する。即ち、注入装置52aから注入される分散媒34は、注入口11d、連通部13a(図3参照)を介してセルCの各々に形成されている空間Sに注入される(注入工程)。即ち、空間Sは分散媒34を注入する注入空間Sとして形成されている。
【0054】
分散媒34は、電気抵抗が高い(絶縁性が高い)溶媒であり、帯電粒子分散体33に含まれる有機溶媒を溶解もしくは分散することが可能である。具体的には、本実施例では、パールリーム4(日本油脂(株)製)を使用した。
【0055】
なお、分散媒34としては、その他、芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、シクロヘキサンなどの直鎖又は環状パラフィン系炭化水素溶媒、イソパラフィン系炭化水素溶媒、ケロシンなど)、ハロゲン化炭化水素溶媒(例えば、クロロホルム、トリクロロエチレン、ジクロロメタン、トリクロロトリフルオロエチレン、臭化エチルなど)、シリコーンオイルのようなオイル状のポリシロキサン、高純度石油等を用いてもよく、また、これらの各溶媒を単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0056】
また、帯電粒子20の分散性を高めるために、ノニオン性、アニオン性、カチオン性及び両性の界面活性剤や、ポリビニルアルコールなどの樹脂類を添加しても良い。更に、電解質、荷電制御剤、腐食防止剤、摩擦調整剤、紫外線吸収剤なども添加して良い。
【0057】
このように、分散媒34は、セルCの各々が上部基板11と下部基板12との間に挟まれている状態で、隣り合うセルCを繋ぐ連通部13aを介してセルCの各々に注入され、粒子等の注入の妨げになる固形成分を含まないので、分散媒34を短時間且つ低圧力でセルCの各々に注入することができる。また、各セルCを連通する連通部13aは、分散媒34の通過を許容し、且つ、帯電粒子20の通過を抑制する大きさに構成されているので、分散媒34を注入した影響で帯電粒子20がセル間を移動し、各セルCに分配されている帯電粒子20の割合が変化し、画像品質が低下するのを抑制することができる。
【0058】
次に、図6(i)に示すように、注入口11d及び排出口11eを封止部材15で封止し、注入工程によって注入された分散媒34が外部に漏れるのを防止する。
【0059】
次に、図7に示すように、超音波揺動装置53によって図6(i)に示す状態の表示媒体1を揺動させる(揺動工程)。この揺動工程により、帯電粒子分散体33と分散媒34とが揺動され、分散媒34と帯電粒子分散体33とが効率良く混同して所定の特性を持った電気泳動媒体31になる。
【0060】
また、この揺動工程の最中に、X電極11b及びY電極12bに正負が互いに交代するように電圧を交互に印加する(電圧印加工程)。この電圧印可工程により、セルCの内部で白色粒子20aと、黒色粒子20bとが、上部基板11側と下部基板12側との間を移動するので、分散媒34と帯電粒子分散体33とが、より効率良く混同して所定の特性を持った電気泳動媒体31になる。
【0061】
なお、この電圧印加工程では、表示媒体1の使用時よりも高電圧を印可することも可能である。かかる場合には、白色粒子20aと、黒色粒子20bとの移動が一層活発化し、分散媒34が帯電粒子分散体33に溶解するのを一層促進させることができる。
【0062】
以上説明したように、表示媒体1の製造方法によれば、セルCの各々には、隔壁状部材13が上部基板11と下部基板12とに挟まれる前に、帯電粒子20が分散された帯電粒子分散体33を均一に充填できる。
【0063】
また、各セルCを連通する連通部13aは、分散媒34の通過を許容し、且つ帯電粒子20の通過を抑制する大きさに構成されているので、長時間にわたり表示媒体1を水平面に対して傾けたとしても、連通部13aを介して帯電粒子20がセルC間を移動し、各セルC内に配置されている帯電粒子の濃度が不均一になるのを防止するため、よりむらの発生を抑制して画像品質を向上させることができる。
【0064】
このようにして作製した表示媒体1Cを、80Vの電圧で駆動したところ、むらがなく品質が向上した良好な画像が得られた。さらに、表示媒体が水平面に対して傾けられた状態で1ヶ月間放置した後に再度駆動したところ、むらがない状態を維持しており、品質が向上した良好な画像が得られた。
【0065】
次に、図8を参照して、上述した表示媒体1の製造方法を第1実施例として、表示媒体1の製造方法に関する第2実施例について説明する。図8は、第2実施例の製造方法を説明するための図である。
【0066】
第1実施例と第2実施例とでは、セルCの各々に注入空間Sを形成する工程が異なる。即ち、第1実施例では、図5(e)に示すように、スキージ51によって帯電粒子分散体33を掻き取ることで注入空間Sを形成しているのに対し、第2実施例では、帯電粒子分散体33を乾燥させることで注入空間Sを形成するものである。
【0067】
第2実施例の製造方法は、第1実施例の図4および図5(d)を参照して説明した製造工程と同じ製造工程と経て、セルCの各々を帯電粒子分散体33で充満させる。そして、図8(a)に示すように、セルCの各々に帯電粒子分散体33が充満されている状態で乾燥装置54内に収容し、帯電粒子分散体33を乾燥させる。
【0068】
すると、図8(b)に示すように、帯電粒子分散体33に含まれる揮発性成分が揮発し、セルCの各々にほぼ同容量の注入空間Sが形成される。即ち、第1実施例における図5(f)に示す状態とほぼ同様な状態となり、その後は、第1実施例で説明したのと同様な製造工程を経て、表示媒体1を製造することができる。
【0069】
このように、第2実施例の製造方法によれば、注入空間SはセルCの各々に充満された帯電粒子分散体33を乾燥装置54によって乾燥させることで形成されるので、容易に、且つ、高精度に、セルCの各々にほぼ同容量の注入空間Sを形成することができる。よって、セルCの各々には帯電粒子20がほぼ均一に分配された状態の電気泳動媒体31が生成され、画像品質を向上させることができる。
【0070】
このようにして作製した表示媒体1Cを、80Vの電圧で駆動したところ、むらがなく品質が向上した良好な画像が得られた。さらに、表示媒体が水平面に対して傾けられた状態で1ヶ月間放置した後に再度駆動したところ、むらがない状態を維持しており、品質が向上した良好な画像が得られた。
【0071】
次に、図9及び図10を参照して、本発明の表示媒体の製造方法に関する第3実施例について説明する。図9は、第3実施例の製造方法を説明するための図であり、図10(a)は、図9(b)に示す矢印X方向視における第1隔壁状部材73aの拡大図である。図10(b)は、図9(b)に示す矢印Y方向視における第2隔壁状部材73bの拡大図である。なお、第3実施例の製造方法によって製造される表示媒体1Aについては、上述した表示媒体1と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0072】
まず、第3実施例の製造方法によって製造される表示媒体1Aの構成について説明する。図9(b)に示すように、表示媒体1Aは、上述した表示媒体1における隔壁状部材13に代えて、積層方向において互いに接合される第1隔壁状部材73aと、第2隔壁状部材73bとを備えている点で表示媒体1と異なる。
【0073】
第1隔壁状部材73aは、上部基板11に固着され、液室Rのうち上部基板11側のほぼ半分の領域を複数のセルC1に分割するものであり、積層方向に約25μmの厚さで構成されている。また、図10(a)に示すように、第2隔壁状部材73bと接合する表面は、平らな平面に形成されている。
【0074】
第2隔壁状部材73bは、下部基板12に固着され、液室Rのうち下部基板12側のほぼ半分の領域を複数のセルC2に分割するものであり、積層方向に約25μmの厚さで構成されている。また、図10(b)に示すように、第1隔壁状部材73aと接合する表面には、隣り合うセルとの連通部73dを設けるための凸部73cが設置されている。凸部73cは帯電粒子の大きさに応じた高さで設けられ、本実施例においては約3μmの高さで設置されている。
【0075】
次に、表示媒体1Aの製造方法について説明する。この第3実施例の製造方法は、注入空間Sを形成する工程が第1実施例の製造方法と異なる。即ち、第1実施例では、図5(e)に示すように、スキージ51によって帯電粒子分散体33を掻き取ることで注入空間Sを形成しているのに対し、第3実施例の製造方法では、帯電粒子分散体33が充満されている第2隔壁状部材73bに第1隔壁状部材73aを接合、固着させることで注入空間Sを形成し、かつ凸部73cにより隣り合うセルとの連通部73dを設けるものである。
【0076】
もちろん、より大きな注入空間Sが必要な場合は、スキージ51によって帯電粒子分散体33を掻き取る工程を加えても良い。
【0077】
第3実施例の製造方法は、第1実施例の図4および図5(d)を参照して説明した製造工程と同じ製造工程と経て、図9(a)に示すように、第2隔壁状部材73bによって形成されるセルC2の各々を帯電粒子分散体33で充満させる。
【0078】
次に、図9(b)に示すように、下部基板12と第2隔壁状部材73bとに対して、第1隔壁状部材73aと、フレーム部材14と、上部基板11とを接触させる。
【0079】
すると、図9(c)に示すような状態となり、第1隔壁状部材73aによって形成される各セルC1の空間部分によって、注入空間Sが形成される。なお、その後は、第1実施例で説明したのと同様な製造工程を経て、表示媒体1を製造することができる。
【0080】
また、本実施例では第2隔壁状部材73bとして凸部73cを有する部材を用いたが、図3に示す凹部である連通部13aを有する部材を用いても良い。
【0081】
このように、第3実施例の製造方法によれば、容易に、且つ、高精度に、セルCの各々にほぼ同容量の注入空間Sを形成することができる。よって、セルCの各々には帯電粒子20がほぼ均一に分配された状態の電気泳動媒体31が生成され、画像品質を向上させることができる。
【0082】
このようにして作製した表示媒体1Cを、80Vの電圧で駆動したところ、むらがなく品質が向上した良好な画像が得られた。さらに、表示媒体が水平面に対して傾けられた状態で1ヶ月間放置した後に再度駆動したところ、むらがない状態を維持しており、品質が向上した良好な画像が得られた。
【0083】
次に、図11を参照して、本発明の表示媒体の製造方法に関する第4実施例について説明する。図11は、第4実施例の製造方法を説明するための図である。なお、この第4実施例の製造方法によって製造される表示媒体1Cについては、第1実施例の製造方法によって製造される表示媒体1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0084】
まず、第4実施例の製造方法によって製造される表示媒体1Cの構成について説明する。表示媒体1Cは、表示媒体1に備えられている隔壁状部材13に代えて、連通部13aが設けられていない第3隔壁状部材84を備えた点と、第3隔壁状部材84が上部基板11に接していない点で表示媒体1と異なる。なお、第3隔壁状部材84は、約45μmの厚さで構成されている。
【0085】
第4実施例としての表示媒体1Cの製造方法について説明する。第4実施例の製造方法は、第1実施例の図4および図5(e)を参照して説明した製造工程と同じ製造工程と経て、図11(a)に示すように、セルCの各々を帯電粒子分散体33で充満させる。
【0086】
次に、図11(b)に示すように、下部基板12上に紫外線硬化性エポキシ接着剤からなるフレーム部材14を設けた後に、上部基板11と下部基板12との距離が約50μmになるように設定した押さえ冶具(図示せず)を用いて、フレーム部材上に上部基板11を設置し、フレーム部材に紫外線を照射して紫外線硬化性エポキシ接着剤を硬化させる。
【0087】
すると、図11(c)に示すような状態となる。この隙間83aは、上述した連通部13a(図3参照)として機能するものであり、分散液34は、約5μmの隙間83cを介して注入空間S内に注入されることになる。
【0088】
このようにして作製した表示媒体1Cを、80Vの電圧で駆動したところ、むらがなく品質が向上した良好な画像が得られた。さらに、表示媒体が水平面に対して傾けられた状態で1ヶ月間放置した後に再度駆動したところ、むらがない状態を維持しており、品質が向上した良好な画像が得られた。
【0089】
次に、図12を参照して、本発明の表示媒体の製造方法に関する第5実施例について説明する。図12は、第5実施例の製造方法を説明するための図である。なお、この第5実施例の製造方法によって製造される表示媒体1Dについては、第1実施例の製造方法によって製造される表示媒体1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0090】
まず、第5実施例の製造方法によって製造される表示媒体1Dの構成について説明する。表示媒体1Dは、表示媒体1に備えられているフレーム部材14に代えて、第1フレーム部材85を備えている点と、隔壁状部材13に代えて、連通部13aが設けられていない隔壁状部材13bを備えている点とが異なる。
【0091】
第1フレーム部材85は、弾力性を有する厚みが約100μmの多孔質エポキシシートで構成されており、図12(a)に示すように、分散媒34が注入空間Sに注入される前は、隔壁状部材13bよりも積層方向における厚みが高くなるように構成されている。
【0092】
次に、第5実施例としての表示媒体1Dの製造方法について説明する。第5実施例の製造方法は、第1実施例の図4から図5(f)を参照して説明した製造工程と同様な工程を経て、セルCの各々を帯電粒子分散体33で充満させた後に、図12(a)に示すように、下部基板12に設置した第1フレーム部材85の上に、押圧装置(図示せず)を用いて上部基板11を設置する。
【0093】
この時、第1フレーム部材85は弾性変形しているために積層方向における厚みが約60μmであり、隔壁状部材13の積層方向における厚みが約50μmであるため、隔壁状部材13と、上部基板11との間には約10μmの隙間85aが形成される。
【0094】
次に、図12(b)に示すように、注入装置52aによって分散媒34を注入口11dから注入すると共に、排出口11eから排出装置52bによって余分な分散媒34を排出する。即ち、注入装置52aから注入される分散媒34は、注入口11d、隙間85aを介してセルCの各々に形成されている注入空間Sに注入される。
【0095】
次に、図12(c)に示すように、上部基板11と下部基板12とに対し、押圧装置を用いて矢印P方向にさらに大きな圧力を加え、上部基板11と隔壁状部材13とが密着するように(隙間85aが封鎖されるように)第1フレーム部材85を弾性変形させる。
【0096】
そして、最後に、図12(d)に示すように、第1フレーム部材85の反発力により上基板11と下部基板12とが引き離されるのを防止すべく、第1フレーム部材85の周囲において上基板11と下部基板12とを接着剤53によって固定した後、第1実施例で説明したのと同様な揺動製造工程を経て、分散媒34と帯電粒子分散体33とを混合することで、電気泳動媒体31が生成され、表示媒体1Dが製造される。
【0097】
このように、第5実施例の製造方法によれば、各セルCを連通する隙間85aを封鎖した状態で表示媒体1Dを構成することができるので、各セルCにおいてほぼ均一に分散されている帯電粒子20が隣合うセルに移動することで、画像品質が低下するのを防止することができる。
【0098】
このようにして作製した表示媒体1Cを、80Vの電圧で駆動したところ、むらがなく品質が向上した良好な画像が得られた。さらに、表示媒体が水平面に対して傾けられた状態で1ヶ月間放置した後に再度駆動したところ、むらがない状態を維持しており、品質が向上した良好な画像が得られた。
【0099】
次に、図13を参照して、本発明の表示媒体の製造方法に関する第6実施例について説明する。図13は、第6実施例の製造方法を説明するための図である。第1実施例と第6実施例とでは、隔壁状部材13のセルCに帯電粒子分散体33を充填する方法が異なる。
【0100】
第6実施例では、まず、図13(a)に示すように、下部基板12上にフレーム部材14を設置した状態で、フレーム部材14の開口部14a内に帯電粒子分散媒33を充填し、隔壁状部材13を配置すれば、図13(b)に示すように、先にフレーム部材14の開口部14a内に充填されている帯電粒子分散体33が隔壁状部材13によって形成されるセルCの各々に充填される。
【0101】
以降は、第1実施例で説明したのと同様な工程を経て、表示媒体1を製造することができる。この第6実施例の製造方法によれば、第1実施例で説明したように充填装置50によってセルCの各々に帯電粒子分散体33を充填する必要がなく、所定の量の帯電粒子分散体33をセルCの各々よりも大きい開口面を有するフレーム部材14の開口部14a内に充填すれば良いので、製造効率を向上させることができる。
【0102】
このようにして作製した表示媒体1Cを、80Vの電圧で駆動したところ、むらがなく品質が向上した良好な画像が得られた。さらに、表示媒体が水平面に対して傾けられた状態で1ヶ月間放置した後に再度駆動したところ、むらがない状態を維持しており、品質が向上した良好な画像が得られた。
【0103】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0104】
例えば、上記実施例では、分散媒34を通過させる通路としての連通部13aを隔壁状部材13に形成する場合や、分散媒34を通過させる通路としての隙間83aを上部基板11と第3隔壁状部材84の間に形成する場合について説明したが、分散媒34を通過させる通路としては、上述した実施例の形態に限定されるものではない。
【0105】
ここで、分散媒34を通過させる通路としての変形例を図14を参照して説明する。図14は下部基板12の拡大斜視図であり、図中矢印F方向が上部基板11側とし、矢印E方向が外部側とする。
【0106】
図14に示すように、分散媒34を通過させる通路としては、保護膜12c上に格子状に形成される溝113によって構成しても良い。
【0107】
また、各セルCにほぼ同容量の注入空間Sが確保される分量で、各セルに帯電粒子分散体33を充填するようにしても良い。
【0108】
また、帯電粒子分散体33を各セルに充填する場合に、上部基板11や下部基板12や隔壁状部材13等に影響を与えない範囲で上部基板11等を加熱、冷却して帯電粒子分散体33の粘度を調節するように構成しても良い。
【0109】
また、第3実施例の変形例として、凸部73cを設けることなく、連通部73dを第1隔壁状部材73aと第2隔壁状部材73bとの間に形成される単なる隙間として構成しても良い。
【0110】
また、隔壁状部材13の各セルCに充填工程によって帯電粒子分散体33を充填する前に、帯電粒子分散体33を充填する側の隔壁状部材13の上面に各セルCの位置に合わせて穴が開けられたマスク膜(マスク板)を取着するマスク工程を備えていても良い。
かかる場合には、充填工程によって各セルCに帯電粒子分散体33を充填する場合や、スキージ51によって各セルCから帯電粒子分散体33を掻き取る場合に、帯電粒子分散体33が隔壁状部材の上面に付着するのを防止することができる。よって、各セルCに関して上部基板11と下部基板12との距離を均一にすることができ、画像品質を向上させることができる。尚、このマスク膜(マスク板)は、隔壁状部材13が上部基板11と下部基板12とに挟まれる前に取除かれる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1(a)は、本発明の表示媒体の製造方法によって製造される表示媒体の上面図であり、図1(b)は、図1(a)のB−B断面線における表示媒体の断面図である。
【図2】表示媒体の分解斜視図である。
【図3】隔壁状部材の表面を拡大して示す拡大斜視図である。
【図4】表示媒体の製造方法に関する第1実施例を説明するための図である。
【図5】表示媒体の製造方法を関する第1実施例を説明するための図である。
【図6】表示媒体の製造方法を関する第1実施例を説明するための図である。
【図7】表示媒体の製造方法を関する第1実施例を説明するための図である。
【図8】表示媒体の製造方法に関する第2実施例を説明するための図である。
【図9】表示媒体の製造方法に関する第3実施例を説明するための図である。
【図10】(a)は、図9(b)に示す矢印X方向視における第1隔壁状部材の拡大図である。(b)は、図9(b)に示す矢印Y方向視における第2隔壁状部材の拡大図である。
【図11】表示媒体の製造方法に関する第4実施例を説明するための図である。
【図12】表示媒体の製造方法に関する第5実施例を説明するための図である。
【図13】表示媒体の製造方法に関する第6実施例を説明するための図である。
【図14】下部基板の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0112】
1 表示媒体
10 表示面
11a 第1基板
11b X電極
12a 第2基板
12b Y電極
13 隔壁状部材
13a 連通部
20 帯電粒子
20a 白色粒子
20b 黒色粒子
31 電気泳動散媒
33 帯電粒子分散体
34 分散媒
C セル
R 液室
S 注入空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面を構成する第1基板と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板及び第2基板の間に形成される液室と、前記液室内を複数のセルに分割し前記第1基板及び第2基板の厚さ方向に立設される隔壁状部材と、前記隔壁状部材で形成される前記セルの各々に充填される帯電粒子が有機溶媒に分散された電気泳動媒体とを備え、前記第1基板及び第2基板の間に発生する電界の方向に応じて前記帯電粒子を移動させて前記表示面に画像の表示を行う表示媒体の製造方法において、
前記隔壁状部材が前記第1基板と前記第2基板とに挟まれる前に、前記帯電粒子が有機溶媒に分散された帯電粒子分散体を前記セルの各々に充填する充填工程と、
前記充填工程によって前記帯電粒子分散体が充填されている前記セルの各々に、前記帯電粒子分散体の有機溶媒を溶解または分散する分散媒を注入する注入工程とを備えていることを特徴とする表示媒体の製造方法。
【請求項2】
前記帯電粒子分散体は、前記電気泳動媒体よりも高粘度であることを特徴とする請求項1記載の表示媒体の製造方法。
【請求項3】
前記注入工程の後で前記帯電粒子分散体と前記分散媒とを揺動する揺動工程を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の表示媒体の製造方法。
【請求項4】
前記注入工程の後で又は前記揺動工程の最中に、前記セルの内部で前記帯電粒子を移動させるために前記第1基板及び第2基板の間に電圧を印加する電圧印加工程を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の表示媒体の製造方法。
【請求項5】
前記セルの各々は、ほぼ同容量に構成されており、
前記充填工程は、前記注入工程によって前記分散媒が注入される注入空間を前記セルの各々に確保しつつ、前記セルの各々に前記帯電粒子分散体をほぼ同容量ずつ充填することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の表示媒体の製造方法。
【請求項6】
前記充填工程は、
前記セルの容量とほぼ同量の前記帯電粒子分散体で前記セルの各々を充満させる充満工程と、
その充満工程によって前記帯電粒子分散体で充満されている前記セルの各々に、前記注入空間を形成する空間形成工程とを備えていることを特徴とする請求項5記載の表示媒体の製造方法。
【請求項7】
前記空間形成工程は、前記充満工程によって前記セルの各々に充満された前記帯電粒子分散体をほぼ同量ずつ掻き取る掻取り工程であることを特徴とする請求項6記載の表示媒体の製造方法。
【請求項8】
前記空間形成行程は、前記充満工程によって前記セルの各々に充満された前記帯電粒子分散体を乾燥させる乾燥工程であることを特徴とする請求項6記載の表示媒体の製造方法。
【請求項9】
前記隔壁状部材は、前記第1基板または前記第2基盤とほぼ平行な面で接合する第1構造体と、第2構造体とを備え、
前記セルの各々は、前記第1構造体に形成されるほぼ同容量を有する複数の第1セルと、前記複数の第1セルの各々に対応して前記第2構造体に形成されるほぼ同容量を有する複数の第2セルとによって形成されており、
前記充填工程は、
前記第1セルの容量とほぼ同量の前記帯電粒子分散体で前記第1セルの各々を充満させる充満工程と、
前記充満工程によって前記第1セルの各々に前記帯電粒子分散体が充満されている状態で、前記第1構造体と前記第2構造体とを接合する接合工程とを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の表示媒体の製造方法。
【請求項10】
前記セルの各々が前記第1基板と第2基板との間に挟まれている状態で隣り合う前記セルを連結する空間であると共に、前記分散媒の通過を許容し、かつ前記帯電粒子の通過を抑制する大きさに構成される連通部を備え、
前記分散媒は、前記帯電粒子分散体よりも低粘度であり、
前記注入工程は、前記セルの各々が前記第1基板と第2基板との間に挟まれている状態で、前記連通部を介して前記セルの各々に前記分散媒を注入することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の表示媒体の製造方法。
【請求項11】
表示面を構成する第1基板と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板及び第2基板の間に形成される液室と、前記液室内を複数のセルに分割し前記第1基板及び第2基板の厚さ方向に立設される隔壁状部材と、前記隔壁状部材で形成される前記セルの各々に充填される帯電粒子が分散された電気泳動媒体とを備え、前記第1基板及び第2基板の間に発生する電界の方向に応じて前記帯電粒子を移動させて前記表示面に画像の表示を行う表示媒体において、
前記分散媒の通過を許容し、且つ前記帯電粒子の通過を抑制する大きさに形成され、かつ隣り合う前記セルを連結する空間である連通部を備えていることを特徴とする表示媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−86461(P2007−86461A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275618(P2005−275618)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)