説明

表示媒体及び表示方法

【課題】高解像度であり、フルカラー表示が可能な表示媒体及び表示方法を提供することにある。
【解決手段】種類毎に移動度及び分散状態において異なる発色性を呈する2種類以上の電荷移動性微粒子を調光層に含む表示媒体とすることにより、調光層内に同一強度の電界が形成されたときに、移動度の大きい電荷移動性微粒子は、移動度の小さい電荷移動性微粒子に比べて高速に調光層内を移動する。このため、同一の調光層内に、電界強度に応じて移動しやすい電荷移動性微粒子と移動しにくい電荷移動性微粒子とを含有することで、電界強度を変更して選択的に電荷移動性微粒子を移動させることにより、調光層内に分散させる電荷移動性微粒子を調製することができ、本発明の表示媒体を、高解像度でフルカラー表示が可能な表示媒体とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体及び表示方法に係り、特に、調光ガラス、調光素子、及び表示素子などの光学素子として広く利用可能な電荷移動性微粒子を用いた表示媒体及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高度情報化社会の進展にともない電子ペーパーシステム、カラー表示システム、大面積表示システムへのニーズが増大している。これらを実現する技術としてCRT、液晶、EL、LED、プラズマなどの表示技術が開発されてきた。また、これらの自発光システムのほかに、低消費電力で人間の目に違和感の少ない反射型表示システムの開発が検討されている。反射型表示システムとしては、反射型液晶技術などが有力なものとなっている。
【0003】
一方、次世代電子ペーパー表示システムに対するニーズは大きいが、それを実現する有望な技術が確立されていないのが現状である。候補方式としては、電気泳動方式、液晶方式、有機EL方式等が知られている。
【0004】
液晶方式はフィルター方式のため、媒体の厚さと重さを薄く軽くすることが困難であり、更に、有機EL方式は、自己発光性の為、メモリー性がなく用途の幅が制限されるという問題があった。
【0005】
一方、電気泳動方式を用いた表示媒体としては、以下のような技術が開示されている。
一対の電極間に分散媒及び電気泳動粒子を封入したマイクロカプセルを配送する方法や、磁性流体を内包したマイクロカプセルを使用した磁気泳動方式が報告されている。
【0006】
さらに、単一のマイクロカプセル中に複数の着色粒子を混合状態で配設し、この粒子を選択的に駆動する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
しかしながら、いずれの方法もマイクロカプセルを使用するため、微細なドット表示やフルカラー表示が困難であった。また、特許文献1の技術では、粒子を選択的に駆動することは原理的に困難であった。
【0008】
また、所定間隙を開けた状態に配置された一対の基板の面に沿って分割された複数の区画にほぼ等しい量ずつ帯電泳動粒子を配置し、分散媒を青色、帯電泳動粒子を黒色とする構成が記載され、表示品質を向上できることが報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
しかしながら、この構成においては,フルカラー化が困難であり、また、積層にしようとすると各層の粒子と組合せた減法混色法による色再現ができないため、並列にせざるを得ず、装置が複雑となる。
【0010】
また、複数の色を表現するために、各々異なる色を表示するためのセルまたはマイクロカプセルを並列的に配設してカラー表示を行う方法が開示されているが(例えば、特許文献3参照。)、並列的に配設するため高解像度が得られにくく、また十分なコントラストが得られない。
【0011】
また、光透過性を有する粒子/媒体を含む電気泳動部を2層以上積層する方法も開示されている(例えば、特許文献4参照。)が、粒子を着色するためには染料を用いており、十分な着色濃度を得られない。
【0012】
更に、重畳する位置に配置される2つの表示電極と、2つのコレクト電極と2種類の透光性の着色粒子とを含むセルを積層配置、または並列配置する方法もまた開示されているが(例えば、特許文献5参照。)、染料によって着色された比較的大きい粒子を使用しているため、充分な着色濃度が得られず、また着色剤の安定性が問題であった。
【0013】
また、粒子として、粒子を基板と垂直方向に移動させ、分散状態では無色、凝集状態で粒子の色を示す方法も開示されているが(特許文献6参照)、粒子を凝集させることにより所定の色を得ることから、多色化且つ多階調化を実現するには、該粒子を封入したセルを複数用意して面積階調を行わねばならず、1つのセルにより1画素を表現し且つ1画素におけるカラー化を実現することは困難であり、高解像度が得られにくく、また十分なコントラストが得られないという問題があった。
【0014】
【特許文献1】米国特許第6017584号明細書
【特許文献2】特開2000−322004号公報
【特許文献3】特開2000−35598号公報
【特許文献4】特開2002−333643号公報
【特許文献5】特開2004−20818号公報
【特許文献6】特表2004―522180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、高解像度であり且つフルカラー表示が可能な表示媒体、表示素子、及び表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、分散状態で発色性を呈し、種類毎に移動度が異なると共に分散状態における色の異なる2種類以上の電荷移動性微粒子を含む調光層を有する表示媒体、または表示素子を用いることにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を解決した。
【0017】
即ち、本発明は、下記の手段により達成されるものである。
【0018】
<1> 本発明の表示媒体は、種類毎に、分散状態で異なる発色性を呈すると共に種類毎に移動度の異なる2種類以上の電荷移動性微粒子を含む調光層を有する。
【0019】
<2> 2種類以上の前記電荷移動性微粒子は、最も近い移動度の種類間における移動度の差が1×10―6cm/Vs以上であることを特徴とする上記<1>に記載の表示媒体である。
【0020】
<3> 前記電荷移動性微粒子は、種類毎に分散状態で赤色、緑色、及び青色の何れかの発色性を呈することを特徴とする上記<1>に記載の表示媒体である。
<4> 前記電荷移動性微粒子は高分子樹脂中に分散されている上記<1>に記載の表示媒体である。
【0021】
<5> 前記電荷移動性微粒子がプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子である上記<1>に記載の表示媒体である。
<6> 前記金属コロイド粒子が金又は銀である、上記<5>に記載の表示媒体である。
【0022】
<7> 前記電荷移動性微粒子の体積平均粒径が1nm〜100nmの範囲内である上記<1>に記載の表示媒体である。
<8> 前記電荷移動性微粒子の体積平均粒径が2nm〜50nmの範囲内である上記<7>に記載の表示媒体である。
【0023】
<9> 前記調光層を含む調光単位セルを複数有し、前記調光単位セルが背面基板に積層されて構成される上記<1>に記載の表示媒体である。
<10> 前記調光層を含む調光単位セルを複数有し、前記調光単位セル各々が背面基板の基板面に沿った方向に配列される上記<1>に記載の表示媒体である。
【0024】
<11> 種類毎に、分散状態で異なる発色性を呈すると共に移動度の異なる2種類以上の電荷移動性微粒子を含む調光層と、前記調光層内に電界を形成する電界形成手段とを有する、表示素子である。
<12> 前記電界形成手段は、前記調光層内を移動させる前記電荷移動性微粒子に応じた強度の電界を前記調光層内に形成する上記<11>に記載の表示素子である。
【0025】
<13> 前記電界形成手段は、一対の電極を含んで構成される上記<11>に記載の表示素子である。
<14> 前記一対の電極の少なくとも一方が、前記調光層の外周端部に設けられていることを特徴とする上記<13>に記載の表示素子である。
【0026】
<15> 2種類以上の前記電荷移動性微粒子は、最も近い移動度の種類間における移動度の差が1×10―6cm/Vs以上であることを特徴とする上記<11>に記載の表示素子である。
<16> 前記電荷移動性微粒子は、種類毎に分散状態で赤色、緑色、及び青色の何れかの発色性を呈することを特徴とする上記<11>に記載の表示素子である。
【0027】
<17> 前記電荷移動性微粒子は高分子樹脂中に分散されている上記<11>に記載の表示素子である。
<18> 前記電荷移動性微粒子がプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子である上記<11>に記載の表示素子である。
【0028】
<19> 前記金属コロイド粒子が金又は銀である、上記<18>に記載の表示素子である。
<20> 前記電荷移動性微粒子の体積平均粒径が1nm〜100nmの範囲内である上記<11>に記載の表示素子である。
【0029】
<21> 前記調光層を含む調光単位セルを複数有し、前記調光単位セルが背面基板に積層されて構成される上記<11>に記載の表示素子である。
<22> 前記調光層を含む調光単位セルを複数有し、前記調光単位セル各々が背面基板の基板面に沿った方向に配列されて構成される上記<11>に記載の表示素子である。
【0030】
なお、下記表示方法によって高解像度であり且つフルカラー表示が可能な表示方法を提供することができる。具体的には、
<23> 種類毎に分散状態で異なる発色性を呈すると共に、種類毎に移動度の異なる2種類以上の電荷移動性微粒子を含む調光層を備えた表示媒体を用いた表示方法であって、前記2種類以上の電荷移動性微粒子の全てを分散状態とする工程と、前記2種類以上の電荷移動性微粒子の内、少なくとも1種類の電荷移動性微粒子を分散状態とし、且つ前記分散状態とする電荷移動性微粒子の他の種類の電荷移動性微粒子を非分散状態とする工程と、を含む表示方法。
【0031】
<24> また、本発明の表示方法は、前記2種類以上の電荷移動性微粒子の全てを非分散状態とする工程をさらに有することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の表示媒体及び表示方法によれば、種類毎に分散状態で異なる発色性を呈すると共に、種類毎に移動度の異なる2種類以上の電荷移動性微粒子を含む調光層を有するので、高解像度で、フルカラー表示が可能な表示媒体を提供することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0034】
<表示媒体>
本発明の表示媒体は、種類毎に分散状態で異なる発色性を呈すると共に、種類毎に移動度の異なる2種類以上の電荷移動性微粒子を含む調光層を備えている。
【0035】
種類毎に分散状態で異なる発色性を呈すると共に、種類毎に移動度の異なる2種類以上の電荷移動性微粒子を調光層に含むことにより、調光層内に同一強度の電界が形成されたときに、移動度の大きい電荷移動性微粒子は、移動度の小さい電荷移動性微粒子に比べて高速に調光層内を移動する。このため、電界強度を変更して選択的に電荷移動性微粒子を調光層内において移動させることにより、調光層内に分散させる電荷移動性微粒子の種類を調製することができる。従って、同一調光層における多色表示が可能となり、このような調光層を含む本発明の表示媒体を、高解像度でフルカラー表示が可能な表示媒体とすることができる。
【0036】
(調光層)
本発明の表示媒体に含まれる調光層は、分散状態で種類毎に異なる発色性を呈すると共に、種類毎に移動度の異なる2種類以上の電荷移動性微粒子を含んでいる。
【0037】
すなわち、本発明における調光層では、同一種類の電荷移動性微粒子群に属する電荷移動性微粒子各々の移動度は、略同一となるように構成されており、且つ同一種類の電荷移動性微粒子群に属する電荷移動性微粒子は、分散状態で同一色を呈する。
調光層には、この電荷移動性微粒子の他に、必要に応じて絶縁性液体、高分子樹脂、高分子量顔料分散剤等を添加することができる。
【0038】
上記移動度とは、電荷移動性微粒子群の各粒子が単位電界強度あたり、単位時間内に移動可能な距離を示している。すなわち、移動度とは、単位電界あたりの電荷移動性微粒子の平均移動速度を示している。
【0039】
前記「分散状態で発色性を呈する」とは、前記電荷移動性微粒子が媒体に分散されている状態で目視により観測できる色相を呈することをいう。
【0040】
前記色相は、前記電荷移動性微粒子、特に金属コロイド粒子の金属及びその形状や粒径(体積平均粒径)等を変化させることにより多彩とすることができる。
【0041】
前記金コロイド等の金属コロイドによる発色は、電子のプラズマ振動に起因し、プラズモン吸収と呼ばれる発色機構によるものである。このプラズモン吸収による発色は、金属中の自由電子が光電場により揺さぶられ、粒子表面に電荷が現れ、非線形分極が生じるためであるとされている。この金属コロイドによる発色は、彩度や光線透過率が高く、耐久性等に優れている。このような金属コロイドによる発色は、粒径が数nm〜数十nm程度の、いわゆるナノ粒子において見られるものであり、着色材としては、粒径分布が狭いコロイドであることが有利である。
【0042】
本発明の表示媒体の調光層に含まれる複数種類の電荷移動性微粒子は、種類毎に移動度が異なる。
【0043】
調光層に含まれる複数種類の電荷移動性微粒子は、最も近い移動度の種類間における移動度の差が1×10-6cm/Vs以上であることが好ましく、5×10-6cm/Vs以上であることが更に好ましく、1×10-5cm/Vsであることが特に好ましい。
【0044】
最も近い移動度の種類間における移動度の差が、1×10-6cm/Vs未満であると、調光層内に電界が形成されたときに、電荷移動性微粒子の種類間の単位時間における移動距離の差が小さすぎて、表示媒体が良好に色変化しないという問題が生じる。
【0045】
調光層内に含まれる電荷移動性微粒子の移動度の測定方法は、両端を電極で挟まれたセル中に、少なくとも電荷移動性微粒子を充填し、これらの電極に電圧を印加することによってセル内に形成された電界強度と、これらの電極に電界を印加した時間と、セル中にこのような電界が形成された時間内において移動した粒子の移動距離を測定することによって測定可能である。
移動距離の測定は、例えば、CCDによって粒子の移動や、粒子の移動に伴う色の変化を観察、計測することによって測定することができる。
【0046】
また、移動度の測定方法としては、セルに電界を印加し、セルの色が変化していく過程を透過率や反射率の時間変化として評価することによっても可能である。具体的には、セルを挟持する電極に電圧を印加したときの電圧の電圧値と、電圧印加時間と、電圧印加が開始されてからのセルの透過率または反射率の変化を、分光光度計、例えばOcean optics製USB2000等によって測定することによって可能である。
【0047】
−電荷移動性微粒子−
電荷移動性微粒子としては、分散状態で発色性を呈し、所定の移動度を有する、すなわち電界(電圧)を印加することにより移動性を有する微粒子であることが必要であり、それ以外については特に限定されるものではないが、中でも、着色性、安定性の観点からプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子であることが好ましい。以下、金属コロイド粒子を例に記載するがこれに限定されるものではない。
【0048】
前記金属コロイド粒子の金属としては、貴金属又は銅等(以下、合わせて「金属」という。)が挙げられ、前記貴金属としては特に限定されず、例えば、金、銀、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。前記金属の中でも、金、銀、銅、白金が好ましい。
【0049】
前記金属コロイド粒子は、金属イオンを還元して金属原子、金属クラスターを経てナノ粒子に調製する化学的方法や、バルク金属を不活性ガス中で蒸発させて微粒子となった金属をコールドトラップなどで捕捉したり、ポリマー薄膜上に真空蒸着させて金属薄膜を形成した後に加熱して金属薄膜を壊し、固相状態でポリマー中に金属微粒子を分散させる物理的方法が知られている。化学的方法は、特殊な装置を使わなくても良く、本発明の金属コロイド粒子調製に有利であるため、一般例を後述するが、これらに限定されるものではない。
【0050】
前記金属コロイド粒子は、前記金属の化合物から形成される。該金属の化合物としては、前記金属を含むものであれば特に限定されず、例えば、塩化金酸、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)等を挙げることができる。
【0051】
前記金属コロイド粒子は、前記金属の化合物を溶媒に溶解した後、金属に還元して分散剤で保護された金属コロイド粒子の分散液として得ることができるが、該分散液の溶媒を除去して固体ゾルの形態で得ることもできる。これら以外のいずれの形態であってもよい。
【0052】
前記金属の化合物を溶解する際、後述の高分子顔料分散剤を用いることも可能である。高分子顔料分散剤を用いることにより前記分散剤で保護された安定な金属コロイド粒子として得ることができる。このとき、高分子顔料分散剤の種類や濃度、撹拌時間を所望の条件にて行う事により、金属コロイド粒子表面に吸着する分散剤濃度を制御する事が可能である。すなわち、高分子顔料分散剤の濃度を濃くしたり、或は、撹拌時間を長くする事により、金属コロイド粒子表面に吸着する高分子顔料分散剤の量を多くする事ができる。これにより、金属コロイド粒子の移動度を制御する事が可能である。
【0053】
本発明における金属コロイド粒子を用いる場合、前記で得られた金属コロイド粒子の分散液として用いても、また、前記の溶媒を除去した固体ゾルを溶媒に再分散させて使用することもでき、本発明においては特に限定されるものではない。
【0054】
前記金属コロイド粒子の分散液として用いる場合、前記調製時の溶媒としては、後述の絶縁性液体であることが好ましい。また、前記固体ゾルを再分散して用いる場合、固体ゾル調製時の溶媒としては、いずれの溶媒を用いることができ、特に限定されるものではない。再分散する際の溶媒としては、後述の絶縁性液体であることが好ましい。
【0055】
また、金属コロイド粒子は、その金属の種類や形状、体積平均粒径により、様々な色に発色させることができる。そのため、金属の種類や、形状、体積平均粒径を制御した前記電荷移動性微粒子を用いることにより、RGB発色を含む様々な色相を得ることができ、本発明の表示媒体をカラー表示媒体とすることができる。更に、金属及び得られる金属コロイド粒子の形状や粒径制御によりRGBフルカラー方式の表示媒体とすることができる。
【0056】
RGB方式のR、G、Bそれぞれの色を呈するための金属コロイド粒子の体積平均粒径としては、用いる金属や、粒子の調製条件、形状、粒径等に依存するため、特に限定することができないが、例えば、金コロイド粒子の場合、体積平均粒径は大きくなるに従って、R発色、G発色、B発色を呈する傾向にある。
【0057】
本発明における体積平均粒径の測定方法としては、粒子群にレーザ光を照射し、そこから発せられる回折、散乱光の強度分布パターンから平均粒径を測定する、レーザ回折散乱法を採用する。
【0058】
調光層中の全質量に対する電荷移動性微粒子の含有量(質量%)としては、所望の色相が得られる濃度であれば特に限定されるものではなく、調光層の厚さにより含有量を調整することが、表示媒体としては有効である。即ち、所望の色相を得るために、調光層が厚い場合には含有量は少なく、調光層が薄い場合には含有量を多くすることができる。一般的には、0.01〜50質量%である。
【0059】
前記金属コロイド粒子の調製は、例えば、文献「金属ナノ粒子の合成・調製、コントロール技術と応用展開」(技術情報協会出版、2004年)に記載されている一般的な調製方法にて金属コロイド粒子を調製することができる。以下に、その一例を説明するが、これに限定されるものではない。
【0060】
−固体ゾル−
【0061】
以下に、前記金属コロイド粒子の調製における金属の固体ゾルの一例について説明する。
【0062】
本発明における金属の固体ゾルにおいて、着色性の観点から、上記金属のコロイド粒子は、後述の高分子量顔料分散剤1kgあたり、50mmol以上含有されることが好ましい。上記金属のコロイド粒子が50mmol未満であると、着色性が不充分となる。より好ましくは、100mmol以上である。
【0063】
本発明における金属の固体ゾルにおいて、金属のコロイド粒子は、体積平均粒径が1〜100nmであることが好ましく、更に好ましくは、2〜50nmである。1nm未満であると、着色力が低く、100nmを超えると、彩度が低くなる。また、本発明における金属の固体ゾルは、狭い粒度分布を示すものであることが好ましい。粒度分布が広いものであると、彩度が低くなるので好ましくない。
【0064】
本発明における金属の固体ゾルは、彩度が高く、金属のコロイド粒子を高い濃度で含有しているので、着色性が良好である。また、本発明における金属の固体ゾルは、樹脂等の高分子樹脂(バインダー)との相溶性が良好であり、このような高分子樹脂(バインダー)に添加しても安定で凝集せず、充分な着色性を有している。必要に応じてその他の添加物を添加することもできる。更に、適当な溶媒に溶解して、ヒドロゾルやオルガノゾルとした形態も用いることができる。
【0065】
−固体ゾルの製造方法−
【0066】
前記金属の固体ゾルの製造方法の一例を以下に述べるがこれに限定されるものではない。すなわち、金属の化合物を溶媒に溶解し、高分子量顔料分散剤を加えた後、金属に還元して上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子を形成し、その後、上記溶媒を除去することにより固体ゾルとするものである。
【0067】
前記製造方法において、上記金属の化合物は、溶媒に溶解して使用される。上記溶媒としては上記金属の化合物を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、水、アセトン、メタノール、エチレングリコール等の水可溶性有機溶媒等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、水及び水可溶性有機溶媒を併用することが好ましい。
【0068】
上記溶媒が水及び水可溶性有機溶媒からなる混合溶媒である場合、まず、上記金属の化合物を水に溶解した後、水可溶性有機溶媒を添加して溶液とすることが好ましい。このとき、上記金属の化合物は、50mM以上となるように水に溶解されることが好ましい。50mM未満であると、金属のコロイド粒子を高い割合で含有した固体ゾルを得ることができない。より好ましくは、100mM以上である。
【0069】
金属として銀を使用する場合、上記水溶液は、pH7以下であることが好ましい。pHが7を超えると、例えば、上記銀の化合物として硝酸銀を用いる場合、銀イオンを還元する際に酸化銀等の副生成物が生成し、溶液が白濁するので好ましくない。上記水溶液のpHが7を超える場合には、例えば、0.1N程度の硝酸等を添加して、pHを7以下に調整することが好ましい。
【0070】
上記水可溶性有機溶媒は、上記金属の化合物を溶解する水に対して、体積比が1.0以上となるように添加することが好ましい。1.0未満であると、水不溶性の高分子量顔料分散剤が溶解しない。より好ましくは、5.0以上である。
【0071】
本発明における金属コロイド粒子の調製においては、上記金属の化合物の溶液に高分子量顔料分散剤を添加することも有効である。上記高分子量顔料分散剤は、上記溶媒が水及び水可溶性有機溶媒からなる混合溶媒である場合には、水不溶性のものであることが好ましい。水溶解性であると、水可溶性有機溶媒を除去して固体ゾルを得る際に、コロイド粒子を析出させるのが困難となる。上記水不溶性の高分子量顔料分散剤としては、例えば、ディスパービック161、ディスパービック166(ビックケミー社製)、ソルスパース24000、ソルスパース28000(ゼネカ社製)等を挙げることができる。
【0072】
上記高分子量顔料分散剤の添加量は、上記金属100重量部に対して20〜1000重量部が好ましい。20重量部未満であると、上記金属のコロイド粒子の分散性が不充分であり、1000重量部を超えると、塗料や樹脂成型物に配合した際に、バインダー樹脂に対する高分子量顔料分散剤の混入量が多くなり、物性等に不具合を生じやすくなる。より好ましくは、50〜650重量部である。
【0073】
本発明における金属コロイド粒子の調製においては、上記金属の化合物の溶液に上記高分子量顔料分散剤を添加した後、金属のイオンを還元する。上記還元の方法としては特に限定されず、例えば、化合物を添加して化学的に還元する方法、高圧水銀灯を用いた光照射により還元する方法等を挙げることができる。
【0074】
上記化合物としては特に限定されず、例えば、従来から還元剤として使用されている水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩;ヒドラジン化合物;クエン酸又はその塩、コハク酸又はその塩等を使用することができる。また、本発明においては、上記還元剤のほかに、アミンを使用することができる。
【0075】
上記アミンは、上記金属の化合物の溶液にアミンを添加して攪拌、混合することによって、金属イオン等が常温付近で金属に還元される。上記アミンを使用することにより、危険性や有害性の高い還元剤を使用する必要がなく、加熱や特別な光照射装置を使用することなしに、5〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度の反応温度で、金属の化合物を還元することができる。
【0076】
上記アミンとしては特に限定されず、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン; ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等を挙げることができる。また、上記アミンとして、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンも挙げることができる。これらのうち、アルカノールアミンが好ましい。
【0077】
上記アミンの添加量は、上記金属の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成したコロイド粒子の対凝集安定性が低下する。より好ましくは、2〜8molである。
【0078】
また、上記還元剤として上記水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、常温で還元することができるので、加熱や特別な光照射装置を使用する必要がない。
【0079】
上記水素化ホウ素ナトリウムの添加量は、上記金属の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成したコロイド粒子の対凝集安定性が低下する。より好ましくは、1.5〜10molである。
【0080】
上記還元剤としてクエン酸又はその塩を使用する場合、アルコールの存在下で加熱還流することによって金属イオン等を還元することができる。上記クエン酸又はその塩としては、クエン酸ナトリウムを使用することが好ましい。
【0081】
上記クエン酸又はその塩の添加量は、上記金属の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成したコロイド粒子の対凝集安定性が低下する。より好ましくは、1.5〜10molである。
【0082】
本発明における金属コロイド粒子の調製においては、上記金属のイオンを還元した後、上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子を沈殿させてから上記溶媒を除去する。上記溶媒として水及び水可溶性有機溶媒を使用する場合には、使用する高分子量顔料分散剤の性質に応じて以下の方法に従って上記溶媒を除去することができる。
【0083】
上記高分子量顔料分散剤が水不溶性のものである場合、まず、上記水可溶性有機溶媒を蒸発等により除去して、上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子を沈殿させた後、水を除去することが好ましい。上記高分子量顔料分散剤が水不溶性のものであるので、上記水可溶性有機溶媒を除去することにより、上記高分子量顔料分散剤により保護された金属のコロイド粒子が沈殿する。
【0084】
この場合において、上記水可溶性有機溶媒は、蒸発速度が水より大きいものであることが好ましい。蒸発速度が水より小さいものであると、上記高分子量顔料分散剤として水不溶性のものを使用した場合、溶媒を除去して固体ゾルとする際に、上記水可溶性有機溶媒を先に取り除くことができず、金属のコロイド粒子を沈殿させることができない。
【0085】
上記高分子量顔料分散剤が溶剤型のものである場合、該高分子量顔料分散剤を溶解しない非極性有機溶媒を過剰量添加して上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子を沈殿させた後、デカンテーション等により溶媒を除去することもできる。
【0086】
上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子は、上記溶媒を除去した後、上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子をイオン交換水で洗浄しても良い。上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子が過剰量の上記非極性溶媒により沈殿された場合は、上記非極性有機溶媒で洗浄することができる。
【0087】
本発明における金属の固体ゾルの製造方法において、得られる金属の固体ゾルは、コロイド平均粒径が1〜100nmであり、粒度分布が狭いので、濃色かつ彩度の高いものとなる。
【0088】
本発明における金属の固体ゾルの製造方法は、上記金属の化合物を溶媒に溶解して溶液とし、上記高分子量顔料分散剤を加えた後、金属に還元し、その後、溶媒を除去するといった少ない工程で簡便に行うことができ、しかも、彩度が高く、従来の金属の固体ゾルと比較して、金属のコロイド粒子を高い濃度で含有する金属の固体ゾルを製造することができる。特に、アルカノールアミンを使用することにより、20〜80℃程度の温和な条件で簡便に製造することができる。
【0089】
以上の方法によって金属コロイド粒子を調製することができるが、本発明における金属コロイド粒子は、分散状態で発色性を呈する粒子であれば、市販の金属コロイド粒子を用いることができる。
【0090】
さらに、前記金属コロイド粒子は、具体的には、下記の方法(1)〜(4)を用いることにより調製できるが、これに限定されるものではない。
【0091】
−金属コロイド粒子の分散液の調製方法−
本発明における前記金属コロイド粒子の分散液の調製方法としては、水系、非極性溶媒系のいずれの形態でも調製することができる。例えば、金及び銀を用いた金属コロイド粒子の分散液は、以下の調製方法により調製することができるが、これに限定されるものではない。
【0092】
(1)金属化合物(例えば、テトラクロロ金(III)酸・4水和物)を絶縁性液体(例えば、水)に溶解後、金属(例えば、金)に対して1.5倍重量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース20000)を含んだ水溶液を混合、攪拌する。
この混合液に脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミノエタノール)を加えて金イオンの還元反応を開始した後、濾過、濃縮を行い、金コロイド粒子溶液を得る。
【0093】
(2)金属化合物(例えば、テトラクロロ金(III)酸・4水和物)を水に溶解後、金属(例えば、金)に対して1.5倍重量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース24000を有機溶媒(例えば、アセトン)に溶解させた溶液を混合、攪拌する。
この混合液に脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミノエタノール)を加えて金イオンの還元反応を開始した後、前記有機溶媒を蒸発させ、金コロイド粒子と高分子量顔料分散剤からなる固体ゾルを得る。その後、デカンテーションにより固体ゾルを水で洗浄し、有機溶媒(例えば、エタノール)を加えて金コロイド粒子溶液を得る。
【0094】
(3)金属化合物(例えば、硝酸銀(I))を水に溶解後、金属(例えば、銀)に対して1.5倍重量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース20000 )を含んだ水溶液を混合、攪拌する。この混合液に脂肪族アミン(例えばジメチルアミノエタノール)を加えて銀イオンの還元反応を開始した後、濾過、濃縮を行い、水系銀コロイド粒子溶液を得る。
【0095】
(4) 金属化合物(例えば、硝酸銀(I))を水に溶解後、金属(例えば、銀)に対して1.5倍重量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース24000)を有機溶媒(例えば、アセトン)に溶解させた溶液を混合、攪拌する。この混合液に脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミノエタノール)を加えて銀イオンの還元反応を開始した後、有機溶媒を蒸発させ、銀コロイド粒子と高分子量顔料分散剤からなる固体ゾルを得る。その後、デカンテーションにより固体ゾルを水で洗浄し、有機溶媒(例えば、トルエン)を加えて溶媒系銀コロイド粒子溶液を得る。
【0096】
尚、前記金属コロイド粒子及びその溶液等については、特開平11−76800号公報に記載のものを好適に用いることができる。
【0097】
ここで、上述のように、本発明の調光層に含まれる電荷移動性微粒子は、種類毎に移動度が異なる。
【0098】
分散状態における異なる色を呈する電荷移動性微粒子毎に、移動度が異なるように調製する方法としては、界面活性剤、顔料分散剤、及び電荷移動性微粒粒子の表面処理剤等の種類、これらの濃度、及びこれらを添加、撹拌している処理時間を適宜調整することによって、移動度の異なる電荷移動性微粒子26を作製することができる。
【0099】
上記界面活性剤としては、カチオン型界面活性剤(アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等)、ノニオン型界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等)、アニオン型界面活性剤(アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルフホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、脂肪酸塩、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、芳香族スルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、β-ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等)、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0100】
界面活性剤や顔料分散剤の濃度としては、金属に対する界面活性剤や顔料分散剤の濃度が高くなるほど移動度は大きくなり、金属に対する界面活性剤や顔料分散剤の濃度が低くなるほど移動度を低くすることができる。
【0101】
界面活性剤や顔料分散剤の処理時間は、処理時間が長くなるほど移動度を大きくでき、処理時間が短くなるほど移動度を小さくすることができる。
このように、電荷移動性微粒子の調製方法を調整することにより、分散時に呈する色の種類毎に移動度を所定値となるように調整することができる。更には、金属コロイド粒子の金属種や粒径、形状によっても、移動度を所定値となるように調整可能である。
【0102】
−絶縁性液体−
本発明における前記金属コロイド粒子の分散媒としては、絶縁性液体であることが好ましい。
【0103】
前記絶縁性液体として具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、シリコーンオイル、ジククロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、高純度石油、エチレングリコール、アルコール類、エーテル類、エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ベンジン、ジイソプロピルナフタレン、オリーブ油、イソプロパノール、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモテトラフルオロエタンなどや、それらの混合物が好適に使用できる。
【0104】
また、下記体積抵抗値となるよう不純物を除去することで、水(所謂、純水)も好適に使用することができる。該体積抵抗値としては、103Ωcm以上であることが好ましく、より好ましくは107Ωcm〜1019Ωcmであり、さらに好ましくは1010〜1019Ωcmである。このような体積抵抗値とすることで、より効果的に、電極反応に起因する液体の電気分解による気泡の発生が抑制され、通電毎に粒子の電気泳動特性が損なわれることがなく、優れた繰り返し安定性を付与することができる。
【0105】
なお、絶縁性液体には、必要に応じて、酸、アルカリ、塩、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加することができるが、上記で示した特定の体積抵抗値の範囲となるように添加することが好ましい。
【0106】
−高分子樹脂−
本発明における前記電荷移動性微粒子(金属コロイド粒子)は、高分子樹脂に分散されていることも好ましい。該高分子樹脂としては、高分子ゲル、ネットワークポリマー等であることも好ましい。
【0107】
該高分子樹脂としては、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、イソリケナン、インスリン、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カードラン、カゼイン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カロース、寒天、キチン、キトサン、絹フィブロイン、クアーガム、クインスシード、クラウンゴール多糖、グリコーゲン、グルコマンナン、ケラタン硫酸、ケラチン蛋白質、コラーゲン、酢酸セルロース、ジェランガム、シゾフィラン、ゼラチン、ゾウゲヤシマンナン、ツニシン、デキストラン、デルマタン硫酸、デンプン、トラガカントゴム、ニゲラン、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プスツラン、フノラン、分解キシログルカン、ペクチン、ポルフィラン、メチルセルロース、メチルデンプン、ラミナラン、リケナン、レンチナン、ローカストビーンガム等の天然高分子由来の高分子ゲルが挙げられる他、合成高分子の場合にはほとんどすべての高分子ゲルが挙げられる。
【0108】
更に、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、及びアミドの官能基を繰り返し単位中に含む高分子等が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミドやその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシドやこれら高分子を含む共重合体を挙げることができる。
【0109】
これら中でも、製造安定性、電気泳動特性等の観点から、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド等が好ましく用いられる。
【0110】
これら高分子樹脂は、前記絶縁性液体と共に用いることが好ましい。
【0111】
−高分子量顔料分散剤−
上記高分子量顔料分散剤としては特に限定されないが、以下に説明するものを好適に使用することができる。すなわち;
【0112】
(1)顔料親和基を主鎖及び/又は複数の側鎖に有し、かつ、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を有する櫛形構造の高分子。(2)主鎖中に顔料親和基からなる複数の顔料親和部分を有する高分子。(3)主鎖の片末端に顔料親和基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子。
ここで、上記顔料親和基とは、顔料の表面に対して強い吸着力を有する官能基をいい、例えば、オルガノゾルにおいては、第3級アミノ基、第4級アンモニウム、塩基性窒素原子を有する複素環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基;ヒドロゾルにおいては、フェニル基、ラウリル基、ステアリル基、ドデシル基、オレイル基等を挙げることができる。本発明において、上記顔料親和基は、金属に対して強い親和力を示す。上記高分子量顔料分散剤は、上記顔料親和基を有することにより、金属の保護コロイドとして充分な性能を発揮することができる。
【0113】
上記櫛形構造の高分子(1)は、上記顔料親和基を有する複数の側鎖とともに、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を主鎖に結合した構造のものであり、これらの側鎖があたかも櫛の歯のように主鎖に結合されているものである。本明細書中、上述の構造を櫛形構造と称する。上記櫛形構造の高分子(1)において、上記顔料親和基は、側鎖末端に限らず、側鎖の途中や主鎖中に複数存在していてもよい。なお、上記溶媒和部分は、溶媒に親和性を有する部分であって、親水性又は疎水性の構造をいう。上記溶媒和部分は、例えば、水溶性の重合鎖、親油性の重合鎖等から構成されている。
【0114】
上記櫛形構造の高分子(1)としては特に限定されず、例えば、特開平5−177123号公報に開示されている1個以上のポリ(カルボニル−C3 〜C6 −アルキレンオキシ)鎖を有し、これらの各鎖が3〜80個のカルボニル−C3 〜C6 −アルキレンオキシ基を有しかつアミド又は塩架橋基によってポリ(エチレンイミン)に結合されている構造のポリ(エチレンイミン)又はその酸塩からなるもの;特開昭54−37082号公報に開示されているポリ(低級アルキレン)イミンと、遊離のカルボン酸基を有するポリエステルとの反応生成物よりなり、各ポリ(低級アルキレン)イミン連鎖に少なくとも2つのポリエステル連鎖が結合されたもの;特公平7−24746号公報に開示されている末端にエポキシ基を有する高分子量のエポキシ化合物に、アミン化合物と数平均分子量300〜7000のカルボキシル基含有プレポリマーとを同時に又は任意順に反応させて得られる顔料分散剤等を挙げることができる。
【0115】
上記櫛形構造の高分子(1)は、顔料親和基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなく、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、25〜1500個である。
【0116】
上記櫛形構造の高分子(1)は、溶媒和部分を構成する側鎖が1分子中に2〜1000存在するものが好ましい。2未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、5〜500である。
【0117】
上記櫛形構造の高分子(1)は、数平均分子量が2000〜1000000であることが好ましい。2000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、4000〜500000である。
【0118】
上記主鎖中に顔料親和基からなる複数の顔料親和部分を有する共重合体(2)は、複数の顔料親和基が主鎖にそって配置されているものであり、上記顔料親和基は、例えば、主鎖にペンダントしているものである。本明細書中、上記顔料親和部分は、上記顔料親和基が1つ又は複数存在して、顔料表面に吸着するアンカーとして機能する部分をいう。
【0119】
上記共重合体(2)としては、例えば、特開平4−210220号公報に開示されているポリイソシアネートと、モノヒドロキシ化合物及びモノヒドロキシモノカルボン酸又はモノアミノモノカルボン酸化合物の混合物、並びに、少なくとも1つの塩基性環窒素とイソシアネート反応性基とを有する化合物との反応物;特開昭60−16631号公報、特開平2−612号公報、特開昭63−241018号公報に開示されているポリウレタン/ポリウレアよりなる主鎖に複数の第3級アミノ基又は塩基性環式窒素原子を有する基がペンダントした高分子;特開平1−279919号公報に開示されている水溶性ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する立体安定化単位、構造単位及びアミノ基含有単位からなる共重合体であって、アミン基含有単量単位が第3級アミノ基若しくはその酸付加塩の基又は第4級アンモニウムの基を含有しており、該共重合体1g当たり0.025〜0.5ミリ当量のアミノ基を含有する共重合体;特開平6−100642号公報に開示されている付加重合体からなる主鎖と、少なくとも1個のC1〜C4アルコキシポリエチレン又はポリエチレン−コプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる安定化剤単位とからなり,かつ、2500〜20000の重量平均分子量を有する両親媒性共重合体であって、主鎖は、30重量%までの非官能性構造単位と、合計で70重量%までの安定化剤単位及び官能性単位を含有しており、上記官能性単位は、置換されているか又は置換されていないスチレン含有単位、ヒドロキシル基含有単位及びカルボキシル基含有単位であり、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とスチレン基及びヒドロキシル基とプロピレンオキシ基又はエチレンオキシ基との比率が、それぞれ、1:0.10〜26.1;1:0.28〜25.0;1:0.80〜66.1である両親媒性高分子等を挙げることができる。
【0120】
上記共重合体(2)は、顔料親和基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなく、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、25〜1500個である。
【0121】
上記共重合体(2)は、数平均分子量が2000〜1000000であることが好ましい。2000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、4000〜500000である。
【0122】
上記主鎖の片末端に顔料親和基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子(3)は、主鎖の片末端のみに1つ又は複数の顔料親和基からなる顔料親和部分を有しているが、顔料表面に対して充分な親和性を有するものである。
【0123】
上記直鎖状の高分子(3)としては特に限定されず、例えば、特開昭46−7294号公報に開示されている一方が塩基性であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4656226号明細書に開示されているAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子;米国特許第4032698号明細書に開示されている片末端が塩基性官能基であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4070388号明細書に開示されている片末端が酸性官能基であるA−Bブロック型高分子;特開平1−204914号公報に開示されている米国特許第4656226号明細書に記載のAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子の耐候黄変性を改良したもの等を挙げることができる。
【0124】
上記直鎖状の高分子(3)は、顔料親和基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなく、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、5〜1500個である。
【0125】
上記直鎖状の高分子(3)は、数平均分子量が1000〜1000000であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、2000〜500000である。
【0126】
上記高分子量顔料分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。上記市販品としては、例えば、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000(ゼネカ社製);ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190(ビックケミー社製);EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49(EFKAケミカル社製);ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453(EFKAケミカル社製);アジスパーPB711、アジスパーPA111、アジスパーPB811、アジスパーPW911(味の素社製);フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンTG−730W、フローレンG−700、フローレンTG−720W(共栄社化学社製)等を挙げることができる。
【0127】
上記高分子量顔料分散剤は、顔料親和基が側鎖に存在し、溶媒和部分を構成する側鎖を有するグラフト構造のもの〔上記櫛形構造の高分子(1)〕;主鎖に、顔料親和基を有するもの〔上記共重合体(2)及び上記直鎖状の高分子(3)〕であるので、コロイド粒子の分散性が良好であり、金属のコロイド粒子に対する保護コロイドとして好適である。上記高分子量顔料分散剤を使用することにより、金属のコロイド粒子を高い濃度で含有する金属のコロイド粒子分散体を得ることができる。
【0128】
本発明において、上記高分子量顔料分散剤は、軟化温度が、30℃以上であることが好ましい。30℃未満であると、得られる金属の固体ゾルが貯蔵中にブロッキングしてしまう。より好ましくは、40℃以上である。
【0129】
上記高分子量顔料分散剤の含有量は、上記金属100重量部に対して20〜1000重量部が好ましい。20重量部未満であると、上記金属のコロイド粒子の分散性が不充分であり、1000重量部を超えると、塗料や樹脂成型物に配合した際に、バインダー樹脂に対する高分子量顔料分散剤の混入量が多くなり、物性等に不具合が生じやすくなる。より好ましくは、50〜650重量部である。
【0130】
本発明における前記調光単位セルの大きさとしては、表示媒体の解像度と密接な関係にあり、セルが小さいほど高解像度な表示媒体を作製することができ、通常、10μm〜1mm程度である。
【0131】
(表示媒体)
本発明の表示媒体は、上記調光層を含む調光単位セルを複数有することが好ましい。
調光単位セルは、対向配置された一対の基板間の空隙中に、上述の電荷移動性微粒子を移動可能に封入することによって構成された調光層と、該調光層内に電界を形成し該調光層内に封入された電荷移動性微粒子を電界によって移動させるための電界形成手段を有する。
【0132】
以下、本発明の表示媒体について図1〜図4を参照しつつ説明する。尚、同様の機能を有する部材には、同一符合を付与し、詳細な説明を省略する。
【0133】
図1には、本発明の表示媒体10の一例を示した。
図1(A)に示すように、表示媒体10は、背面基板14、該背面基板14に間隙をもって対向する表面基板22、及び調光層30、を少なくとも含む調光単位セル12を複数含んで構成されている。
【0134】
背面基板14には、第1の電極16、絶縁層18、及び調光層30が順に積層されている。
調光層30は、絶縁層18、間隙部材24、及び表面基板22によって囲まれることによって形成された領域であり、種類毎に、移動度が異なると共に分散状態において異なる発色性を呈する2種類の電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26Bと、絶縁性液体28と、を含む分散液により構成されている。
【0135】
調光層30の外周端部には、絶縁層18に積層されるように、間隙部材24と絶縁層18との境界方向に沿って伸びたライン状の第2の電極20が設けられている。
【0136】
第1の電極16及び第2の電極20には、第1の電極16及び第2の電極20に電圧を印加することにより、調光層30内に電界を形成するための電圧印加部32が信号授受可能に接続されている。なお、上記第1の電極16及び第2の電極20は、本発明の表示媒体の電界形成手段に相当する。
【0137】
表面基板22及び背面基板14は、透明基板によって構成される。
この透明基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコーン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板、金属基板、セラミック基板等の無機基板などが好ましく用いられる。なお、透明基板としては、少なくとも50%以上の光透過率(可視光)を有することが好ましい。
【0138】
絶縁層18の材料としては、特に限定されず、公知の絶縁材料を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、アモルファスフッ素樹脂等を用いることができる。
【0139】
間隙部材24の材料としては、特に限定されず、公知の樹脂材料を用いることができるが、製造上の観点から、感光性樹脂を用いることが好ましい。なお、間隙部材24と電極とを同一の部材により構成することも可能であり、このような場合には、第1の電極16及び第2の電極20を構成する材料により間隙部材24を形成するようにすればよい。
【0140】
間隙部材24の幅(間隙部材24の積層方向に直交する方向の長さ)は、特に限定されるものではないが、一般的には幅が小さい方が、表示素子の解像度の観点より有効であり、通常、1μm〜1mm程度である。
【0141】
間隙部材24の高さ、すなわち、調光層30の層厚は、製造される表示媒体10のサイズや重さ、発色性等により、適宜決定され、一般的には、2〜1000μm程度である。
【0142】
上記部材及び各層は、図示を省略する接着層を介して接着されている。接着層の材料としては、特に限定されず、熱硬化性樹脂、紫外光硬化性樹脂等を使用することができるが、間隙部材24の材料や、調光層30に含まれる絶縁性液体28等の表示媒体10を構成する各部材の材料に影響を与えない材料が選択される。
【0143】
第1の電極16及び第2の電極20としては、少なくとも50%以上の光透過率(可視光)を有する透明電極が用いられる。具体的には、酸化錫−酸化インジウム(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛などに代表される金属酸化物層が好ましく用いられる。また、電極は、これらの材料を単独で用いて形成されていてもよいし、複数種の材料を積層したものであってもよい。なお、第1の電極16及び第2の電極20の厚みや大きさは、表示媒体10によって様々なものが利用でき、特に限定されるものではない。
【0144】
調光層30内に含まれる2種類以上の電荷移動性微粒子26としては、例えば、分散状態において発色される色及び移動度の異なる電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26Bが一例として挙げられる。
【0145】
分散状態における異なる色を呈する電荷移動性微粒子26毎に、移動度が異なるように調製する方法としては、上述のように、電荷移動性微粒子を構成する界面活性剤、及び電荷移動性微粒粒子の表面処理剤等の種類、濃度、及び撹拌処理時間を適宜調整することによって、移動度の異なる電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26Bを作製することができる。
【0146】
次に、図1に示す、本発明における表示媒体10の調光層30における、作用の一例を説明する。
【0147】
なお、図1に示す例では、調光層30中に含まれる電荷移動性微粒子26Aと電荷移動性微粒子26Bの移動度の差が1×10―6cm/Vs、以上異なるものとして、電荷移動性微粒子26Bの移動度が5×10-6cm/Vsであり、電荷移動性微粒子26Aの移動度が1×10-6cm/Vsであるものとして説明する。
【0148】
また、第1の電極20、第2の電極16、及び絶縁層18を透明の材料により構成し、背面基板14として、上記電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26B各々の分散時の色とは異なる色に予め着色された着色基板を用いるものとして説明する。
【0149】
なお、電荷移動性微粒子26Aの分散状態の色、電荷移動性微粒子26Bの分散状態の色、及び背面基板14の色は、互いに異なり且つ、各々赤(R)色、緑(G)色、及び青(B)色の何れかとなるように構成することが好ましい。このように構成することにより、1つの調光層を有する調光単位セルにより、多色(カラー)表示を行うことが可能となる。
【0150】
なお、図1の例では、説明を簡略化するために、電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26Bは、同一極性に帯電し、第2の電極20は電荷移動性微粒子26の逆極性となるように電圧が印加されるものとして説明する。
【0151】
電圧印加部32によって第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されず、調光層30内に電界が形成されていない状態では、図1(A)に示すように、調光層30内に含まれる複数種の電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26B各々は、共に調光層30内において一様に分散された状態にある。
【0152】
図1(A)に示す状態では、視認方向Xから視認されると、電荷移動性微粒子26Aの分散状態において発色される色と、電荷移動性微粒子26Bの分散状態において発色される色の加色混合による色が、調光単位セル12の色として提示される。
【0153】
第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されて、電荷移動性微粒子26Aより移動度の大きい電荷移動性微粒子26Bを調光層30内で選択的に移動可能となるような強度の電界が調光層30内に形成されるように、電圧印加部32によって調光層30内に形成される電界強度が調整されると、図1(B)に示すように、調光層30内の電荷移動性微粒子26Bが第2の電極20側に移動する。
【0154】
図1(B)に示す状態では、電荷移動性微粒子26Aが調光層30内で分散状態となっているため、視認方向Xから視認されると、電荷移動性微粒子26Aの分散状態において発色される色が調光単位セル12の色として提示される。
【0155】
第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されて、電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26Bの双方が調光層30内で移動可能となるような強度の電界が調光層30内に形成されるように、電圧印加部32によって調光層30内に形成される電界強度が調整されると、図1(C)に示すように、調光層30内の電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26B双方が第2の電極20側に移動する。
【0156】
図1(C)に示す状態では、電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26Bが第2の電極20側に凝集し、視認方向Xからは、背面基板14の色が視認される。このため、調光単位セル12の色としては、背面基板14の色が提示される。
【0157】
次に、本発明の表示媒体10の図1とは異なる表示媒体の態様について説明する。
【0158】
他の形態の表示媒体40は、表示媒体10と異なる点は、表示媒体10における電界形成手段としての背面基板14上に層状に設けられた第1の電極16が、ライン状の第1の電極44として、調光層30の外周の一端部に設けられたライン状の第2の電極20に間隙をもって略平行に対向するように、調光層30の外周他端部に設けられている点である。なお、第1の電極44の構成は、図1において説明した第1の電極16と同一の材料によって構成されるため詳細な説明を省略する。
【0159】
他の形態の表示媒体40は、背面基板14、該背面基板14に間隙を空けて対向する表面基板22、及び調光層30を含む、調光単位セル42を複数含んで構成されている。背面基板14には、調光層30及び表面基板22が積層されて構成されている。
なお、表示媒体10の第1の電極16が、ライン状の第1の電極44として第2の電極20の調光層30の外周他端部に設けられており、絶縁層18を有さず背面基板14上に直接調光層30が積層されている以外は、表示媒体40の構成は、表示媒体10と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0160】
第1の電極44及び第2の電極20の線幅(ライン幅)は、特に限定されるものではないが、通常、2μm〜1mm程度である。また、第1の電極44及び第2の電極20の積層方向の層厚は、特に限定されるものではないが、通常、10nm〜1μm程度である。
【0161】
次に、図2に示す、本発明における表示媒体40の調光層30における、作用の一例を説明する。
【0162】
なお、図2に示す例では、図1に示す例と同様に、調光層30中に含まれる電荷移動性微粒子26Aと電荷移動性微粒子26Bの移動度の差が1×10-6cm/Vs、以上異なるものとして、電荷移動性微粒子26Bの移動度が1×10-5cm/Vsであり、電荷移動性微粒子26Aの移動度が1×10-6cm/Vsであるものとして説明する。
【0163】
また、図1と同様に、背面基板14として、上記電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26B各々の分散時の色とは異なる色に予め着色された着色基板を用いるものとして説明する。
【0164】
なお、電荷移動性微粒子26Aの分散状態の色、電荷移動性微粒子26Bの分散状態の色、及び背面基板14の色は、互いに異なり且つ、各々赤(R)色、緑(G)色、及び青(B)色の何れかとなるように構成することが好ましい。このように構成することにより、1つの調光層を有する調光単位セルにより、多色(カラー)表示を行うことが可能となる。
【0165】
なお、図2の例では、説明を簡略化するために、電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26Bは、同一極性に帯電し、第2の電極20は電荷移動性微粒子26の逆極性となるように電圧が印加されるものとして説明する。
【0166】
電圧印加部32によって第1の電極44及び第2の電極20に電圧が印加されず、調光層30内に電界が形成されていない状態では、図2(A)に示すように、調光層30内に含まれる複数種の電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26B各々は、共に調光層30内において一様に分散された状態にある。
【0167】
図2(A)に示す状態では、視認方向Xから視認されると、電荷移動性微粒子26Aの分散状態において発色される色と、電荷移動性微粒子26Bの分散状態において発色される色の加色混合による色が、調光単位セル12の色として提示される。
【0168】
第1の電極44及び第2の電極20に電圧が印加されて、電荷移動性微粒子26Aより移動度の大きい電荷移動性微粒子26Bを調光層30内で選択的に移動可能となるような強度の電界が調光層30内に形成されるように、電圧印加部32によって調光層30内に形成される電界強度が調整されると、図2(B)に示すように、調光層30内の電荷移動性微粒子26Bが第2の電極20側に移動する。
【0169】
図2(B)に示す状態では、電荷移動性微粒子26Aが調光層30内で分散状態となっているため、視認方向Xから視認されると、電荷移動性微粒子26Aの分散状態において発色される色が調光単位セル12の色として提示される。
【0170】
第1の電極44及び第2の電極20に電圧が印加されて、電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26Bの双方が調光層30内で移動可能となるような強度の電界が調光層30内に形成されるように、電圧印加部32によって調光層30内に形成される電界強度が調整されると、図2(C)に示すように、調光層30内の電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26B双方が第2の電極20側に移動する。
【0171】
図2(C)に示す状態では、電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26Bが第2の電極20側に凝集し、視認方向Xからは、背面基板14の色が視認される。このため、調光単位セル42の色としては、背面基板14の色が提示される。
【0172】
なお、図2(A)〜(C)では、調光層30内に電界を形成することによって。第2の電極20側に電荷移動性微粒子26Bまたは、電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26B双方が移動する場合を説明したが、第1の電極44側に移動するように、第1の電極20及び第2の電極44に電圧を印加するようにしてもよい。
【0173】
上記説明したように、電圧印加部32の電界付与手段によって調光層30内に形成される電界強度を調整することにより、2種類の電荷移動性微粒子26の内、1種類の電荷移動性微粒子26Bを、第2の電極20側に移動させ、調光層30内に他の1種類の電荷移動性微粒子26を分散させた状態とする。
また、電圧印加部32の電界付与手段によって調光層30内に形成される電界強度を調整することにより、2種類の電荷移動性微粒子26の双方を第2の電極20側に移動させ、背面基板14の色が視認されるようにする。
【0174】
このように、2種類の電荷移動性微粒子26の内の特定種類の電荷移動性微粒子26のみを凝集状態とし、その他の種類の電荷移動性微粒子26を調光層30内で分散状態とすることにより、調光層30内に分散された各種類の電荷移動性微粒子26の分散状態において発色する色を、調光単位セル42または調光単位セル12の色として表示することができ、調光層30を有する調光単位セル42または調光単位セル12において、多色(カラー)表示を行うことが可能となる。
【0175】
また、上記調光単位セル12、または調光単位セル42を、表示媒体10、または表示媒体40に画像を表示するときの該画像の各画素に対応して複数設けることによって、1画素において、多色(フルカラー)表示を行う事が可能となる。
【0176】
なお、図1及び図2では、調光層30内に、種類毎に移動度及び分散状態において発色された色のことなる2種類の電荷移動性微粒子26を含有する場合を説明したが、種類毎に分散状態において発色される色及び移動度が異なる電荷移動性微粒子であればよく、3種類以上の電荷移動性微粒子26を含有するようにしてもよい。
【0177】
例えば、3種類の電荷移動性微粒子26を調光層30内に含有する場合には、電荷移動性微粒子26として、例えば、移動度の最も近い種類毎に移動度が1×10-6cm/Vs以上異なり、且つ分散状態において発色する色が、赤(R)色、緑(G)色、及び青(B)色の何れかとなるように構成することが好ましい。このように構成することにより、1つの調光層30を有する調光単位セル42または調光単位セル12において、多色(カラー)表示を行うことが可能となる。
【0178】
具体的には、図3(A)に示すように、表示媒体50は、背面基板14、該背面基板14に間隙を空けて対向する表面基板22、及び調光層31を含む調光単位セル52により構成されている。
【0179】
背面基板14には、第1の電極16、絶縁層18、及び調光層31が順に積層されて構成されている。また、調光層31の外周端部には、第2の電極20が設けられている。
【0180】
調光層31は、絶縁層18、間隙部材24、及び表面基板22によって囲まれることによって形成された領域であり、分散状態において発色される色及び移動度の異なる3種類の電荷移動性微粒子26として、電荷移動性微粒子26A、電荷移動性微粒子26B、及び電荷移動性微粒子26Cと、絶縁性液体28を含んで構成されている。
【0181】
なお、図3(A)〜(D)に示す表示媒体50は、図1(A)〜(C)に示す表示媒体10では、調光層30内に2種類の電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26Bが含まれているのに対し、調光層30に換えて調光層31を有し、該調光層31内に3種類の電荷移動性微粒子26(26A、26B、及び26C)を含む構成以外は同一構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0182】
次に、図3に示す、本発明における表示媒体50の調光層31における、作用の一例を説明する。
【0183】
なお、図3に示す例では、調光層31中に含まれる3種類の電荷移動性微粒子26A、電荷移動性微粒子26B、及び電荷移動性微粒子26Cの内、電荷移動性微粒子26B及び電荷移動性微粒子26Cが、マイナスに帯電し、電荷移動性微粒子26Aがプラスに帯電しているものとして説明する。
【0184】
また、電荷移動性微粒子26Bの移動度が5×10-6cm/Vsであり、電荷移動性微粒子26Cの移動度が1×10-6cm/Vsであり、電荷移動性微粒子26Aの移動度が9×10-6cm/Vsであるものとして説明する。
【0185】
電圧印加部32によって第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されず、調光層31内に電界が形成されていない状態では、図3(A)に示すように、調光層31内に含まれる3種類の電荷移動性微粒子26A、電荷移動性微粒子26B、及び電荷移動性微粒子26C各々は、共に調光層31内において一様に分散された状態にある。
【0186】
図3(A)に示す状態では、視認方向Xから視認されると、電荷移動性微粒子26Aの分散状態において発色される色と、電荷移動性微粒子26Bの分散状態において発色される色、及び電荷移動性微粒子26Cの分散状態において発色される色の加色混合による色が、調光単位セル12の色として提示される。
すなわち、図3(A)の状態では、赤(R)色、緑(G)色、及び青(B)色の加色混合による白色が調光単位セル12の色として提示される。
【0187】
第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されて、電荷移動性微粒子26Bを調光層31内で選択的に移動可能となるような強度の電界が調光層30内に形成されるように、電圧印加部32によって調光層31内に形成される電界強度が調整されると共に、第2の電極20側がプラス極となるように第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されると、図3(B)に示すように、調光層31内の電荷移動性微粒子26Bが第2の電極20側に移動する。
【0188】
図3(B)に示す状態では、電荷移動性微粒子26A及び電荷移動性微粒子26Cが調光層31内で分散状態となっているため、視認方向Xから視認されると、電荷移動性微粒子26Aの分散状態において発色される色(青(B)色)と、電荷移動性微粒子26Cの分散状態において発色される色(緑(G)色)と、の加色混合によるシアン(C)色が調光単位セル12の色として提示される。
【0189】
第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されて、電荷移動性微粒子26B及び電荷移動性微粒子26Cの双方が調光層30内で移動可能となるような強度の電界が調光層30内に形成されるように、電圧印加部32によって調光層31内に形成される電界強度が調整されると共に、第2の電極20側がプラス極となるように第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されると、図3(C)に示すように、調光層31内の電荷移動性微粒子26B及び電荷移動性微粒子26Cが第2の電極20側に移動する。
【0190】
図3(C)に示す状態では、電荷移動性微粒子26Aが調光層31内で分散状態となっているため、視認方向Xから視認されると、電荷移動性微粒子26Aの分散状態において発色される色(青(B)色)が調光単位セル12の色として提示される。
【0191】
一方、第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されて、電荷移動性微粒子26Aを調光層31内で選択的に移動可能となるような強度の電界が調光層30内に形成されるように、電圧印加部32によって調光層31内に形成される電界強度が調整されると共に、第2の電極20側がマイナス極となるように第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されると、図3(D)に示すように、調光層31内の電荷移動性微粒子26Aが第2の電極20側に移動する。
【0192】
図3(D)に示す状態では、電荷移動性微粒子26B及び電荷移動性微粒子26Cが調光層31内で分散状態となっているため、視認方向Xから視認されると、電荷移動性微粒子26Bの分散状態において発色される色(赤(R)色)と、電荷移動性微粒子26Cの分散状態において発色される色(緑(G)色)と、の加色混合によるイエロー(Y)色が調光単位セル12の色として提示される。
【0193】
上記説明したように、電圧印加部32によって電界付与手段によって調光層31内に形成される電界強度を調整することにより、3種類の電荷移動性微粒子26の内、1種類の電荷移動性微粒子26を第2の電極20側に移動させ、調光層30内に他の2種類の電荷移動性微粒子26を分散させた状態とする。
【0194】
このように、複数種類の電荷移動性微粒子26の内の特定種類の電荷移動性微粒子26のみを凝集状態とし、その他の種類の電荷移動性微粒子26を調光層31内で分散状態とすることにより、調光層31内に分散された各種類の電荷移動性微粒子の分散状態において発色する色の加色混合による色を、調光単位セル52の色として表示することができ、1つの調光層31を有する調光単位セル52において、多色(カラー)表示を行うことが可能となる。
【0195】
また、上記調光単位セル52を、表示媒体50に画像を表示するときの該画像の各画素に対応して設けることによって、1画素において、多色(フルカラー)表示を行う事が可能となる。
【0196】
なお、本発明の表示媒体は、複数の、上記説明した調光単位セル12、調光単位セル42、または調光単位セル52各々を、表示媒体に画像を表示したときの各画素に対応して背面基板14が同一基板となるように、背面基板の基板面に沿った方向に配列されて構成されるようにしてもよい。
【0197】
具体的には、図5に示すように、表示媒体60を、図1に示した調光単位セル12を背面基板14の基板面に沿った方向に、絶縁層18を介して配列させた構成としてもよい。なお、図5では、図示を省略したが、各調光単位セル12の第1の電極16及び第2の電極20各々に電圧印加可能に電圧印加部32が接続されているものとする。
【0198】
また、本発明の表示媒体は、上記説明した調光単位セル12、調光単位セル42、または調光単位セル52を、表示媒体70に画像を表示したときの各画素に対応して、画素毎に複数積層された構成としてもよい。
【0199】
具体的には、図4に示すように、表示媒体70を、図1に示した調光単位セル12を背面基板14に積層された構成としてもよい。
【0200】
また、図4に示す、図1に示した調光単位セル12を背面基板14に積層された構成を画像の1画素とし、該積層構成を背面基板の基板面に沿った方向に配列させて構成するようにしてもよい。
【0201】
なお、図5及び図4では、調光単位セル12毎に電圧印加部32が設けられる場合を説明したが、表示媒体70及び表示媒体60について1つの電圧印加部を設けるようにし、該電圧印加部により、各表示媒体70及び表示媒体60に含まれる複数の調光単位セル12各々毎に、電圧印加が制御されるようにすればよい。
【0202】
このように調光単位セル12を積層された構成することにより、本発明の表示媒体について、1画素毎に高解像度でフルカラー表示を可能とすることができる。
【0203】
以上説明したように、本発明の表示媒体によれば、種類毎に移動度及び分散状態において異なる発色性を呈する2種類以上の電荷移動性微粒子を調光層に含むことにより、調光層内に同一強度の電界が形成されたときに、移動度の大きい電荷移動性微粒子は、移動度の小さい電荷移動性微粒子に比べて高速に調光層内を移動する。
このため、同一の調光層内に、電界強度に応じて移動しやすい電荷移動性微粒子と移動しにくい電荷移動性微粒子とを含有することで、電界強度を変更して選択的に電荷移動性微粒子を移動させることにより、調光層内に分散させる電荷移動性微粒子を調製することができ、本発明の表示媒体を、高解像度でフルカラー表示が可能な表示媒体とすることができる。
【0204】
具体的には、電圧印加部32の電界付与手段によって調光層内に形成される電界強度を調整することにより、複数種類の電荷移動性微粒子26の内、1種類以上の電荷移動性微粒子26を第2の電極20側に移動させ、調光層30内に分散させる電荷移動性微粒子26の種類を調整する。
このように、複数種類の電荷移動性微粒子26の内の特定種類の電荷移動性微粒子26のみを凝集状態とし、その他の種類の電荷移動性微粒子26を調光層内で分散状態とすることにより、調光層内に分散された各種類の電荷移動性微粒子の分散状態において発色する色の加色混合による色を、調光単位セルの色として表示することができ、調光層を有する調光単位セルにおいて、多色(カラー)表示を行うことが可能となる。
また、該調光単位セルを1画素に対応して設けることで、1画素における多色化(カラー化)が可能となる。
【実施例】
【0205】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。但し、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0206】
(実施例1)
本発明の表示媒体10の一例を、図1を参考に説明する。
まず、厚さ200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる背面基板14上に第1の電極16としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、ライン状にパターンニングした(線幅:300μm)。次に、絶縁層18としてアクリル樹脂層(厚さ:0.1μm)を形成した。
次に、第2の電極20としてアルミニウムを真空蒸着法により50nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチンング法によりライン状にパターンニングした。線幅はおよそ30μmとした。
【0207】
続いて、光感光性ポリイミドワニスを用いて隔壁の為の層を塗布したのち、露光、及びウエットエッチングを行うことにより高さ50μm幅20μmの間隙部材24を形成した。
前記間隙部材24と表面基板22との接合面に熱融着性の接着層を形成した後、間隙部材24内に、下記2種類の粒子を含む液体としての蒸留水28を充填した後、PETよりなる表面基板22に熱をかけて張り合わせて表示媒体10を作製した(図1参照。)。
【0208】
(金コロイド粒子26Aの調製)
1wt%塩化金酸1mlと蒸留水79mlの混合溶液を60℃に保ち、1wt%クエン酸4mlと1wt%タンニン酸4mlの混合溶液を攪拌しながら加えた。その後、100℃で10分間加熱した後、金濃度として0.1wt%まで濃縮し、金コロイド粒子の分散した水溶液を調製した。このようにして調製した金コロイド粒子は、体積平均粒子径10nm、移動度1.1×10-6cm/Vs、分散状態における色は赤色を示していた。
【0209】
(金コロイド粒子26Bの調製)
1wt%塩化金酸1mlと蒸留水79mlの混合溶液を60℃に保ち、1wt%クエン酸4mlと0.1wt%タンニン酸4mlの混合溶液を攪拌しながら加えた。その後、100℃で30分間加熱した後、金濃度として0.1wt%まで濃縮し、金コロイド粒子の分散した水溶液を調製した。このようにして調製した金コロイド粒子は、体積平均粒子径35nm、移動度5.1×10-6cm/Vs、分散状態における色は青色を示していた。
【0210】
すなわち、金コロイド粒子26Aと、金コロイド粒子26Bとの移動度の差は、4×10−6cm/Vsであった。
【0211】
なお、金コロイド粒子26A及び金コロイド粒子26Bは、調光層30内に封入された状態において、双方ともマイナスに帯電されていた。
【0212】
各粒子の移動度は、各粒子を種類毎に調光層30内に封入して上記表示媒体10を作製し、該表示媒体10の第1の電極16及び第2の電極20に、3Vの電圧を印加したときの粒子の移動に伴う色変化を、キーエンス社製VHX-200を用いて観察して求めた。
【0213】
このようにして作製した表示媒体10においては、第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されていない状態では、図1(A)に示すように、金コロイド粒子26A及び金コロイド粒子26Bは、分散状態にあるため、視認方向Xから視認されると、金コロイド粒子26Aの分散状態において発色される赤色と、金コロイド粒子26Bの分散状態において発色される青色と、の加色混合による色(紫色)が、表示媒体10の色として視認された。
【0214】
この表示媒体10の第1の電極16と第2の電極20とに、移動度の大きい金コロイド粒子26Bが第2の電極20側へ移動し、且つ金コロイド粒子26Aの第2の電極20側への移動が困難な程度の電圧2Vを印加した。なお、このとき、第1の電極16がマイナスとなるように電圧を印加した。
このような電圧値の電圧を、第1の電極16及び第2の電極20と、に印加すると、調光層30内の金コロイド粒子26Bが第2の電極20側へ移動し、金コロイド粒子26Aが調光層30内に分散された状態が観察された(図1(B)参照)。
これにより、表示媒体10では、金コロイド粒子26Aの分散状態において発色される色(赤色)が観察された。
【0215】
さらに、この表示媒体10に、金コロイド粒子26B及び金コロイド粒子26Aの双方の粒子の全てが第2の電極20側に移動するような電圧3Vを印加した。なお、このとき、第1の電極16がマイナスとなるように電圧を印加した。
このような電圧値の電圧を、第1の電極16及び第2の電極20に印加すると、調光層30内の金コロイド粒子26B、及び金コロイド粒子26Aの双方の、第2の電極20側への移動が観察された。これにより、透明な絶縁層18及び第1の電極16を透して白色の背面基板14の色(白色)が現れ、白色が、表示媒体10の色として観察された。
【0216】
なお、このような背面基板14の色を表示した状態の表示素子の第1の電極16及び第2の電極20に、交流電圧を印加することにより、金コロイド粒子26B及び金コロイド粒子26Aは、分散状態に戻り、金コロイド粒子26B及び金コロイド粒子26Aの分散状態において発色する色の加色混合による色(紫色)が表示された。
【0217】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様に、本発明の表示媒体10の一例を、図1を参考に説明する。なお、実施例1とは、調光層30内に含まれる金属コロイド粒子の移動度の差が異なる(1×10−6cm/Vs)である場合を説明する。
【0218】
実施例2では、実施例1と同様に、厚さ200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる背面基板14上に第1の電極16としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、ライン状にパターンニングした(線幅:300μm)。次に、絶縁層18としてアクリル樹脂層(厚さ:0.1μm)を形成した。
次に、第2の電極20としてアルミニウムを真空蒸着法により50nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチンング法によりライン状にパターンニングした。線幅はおよそ30μmとした。
【0219】
続いて、光感光性ポリイミドワニスを用いて隔壁の為の層を塗布したのち、露光、及びウエットエッチングを行うことにより高さ50μm幅20μmの間隙部材24を形成した。
【0220】
前記間隙部材24と表面基板22との接合面に熱融着性の接着層を形成した後、間隙部材24内に、下記2種類の粒子を含む絶縁性液体としての蒸留水28を充填した後、PETよりなる表面基板22に熱をかけて張り合わせて表示媒体10を作製した(図1参照。)。
【0221】
(金コロイド粒子26Aの調製)
実施例1にて調整した金コロイド粒子26Aに、金コロイド粒子に対して0.3wt%となるように、ラウリルトリメチルアンモニウム塩を加えて撹拌することにより調整した金コロイド粒子を実施例2の金コロイド粒子26Aとした。このようにして調製した金コロイド粒子26Aは、体積平均粒子径10nm、移動度4×10-cm/Vs、分散状態における色は赤色を示していた。
【0222】
(金コロイド粒子26Bの調製)
実施例1と同様にして調整した金コロイド粒子26Bを使用した。この金コロイド粒子26Bは、体積平均粒子径35nm、移動度5×10-6cm/Vs、分散状態における色は青色を示していた。
【0223】
すなわち、金コロイド粒子26Aと、金コロイド粒子26Bとの移動度の差は、1×10−6cm/Vsであった。
【0224】
なお、金コロイド粒子26A及び金コロイド粒子26Bは、調光層30内に封入された状態において、双方ともマイナスに帯電されていた。
【0225】
このようにして作製した表示媒体10においては、第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されていない状態では、図1(A)に示すように、金コロイド粒子26A及び金コロイド粒子26Bは、分散状態にあるため、視認方向Xから視認されると、金コロイド粒子26Aの分散状態において発色される赤色と、金コロイド粒子26Bの分散状態において発色される青色と、の加色混合による色(紫色)が、表示媒体10の色として観察された。
【0226】
この表示媒体10に、移動度の大きい金コロイド粒子26Bが第2の電極20側へ移動し、且つ金コロイド粒子26Aの第2の電極20側への移動が困難な程度の電圧2Vを印加した。なお、このとき、第1の電極16がマイナスとなるように電圧を印加した。
このような電圧値の電圧を、第1の電極16及び第2の電極20に印加すると、調光層30内の金コロイド粒子26Bが第2の電極20側へ移動し、金コロイド粒子26Aが調光層30内に分散された状態が観察された(図1(B)参照)。これにより、表示媒体10では、金コロイド粒子26Aの分散状態において発色される色(赤色)が観察された。
【0227】
さらに、この表示媒体10に、金コロイド粒子26B及び金コロイド粒子26Aの双方の粒子の全てが第2の電極20側に移動するような電圧3Vを印加した。なお、このとき、第1の電極16がマイナスとなるように電圧を印加した。
このような電圧値の電圧を、第1の電極16及び第2の電極20に印加すると、調光層30内の金コロイド粒子26B、及び金コロイド粒子26Aの双方の、第2の電極20側への移動が観察された。これにより、透明な絶縁層18及び第1の電極16を透して白色の背面基板14の色(白色)が現れ、表示素子は白色表示として観察された。
【0228】
なお、このような背面基板14の色を表示した状態の表示素子の第1の電極16及び第2の電極20に、交流電圧を印加することにより、金コロイド粒子26B及び金コロイド粒子26Aは、分散状態に戻り、金コロイド粒子26B及び金コロイド粒子26Aの分散状態において発色する色の加色混合による色(紫色)が表示された。
【0229】
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同様に、本発明の表示媒体10の一例を、図1を参考に説明する。なお、実施例1とは、調光層30内に含まれる金属コロイド粒子の移動度の差が、0.8×10−6cm/Vsである場合を説明する。
【0230】
実施例3では、実施例1と同様に、厚さ200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる背面基板14上に第1の電極16としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、ライン状にパターンニングした(線幅:300μm)。次に、絶縁層18としてアクリル樹脂層(厚さ:0.1μm)を形成した。
次に、第2の電極20としてアルミニウムを真空蒸着法により50nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチンング法によりライン状にパターンニングした。線幅はおよそ30μmとした。
【0231】
続いて、光感光性ポリイミドワニスを用いて隔壁の為の層を塗布したのち、露光、及びウエットエッチングを行うことにより高さ50μm幅20μmの間隙部材24を形成した。
【0232】
前記間隙部材24と表面基板22との接合面に熱融着性の接着層を形成した後、間隙部材24内に、下記2種類の粒子を含む絶縁性液体としての蒸留水28を充填した後、PETよりなる表面基板22に熱をかけて張り合わせて表示媒体10を作製した(図1参照。)。
【0233】
(金コロイド粒子26Aの調製)
実施例1にて調整した金コロイド粒子26Aに、金コロイド粒子に対して0.6wt%となるように、ラウリルトリメチルアンモニウム塩を加えて撹拌することにより調整した金コロイド粒子を比較例1の金コロイド粒子26Aとした。このようにして調製した金コロイド粒子は、体積平均粒子径10nm、移動度4.2×10-6cm/Vs、分散状態における色は赤色を示していた。
【0234】
(金コロイド粒子26Bの調製)
実施例1と同様にして調整した金コロイド粒子26Bを使用した。この金コロイド粒子は、体積平均粒子径35nm、移動度5×10-6cm/Vs、分散状態における色は青色を示していた。
【0235】
すなわち、金コロイド粒子26Aと、金コロイド粒子26Bとの移動度の差は、0.8×10−6cm/Vsであった。
【0236】
なお、金コロイド粒子26A及び金コロイド粒子26Bは、調光層30内に封入された状態において、双方ともマイナスに帯電されていた。
【0237】
このようにして作製した表示媒体10においては、第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されていない状態では、図1(A)に示すように、金コロイド粒子26A及び金コロイド粒子26Bは、分散状態にあるため、視認方向Xから視認されると、金コロイド粒子26Aの分散状態において発色される赤色と、コロイド粒子26Bの分散状態において発色される青色と、の加色混合による色(紫色)が、表示媒体10の色として観察された。
【0238】
この表示媒体10の第1の電極16と第2の電極20に1.5Vの電圧を印加した。なお、このとき、第1の電極16がマイナスとなるように電圧を印加した。
このような電圧値の電圧を、第1の電極16及び第2の電極20に印加すると、金コロイド粒子26Aも金コロイド粒子26Bも、分散状態を保持したままであり、表示媒体10の色は変化が見られなかった。
【0239】
さらに、この表示媒体10の第1の電極16と第2の電極20に2Vの電圧を印加した。なお、このとき、第1の電極16がマイナスとなるように電圧を印加した。
このような電圧値の電圧を、第1の電極16及び第2の電極20に印加すると、調光層30内の金コロイド粒子26B、及び金コロイド粒子26Aの双方の、第2の電極20側への移動が観察された。これにより、透明な絶縁層18及び第1の電極16を透して白色の背面基板14の色(白色)が現れ、表示素子は白色表示として観察された。
(実施例4)
実施例1〜実施例3には、調光層30内に2種類の金属コロイド粒子が含まれる場合についても実施例を示したが、実施例3では、調光層30内に3種類の金属コロイド粒子が含まれる場合を説明する。
【0240】
実施例4では、本発明の表示媒体50の一例を、図3を参考に説明する。
【0241】
実施例4では、厚さ200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる背面基板14上に第1の電極16としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、ライン状にパターンニングした(線幅:300μm)。次に、絶縁層18としてアクリル樹脂層(厚さ:0.1μm)を形成した。
次に、第2の電極20としてアルミニウムを真空蒸着法により50nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチンング法によりライン状にパターンニングした。線幅はおよそ30μmとした。
【0242】
続いて、光感光性ポリイミドワニスを用いて隔壁の為の層を塗布したのち、露光、及びウエットエッチングを行うことにより高さ50μm幅20μmの間隙部材24を形成した。
前記間隙部材24と表面基板22との接合面に熱融着性の接着層を形成した後、間隙部材24内に、下記3種類の粒子を含む絶縁性液体としての蒸留水28を充填した後、PETよりなる表面基板22に熱をかけて張り合わせて表示媒体50を作製した(図1参照。)。
【0243】
(金コロイド粒子26Aの調製)
1wt%塩化金酸1mlと蒸留水79mlの混合溶液を60℃に保ち、0.005wt%クエン酸4mlと1wt%タンニン酸4mlの混合溶液を攪拌しながら加えた。その後、ラウリル硫酸エステル
ナトリウムを金コロイド粒子に対して0.6wt%となるように加えて、100℃で30分間加熱した後、金濃度として0.1wt%まで濃縮し、金コロイド粒子の分散した水溶液を調製した。このようにして調製した金コロイド粒子は、体積平均粒子径50nm、移動度3.0×10-6cm/Vs、分散状態における色は緑色を示していた。
【0244】
(金コロイド粒子26Bの調製)
実施例1にて調整した金コロイド粒子26Bを実施例3では金コロイド粒子26Bとして使用。この金コロイド粒子は、体積平均粒子径35nm、移動度5.1×10-6cm/Vs、分散状態における色は青色を示していた。
【0245】
(金コロイド粒子26Cの調製)
実施例1にて調整した金コロイド粒子26Aを実施例3では金コロイド粒子26Cとして使用。この金コロイド粒子は、体積平均粒子径10nm、移動度1.1×10-6cm/Vs、分散状態における色は赤色を示していた。
【0246】
なお、金コロイド粒子26A、金コロイド粒子26B、及び金コロイド粒子26Cは、調光層30内に封入された状態において、金コロイド粒子26B、及び金コロイド粒子26Cが、マイナスに帯電し、金コロイド粒子26Aがプラスに帯電していた。
【0247】
このようにして作製した表示媒体50においては、第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されていない状態では、図3(A)に示すように、金コロイド粒子26A、金コロイド粒子26B、及び金コロイド粒子26Cは、分散状態にあるため、視認方向Xから視認されると、金コロイド粒子26Aの分散状態において発色される緑色と、金コロイド粒子26Bの分散状態において発色される青色と、金コロイド粒子26Cの分散状態において発色される青色と、の3色の加色混合による色が、表示媒体50の色として視認された。
【0248】
この表示媒体50に、3種の金属コロイド粒子の内、移動度の最も大きい金コロイド粒子26Bが第2の電極20側へ移動し、且つ金コロイド粒子26A及び金コロイド粒子26Cの第2の電極20側への移動が困難な程度の電界が形成されるように、第1の電極16と第2の電極20に2Vの電圧を印加した。なお、このとき、第1の電極16がマイナスとなるように電圧を印加した。
【0249】
このような電圧値の電圧を、第1の電極16及び第2の電極20に印加すると、調光層30内の金コロイド粒子26Bが第2の電極20側へ移動し、金コロイド粒子26A及び金コロイド粒子26Cが調光層30内に分散された状態が観察された(図3(B)参照)。
これにより、表示媒体50では、金コロイド粒子26Cの分散状態において発色される色である赤色と、金コロイド粒子26Aの分散状態において発色される色である緑色の加色混合による黄色が観察された。
【0250】
さらに、この表示媒体10に、金コロイド粒子26B及び金コロイド粒子26Cの双方の粒子が第2の電極20側に移動するような電界が調光層30内に形成されるように、第1の電極16と第2の電極20に3Vの電圧を印加した。なお、このとき、第1の電極16がマイナスとなるように電圧を印加した。
このような電圧値の電圧を、第1の電極16及び第2の電極20に印加すると、調光層30内の金コロイド粒子26B、及び金コロイド粒子26Cの双方の、第2の電極20側への移動が観察された。これにより、調光層30内には、金コロイド粒子26Aが分散された状態となり、金コロイド粒子26Aの分散状態において発色される色(緑色)が、表示媒体50の色として観察された。
【0251】
一方、この表示媒体10に、金コロイド粒子26Aが第2の電極20側に移動するような電界が調光層30内に形成されるように、第1の電極16と第2の電極20に2.5Vの電圧を印加した。なお、このとき、第1の電極16がプラスとなるように電圧を印加した。
このような電圧値の電圧を、第1の電極16及び第2の電極20に印加すると、調光層30内の金コロイド粒子26Aの電極20側への移動が観察された。これにより、調光層30内には、金コロイド粒子26B及び金コロイド粒子26Cが分散された状態となり、金コロイド粒子26Bの分散状態において発色される色(青色)と、金コロイド粒子26Cの分散状態において発色される色(赤色)と、の加色混合による色(紫色)が、表示媒体50の色として観察された。
【0252】
(実施例5)
実施例1〜実施例4には、調光層30内に含有されるコロイド粒子は、金コロイド粒子である場合を説明したが、実施例5では、調光層30内に含まれるコロイド粒子が銀コロイド粒子である場合を説明する。
【0253】
実施例5では、実施例2と同様に、本発明の表示媒体10の一例を、図1を参考に説明する。
なお、実施例2とは、調光層30内に含まれる金属コロイド粒子の金属種が異なる場合を説明する。
実施例5では、厚さ200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる背面基板14上に第1の電極16としてITOをスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、ライン状にパターンニングした(線幅:300μm)。次に、絶縁層18としてアクリル樹脂層(厚さ:0.1μm)を形成した。
次に、第2の電極20としてアルミニウムを真空蒸着法により50nmの厚さで成膜し、フォトリソグラフィー法、及びドライエッチンング法によりライン状にパターンニングした。線幅はおよそ30μmとした。
【0254】
続いて、光感光性ポリイミドワニスを用いて隔壁の為の層を塗布したのち、露光、及びウエットエッチングを行うことにより高さ50μm幅20μmの間隙部材24を形成した。
前記間隙部材24と表面基板22との接合面に熱融着性の接着層を形成した後、間隙部材24内に、下記2種類の粒子を含む蒸留水28を充填した後、PETよりなる表面基板22に熱をかけて張り合わせて表示媒体10を作製した(図1参照。)。
【0255】
(銀コロイド粒子26Aの調製)
2−エチルヘキシル酸銀のシクロヘキサン溶液(0.05wt%)の10mlに、ドデシル硫酸ナトリウムのエタノール溶液(0.5wt%)を5ml加えて撹拌した後、アスコルビン酸のエタノール溶液(0.02wt%)を5ml加え、50℃で10分間加熱した。このようにして調整した銀コロイド粒子を実施例5の銀コロイド粒子26Aとした。このようにして調製した銀コロイド粒子は、体積平均粒子径5nm、移動度4.2×10-6cm/Vs、分散状態における色は黄色を示していた。
【0256】
(銀コロイド粒子26Bの調製)
2−エチルヘキシル酸銀のシクロヘキサン溶液(0.05wt%)の10mlに、ドデシル硫酸ナトリウムのエタノール溶液(0.05wt%)を5ml加えて撹拌した後、アスコルビン酸のエタノール溶液(0.1wt%)を5ml加え、50℃で30分間加熱した。このようにして調整した銀コロイド粒子を実施例**の銀コロイド粒子26Bとした。このようにして調製した銀コロイド粒子は、体積平均粒子径40nm、移動度5.2×10-6cm/Vs、分散状態における色は赤色を示していた。
【0257】
すなわち、銀コロイド粒子26Aと、銀コロイド粒子26Bとの移動度の差は、1.0×10−6cm/Vsであった。
【0258】
なお、銀コロイド粒子26A及び銀コロイド粒子26Bは、調光層30内に封入された状態において、双方ともプラスに帯電されていた。
【0259】
このようにして作製した表示媒体10においては、第1の電極16及び第2の電極20に電圧が印加されていない状態では、図1(A)に示すように、銀コロイド粒子26A及び 銀コロイド粒子26Bは、分散状態にあるため、視認方向Xから視認されると、銀コロイド粒子26Aの分散状態において発色される黄色と、コロイド粒子26Bの分散状態において発色される赤色との混合による色(橙色)が、表示媒体10の色として観察された。
【0260】
この表示媒体10に、移動度の大きい銀コロイド粒子26Bが第2の電極20側へ移動し、且つ 銀コロイド粒子26Aの第2の電極20側への移動が困難な程度の電圧2Vを印加した。なお、このとき、第1の電極16がプラスとなるように電圧を印加した。
【0261】
このような電圧値の電圧を、第1の電極16及び第2の電極20に印加すると、調光層30内の銀コロイド粒子26Bが第2の電極20側へ移動し、銀コロイド粒子26Aが調光層30内に分散された状態が観察された(図1(B)参照)。これにより、表示媒体10では、銀コロイド粒子26Aの分散状態において発色される色(黄色)が観察された。
【0262】
さらに、この表示媒体10に、銀コロイド粒子26B及び銀コロイド粒子26Aの双方の粒子の全てが第2の電極20側に移動するような電圧3Vを印加した。なお、このとき、第1の電極16がプラスとなるように電圧を印加した。
このような電圧値の電圧を、第1の電極16及び第2の電極20に印加すると、調光層30内の銀コロイド粒子26B、及び銀コロイド粒子26Aの双方の、第2の電極20側への移動が観察された。これにより、透明な絶縁層18及び第1の電極16を透して白色の背面基板14の色(白色)が現れ、表示素子は白色表示として観察された。
【0263】
なお、このような背面基板14の色を表示した状態の表示素子の第1の電極16及び第2の電極20に、交流電圧を印加することにより、銀コロイド粒子26B及び銀コロイド粒子26Aは、分散状態に戻り、銀コロイド粒子26B及び銀コロイド粒子26Aの分散状態において発色する色(橙色)が表示された。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】本発明の表示媒体について、調光層に2種類の電荷移動性微粒子が含まれる場合の一例を示す模式図であり、(A)は、調光層内に2種類の電荷移動性微粒子全てが分散された状態、(B)は、2種類の内の一方の電荷移動性微粒子が分散された状態、(C)は、全ての電荷移動性微粒子が一方の電極側へ凝集された状態を示す模式図である。
【図2】本発明の表示媒体について、調光層に2種類の電荷移動性微粒子が含まれる場合の図1とは異なる構成の一例を示す模式図であり、(A)は、調光層内に2種類の電荷移動性微粒子全てが分散された状態、(B)は、2種類の内の一方の電荷移動性微粒子が分散された状態、(C)は、全ての電荷移動性微粒子が一方の電極側へ凝集された状態を示す模式図である。
【図3】本発明の表示媒体について、調光層に3種類の電荷移動性微粒子が含まれる場合の一例を示す模式図であり、(A)は、調光層内に3種類の電荷移動性微粒子全てが分散された状態、(B)は、3種類の内の1種類の電荷移動性微粒子が一方の電極側へ凝集された状態、(C)は、3種類の内の1種類の電荷移動性微粒子が分散された状態、(D)は、3種類の内の(B)とは異なる1種類の電荷移動性微粒子が一方の電極側へ凝集された状態、を示す模式図である。
【図4】本発明の表示媒体について、調光単位セルが積層された構成の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の表示媒体について、調光単位セルが背面基板の板面に沿った方向に配列された構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0265】
10、40、50、60、70 表示媒体
16、44 第1の電極
20 第2の電極
26、26A、26B、26C 電荷移動性微粒子
30、31 調光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種類毎に、分散状態で異なる発色性を呈すると共に移動度の異なる2種類以上の電荷移動性微粒子を含む調光層を有する表示媒体。
【請求項2】
2種類以上の前記電荷移動性微粒子は、最も近い移動度の種類間における移動度の差が1×10―6cm/Vs以上であることを特徴とする請求項1に記載の表示媒体。
【請求項3】
前記電荷移動性微粒子は、種類毎に分散状態で赤色、緑色、及び青色の何れかの発色性を呈することを特徴とする請求項1に記載の表示媒体。
【請求項4】
前記電荷移動性微粒子は高分子樹脂中に分散されている請求項1に記載の表示媒体。
【請求項5】
前記電荷移動性微粒子がプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子である請求項1に記載の表示媒体。
【請求項6】
前記金属コロイド粒子が金又は銀である、請求項5に記載の表示媒体。
【請求項7】
前記電荷移動性微粒子の体積平均粒径が1nm〜100nmの範囲内である請求項1に記載の表示媒体。
【請求項8】
前記電荷移動性微粒子の体積平均粒径が2nm〜50nmの範囲内である請求項7に記載の表示媒体。
【請求項9】
前記調光層を含む調光単位セルを複数有し、前記調光単位セルが背面基板に積層されて構成される請求項1に記載の表示媒体。
【請求項10】
前記調光層を含む調光単位セルを複数有し、前記調光単位セル各々が背面基板の基板面に沿った方向に配列されて構成される請求項1に記載の表示媒体。
【請求項11】
種類毎に、分散状態で異なる発色性を呈すると共に移動度の異なる2種類以上の電荷移動性微粒子を含む調光層と、前記調光層内に電界を形成する電界形成手段とを有する、表示素子。
【請求項12】
前記電界形成手段は、前記調光層内を移動させる前記電荷移動性微粒子に応じた強度の電界を前記調光層内に形成する請求項11に記載の表示素子。
【請求項13】
前記電界形成手段は、一対の電極を含んで構成される請求項11に記載の表示素子。
【請求項14】
前記一対の電極の少なくとも一方が、前記調光層の外周端部に設けられていることを特徴とする請求項13に記載の表示素子。
【請求項15】
2種類以上の前記電荷移動性微粒子は、最も近い移動度の種類間における移動度の差が1×10―6cm/Vs以上であることを特徴とする請求項11に記載の表示素子。
【請求項16】
前記電荷移動性微粒子は、種類毎に分散状態で赤色、緑色、及び青色の何れかの発色性を呈することを特徴とする請求項11に記載の表示素子。
【請求項17】
前記電荷移動性微粒子は高分子樹脂中に分散されている請求項11に記載の表示素子。
【請求項18】
前記電荷移動性微粒子がプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子である請求項11に記載の表示素子。
【請求項19】
前記金属コロイド粒子が金又は銀である、請求項18に記載の表示素子。
【請求項20】
前記電荷移動性微粒子の体積平均粒径が1nm〜100nmの範囲内である請求項11に記載の表示素子。
【請求項21】
前記調光層を含む調光単位セルを複数有し、前記調光単位セルが背面基板に積層されて構成される請求項11に記載の表示素子。
【請求項22】
前記調光層を含む調光単位セルを複数有し、前記調光単位セル各々が背面基板の基板面に沿った方向に配列されて構成される請求項11に記載の表示素子。
【請求項23】
種類毎に分散状態で異なる発色性を呈すると共に、種類毎に移動度の異なる2種類以上の電荷移動性微粒子を含む調光層を備えた表示媒体を用いた表示方法であって、
前記2種類以上の電荷移動性微粒子の全てを分散状態とする工程と、
前記2種類以上の電荷移動性微粒子の内、少なくとも1種類の電荷移動性微粒子を分散状態とし、且つ前記分散状態とする電荷移動性微粒子の他の種類の電荷移動性微粒子を非分散状態とする工程と、
を含む表示方法。
【請求項24】
前記2種類以上の電荷移動性微粒子の全てを非分散状態とする工程をさらに有する、請求項23に記載の表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−147838(P2007−147838A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340093(P2005−340093)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)