説明

表示媒体用粒子およびこれを用いた情報表示用パネル

【課題】流動性と共に帯電性能も改善できる外添剤を付着させた複合型の表示媒体用粒子を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明な2枚の基板間に光学的反射率および帯電性を有する表示媒体を封入し、前記表示媒体に帯電を付与することによって移動させて情報を表示する情報表示用パネルで使用される表示媒体用粒子において、前記表示媒体用粒子が、母粒子32およびその表面に子粒子33が固着されている複合型粒子31として構成されると共に、当該複合型粒子の表面に、親・疎水度が異なる2種以上の外添剤34a、34bが付加してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に粒子群として構成した表示媒体を封入し、この表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルに係る技術に関し、特に表示媒体を構成する表示媒体用粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
情報表示装置として液晶表示装置(LCD)が広く普及している。しかし、一般に液晶表示装置は電力消費量が大きく、視野角が狭いなどの欠点があることが知られていた。そこで、液晶表示装置に代わるものとして、少なくとも一方が透明な2枚の基板(例えばガラス基板)間に隔壁によって仕切られた複数のセルを形成し、このセル内に粒子群として構成した表示媒体を封入して、この表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルが近年、注目されている。
【0003】
上記のような情報表示用パネルは、例えば基板間の表示媒体を、画像等の情報に応じて電気的に移動させることにより所期の画像等を表示するようにしている。ここでは、表示要求のあった情報に応じて、表示媒体用粒子(粒子群)が基板間の空間を繰り返し移動する。そして、移動後に改めて書き換えのための電界が印加されない間は、その状態を維持して画像等を安定して表示し続けることができるので電力消費量を抑えることができるという優れた長所がある。
【0004】
上記情報表示用パネルで採用される表示媒体用粒子に関しては、粒子の流動性や帯電特性などを改善する目的で、外添剤と称される微粒子を表面に付与する技術が従来から提案されている。例えば、特許文献1はこのような外添剤を付着させた表示媒体用粒子について開示している。
【0005】
また、表示媒体用粒子に関しては、その電気特性の安定化や繰り返し表示書き換えを行った場合の帯電性や耐久性を改善する意図で、表示媒体用粒子の本体となる母粒子の表面にこの母粒子より小径の子粒子を付加した、いわゆる複合型の粒子についての提案もされている。例えば、特許文献2は複合型の表示媒体用粒子、およびこれを用いる情報表示用パネルについて開示しており、表示書き換えのために繰り返し移動させた場合の耐久性を改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−64815号公報
【特許文献2】特開2006−72283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記複合型の表示媒体用粒子の表面に前述した外添剤を付加することで、表示粒子としての流動性や帯電性能の改善が図られることが期待される。一般に粒子を表示媒体用粒子として構成する際、粒子と電極間、および粒子同士の付着力を下げ、粒子の流動性を上げるため、粒子表面に外添剤が付加される。このような外添剤としては無機粒子が用いられる場合が多いが、無機粒子は表示媒体用粒子の電荷保持力を下げるため、駆動時に十分な帯電量が得られないことになる。そこで、外添剤とする無機粒子の表面を処理することにより疎水化して電荷保持力を向上させるための対処がされる。ところが、その一方で粒子表面の疎水度が高くなると、局所的に強く帯電して、粒子間あるいは粒子−電極間の付着力が強くなり、表示性能を低下させる場合がある。この局所電荷を拡散させて電荷の均一化するためには、粒子表面をある程度、親水性とすることが必要となる。疎水性と親水性とは、相反する性質であるので、1つの外添剤でこれらを調整することには困難がある。更に、従来にあっては、表示媒体用粒子に単一の外添剤を用いるのが一般的であり、この場合には採用した外添剤の親疎水性によって電荷保持力および電荷拡散能が一意的に決まってしまうので、期待した帯電性能を備えた表示媒体用粒子を得ることが困難となっている。
【0008】
よって、本発明の目的は、流動性と共に帯電性能も改善できる外添剤を付着させた複合型の表示媒体用粒子を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に光学的反射率および帯電性を有する表示媒体を封入し、前記表示媒体に帯電を付与することによって移動させて情報を表示する情報表示用パネルで使用される表示媒体用粒子において、
前記表示媒体用粒子が、母粒子およびその表面に子粒子が固着されている複合型粒子として構成されると共に、当該複合型粒子の表面に、親・疎水度が異なる2種以上の外添剤が付加してある、ことを特徴とする表示媒体用粒子により達成できる。
【0010】
また、前記外添剤は無機微粒子の表面に、表面処理を施して、親・疎水度が異なるように形成したものとすることができる。
【0011】
また、メタノール濡れ試験により親・疎水度を判定し、相対的に親水性である無機微粒子と相対的に疎水性の無機微粒子との混合割合を80:20〜20:80として前記外添剤を形成することができる。
【0012】
上記の表示媒体用粒子は流動性だけでなく帯電性能にも優れるので、これを用いた情報表示用パネルは、表示性能に優れ、長期に安定した表示を行える表示デバイスとして提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による複合型の表示媒体用粒子では、親・疎水度が異なる2種以上の外添剤を用いているので、適宜に混合(ブレンド)した結果に応じて、粒子の電荷保持力および電荷拡散性を調整できる。よって、本発明による複合型の表示媒体用粒子は、帯電設計に自由度を持たせることができるので、流動性だけでなく帯電性能に改善できる外添剤を付着させた表示粒子とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)、(b)は本発明の製造方法で作製した表示媒体用粒子を用いた一例となる帯電粒子移動方式の情報表示用パネルの原理的構成を説明するために示した図である。
【図2】(a)、(b)は本発明の製造方法で作製した表示媒体用粒子を用いた一例となる帯電粒子移動方式の情報表示用パネルの他の原理的構成を説明するために示した図である。
【図3】本願発明に係る複合型の表示媒体用粒子を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る表示媒体用粒子に好適な粒子の構成を、図面に基づき詳細に説明する。ここでは、本発明の理解を容易とするため、表示媒体用粒子として帯電型の粒子を採用し、この表示媒体用粒子を移動して画像等を表示する移動方式の情報表示用パネルを一例として、その概略構成を先ず説明する。
【0016】
前記帯電粒子移動方式の情報表示用パネルは、対向する2枚の基板間の空間に封入した帯電性を有する母粒子およびその表面に子粒子を有する複合型の表示媒体用粒子で構成した粒子群に電界が付与される。付与された電界方向に沿って、表示媒体用粒子が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体用粒子が電界方向の変化によって移動することにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体用粒子が、均一に移動し、かつ、繰り返し表示情報を書き換える時、或いは表示情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する表示媒体用粒子にかかる力は、電界による力、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0017】
本発明の表示媒体用粒子を表示媒体として用いる前記情報表示用パネルの例を、図1(a)、(b)および図2(a)、(b)を参照して説明する。
図1(a)、(b)に示す例は、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する表示媒体用粒子を含んだ粒子群として構成される互いに光学的反射率および帯電特性が異なる少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(TFT付き画素電極)と基板2に設けた電極6(共通電極)とで形成する電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色表示、あるいは、図1(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色表示をするなど、白黒ドットマトリックス表示をすることができる。
なお、図1(a)、(b)においては、手前にある隔壁は省略している。各電極5、6は、基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。画素(ドット)とセルとを1対1に対応させた例を示しているが、画素とセルとは対応させなくてもよい。
【0018】
また、図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成される互いに光学的反射率および帯電特性が異なる少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(ライン電極)と基板2に設けた電極6(ライン電極)とが対向直交交差に形成する画素電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色表示、あるいは、図2(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示をするなど、白黒のドットマトリックス表示をすることができる。
なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。各電極5、6は、基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。画素(ドット)とセルとを1対1に対応させた例を示しているが、画素とセルとは対応させなくてもよい。
【0019】
なお、上記基板1、2としては、ガラス基板、樹脂シート基板、樹脂フィルム基板等の基板を用いることができる。表示面側(観察側)とする基板2は、透明基板とする。この基板2の情報表示画面領域に、所定の電圧および極性(正・負)を有する電圧を印加するための電極(図1などで説明した、共通電極またはライン電極5)を配設する場合には透明電極とする。図1及び図2に示した情報表示用パネルを構成する基板1の表面には、マトリックス状電極対を構成するように薄膜トランジスタ(TFT)付き画素電極もしくはライン電極が形成されている。この対向電極対に電圧を印加したときに、表示媒体(粒子群)に電界が印加されることによって移動して所望の表示を行う前述の構造を実現できる。
【0020】
前述した基板としては、少なくとも一方の基板はパネル外側から表示媒体の色が確認できる透明基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。もう一方の基板となる背面基板は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルフィン(PES)、アクリル等の有機高分子系基板や、ガラスシート、石英シート、金属シート等を用い、表示面側にはこのうち透明なものを用いる。基板の厚みは、2〜2000μmが好ましく、さらに5〜1000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、2000μmより厚いと、薄型情報表示用パネルとする場合に不都合となる。
【0021】
必要に応じて、上記基板に設ける電極の形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類や酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛アルミニウム(AZO)、酸化インジウム、導電性酸化錫、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピローラ、ポリチオフェンなどの導電性高分子類を例示でき、これらを適宜に選択して用いることができる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状にパターニング形成する方法や、金属箔をラミネートする方法(例えば圧延銅箔法)や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布してパターニング形成する方法を用いることができる。
視認側(表示面側)基板の情報表示画面領域に設ける電極は透明である必要があるが、情報表示画面領域外や背面側基板に設ける電極は透明である必要がない。いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmが好適である。背面側基板に設ける電極の材質や厚みなどは上述した表示面側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。
【0022】
基板に設ける隔壁については、その形状は表示にかかわる表示媒体の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmである。隔壁の高さは、基板間ギャップ以内で、基板用ギャップ確保用部分は基板間ギャップと同じに、それ以外のセル形成用部分は基板間ギャップと同じか、それよりも低くすることができる。また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に用いられる。隔壁の高さは、基板間距離に合わせるが、部分的に基板間距離よりも低くすることもできる。
これらのリブからなる隔壁により形成されるセルは、その形状として例えば基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方がよく、表示状態の鮮明さを増すことができる。
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示装置に搭載する情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法を好適に用いられる。
【0023】
さらに、本発明の対象となる表示媒体用粒子について詳細に説明する。本発明の表示媒体用粒子は、図1(a)、(b)及び図2(a)、(b)の情報表示用パネルなどに適用でき、2枚の基板の間に表示媒体を構成して封入されるものである。そして、特に、本発明の表示媒体用粒子は、粒子本体となる母粒子の表面に複数の子粒子が固着された複合型粒子であり、かつ、その表面には親・疎水度が異なる2種以上の外添剤を付着させた新規な形態に形成してある。
なお、外添剤の親・疎水度は、例えば後述するメタノール濡れ試験などで測定できる。そして、このメタノール濡れ試験で得た結果に基づいて、親・疎水度が異なる外添剤を確認すればよい。
そして、本発明では外添剤として、少なくとも、一方を親水傾向が強い粒子、他方を疎水傾向が強い粒子を採用している。このように親・疎水度が異なる外添剤を適宜に混合し、その結果として表示媒体用粒子について所望の帯電性能を得るようにすればよい。
【0024】
本発明に適用可能な外添剤としては、例えばシリカ、チタニア、アルミナなどの無機粒子を用い、その表面に異なる表面処理を施して、親・疎水度が異なる外添剤を形成すればよい。ここでの表面処理法としてはシランカップリング剤、シリコーンオイルなどを用いて行える。また、親・疎水度は、用いる処理剤の量、処理剤に含まれる官能基の種類や量などをコントロールすることで制御できる。なお、上記母粒子の粒径は例えば1μm〜20μm、子粒子の粒径は例えば50nm〜500nmであり、上記外添剤の粒径は例えば5〜100nm程度である。
【0025】
図3は本願発明に係る、表面に外添剤が付加されている複合型の表示媒体用粒子31の様子を模式的に示した図である。図3(a)で示すように母粒子32の表面の一部をへこませて子粒子33を埋没状態で固着させた形態の複合型粒子31でもよいし、図3(b)で示すように母粒子32の表面上に子粒子33を固着させた形態の複合型粒子31でもよい。そして、図3(a)、(b)に示すように、複合粒子31の表面には、親・疎水度が異なる2種以上(図3では2種の場合を例示)の外添剤34aと外添剤34bが付与されている。
【0026】
以下、更に、本願発明に係る表示媒体用粒子の各構成を順に説明する。
先ず、複合型の表示媒体用粒子の母粒子について説明する。母粒子の主成分となるベース樹脂は熱可塑性樹脂とするのが好ましく、必要に応じて、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含めることができる。以下で樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0027】
表示媒体用粒子の母粒子は、その主成分となるベース樹脂に着色剤として顔料を含み、更に必要に応じて、荷電制御剤、無機添加剤等を含ませることができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0028】
母粒子用のベース樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、メタクリル樹脂、メチルペンテン樹脂、シクロオレフィン樹脂等が挙げることができる。これらを、2種以上混合してもよい。また、予め重合した樹脂を粉砕処理したものを使用してもよいし、懸濁重合で形成したもの使用してもよい。なお、懸濁重合の場合、その容易さからアクリル樹脂、アクリルフッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂が好適である。
【0029】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0030】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0031】
また、黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0032】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0033】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。上記着色剤を配合して所望の色の表示媒体用粒子前駆体である母粒子を作製できる。
【0034】
そして、図3上記母粒子32の表面に固着される上記子粒子33としては、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどのような無機材料による微粒子を採用してもよいし、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などの有機材料による微粒子を採用してもよい。
【0035】
なお、本発明により製造される表示媒体用粒子は平均粒子径d(0.5)が、1〜20μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなり過ぎるために表示媒体としての移動に支障をきたすようになる。
【0036】
さらに本発明では、各表示媒体用粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Span(スパン)を5未満、好ましくは3未満とするのが望ましい。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な表示媒体としての移動が可能となる。
【0037】
さらにまた、帯電極性が互いに異なる2種類の表示媒体用粒子を用いて構成した2種類の表示媒体を用いた情報表示用パネルでは、平均粒子径d(0.5)が大きい方の表示媒体の平均粒径と平均粒子径d(0.5)が小さい方の表示媒体の平均粒径との比を10以下とすることが肝要である。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電極性の異なる表示媒体用粒子が互いに反対方向に動くので、互いの粒子サイズを同程度にし、互いの表示媒体用粒子が反対方向に容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0038】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザ回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザ光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。例えば、Mastersizer2000(シスメックス(株))測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフトにて、粒子径および粒子径分布の測定を行うことができる。
【0039】
さらに、表示媒体用粒子で構成する表示媒体を気体中空間で駆動させる乾式の情報表示用パネルでは、基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、上記図1(a)、(b)、図2(a)、(b)において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6(電極を基板の内側に設けた場合)、表示媒体3の占有部分、隔壁4の占有部分、情報表示用パネルのシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示用パネルに封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、情報表示用パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0040】
本発明による表示媒体用粒子が採用される情報表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに、帯電粒子移動方式の情報表示用パネルでは10〜100μm、好ましくは10〜50μmに調整される。
対向する基板間の気体中空間における表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。なお、70%を超える場合には表示媒体の移動に支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【0041】
以下、更に、本発明の実施例として製造した、親・疎水度が異なる2種類の外添剤を付着させた複合型粒子の表示媒体用粒子について説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
樹脂ベースで形成される母粒子を、以下に示すように、混練りおよび粉砕方法により作製し、母粒子表面に子粒子を固着する処理を施して複合化した粒子を形成し、更に下記の表1に示すように外添剤を付与して、実施例および比較例の表示媒体用粒子を作製した(図3参照)。それぞれの表示媒体用粒子をパネルに充填した後、電圧印加により画像を表示させてその性能を評価した。
【0043】
外添剤の親・疎水度は、下記のようにメタノール濡れ試験により判定した。
具体的には、下記表1に示す外添剤を使用した。メタノール濡れ試験は、濃度の異なるメタノール水溶液をバイアル瓶に10gずつ用意し、それぞれの溶液に表1に示す外添剤を0.1gずつ入れた。バイアル瓶の蓋を閉め、瓶を手で10回ほど振盪した。メタノール濃度が高いほど外添剤は水溶液に分散しやすいが、外添剤表面疎水度が高いほど高濃度のメタノール漏れ試験において分散する。試験において、メタノール濃度を徐々に高くしていき、外添剤が初めて分散したときのメタノール濃度を外添剤表面疎水度の特性値とした。本試験においては、メタノール0%から5%ずつ濃度を高くしていき、外添剤の分散性の評価を行った。
【0044】
【表1】

【0045】
表示媒体用粒子の作製方法について
1)母粒子の作製方法
ベース樹脂(TOPAS 5013:ポリプラスチックス(株)製)、100重量部と、顔料として二酸化チタン(TiO2)(タイペークCR-90:石原産業(株)製)100重量部とを2軸混練機により溶融混練して、ペレットを製造して一旦、粗粉砕品とし、これを更に粒子径9μmをピークとして微粉砕した。
得られた粉砕粒子をメテオレインボーMR-10(日本ニューマチック(株)社製)により550℃の条件で処理し、白粒子用の球形母粒子を得た。
黒粒子用の母粒子は、顔料に二酸化チタンの代わりにカーボンブラック(三菱化学社製)5重量部を用い、上記と同様の方法で作製した。
2)複合粒子の作製方法
白母粒子に対し、子粒子としてポリスチレン系微粒子(粒径280nm)を所定の割合で混合し、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)にて処理し、白複合粒子を得た。
黒母粒子に対しては、子粒子としてメラミン系微粒子(粒径240nm)を所定の割合で混合し、同様の処理により正帯電粒子を得た。
【0046】
外添剤処理
白複合粒子100重量部に対し、表1に示した外添剤を、それぞれ下記表2に示した配合比で、合計1.5重量部となるように混合し、ヘンシェルミキサーにて処理し、白色表示媒体用粒子を得た。
黒複合粒子100重量部に対し、外添剤としてヒュームドシリカ(H3050:Wacker社製)1.5重量部を同様の方法により処理し、黒色表示媒体用粒子を得た。これらを実施例1〜6とした。また、外添剤A〜外添剤Dだけを付加した場合を比較例1〜4とし、更に親疎水度の異なる外添剤の配合の差を大きくした場合を比較例5、6とした。
【0047】
パネル充填について
上述した方法に従って作製した白色表示媒体用粒子の一種と所定の黒色表示媒体用粒子とを組み合わせて、透明電極(ITO)が成膜されているパネル間に充填し、実施例および比較例の評価パネルを作製した。
【0048】
パネル評価について
作製した実施例および比較例の各々の評価パネルの電極間に100Vの電圧を電圧の向きを変えて印加することで、評価パネルにおいて白表示および黒表示を行った。そして、白表示および黒表示のそれぞれにおいて、光学濃度計:RD19(サカタインクスエンジニアリング社)を用いてOD値(光学濃度)の測定を行った。白表示のOD:WODと黒表示のOD:BODをもとにコントラストCR=10(|BOD−WOD|)を算出し、これをパネル性能の指標とした。
15秒間隔で書き換えを行った際のコントラストを短間欠CR、1時間間隔で書き換えを行った際のコントラストを長間欠CRとし、◎(CR≧7)、○(7>CR≧5)、×(5>CR)の3段階で採点した。各外添配合での評価結果を下記表2にまとめた。
【0049】
【表2】

【0050】
表2から親・疎水度が異なる外添剤を混合する実施例の表示媒体用粒子の方が帯電性能に優れていることが確認できる。
下記の表3は、実施例に基づくベストモードをまとめた表である。
【0051】
【表3】

【0052】
メタノール濡れ試験により親・疎水度を判定し、相対的に親水性外添剤として親・疎水度10〜35%のものを採用するのが好ましい。また、相対的に疎水性外添剤として親・疎水度40〜70のものを採用するのが好ましい。そして、上記表2から相対的に親水性である無機微粒子による外添剤と相対的に疎水性のである無機微粒子による外添剤との混合割合を80:20〜20:80とするのが好ましい。
【0053】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。上記実施例では、2種類の外添剤を用いる場合を例示したが必要に応じて3種以上としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る表示媒体用粒子を採用する情報表示用パネルは、ノートパソコン、電子手帳、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子書籍、電子新聞、電子マニュアル(電子取扱説明書)等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板やホワイトボード等の掲示板、電子卓上計算機、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、情報ボード、電子POP(Point Of Presence、Point Of Purchase advertising)、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部のほか、POS端末、カーナビゲーション装置、時計など様々な電子機器の表示部に好適に用いられる。他に、表示書換え時にのみ外部電界形成手段や外部書換え手段を用いて表示を書換えるいわゆるリライタブルペーパーとしても好適に用いられる。
【符号の説明】
【0055】
1、2 基板
3Wa、3Ba 表示媒体用粒子
3W、3B 表示媒体(粒子群)
31 複合型の表示媒体用粒子
32 母粒子
33 子粒子
34a 外添剤
34b 外添剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間に光学的反射率および帯電性を有する表示媒体を封入し、前記表示媒体に帯電を付与することによって移動させて情報を表示する情報表示用パネルで使用される表示媒体用粒子において、
前記表示媒体用粒子が、母粒子およびその表面に子粒子が固着されている複合型粒子として構成されると共に、当該複合型粒子の表面に、親・疎水度が異なる2種以上の外添剤が付加してある、ことを特徴とする表示媒体用粒子。
【請求項2】
前記外添剤は無機微粒子の表面に、表面処理を施して、親・疎水度が異なるように形成したものである、ことを特徴とする請求項1に記載の表示媒体用粒子。
【請求項3】
メタノール濡れ試験により親・疎水度を判定し、相対的に親水性である無機微粒子と相対的に疎水性の無機微粒子との混合割合を80:20〜20:80として前記外添剤を形成してある、ことを特徴とする請求項2に記載の表示媒体用粒子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の表示媒体用粒子を用いたことを特徴とする情報表示用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−170199(P2011−170199A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35210(P2010−35210)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】