説明

表示機能付きICカード

【課題】 表示機能素子を搭載し、表示機能素子を太陽電池で駆動する表示付きICカードにおいて、太陽電池の微弱な起電力でも安定して表示機能が動作する表示機能を実現することを課題とする。
【解決手段】 太陽電池24と並列に充電用コンデンサ23を設け、かつ、表示制御用IC21が表示機能素子20を駆動する際に、ウェイト処理により充電期間を置くなどタイミングを制御することにより、表示回路の動作時においても電源電圧が表示制御用IC21の動作電圧以下に降下せず、安定した表示動作が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示機能を付加したICカードに関し、特に、太陽電池から得られる電力により表示処理を実行するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードの利用が飛躍的に増えてきており、様々な分野に利用されている。非接触ICカードは、かざすだけで情報の授受が行なわれる利便さから、既に、物品購入や交通機関の入退管理などの用途で広く普及しているが、最近では、情報の授受を行うだけでなく、表示デバイスを搭載し、ICカード用チップに記録されている情報を表示させる表示機能付ICカードも登場している。
【0003】
このような表示機能を動作させるためには表示駆動用電力が必要となるが、電力供給の方法としては、非接触通信によるもの(特許文献1)、接触端子を介するもの(特許文献2)、太陽電池を搭載するもの(特許文献3)など、種々の提案がなされている。
【特許文献1】特開2003−157414号公報
【特許文献2】特開2007−133563公報
【特許文献3】特開2008−21176号公報
【0004】
特に、太陽電池を搭載する表示付きカードは、外部機器からの電力供給に頼ることなく、カード単体で作動可能であるため、利用者が持ち歩く中でカード内容を随時確認するようなカード用途ではその利便性は一層高いものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、太陽電池は一般に利用されている一次電池や二次電池に比べて供給電力が小さく、特に表示書換え時に瞬間的に必要となる大電流を供給することが困難なため、表示書換えが不安定もしくは作動不能となる。
これに対しては、太陽電池の面積を増やす、あるいは電源制御IC等から成る制御回路を付与する、などの方法が考えられるが、表面積の大きさや内部のスペースに制約の大きいICカードでは何れも実装が困難となる。
そこで、本発明は、カードサイズに実装可能なサイズの太陽電池を用いながら安定した表示動作を実現しようとするものであり、複雑な制御回路を用いることなく、太陽電池から得られる電力により情報表示処理が可能となる表示機能付きICカードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の表示機能付きICカードは、
表示機能素子、表示制御用IC、太陽電池および充電用コンデンサを搭載し、前記太陽電池および前記充電用コンデンサが、前記表示機能素子および前記表示制御用ICの電力供給端子に対して並列に接続され、前記表示機能素子および前記表示制御用ICが前記太陽電池の起電力で動作するよう構成された表示機能付ICカードであって、前記表示制御用ICは、所定時間を待機した後に表示機能素子に対し表示処理を開始することを特徴とする。
【0007】
また、前記表示機能素子は、表示機能動作を完了後、電力を消費せずに表示内容を継続して保持する機能を有するメモリ性表示機能素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、カード上に搭載可能な面積の太陽電池を用いながら、カード内に実装困難である複雑な電源制御回路を必要とすることなく、表示書換え等の動作を確実に行う表示機能付カードを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の表示機能付きICカードの構成図であり、同図では非接触型ICカードを例に、これに表示機能を搭載した様態を表わしている。
一般的な非接触型のICカードは、通信機能や演算機能などを持ちICカードとしての機能全体を制御するICカード用チップ11と、同チップに接続され外部との非接触通信を担うアンテナ回路12で構成され、ICカード用チップ11は、アンテナ回路12を介して外部リーダライタと信号の授受を行なうとともに、外部リーダライタから動作のための電力を得る。
【0010】
図1の表示機能付きICカード1は、上記のような非接触型ICカードとしての機能に表示機能を付加した形態となっており、表示機能のために、表示機能素子20、表示制御用IC21、ドライバIC22、充電用コンデンサ23、太陽電池24などを搭載している。また、これらの部品は、回路基板15で相互に結ばれ、カード内に封止される。
なお、以上の説明は、非接触型ICカードを例としているが、本発明の表示付きICカードは、上記ICカード用チップ11の機能を接触型に置き換えれば、接触型ICカードであっても上記と同様の構成を持つ。
【0011】
図2に、本発明の表示機能付きICカードの機能ブロック図を示す。
太陽電池24と充電用コンデンサ23は、表示制御用IC21と表示機能素子20に対して並列に接続され、各々に電力を供給するための電源線が接続されている。また、表示制御用IC21と表示機能素子20は制御線および信号線で接続されており、表示制御用IC21から表示機能素子20へ制御信号および表示のための信号が伝達される。
【0012】
なお、表示制御用IC21は、CPU機能を核とし、入出力機能やメモリ機能などを含めてワンチップ化し小型化した機能部品であり、予め設定されたプログラムに従って、本発明のカードの表示にかかわる信号処理を実行する。また、表示機能素子20には、電力の供給が絶えても表示状態が維持され、かつ、薄く、可撓性に優れた電子ペーパーのようなメモリ性の表示技術を用いたものが好適である。
【0013】
図3に、本発明の表示付きICカードにおける電力供給と表示制御の動作フローを示す。また、図4は、図3のフローに従って動作した際の、電力供給の電圧変化を表わしたものである。
【0014】
最初に太陽電池24に光が照射される(S1)ことにより太陽電池24が発電を始め(S2)、同時にコンデンサ23は充電を始める(S3)。以降、図4のP1−P2間のように、電源線の電位が上昇し、電位が表示制御用IC21の駆動電圧に達する(S4)と表示制御用IC21が起動し(S10)、予め設定されたプログラムに従って動作を開始する。ここで表示制御用IC21の次の処理が「ウェイト処理」(S11)になっているため、表示制御用IC21は具体的な処理は行わず、起動した状態で待機する。この時、表示制御用IC21は動作状態にあり電力を消費するが、その消費量は微少であるため、図4のP2−P3間のように電源線の電位は緩やかに上昇を続ける。
【0015】
表示制御用IC21は、所定時間経過後、ウェイト処理を終了し、続いて表示にかかわる信号処理を実行する(S12、S13)。
すなわち、表示制御用IC21は、データ取得処理(S12)によりICカード用チップ11から表示のための情報を取得し(S20−S22)、続いて表示処理(S13)によりドライバIC22を制御し、ドライバIC22は表示機能素子20を駆動する(S30−S33)。
この間、表示制御用IC21、ICカード用チップ11、ドライバIC22、表示機能素子20などが電力を消費するため、図4のP3−P4に示すように電源の電位は降下を始める。特に、表示処理の開始直後は処理が集中するため電位は著しい降下を来たす。
【0016】
表示処理が終了し、表示制御用IC21が停止(S14)すると、電源の電位は上昇に転じる。以降、電源の電位が表示制御用IC21の駆動電圧より高い状態にあれば、表示制御用IC21は、ウェイト処理(S11)から繰り返すことにより、太陽電池の発電がある間は表示処理を続けることができる。
【0017】
このように太陽電池24に対し並列に接続した充電用コンデンサ23、および表示制御用IC21の初期動作としてウェイト処理を組み合わせることにより太陽電池24による電力で安定した表示処理を実現することが可能となる。また、表示制御用IC21が「省電力モード」等の消費電力を低減する動作モードを備えたものであると、省電力モードに切替えて待機するなど、さらに効果的な使い方ができる。
【0018】
なお、安定動作に必要な充電用コンデンサの容量、ウェイト処理による待機時間は太陽電池の電力供給能力、表示制御用ICの待機消費電力、表示処理時の表示制御用IC及び表示機能素子の消費電力に依存する。具体的には、図4の表示処理開始時及び表示処理実行中に、電位が表示制御用ICの動作電圧以下にならなければよい。
【0019】
本発明の効果を顕著に示すために充電用コンデンサを用いなかった場合を図5に、また、ウェイト処理を実施しなかった場合の電圧変化を図6に示す。
図5に示すように、充電用コンデンサを並列に加えなかった場合、ウェイト処理により動作電圧以上に電位は上昇するが、太陽電池は表示処理に必要な瞬間電力を供給できないため、表示処理を開始しようとした瞬間に急激に電圧は低下して表示制御用IC動作電圧以下となり、表示制御用ICは停止する。以後表示制御用ICの再起動と電圧降下を繰返す。
【0020】
また、図6に示すように、表示制御用ICの初期処理としてウェイト処理を行わなかった場合は、表示制御用IC動作電圧に到達した瞬間に表示処理を実行するため電圧が降下を来たし表示制御用ICは停止に至る。以降、不安定な再起動と停止を繰返すことになり、表示動作は完結しない。
【0021】
なお、本発明によれば、外部からの電力供給に依らず表示機能を安定的に作動させることができるため、本発明は、上記のようなカード用途に限らず、小型携帯端末など利用者が携行するような電子機器に広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】表示機能付きICカードの構成図
【図2】表示機能付きICカードの機能ブロック図
【図3】動作フロー図
【図4】電圧の変化を示す図
【図5】充電用コンデンサなしの場合の電圧の変化を示す図
【図6】ウェイト処理なしの場合の電圧の変化を示す図
【符号の説明】
【0023】
1 表示機能付きICカード
11 ICカード用チップ
12 アンテナ回路
20 表示機能素子
21 表示制御用IC
22 ドライバIC
23 充電用コンデンサ
24 太陽電池


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示機能素子、表示制御用IC、太陽電池および充電用コンデンサを搭載し、
前記太陽電池および前記充電用コンデンサが、前記表示機能素子および前記表示制御用ICの電力供給端子に対して並列に接続され、前記表示機能素子および前記表示制御用ICが前記太陽電池の起電力で動作するよう構成された表示機能付ICカードであって、
前記表示制御用ICは、所定時間を待機した後に表示機能素子に対し表示処理を開始することを特徴とする表示機能付きICカード。
【請求項2】
前記表示機能素子は、表示機能動作を完了後、電力を消費せずに表示内容を継続して保持する機能を有するメモリ性表示機能素子であることを特徴とする請求項1に記載の表示機能付きICカード。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate