説明

表示素子

【課題】駆動電圧が低く、メモリー性を有し、繰り返し駆動耐性に優れた表示素子を提供する。
【解決手段】少なくとも一対の対向する電極間に、エレクトロクロミック媒体を含有した表示素子において、該エレクトロクロミック媒体が、酸化発色型エレクトロクロミック化合物、下記一般式(1)で表される化合物、電解質及び酸化還元反応型化合物を含有していることを特徴とする表示素子。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック化合物の発色と消色を利用した表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来、紙を用いた印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、あるいは電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない、いわゆるメモリー性を有する反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低いため白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は駆動電圧が高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、電気的に発色、消色を示すエレクトロクロミック化合物を用いるエレクトロクロミック表示素子(以下、EC方式と略す)や金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション方式(以下、ED方式と略す)などの電気化学方式が知られている。これらの方式は簡易な素子構成で形成でき、3V以下の低電圧で駆動できるという利点がある。特に、EC方式は、エレクトロクロミック化合物の選択により各種カラー表示が可能である点で有望である。
【0007】
このような化合物を用いるEC方式の表示素子としては、長期間にわたり繰り返し使用した際の表示品質の劣化を抑制し、低電力での発色の維持が可能な、エレクトロクロミック表示に用いる組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、引用文献1で個々に開示されている組成物は、電圧印加を遮断した後ではすぐに消色してしまうものであり、表示を長時間にわたり維持しようとする場合には、継続的に低電圧を印加し続ける必要がある。また、表示のために印加する電圧も3.5ボルトと、EC方式のメリットとして知られている低電力での駆動が行えないことが明らかになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−314721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、長期間にわたる繰り返し使用においても表示品質の劣化が少なく、低電圧での駆動が可能で、優れたメモリー性を有しているエレクトロクロミック型の表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.少なくとも一対の対向する電極間に、エレクトロクロミック媒体を含有した表示素子において、該エレクトロクロミック媒体が、酸化発色型エレクトロクロミック化合物、下記一般式(1)で表される化合物、電解質及び酸化還元反応型化合物を含有していることを特徴とする表示素子。
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、Mは周期律表15族の元素であって、窒素を含まない。R、RおよびRはそれぞれ、置換基を有するアリール基または置換基を有さないアリール基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。〕
2.前記酸化発色型エレクトロクロミック化合物が、下記一般式(A)で表される構造を有する化合物であることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0014】
【化2】

【0015】
〔式中、Xは炭素原子または窒素原子であり、R、Rはそれぞれ、置換または非置換の芳香族基、置換または非置換の複素環を有する基またはフルオラン基を表す。RとRがフルオラン骨格の一部を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子、それぞれ置換または非置換のアシル基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、アリール基、またはアミノ基を表す。〕
3.前記エレクトロクロミック媒体が、更に下記一般式(2)または一般式(3)で表される化合物を含有することを特徴とする前記1または2に記載の表示素子。
【0016】
【化3】

【0017】
〔式中、R、R、RおよびR10は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基またはアルコキシカルボニル基を表す。R、R、RおよびR10は、全てが同時に水素原子であることはない。隣り合うRとRは、互いに縮合し、5員または6員の縮合環を形成してもよい。隣り合うRとR10は、互いに縮合し、5員または6員の縮合環を形成してもよい。〕
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基またはアルコキシカルボニル基を表す。R11、R12、R13およびR14は、全てが同時に水素原子であることはない。隣り合うR11とR12、または、隣り合うR13とR14、は、一方または両方が縮合環を形成する。隣り合うR11とR12、または、隣り合うR13とR14、の一方が、縮合環を形成する場合は、他方の2つの基は、共に水素原子である。該縮合環は、5員環または6員環である。〕
4.前記エレクトロクロミック媒体が、前記酸化還元反応型化合物として酸化反応型化合物及び還元反応型化合物を含有することを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の表示素子。
【0020】
5.前記酸化反応型化合物が、N−オキシル誘導体、N−ヒドロキシフタルイミド誘導体、ヒドロキサム酸誘導体のN−O結合を有する化合物及びガルビノキシルのO−位に嵩高い置換基を導入したアリロキシ遊離基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記4に記載の表示素子。
【0021】
6.前記還元反応型化合物が、エタンジオン若しくはその誘導体、テトラゾリウム塩、ホルマザン若しくはその誘導体、フェナジン若しくはその誘導体、フェノキサジン若しくはその誘導体及びアクリジン若しくはその誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記4に記載の表示素子。
【0022】
7.一対の対向する電極の少なくとも一つの電極表面が、ナノ多孔質層を有することを特徴とする前記1から6のいずれか1項に記載の表示素子。
【0023】
8.前記ナノ多孔質層のうち、観察側の電極表面に設けられたナノ多孔質層が、前記酸化反応型化合物を固定化していることを特徴とする前記7に記載の表示素子。
【0024】
9.前記ナノ多孔質層のうち、非観察側の電極表面に設けられたナノ多孔質層が、前記還元反応型化合物を固定化していることを特徴とする前記7に記載の表示素子。
【0025】
10.前記エレクトロクロミック媒体が、白色散乱物を含むことを特徴とする前記1から9のいずれか1項に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、長期間にわたる繰り返し使用においても表示品質の劣化が少なく、低電圧での駆動が可能で、優れたメモリー性を有しているエレクトロクロミック型の表示素子を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0028】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくとも一対の対向する電極間に、エレクトロクロミック媒体を含有した表示素子において、該エレクトロクロミック媒体が、酸化発色型エレクトロクロミック化合物、前記一般式(1)で表される化合物、電解質及び酸化反応型化合物または還元反応型化合物の少なくとも1種を含有していることを特徴とする表示素子により、長期にわたる繰り返し使用においても表示品質の劣化が少なく、低電圧での駆動が可能で、優れたメモリー性を有しているエレクトロクロミック型の表示素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0029】
以下、本発明の表示素子の各構成要素の詳細について説明する。
【0030】
〔酸化発色型エレクトロクロミック化合物〕
本発明の表示素子においては、エレクトロクロミック媒体が、酸化発色型エレクトロクロミック化合物を含有することを特徴の1つとする。
【0031】
本発明に適用可能な酸化発色型エレクトロクロミック化合物としては、pH指示薬として用いられる各種色素、アゾ色素、フェノチアジン誘導体などから選択することができる。例えば、トリアリルメタン化合物、ビスフェニルメタン化合物、キサンテン化合物、フルオラン化合物、チアジン化合物、スピロピラン化合物等が挙げられる。
【0032】
本発明に係る酸化発色型エレクトロクロミック化合物の中でも、下記一般式(A)で表される構造を有する化合物が、多様な色調の化合物を合成でき、かつ発色速度が比較的迅速である点で好ましい。
【0033】
【化5】

【0034】
上記一般式(A)において、Xは炭素原子または窒素原子であり、R、Rはそれぞれ、置換または非置換の芳香族基、置換または非置換の複素環を有する基またはフルオラン基を表す。RとRがフルオラン骨格の一部を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子、それぞれ置換または非置換のアシル基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、アリール基またはアミノ基を表し、Rは環の任意の位置、好ましくは5位または6位に結合する。
【0035】
上記一般式(A)で表される構造を化学構造中に有するエレクトロクロミック化合物は、酸化反応により、酸素と、酸素と二重結合していない側の炭素との間で結合の解裂を起こし、発色する。以下に示す様に、この反応は可逆的で、還元反応により無色に戻ることができる。なお、式中、Aはアニオンである。
【0036】
【化6】

【0037】
このような一般式(A)で表される構造を化学構造中に有するエレクトロクロミック化合物の一例を以下に示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。例えば、「機能性色素の応用」(入江正浩監修、シーエムシー出版刊)の図7に掲載されているような感熱色素にも、エレクトロクロミック性を示すものがあり、化学構造式の選択で色を変化させることが可能である。
【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
本発明に係る一般式(A)で表される構造を化学構造中に有するエレクトロクロミック化合物は、その発色性と必要とされる発色濃度により、好ましい使用量が決定される。発色性は、発色時の吸光度係数により算段することができ、吸光度係数が高いエレクトロクロミック化合物は少量の添加でよいことになる。
【0041】
〔一般式(1)で表される化合物〕
本発明の表示素子においては、エレクトロクロミック媒体が、前記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴の1つとする。
【0042】
前記一般式(1)において、Mは周期律表15族の元素であって、窒素を含まない。R、RおよびRはそれぞれ、置換基を有するアリール基または置換基を有さないアリール基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0043】
本発明に係る一般式(1)で表される化合物は、上記一般式(A)で表される構造を化学構造中に有するエレクトロクロミック化合物の発色、消色の繰り返し動作による、エレクトロクロミック表示素子の表示品質の劣化を抑制する機能を有する。
【0044】
一般式(1)で表される化合物は、エレクトロクロミック化合物の含有量に対し、1〜50質量%の範囲で添加することが好ましく、上述の表示品質の劣化抑制機能を十分に発現させる観点からは、10〜50質量%となるように添加することがより好ましい。
【0045】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を列挙するが、本発明においてはこれら例示した化合物にのみ限定されるものではない。
【0046】
【化9】

【0047】
〔一般式(2)、一般式(3)で表される化合物〕
本発明の表示素子においては、エレクトロクロミック媒体が、更に前記一般式(2)または一般式(3)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0048】
前記一般式(2)において、R、R、RおよびR10は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基またはアルコキシカルボニル基を表す。R、R、RおよびR10は、全てが同時に水素原子であることはない。隣り合うRとRは、互いに縮合し、5員または6員の縮合環を形成してもよい。隣り合うRとR10は、互いに縮合し、5員または6員の縮合環を形成してもよい。また、前記一般式(3)においては、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基またはアルコキシカルボニル基を表す。R11、R12、R13およびR14は、全てが同時に水素原子であることはない。隣り合うR11とR12、または、隣り合うR13とR14、は、一方または両方が縮合環を形成する。隣り合うR11とR12、または、隣り合うR13とR14、の一方が、縮合環を形成する場合は、他方の2つの基は、共に水素原子である。該縮合環は、5員環または6員環である。
【0049】
これら一般式(2)、一般式(3)で表される化合物の化合物は、酸化発色型エレクトロクロミック化合物の発色、消色の繰り返し動作による表示品質の劣化をさらに抑制する機能を有する。これらの化合物の添加量は、酸化発色型エレクトロクロミック化合物の含有量に対して、1〜20質量%とすることが好ましい。前記機能の十分な発現のために、添加量は、5〜20質量%とすることが好ましい。
【0050】
これらの化合物をより具体的に説明するために、一般式(2)で表される化合物の例として、下記例示化合物2−1〜2−11、一般式(3)で表される化合物の例として、下記例示化合物3−1、3−2に示す。これらは例示であるため、一般式(2)および一般式(3)で表される化合物を限定するものではない。
【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
〔電解質〕
本発明の表示素子においては、エレクトロクロミック媒体が、電解質を含有することを特徴の1つとする。
【0054】
本発明でいう「電解質」とは、一般に、水などの溶媒に溶けて溶液がイオン伝導性を示す物質(以下、「狭義の電解質」という。)をいうが、本発明の説明においては、狭義の電解質に電解質、非電解質を問わず他の金属、化合物等を含有させた混合物を電解質(「広義の電解質」)という。
【0055】
(支持電解質)
本発明の表示素子において用いることができる支持電解質としては、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類が使用できる。
【0056】
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用できる。
【0057】
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
【0058】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CNBr、(CNClO、(n−CNClO、CH(CNBF、(CH(CNBF、(CHNSOCF、(CNSOCF、(n−CNSOCF
更には、
【0059】
【化12】

【0060】
等が挙げられる。
【0061】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には、(CHPBF、(CPBF、(CPBF、(CPBF等が挙げられる。また、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0062】
本発明の支持電解質としては、4級アンモニウム塩が好ましく、特に4級スピロアンモニウム塩が好ましい。また対アニオンとしてはClO、BF、CFSO、(CSO、PFが好ましく、特にBFが好ましい。
【0063】
電解質塩の使用量は任意であるが、一般的には、電解質塩は溶媒中に上限としては20モル/L以下、好ましくは10モル/L以下、さらに好ましくは5モル/L以下存在していることが望ましく、下限としては通常0.01モル/L以上、好ましくは0.05モル/L以上、さらに好ましくは0.1モル/L以上存在していることである。
【0064】
固体電解質の場合には、電子伝導性やイオン伝導性を示す以下の化合物を、電解質中に含むことができる。
【0065】
パーフルオロスルホン酸を含むフッ化ビニル系高分子、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、トリフェニルアミン類、ポリビニルカルバゾール類、ポリメチルフェニルシラン類、CuS、AgS、CuSe、AgCrSe等のカルコゲニド、CaF、PbF、SrF、LaF、TlSn、CeF等の含フッ素化合物、LiSO、LiSiO、LiPO等のLi塩、ZrO、CaO、Cd、HfO、Y、Nb、WO、Bi、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiAlF、AgSBr、CNHAg、RbCu16Cl13、RbCuCl10、LiN、LiNI、LiNBr等の化合物が挙げられる。
【0066】
(イオン性液体)
本発明でいうイオン液体とは、常温溶融塩とも言われ、融点が100℃以下の塩である。この塩は同数のカチオンとアニオンから構成されており、分子構造によって融点が室温以下の物質も数多く存在し、これらは溶媒をまったく加えなくても室温で液体状態である。イオン性液体は、強い静電的な相互作用をもっているため蒸気圧がほとんどないことが大きな特徴であり、高温でも蒸発がなく揮発しない。
【0067】
本発明に用いるイオン性液体としては、一般的に研究・報告されている物質ならばどのようなものでも構わない。特に有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造がある。
【0068】
本発明で好適に用いることができるイオン性液体は、式Qで表され、20〜100℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは20〜40℃、特に20℃で液体として存在する塩のことを指し、粘度(25℃)は、常温で融体である限り特に制限されないが、好ましくは1〜200mPa・sである。さらに、式中Q+で表されるカチオン成分はオニウムカチオンが好ましく、さらに好ましくはアンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びホスホニウムカチオンである。
【0069】
上述のイオン性流体について具体的に詳述すると、上式中のQとしては、R、R、R、R=CR、R=CR[ここで、RからRは、互いに独立して、水素、飽和または不飽和の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基、R−X−(R−Y−)−(式中、Rは炭素数4以下のアルキル基、Rは炭素数4以下のアルキレン基、XおよびYは酸素原子または硫黄原子、nは0〜10の整数を示す)を表し、これらの基は置換基を有していても良い]から成る群から選択されるアンモニウムおよび/またはホスホニウムイオン、R=CR−R−RC=N、R−R−S、R=CR−R−RC=P(ここで、R、RおよびRは、前記で定義したものと同じであり、そしてRは、炭素数1〜6のアルキレンまたはフェニレン基を表し、これらの基は置換基を有していても良い)から成る群から選択される第四級アンモニウムおよび/またはホスホニウムイオン、さらには下記一般式で表される窒素、硫黄および燐原子から選ばれる原子を1、2または3個含む窒素、硫黄および燐原子含有複素環から誘導されるアンモニウムイオン、スルホニウムイオンまたはホスホニウムイオンなどを挙げることができる。
【0070】
【化13】

【0071】
式中RおよびRはこの上で定義した通りであり、Zは、N、N=C、S、PあるいはP=Cを含む4〜10員環を構成しうる原子を指し、この構成する原子には置換基を有していても良い。
【0072】
上述の中でRからRの具体的な例はとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどの直鎖又は分枝を有するアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどのシクロアルキル基、無置換あるいはハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、水酸基、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の各基)、カルボキシル基、アセチル基、プロパノイル基、チオール基、低級アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等の各基)、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基などの置換基を1〜3個有するフェニル、ナフチル、トルイル、キシリル等のアリール基、ベンジルなどのアラルキル基などを挙げることができる。また、Rの具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル基などのアルキル基などが挙げられ、Rとしてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基などのアルキレン基などを挙げることができる。さらにRの具体的な例はとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルキレン基、フェニレンなどのフェニレン基などを挙げることができる。
【0073】
また、式中のAで表される対アニオンとしては、ヘキサフルオロ燐酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロヒ酸塩、フルオロスルホン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、硝酸塩、アルキルスルホン酸塩、フッ化アルキルスルホン酸塩または水素硫酸塩を表す。
【0074】
さらに、WO95/18456号、特開平8−259543号、特開2001−243995、電気化学第65巻11号923頁(1997年)、EP−718288号、J.Electrochem.Soc.,Vol.143,No.10,3099(1996)、Inorg.Chem.1996,35,1168〜1178等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩なども本発明に応じては適時選択して用いることができる。
【0075】
(固体電解質、ゲル電解質)
本発明に係る電解質は、溶媒やイオン性液体から成る溶液状の電解質以外にも、実質的に溶媒を含まない固体電解質や高分子化合物を含有した高粘度な電解質やゲル状の電解質(以下、ゲル電解質)を用いることができる。
【0076】
本発明に適用可能な固体電解質、ゲル電解質としては、例えば、特開2002−341387号公報に記載の固体電解質、特開2002−341387号公報に記載のポリマー固体電解質、特開2004−20928号公報に記載の高分子固体電解質、特開2004−191945号公報に記載の高分子固体電解質、特開2005−338204号公報に記載の固体高分子電解質、特開2006−323022号公報に記載の高分子固体電解質、特開2007−141658号公報に記載の固体電解質、特開2007−163865号公報に記載の固体電解質、ゲル電解質等を挙げることができる。
【0077】
〔酸化反応型化合物及び還元反応型化合物〕
本発明の表示素子においては、エレクトロクロミック媒体が、酸化反応型化合物または還元反応型化合物を含有することを特徴の1つとする。
【0078】
本発明に係る酸化反応型化合物、還元反応型化合物には、エレクトロクロミック化合物が酸化されて発色する際に、その反応を助け、安定化させる効果がある。
【0079】
(酸化反応型化合物)
本発明に係る酸化反応型化合物は、エレクトロクロミック化合物の発色反応を補助し、安定化させる効果を備えている。エレクトロクロミック媒体に本発明に係る酸化反応型化合物を添加することにより、エレクトロクロミック化合物の酸化反応は、この酸化反応型化合物を介して行なわれるため、駆動安定性が向上する。本発明に係る酸化反応型化合物として好ましいのは、エレクトロクロミック化合物の酸化電位より低い酸化電位を有し、反応前後で実質的に着色しないか、エレクトロクロミック化合物と同じ色調で微着色する化合物である。
【0080】
本発明でいう酸化電位は、サイクリックボルタングラムにより測定することができる。
【0081】
具体的には、サイクリックボルタングラムは、例えば、BAS社製の電気化学アナライザーALS600Cのサイクリックボルタンメトリー法により測定することができる。測定は、本発明に係る酸化活性化合物とテトラブチルアンモニウムパークロライド等の支持電解質を適当な溶媒、例えば、アセトニトリルに溶解した液を準備し、BAS社製のRE−5非水溶媒系参照電極参照電極(Ag/Ag)、Pt作用電極、Ptカウンター電極、スキャン速度100mV/secの条件でサイクリックボルタングラムを測定することができる。
【0082】
エレクトロクロミック化合物で、明確なピークが確認できない場合には、エレクトロクロミック化合物の着色が確認され始める電位を読み取り、これを酸化電位とすることができる。
【0083】
このような酸化反応型化合物としては、フェロセン等のメタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、または下記に示す化合物などが知られているが、本発明の表示素子、すなわちエレクトロクロミック化合物および一般式(1)で表される化合物の存在する系においては、N−オキシル誘導体、N−ヒドロキシフタルイミド誘導体、ヒドロキサム酸誘導体のN−O結合を有する化合物、ガルビノキシルのO−位に嵩高い置換基を導入したアリロキシ遊離基を有する化合物が有効である。これらの化合物は、いずれも低い酸化電位を有し、反応前後での着色がほとんどないため、非常に好ましい。
【0084】
N−オキシル誘導体としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−N−オキシル)を初め、各種置換基の置換した誘導体が市販されている。また公知の文献に従って、ポリマーを含め、各種誘導体を容易に合成することができる。
【0085】
一般には、ニトロキシドラジカルのα位炭素に水素が置換している場合、容易にヒドロキシアミンとニトロンへ不均化してしまう事が知られている。このためTEMPOのN−オキシル基α位の4つのメチル基は、安定ラジカルとして存在する上での必須の構造と言えるが、逆にこれら4つのメチル基の立体障害によって、反応性が落ちる場合がある。これら活性低下を引き起こさない点で、アザアダマンタンN−オキシル誘導体、或いはアザビシクロN−オキシル誘導体が好ましい。
【0086】
N−ヒドロキシフタルイミド誘導体としては、N−ヒドロキシフタルイミド(NHPI)などが知られている。
【0087】
ヒドロキサム酸誘導体としては、トリヒドロキシイミノシアヌル酸(THICA)などが挙げられる。
【0088】
〈N−オキシル誘導体〉
N−オキシル誘導体は、下記一般式(M1)で表すことができ、更には、下記一般式(M2)から(M5)で表される化合物がより好ましい。特には、一般式(M6)で示される多環式N−オキシル誘導体が好ましい。一般式(M6)で示される酸化反応型化合物は、J.Am.Chem.Soc.,128,8412(2006)及びTetrahedron Letters 49(2008)48−52を参考として合成することができる。また、これらをポリマー化した酸化反応型化合物は、例えば、特開2004−227946号公報、同2004−228008号公報、同2006−73240号公報、同2007−35375号公報、同2007−70384号公報、同2007−184227号公報、同2007−298713号公報等を参考にして合成することができる。
【0089】
以下に、一般式(M1)から(M6)で示される酸化反応型化合物の詳細について説明する。
【0090】
はじめに、一般式(M1)で表される化合物について説明する。
【0091】
【化14】

【0092】
上記一般式(M1)において、Rm11及びRm12は各々独立に置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基若しくは>C=O、>C=S、>C=N−Rm13を介して窒素原子と結合する基を表す。Rm13は水素原子、置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基を表す。また、Rm11及びRm12は互いに連結して、環状構造を形成しても良い。
【0093】
脂肪族炭化水素基には、鎖状及び環状のものが包含され、鎖状のものには直鎖状のもの及び分岐状のものが包含される。このような脂肪族炭化水素基には、メチル、エチル、ビニル、プロピル、イソプロピル、プロペニル、ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、iso−ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、オクチル、iso−オクチル、シクロオクチル、2,3−ジメチル−2−ブチル等の各基が挙げられる。
【0094】
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、複素環基としては、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等が挙げられる。
【0095】
これら置換基は更に置換基を有していても良い。それらの置換基には、特に制限は無く例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等)、複素環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基等)、複素環チオ基(例えば、ピリジルチオ基、チアゾリルチオ基、オキサゾリルチオ基、イミダゾリルチオ基、フリルチオ基、ピロリルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基、モルフォリノスルホニル基、ピロリジノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ホルミルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基、モルフォリノカルボニル基、ピペラジノカルボニル基等)、アルカンスルフィニル基またはアリールスルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ブタンスルフィニル基、シクロヘキサンスルフィニル基、2−エチルヘキサンスルフィニル基、ドデカンスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルカンスルホニル基またはアリールスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基、2−エチルヘキサンスルホニル基、ドデカンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、N−メチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基等)、アミノカルボニルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等)、アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等)、スルファモイルアミノ基(例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基、ナフチルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基等)、複素環アゾ基(例えば、ピリジルアゾ基、チアゾリルアゾ基、オキサゾリルアゾ基、イミダゾリルアゾ基、フリルアゾ基、ピロリルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基等)、イミノ基(例えば、N−スクシンイミド−1−イル基、N−フタルイミド−1−イル基等)、ホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等)、ホスフィニル基(例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等)、ホスフィニルオキシ基(例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等)、ホスフィニルアミノ基(例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0096】
一般式(M1)で表される化合物は、これら置換基で連結された二量体、三量体等の多量体であっても良く、また重合体で有ってもよい。
【0097】
N−オキシル誘導体として更に好ましい構造として、一般式(M2)から(M6)で表される化合物を以下に説明する。すなわち、一般式(M2)から(M6)までの化合物は一般式(M1)に包含されるものである。
【0098】
次いで、一般式(M2)で表される化合物について説明する。
【0099】
【化15】

【0100】
上記一般式(M2)において、Rm21、Rm22、Rm23、Rm24は、各々独立に水素原子若しくは置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表す。これら脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基については、前記一般式(M1)におけるそれぞれと同義である。
【0101】
は環状構造を形成するのに必要な原子群を表し、5員環若しくは6員環を形成するのが好ましい。Zは更に置換基を有していても良く、それらの置換基としては、前記一般式(M1)で例示したのと同様の置換基が挙げられる。また、Rm21〜Rm24及びZを構成する原子は互いに連結して、環状構造を形成しても良く、例えば、窒素原子と共にアザノルボルネン構造、アザアダマンタン構造等の多環式構造を取っても良い。
【0102】
一般式(M2)で表される化合物の環構造としては、ピペリジン環、若しくはピロリジン環、アザアダマンタン環が好ましい。
【0103】
次いで、一般式(M3)で表される化合物について説明する。
【0104】
【化16】

【0105】
本発明においては、本発明に係るN−オキシル誘導体が、一般式(M3)で表される化合物であることが好ましい態様の1つである。
【0106】
上記一般式(M3)において、Rm31は直接、若しくは酸素原子、窒素原子、硫黄原子を介してカルボニル炭素原子に置換する、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表し、Rm32は置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表す。これら脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基については、一般式(M1)におけるそれぞれと同義である。また、Rm31及びRm32は互いに連結して、環状構造を形成してもよい。
【0107】
一般式(M3)において、Rm32は芳香族炭化水素基が好ましく、特に置換基を有しても良いフェニル基が好ましい。フェニル基上の置換基としては、シアノ基、アルコキシカルボニル基、トリフルオロメチル基等の電子吸引性基が好ましい。Rm31としては、カルボニル炭素原子に直接結合したフェニル基若しくは脂肪族炭化水素基が好ましく、特に、分岐アルキル基及びシクロアルキル基が好ましい。なお、一般式(M3)で表される化合物はN−OHの状態で添加し、表示素子を作製するのが好ましい。
【0108】
次いで、一般式(M4)で表される化合物について説明する。
【0109】
【化17】

【0110】
本発明においては、本発明に係るN−オキシル誘導体が、上記一般式(M4)で表される化合物であることが好ましい態様の1つである。
【0111】
上記一般式(M4)において、Zは環状構造を形成するのに必要な原子群を表し、5員環若しくは6員環を形成するのが好ましい。Zは更に置換基を有していても良く、それらの置換基としては、一般式(M1)で例示した置換基が挙げられる。また、Zは縮合環で有っても良い。なお、一般式(M4)で表される化合物はN−OHの状態で添加し、表示素子を作製するのが好ましい。
【0112】
次いで、一般式(M5)で表される化合物について説明する。
【0113】
【化18】

【0114】
本発明においては、本発明に係るN−オキシル誘導体が、前記一般式(M5)で表される化合物であることが好ましい態様の1つである。
【0115】
上記一般式(M5)において、Rm51〜Rm55は各々独立に置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表す。これら脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基については、一般式(M1)におけるそれぞれと同義である。
【0116】
一般式(M5)において、Rm51は芳香族炭化水素基が好ましく、特に置換基を有しても良いフェニル基が好ましい。フェニル基上の置換基としてはシアノ基、アルコキシカルボニル基、トリフルオロメチル基等の電子吸引性基が好ましい。Rm52〜Rm55としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0117】
次いで、一般式(M6)で表される化合物について説明する。
【0118】
【化19】

【0119】
上記一般式(M6)において、Rm61及びRm62は各々独立に水素原子若しくは置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基を表す。Rm61及びRm62としては、水素原子若しくは、炭素数4以下の直鎖アルキル基が好ましく、Rm61及びRm62の少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
【0120】
、Z及びZは、各々環状構造を形成するのに必要な原子群(例えば、炭素、窒素、酸素、イオウ等)を表し、各々5員環若しくは6員環を形成するのが好ましい。Z、Z及びZは更に置換基を有していても良い。
【0121】
nは0または1を表すが、n=0の時、一般式(M6)はビシクロ化合物を表し、n=1の場合は、トリシクロ化合物を表す。
【0122】
一般式(M6)で表される化合物としては、n=1が好ましく、特に、アザアダマンタン誘導体が好ましい。
【0123】
以下に、本発明で用いることのできる一般式(M1)から(M6)で表される化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものでは無い。
【0124】
【化20】

【0125】
【化21】

【0126】
【化22】

【0127】
【化23】

【0128】
【化24】

【0129】
【化25】

【0130】
【化26】

【0131】
【化27】

【0132】
本発明で用いられる好ましい酸化反応型化合物である、ガルビノキシル等、O−位に嵩高い置換基を導入したアリロキシ遊離基を有する化合物としては、下記のような化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
【化28】

【0134】
(還元反応型化合物)
本発明の表示素子において、エレクトロクロミック媒体に還元反応型化合物を含有させることにより、特に、メモリー性の向上効果を発揮させることができる。エレクトロクロミック化合物が観察側電極で発色反応を起こす際に、非観察側電極では余剰電荷が発生する。本発明の表示素子においては、用いられるエレクトロクロミック化合物の発色−消色反応は可逆性であるため、電圧の印加を停止した際に、この余剰電荷によりエレクトロクロミック化合物の消色反応が生じてしまう。上記課題に対し、還元反応型化合物をエレクトロクロミック媒体に添加することにより、この余剰電荷と還元反応型化合物が反応し、電圧の印加を停止しても、エレクトロクロミックの消色反応が容易には起こらなくなる。
【0135】
本発明に好適な還元反応型化合物としては、還元反応を起こした際に、実質的に着色しないか、エレクトロクロミックと同じ色調に微発色するような化合物が好ましい。ただし、後述するように、反射型表示素子として用いる場合に、エレクトロクロミック媒体中に白色散乱物を混合した場合には、白色散乱物により非観察側電極での反応が隠蔽されるため、異なる色調に変化するものでも用いることは可能である。
【0136】
本発明に係る還元反応型化合物として有効な化合物としては、チアントレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベルダジル等のヒドラジル遊離基化合物、チアジル遊離基化合物、ヒドラゾン誘導体等などが挙げられる。
【0137】
以下に、本発明に適用可能な還元反応型化合物の一例を示す。本発明においては、これら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0138】
【化29】

【0139】
更に、本発明においてより好ましい還元反応型化合物としては、エタンジオン誘導体、テトラゾリウム塩、ホルマザン誘導体、フェナジン誘導体、フェノキサジン誘導体、アクリジン誘導体、ジフェニルエタンジオン誘導体を挙げることができる。これらの化合物はいずれも良好な可逆反応性を示す。
【0140】
本発明に好適に用いることができるエタンジオン誘導体は、下記一般式(M7)で表す構造を有する。
【0141】
【化30】

【0142】
上記一般式(M7)において、Rm71、Rm72は各々独立に置換基を有してもよい、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または脂肪族基を表す。Rm71及びRm72は互いに連結して環状構造を形成してもよい。
【0143】
芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、芳香族複素環基としては、例えばピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等が挙げられる。また脂肪族炭化水素基には、鎖状及び環状のものが包含され、鎖状のものには直鎖状のもの及び分岐状のものが包含される。このような脂肪族炭化水素基には、メチル、エチル、ビニル、プロピル、イソプロピル、プロペニル、ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、iso−ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、オクチル、iso−オクチル、シクロオクチル、2,3−ジメチル−2−ブチル等が挙げられる。
【0144】
これら置換基はさらに置換基を有していてもよい。それらの置換基には、特に制限は無く例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等)、複素環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基等)、複素環チオ基(例えば、ピリジルチオ基、チアゾリルチオ基、オキサゾリルチオ基、イミダゾリルチオ基、フリルチオ基、ピロリルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基、モルフォリノスルホニル基、ピロリジノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ホルミルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基、モルフォリノカルボニル基、ピペラジノカルボニル基等)、アルカンスルフィニル基またはアリールスルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ブタンスルフィニル基、シクロヘキサンスルフィニル基、2−エチルヘキサンスルフィニル基、ドデカンスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルカンスルホニル基またはアリールスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基、2−エチルヘキサンスルホニル基、ドデカンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、N−メチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基等)、アミノカルボニルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等)、アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等)、スルファモイルアミノ基(例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基、ナフチルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基等)、複素環アゾ基(例えば、ピリジルアゾ基、チアゾリルアゾ基、オキサゾリルアゾ基、イミダゾリルアゾ基、フリルアゾ基、ピロリルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基等)、イミノ基(例えば、N−スクシンイミド−1−イル基、N−フタルイミド−1−イル基等)、ホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等)、ホスフィニル基(例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等)、ホスフィニルオキシ基(例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等)、ホスフィニルアミノ基(例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0145】
一般式(M7)で表される化合物は、これら置換基で連結された二量体、三量体等の多量体であってもよく、また重合体であってもよい。
【0146】
一般式(M7)において、Rm71及びRm72は芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましく、特に電子吸引性基の置換した芳香族炭化水素基または電子欠乏性の芳香族複素環基が好ましい。電子吸引性基としては、ハメットの置換基定数σp値が0以上の電子吸引性基である。好ましくは、σp値が0.2以上の電子吸引性基である。上限としては好ましくは1.0以下の電子吸引性基である。さらに好ましくは0.75以下の電子吸引性基である。ハメット則はベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則により求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に記載があるが、例えば、J.A.Dean編「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(McGraw−Hill)や「化学の領域増刊」、122号、96〜103頁、1979年(南江堂)に詳しい。ただしこれらの成書に記載の文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなくその値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれる限り包含されることはもちろんである。
【0147】
σp値が0.20以上の電子吸引性基の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.20以上の他の電子吸引性基で置換されたアリール基、複素環基、ハロゲン原子、アゾ基、またはセレノシアネート基が挙げられる。
【0148】
以下に、一般式(M7)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0149】
【化31】

【0150】
【化32】

【0151】
【化33】

【0152】
【化34】

【0153】
【化35】

【0154】
下記一般式(M8)で表されるテトラゾリウム塩も、本発明の還元反応型化合物として好適に用いることができる。
【0155】
【化36】

【0156】
一般式(M8)において、Rm81、Rm82はそれぞれ同じでも異なっていてもよい置換あるいは無置換の芳香族基であり、Rm83は、アルキル基、カルボキシル基、アミノ基、置換若しくは無置換の芳香族基、または置換若しくは無置換の複素環基を表す。
【0157】
塩を形成する対イオンとしては、塩素、臭素、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸などが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0158】
一般式(M8)で表される化合物としては、例えば、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム塩、2,3,5−トリs(p−トリル)テトラゾリウム塩、2,3−ビス(3−クロロフェニル)−5−フェニルテトラゾリウム塩、2,3−ビス(3−フルオロフェニル l)−5−フェニルテトラゾリウム塩、2,3−ビス(3−メチルフェニル l)−5−フェニルテトラゾリウム塩、2,3−ビス(4−クロロフェニル l)−5−フェニルテトラゾリウム塩、2,3−ビス(4−エチルフェニル l)−5−フェニルテトラゾリウム塩、2,3−ビス(4−フルオロフェニル l)−5−フェニルテトラゾリウム塩、2,3−ビス(4−メトキシフェニル l)−5−(4−シアノフェニル)テトラゾリウム塩、2,3−ビス(4−メトキシフェニル)−5−フェニルテトラゾリウム塩、2,3−ビス(4−メチルフェニル)−5−(4−シアノフェニル)テトラゾリウム 塩、2,3−ビス(4−ニトロフェニル)−5−フェニルテトラゾリウム塩 ハイドレート、2,3−ジ(p−トリル)−5−フェニルテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−(2−チエニル)テトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−(4−クロロフェニル)テトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−(4−メトキシフェニル)テトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−(p−トリル)テトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−アミノテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−カルボキシテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−エチルテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−メチルテトラゾリウム塩、2,5−ジ(p−トリル)−3−フェニルテトラゾリウム塩、2,5−ジフェニル−3−(4−スチリルフェニル)テトラゾリウム塩、2−(2−ベンゾチアゾール)−3,5−ジフェニルテトラゾリウム ブロミド、2−(2−ベンゾチアゾール)−3−(4−ニトロフェニル l)−5−フェニルテトラゾリウム ブロミド、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニルテトラゾリウム塩、2−フェニル−3−(4−ビフェニリル)−5−メチルテトラゾリウム塩、3,3′−(3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジフェニレン)ビス(2−フェニル−5−ベラトリルテトラゾリウム塩)、3−(3−ニトロフェニル)−5−メチル−2−フェニルテトラゾリウム塩、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム ブロミド、3−(4−ニトロフェニル)−5−メチル−2−フェニルテトラゾリウム塩、ブルー テトラゾリウム(ジテトラゾリウム塩)、m−トリルテトラゾリウム レッド(2,5−ジフェニル−3−(m−トリル)テトラゾリウム塩)、ニトロ ブルー テトラゾリウム(2,2′−ジ−p−ニトロフェニル−5,5′−ジフェニル−(3,3′−ジメトキシ)−4,4′−ビスフェニレンジテトラゾリウム塩)、o−トリルテトラゾリウム レッド(2,5−ジフェニル−3−(o−トリル)テトラゾリウム塩)、p−トリルテトラゾリウム レッド(2,5−ジフェニル−3−(p−トリル)テトラゾリウム塩)、テトラニトロブルー テトラゾリウム(3,3′−(3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジフェニレン)ビス−2,5−ジ(p−ニトロフェニル)−2H−テトラゾリウム塩)、テトラゾリウム バイオレット(3−(1−ナフチル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム塩)、3−(4−iodoフェニル)−2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール、チオカルバミルニトロ ブルー テトラゾリウム塩などを挙げることができる。
【0159】
更に、一般式(M8)で表される化合物例を以下に示す。
【0160】
【化37】

【0161】
【化38】

【0162】
ホルマザン誘導体は、下記一般式(M9)で表される化合物である。
【0163】
【化39】

【0164】
上記一般式(M9)において、Rm91は水素原子または置換基を表し、好ましくは水素原子である。Rm92、Rm93、Rm94はそれぞれ同じでも異なってもよい置換あるいは無置換の芳香族基、または複素環基を表す。
【0165】
下記一般式(M9)で表されるホルマザン誘導体としては、例えば、1,3,5−トリフェニルホルマザン、1,5−ビス(4−メトキシフェニル)−3−フェニルホルマザン、1,5−ジフェニル−3−(2−チエニル)ホルマザン、1,5−ジフェニル−3−(4−クロロフェニル)ホルマザン、1,5−ジフェニル−3−(4−メトキシフェニル)ホルマザン、1,5−ジフェニル−3−(p−トリル)ホルマザン、1−(4−ニトロフェニル)−3−メチル−5−フェニルホルマザン、3,5−ジフェニル−1−(1−ナフチル)ホルマザン、3,5−ジフェニル−1−(4−biフェニリル)ホルマザン、3,5−ジフェニル−1−(m−トリル)ホルマザン、3,5−ジフェニル−1−(o−トリル)ホルマザン、3,5−ジフェニル−1−(p−トリル)ホルマザン、5−(2−ベンゾチアゾール)−1,3−ジフェニルホルマザン、INT ホルマザン(1−(4−ヨードフェニル)−5−(4−ニトロフェニル)−3−フェニルホルマザン)、MTT ホルマザン(1−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−3,5−ジフェニルホルマザン)、ネオ−テトラゾリウム,ニトロ ブルー テトラゾリウム ジホルマザン(5,5′−ビス(4−ニトロフェニル)−3,3′−ジフェニル−1,1′−[(3,3′−ジメトキシ)−4,4′−ビスフェニレン)ジホルマザン)、テトラゾール ブルー ジホルマザン、TNBT ジホルマザン(1,1′−(3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジフェニレン)ビス−3,5−ジ(p−ニトロフェニル)ジホルマザン)、ジンコン(2−カルボキシ−2′−ヒドロキシ−5′−スルホホルマジルベンゼン ナトリウム塩)などを挙げることができる。
【0166】
本発明に適用可能なフェナジンとは、下記式(M10)で表される化合物である。
【0167】
この誘導体としては、任意の炭素に水酸基、アルキル基、アルコキシ基等を導入することが可能であり、例えば、フェナジン、1−ヒドロキシフェナジン、1−メトキシフェナジン、5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジンなどが知られている。
【0168】
【化40】

【0169】
本発明に適用可能なフェノキサジンとは、下記式(M11)で表される化合物である。この誘導体としては、例えば、4,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェノキサジンなどが知られている。
【0170】
【化41】

【0171】
本発明に適用可能なアクリジンとは、下記式(M12)で表される化合物である。その誘導体としては、例えば、9−メチルアクリジン、9−フェニルアクリジン、9−(ブロモメチル)アクリジン、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロアクリジン、9−アクリジンカルボン酸水和物、9−アミノアクリジン塩酸塩一水和物などが挙げられる。
【0172】
【化42】

【0173】
本発明の表示素子において、上記説明した本発明に係る酸化反応型化合物及び還元反応型化合物は、エレクトロクロミック媒体中に含有されている。酸化反応型化合物及び還元反応型化合物がエレクトロクロミック媒体中に含有される形態としては、エレクトロクロミック媒体中に溶解し、自由に移動できるようになっていてもよいし、あるいはエレクトロクロミック媒体と接触している電極表面上に固定化されていてもよい。更に好ましくは、観察側の電極表面にナノ多孔質層を有し、本発明に係る酸化反応型化合物がナノ多孔質層に固定化されていることであり、また、非観察側の電極表面にナノ多孔質層が設けられている場合には、還元反応型化合物がナノ多孔質層に固定化されていることが好ましい。
【0174】
エレクトロクロミック媒体と接触する電極表面にナノ多孔質層を形成することで、固定化できる酸化反応型化合物あるいは還元反応型化合物の量を増やすことが可能となり、さらにエレクトロクロミック媒体がナノ多孔質層の孔を通じて電極と接触することが可能であるため、エレクトロクロミック反応性を劣化させない。酸化反応型化合物あるいは還元反応型化合物は電極表面または電極表面に形成されたナノ多孔質層表面に固定化されても、エレクトロクロミック媒体と接触し、反応性を保持しているため、本発明では、実質的にエレクトロクロミック媒体中に含まれているものと定義する。
【0175】
電極表面上に固定化する方法は、本発明に係る酸化反応型化合物及び還元反応型化合物に電極表面と化学吸着または物理吸着する基を導入する方法や、本発明に係る酸化反応型化合物あるいは還元反応型化合物をポリマー化して、電極表面上に薄膜として形成する方法等が挙げられる。
【0176】
本発明に係る化学吸着とは、電極表面との化学結合による比較的強い吸着状態であり、本発明に係る物理吸着とは、電極表面と吸着物質との間に働くファンデルワールス力による比較的弱い吸着状態である。
【0177】
本発明に係る固定化は、化学吸着が好ましく、化学吸着する吸着性基としては、−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)及び−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)が好ましい。
【0178】
〔電極〕
本発明の表示素子においては、対向電極の少なくとも1種が金属電極であることが好ましい。金属電極としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の公知の金属種を用いることができる。金属電極は、電解質中の銀の酸化還元電位に近い仕事関数を有する金属が好ましく、中でも銀または銀含有率80%以上の銀電極が、銀の還元状態維持のために有利であり、また電極汚れ防止にも優れる。電極の作製方法は、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法等の既存の方法を用いることができる。
【0179】
また、本発明の表示素子は、対向電極の少なくとも1種が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0180】
〔溶媒〕
本発明に係る電解質には、溶媒としては、一般に電気化学セルや電池に用いられ、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に溶解析出する金属塩化合物、プロモーター等各種添加剤を溶解できる溶媒を使用することができる。
【0181】
具体的には、無水酢酸、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、アセチルアセトン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、プロピオニトリル、ブチロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、メチルピロリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、エチルジメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリへキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリス(トリフフロロメチル)ホスフェート、トリス(ペンタフロロエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、4−メチル−2−ペンタノン、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート、及びエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のポリエチレングリコール類などが使用可能である。
【0182】
さらに、常温溶融塩も溶媒として使用可能である。前記常温溶融塩とは、溶媒成分が含まれないイオン対のみからなる常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示す。常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
【0183】
本発明に用いる電解質溶媒としては、非プロトン性極性溶媒が好ましく、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェートが好ましい。溶媒はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
【0184】
〈一般式(S1)、(S2)で表される化合物〉
本発明において、特に好ましく用いられる溶媒は、下記一般式(S1)または(S2)で表される化合物である。
【0185】
【化43】

【0186】
上記一般式(S1)において、Lは酸素原子またはアルキレン基を表し、Rs11からRs14は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0187】
【化44】

【0188】
一般式(S2)において、Rs21,Rs22は各々アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0189】
はじめに、一般式(S1)で表される化合物の詳細について説明する。
【0190】
前記一般式(S1)において、Lは酸素原子またはCHを表し、Rs11からRs14は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表し、これらの置換基は更に任意の置換基で置換されていても良い。
【0191】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0192】
以下、一般式(S1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0193】
【化45】

【0194】
次いで、一般式(S2)で表される化合物の詳細について説明する。
【0195】
前記一般式(S2)において、Rs21,Rs22は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0196】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0197】
以下、一般式(S2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0198】
【化46】

【0199】
上記例示した一般式(S1)及び一般式(S2)で表される化合物の中でも、特に、例示化合物(S1−1)、(S1−2)、(S2−3)が好ましい。
【0200】
本発明に係る一般式(S1)、(S2)で表される化合物は電解質溶媒の1種であるが、本発明の表示素子においては、本発明の目的効果を損なわない範囲でさらに別の溶媒を併せて用いることができる。具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、かつ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0201】
さらに本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electorlytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0202】
本発明において、電解質溶媒は単一種であっても、溶媒の混合物であってもよいが、エチレンカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。エチレンカーボネートの添加量は、全電解質溶媒質量の10質量%以上、90質量%以下が好ましい。特に好ましい電解質溶媒は、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネートの質量比が7/3〜3/7の混合溶媒である。プロピレンカーボネート比が7/3より大きいとイオン伝導性が劣り応答速度が低下し、3/7より小さいと低温時に電解質が析出しやすくなる。
【0203】
〔白色散乱物〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱物を含有することが好ましく、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0204】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0205】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂等が単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0206】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al、AlO(OH)、SiO等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えて、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンを用いることができる。
【0207】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0208】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0209】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。さらに、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SOM(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0210】
本発明においては、ゼラチン及びゼラチン誘導体、または、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体を好ましく用いることができる。
【0211】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0212】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0213】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0214】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物を塗布する媒体は、表示素子の対向電極間の構成要素上であればいずれの位置でもよいが、対向電極の少なくとも1方の電極面上に付与することが好ましい。媒体への付与の方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0215】
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができ、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0216】
媒体上に付与した水系化合物と白色顔料との水混和物の乾燥は、水を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、水蒸発は減圧下で行ってもよい。
【0217】
本発明でいう多孔質とは、前記水系化合物と白色顔料との水混和物を電極上に塗布乾燥して多孔質の白色散乱物を形成した後、該散乱物上に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質液を与えた後に対向電極で挟み込み、対向電極間に電位差を与え、銀の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が電極間で移動可能な貫通状態のことを言う。
【0218】
本発明の表示素子では、上記説明した水混和物を塗布乾燥中または乾燥後に、硬化剤により水系化合物の硬化反応を行うことが望ましい。
【0219】
本発明で用いられる硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号等に記載の化合物)が挙げられる。水系化合物としてゼラチンを用いる場合は、硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合はホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
【0220】
これらの硬膜剤は、水系化合物1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。また、膜強度を上げるため熱処理や、硬化反応時の湿度調整を行うことも可能である。
【0221】
〔電解質添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0222】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0223】
〔電子絶縁層〕
本発明の表示素子においては、電気絶縁層を設けることができる。
【0224】
本発明に適用可能な電子絶縁層は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する層であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物のような比誘電率が低い無機材料の多孔質体、等が挙げられる。
【0225】
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等に添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物または無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物または無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気する等して発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号等に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
【0226】
〔その他の添加剤〕
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0227】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0228】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を、下記表1に示す。
【0229】
【表1】

【0230】
〔電極〕
本発明の表示素子においては、対向電極の少なくとも1種が金属電極であることが好ましい。金属電極としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の公知の金属種を用いることができる。金属電極は、電解質中の銀の酸化還元電位に近い仕事関数を有する金属が好ましく、中でも銀または銀含有率80%以上の銀電極が、銀の還元状態維持のために有利であり、また電極汚れ防止にも優れる。電極の作製方法は、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法等の既存の方法を用いることができる。
【0231】
また、本発明の表示素子は、対向電極の少なくとも1種が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0232】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0233】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0234】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0235】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0236】
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0237】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0238】
《電極の作製》
(電極1の作製)
市販のITO膜付きガラス(ガラス厚み1.5mm)を、公知の方法でエッチングし、ピッチ145μm、電極幅130μmの電極を形成し、電極1を得た。
【0239】
(電極2の作製)
厚さ1.5mmで10cm×10cmのガラス基板上に、公知の方法を用いて、電極厚み0.8μm、ピッチ145μm、電極間隔130μmの銀−パラジウム電極を形成して、電極2を得た。
【0240】
(電極3の作製)
二酸化チタン分散液(Solaronix社製 Ti−Nanoxide HT−L)を電極1上にスクリーンプリントし、乾燥後120℃のオーブンで焼成して、厚み約3μmの二酸化チタン膜を形成した電極3を得た。
【0241】
(電極3aの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−23)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極3を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−23)が多孔質層に吸着した観察側電極3aを得た。なお、表示素子の作製において、観察側電極3aを用いる場合には、例示化合物(M−23)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0242】
(電極3bの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−39)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極3を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−39)が多孔質層に吸着した観察側電極3bを得た。なお、表示素子の作製において、観察側電極3bを用いる場合には、例示化合物(M−39)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0243】
(電極3cの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−63)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極3を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−63)が多孔質層に吸着した観察側電極3cを得た。なお、表示素子の作製において、観察側電極3cを用いる場合には、例示化合物(M−63)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0244】
(電極3dの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−22)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極3を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−22)が多孔質層に吸着した観察側電極3dを得た。なお、表示素子の作製において、観察側電極3aを用いる場合には、例示化合物(M−22)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0245】
(電極3eの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−42)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極3を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−42)が多孔質層に吸着した観察側電極3eを得た。なお、表示素子の作製において、観察側電極3eを用いる場合には、例示化合物(M−42)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0246】
(電極3fの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−62)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極3を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−62)が多孔質層に吸着した観察側電極3fを得た。なお、表示素子の作製において、観察側電極3fを用いる場合には、例示化合物(M−62)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0247】
(電極4の作製)
二酸化チタン分散液(Solaronix社製 Ti−Nanoxide HT/SP)を電極1上にスクリーンプリントし、120℃のオーブンで焼成して、厚み約5μmの二酸化チタン膜を形成した電極4を得た。
【0248】
(電極4aの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−105)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極4を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−105)が多孔質層に吸着した非観察側の電極4aを得た。なお、表示素子の作製において、非観察側電極4aを用いる場合には、例示化合物(M−105)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0249】
(電極4bの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−151)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極4を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−151)が多孔質層に吸着した非観察側の電極4bを得た。なお、表示素子の作製において、非観察側電極4bを用いる場合には、例示化合物(M−151)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0250】
(電極5の作製)
二酸化チタン分散液(Solaronix社製 Ti−Nanoxide D/SP)を電極2上にスクリーンプリントし、120℃のオーブンで焼成して、厚み約5μmの二酸化チタン膜を形成した電極5を得た。
【0251】
(電極5aの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−104)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極5を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−104)が多孔質層に吸着した非観察側の電極5aを得た。なお、表示素子の作製において、非観察側電極5aを用いる場合には、例示化合物(M−104)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0252】
(電極5bの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−151)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極5を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−151)が多孔質層に吸着した非観察側の電極5bを得た。なお、表示素子の作製において、非観察側電極5bを用いる場合には、例示化合物(M−151)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0253】
(電極5cの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−152)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極5を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−152)が多孔質層に吸着した非観察側の電極5cを得た。なお、表示素子の作製において、非観察側電極5cを用いる場合には、例示化合物(M−152)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0254】
(電極5dの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−97)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極5を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−97)が多孔質層に吸着した非観察側の電極5dを得た。なお、表示素子の作製において、非観察側電極5dを用いる場合には、例示化合物(M−97)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0255】
(電極5eの作製)
ジメチルスルホキシド2質量部に、例示化合物(M−105)を0.1質量部溶解した溶液を調製し、これに電極5を浸して8時間放置し、引き上げて自然乾燥させて例示化合物(M−105)が多孔質層に吸着した非観察側の電極5eを得た。なお、表示素子の作製において、非観察側電極5eを用いる場合には、例示化合物(M−105)は、エレクトロクロミック媒体中に存在するものと定義する。
【0256】
《エレクトロクロミック媒体の調製》
(エレクトロクロミック媒体1の調製)
N−メチルピロリドン5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−9)を1質量部、トリフェニルホスフィン(以下、TPPと略記する)を0.26質量部、(n−CNClO(以下、電解質1と称す)を0.08質量部溶解し、更にポリフッ化ビニリデンを5質量部混合し、加熱溶解して、エレクトロクロミック媒体1を調製した。
【0257】
(エレクトロクロミック媒体2の調製)
上記エレクトロクロミック媒体1の調製において、ポリフッ化ビニリデンの添加溶解前に、例示化合物(M−9)であるN−オキシル化合物(TEMPO)を0.05質量部添加し、溶解させた以外は同様にして、エレクトロクロミック媒体2を調製した。
【0258】
(エレクトロクロミック媒体3の調製)
上記エレクトロクロミック媒体2の調製において、例示化合物(M−9)に代えて、例示化合物(M−33)を用いた以外は同様にして、エレクトロクロミック媒体3を調製した。
【0259】
(エレクトロクロミック媒体4の調製)
上記エレクトロクロミック媒体2の調製において、TPPの0.26質量部を、トリフェニルアンチモン(以下、TPAと略記する)0.35質量部に変更し、例示化合物(M−9)を、例示化合物(M−84)に変更し、更に、例示化合物(2−1)である2,5−ジ−t−アミルベンゾキノンを0.18質量部添加した以外は同様にして、エレクトロクロミック媒体4を調製した。
【0260】
(エレクトロクロミック媒体5の調製)
上記エレクトロクロミック媒体2の調製において、エレクトロクロミック化合物である例示化合物(A−9)を、同量の例示化合物(A−10)に変更し、TPPの0.26質量部を、TPAの0.35質量部に変更し、更に、例示化合物(M−9)を同量の例示化合物(M−100)に変更した以外は同様にして、エレクトロクロミック媒体5を調製した。
【0261】
(エレクトロクロミック媒体6の調製)
上記エレクトロクロミック媒体2の調製において、TPPの0.26質量部を、トリフェニルアーシン(以下、TPANと略記する)0.31質量部に変更し、更に、例示化合物(M−9)を同量の2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム ブロミド(以下、化合物IIと略記する)に変更した以外は同様にして、エレクトロクロミック媒体6を調製した。
【0262】
(エレクトロクロミック媒体7の調製)
上記エレクトロクロミック媒体6の調製において、TPANの0.31質量部を、トリフェニルビスマス(以下、TPBiと略記する)0.44質量部に変更し、化合物IIを同量の1,3,5−トリフェニルホルマザン(以下、化合物IIIと略記する)に変更した以外は同様にして、エレクトロクロミック媒体7を調製した。
【0263】
(エレクトロクロミック媒体8の調製)
N−メチルピロリドン5質量部に、エレクトロクロミック化合物として下記化合物Iを0.5質量部、TPAを0.09質量部、電解質1を0.08質量部、例示化合物(2−1)である2,5−ジ−t−アミルベンゾキノンを0.18質量部、例示化合物(M−98)を0.04質量部加えて溶解し、更にポリフッ化ビニリデンを5質量部混合し、加熱溶解して、エレクトロクロミック媒体8を調製した。
【0264】
【化47】

【0265】
(エレクトロクロミック媒体9の調製)
上記エレクトロクロミック媒体8の調製において、例示化合物(M−9)を0.05質量部追加添加した以外は同様にして、エレクトロクロミック媒体9を調製した。
【0266】
(エレクトロクロミック媒体10の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として上記化合物Iを0.5質量部、TPAを0.09質量部、テトラブチルアンモニウムパークロライド(以下、電解質2と称す)を0.05質量部、例示化合物(M−33)を0.04質量部、例示化合物(M−98)を0.04質量部添加し、溶解し、これにポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、エレクトロクロミック媒体10を調製した。
【0267】
(エレクトロクロミック媒体11の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−2)を0.8質量部、TPPを0.25質量部、電解質2を0.05質量部、9−メチルアクリジン(以下、化合物IVと略記する)を0.05質量部添加、溶解し、これにポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、エレクトロクロミック媒体11を調製した。
【0268】
(エレクトロクロミック媒体12の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−5)を0.8質量部、TPPを0.25質量部、電解質2を0.05質量部、1−ヒドロキシフェナジン(以下、化合物Vと略記する)を0.05質量部、例示化合物(2−7)を0.2質量部添加、溶解し、これにポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、エレクトロクロミック媒体12を調製した。
【0269】
(エレクトロクロミック媒体13の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−11)を0.8質量部、TPPを0.25質量部、電解質2を0.05質量部、例示化合物(M−9)を0.05質量部添加、溶解し、これにポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部加熱溶解して、エレクトロクロミック媒体13を調製した。
【0270】
(エレクトロクロミック媒体14の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−1)を0.8質量部、TPAを0.30質量部、テトラフルオロホウ酸スピロ−(1,1′)−ビピロリジニウム(以下、電解質3と略記する)を0.05質量部、例示化合物(M−33)を0.05質量部、例示化合物(3−1)を0.2質量部添加、溶解し、これにポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、エレクトロクロミック媒体14を調製した。
【0271】
(エレクトロクロミック媒体15の調製)
上記エレクトロクロミック媒体14の調製において、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−1)を同量の例示化合物(A−3)に変更し、例示化合物(M−33)を同量の例示化合物(M−84)に変更した以外は同様にして、エレクトロクロミック媒体15を調製した。
【0272】
(エレクトロクロミック媒体16の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−6)を0.8質量部、TPPを0.30質量部、電解質3を0.05質量部添加、溶解し、これにポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、エレクトロクロミック媒体16を調製した。
【0273】
(エレクトロクロミック媒体17の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−12)を0.8質量部、TPPを0.30質量部、電解質3を0.05質量部、例示化合物(2−1)を0.14質量部添加、溶解し、これにポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、エレクトロクロミック媒体17を調製した。
【0274】
(エレクトロクロミック媒体18の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−1)を0.8質量部、TPAを0.30質量部、電解質2を0.05質量部、例示化合物(M−152)を0.05質量部添加、溶解し、これにポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、エレクトロクロミック媒体18を調製した。
【0275】
(エレクトロクロミック媒体19の調製)
エレクトロクロミック媒体18の調製において、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−1)を同量の例示化合物(A−3)に変更し、例示化合物(M−152)に代えて、同量の4,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェノキサジン(以下、化合物VIと略記する)を用いた以外は同様にして、エレクトロクロミック媒体19を調製した。
【0276】
(エレクトロクロミック媒体20の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−6)を0.8質量部、TPPを0.30質量部、電解質2を0.05質量部、例示化合物(2−1)を0.14質量部添加、溶解し、これにポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、エレクトロクロミック媒体20を調製した。
【0277】
(エレクトロクロミック媒体21の調製)
エレクトロクロミック媒体20の調製において、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−6)を同量の例示化合物(A−11)に変更し、例示化合物(2−1)を除いた以外は同様にして、エレクトロクロミック媒体21を調製した。
【0278】
(エレクトロクロミック媒体22の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−1)を0.8質量部、TPAを0.30質量部、電解液3を0.05質量部、化合物IIを0.04質量部、例示化合物(2−7)を0.14質量部添加、溶解した後、ポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、これに二酸化チタン(平均粒径0.25μm)を2.5質量部添加して分散し、エレクトロクロミック媒体22を調製した。
【0279】
(エレクトロクロミック媒体23の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−3)を0.8質量部、TPAを0.30質量部、電解液3を0.05質量部、例示化合物(M−146)を0.04質量部、例示化合物(2−7)を0.14質量部添加、溶解した後、ポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、これに二酸化チタン(平均粒径0.25μm)を2.5質量部添加して分散し、エレクトロクロミック媒体23を調製した。
【0280】
(エレクトロクロミック媒体24の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−6)を0.8質量部、TPPを0.30質量部、電解液3を0.05質量部、フェロセンを0.02質量部添加、溶解した後、ポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、これに二酸化チタン(平均粒径0.25μm)を2.5質量部添加して分散し、エレクトロクロミック媒体24を調製した。
【0281】
(エレクトロクロミック媒体25の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−12)を0.8質量部、TPPを0.30質量部、電解液3を0.05質量部、例示化合物(M−33)を0.04質量部、例示化合物(3−1)を0.14質量部添加、溶解した後、ポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、これに二酸化チタン(平均粒径0.25μm)を2.5質量部添加して分散し、エレクトロクロミック媒体25を調製した。
【0282】
(エレクトロクロミック媒体26の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−1)を0.8質量部、TPAを0.30質量部、電解液2を0.05質量部、例示化合物(M−33)を0.04質量部添加、溶解した後、ポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、これに二酸化チタン(平均粒径0.25μm)を2.5質量部添加して分散し、エレクトロクロミック媒体26を調製した。
【0283】
(エレクトロクロミック媒体27の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−3)を0.8質量部、TPAを0.30質量部、電解液2を0.05質量部添加、溶解した後、ポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、これに二酸化チタン(平均粒径0.25μm)を2.5質量部添加して分散し、エレクトロクロミック媒体27を調製した。
【0284】
(エレクトロクロミック媒体28の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−6)を0.8質量部、TPPを0.30質量部、電解液2を0.05質量部、例示化合物(3−1)を0.2質量部添加、溶解した後、ポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、これに二酸化チタン(平均粒径0.25μm)を2.5質量部添加して分散し、エレクトロクロミック媒体28を調製した。
【0285】
(エレクトロクロミック媒体29の調製)
ジメチルスルホキシド5質量部に、エレクトロクロミック化合物として例示化合物(A−11)を0.8質量部、TPPを0.30質量部、電解液2を0.05質量部、例示化合物(3−1)を0.2質量部添加、溶解した後、ポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量10万)を2質量部添加して加熱溶解し、これに二酸化チタン(平均粒径0.25μm)を2.5質量部添加して分散し、エレクトロクロミック媒体29を調製した。
【0286】
なお、表2に略称で記載した各添加剤の詳細は、以下の通りである。
【0287】
〈一般式(1)で表される化合物〉
TPP:トリフェニルホスフィン
TPA:トリフェニルアンチモン
TPAN:トリフェニルア−シン
TPBi:トリフェニルビスマス
〈電解質〉
電解質1:(n−CNClO
電解質2:テトラブチルアンモニウムパークロライド
電解質3:テトラフルオロホウ酸スピロ−(1,1′)−ビピロリジニウム
〈還元反応型化合物〉
化合物II:2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム ブロミド
化合物III:1,3,5−トリフェニルホルマザン
化合物IV:9−メチルアクリジン
化合物V:1−ヒドロキシフェナジン
化合物VI:4,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェノキサジン
《表示素子の作製》
〔表示素子1の作製〕
観察側電極として電極1を、非観察側電極として同じく電極1を用い、それぞれの電極が直交して対向するように配置し、一方の電極1の周辺部を、平均粒径が30μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りし、電極1同士を貼り合わせ、加熱押圧して空セルを作製した。この空セルに、上記調製したエレクトロクロミック媒体1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂で封止し、表示素子1を作製した。
【0288】
〔表示素子2〜29の作製〕
上記表示素子1の作製において、観察側電極及び非観察側電極の種類、エレクトロクロミック媒体の種類を、表2に記載の様に変更した以外は同様にして、表示素子2〜29を作製した。
【0289】
【表2】

【0290】
《表示素子の評価》
上記作製した各表示素子を用いて、下記の方法に従って駆動電圧(V)の測定及びメモリー性、繰り返し耐久性の評価を行った。
【0291】
〔駆動電圧の測定〕
各表示素子にテストパターン表示用回路を接続し、電圧を印加する時間を0.5秒に固定し、電圧を段階的に変化させて、駆動電圧を測定した。
【0292】
なお、表示素子1〜21は、エレクトロクロミック化合物の発色ピーク波長での透過率を、表示素子22〜29は、コニカミノルタセンシグ社製の分光測色計CM−3700dで反射率を測定し、着色部分の透過率あるいは反射率が飽和する電圧を駆動電圧とした。
【0293】
〔メモリー性の評価〕
上記駆動電圧の測定により求めた駆動電圧を、夫々の表示素子に0.5秒印加し、表示素子にパターンを表示した後、ただちに電圧印加を停止し、回路をはずして、上記と同様の方法で透過率あるいは反射率の変化を追った。最初の1時間は3分おきに、6時間までは15分おきに、1日までは1時間おきに測定し、その後は3時間おきに測定し、着色部分の透過率あるいは反射率が初期の70%以下に低下するまでの時間を求め、これをメモリー性の尺度とした。
【0294】
×:1時間未満で低下する
△:1時間以上、24時間未満で低下する
○:24時間以上、72時間未満で低下する
◎:72時間以上でも低下が認められない
〔繰り返し駆動耐性の評価〕
表示素子に対し、夫々の駆動電圧において、0.5秒の発色駆動、1秒のブランク、0.5秒の消色駆動(発色とは同じ電圧で逆の極性を印加する)を1サイクルとして駆動操作を繰り返し、繰り返し耐性を評価した。着色部分の透過率あるいは反射率が、初期の70%以下となった時点で繰り返し駆動回数を評価した。
【0295】
×:繰り返し回数が300回未満で低下する
△:繰り返し回数が300回以上、1000回未満で低下する
○:繰り返し回数が1000回以上、3000回未満で低下する
◎:繰り返し回数が3000回以上でも低下が認められない
以上により得られた結果を、表3に示す。
【0296】
【表3】

【0297】
表3に記載の結果より明らかな様に、本発明の表示素子は、比較例に対し、駆動電圧が低く、メモリー性があり、表示素子の繰り返し駆動耐性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の対向する電極間に、エレクトロクロミック媒体を含有した表示素子において、該エレクトロクロミック媒体が、酸化発色型エレクトロクロミック化合物、下記一般式(1)で表される化合物、電解質及び酸化還元反応型化合物を含有していることを特徴とする表示素子。
【化1】

〔式中、Mは周期律表15族の元素であって、窒素を含まない。R、RおよびRはそれぞれ、置換基を有するアリール基または置換基を有さないアリール基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項2】
前記酸化発色型エレクトロクロミック化合物が、下記一般式(A)で表される構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【化2】

〔式中、Xは炭素原子または窒素原子であり、R、Rはそれぞれ、置換または非置換の芳香族基、置換または非置換の複素環を有する基またはフルオラン基を表す。RとRがフルオラン骨格の一部を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子、それぞれ置換または非置換のアシル基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、アリール基、またはアミノ基を表す。〕
【請求項3】
前記エレクトロクロミック媒体が、更に下記一般式(2)または一般式(3)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の表示素子。
【化3】

〔式中、R、R、RおよびR10は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基またはアルコキシカルボニル基を表す。R、R、RおよびR10は、全てが同時に水素原子であることはない。隣り合うRとRは、互いに縮合し、5員または6員の縮合環を形成してもよい。隣り合うRとR10は、互いに縮合し、5員または6員の縮合環を形成してもよい。〕
【化4】

(式中、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基またはアルコキシカルボニル基を表す。R11、R12、R13およびR14は、全てが同時に水素原子であることはない。隣り合うR11とR12、または、隣り合うR13とR14、は、一方または両方が縮合環を形成する。隣り合うR11とR12、または、隣り合うR13とR14、の一方が、縮合環を形成する場合は、他方の2つの基は、共に水素原子である。該縮合環は、5員環または6員環である。〕
【請求項4】
前記エレクトロクロミック媒体が、前記酸化還元反応型化合物として酸化反応型化合物及び還元反応型化合物を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項5】
前記酸化反応型化合物が、N−オキシル誘導体、N−ヒドロキシフタルイミド誘導体、ヒドロキサム酸誘導体のN−O結合を有する化合物及びガルビノキシルのO−位に嵩高い置換基を導入したアリロキシ遊離基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の表示素子。
【請求項6】
前記還元反応型化合物が、エタンジオン若しくはその誘導体、テトラゾリウム塩、ホルマザン若しくはその誘導体、フェナジン若しくはその誘導体、フェノキサジン若しくはその誘導体及びアクリジン若しくはその誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の表示素子。
【請求項7】
一対の対向する電極の少なくとも一つの電極表面が、ナノ多孔質層を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項8】
前記ナノ多孔質層のうち、観察側の電極表面に設けられたナノ多孔質層が、前記酸化反応型化合物を固定化していることを特徴とする請求項7に記載の表示素子。
【請求項9】
前記ナノ多孔質層のうち、非観察側の電極表面に設けられたナノ多孔質層が、前記還元反応型化合物を固定化していることを特徴とする請求項7に記載の表示素子。
【請求項10】
前記エレクトロクロミック媒体が、白色散乱物を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の表示素子。