説明

表示素子

【課題】本発明は、メモリー性を有し、カラー表示が可能で、コントラストが良好であり、高耐久性である表示素子を提供することにある。
【解決手段】1対の対向電極と金属イオンを含有する電解質を有し、周期的に多孔配列した導電性ポリマーが一方の電極上に設置されている表示素子であって、前記多孔配列した導電性ポリマーの多孔質表面に金属イオンを溶解析出することによって反射波長を制御することを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀の溶解析出を利用した反射波長の制御が可能な表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイやCRTディスプレイとは異なる表示方式で、紙のように持ち運びが容易で、読みやすい反射型表示を行う電子ペーパーと言われる表示素子が、各種提案されている。このような電子ペーパーとしては、高コントラストな白黒表示とカラー表示が可能で、メモリー性が有り、繰り返しの書き換えに対する耐久性の高い表示素子が求められている。
【0003】
カラー表示が行える方式として、フォトニック結晶方式の表示素子が注目されている。例えば、エレクトロクロミック化合物であるポリアニリンやプルシアンブルーを用いてフォトニック結晶を作成し、エレクトロクロミック反応を行うことでフォトニック結晶の周期構造と屈折率を変調して反射波長を制御する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、多孔配列した無機透明導電体に銀を溶解析出して高コントラストな白黒表示を行う方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1の方式のポリアニリンを用いた表示素子では下層から表示色以外の光も散乱されてしまうためコントラストが低いという問題があった。無機化合物であるプルシアンブルーの周期構造体を用いた表示素子は繰り返し耐久性が良好であるが、無機構造体であるためポリマーよりも周期構造体自体が脆く、損傷しやすいという問題もありフレキシブル化も困難であった。またメモリー性についてはどちらの周期構造体でも十分ではなかった。特許文献2の方法は高コントラストな白黒表示は可能だがカラー画像を出すことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国公開特許2009/0168147号公報
【特許文献2】特開2008−26454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、メモリー性を有し、カラー表示が可能で、コントラストが良好であり、高耐久性である表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、多孔配列した導電性ポリマーの表面に金属を溶解・析出させることで、構造色による多色表示が可能で、メモリー性を有し、コントラストが良好で高耐久性である表示素子が得られることを確認し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の上記目的は以下の構成により達成できる。
【0008】
1.1対の対向電極と金属イオンを含有する電解質を有し、周期的に多孔配列した導電性ポリマーが一方の電極上に設置されている表示素子であって、前記多孔配列した導電性ポリマーの多孔質表面に金属イオンを溶解析出することによって反射波長を制御することを特徴とする表示素子。
【0009】
2.前記金属イオンが、Ag、Cu、Niであることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0010】
3.前記導電性ポリマーの膜厚が2μm以上20μm以下であることを特徴とする前記1または前記2に記載の表示素子。
【0011】
4.前記導電性ポリマーの屈折率と電解質溶液の屈折率差の絶対値が±0.05以内であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【0012】
5.前記電解質が下記一般式(1)で表される化合物を含有していることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Xは硫黄原子もしくは酸素原子を表し、化合物中の少なくとも1つのXは硫黄原子である。n、mは1以上10以下、aは1以上100以下の整数を表す。RおよびRは解離性プロトンを持たない置換基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良く、RとRで連結して環状構造を形成していてもよい。Rは−CORもしくは−OCORを表す。Rは解離性プロトンを持たない置換基を表し、R同士で連結して環状構造を形成していてもよい。[]内は繰り返し単位を表し、繰り返されている場合、Xが表す原子はそれぞれ異なっていても良い。その場合、同様にRおよびRもそれぞれ異なっていても良く、mの表す整数も異なっていても良い。)
6.前記電解質が下記一般式(2)で表される化合物を含有していることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
【0015】
【化2】

【0016】
〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を構成するのに必要な原子群表す。nは0〜5の整数を表し、Rg21は置換基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRg21は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕
【発明の効果】
【0017】
本発明の手段により、メモリー性を有し、カラー表示が可能で、コントラストが良好であり、高耐久性である表示素子を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】三次元周期性を示す多孔配列を備えた多孔質導電性材料層を有する表示素子のED表示部の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0020】
本発明の多孔配列を有する導電性ポリマーを形成するには、表面に電極を有する基板の電極側に、コロイド結晶粒子の周期性膜を形成し、これに導電性ポリマーを含有する液を付与し、さらに焼成または溶解などによりコロイド結晶粒子を消滅させるという、いわゆるコロイド結晶テンプレート法が用いられる。コロイド結晶は、溶液に懸濁された小さな粒子から通常形成された均質な構造を有する。液体にて、均一の大きさの粒子をゆっくり沈殿させることにより形成される。また電極上に前記コロイド結晶粒子の周期性膜を形成し、電解重合することによってコロイド結晶粒子配列の鋳型を作成した後に溶解などによりコロイド結晶粒子を消滅させる方法で多孔配列した導電性ポリマーを形成する方法も好ましい。
【0021】
球状の孔の直径は、電解質液の浸透と、銀画像の溶解析出反応速度、発色性および導電性ポリマーの強度などから、10nm以上、1.0μm以下が好ましく、より好ましくは、10nm以上、500nm以下である。
【0022】
本発明の表示素子は、閲覧側である透明電極上に金属が析出するため、多孔質導電性材料層は、透明電極上に設けられていることを特徴とする。
【0023】
好ましいコロイド結晶の材料としては、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、シリカなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
コロイド結晶による周期配列の形成は、コロイド結晶の分散液を用いて基板引き上げ法により容易に形成できる。また、コロイド結晶分散液の粘度を調整することで、ブレードコート法、スピンコート法などの方法で塗布することも可能である。
【0025】
この様な周期性を有する多孔導電性ポリマー材料層を形成する際、粘度調整に用いる増粘剤などの添加量は、コロイド結晶の周期性形成に影響のない範囲とすることが必要である。
【0026】
また、粘度を適宜調整することで、ブレードコート法、インクジェット法、印刷法などを用いて塗布膜厚を制御することにより、周期性を有する多孔質導電性材料層を一工程で形成することも可能である。
【0027】
この他、周期性を有する配列を形成する方法としては、文献、A.van Blaaderen et.al.,“Template−directed colloidal crystallization”,Nature,Vol.358321(Jan.1997)に記載のコロイドエピタックシー法が知られている。
【0028】
本発明の多孔配列した導電性ポリマーの膜厚は、反射率の観点から厚いことが好ましいが、膜厚を厚くすると結晶の欠陥が生じやすいため、2μm〜20μmの膜厚が好ましい。
【0029】
以下、本発明の表示素子の主要構成と、本発明に係る周期性を有する多孔導電性ポリマー層の形成方法について、図を用いて説明する。なお、本発明は、ここで例示する図の構成にのみ限定されるものではない。
【0030】
図1は、三次元周期性を示す多孔配列を備えた多孔質導電性材料層を有する表示素子の画像表示部の一例を示す概略断面図である。
【0031】
図1の表示装置の基本構成は、図1のa)に示すように、電極2上にコロイド結晶粒子4(例えば、シリカ、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等)による三次元周期性膜9を形成し、次いで図1のb)に示すように、形成した三次元周期性膜9に導電性ポリマー形成物質(例えば、ポリチオフェン、ポリピロール等)含有液を付与する、もしくは電解重合により導電性ポリマー7を形成させる。その後、図1のc)に示すように、焼結処理や溶媒洗浄等によりコロイド結晶粒子4を消滅させて、三次元周期性を示す多孔配列を備えた多孔配列した導電性ポリマー層10を形成する。
【0032】
本発明の表示素子においては、これらの多孔配列した導電性ポリマー層の孔には、電解質液が十分に充満していることが好ましい。
【0033】
次いで、本発明の表示素子の各構成要素について説明する。
【0034】
〔導電性ポリマー〕
導電性ポリマーとしては、一般に電極に用いられている導電性ポリマーならばいずれも使用できる。例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリセレノフェニレン等、およびそれらの修飾化合物を単独あるいは混合して用いることができる。
【0035】
〔支持電解質〕
本発明の表示素子において、電解質には、以下の化合物を電解質中に含むことができる。カリウム化合物としてKCl、KI、KBr等、リチウム化合物としてLiBF、LiClO、LiPF、LiCFSO等、テトラアルキルアンモニウム化合物として過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。また、特開2003−187881号公報の段落番号〔0062〕〜〔0081〕に記載の溶融塩電解質組成物も好ましく用いることができる。さらに、I/I、Br/Br、キノン/ハイドロキノン等の酸化還元対になる化合物を用いることができる。
〔溶解析出する金属イオン〕
本発明に係る電解質に含まれる溶解析出する金属イオンはカウンターアニオンや中性の配位子を含む金属化合物によって添加されることが好ましい。
【0036】
本発明に係る電解質に含まれる溶解析出する金属イオンは溶解析出が電極上で可能な金属イオンであれば特に制限はないが、発色したときのコントラスト、繰り返し耐久性の観点からAg、Cu、Ni、Bi、Zn、Al、Crのイオンが好ましく、Ag、Cu、Niiのイオンがさらに好ましく、Agイオンが最も好ましい。
【0037】
溶解析出する金属イオンを含有する金属化合物のカウンターアニオンとしては特に制限は無いが、例えば、ハロゲンイオン(例えば、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン等)、脂肪族カルボン酸イオン(酢酸イオン、プロピオン酸イオン等)、芳香族カルボン酸イオン(安息香酸イオン等)、硫酸イオン、スルホン酸イオン(メタンスルホン酸、トシル酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等)、リン酸イオン、リン酸エステルイオン(リン酸モノエチルエステルイオン、リン酸ジエチルエステルイオン等)、過塩素酸イオン、水酸イオン、炭酸イオン、ポリオキシメタレート、BF、SCN、PF、AsF、SbF、SCN、(CFSON−、(CSO等が挙げられ、中でもハロゲンイオン(例えば、塩化物イオン、臭化物イオン等)、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、(CSOが好ましい。
【0038】
本発明に係る電解質に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質液の安定性が向上する。
〔ハロゲンイオン、金属イオン濃度比〕
本発明の表示素子においては、電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる金属イオンの総モル濃度を[Metal](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0039】
式(1):0≦[X]/[Metal]≦0.1
本発明でいうハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。[X]/[Metal]が0.1よりも大きい場合は、金属の酸化還元反応時に、XからXが生じ、Xは析出した金属と容易にクロス酸化して析出した金属を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は金属のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。本発明においては、0≦[X]/[Metal]≦0.001がより好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
【0040】
[酸化還元されうる補助化合物(プロモーター)]
本発明の表示素子においては、金属イオンの溶解析出を促進する目的で、酸化還元されうる補助化合物(以下、プロモーターと記す。)を添加しても良い。プロモーターは酸化還元反応の結果として、可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化しないものでも良いし、変化するもの、即ちエレクトロクロミック化合物で有っても良く、電極上に固定化されていても良く、電解質層中に添加されていても良い。
【0041】
本発明に用いることが出来る好ましいプロモーターとしては、例えば以下のような化合物が挙げられる。
1)TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)等に代表されるN−オキシル誘導体、N−ヒドロキシフタルイミド誘導体、ヒドロキサム酸誘導体等、N−O結合を有する化合物
2)ガルビノキシル等、0−位に嵩高い置換基を導入したアリロキシ遊離基を有する化合物
3)フェロセン等、メタロセン誘導体、
4)ベンジル(ジフェニルエタンジオン)誘導体、
5)テトラゾリウム塩/ホルマザン誘導体、
6)フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アクリジン等のアジン系化合物、
7)ビオロゲン等ピリジニウム化合物。
【0042】
その他、ベンゾキノン誘導体、ベルダジル等ヒドラジル遊離基化合物、チアジル遊離基化合物、ヒドラゾン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアリルアミン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、チアントレン誘導体等もプロモーターとして用いることが出来る。
【0043】
本発明の表示素子に於いては、上記1)及び3)の範疇のプロモーターが好ましく、特にフェロセン誘導体が好ましい。
[電解質溶媒]
溶媒としては、一般に電気化学セルや電池に用いられ、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に溶解析出する金属塩化合物、プロモーター等各種添加剤を溶解できる溶媒であればいずれも使用することができる。
【0044】
具体的には、無水酢酸、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、アセチルアセトン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、プロピオニトリル、ブチロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、メチルピロリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、エチルジメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリへキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリス(トリフフロロメチル)ホスフェート、トリス(ペンタフロロエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、4−メチル−2−ペンタノン、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート、及びエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のポリエチレングリコール類などが使用可能である。
【0045】
さらに、常温溶融塩も溶媒として使用可能である。前記常温溶融塩とは、溶媒成分が含まれないイオン対のみからなる常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示す。常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
【0046】
本発明に用いる電解質溶媒としては、非プロトン性極性溶媒が好ましく、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェートが好ましい。溶媒はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
【0047】
金属イオンが完全に溶解している状態のときに導電性ポリマーと電解質溶媒の屈折率差が大きい場合は白反射率が低くなる場合があり、コントラストの低下につながる。電解質溶媒と導電性ポリマーの屈折率差の絶対値は0.05以内であることが好ましく、0.03以内であることがさらに好ましく、0.01以内であることが最も好ましい。
〔一般式(1)で表される化合物〕
前記一般式(1)において、R、Rで表される置換基としては、解離性プロトンを有していなければ特に制限はなく、たとえば下記の様な置換基が挙げられる。
【0048】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等)、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、ジアリールアミノ基(例えば、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジメシチルアミノ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、ジアルキルカルバモイル基(例えば、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル等)、ジアリールカルバモイル基(例えば、ジフェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、ジアルキルスルファモイル基(例えば、ジメチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル等)、ジアリールスルファモイル基(例えば、ジフェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、ジアルキルアミノカルボニル基(例えば、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基等)、ジアリールアミノカルボニル基(例えば、ジフェニルアミノカルボニル基、ジトリルアミノカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチロイルオキシ基等)、カルボニル基、シアノ基、または複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)を挙げられるが、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、シアノ基であり、更に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基である。これらの置換基はさらに置換基を有していても良く、お互いに連結して縮合環を形成していてもよい。
【0049】
また、ここで言う解離性プロトンを有する基とは、具体的には、例えばヒドロキシル基、スルホ基、カルボキシル基、スルファト基、−CONHSO−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SONHSO−基(スルフォニルスルファモイル基)、スルファモイル基、ホスファト基、ホスホノ基、ボロン酸基、フェノール性水酸基、など、これらのpkaと周りのpHによっては、プロトンが解離する基が挙げられる。
【0050】
前記一般式(1)において、RはCORもしくはOCORを表す。
【0051】
前記一般式(1)において、Rで表される置換基としては、解離性プロトンを有していなければ特に制限はなく、たとえば下記の様な置換基が挙げられる。
【0052】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等)、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、ジアリールアミノ基(例えば、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジメシチルアミノ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、ジアルキルカルバモイル基(例えば、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル等)、ジアリールカルバモイル基(例えば、ジフェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、ジアルキルスルファモイル基(例えば、ジメチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル等)、ジアリールスルファモイル基(例えば、ジフェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、ジアルキルアミノカルボニル基(例えば、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基等)、ジアリールアミノカルボニル基(例えば、ジフェニルアミノカルボニル基、ジトリルアミノカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチロイルオキシ基等)、カルボニル基、シアノ基、または複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)を挙げられるが、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、シアノ基であり、更に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基である。これらの置換基はさらに置換基を有していても良く、お互いに連結して縮合環を形成していてもよい。
【0053】
一般式(1)において、Xは硫黄原子もしくは酸素原子を表し、化合物中の少なくとも一つのXは硫黄原子である。
【0054】
一般式(1)において、n、mはRとX間、およびXとX間に存在する炭素原子の数を表す。この炭素数に特に制限はないが、官能基同士の距離が長すぎると相互作用力が低下するため、性能が発揮されない場合がある。そのため適度な相互作用力を保てる程度の距離である1〜4に設定することが好ましい。更に好ましくはRとX間では2もしくは3、XとX間では2である。
【0055】
一般式(1)において、aは繰り返し単位の数をあらわす。この数に特に制限はないが、繰り返し単位の数が高すぎると溶媒への溶解性が低下するため、電解液作製上問題となる。そのため適度な溶解性を持つ程度の1〜10に設定することが好ましい。さらに好ましくは1〜6である。
【0056】
[]内は繰り返し単位を表し、aが2以上の数を表す場合、Xが複数個存在することになるが、その場合のXはそれぞれ同じであっても異なっていても良く、硫黄原子含有量が多いほど好ましい。またmが表す整数も同じであっても異なっていても良い。
【0057】
上記の場合、R、Rも同様に複数個存在することになるが、その場合はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0058】
次に、一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0059】
【化3】

【0060】
【化4】

【0061】
【化5】

【0062】
【化6】

【0063】
【化7】

【0064】
【化8】

【0065】
〔一般式(2)で表される化合物〕
前記一般式(2)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zはイミダゾール環類を除く含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、Rg21は置換基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRg21は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0066】
一般式(2)のMで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH、N(CH、N(C、N(CH1225、N(CH1633、N(CHCH等が挙げられる。
【0067】
一般式(2)のZを構成成分とする含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0068】
(2)のRg21で表される置換基としては、特に制限は無いが、例えば下記の様な置換基が挙げられる。
【0069】
水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルキルカルボンアミド基(例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等)、アリールカルボンアミド基(例えば、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等)、アルコキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アルキルカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等)、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)を挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0070】
次に、一般式(2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0071】
【化9】

【0072】
【化10】

【0073】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物2−12、2−20が好ましい。
【0074】
〔固体電解質、ゲル電解質〕
本発明表示素子に用いることのできる電解質は、溶媒やイオン性液体から成る溶液状の電解質以外にも、実質的に溶媒を含まない固体電解質や高分子化合物を含有した高粘度な電解質やゲル状の電解質(以下、ゲル電解質)を挙げることができる。
【0075】
本発明に適用可能な固体電解質、ゲル電解質としては、例えば、特開2002−341387号公報に記載の固体電解質、特開2002−341387号公報に記載のポリマー固体電解質、特開2004−20928号公報に記載の高分子固体電解質、特開2004−191945号公報に記載の高分子固体電解質、特開2005−338204号公報に記載の固体高分子電解質、特開2006−323022号公報に記載の高分子固体電解質、特開2007−141658号公報に記載の固体電解質、特開2007−163865号公報に記載の固体電解質、ゲル電解質等を挙げることができる。
【0076】
〔電解質層添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質層に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0077】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0078】
本発明の表示素子において、増粘剤として好ましいのは、平均重合度100〜500のポリエチレングリコールであり、電解質層の有機溶媒に対して質量比で5〜20%の範囲で添加するのが好ましい。
【0079】
〔その他の添加剤〕
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0080】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0081】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0082】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
〔白色散乱物〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱物を含有することが好ましく、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0083】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質層の溶媒(以後、電解質溶媒ともいう)に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0084】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、重量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0085】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0086】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SOM(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0087】
本発明においては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン系化合物を好ましく用いることができる。
【0088】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0089】
本発明に係る水系高分子の平均分子量は、重量平均で10,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは30,000〜500,000の範囲である。
【0090】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0091】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタンが好ましく用いられ、特に無機酸化物(Al、AlO(OH)、SiO等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えてトリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンがより好ましく用いられる。
【0092】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0093】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0094】
多孔質白色散乱層の膜厚は、5〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0095】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水との溶解性が高い化合物が好ましく用いられ、水/アルコール系溶剤との混合比は、質量比で0.5〜20の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10の範囲である。
【0096】
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行っても良い。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0097】
〔電極〕
本発明の表示素子は、対向電極の少なくとも1種が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)、透明導電性ポリマー(PEDOT−PSS等)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0098】
〔層構成〕
本発明の表示素子の対向電極間の構成層について、更に説明する。
【0099】
本発明の表示素子に係る構成層として、正孔輸送材料を含む構成層を設けることができる。正孔輸送材料として、例えば、芳香族アミン類、トリフェニレン誘導体類、オリゴチオフェン化合物、ポリピロール類、ポリアセチレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリトルイジン誘導体、CuI、CuSCN、CuInSe、Cu(In,Ga)Se、CuGaSe、CuO、CuS、CuGaS、CuInS、CuAlSe、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi、MoO、Cr等を挙げることができる。
【0100】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0101】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0102】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0103】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
〔スクリーン印刷〕
本発明においては、シール剤、柱状構造物、電極パターン等をスクリーン印刷法で形成することもできる。スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上に印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写された材料を加熱硬化、乾燥させる。スクリーン印刷法で柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニールエーテル樹脂、ポリビニールケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニールピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解するなどしてペースト状にして用いることが望ましい。
【0104】
以上のようにして柱状構造物等を基板上に形成した後は、所望によりスペーサーを少なくとも一方の基板上に付与し、一対の基板を電極形成面を対向させて重ね合わせ、空セルを形成する。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することにより、貼り合わせて、表示セルが得られる。この表示セル内に、電解質組成物を真空注入法等によって注入することにより、本発明の表示素子が得られる。
〔表示素子の駆動方法〕
本発明の表示素子においては、析出過電圧以上の電圧印加で金属を析出させ、析出過電圧以下の電圧印加で金属の析出を継続させる駆動操作を行なうことが好ましい。この駆動操作を行なうことにより、書き込みエネルギーの低下や、駆動回路負荷の低減や、画面としての書き込み速度を向上させることができる。一般に電気化学分野の電極反応において過電圧が存在することは公知である。例えば、過電圧については「電子移動の化学−電気化学入門」(1996年 朝倉書店刊)の121ページに詳しい解説がある。本発明の表示素子も電極と電解質中の銀との電極反応と見なすことができるので、金属の溶解析出においても過電圧が存在することは容易に理解できる。過電圧の大きさは交換電流密度が支配するので、本発明のように金属が生成した後に析出過電圧以下の電圧印加で金属の析出を継続できるということは、金属表面の方が余分な電気エネルギーが少なく容易に電子注入が行なえると推定される。
【0105】
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
〔カラー表示〕
本発明の表示素子は並置混色、積層混色いずれの方法でも混色することができ、フルカラー表示を行うことが可能である。並置混色とは横方向に素子を配列して混色する方法であり、積層混色とは縦方向に素子を配列して混色する方法である。またカラーの階調を制御するために、本発明の表示素子と白と透明の階調を制御できる表示素子を組み合わせても良い。
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《各構成要素材料の作製》
〔電極の作製〕
(電極1の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、ピッチ145μm、電極幅130μmのITO膜を公知の方法に従って形成して、透明電極(電極1)を得た。
〔ポリメタクリル酸メチル粒子の作製〕
メタクリル酸メチル100質量部を80℃に加温して単量体混合液を調製した。一方、ドデシルスルホン酸ナトリウム0.4質量部をイオン交換水263質量部に溶解させた界面活性剤溶液〔A〕を80℃に加熱し、この界面活性剤溶液と上記の単量体混合液とを混合した後、機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)によって30分間分散処理を行うことにより、乳化分散液を調製した。
【0107】
撹拌装置、加熱冷却装置、窒素導入装置、および原料・助剤仕込み装置を備えた反応容器に、上記の乳化分散液とドデシルスルホン酸ナトリウム0.2質量部をイオン交換水142質量部に溶解させた界面活性剤溶液〔B〕を仕込み、窒素気流下200rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この溶液に過硫酸カリウム1.4質量部、水54質量部を投入し、3時間重合処理を行い、その後、重合反応物を濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させることによって、平均粒径が200nm、CV値が5%で単分散性の高いポリメタクリル酸メチル粒子を作製した。
【0108】
ここで平均粒径とは、個数基準における平均径であり、CV値とは、個数基準における粒度分布による値である。平均粒径およびCV値は、具体的には以下の方法によって測定されるものである。
【0109】
すなわち、平均粒径は、走査型電子顕微鏡「JSM−7410」(日本電子社製)を用いて50,000倍の写真を撮影し、この写真画像における球体200個について、それぞれ最大長を測定し、その個数平均値を算出することにより、得られるものである。ここに、「最大長」とは、球体の周上の任意の2点による2点間距離のうち、最大のものをいう。
【0110】
また、CV値は、個数基準の粒度分布における標準偏差および上記の平均粒径の値を用いて下記式(CV)より算出されるものである。
式(CV):CV値(%)=((標準偏差)/(平均粒径))×100
〔多孔質導電性材料層の形成〕
(多孔配列した無機導電性層1の形成)
電極1上に、平均粒径が120nmのポリスチレンラテックス粒子の水分散体を用いて、基板引き上げ法により、ラテックス粒子の単層膜を形成した。これに、ITOスラリーを付与し、150℃で5分間の乾燥処理を行った後、大気中500℃で60分間の焼成処理を行い、ラテックス粒子を除去し、ITOの多孔質導電性材料層1を形成した。
(多孔配列した導電性ポリマー層2の形成)
電極1上に、平均粒径が200nmのシリカ粒子の水分散体を用いて、基板引き上げ法によりラテックス粒子の三次元配列膜を形成した。この周期配列を保ったままピロールの電解液の中で電解重合してポリピーロール膜を形成した。その後フッ化水素酸で処理することでシリカ粒子を除去し、ポリピロールの多孔配列した導電性ポリマー層2を形成した。
(多孔配列した導電性ポリマー層3の形成)
電極1上に、平均粒径が220nmのポリメタクリル酸メチル粒子の水分散体を用いて基板引き上げ法により、ラテックス粒子の三次元配列膜を形成した。これに、バイエル社のBaytron P(標準品)を付与し、70℃で80分間の乾燥処理を行った後、THFで処理を行い、ポリメタクリル酸メチル粒子を除去し、PEDOTの多孔配列した導電性ポリマー層3を形成した。このときの膜厚は10μmであった。
(多孔配列した導電性ポリマー層4の形成)
電極1上に、平均粒径が220nmのポリメタクリル酸メチル粒子の水分散体を用いて基板引き上げ法により、ラテックス粒子の三次元配列膜を形成した。このとき引き上げ速度を制御して膜厚を18μmとした。バイエル社のBaytron P(標準品)を付与し、70℃で80分間の乾燥処理を行った後、THFで処理を行い、ポリメタクリル酸メチル粒子を除去し、PEDOTの多孔配列した導電性ポリマー層4を形成した。
(多孔配列した導電性ポリマー層5の形成)
電極1上に、平均粒径が220nmのポリメタクリル酸メチル粒子の水分散体を用いて基板引き上げ法により、ラテックス粒子の三次元配列膜を形成した。このとき引き上げ速度を制御して膜厚を22μmとした。これに、バイエル社のBaytron P(標準品)を付与し、70℃で80分間の乾燥処理を行った後、THFで処理を行い、ポリメタクリル酸メチル粒子を除去し、PEDOTの多孔配列した導電性ポリマー層5を形成した。
(多孔配列した導電性ポリマー層6の形成)
電極1上に、平均粒径が220nmのポリメタクリル酸メチル粒子の水分散体を用いて基板引き上げ法により、ラテックス粒子の三次元配列膜を形成した。このとき引き上げ速度を制御して膜厚を40μmとした。これに、バイエル社のBaytron P(標準品)を付与し、70℃で80分間の乾燥処理を行った後、THFで処理を行い、ポリメタクリル酸メチル粒子を除去し、PEDOTの多孔配列した導電性ポリマー層6を形成した。
(多孔配列した導電性ポリマー層7の形成)
電極1上に、平均粒径が220nmのポリメタクリル酸メチル粒子の水分散体を用いて基板引き上げ法により、ラテックス粒子の三次元配列膜を形成した。このとき引き上げ速度を制御して膜厚を2.2μmとした。これに、バイエル社のBaytron P(標準品)を付与し、70℃で80分間の乾燥処理を行った後、THFで処理を行い、ポリメタクリル酸メチル粒子を除去し、PEDOTの多孔配列した導電性ポリマー層7を形成した。
【0111】
(多孔配列した導電性ポリマー層8の形成)
電極1上に、平均粒径が220nmのポリメタクリル酸メチル粒子の水分散体を用いて基板引き上げ法により、ラテックス粒子の三次元配列膜を形成した。このとき引き上げ速度を制御して膜厚を1.8μmとした。これに、バイエル社のBaytron P(標準品)を付与し、70℃で80分間の乾燥処理を行った後、THFで処理を行い、ポリメタクリル酸メチル粒子を除去し、PEDOTの多孔配列した導電性ポリマー層8を形成した。このときの膜厚は1.8μmであった。
【0112】
(多孔配列した導電性ポリマー層9の形成)
電極1上に、平均粒径が220nmのポリメタクリル酸メチル粒子の水分散体を用いて基板引き上げ法により、ラテックス粒子の三次元配列膜を形成した。このとき引き上げ速度を制御して膜厚を0.8μmとした。これに、バイエル社のBaytron P(標準品)を付与し、70℃で80分間の乾燥処理を行った後、THFで処理を行い、ポリメタクリル酸メチル粒子を除去し、PEDOTの多孔配列した導電性ポリマー層9を形成した。
(多孔配列したプルシアンブルー層11の形成)
米国特許出願 第2009/0168147号に記載の方法で作製した。
【0113】
〔電解質の調製〕
(電解質液1の調製)
γ−ブチロラクトン2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mgを加えて完全に溶解させた後に、トリエチルアンモニウムブロマイド0.025g加えて1時間攪拌し、電解液1を得た。
(電解質液2の調整)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、トリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液2を得た。
(電解質液3の調製)
γ−ブチロラクトン2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、塩化銅(II)2水和物55mgを加えて完全に溶解させた後に、トリエチルアンモニウムブロマイド0.025g加えて1時間攪拌し、電解液3を得た。
(電解質液4の調整)
γ−ブチロラクトン2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、塩化ニッケル42mgを加えて完全に溶解させた後に、トリエチルアンモニウムブロマイド0.025g加えて1時間攪拌し、電解液4を得た。
(電解質液5の調整)
γ−ブチロラクトン2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、酢酸コバルト57mgを加えて完全に溶解させた後に、トリエチルアンモニウムブロマイド0.025g加えて1時間攪拌し、電解液5を得た。
(電解質液6の調整)
γ−ブチロラクトン2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(II)116mgを加えて完全に溶解させた後に、トリエチルアンモニウムブロマイド0.025g加えて1時間攪拌し、電解液6を得た。
(電解質液7の調整)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、化合物A−1を1.85gと化合物2−5 0.15gとトリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液7を得た。
(電解質液8の調整)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、化合物A−1を1.85gと化合物2−12 0.15gとトリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液8を得た。
(電解質液9の調整)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、化合物A−8を1.75gと化合物2−13 0.13gとトリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液9を得た。
(電解質液10の調整)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、化合物A−4を1.75gと化合物2−13 0.13gとトリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液10を得た。
(電解質液11の調整)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、化合物A−7を1.75gと化合物2−13 0.13gとトリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液11を得た。
(電解質液12の調整)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、化合物A−54を1.78gと化合物2−20 0.16gトリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液12を得た。
(電解質液13の調整)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、化合物A−5を1.78gとトリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液13を得た。
(電解質液14の調整)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、化合物2−12を0.28gとトリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液14を得た。
(電解質液15の調整)
γ−ブチロラクトン2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、化合物A−54を1.78gと化合物2−20 0.16gトリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液15を得た。
(電解質液16の調整)
アセトニトリル2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、化合物A−54を1.78gと化合物2−20 0.16gトリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液16を得た。
(電解質液17の調整)
ジメチルホルムアミド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、化合物A−54を1.78gと化合物2−20 0.16gトリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液17を得た。
(電解質液18の調整)
ジエチレングリコール2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mg、加えて完全に溶解させた後に、化合物A−54を1.78gと化合物2−20 0.16gトリエチルアンモニウムブロマイド0.025gを加えて、1時間攪拌し、電解液18を得た。
(電解質液19の調整)
ジメチルホルムアミド2.5g中に、過塩素酸テトラブチルアンモニウム0.1gを加えて、1時間攪拌し、電解液19を得た。
〔白色散乱層の形成〕
(白色散乱層塗布液の調製)
ポリビニルアルコール(平均分子量30000)2質量%を含む水溶液中に、平均粒径が20nmの酸化チタン20質量%を超音波分散機で分散させて、白色散乱層塗布液を得た。
【0114】
(白色散乱層1の形成)
電極1の上に、白色散乱層塗布液を、乾燥後の平均膜厚が20μmとなるようにスクリーン印刷し、その後、50℃で30分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、85℃で1時間加熱して、多孔質白色散乱層1を形成した。
【0115】
《光学素子の作製》
表1および表2の組み合わせで作製した各電極基板を、エポキシ系硬化樹脂を使用して貼り合わせた後、加熱押圧して空セルを形成した。次いで、この空セルに表1に記載の各電解質液を真空注入し、注入口をエポキシ系紫外線硬化樹脂にて封止して、表1および表2に示す様に、表示素子1〜28、A−1〜A−5を作製した。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
《表示素子の評価》
(多孔質導電性材料層の孔の周期性確認と素子性能確認)
各表示素子の作製した周期性を有する多孔質導電性材料層の周期性は、電子顕微鏡による孔配列の撮影画像を用い評価した。その結果すべての電極で周期構造を確認した。
【0119】
各表示素子に1.5Vの電圧を3秒間印加して白色を表示させた後に、−1.5Vまで電圧を走引した。このとき本発明の素子はすべて鮮やかな青→緑→赤への色変化を示した。
【0120】
(コントラストの評価)
上記で作製した各表示素子に1.5Vの電圧を3秒間印加して白色を表示させた後に、−1.5Vまで電圧を走引した。このとき青色に発色したところで電源を切り、表示素子の任意の2箇所の反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定し、青色のコントラストを反射率の差から算出した。コントラストが15以上を◎、10〜14を○、5〜9を△、0〜4を×とした。
【0121】
同様に各表示素子に1.5Vの電圧を3秒間印加して白色を表示させた後に、−1.5Vまで電圧を走引した。このとき黒色に発色したところで電源を切り、表示素子の任意の2箇所の反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定し、黒色のコントラストを反射率の差から算出した。コントラストが15以上を◎、10〜14を○、5〜9を△、0〜4を×とした。
(耐久性の評価)
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、各表示素子の表示電極側に+1.5Vの電圧を1秒間印加した後に−1.2Vの電圧を0.5秒間印加して発色した色の反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。同様な駆動条件で合計10回駆動させ、得られた反射率の平均値をRave1とした。さらに3万回繰返し駆動させた後に同様な方法でRave2を求めた。ΔR=100×(Rave2/Rave1)とし、ΔRを繰返し駆動させたときの反射率を安定性の指標とした。ΔRが100≧ΔR>95を◎、95≧ΔR>90を○、90≧ΔR>85を△、ΔR≦85を×とした。
【0122】
次に定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、各表示素子の表示電極側に+1.5Vの電圧を1秒間印加した後に−1.2Vの電圧を0.5秒間印加して発色した色の反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dでRを測定した。次に作製した表示素子に指を100回押しつけて圧力を加えた後にRを求めた。ΔR=100×(Rave2/Rave1)とし、表示素子に指を100回押しつけて圧力を加えた前後の反射率を安定性の指標とした。ΔRが100≧ΔR>95を◎、95≧ΔR>90を○、90≧ΔR>85を△、ΔR≦85を×とした。
【0123】
〔メモリー性の評価〕
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、各表示素子の表示電極側に+1.5Vの電圧を1.5秒間印加して白表示させた後に、赤色を示し、500nmの反射率が5%になるように調整した。次に赤色表示させた表示素子を50℃の環境下で放置し、15分後の反射率を測定し、反射率5%からの変化量をΔRとしてΔRをメモリー性の指標とした。この時の反射率はコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した波長500nmでの反射率とする。このΔRが3%以内のものを◎、4%〜6%を○、7%〜12%を△、13%以上を×とした。
【0124】
その結果を、表3,表4に示す。
【0125】
【表3】

【0126】
【表4】

【0127】
表3および表4に示すように、本発明の表示素子は全ての評価項目で満足のいく結果を示していることが解る。
【符号の説明】
【0128】
1、2 電極
3 電解質
4 コロイド結晶ラテックス粒子
5 二次元周期性膜
6 多孔質白色散乱層
7 導電性形成物質含有液
8 二次元周期性を示す多孔配列を備えた多孔質導電性材料層
9 三次元周期性膜
10 次元周期性を示す多孔配列を備えた多孔質導電性材料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の対向電極と金属イオンを含有する電解質を有し、周期的に多孔配列した導電性ポリマーが一方の電極上に設置されている表示素子であって、前記多孔配列した導電性ポリマーの多孔質表面に金属イオンを溶解析出することによって反射波長を制御することを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記金属イオンが、Ag、Cu、Niであることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記導電性ポリマーの膜厚が2μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記導電性ポリマーの屈折率と電解質溶液の屈折率差の絶対値が±0.05以内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項5】
前記電解質が下記一般式(1)で表される化合物を含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
【化1】

(式中、Xは硫黄原子もしくは酸素原子を表し、化合物中の少なくとも1つのXは硫黄原子である。n、mは1以上10以下、aは1以上100以下の整数を表す。RおよびRは解離性プロトンを持たない置換基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良く、RとRで連結して環状構造を形成していてもよい。Rは−CORもしくは−OCORを表す。Rは解離性プロトンを持たない置換基を表し、R同士で連結して環状構造を形成していてもよい。[]内は繰り返し単位を表し、繰り返されている場合、Xが表す原子はそれぞれ異なっていても良い。その場合、同様にRおよびRもそれぞれ異なっていても良く、mの表す整数も異なっていても良い。)
【請求項6】
前記電解質が下記一般式(2)で表される化合物を含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
【化2】

〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を構成するのに必要な原子群表す。nは0〜5の整数を表し、Rg21は置換基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRg21は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕

【図1】
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【公開番号】特開2011−81295(P2011−81295A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234991(P2009−234991)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】