説明

表示装置

【課題】第1電極と第2電極の間に帯電した粒子を含む表示装置において、画素表面と帯電粒子の貼り付き力を、少なくとも2段階以上に変化させることによって、LookUpTableを参照することやリセットを行なうことをせずに、可逆的な階調表示を実現した。したがって、この構成はコスト面や性能面でのデメリットを抱えることなく、階調表示を行なうことができる。
【解決手段】所定の間隔を空けて配置された表示側基板および後方側基板と、該両基板間に挟持された複数の帯電粒子と、該後方側基板上に配置された第1電極と第2電極と、該表示側基板と後方側基板との間隔を維持するために設けられた支持体と、着色した粒子を移動させて表示を作る表示装置において、同一画素内において、画素表面と帯電粒子の貼り付き力を、少なくとも2段階以上に変化させることを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報機器の発達に伴い、低消費電力かつ薄型の表示装置のニーズが増しており、これらのニーズに合わせた表示装置の研究、開発が盛んに行われている。
【0003】
特にウエアラブルPCや電子手帳等の用途から、屋外で使用されることが多く、低消費電力かつ省スペースであることが望まれるため、例えば液晶ディスプレイ等の薄型ディスプレイによる表示機能と座標入力処理を一体化し、ディスプレイに表示された内容をペン或いは指で押圧操作することにより直接的に入力できる物が製品化されている。
【0004】
しかし、多くの液晶はいわゆるメモリ性がないため、表示期間中は液晶に対して電圧印加を行ない続ける必要がある。一方で、メモリ性を有する液晶においては、ウエアラブルPCのようにさまざまな環境における使用を想定した場合の、信頼性を確保することが難しく実用化には至っていない。
【0005】
そこで、メモリ性を有する、薄型軽量ディスプレイ方式の一つとして、特許文献1に示される電気泳動表示装置がある。この電気泳動表示装置のことを、本明細書においては、in−plane型の電気泳動表示装置と呼ぶことにする。
【0006】
in−plane型の電気泳動表示装置は、図7に示すように、所定間隙を開けた状態に配置された一対の基板と、その基板間隙に注入された絶縁性液体と、該絶縁性液体に分散された多数の帯電泳動粒子と、該絶縁性液体に近接するように配置された一対の電極と、これら電極を覆うように絶縁層とを備えている。
【0007】
そして、例えば、帯電泳動粒子104を広い面積に配置した場合(図7(a)参照)と帯電泳動粒子104を狭い面積に集積させた場合(図7(b)参照)との色の違いを利用して種々の表示を行なうようになっている。なお、図7では帯電泳動粒子104を黒色、絶縁層107の色を白色としたが、必ずしも限定されるものではない。また、図中の符号105は画素電極を示し、符号106は共通電極を示す。共通電極106は画素を仕切るように配置され、これらの電極105、106はそれぞれ絶縁膜107、108で覆われている。ここでは、共通電極106と絶縁膜108を合わせて、隔壁112と呼ぶことにする。また、符号103は絶縁性液体を示す。
【0008】
in−plane型の電気泳動表示装置において、階調を表示する方法として、主にパルス幅変調(PWM変調)と振幅変調(AM変調)の2つが存在する。パルス幅変調は、振幅を一定にして所望の階調が表示されるパルス幅をもつ電圧を印加する方法である。一方、振幅変調は、パルス幅を一定にして所望の階調が表示される振幅をもつ電圧を印加する方法である。
【特許文献1】特許第3421494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、パルス幅変調(PWM変調)と振幅変調(AM変調)のいずれの方法を用いたとしても、階調表示の際に問題が生じる。以下、帯電泳動粒子の色が黒色、第2基板上の絶縁層の色が白色、帯電極性が+のときの場合を例にとり、詳しく説明する。
【0010】
in−plane型の電気泳動表示装置においては、画素の真ん中で電界が弱く、電極105と106が最接近する画素の隔壁近傍で電界が強い。このため、階調を白側から黒側に遷移させるべく、電極106から105に電界が向かうように電極間に電圧を印加すると、まず隔壁近傍の電極105上に粒子が貼り付き始め、次いで画素の真ん中の電極105上にも粒子が到達する。一方、階調を黒側から白側に遷移させるべく、電極105から106に電界が向かうように電極間に電圧を印加すると、まず隔壁近傍の電極105上の粒子が剥がれ始め、次いで画素の真ん中の電極105上の粒子が剥がれる。すなわち画素の真ん中の粒子の動きは、隔壁近傍の粒子の動きに比べて、反応が遅い。
【0011】
以上のことを図示すると、階調が白側から黒側に遷移するとき図3のようになり、黒側から白側に遷移するとき図4のようになる。図3と図4は1画素の平面図であり、黒い部分は画素が粒子で覆われている領域であり、白い部分は画素が粒子で覆われていない領域であり絶縁層の白色が観察者に見える。
【0012】
ここで階調を黒側から白側に遷移させ、その途中で再度黒側に遷移させることを考えると、図5のようになる。さらに階調表示を繰り返すと、画素面内の粒子分布がより複雑になる。このように、リセットを行なわないで階調表示を繰り返すと、ある階調に対する粒子分布が一意に決まらない。すなわち、階調表示が可逆的でないため、駆動制御が困難である(一方、図6は理想的な階調表示である。この場合だと、白側⇔黒側の階調表示を際限なく往復することができる。すなわち、階調表示を可逆的に行なうことが可能である)。
【0013】
以上述べたとおり、特許文献1に開示されるin−plane型の電気泳動表示装置においては、階調表示の際に階調表示が非可逆的であるという問題点が存在する。
【0014】
また、ある階調表示から別の階調表示に直接遷移する手段として、駆動履歴をメモリし、予め用意したLookUpTableを参照することにより、次に表示する階調のための駆動波形を決定する方法も考えられる。しかしこの方法だと、駆動履歴とLookUpTableをそれぞれ記憶させる領域を表示装置内に確保する必要があり、コスト面でデメリットがある。
【0015】
さらに、直接遷移を行なわず、ある階調表示をしている際に、一旦、完全に白あるいは黒を表示するリセットを介してから、次の階調を表示する方法も考えられる。しかし、この方法では、階調から階調への表示の際に、一旦ディスプレイ全面に、白あるいは黒が表示されることになり、目障りである。また動画を表示するときなどに支障をきたす。
【0016】
本発明は、以上の点に着目して成されたもので、第1電極と第2電極の間に帯電した粒子を含む表示装置において、画素表面と帯電粒子の貼り付き力を、少なくとも2段階以上に変化させることによって、LookUpTableを参照することやリセットを行なうことをせずに、可逆的な階調表示を実現した。したがって、この構成はコスト面や性能面でのデメリットを抱えることなく、階調表示を行なうことができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、
所定の間隔を空けて配置された表示側基板および後方側基板と、該両基板間に挟持された複数の帯電粒子と、該後方側基板上に配置された第1電極と第2電極と、該表示側基板と後方側基板との間隔を維持するために設けられた支持体と、着色した粒子を移動させて表示を作る表示装置において、
同一画素内において、画素表面と帯電粒子の貼り付き力を、少なくとも2段階以上に変化させることを特徴とする表示装置を提供する。
【0018】
また本発明は、
所定の間隔を空けて配置された表示側基板および後方側基板と、該両基板間に挟持された複数の帯電粒子および分散媒と、該後方側基板上に配置された第1電極と第2電極と、該表示側基板と後方側基板との間隔を維持するために設けられた支持体と、着色した粒子を移動させて表示を作る電気泳動表示装置において、
同一画素内において、画素表面と帯電粒子の貼り付き力を、少なくとも2段階以上に変化させることを特徴とする電気泳動表示装置を提供する。
【0019】
また本発明は、
前記電気泳動表示装置が、前記表示側基板と後方側基板との間隔を維持するために設けられた支持体が1つの画素を取り囲む隔壁を形成し、前記後方側基板に前記第1電極、前記隔壁に前記第2電極を配置し、
同一画素内において、前記後方側基板側の画素表面と帯電粒子の貼り付き力を、少なくとも2段階以上に変化させることを特徴とする電気泳動表示装置を提供する。
【0020】
また本発明は、
前記画素表面と粒子の貼り付き力を、少なくとも2段階以上に変化させるために、画素表面を構成する材料として、少なくとも2種類以上の材料を使い分けることを特徴とする反射型表示装置あるいは電気泳動表示装置の製造方法を提供する。
【0021】
また本発明は、
前記画素表面と粒子の貼り付き力を、少なくとも2段階以上に変化させるために、同一画素内の領域によってドライエッチング時間の長さを少なくとも2段階以上変えることを特徴とする反射型表示装置あるいは電気泳動表示装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、第1電極と第2電極の間に帯電した粒子を含む表示装置において、画素表面と帯電粒子の貼り付き力を、少なくとも2段階以上に変化させることによって、LookUpTableを参照することやリセットを行なうことをせずに、可逆的な階調表示を実現した。したがって、この構成はコスト面や性能面でのデメリットを抱えることなく、階調表示を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図を参照して、本発明の実施形態について説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
[実施形態1]
本発明の第一の実施形態を図1に示す。図1の(a)は一画素の断面図、(b)は一画素の平面図である。本来、分散液103は帯電泳動粒子を含むが、図1では説明のために省略している。
【0025】
本実施形態における電気泳動表示装置は、所定間隙を開けた状態に配置された一対の基板と、その基板間隙に注入された絶縁性液体と、該絶縁性液体に分散された多数の帯電泳動粒子と、該絶縁性液体に近接するように配置された一対の電極と、これら電極を覆うように絶縁層108〜110とを備えている。図1には帯電泳動粒子は示されていないが、実際には帯電泳動粒子を広い面積に配置した場合と帯電泳動粒子104を狭い面積に集積させた場合との色の違いを利用して種々の表示を行なうようになっている。なお、図1では帯電泳動粒子104を黒色、絶縁層109と110の色を白色としたが、必ずしも限定されるものではない。また、図中の符号105は画素電極を示し、符号106は共通電極を示す。共通電極106は画素を仕切るように配置され、これらの電極106は絶縁膜108、電極105は絶縁膜109と110でそれぞれ覆われている。ここでは、共通電極106と絶縁膜108を合わせて、隔壁112と呼ぶことにする。また、符号103は絶縁性液体を示す。
【0026】
以下、絶縁層109と110について、より詳しく説明する。
【0027】
絶縁層109と110は、それぞれに対して、帯電泳動粒子の貼り付く力が異なる。ここで、帯電泳動粒子に対して、109を第一の貼り付き力を有する絶縁膜として、110を第二の貼り付き力を有する絶縁膜とすると、第二の貼り付き力の方が第一の貼り付き力よりも大きくする。
【0028】
これを実現するために、本実施形態では、隔壁近傍の絶縁層109と画素中心の絶縁膜110のそれぞれに対するドライエッチングの長さを変える。絶縁層に対してアルゴンあるいは酸素などでドライエッチングを行なうと、表面が粗くなる。そしてドライエッチング時間が長ければ長いほど、粒子と絶縁層の貼り付く力が増す。この効果を利用して、隔壁形成後あるいは隔壁形成前に、画素中心の絶縁膜110をレジストなどでマスキングし、その上で、絶縁膜をアルゴンあるいは酸素などで画素表面をドライエッチングする。絶縁膜110上のレジストが少なくなる或いは無くなるまで、ドライエッチングを続けると、109の表面は粗くなり、粒子と絶縁層の貼り付く力が増す。なお、余分なレジストは適当なレジスト剥離液により除去する。また、隔壁形成後にドライエッチングを行なった場合、隔壁の一部が削られるが、あらかじめそれを見積もって必要な高さよりも高く隔壁を形成しておく。
【0029】
このようにして、絶縁層109と110における、粒子に対する貼り付き力を変化させる。本実施形態で作製した画素において、階調を黒側から白側に遷移させるべく、電極105から106に電界が向かうように電極間に電圧を印加すると、まず画素の真ん中の電極105上の粒子が剥がれ始め、次いで隔壁近傍の電極105上の粒子が剥がれる。一方、階調を白側から黒側に遷移させるときには、電極106から105に電界が向かうように電極間に電圧を印加すると、まず隔壁近傍の電極105上に粒子が貼り付き始め、次いで画素の真ん中の電極105上にも粒子が到達する。以上の本実施形態における階調表示時の粒子の分布を模式的に表わすと図6のようになる。この場合、白側⇔黒側の階調表示を際限なく往復することができる。すなわち、階調表示を可逆的に行なうことが可能である。
【0030】
なお、本実施形態においては、ドライエッチングの長さを変えることによって、絶縁層の粒子に対する貼り付く力を変化させたが、絶縁層109と110で異なる材料を用いることによって、それを実現しても良い。
【0031】
[実施形態2]
実施形態1では、同一画素内において、画素表面を形成する絶縁層と帯電粒子の貼り付き力が、隔壁近傍と画素中心の2つの領域で異なるという構成であったが、貼り付き力が3つの領域で互いに異なっても良い。本実施形態では、画素表面を形成する絶縁層と帯電粒子の貼り付き力が画素中心から隔壁近傍に近づくにつれて大きくなり、その変化が3段階で行なわれる。
【0032】
図2は、本実施形態の画素の平面図を示す。絶縁層109、110、111が、帯電泳動粒子に対して、それぞれ第一の貼り付き力、第二の貼り付き力、第三の貼り付き力を有する。それらの関係は、(第三の貼り付き力)>(第二の貼り付き力)>(第一の貼り付き力)となるように設定する。そのために、例えば、まず絶縁層110と111の領域に対してレジストなどでマスキングした上でドライエッチングを行ない、次いで絶縁層111の領域のみに対してレジストなどでマスキングした上でドライエッチングを行なう。実施形態1で示したとおり、ドライエッチングの時間が長ければ長いほど表面が粗くなり、粒子と絶縁層の貼り付く力が増す。
【0033】
このようにして、絶縁層109〜111における、粒子に対する貼り付き力を変化させる。本実施形態で作製した画素において、階調を黒側から白側に遷移させるべく、電極105から106に電界が向かうように電極間に電圧を印加すると、まず絶縁層111上の粒子が剥がれ始め、次いで絶縁層110上の粒子が剥がれ、最後に絶縁層109上の粒子が剥がれる。
【0034】
一方、階調を白側から黒側に遷移させるときには、電極106から105に電界が向かうように電極間に電圧を印加すると、まず絶縁層109上に粒子が貼り付き始め、次いで絶縁層110上に粒子が貼り付き、最後に絶縁層110上に粒子が到達する。このような階調表示を行なった場合、白側⇔黒側の階調表示を際限なく往復することができる。すなわち、より精密な階調表示を可逆的に行なえるようになる。
【0035】
なお、本実施形態では、同一画素内において、画素表面を形成する絶縁層と帯電粒子の貼り付き力が3段階に異なるという構成であったが、貼り付き力が4つの領域で互いに異なっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の電気泳動表示装置の構成を示す断面図および平面図
【図2】本発明の電気泳動表示装置の構成を示す平面図
【図3】従来の電気泳動表示装置の一画素内での粒子分布を示す平面模式図
【図4】従来の電気泳動表示装置の一画素内での粒子分布を示す平面模式図
【図5】従来の電気泳動表示装置の一画素内での粒子分布を示す平面模式図
【図6】本発明の電気泳動表示装置の一画素内での粒子分布を示す平面模式図
【図7】従来の電気泳動表示装置の構成を示す断面図および平面図
【符号の説明】
【0037】
101 第1基板
102 第2基板
103 分散液
104 帯電泳動粒子
105 第1電極
106 第2電極
107 絶縁膜(絶縁層)
108 絶縁膜(絶縁層)
109 第一の貼り付き力を有する絶縁膜(絶縁層)
110 第二の貼り付き力を有する絶縁膜(絶縁層)
111 第三の貼り付き力を有する絶縁膜(絶縁層)
112 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を空けて配置された表示側基板および後方側基板と、該両基板間に挟持された複数の帯電粒子と、該後方側基板上に配置された第1電極と第2電極と、該表示側基板と後方側基板との間隔を維持するために設けられた支持体と、着色した粒子を移動させて表示を作る表示装置において、
同一画素内において、画素表面と帯電粒子の貼り付き力を、少なくとも2段階以上に変化させることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−65307(P2007−65307A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251486(P2005−251486)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)