説明

表示装置

【課題】ケース体の前面側に貼付された表示部を設けた表示パネルを備えた表示装置に於いて、ケース体に設けた空気逃げ溝から表示部への水の浸入を防ぐことのできる表示装置を提供する。
【解決手段】透光部4を有するケース体5と、このケース体5の前面側に貼付され透光部4に対応した箇所に表示部を設けた表示パネル9とを備え、透光部4と表示パネル9の端23との間に対応したケース体5の前面部18に貫通穴3を設け、この貫通穴3に装着された押釦6の周囲に隙間部S(凹部)を形成し、この隙間部Sと透光部4とを繋ぐ第1の空気逃げ溝21と、隙間部Sと端23に対応した箇所とを繋ぐ第2の空気逃げ溝22とを各々ケース体5に設け、隙間部Sの深さは第1の空気逃げ溝21の深さよりも深くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業機械や建設機械あるいはオートバイなどに搭載され、表示パネルが貼付されたケース体を備えた表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操作部材や表示部などが備えられたケース体の前面側に表示パネルを貼ったものとして、例えば特許文献1がある。特許文献1に記載されている操作パネルは、支持体3(ケース体)の前面側に操作孔31を設け、この操作孔31に支持体3内に収納されているスイッチ22を押圧操作する弾性部材4を操作孔31を塞ぐように配設し、弾性部材4を覆うように支持体3の前面側に表示部12が設けられたパネルシート1(表示パネル)が貼ってある。そして、弾性部材4周辺とパネルシート1との間にできる密封空間内の膨張した空気を外部に逃がすための通気路33と通気孔32を支持体3に設けたというものである。
【特許文献1】特開2001−101949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、支持体3内に水が入って悪影響を及ぼすことを防ぐために、特許文献1の図1に記載された構造は、上ケース3aに回路基板2との間を仕切る仕切壁34と、仕切壁34を設けることによってできた空間に対応した上ケース3aの前面側箇所に通気孔32を形成して、通気路33から導かれた空気を下ケース3bの底部から外部に逃がす様にしているため、空間を設けるためのスペース(図1中、右端)が必要である。従って、その分ケースが大きくなってコストもアップしてしまう。また、特許文献1の図3に記載された構造は、通気孔32を塞ぐように空気は通すが水は通さない多孔質膜6を配設したものであるが、ケースは大きくならないが多孔質膜6が必要であり、コスト高となってしまう。
【0004】
この様な点を改善するために、特許文献1に於いて、例えば支持体3に通気路33を設けることなく、通気孔32(空気逃げ溝)を支持体3の縁部まで延ばして膨張した空気を外部に逃がす方法が考えられる。しかし、特許文献1に於ける操作パネルが外部に晒される場合、通気孔32を伝って水が弾性部材4側に浸入する虞がある。その際、弾性部材4(スイッチ22)に替えて表示部が設けられ、この表示部に対応した透視部を有するパネルシートが貼付された表示装置であった場合は、水の浸入により表示部の視認性が低下したり、外観品質が低下してしまう。
【0005】
本発明はこの様な点に鑑みなされたもので、ケース体の前面側に貼付された表示部を設けた表示パネルを備えた表示装置に於いて、ケース体に設けた空気逃げ溝から表示部への水の浸入を防ぐことのできる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するため、透光部を有するケース体と、このケース体の前面側に貼付され前記透光部に対応した箇所に表示部を設けた表示パネルとを備え、前記透光部と前記表示パネルの端との間に対応した前記ケース体箇所に凹部を設け、この凹部と前記透光部とを繋ぐ第1の空気逃げ溝と、前記凹部と前記端に対応した箇所とを繋ぐ第2の空気逃げ溝とを各々前記ケース体に設け、前記凹部は前記第1の空気逃げ溝よりも深くなっているものである。
【0007】
また、前記ケース体には貫通穴が設けられ、この貫通穴に押釦が装着されており、前記凹部は前記押釦の周囲に設けられる隙間部からなるものである。
【0008】
また、前記透光部は複数有り、前記第1の空気逃げ溝は前記凹部と前記複数の透光部との間で分岐して前記複数の透光部に繋がっているものである。
【発明の効果】
【0009】
ケース体の前面側に貼付された表示部を設けた表示パネルを備えた表示装置に於いて、ケース体に設けた空気逃げ溝から表示部への水の浸入を防ぐことのできる表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、第1実施形態を示す表示装置の部分断面図である。図2は表示装置に用いられ押釦が装着されたケース体を示す部分正面図であり、図3は表示パネルに設けられた表示部に対応した表示パネルの部分断面図である。
【0011】
表示装置は、スイッチ1が半田付固定された硬質な回路基板2と、この回路基板2が収納されスイッチ1に対応して設けられた貫通穴3と透光部4とを有するケース体5と、貫通穴3を塞ぐようにケース体5に装着される押釦6と、押釦6に対応して設けられた押圧部7と透光部4に対応して設けられた表示部8とを有する表示パネル9と、ケース体5に表示パネル9を貼付する粘着部材としての両面テープ10と、回路基板2の裏面側を覆う合成樹脂製のカバー11と、回路基板2に実装され透光部4を照明して表示部8を表示させる光源としての発光ダイオード12と、この発光ダイオード12を囲むように配置された反射部材13を備えている。
【0012】
表示パネル9は、合成樹脂からなる無色透明な基板14の裏面側に表示領域Rとなる2箇所を除いて、地部15となる例えば黒色の不透過層16が印刷によって設けられ、各表示領域R内に表示部8である絵記号が例えば黒色の不透過層16で印刷されている。この地部15と表示部8の印刷は同一工程で設ければ良い。その後、表示領域Rに透明な拡散層17を設ける。また、押圧部7はエンボス加工によって隆起状に形成してあり、基板14裏面側にはスイッチ1機能に対応した文字やマークが印刷されている。表示パネル9の裏面には両面テープ10が貼られ、両面テープ10が貼られた表示パネル9がケース体5の前面側に貼付される。
【0013】
両面テープ10は、不織布からなる基材の両面に接着剤が設けられたシートからなり、表示パネル9とほぼ同じ大きさで、厚さは約0.2mmである。図1に示す様に表示パネル9の透光部4および押圧部7に対応した箇所には設けられていない。この両面テープ10は予めプレス加工により透光部4および押圧部7に対応した箇所を打ち抜いた後、表示パネル9の裏面に貼り、その後、プレス加工により表示パネル9の外形を打ち抜くと同時に、表示パネル9の外形と同形の両面テープ10の外形が打ち抜かれるものである。
【0014】
ケース体5は、ABS或いはポリカーボネートなどの例えば黒色の合成樹脂からなり、前面部18と周部19を有している。前面部18には、表示パネル9の各表示領域Rに対応して2個(複数)の透光部4が形成されている。この透光部4は透光性を有する合成樹脂からなり(本実施形態の場合は、無色透明の合成樹脂)、前面部18に一体成形され、それによって防水性が保たれている。また、スイッチ1に対応して(表示パネル9の押圧部7にも対応している)設けられた貫通穴3と、周縁に設けられた突部20を有している。
【0015】
ケース体5の前面部18には、貫通穴3と透光部4とを繋ぐ第1の空気逃げ溝21と、貫通穴3と突部20とを繋ぐ第2の空気逃げ溝22が設けてある。第1及び第2の空気逃げ溝21,22は、幅が約1mmで深さが約0.5mmの溝状であって、第2の空気逃げ溝22は、少なくとも表示パネル9の端23に対応した箇所まで設けるものとする。また、第1の空気逃げ溝21は貫通穴3と透光部4との間で分岐されて2個の透光部4と繋がっている(透光部4側の第1の空気逃げ溝21は2本であるが、貫通穴3側は1本に集約されている)。また、前面部18には回路基板2を取付固定する取付ボス24が設けられており、この取付ボス24に回路基板2がビス25によってねじ止めされる。また、貫通穴3の周囲には溶着ボス26が設けてある。
【0016】
押釦6は、弾性を有する合成ゴムからなり、軸部27と、この軸部27の周囲に位置する固定脚部28と、軸部27と固定脚部28とを繋ぐ薄肉部29とを有している。押釦6は、ケース体5の前面部18と合成樹脂からなるリング状の固定部材30との間で固定脚部28を挟み込むことによって前面部18に設けられた貫通穴3の周縁に装着されるようになっている。具体的には、固定脚部28を僅かに圧縮した状態で固定部材30を溶着ボス26に溶着することによって、ケース体5の貫通穴3が隙間なく塞がれて防水性が保たれるようになる。
【0017】
なお、押釦6をケース体5に装着した際、押釦6の周囲(押釦6と貫通穴3の切り口との間)に凹部としての隙間部Sができるようになっている。この隙間部Sと第1の空気逃げ溝21と第2の空気逃げ溝22とは繋がっており、隙間部Sは第1及び第2の空気逃げ溝21,22の前面部18の板厚方向の深さよりも深くなっている。
【0018】
反射部材13は、白色の合成樹脂からなり、発光ダイオード12側から透光部4の周囲側にかけて傾斜した仕切壁31を有し、仕切壁31によって囲まれた空間内に発光ダイオード12が位置する様になっている。この反射部材13は、発光ダイオード12からの光を反射させて透光部4を効率良く照明させると共に、透光部4が複数の場合、隣接する透光部4に光が回らない様にするための遮光機能を有している。なお、図示しないが、この反射部材13は回路基板2に固定されている。
【0019】
表示領域Rは、透光部4を透過した例えば赤色で発光する発光ダイオード12からの光を受けて赤色で透過照明される。そして、拡散層17によってほぼ均一な赤色で透過照明された領域内に表示部8が黒色で表示される。なお、表示部8となる箇所を除いて黒色の不透過層16を印刷して、表示部8が赤色で透過照明されるように構成しても良い。
【0020】
スイッチ1の操作は、表示パネル9の押圧部7を下方に押すことによって行われる。押圧部7を押すことで押釦6の薄肉部29が撓み、軸部27が下方(スイッチ1側)に移動する。それにより、軸部27の下端によって復帰可能に保持されたスイッチ1の可動部32が押圧され、図示しない液晶表示器に各種表示項目が現れて、その中から任意の項目を選択できるように構成されている。押し操作を止めると押釦6の軸部27および表示パネル9の押圧部7が元の位置に戻るようになっている。
【0021】
表示パネル9とケース体5との間の空気抜きは、次の様にして行われる。表示パネル9とケース体5の透光部4との空間部に溜まっていて膨張した空気は、第1の空気逃げ溝21から押釦6とケース体5との間の隙間部Sへ抜け、更に第2の空気逃げ溝22を通り、表示パネル9の端23から外部に抜ける。また、押釦6周囲と表示パネル9との空間部に溜まっていて膨張した空気は、第2の空気逃げ溝22を通って表示パネル9の端23から外部に抜ける。
【0022】
この様な表示装置に雨水が降り掛かった場合、表示パネル9の端23と突部20との隙間に入った水は、第2の空気逃げ溝22を通って押釦6とケース体5との間の隙間部Sに浸入(浸透)し、更に第1の空気逃げ溝21を通って透光部4に浸入しようとするが、隙間部Sの深さが第1の空気逃げ溝21の深さよりも深くなっているために、透光部4に浸入しようとする水を隙間部Sで阻止することができ、表示部8の視認性や外観品質が低下することが無い。
【0023】
また、ケース体5にはスイッチ1を押圧する押釦6が装着されており、この押釦6の周囲に凹部としての隙間部Sを設けるようにしたことにより、押釦6(スイッチ1)を備える表示装置であっても凹部を別に形成する必要が無く、省スペース化が図られる。また、透光部4が複数有っても隙間部Sに繋がる隙間部S側の第1の空気逃げ溝21を1本に集約することで、ケース体5の加工時間を短縮し、コストダウンが図られる。
【0024】
図4は、本発明の第2実施形態を示すケース体の部分正面図であり、図5は、ケース体の部分断面図である。前記第1実施形態に於いては、押釦6の周囲に隙間部Sを設けることによって凹部を形成したが、本実施形態に於いては、ケース体5に窪みを設けることによって凹部を形成したものである。従って、本実施形態の表示装置にはスイッチ(押釦)が備えられていない。なお、前記第1実施形態と同一または相当箇所には同一符号を付し、その詳細説明及び図示は省略する。
【0025】
表示パネル9は、図示しないが、前記第1実施形態と同様に合成樹脂からなる無色透明な基板14に表示領域R,表示部8および地部15が設けてあり、裏面には両面テープ10が貼られ、両面テープ10が貼られた表示パネル9がケース体5の前面側に貼付される。なお、ケース体5には押釦が装着されていないため、表示パネル9には前記第1実施形態の様な押圧部7は形成されていない。
【0026】
ケース体5は、前面部18と周部19を有しており、前面部18には表示パネル9の各表示領域Rに対応して2個(複数)の透光部4が形成されている。この透光部4は透光性を有する合成樹脂からなり、前面部18に一体成形され、それによって防水性が保たれている。また、透光部4と周縁に設けられた突部20との間に凹部としての例えば円柱状の窪み33が設けてある。
【0027】
また、ケース体5の前面部18には、窪み33と透光部4とを繋ぐ第1の空気逃げ溝21と、窪み33と突部20とを繋ぐ第2の空気逃げ溝22が設けてある。窪み33の深さは第1及び第2の空気逃げ溝21,22の深さよりも深くなっている。また、第1の空気逃げ溝21は窪み33と透光部4との間で分岐されて2個の透光部4と繋がっている(透光部4側の第1の空気逃げ溝21は2本であるが、窪み33側は1本に集約されている)。
【0028】
この様に構成した表示装置に雨水が降り掛かった場合、表示パネル9の端23と突部20との隙間に入った水は、第2の空気逃げ溝22を通って窪み33に浸入(浸透)し、更に第1の空気逃げ溝21を通って透光部4に浸入しようとするが、窪み33の深さが第1の空気逃げ溝21の深さよりも深くなっているために、透光部4に浸入しようとする水を窪み33で阻止することができ、表示部8の視認性や外観品質が低下することが無い。また、透光部4が複数有っても窪み33側の第1の空気逃げ溝21を1本に集約することで、ケース体5の加工時間を短縮し、コストダウンが図られる。
【0029】
なお、前記各実施形態に於いては、第1の空気逃げ溝21と第2の空気逃げ溝22の深さを同じくし、凹部(隙間部S,窪み33)の深さを第1及び第2の空気逃げ溝21,22の深さよりも深くしたが、凹部の深さが第1の空気逃げ溝21の深さよりも深くなっていれば良く、第2の空気逃げ溝22の深さは凹部の深さと同一若しくは浅くとも良い。
【0030】
また、透光部4および押釦6の数は任意であり、全ての押釦6が透光部4と第1の空気逃げ溝21によって繋がっている必要はない。透光部4が第1の空気逃げ溝21,凹部,第2の空気逃げ溝22を介してケース体5の外部と繋がっていれば良い。前記第1実施形態と前記第2実施形態との組み合わせであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態を示す表示装置の部分断面図。
【図2】同表示装置に用いられるケース体を示す部分正面図。
【図3】同表示パネルの部分断面図。
【図4】本発明の第2実施形態を示すケース体の部分正面図。
【図5】同ケース体の部分断面図。
【符号の説明】
【0032】
4 透光部
5 ケース体
6 押釦
8 表示部
9 表示パネル
21 第1の空気逃げ溝
22 第2の空気逃げ溝
23 端
S 隙間部(凹部)
33 窪み(凹部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光部を有するケース体と、このケース体の前面側に貼付され前記透光部に対応した箇所に表示部を設けた表示パネルとを備え、前記透光部と前記表示パネルの端との間に対応した前記ケース体箇所に凹部を設け、この凹部と前記透光部とを繋ぐ第1の空気逃げ溝と、前記凹部と前記端に対応した箇所とを繋ぐ第2の空気逃げ溝とを各々前記ケース体に設け、前記凹部は前記第1の空気逃げ溝よりも深くなっていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記ケース体には貫通穴が設けられ、この貫通穴に押釦が装着されており、前記凹部は前記押釦の周囲に設けられる隙間部からなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記透光部は複数有り、前記第1の空気逃げ溝は前記凹部と前記複数の透光部との間で分岐して前記複数の透光部に繋がっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate