表紙補正機能付き製本装置
【課題】表紙の印刷の傾斜を補正することができる表紙補正機能付き製本装置を提供する。
【解決手段】表紙には、補正用マークが印刷されており、本文保持ユニットによって保持された本文と合わされるために、表紙が載置される表紙載置部には、供給された表紙に印刷された補正用マークを読み取るCCDカメラと、供給された表紙を保持しながら表紙に対して垂直な回転軸を中心として回転可能となった回転テーブルと、が備えられる。CCD撮像手段からの補正用マークの撮像情報に基づき、印刷された補正用マークの正規の向きからの傾斜角度を求めて、該傾斜角度を低減させるように回転テーブルを回転させる。
【解決手段】表紙には、補正用マークが印刷されており、本文保持ユニットによって保持された本文と合わされるために、表紙が載置される表紙載置部には、供給された表紙に印刷された補正用マークを読み取るCCDカメラと、供給された表紙を保持しながら表紙に対して垂直な回転軸を中心として回転可能となった回転テーブルと、が備えられる。CCD撮像手段からの補正用マークの撮像情報に基づき、印刷された補正用マークの正規の向きからの傾斜角度を求めて、該傾斜角度を低減させるように回転テーブルを回転させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉束(以下、本文という)を表紙と合わせて製本を行う製本装置において、表紙の傾斜を補正することができる表紙補正機能付き製本装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製本装置の1つの例としては、図10または特許文献1に示す無線綴機が知られている。無線綴機は、エンドレスにチェーンを配し、該チェーンに所定間隔毎にクランパーを取り付けて、チェーンを経路40に沿って一方向に回転駆動させている。
【0003】
そして、経路40の一部に沿って、製本工程に必要な、ミーリングカッター42、ガリカッター44、横糊付け機46、背糊付け機48、表紙繰出し機50、同調機52、プレス成形締機54などの各ユニットが設置される。
【0004】
図示を省略する各クランパーは、固定クランプ板と可動クランプ板とからなっており、弾性体によって両クランプ板を付勢することで、両クランプ板で、丁合機にて丁合された折丁等からなる本文Pを締め付けており、チェーンによって各ユニットを順番に移動するようになっている。例えば、ミーリングカッターによって本文背面を断裁して背面を揃え、ガリカッターによって本文背面に筋溝を入れ、その後、横糊付け機によって背面近傍の両脇に糊を塗布し、背糊付け機によって背面に糊を塗布し、その後に表紙繰出し機によって繰出された表紙Rと本文Pとを合わせて、プレス成型締め機により表紙を本文の背部分に圧着して成形する。
【0005】
ところで、表紙が正しく本文に接着されるためには、表紙と本文との間の位置合わせが必要となる。この表紙の位置合わせとして、従来、特許文献2乃至3に記載のものが知られている。
【0006】
例えば、特許文献2では、表紙を順次搬送する表紙搬送手段において、表紙を搬送する搬送チェーンに固定されて表紙の後端を押す搬送爪を備えており、搬送チェーンと噛み合うスプロケットの位置を変更することで、搬送爪を進めるか遅らせて、表紙と本文との位置合わせを行うようにしている。
【0007】
また、特許文献3では、一対のニップ板の上方に設置された一対の表紙載置テーブルを備え、各表紙載置テーブルには、表紙の両端部を合わせる位置決めガイドが設けられ、ハンドルの回転操作によって、この一対の載置テーブルの双方を同方向に同量微小移動することができるようになっており、これによって、表紙と本文との間の幅方向の位置決め作業を容易にできるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3673510号公報(図11)
【特許文献2】特開2005−144934号公報
【特許文献3】特開平10−16431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように従来の表紙と本文との位置合わせにおいては、表紙の端部を基準にして本文と合わせることが一般的である。
【0010】
しかしながら、表紙に印刷された文字や絵柄等の表紙印刷自体が表紙に対して傾斜して印刷されている場合があり、そのような場合に、従来の装置で表紙の端部を基準にして本文と表紙とを合わせたとしても、製本された本の表紙の表紙印刷は傾斜したままであり、見栄えが悪くなり傾斜が大きい場合には不良品となってしまう、という問題がある。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、表紙の印刷の傾斜を補正することができる表紙補正機能付き製本装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の表紙補正機能付き製本装置は、本文と表紙とを合わせて製本を行う製本装置であって、
本文を保持しながら搬送する本文保持ユニットと、
本文保持ユニットによって保持された本文と合わせるために、表紙が載置される表紙載置部と、
制御部と、
を備え、
前記表紙には、表紙に本来施される表紙印刷と共に補正用マークが印刷されており、
前記表紙載置部は、載置された表紙に印刷された前記補正用マークを撮影する撮像手段を備え、
前記制御部は、撮像手段が撮影した補正用マークの撮像情報に基づき、印刷された補正用マークの正規の向きに対する傾斜角度を求め、該傾斜角度に基づき表紙または本文を回転制御する、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の表紙補正機能付き製本装置において、
前記補正用マークは、一対の分離された補正用マークからなり、
前記制御部は、撮影された一対の補正用マークのそれぞれの位置を求めて、それぞれの位置に基づき前記傾斜角度を求めることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の表紙補正機能付き製本装置において、
前記表紙載置部は、載置された表紙を保持しながら表紙面に対して垂直な回転軸を中心として回転可能となった回転テーブルを備え、
前記制御部は、前記傾斜角度を低減させるように、回転テーブルを介して表紙を回転制御することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の表紙補正機能付き製本装置において、
前記制御部は、前記傾斜角度に応じて、本文保持ユニットを介して、表紙面に対して垂直な回転軸を中心として本文を回転制御することを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表紙補正機能付き製本装置において、
前記制御部は、前記補正用マークの撮像情報に基づき、表紙の横ずれまたは縦ずれを求めて、求めた横ずれまたは縦ずれを低減して表紙に対して本文の位置決めを行うように表紙または本文を移動制御することを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表紙補正機能付き製本装置において、
前記本文保持ユニットは、縦横の2次元方向に移動自在とするX−Yアクチュエータの移動部に設けられることを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表紙補正機能付き製本装置において、
前記撮像手段は移動可能となっており、
前記制御部は、表紙の寸法または補正用マーク位置の情報を含む製本情報に基づき、前記撮像手段を補正用マークが撮影可能な位置に移動制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、表紙に印刷された補正用マークを撮影し、その撮像情報に基づき、傾斜して印刷された傾斜分に相当する角度だけ表紙または本文を回転させることで、表紙に施された表紙印刷と本文との傾斜を補正することができる。結果として表紙の端部は本文に対して傾斜するが、通常表紙の端部は断裁されてしまうので、仕上がりの表紙の端部と本文の向きは正しくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による表紙補正機能付き製本装置の一例を表す斜視図である。
【図2】図1の製本装置の平面図である。
【図3】表紙供給ユニットの平面図である。
【図4】表紙供給ユニットの斜視図である。
【図5】本発明の製本装置の制御系を表すブロック図である。
【図6】表紙の一例を表す図である。
【図7A】表紙供給ユニットにおける動作を表す図である。
【図7B】表紙供給ユニットにおける動作を表す図である。
【図7C】表紙供給ユニットにおける動作を表す図である。
【図7D】表紙供給ユニットにおける動作を表す図である。
【図8】表紙補正処理を表すフローチャートである。
【図9】本発明による表紙補正機能付き製本装置の他例を表す平面図である。
【図10】従来の製本装置を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図1及び図2は、本発明による表紙補正機能付き製本装置の一例を表す図である。
図において、製本装置10は、概略、X−Yアクチュエータ12と、X−Yアクチュエータ12の移動部12aに設けられた本文保持ユニット14と、X−Yアクチュエータ12の移動部12aの可動域に配置されたテーブル部15と、テーブル部15に配置された複数の製本ユニット16(16A〜16H、16X)と、X−Yアクチュエータ12及び各製本ユニット16の制御を行う制御部18(図5)と、を備える。
【0023】
X−Yアクチュエータ12は、例えばリニア誘導モータ型X−Yアクチュエータを用いることができ、図示において、X方向に沿ったX軸ステージ12xとY方向に沿ったY軸ステージ12yとZ方向に沿ったZ軸ステージ12zとを備え、移動部12aを高精度に位置決め可能である。尚、ここで、X軸、Y軸は水平面の直交2軸とし、Z軸は鉛直方向に沿った軸とする。
【0024】
Y軸ステージ12yが一対のX軸ステージ12xに対してX方向に沿ってスライド可能に取り付けられ、Z軸ステージ12zがY軸ステージ12yに対してY方向に沿ってスライド可能に取り付けられ、移動部12aがZ軸ステージ12zに対してZ方向に沿ってスライド可能に取り付けられる。
【0025】
このように図1に示した例では、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XYZ軸の3軸方向に自由度があり、3次元上の任意の位置に移動可能となっている。
【0026】
図1に示した例に代えて、最低限、X軸ステージ12x及びY軸ステージ12yのみを設けることにしてもよい。この場合、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XY軸の2軸方向に自由度があり、2次元上の任意の位置に移動可能とすることができる。または、さらにZ軸ステージ12zに対してZ軸の周りで回転可能となった回動軸12θ(図9参照)を備えることもできる。これによって、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XYZθ軸の3軸及び1軸周りに合計4軸方向で自由度があり、4次元上の任意の位置に移動自在とすることができる。
【0027】
移動部12aに設けられる本文保持ユニット14は、本文を締め付ける2つのクランプ板14a、14bを備える。2つのクランプ板14a、14bは、弾性部材によって互いに接近するように付勢することも可能であるが、好ましくは、2つのクランプ板14a、14bの距離が電動モータ、油空圧シリンダ等のクランプ用アクチュエータ14cによって電力または油空圧により調整可能となっているとよい。
【0028】
X−Yアクチュエータ12の移動部12aに設けられた本文保持ユニット14の可動域に配置されたテーブル部15には、複数の区切りが設けられており、各区切りに製本ユニット16が配置される。また、テーブル部15の所定の位置が入口IN、出口OUTとなっている。
【0029】
製本ユニット16は、製本のための各工程を実行するユニットであり、並製本の場合に、断裁カッターユニット16A、ガリカッターユニット16B、サンダーカッターユニット16C、横糊付けユニット16D、背糊付けユニット16E、表紙供給ユニット16X、プレス成形締ユニット16H、等が配置される。上製本の場合には、さらに、例えば、寒冷紗フィーダユニット、寒冷紗同調ユニット等を加えることができる。
【0030】
各製本ユニット16は、それぞれが実行する工程に応じてその構成は変わるが、基本的に本文に対して作動する作動要素(例えば、カッター、ローラ、ガイド板、プレス板等)と、作動要素を動作させるための駆動要素(例えば、電動モータ、油空圧シリンダ等:図示せず)を備える。
【0031】
図3及び図4は、表紙供給ユニット16Xの具体的な構成を示す図である。表紙供給ユニット16Xは、表紙が蓄積される表紙待機部162と、表紙待機部162に蓄積された表紙の中から一枚を吸着して搬送する表紙搬送部164と、表紙搬送部164で搬送された表紙が設置される表紙載置部としての同調部166を備える。
【0032】
同調部166は、さらに、固定テーブル202と、回転テーブル204と、表紙に印刷された補正用マークMを撮像するための一対の撮像手段としてのCCDカメラ206と、を備える。
【0033】
表紙供給ユニット16Xは、表紙待機部162から同調部166に向けて表紙Rが移動する際に、表紙の幅方向の中心が通過する中心線Cを持っている。表紙待機部162は、中心線Cを中心として表紙Rの幅方向に移動可能となった一対のガイド162aを有している。
【0034】
また、同調部166において、回転テーブル204は、この中心線Cを中心として配置され、中心線C及びテーブル面に直交する軸204aの周りで、図示しない駆動要素によって回転することができるようになっている。回転テーブル204には、多数の吸引孔204bが形成されており、これらは負圧源に連通して、回転テーブル204上の表紙Rを吸引して保持することができるようになっている。
【0035】
また、回転テーブル204の両側は固定テーブル202となっており、固定テーブル202には多数の吹出孔202aが形成されており、吹出孔202aはブロアに連通して、エアが噴き出されるようになっている。
【0036】
一対のCCDカメラ206は、固定テーブル202に形成された一対の溝202bの中に設けられており、固定テーブル202の下側に設けられる図示しない駆動要素によって溝202bに沿って中心線Cを中心として表紙Rの幅方向に移動可能となっている。
【0037】
制御部18は、製本情報に応じてX−Yアクチュエータ12の位置制御及び表紙供給ユニット16Xにおける動作を制御する。即ち、制御部18は、図5に示すように、制御信号によりX−Yアクチュエータ12を制御して移動部12aの位置を制御する。そして、移動部12aを、製本条件に基づき決められた移動経路に沿って移動させて、本文保持ユニット14を製本ユニット16へと搬送すると共に、各製本ユニット16において、決められた位置に本文保持ユニット14を固定するか、または製本条件に基づき決められた動き(位置、速度(速さ、向き))を行うように制御する。
【0038】
また、移動部12aの現在位置に応じて、制御信号により各製本ユニット16の駆動要素を駆動させて作動要素の作動の開始、終了を制御する。製本ユニット16は、同期して動作する必要はなく、制御部18からの制御信号に応じて独立的に動作を開始・終了することができる。
【0039】
さらに、制御部18は、CCDカメラ206で取得された撮像情報に応じて、後述の表紙補正処理の制御を行う。
【0040】
製本情報は、制御部18に対して任意の方法により外部から提供されることができるが、一例としては、表紙供給ユニット16Xに設けられた表紙情報読み取り部22によって表紙に印刷された製本情報を読み取ることによって、及び/または、製本ユニット16の入口付近に設けられた本文情報読み取り部24によって本文保持ユニット14によって保持される前の本文に印刷された製本情報を読み取ることによって、得ることができる。表紙情報読み取り部22は、表紙待機部162と同調部166との間に設けられる。
【0041】
製本情報としては、ロッド番号またはその他の識別情報や、高さ、幅、厚み、質量等の寸法、紙質、糊の厚み、経由する製本ユニット、各製本ユニットにおけるX−Yアクチュエータの動き、補正用マークMの位置、その他の製本条件情報を含めることができる。製本情報は、後で三方断裁によって切り落とされる本文及び表紙の部分、または、製本後に目立たなくなる部分に印刷されているとよい。
【0042】
表紙Rには、図6に示すように、表紙に本来必要なタイトルの文字または絵柄といった表紙印刷が施されていると共に、表紙印刷と同時に2つの補正用マークMの印刷が施されている。従って、表紙印刷が表紙の原紙に対して傾斜して印刷される場合、図6下図のように、補正用マークMも同様に傾斜して印刷されることになる。また、表紙情報読み取り部22によって製本情報を読み取る場合には、その製本情報Dの印刷も施されている。補正用マークMは、1つとすることもできるが、好ましくは、傾きの検出が精度よく行えるように、距離をおいて分離された2つ以上の補正用マークとするとよく、この例では、前述のCCDカメラ206に合わせて表紙の幅方向(=横方向)において離れた位置に設けられている。但し、補正用マークMは、幅方向に離れて設ける代わりに、天地方向(=高さ方向=縦方向)またはそれ以外の任意の方向に離れて設けることも可能であり、その場合には、対応する位置にCCDカメラ206が配置される。また、製本情報Dと補正用マークMを共通化してもよい。
【0043】
また、本文Pにも任意の位置に製本情報Dが印刷されている。本文Pは、丁合機によって丁合された折丁または紙葉類、印刷機または複写機によって作成された紙葉束、その他の既存の紙葉束(例えば年賀状束、アルバム用紙束)等とすることができる。
【0044】
以上のように構成される製本装置10の作用を説明する。まず、入口INに製本処理に供される本文Pが待機されており、また、表紙供給ユニット16Xの表紙待機部162に表紙Rが待機されている。
【0045】
表紙供給ユニット16Xにおいて、制御部18からの制御信号によって、その表紙搬送部164が動作し、表紙搬送部164が表紙待機部162で待機された表紙の一番上の表紙を吸着して同調部166の方へ少し引き出す(図7A〜図7B)。そして、制御部18からの指令によって表紙情報読み取り部22が動作して、取り出された表紙Rの製本情報Dを読み取る。
【0046】
また、INに待機された本文Pは、本文情報読み取り部24によって、その製本情報が読み取られる。この本文情報読み取り部24の起動は、好ましくは作業者によって手動で行われるとよい。
【0047】
これら表紙情報読み取り部22と本文情報読み取り部24で読み取られた製本情報は、制御部18において、その照合が行われ、表紙と本文との組み合わせが適正と判断された場合には、制御部18は、X−Yアクチュエータ12によってその移動部12aをINの位置に移動させて、クランプ用アクチュエータ14cを制御して、本文保持ユニット14によって待機された本文Pを把持させて、予め決められた締め付け力となるように締め付けさせる。ここで、締め付け力は、読み取られた製本情報から得られた製本条件情報から決定される。そして、X−Yアクチュエータ12によって、予め決められた移動経路に沿って製本ユニット16に本文Pを搬送させる。
【0048】
好ましくは、制御部18は、表紙Rの製本情報Dが読み取られた時点で、読み取った製本情報から得られた製本条件情報に基づき、製本ユニット16に応じて駆動要素を駆動して、作動要素を作動させる。即ち、製本ユニット16において、製本条件情報に含まれる本の幅、紙質等の情報に基づき、作動要素の幅方向の位置決めを行い、または作動要素の高さ方向の位置決めを行う。
【0049】
そして、制御部18の制御に基づき、X−Yアクチュエータ12によって移動部12aのXY座標、XYZ座標、またはXYZθ座標が制御されて、作動要素に対する本文Pの位置決めが行われて、こうして順次決められた製本ユニット16を経ていく。例えば、断裁カッターユニット16Aにおいて、本文の背面の断裁が行われ、ガリカッターユニット16B及びサンダーカッターユニット16Cにおいて、それぞれ本文の背面にガリ溝が形成され、本文の背面の研磨が行われ、横糊付けユニット16Dにおいて、本文の横側面に糊が塗布され、背糊付けユニット16Eにおいて、本文の背面に糊が塗布されて、表紙供給ユニット16Xまで搬送される。
【0050】
一方、表紙供給ユニット16Xにおいては、表紙搬送部164によって表紙Rが同調部166の回転テーブル204及び固定テーブル202上に載置され、回転テーブル204によって吸引されて保持される。制御部18の制御に基づき、図8に示す表紙補正処理が行われる。
【0051】
まず、同調部166では、読み取られた製本情報の中の表紙の幅情報または補正用マークMの位置情報に基づき、一対のCCDカメラ206を、必要に応じて、図示しない駆動要素を介して移動させて、補正用マークMを読み取ることができるような位置に位置決めし(ステップS10)、一対のCCDカメラ206によって、回転テーブル204に保持された表紙Rの撮影を行う(ステップS12)。CCDカメラ206で取得された撮像情報は制御部18へと送られる。
【0052】
制御部18では、撮像情報に対して二値化処理、エッジ検出処理などの画像処理を行って一対の補正用マークMを抽出すると、補正用マークの位置(図6で示したように、十字形の補正用マークの場合にはその交差点の位置)の座標(x1,y1)、(x2,y2)を求めて(ステップS14)、正規の向き(正しく印刷されていた場合の補正用マークの向きを言う。この例ではY軸に平行な向きとする。)からの傾斜角度φを以下の式などを用いて計算する(ステップS16)。
【0053】
【数1】
【0054】
この傾斜角度φを許容角度εと比較して(ステップS18)、許容角度範囲内にない場合には、補正回転角度信号に変換して表紙供給ユニット16Xに送り、回転テーブル204を傾斜角度φを減少させるように回転させる(ステップS20、図7C)。回転時には回転テーブル204に保持されることで、表紙Rが回転テーブル204と一体に回転する。このとき固定テーブル202から噴き出されるエアによって表紙Rが固定テーブル202に吸着されないようにして、固定テーブル202に対して円滑に回転できるようにする。
【0055】
次いで、ステップS12に戻り、傾斜角度φが許容角度ε内に収まるようにする。傾斜角度φが許容角度ε内に収まると(ステップS18でyes)、次に、横ずれ及び縦ずれを計算する(ステップS22)。横ずれとは、表紙Rの幅方向の正規の位置からのずれを表し、縦ずれとは、表紙Rの高さ方向の正規の位置からのずれを表す。
【0056】
例えば、横ずれは、Δy=y2−y20またはΔy=y1−y10から求めることができる。ここで、y20、y10は、対応する補正用マークMの正規のY座標であり、また、縦ずれは、Δx=x2−x0またはΔy=x1−x0から求めることができる。ここで、x0は、補正用マークMの正規のX座標である。正規の座標とは、傾斜もなく正しく表紙の印刷が行われ、表紙が同調部166に正しく載置された場合の補正用マークMの座標である。
【0057】
制御部18は、表紙供給ユニット16Xの同調部166へと本文Pを搬送するX−Yアクチュエータ12に対して、横ずれ及び縦ずれを加味して本文Pを位置決めさせて(ステップS24)、表紙Rに貼り合わせる。これによって、回転によって表紙が幅方向及び高さ方向に位置がずれて、横ずれ及び縦ずれが発生した場合、または何らかの原因により、同調部166に表紙がずれて載置された場合にも、発生した横ずれ及び縦ずれをキャンセルすることができる。
【0058】
こうして、本文Pと表紙Rが貼り合わされると(図7D)、回転テーブル204の吸引孔204bからの吸引が停止され、合わされた本文Pと表紙Rは、X−Yアクチュエータ12によって、次のプレス成形締ユニット16Hへと搬送される。プレス成形締ユニット16Hは、一対のプレス板200を作動要素として備えており、一対のプレス板200を互いに接近する方向に移動させて、本文Pと表紙Rとを合わせて横側から押し付けるようになっている。出口OUTにまで達すると、制御部18は、本文保持ユニット14による本文Pの保持を解除させる。
【0059】
その後は、別途の三方断裁工程により、表紙と本文の三方が断裁される。前記表紙の印刷の傾斜が補正されている場合、表紙の端部は本文に対して補正された分だけ傾斜した状態で合わされているが、この三方断裁において、表紙中心を基準にして天地部分と小口部分を断裁することで、表紙の余分な部分は補正用マークMの部分も含めて断裁されるので、出来上がった本は、表紙と本文との間で傾斜のないものとなる。
【0060】
尚、以上の例では、同調部166に回転テーブル204を設けて表紙を回転させることにより、傾斜を補正していたが、これに限るものではない。X−Yアクチュエータ12が図9に示すように、回転軸θ回りの回転自由度を持っている場合には、計算された傾斜角度に応じて、X−Yアクチュエータ12のZ軸の周りで本文保持ユニット14を回転させることでθ軸を調整して、傾いて供給された表紙Rに合わせて本文Pを傾けて同調させることも可能である。
【0061】
また、以上の例では、横ずれ及び縦ずれをキャンセルするために、X−Yアクチュエータ12を移動させて位置決めさせていたが、これに限るものではなく、同調部166において表紙を横方向及び縦方向に移動させる機構を設けることとしてもよい。
【0062】
さらに、以上の例では、X−Yアクチュエータを用いて、オンデマンド出版(POD)のような多種類で少量の製本に対応した製本装置を例にとったが、これに限るものではなく、図10に示すようなクランパーによって本文を保持して、処理を行う製本装置においても同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
10 表紙補正機能付き製本装置
12 X−Yアクチュエータ
12a 移動部
14 本文保持ユニット
166 同調部(表紙載置部)
204 回転テーブル
206 CCDカメラ(撮像手段)
18 制御部
P 本文
R 表紙
M 補正用マーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉束(以下、本文という)を表紙と合わせて製本を行う製本装置において、表紙の傾斜を補正することができる表紙補正機能付き製本装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製本装置の1つの例としては、図10または特許文献1に示す無線綴機が知られている。無線綴機は、エンドレスにチェーンを配し、該チェーンに所定間隔毎にクランパーを取り付けて、チェーンを経路40に沿って一方向に回転駆動させている。
【0003】
そして、経路40の一部に沿って、製本工程に必要な、ミーリングカッター42、ガリカッター44、横糊付け機46、背糊付け機48、表紙繰出し機50、同調機52、プレス成形締機54などの各ユニットが設置される。
【0004】
図示を省略する各クランパーは、固定クランプ板と可動クランプ板とからなっており、弾性体によって両クランプ板を付勢することで、両クランプ板で、丁合機にて丁合された折丁等からなる本文Pを締め付けており、チェーンによって各ユニットを順番に移動するようになっている。例えば、ミーリングカッターによって本文背面を断裁して背面を揃え、ガリカッターによって本文背面に筋溝を入れ、その後、横糊付け機によって背面近傍の両脇に糊を塗布し、背糊付け機によって背面に糊を塗布し、その後に表紙繰出し機によって繰出された表紙Rと本文Pとを合わせて、プレス成型締め機により表紙を本文の背部分に圧着して成形する。
【0005】
ところで、表紙が正しく本文に接着されるためには、表紙と本文との間の位置合わせが必要となる。この表紙の位置合わせとして、従来、特許文献2乃至3に記載のものが知られている。
【0006】
例えば、特許文献2では、表紙を順次搬送する表紙搬送手段において、表紙を搬送する搬送チェーンに固定されて表紙の後端を押す搬送爪を備えており、搬送チェーンと噛み合うスプロケットの位置を変更することで、搬送爪を進めるか遅らせて、表紙と本文との位置合わせを行うようにしている。
【0007】
また、特許文献3では、一対のニップ板の上方に設置された一対の表紙載置テーブルを備え、各表紙載置テーブルには、表紙の両端部を合わせる位置決めガイドが設けられ、ハンドルの回転操作によって、この一対の載置テーブルの双方を同方向に同量微小移動することができるようになっており、これによって、表紙と本文との間の幅方向の位置決め作業を容易にできるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3673510号公報(図11)
【特許文献2】特開2005−144934号公報
【特許文献3】特開平10−16431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように従来の表紙と本文との位置合わせにおいては、表紙の端部を基準にして本文と合わせることが一般的である。
【0010】
しかしながら、表紙に印刷された文字や絵柄等の表紙印刷自体が表紙に対して傾斜して印刷されている場合があり、そのような場合に、従来の装置で表紙の端部を基準にして本文と表紙とを合わせたとしても、製本された本の表紙の表紙印刷は傾斜したままであり、見栄えが悪くなり傾斜が大きい場合には不良品となってしまう、という問題がある。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、表紙の印刷の傾斜を補正することができる表紙補正機能付き製本装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の表紙補正機能付き製本装置は、本文と表紙とを合わせて製本を行う製本装置であって、
本文を保持しながら搬送する本文保持ユニットと、
本文保持ユニットによって保持された本文と合わせるために、表紙が載置される表紙載置部と、
制御部と、
を備え、
前記表紙には、表紙に本来施される表紙印刷と共に補正用マークが印刷されており、
前記表紙載置部は、載置された表紙に印刷された前記補正用マークを撮影する撮像手段を備え、
前記制御部は、撮像手段が撮影した補正用マークの撮像情報に基づき、印刷された補正用マークの正規の向きに対する傾斜角度を求め、該傾斜角度に基づき表紙または本文を回転制御する、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の表紙補正機能付き製本装置において、
前記補正用マークは、一対の分離された補正用マークからなり、
前記制御部は、撮影された一対の補正用マークのそれぞれの位置を求めて、それぞれの位置に基づき前記傾斜角度を求めることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の表紙補正機能付き製本装置において、
前記表紙載置部は、載置された表紙を保持しながら表紙面に対して垂直な回転軸を中心として回転可能となった回転テーブルを備え、
前記制御部は、前記傾斜角度を低減させるように、回転テーブルを介して表紙を回転制御することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の表紙補正機能付き製本装置において、
前記制御部は、前記傾斜角度に応じて、本文保持ユニットを介して、表紙面に対して垂直な回転軸を中心として本文を回転制御することを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表紙補正機能付き製本装置において、
前記制御部は、前記補正用マークの撮像情報に基づき、表紙の横ずれまたは縦ずれを求めて、求めた横ずれまたは縦ずれを低減して表紙に対して本文の位置決めを行うように表紙または本文を移動制御することを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表紙補正機能付き製本装置において、
前記本文保持ユニットは、縦横の2次元方向に移動自在とするX−Yアクチュエータの移動部に設けられることを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表紙補正機能付き製本装置において、
前記撮像手段は移動可能となっており、
前記制御部は、表紙の寸法または補正用マーク位置の情報を含む製本情報に基づき、前記撮像手段を補正用マークが撮影可能な位置に移動制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、表紙に印刷された補正用マークを撮影し、その撮像情報に基づき、傾斜して印刷された傾斜分に相当する角度だけ表紙または本文を回転させることで、表紙に施された表紙印刷と本文との傾斜を補正することができる。結果として表紙の端部は本文に対して傾斜するが、通常表紙の端部は断裁されてしまうので、仕上がりの表紙の端部と本文の向きは正しくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による表紙補正機能付き製本装置の一例を表す斜視図である。
【図2】図1の製本装置の平面図である。
【図3】表紙供給ユニットの平面図である。
【図4】表紙供給ユニットの斜視図である。
【図5】本発明の製本装置の制御系を表すブロック図である。
【図6】表紙の一例を表す図である。
【図7A】表紙供給ユニットにおける動作を表す図である。
【図7B】表紙供給ユニットにおける動作を表す図である。
【図7C】表紙供給ユニットにおける動作を表す図である。
【図7D】表紙供給ユニットにおける動作を表す図である。
【図8】表紙補正処理を表すフローチャートである。
【図9】本発明による表紙補正機能付き製本装置の他例を表す平面図である。
【図10】従来の製本装置を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図1及び図2は、本発明による表紙補正機能付き製本装置の一例を表す図である。
図において、製本装置10は、概略、X−Yアクチュエータ12と、X−Yアクチュエータ12の移動部12aに設けられた本文保持ユニット14と、X−Yアクチュエータ12の移動部12aの可動域に配置されたテーブル部15と、テーブル部15に配置された複数の製本ユニット16(16A〜16H、16X)と、X−Yアクチュエータ12及び各製本ユニット16の制御を行う制御部18(図5)と、を備える。
【0023】
X−Yアクチュエータ12は、例えばリニア誘導モータ型X−Yアクチュエータを用いることができ、図示において、X方向に沿ったX軸ステージ12xとY方向に沿ったY軸ステージ12yとZ方向に沿ったZ軸ステージ12zとを備え、移動部12aを高精度に位置決め可能である。尚、ここで、X軸、Y軸は水平面の直交2軸とし、Z軸は鉛直方向に沿った軸とする。
【0024】
Y軸ステージ12yが一対のX軸ステージ12xに対してX方向に沿ってスライド可能に取り付けられ、Z軸ステージ12zがY軸ステージ12yに対してY方向に沿ってスライド可能に取り付けられ、移動部12aがZ軸ステージ12zに対してZ方向に沿ってスライド可能に取り付けられる。
【0025】
このように図1に示した例では、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XYZ軸の3軸方向に自由度があり、3次元上の任意の位置に移動可能となっている。
【0026】
図1に示した例に代えて、最低限、X軸ステージ12x及びY軸ステージ12yのみを設けることにしてもよい。この場合、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XY軸の2軸方向に自由度があり、2次元上の任意の位置に移動可能とすることができる。または、さらにZ軸ステージ12zに対してZ軸の周りで回転可能となった回動軸12θ(図9参照)を備えることもできる。これによって、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XYZθ軸の3軸及び1軸周りに合計4軸方向で自由度があり、4次元上の任意の位置に移動自在とすることができる。
【0027】
移動部12aに設けられる本文保持ユニット14は、本文を締め付ける2つのクランプ板14a、14bを備える。2つのクランプ板14a、14bは、弾性部材によって互いに接近するように付勢することも可能であるが、好ましくは、2つのクランプ板14a、14bの距離が電動モータ、油空圧シリンダ等のクランプ用アクチュエータ14cによって電力または油空圧により調整可能となっているとよい。
【0028】
X−Yアクチュエータ12の移動部12aに設けられた本文保持ユニット14の可動域に配置されたテーブル部15には、複数の区切りが設けられており、各区切りに製本ユニット16が配置される。また、テーブル部15の所定の位置が入口IN、出口OUTとなっている。
【0029】
製本ユニット16は、製本のための各工程を実行するユニットであり、並製本の場合に、断裁カッターユニット16A、ガリカッターユニット16B、サンダーカッターユニット16C、横糊付けユニット16D、背糊付けユニット16E、表紙供給ユニット16X、プレス成形締ユニット16H、等が配置される。上製本の場合には、さらに、例えば、寒冷紗フィーダユニット、寒冷紗同調ユニット等を加えることができる。
【0030】
各製本ユニット16は、それぞれが実行する工程に応じてその構成は変わるが、基本的に本文に対して作動する作動要素(例えば、カッター、ローラ、ガイド板、プレス板等)と、作動要素を動作させるための駆動要素(例えば、電動モータ、油空圧シリンダ等:図示せず)を備える。
【0031】
図3及び図4は、表紙供給ユニット16Xの具体的な構成を示す図である。表紙供給ユニット16Xは、表紙が蓄積される表紙待機部162と、表紙待機部162に蓄積された表紙の中から一枚を吸着して搬送する表紙搬送部164と、表紙搬送部164で搬送された表紙が設置される表紙載置部としての同調部166を備える。
【0032】
同調部166は、さらに、固定テーブル202と、回転テーブル204と、表紙に印刷された補正用マークMを撮像するための一対の撮像手段としてのCCDカメラ206と、を備える。
【0033】
表紙供給ユニット16Xは、表紙待機部162から同調部166に向けて表紙Rが移動する際に、表紙の幅方向の中心が通過する中心線Cを持っている。表紙待機部162は、中心線Cを中心として表紙Rの幅方向に移動可能となった一対のガイド162aを有している。
【0034】
また、同調部166において、回転テーブル204は、この中心線Cを中心として配置され、中心線C及びテーブル面に直交する軸204aの周りで、図示しない駆動要素によって回転することができるようになっている。回転テーブル204には、多数の吸引孔204bが形成されており、これらは負圧源に連通して、回転テーブル204上の表紙Rを吸引して保持することができるようになっている。
【0035】
また、回転テーブル204の両側は固定テーブル202となっており、固定テーブル202には多数の吹出孔202aが形成されており、吹出孔202aはブロアに連通して、エアが噴き出されるようになっている。
【0036】
一対のCCDカメラ206は、固定テーブル202に形成された一対の溝202bの中に設けられており、固定テーブル202の下側に設けられる図示しない駆動要素によって溝202bに沿って中心線Cを中心として表紙Rの幅方向に移動可能となっている。
【0037】
制御部18は、製本情報に応じてX−Yアクチュエータ12の位置制御及び表紙供給ユニット16Xにおける動作を制御する。即ち、制御部18は、図5に示すように、制御信号によりX−Yアクチュエータ12を制御して移動部12aの位置を制御する。そして、移動部12aを、製本条件に基づき決められた移動経路に沿って移動させて、本文保持ユニット14を製本ユニット16へと搬送すると共に、各製本ユニット16において、決められた位置に本文保持ユニット14を固定するか、または製本条件に基づき決められた動き(位置、速度(速さ、向き))を行うように制御する。
【0038】
また、移動部12aの現在位置に応じて、制御信号により各製本ユニット16の駆動要素を駆動させて作動要素の作動の開始、終了を制御する。製本ユニット16は、同期して動作する必要はなく、制御部18からの制御信号に応じて独立的に動作を開始・終了することができる。
【0039】
さらに、制御部18は、CCDカメラ206で取得された撮像情報に応じて、後述の表紙補正処理の制御を行う。
【0040】
製本情報は、制御部18に対して任意の方法により外部から提供されることができるが、一例としては、表紙供給ユニット16Xに設けられた表紙情報読み取り部22によって表紙に印刷された製本情報を読み取ることによって、及び/または、製本ユニット16の入口付近に設けられた本文情報読み取り部24によって本文保持ユニット14によって保持される前の本文に印刷された製本情報を読み取ることによって、得ることができる。表紙情報読み取り部22は、表紙待機部162と同調部166との間に設けられる。
【0041】
製本情報としては、ロッド番号またはその他の識別情報や、高さ、幅、厚み、質量等の寸法、紙質、糊の厚み、経由する製本ユニット、各製本ユニットにおけるX−Yアクチュエータの動き、補正用マークMの位置、その他の製本条件情報を含めることができる。製本情報は、後で三方断裁によって切り落とされる本文及び表紙の部分、または、製本後に目立たなくなる部分に印刷されているとよい。
【0042】
表紙Rには、図6に示すように、表紙に本来必要なタイトルの文字または絵柄といった表紙印刷が施されていると共に、表紙印刷と同時に2つの補正用マークMの印刷が施されている。従って、表紙印刷が表紙の原紙に対して傾斜して印刷される場合、図6下図のように、補正用マークMも同様に傾斜して印刷されることになる。また、表紙情報読み取り部22によって製本情報を読み取る場合には、その製本情報Dの印刷も施されている。補正用マークMは、1つとすることもできるが、好ましくは、傾きの検出が精度よく行えるように、距離をおいて分離された2つ以上の補正用マークとするとよく、この例では、前述のCCDカメラ206に合わせて表紙の幅方向(=横方向)において離れた位置に設けられている。但し、補正用マークMは、幅方向に離れて設ける代わりに、天地方向(=高さ方向=縦方向)またはそれ以外の任意の方向に離れて設けることも可能であり、その場合には、対応する位置にCCDカメラ206が配置される。また、製本情報Dと補正用マークMを共通化してもよい。
【0043】
また、本文Pにも任意の位置に製本情報Dが印刷されている。本文Pは、丁合機によって丁合された折丁または紙葉類、印刷機または複写機によって作成された紙葉束、その他の既存の紙葉束(例えば年賀状束、アルバム用紙束)等とすることができる。
【0044】
以上のように構成される製本装置10の作用を説明する。まず、入口INに製本処理に供される本文Pが待機されており、また、表紙供給ユニット16Xの表紙待機部162に表紙Rが待機されている。
【0045】
表紙供給ユニット16Xにおいて、制御部18からの制御信号によって、その表紙搬送部164が動作し、表紙搬送部164が表紙待機部162で待機された表紙の一番上の表紙を吸着して同調部166の方へ少し引き出す(図7A〜図7B)。そして、制御部18からの指令によって表紙情報読み取り部22が動作して、取り出された表紙Rの製本情報Dを読み取る。
【0046】
また、INに待機された本文Pは、本文情報読み取り部24によって、その製本情報が読み取られる。この本文情報読み取り部24の起動は、好ましくは作業者によって手動で行われるとよい。
【0047】
これら表紙情報読み取り部22と本文情報読み取り部24で読み取られた製本情報は、制御部18において、その照合が行われ、表紙と本文との組み合わせが適正と判断された場合には、制御部18は、X−Yアクチュエータ12によってその移動部12aをINの位置に移動させて、クランプ用アクチュエータ14cを制御して、本文保持ユニット14によって待機された本文Pを把持させて、予め決められた締め付け力となるように締め付けさせる。ここで、締め付け力は、読み取られた製本情報から得られた製本条件情報から決定される。そして、X−Yアクチュエータ12によって、予め決められた移動経路に沿って製本ユニット16に本文Pを搬送させる。
【0048】
好ましくは、制御部18は、表紙Rの製本情報Dが読み取られた時点で、読み取った製本情報から得られた製本条件情報に基づき、製本ユニット16に応じて駆動要素を駆動して、作動要素を作動させる。即ち、製本ユニット16において、製本条件情報に含まれる本の幅、紙質等の情報に基づき、作動要素の幅方向の位置決めを行い、または作動要素の高さ方向の位置決めを行う。
【0049】
そして、制御部18の制御に基づき、X−Yアクチュエータ12によって移動部12aのXY座標、XYZ座標、またはXYZθ座標が制御されて、作動要素に対する本文Pの位置決めが行われて、こうして順次決められた製本ユニット16を経ていく。例えば、断裁カッターユニット16Aにおいて、本文の背面の断裁が行われ、ガリカッターユニット16B及びサンダーカッターユニット16Cにおいて、それぞれ本文の背面にガリ溝が形成され、本文の背面の研磨が行われ、横糊付けユニット16Dにおいて、本文の横側面に糊が塗布され、背糊付けユニット16Eにおいて、本文の背面に糊が塗布されて、表紙供給ユニット16Xまで搬送される。
【0050】
一方、表紙供給ユニット16Xにおいては、表紙搬送部164によって表紙Rが同調部166の回転テーブル204及び固定テーブル202上に載置され、回転テーブル204によって吸引されて保持される。制御部18の制御に基づき、図8に示す表紙補正処理が行われる。
【0051】
まず、同調部166では、読み取られた製本情報の中の表紙の幅情報または補正用マークMの位置情報に基づき、一対のCCDカメラ206を、必要に応じて、図示しない駆動要素を介して移動させて、補正用マークMを読み取ることができるような位置に位置決めし(ステップS10)、一対のCCDカメラ206によって、回転テーブル204に保持された表紙Rの撮影を行う(ステップS12)。CCDカメラ206で取得された撮像情報は制御部18へと送られる。
【0052】
制御部18では、撮像情報に対して二値化処理、エッジ検出処理などの画像処理を行って一対の補正用マークMを抽出すると、補正用マークの位置(図6で示したように、十字形の補正用マークの場合にはその交差点の位置)の座標(x1,y1)、(x2,y2)を求めて(ステップS14)、正規の向き(正しく印刷されていた場合の補正用マークの向きを言う。この例ではY軸に平行な向きとする。)からの傾斜角度φを以下の式などを用いて計算する(ステップS16)。
【0053】
【数1】
【0054】
この傾斜角度φを許容角度εと比較して(ステップS18)、許容角度範囲内にない場合には、補正回転角度信号に変換して表紙供給ユニット16Xに送り、回転テーブル204を傾斜角度φを減少させるように回転させる(ステップS20、図7C)。回転時には回転テーブル204に保持されることで、表紙Rが回転テーブル204と一体に回転する。このとき固定テーブル202から噴き出されるエアによって表紙Rが固定テーブル202に吸着されないようにして、固定テーブル202に対して円滑に回転できるようにする。
【0055】
次いで、ステップS12に戻り、傾斜角度φが許容角度ε内に収まるようにする。傾斜角度φが許容角度ε内に収まると(ステップS18でyes)、次に、横ずれ及び縦ずれを計算する(ステップS22)。横ずれとは、表紙Rの幅方向の正規の位置からのずれを表し、縦ずれとは、表紙Rの高さ方向の正規の位置からのずれを表す。
【0056】
例えば、横ずれは、Δy=y2−y20またはΔy=y1−y10から求めることができる。ここで、y20、y10は、対応する補正用マークMの正規のY座標であり、また、縦ずれは、Δx=x2−x0またはΔy=x1−x0から求めることができる。ここで、x0は、補正用マークMの正規のX座標である。正規の座標とは、傾斜もなく正しく表紙の印刷が行われ、表紙が同調部166に正しく載置された場合の補正用マークMの座標である。
【0057】
制御部18は、表紙供給ユニット16Xの同調部166へと本文Pを搬送するX−Yアクチュエータ12に対して、横ずれ及び縦ずれを加味して本文Pを位置決めさせて(ステップS24)、表紙Rに貼り合わせる。これによって、回転によって表紙が幅方向及び高さ方向に位置がずれて、横ずれ及び縦ずれが発生した場合、または何らかの原因により、同調部166に表紙がずれて載置された場合にも、発生した横ずれ及び縦ずれをキャンセルすることができる。
【0058】
こうして、本文Pと表紙Rが貼り合わされると(図7D)、回転テーブル204の吸引孔204bからの吸引が停止され、合わされた本文Pと表紙Rは、X−Yアクチュエータ12によって、次のプレス成形締ユニット16Hへと搬送される。プレス成形締ユニット16Hは、一対のプレス板200を作動要素として備えており、一対のプレス板200を互いに接近する方向に移動させて、本文Pと表紙Rとを合わせて横側から押し付けるようになっている。出口OUTにまで達すると、制御部18は、本文保持ユニット14による本文Pの保持を解除させる。
【0059】
その後は、別途の三方断裁工程により、表紙と本文の三方が断裁される。前記表紙の印刷の傾斜が補正されている場合、表紙の端部は本文に対して補正された分だけ傾斜した状態で合わされているが、この三方断裁において、表紙中心を基準にして天地部分と小口部分を断裁することで、表紙の余分な部分は補正用マークMの部分も含めて断裁されるので、出来上がった本は、表紙と本文との間で傾斜のないものとなる。
【0060】
尚、以上の例では、同調部166に回転テーブル204を設けて表紙を回転させることにより、傾斜を補正していたが、これに限るものではない。X−Yアクチュエータ12が図9に示すように、回転軸θ回りの回転自由度を持っている場合には、計算された傾斜角度に応じて、X−Yアクチュエータ12のZ軸の周りで本文保持ユニット14を回転させることでθ軸を調整して、傾いて供給された表紙Rに合わせて本文Pを傾けて同調させることも可能である。
【0061】
また、以上の例では、横ずれ及び縦ずれをキャンセルするために、X−Yアクチュエータ12を移動させて位置決めさせていたが、これに限るものではなく、同調部166において表紙を横方向及び縦方向に移動させる機構を設けることとしてもよい。
【0062】
さらに、以上の例では、X−Yアクチュエータを用いて、オンデマンド出版(POD)のような多種類で少量の製本に対応した製本装置を例にとったが、これに限るものではなく、図10に示すようなクランパーによって本文を保持して、処理を行う製本装置においても同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
10 表紙補正機能付き製本装置
12 X−Yアクチュエータ
12a 移動部
14 本文保持ユニット
166 同調部(表紙載置部)
204 回転テーブル
206 CCDカメラ(撮像手段)
18 制御部
P 本文
R 表紙
M 補正用マーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本文と表紙とを合わせて製本を行う製本装置であって、
本文を保持しながら搬送する本文保持ユニットと、
本文保持ユニットによって保持された本文と合わせるために、表紙が載置される表紙載置部と、
制御部と、
を備え、
前記表紙には、表紙に本来施される表紙印刷と共に補正用マークが印刷されており、
前記表紙載置部は、載置された表紙に印刷された前記補正用マークを撮影する撮像手段を備え、
前記制御部は、撮像手段が撮影した補正用マークの撮像情報に基づき、印刷された補正用マークの正規の向きに対する傾斜角度を求め、該傾斜角度に基づき表紙または本文を回転制御する、
ことを特徴とする表紙補正機能付き製本装置。
【請求項2】
前記補正用マークは、一対の分離された補正用マークからなり、
前記制御部は、撮影された一対の補正用マークのそれぞれの位置を求めて、それぞれの位置に基づき前記傾斜角度を求めることを特徴とする請求項1記載の表紙補正機能付き製本装置。
【請求項3】
前記表紙載置部は、載置された表紙を保持しながら表紙面に対して垂直な回転軸を中心として回転可能となった回転テーブルを備え、
前記制御部は、前記傾斜角度を低減させるように、回転テーブルを介して表紙を回転制御することを特徴とする請求項1または2記載の表紙補正機能付き製本装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記傾斜角度に応じて、本文保持ユニットを介して、表紙面に対して垂直な回転軸を中心として本文を回転制御することを特徴とする請求項1または2記載の表紙補正機能付き製本装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記補正用マークの撮像情報に基づき、表紙の横ずれまたは縦ずれを求めて、求めた横ずれまたは縦ずれを低減して表紙に対して本文の位置決めを行うように表紙または本文を移動制御することを特徴とする請請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表紙補正機能付き製本装置。
【請求項6】
前記本文保持ユニットは、縦横の2次元方向に移動自在とするX−Yアクチュエータの移動部に設けられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表紙補正機能付き製本装置。
【請求項7】
前記撮像手段は移動可能となっており、
前記制御部は、表紙の寸法または補正用マーク位置の情報を含む製本情報に基づき、前記撮像手段を補正用マークが撮影可能な位置に移動制御することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表紙補正機能付き製本装置。
【請求項1】
本文と表紙とを合わせて製本を行う製本装置であって、
本文を保持しながら搬送する本文保持ユニットと、
本文保持ユニットによって保持された本文と合わせるために、表紙が載置される表紙載置部と、
制御部と、
を備え、
前記表紙には、表紙に本来施される表紙印刷と共に補正用マークが印刷されており、
前記表紙載置部は、載置された表紙に印刷された前記補正用マークを撮影する撮像手段を備え、
前記制御部は、撮像手段が撮影した補正用マークの撮像情報に基づき、印刷された補正用マークの正規の向きに対する傾斜角度を求め、該傾斜角度に基づき表紙または本文を回転制御する、
ことを特徴とする表紙補正機能付き製本装置。
【請求項2】
前記補正用マークは、一対の分離された補正用マークからなり、
前記制御部は、撮影された一対の補正用マークのそれぞれの位置を求めて、それぞれの位置に基づき前記傾斜角度を求めることを特徴とする請求項1記載の表紙補正機能付き製本装置。
【請求項3】
前記表紙載置部は、載置された表紙を保持しながら表紙面に対して垂直な回転軸を中心として回転可能となった回転テーブルを備え、
前記制御部は、前記傾斜角度を低減させるように、回転テーブルを介して表紙を回転制御することを特徴とする請求項1または2記載の表紙補正機能付き製本装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記傾斜角度に応じて、本文保持ユニットを介して、表紙面に対して垂直な回転軸を中心として本文を回転制御することを特徴とする請求項1または2記載の表紙補正機能付き製本装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記補正用マークの撮像情報に基づき、表紙の横ずれまたは縦ずれを求めて、求めた横ずれまたは縦ずれを低減して表紙に対して本文の位置決めを行うように表紙または本文を移動制御することを特徴とする請請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表紙補正機能付き製本装置。
【請求項6】
前記本文保持ユニットは、縦横の2次元方向に移動自在とするX−Yアクチュエータの移動部に設けられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表紙補正機能付き製本装置。
【請求項7】
前記撮像手段は移動可能となっており、
前記制御部は、表紙の寸法または補正用マーク位置の情報を含む製本情報に基づき、前記撮像手段を補正用マークが撮影可能な位置に移動制御することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表紙補正機能付き製本装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−51343(P2012−51343A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197921(P2010−197921)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(593048043)芳野マシナリー株式会社 (17)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(593048043)芳野マシナリー株式会社 (17)
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