説明

表面に香味物質を塗布したチューインガムの製造方法

【課題】十分な量の香味物質が表面に付着し、喫食開始直後から香味を発現する非糖衣ガムの製造方法を提供すること。
【解決手段】ガムベースに砂糖・香料を加えて混合することによりチューインガムを作成する工程、及び、作成したチューインガムに取り粉を塗布して圧延する工程を含む非糖衣ガムの製造方法であり、チューインガムを圧延する工程において、取り粉とは独立に香味物質をチューインガムに塗布すること、好適には取り粉を塗布する前に香味物質をチューインガムに塗布することを特徴とする、非糖衣ガムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチューインガムの製造方法に関し、特に表面に香味物質を塗布した非糖衣チューインガムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チューインガムは、ガムベースに香味物質や軟化剤等を添加して混合したものを咀嚼し、その風味や食感を楽しむ菓子の総称である。
【0003】
現在市販されているチューインガムは、その形状の面から大別して2種類に分類することができる。ひとつは従来からある非糖衣ガムで、ブロック状、スティック状等の形状を有する。もうひとつは近年主流となっている糖衣ガムで、糖類で表面をコーティングした粒状又は球状のガムである。
【0004】
チューインガムは、植物性樹脂、酢酸ビニル樹脂、エステルガム、ポリイソブチレン、炭酸カルシウムなどを加熱混合して製造したガムベースに香味物質等のガム原料を添加して混合することにより製造される。混合して製造されたチューインガムは圧延・裁断・熟成工程を経て完成に至るが、糖衣ガムの製造工程においては、香味成分を添加した糖衣層で表面をコーティングするという工程がその後に加わる。
【0005】
糖衣ガムでは、このコーティングした糖衣層が溶け出すことで咀嚼開始直後から香味が発現されるため、噛みはじめから風味を楽しめるという利点がある。一方で非糖衣ガムでは、香味成分はガムベースとの混合の際にのみ添加され、通常、表面に香味成分は添加されていない。そのため、喫食開始後香味が発現するまでに時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−153804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、喫食開始直後から香味を発現する非糖衣ガムの製造方法を提供することをその課題とする。
【0008】
ここで、特許文献1には、表面に香料とエタノールとを組み合わせて付着させることにより、開封時及び噛み始めた直後から香味を発現するチューインガムが開示されている。チューインガムを製造する際、圧延工程において、圧延ロールへのガムの付着を防ぐためにガム表面に粉糖等の粉末からなる取り粉が塗布されるが、特許文献1のチューインガムは、この取り粉に香味成分を付着させたショ糖の粉末とエタノールを組み合わせたものを使用して製造される。
【0009】
しかし、特許文献1のガムの製法は、ショ糖粉末などに対し、必要に応じてエタノールに溶解させた香味成分を吸着担持させたのち、適宜エタノール粉末などと混合させたフレーバーシュガーを取り粉として使用するものであるが、このフレーバーシュガーの調製には、作業が煩雑であって時間を要するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題に鑑み、本発明は、ガムベースに砂糖・香料を加えて混合することによりチューインガムを作成する工程、及び、作成したチューインガムに取り粉を塗布して圧延する工程を含む非糖衣ガムの製造方法であり、チューインガムを圧延する工程において、取り粉とは独立に香味物質をチューインガムに塗布すること、好適には取り粉を塗布する前に香味物質をチューインガムに塗布することを特徴とする、非糖衣ガムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法を用いることで、比較的簡便な装置にて、香味発現に優れた非糖衣ガムを容易に製造することが可能となる。また、本発明の製造方法により製造した非糖衣ガムは、表面に十分な量の香味物質が塗布されているため、喫食開始直後から香味を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一般的に市販されている非糖衣チューインガムの製造方法を表すフローチャート。
【図2】本発明による香味物質と取り粉の塗布の様子を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般的に市販されている非糖衣チューインガムの製造方法の一例を図1に示す。
第1の工程(ガムベース製造工程)において、まず、植物性樹脂をはじめとする原料を加熱混合してガムベースを製造する。植物性樹脂としては、サポディラの木の樹液を煮つめてかためた天然チクル等が使用される。また、酢酸ビニル樹脂、エステルガム、ポリイソブチレン、炭酸カルシウムなども使用される。これらの原料は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上のガムベース原料を混合してもよい。
【0014】
第2の工程(混合工程)において、第1の工程で製造したガムベースに香味料や軟化剤等のガム原料をミキサーで混合し、柔らかい固まり状のチューインガムを作る。香味料としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、及び高甘味度甘味料等の甘味料、並びに精油類、香辛料抽出物類、及び合成香料等の香料などを使用することができる。その他ガム原料として、酸味料等や増粘剤等を使用することができる。これらも1種類のみを添加してもよいし、2種類以上を添加して混合してもよい。チューインガムはその後、エクストルーダーで再練りして均一にし、シート状にして押し出す。
【0015】
第3の工程(圧延工程)においては、第2の工程で製造し、エクストルーダーから押し出されたシート状のチューインガムを、圧延ロールで圧延する。このとき、チューインガムが圧延ロールに付着しないよう、押し出されたチューインガムにフラワーダスターで粉糖等の粉末状の取り粉を予め塗布する。取り粉としては、状況に応じて、粉糖、スターチ、マンニトールなどが使用できる。また、圧延は、最終的な製品の厚さになるまで数段階に分けて行ってもよい。
【0016】
圧延されたチューインガムは、最終的な商品の形態にもよるが、概ね以下の工程を経て市販されるチューインガムの形に加工される。まず、第4の工程(裁断工程)で裁断機にて略正方形状に裁断されたのち、縦刃付きロールにて所望の長さの幅を有した短冊状に分離切断できるように切れ目が入れられる。切れ目が入れられたチューインガムは第5の工程(熟成工程)で冷却熟成され、第6の工程(包装・梱包工程)で切れ目部分にて分離切断され、短冊状になったガムシート片が包装機に設置されたのち、包装機に具備されているカッターにて所望の1枚のサイズに裁断され、包装・梱包される。
【0017】
本発明は、上記第3の圧延工程において、圧延する前にチューインガムに香味物質を塗布する工程を含むことを特徴とする。香味物質は取り粉とは独立に塗布し、圧延を数段階に分けて行う場合には、それらのうちどの段階の前に塗布してもよい。ただし、好適には取り粉を塗布する前に香味物質をチューインガムに塗布する。このような構成とすることで、図2に示すように、エクストルーダーから押し出されたシート状のガムの表面に香味物質の層が形成され、さらにその上に取り粉の層が形成されることになる。なお、図2では、片側にのみ香味物質と取り粉を塗布した状態を示しているが、香味物質及び取り粉はシート状のガムの両面に塗布しても良い。本発明は、この状態で香味物質もシート状のガムと共に圧延ロールにより圧延されるため、香味物質がガム表面へ圧着され、香味物質のガム表面への付着性が高まるという利点を有する。
【0018】
第3の圧延工程でチューインガムに塗布する香味物質は特に限定されず、甘味料、香料、酸味料など、いかなるものを使用してもよい。また、これらは1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。その他に着色料やカフェイン等を含んでいてもよい。塗布する香味物質は第2の混合工程でガムベースに混合した香味料等と同一のものでもよいし、別の物質を塗布してもよい。ただし、液体状の香味物質を塗布すると、取り粉が水分を吸収して圧延ロールに付着してしまう可能性や、移動時に香味物質がベルトコンベア等に付着してはがれてしまう可能性があるため、塗布する香味物質は粉末状であることが好ましい。
【0019】
甘味料としては、グルコース、フルクトース等の単糖類、マルトース、ラクトース、スクロース等の二糖類、オリゴ糖、水飴、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、還元パラチノース、還元水飴等の糖アルコール、アセスルファムKやアスパルテーム等の高甘味度甘味料、粉末果汁などが挙げられる。
【0020】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、ラベンダー油、ジャスミン油、セージ油、ローレル油、カモミール油、バジル油、キヤラウェイ油、カルダモン油、シンナモン油、ショウガ油、コリアンダー油、ゼラニウム油、ヒソップ油、オリス油、ダバナ油、エレミ油などの精油類、パプリカオレオレジン、バニラエキストラクトなどの香辛料抽出物類、l−メントール、カルボン、オイゲノール、イソオイゲノール、エステル類、イオノン、バニリン、エチルバニリン、マルトールなどの合成香料などが挙げられる。
【0021】
酸味料としては、アジピン酸、イタコン酸、クエン酸、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フィチン酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、およびリン酸などが挙げられる。
【0022】
また、香味物質をガムに付着しやすくするため、香味物質を塗布する前にシート状のガムの表面を水又はエタノール等のアルコール類で湿らせてもよい。
【0023】
香味物質を塗布する方法も特に限定されることはない。シート状のガムの全面に塗布することができればよく、例えば取り粉と同様にフラワーダスター等で香味物質を落下塗布することができる。
【0024】
香味物質の塗布量は、塗布する香味物質の種類にもよるが、チューインガムに対し重量比で0.01%〜3.00%であることが好ましく、0.05〜1.00%であることがさらに好ましい。例えば、塗布する香味物質がメントール粉末香料である場合は、0.01%〜3.00%、好ましくは、0.05%〜1.00%、さらに好ましくは0.25%〜0.50%とするのが望ましい。メントール粉末香料の塗布量が0.01%を下回ると、チューインガムの喫食開始直後からの香味の広がりがほとんど感じられなくなってしまい、また塗布量が3.00%を上回ると、チューインガムの喫食開始直後からメントールの苦味が強く知覚されてしまう。
【0025】
また、塗布する香味物質がペパーミント粉末香料である場合は、0.01%〜2.00%、好ましくは、0.05%〜1.00%とするのが望ましい。ペパーミント粉末香料の塗布量が0.01%を下回ると、チューインガムの喫食開始直後からの香味の広がりがほとんど感じられなくなってしまい、また塗布量が2.00%を上回ると、チューインガムの喫食開始直後からペパーミントに由来する苦渋味が強く知覚されてしまう。
【0026】
更に、香味物質がレモン粉末果汁である場合は、0.01%〜3.00%、好ましくは、0.05%〜1.00%とするのが望ましい。レモン粉末果汁の塗布量が0.01%を下回ると、チューインガムの喫食開始直後からの香味の広がりがほとんど感じられなくなってしまい、また塗布量が3.00%を上回ると、チューインガムの喫食開始直後からレモン粉末果汁に由来する酸味、渋みが強く知覚されてしまう。
【0027】
また、塗布する香味物質がフマル酸である場合は、0.01%〜3.00%、好ましくは、0.05%〜1.00%、さらに好ましくは0.25%〜0.50%とするのが望ましい。フマル酸の塗布量が0.01%を下回ると、チューインガムの喫食開始直後からの香味の広がりがほとんど感じられなくなってしまい、また塗布量が3.00%を上回ると、チューインガムの喫食開始直後から酸味が強すぎて、香味のバランスを著しく崩してしまう。
【0028】
更に、塗布する香味物質がレモン粉末香料である場合は、0.01%〜2.00%、好ましくは、0.05%〜1.00%、さらに好ましくは0.25%〜0.50%とするのが望ましい。レモン粉末香料の塗布量が0.01%を下回ると、チューインガムの喫食開始直後からの香味の広がりがほとんど感じられなくなってしまい、また塗布量が2.00%を上回ると、チューインガムの喫食開始直後から苦渋味が強く知覚されてしまう。
【0029】
本発明は、従来のチューインガムの製造工程に対して、圧延工程において取り粉の塗布とは独立に香味物質を塗布する手順を付加するのみで達成できる。そのため、既存の設備の大幅な改修を必要とせず、低コストで導入することができる。また、塗布する香味物質の種類も容易に変更することができる。
【0030】
このようにして製造したガムは、口内に含んだ瞬間に表面に塗布した香味物質が唾液中に溶出するため、喫食開始直後から香味が強く発現する。
【実施例1】
【0031】
チクル等の天然樹脂20重量%、酢酸ビニル樹脂20重量%、エステルガム15重量%、ポリイソブチレン10重量%、ワックス20重量%、モノグリセライド5重量%、炭酸カルシウム10重量%を用い、通常の製法によりガムベースを製造した。
【0032】
製造したガムベースをもとに、表1に示す一般的な組成に従ってミキサーで混合し、チューインガムを製造した。
【0033】
【表1】

【0034】
作成したチューインガムはエクストルーダーで再練りした。再練り後にエクストルーダーから押し出されるシート状のガムの幅は54cm、高さは平均2.93cm、断面積は平均158cmだった。また、押し出されるガムの量は平均して67.2kg/分であった。
【0035】
エクストルーダーから押し出されたシート状のガムの左右両耳を切り落とし、フラワーダスターでメントール粉末香料を落下塗布した。落下塗布したメントール粉末香料の組成はメントール:賦形剤=20:80であった。その後、取り粉として適量の砂糖を落下塗布した。
【0036】
その後、シート状のガムは圧延ロールで4段階に渡って圧延した。圧延後のチューインガムの厚さは1.67mmであった。圧延したチューインガムは通常の製法に従って板状ガムの形状である7.20cm×1.90cmの長方形に裁断した。
【0037】
メントール粉末香料の塗布量は、以下の表2の通りに、ガム重量に対して0.005%〜3.50%の間で変化させた。製造された各々のチューインガムについて、訓練された専門パネラーによって香味発現に関する総合的な官能評価を行い、評価結果について表2に示した。なお、表中の記号は、以下の意味を有する。
◎:香味の広がりに非常に優れ、かつ全体的な香味のバランスが取れていて、非常に良い。
○:香味の広がりに優れ、かつ全体的な香味のバランスについても良い。
△:香味の広がりにやや欠ける、もしくは全体的な香味のバランスがあまり良くない。
×:香味の広がりに欠ける、もしくは全体的な香味のバランスが良くない。
【0038】
【表2】

【0039】
表2より、メントール粉末香料の塗布量が、ガム重量に対して0.005%である場合、メントール粉末香料を塗布した効果はほとんど感じられなかった。塗布量が0.01%になると、弱いながらも喫食開始直後からの香味の広がりが増し、メントール粉末香料を塗布した効果が見られた。0.05%〜1.00%を塗布した場合には、喫食開始直後からの香味の広がりに優れ、かつ全体的な香味のバランスも良い結果となった。特に0.25%又は0.50%を塗布した場合に、香味の広がりに非常に優れ、かつ全体的な香味のバランスが取れていて、非常に良い結果となった。塗布量が3.00%の場合には、喫食開始直後からの香味の広がりは非常に強く知覚されるものの、メントールに由来する苦味が強く出てしまい、全体的な香味のバランスに欠ける結果となった。塗布量が3.50%の場合には、苦味が強すぎて喫食に適さない結果となった。
従って、塗布する香味物質がメントール粉末香料である場合は、塗布量を0.01%〜3.00%、好ましくは0.05%〜1.00%、更に好ましくは0.25%〜0.50%とするのが望ましい結果となった。
【実施例2】
【0040】
実施例1で製造したガムベースをもとに、表1に示す一般的な組成に従ってミキサーで混合して実施例1と同様にチューインガムを製造し、エクストルーダーで再練りした。エクストルーダーから押し出されたシート状のガムの左右両耳を切り落とし、フラワーダスターにて、ペパーミント粉末香料を落下塗布した。ペパーミント粉末香料の組成は賦形剤(アラビアガムなど):香料成分=85:15であった。その後、実施例1と同様に、取り粉を落下塗布し、圧延・裁断を行った。
【0041】
ペパーミント粉末香料の塗布量は、以下の表3の通りに、ガム重量に対して0.005%〜2.50%の間で変化させた。製造された各々のチューインガムについて、実施例1と同様に、訓練された専門パネラーによって香味発現に関する総合的な官能評価を行い、評価結果について表3に示した。
【0042】
【表3】

【0043】
表3より、ペパーミント粉末香料の塗布量が、ガム重量に対して0.005%である場合、ペパーミント粉末香料を塗布した効果はほとんど感じられなかった。塗布量が0.01%になると、弱いながらも喫食開始直後からの香味の広がりが増し、ペパーミント粉末香料を塗布した効果が見られた。0.05%〜1.00%を塗布した場合には、喫食開始直後からのペパーミント香味の広がりに優れ、かつ全体的な香味のバランスも良い結果となった。塗布量が2.00%の場合には、喫食開始直後からの香味の広がりは非常に強く知覚されるものの、ペパーミントに由来する苦渋味が強く出てしまい、全体的な香味のバランスに欠ける結果となった。塗布量が2.50%の場合には、苦渋味が強すぎて喫食に適さない結果となった。
従って、塗布する香味物質がペパーミント粉末香料である場合は、塗布量を0.01%〜2.00%、好ましくは0.05%〜1.00%とするのが望ましい結果となった。
【実施例3】
【0044】
実施例1で製造したガムベースをもとに、表4に示す一般的な組成に従ってミキサーで混合してチューインガムを製造し、エクストルーダーで再練りした。
【0045】
【表4】

【0046】
再練りの後、エクストルーダーから押し出されたシート状のガムの左右両耳を切り落とし、フラワーダスターにて、レモン粉末果汁を落下塗布した。レモン粉末果汁の組成はデキストリン:レモン濃縮果汁=75:25であり、濃縮果汁の濃縮倍率は3.5倍であった。その後、実施例1と同様に、取り粉を落下塗布し、圧延・裁断を行った。
【0047】
レモン粉末果汁の塗布量は、以下の表5の通りに、ガム重量に対して0.005%〜3.50%の間で変化させた。製造された各々のチューインガムについて、実施例1と同様に、訓練された専門パネラーによって香味発現に関する総合的な官能評価を行い、評価結果について表5に示した。
【0048】
【表5】

【0049】
表5より、レモン粉末果汁の塗布量が、ガム重量に対して0.005%である場合、レモン粉末果汁を塗布した効果はほとんど感じられなかった。塗布量が0.01%になると、弱いながらも喫食開始直後からの香味の広がりが増し、レモン粉末果汁を塗布した効果が見られた。0.05%〜1.00%を塗布した場合には、喫食開始直後からのレモン香味の広がりに優れ、かつ全体的な香味のバランスも良い結果となった。塗布量が3.00%の場合には、喫食開始直後からの香味の広がりは非常に強く知覚されるものの、レモン果汁に由来する酸味、渋みが強く出てしまい、全体的な香味のバランスに欠ける結果となった。塗布量が3.50%の場合には、酸味、渋みが強すぎて喫食に適さない結果となった。
従って、塗布する香味物質がレモン粉末果汁である場合は、塗布量を0.01%〜3.00%、好ましくは0.05%〜1.00%とするのが望ましい結果となった。
【実施例4】
【0050】
実施例1で製造したガムベースをもとに、表4に示す一般的な組成に従ってミキサーで混合して実施例1と同様にチューインガムを製造し、エクストルーダーで再練りした。再練りの後、エクストルーダーから押し出されたシート状のガムの左右両耳を切り落とし、フラワーダスターにて、フマル酸を落下塗布した。フマル酸の純度は99%以上であり、粒度は100mesh pass(95%)であった。その後、実施例1と同様に、取り粉を落下塗布し、圧延・裁断を行った。
【0051】
フマル酸の塗布量は、以下の表6の通りに、ガム重量に対して0.005%〜3.50%の間で変化させた。製造された各々のチューインガムについて、実施例1と同様に、訓練された専門パネラーによって香味発現に関する総合的な官能評価を行い、評価結果について表6に示した。
【0052】
【表6】

【0053】
表6より、フマル酸の塗布量が、ガム重量に対して0.005%である場合、フマル酸を塗布した効果はほとんど感じられなかった。塗布量が0.01%になると、弱いながらも喫食開始直後からの香味の広がりが増し、フマル酸を塗布した効果が見られた。0.05%〜1.00%を塗布した場合には、喫食開始直後からのサワー感の広がりに優れ、かつ全体的な香味のバランスも良い結果となった。特に0.25%又は0.50%を塗布した場合に、サワー感の広がりに非常に優れ、かつ全体的な香味のバランスが取れていて、非常に良い結果となった。塗布量が3.00%の場合には、喫食開始直後からの香味の広がりは非常に強く知覚されるものの、酸味がかなり強く出てしまい、全体的な香味のバランスに欠ける結果となった。塗布量が3.50%の場合には、酸味が強すぎて喫食に適さない結果となった。
従って、塗布する香味物質がフマル酸である場合は、塗布量を0.01%〜3.00%、好ましくは0.05%〜1.00%、更に好ましくは0.25%〜0.50%とするのが望ましい結果となった。
【実施例5】
【0054】
実施例1で製造したガムベースをもとに、表4に示す一般的な組成に従ってミキサーで混合して実施例1と同様にチューインガムを製造し、エクストルーダーで再練りした。再練りの後、エクストルーダーから押し出されたシート状のガムの左右両耳を切り落とし、フラワーダスターにて、レモン粉末香料を落下塗布した。レモン粉末香料の組成は賦形剤(アラビアガムなど):香料成分=85:15であった。その後、実施例1と同様に、取り粉を落下塗布し、圧延・裁断を行った。
レモン粉末香料の塗布量は、以下の表7の通りに、ガム重量に対して0.005%〜2.50%の間で変化させた。製造された各々のチューインガムについて、実施例1と同様に、訓練された専門パネラーによって香味発現に関する総合的な官能評価を行い、評価結果について表7に示した。
【0055】
【表7】

【0056】
表7より、レモン粉末香料の塗布量が、ガム重量に対して0.005%である場合、レモン粉末香料を塗布した効果はほとんど感じられなかった。塗布量が0.01%になると、弱いながらも喫食開始直後からの香味の広がりが増し、レモン粉末香料を塗布した効果が見られた。0.05%〜1.00%を塗布した場合には、喫食開始直後からのレモン香味の広がりに優れ、かつ全体的な香味のバランスも良い結果となった。特に0.25%又は0.50%を塗布した場合に、レモン香味の広がりに非常に優れ、かつ全体的な香味のバランスが取れていて、非常に良い結果となった。塗布量が2.00%の場合には、喫食開始直後からの香味の広がりは非常に強く知覚されるものの、苦渋味が強く出てしまい、全体的な香味のバランスに欠ける結果となった。塗布量が2.50%の場合には、苦渋味が強すぎて喫食に適さない結果となった。
従って、塗布する香味物質がレモン粉末香料である場合は、塗布量を0.01%〜2.00%、好ましくは0.05%〜1.00%、更に好ましくは0.25%〜0.50%とするのが望ましい結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガムベースにガム原料を添加して混合することによりチューインガムを作成する混合工程、及び、作成したチューインガムに取り粉を塗布して圧延する圧延工程を含む非糖衣ガムの製造方法であって、
圧延工程において、取り粉とは独立に香味物質をチューインガムに塗布することを特徴とする、非糖衣ガムの製造方法。
【請求項2】
前記香味物質は、取り粉を塗布する前にチューインガムに塗布されることを特徴とする、請求項1に記載の非糖衣ガムの製造方法。
【請求項3】
前記香味物質は粉末状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の非糖衣ガムの製造方法。
【請求項4】
前記香味物質の塗布量はチューインガムに対し重量比で0.01%〜3.00%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非糖衣ガムの製造方法。
【請求項5】
前記香味物質は粉末香料、酸味料、粉末果汁のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非糖衣ガムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−29639(P2012−29639A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172089(P2010−172089)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(307013857)株式会社ロッテ (101)
【Fターム(参考)】