説明

表面の硫黄濃度が低いカーボンブラック顔料を含有するトナーを調製する方法

【課題】帯電特性に影響を及ぼす表面汚染物質の濃度が少ないカーボンブラックを含有するトナー、さらに、表面汚染物質の濃度を測定する方法を提供する。
【解決手段】(a)カーボンブラックを選択することと、(b)カーボンブラック表面の硫黄濃度をX線光電子分光法によって測定し、表面の硫黄濃度が約0.05at%以下であるようにすることと、(c)カーボンブラックと樹脂とを混合し、トナー組成物を作成することとを含む、トナー粒子を調製するプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、トナー組成物を調製するプロセスが開示されている。さらに特定的には、本明細書には、硫黄の原子百分率の値(%)が低いカーボンブラックを含むトナーを調製するプロセスが開示されている。
【背景技術】
【0002】
黒色トナーは、転写し、融合した後に望ましい画質を有する画像を得るのに十分なカーボンブラックを顔料として使用する、着色したポリマーコンポジットである。カーボンブラックの形態および性質は、色および帯電特性に影響を及ぼすことがある。これらの性質は、元をたどれば、トナー中のカーボンブラック分散物の均一性に依存するだろう。乳化凝集トナーでは、カーボンブラックは、液相に分散し、次いで凝集プロセスによってポリマーに組み込まれる。顔料は機械的に分散しているのではなく、カーボンブラックは、化学的に異なる相に分散したままの状態であり、トナー成分を混合するときに押出機に適用されてもよい剪断力の大きさは、比較的小さい。したがって、カーボンブラックの親水性表面成分(例えば、サルフェートなど)は、カーボンブラックと疎水性ポリマー成分との均一な混合を阻害する。
【0003】
カーボンブラックは、炭化水素の熱分解によって製造され、炭化水素は、多くは石油原料から得られる。硫黄および硫黄から誘導される成分は、石油から誘導されるカーボンブラックのよくある表面汚染物質である。カーボンブラックは、融合して凝集物になる元素状炭素の球状粒子を含む。製造業者は、凝集物の粒径を制御している。トナー用途のカーボンブラックは、色の性質、分散容易性、帯電特性を設計するために制御された電気抵抗率を制御するために、一次粒径と構造がうまく調整されている。製造業者は、顔料の表面化学を変えるために、ある場合には、独占的な権利を有する化学修飾法を開発している。
【0004】
意図する目的のために、既知の組成物およびプロセスが適しているが、もっと再現可能性が高い帯電特性をもつトナーが依然として必要とされている。それに加えて、帯電特性に影響を及ぼす表面汚染物質の濃度が少ないカーボンブラックを含有するトナーが依然として必要とされている。さらに、トナーに使用されるカーボンブラックの表面汚染物質の濃度を測定する方法も、依然として必要とされている。さらに、硫黄を含有する表面汚染物質の濃度が低いカーボンブラックを含有するトナーも依然として必要とされている。また、異なる温度および湿度の領域で電荷を安定な状態で維持することが可能なトナーも必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書に開示したトナーに使用するのに適したカーボンブラックは、望ましくは、その表面にある硫黄を含有する汚染物質の濃度が比較的低い。理想的には、表面にある硫黄を含有する汚染物質の濃度は、0at%である。一実施形態では、カーボンブラックは、硫黄を約0.05at%以下しか含まず、別の実施形態では、硫黄を約0.04at%以下しか含まず、さらに別の実施形態では、硫黄を約0.03at%以下しか含まず、なお別の実施形態では、硫黄を約0.02at%以下しか含まず、別の実施形態では、硫黄を約0.01at%以下しか含まないが、硫黄の量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0006】
表面の硫黄濃度は、元素の状態、化学状態、定量分析の結果が得られる表面分析技術であるX線光電子分光法(XPS)によって測定することができる。使用前にカーボンブラック表面の硫黄濃度を測定することによって、本明細書に開示したトナーに使用するの適した濃度であるかどうかを見きわめることができる。
【0007】
本明細書に開示したトナーに適したカーボンブラックは、任意の望ましい粒径または適切な粒径をもっていてもよく、一実施形態では、少なくとも100ナノメートル、別の実施形態では、少なくとも約120nm、一実施形態では、約300nm以下、別の実施形態では、約200nm以下であってもよいが、粒径は、これらの範囲からはずれていてもよい。本明細書で、粒径とは、Beckman Coulter Multisizer 3のような測定装置を用い、製造業者の指示にしたがって操作して測定した体積平均径を指す。代表的なサンプリングは、以下のように行ってもよい。少量のトナーサンプル(約1g)を得て、25マイクロメートルのふるいで濾過し、次いで、等張性溶液に入れ、濃度約10%を得て、次いで、このサンプルをBeckman Coulter Multisizer 3で操作する。
【0008】
カーボンブラックは、トナー中に、任意の望ましい量または有効な量で存在し、一実施形態では、トナーの少なくとも約1重量%、別の実施形態では、少なくとも約2重量%、一実施形態では、トナーの約25重量%以下、別の実施形態では、約15重量%以下の量で存在するが、カーボンブラックの量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0009】
所望な場合、他の着色剤(例えば、顔料、染料またはこれらの混合物)も、カーボンブラックとともにトナー中に存在していてもよい。
【0010】
任意の特定の理論によって束縛されることを望まないが、表面にある硫黄を含有する汚染物質の濃度が低く、再現可能な濃度であるカーボンブラックを提供することによって、カーボンブラックを含有するトナーは、ある種の実施形態では、バッチごとの摩擦電気量の再現可能性が高くなり、それにより、帯電添加剤のような他の添加剤を変える必要性が減るか、またはなくなると考えられる。それに加えて、任意の特定の理論によって束縛されることを望まないが、多くの硫黄を含有する汚染物質が粒子表面に水を引きつける能力を有し、粒子表面を親水性にしてしまうのに対し、トナー樹脂は疎水性である傾向があるため、表面にある硫黄を含有する汚染物質の濃度が低く、再現可能な濃度であるカーボンブラックを提供することによって、カーボンブラックをトナー樹脂にもっと簡単に分散させることができるようになると考えられる。さらに、任意の特定の理論によって束縛されることを望まないが、表面にある硫黄を含有する汚染物質の濃度が低く、再現可能な濃度であるカーボンブラックを提供し、このカーボンブラックの粒径をさらに小さくすることによって、ある種の実施形態では、トナーに使用するカーボンブラックの濃度が少なくてすむだろうと考えられる。
【0011】
本明細書に開示したトナーは、任意の望ましい構造をしていてもよい(例えば、従来の溶融混合したトナー、カプセル化されたトナー、乳化凝集トナーなど)。乳化凝集トナーについては、本明細書にもっと詳細に記載しており、当該技術分野で既知の他の種類のトナーに同様の材料を用いてもよく、本明細書に開示したトナーが乳化凝集トナーに限定されないことが理解されるべきである。
【0012】
従来のトナーを、限定されないが、ボールミルによる粉砕、スプレードライ、Banbury法、押出成形などのような既知の方法をはじめとした任意の望ましい方法によって調製してもよい。
【0013】
カプセル化されたトナーを、限定されないが、米国特許第6,365,312号および同第4,937,167号に開示されている方法を含む任意の望ましい方法によって調製してもよい。
【0014】
本明細書に開示したトナーを、トナーを作成するときに使用するのに適した任意の望ましい樹脂または適切な樹脂から調製してもよい。このような樹脂は、元をたどれば、任意の適切なモノマーまたは複数のモノマーから作ることができる。樹脂を作成するのに有用な、適切なモノマーとしては、限定されないが、スチレン、アクリレート、メタクリレート、ブタジエン、イソプレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、エステル、ジオール、二酸、ジアミン、ジエステル、ジイソシアネート、これらの混合物などが挙げられる。
【0015】
適切なポリエステル樹脂の例としては、限定されないが、スルホン酸化されたもの、スルホン酸化されていないもの、結晶性、アモルファス、これらの組み合わせなどが挙げられる。ポリエステル樹脂は、直鎖、分岐、これらの組み合わせなどであってもよい。ポリエステル樹脂としては、米国特許第6,593,049号および同第6,756,176号に開示されている樹脂を挙げることができる。また、適切な樹脂としては、米国特許第6,830,860号に開示されているような、アモルファスポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との混合物も挙げられる。
【0016】
適切なポリエステルの他の例としては、ジオールと、二酸またはジエステルとを、任意成分の触媒存在下で反応させることによって作られるポリエステルが挙げられる。結晶性ポリエステルを作成するために、適切な有機ジオールとしては、限定されないが、約2〜約36個の炭素原子を含む脂肪族ジオール、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、エチレングリコール、これらの組み合わせなどが挙げられる。脂肪族ジオールは、任意の望ましい量または有効な量で選択されてもよく、一実施形態では、少なくとも約40mol%、別の実施形態では、少なくとも約42mol%、さらに別の実施形態では、少なくとも約45mol%、一実施形態では、約60mol%以下、別の実施形態では、約55mol%以下、さらに別の実施形態では、約53mol%以下の量で選択されてもよく、アルカリスルホ脂肪族ジオールは、任意の望ましい量または有効な量で選択されてもよく、一実施形態では、樹脂の0mol%、別の実施形態では、約1mol%以下、一実施形態では、約10mol%以下、別の実施形態では、約4mol%以下の量で選択されてもよいが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0017】
結晶性樹脂を調製するのに適した有機二酸またはジエステルの例としては、限定されないが、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、メサコン酸、これらのジエステルまたは酸無水物など、およびこれらの組み合わせが挙げられる。有機二酸は、任意の望ましい量または有効な量で選択されてもよく、一実施形態では、少なくとも約40mol%、別の実施形態では、少なくとも約42mol%、さらに別の実施形態では、少なくとも約45mol%、一実施形態では、約60mol%以下、別の実施形態では、約55mol%以下、さらに別の実施形態では、約53mol%以下の量で選択されてもよいが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0018】
適切な結晶性樹脂の例としては、限定されないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。特定の結晶性樹脂は、ポリエステル系樹脂であってもよく、例えば、ポリ(エチレン−アジペート)、ポリ(プロピレン−アジペート)、ポリ(ブチレン−アジペート)、ポリ(ペンチレン−アジペート)、ポリ(ヘキシレン−アジペート)、ポリ(オクチレン−アジペート)、ポリ(エチレン−サクシネート)、ポリ(プロピレン−サクシネート)、ポリ(ブチレン−サクシネート)、ポリ(ペンチレン−サクシネート)、ポリ(ヘキシレン−サクシネート)、ポリ(オクチレン−サクシネート)、ポリ(エチレン−セバケート)、ポリ(プロピレン−セバケート)、ポリ(ブチレン−セバケート)、ポリ(ペンチレン−セバケート)、ポリ(ヘキシレン−セバケート)、ポリ(オクチレン−セバケート)、アルカリコポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(エチレン−アジペート)、ポリ(デシレン−セバケート)、ポリ(デシレン−デカノエート)、ポリ−(エチレン−デカノエート)、ポリ−(エチレン−ドデカノエート)、ポリ(ノニレン−セバケート)、ポリ(ノニレン−デカノエート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−セバケート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−デカノエート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−ドデカノエート)など、およびこれらの混合物であってもよい。結晶性樹脂は、任意の望ましい量または有効な量で存在していてもよく、一実施形態では、トナー成分の少なくとも約5重量%、別の実施形態では、少なくとも約10重量%、一実施形態では、約50重量%以下、別の実施形態では、約35重量%以下の量で存在していてもよいが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。結晶性樹脂は、任意の望ましい融点または任意の有効な融点を有していてもよく、一実施形態では、少なくとも約30℃、別の実施形態では、少なくとも約50℃、一実施形態では、約120℃以下、別の実施形態では、約90℃以下であってもよいが、融点は、これらの範囲から外れていてもよい。結晶性樹脂は、任意の望ましいか、または有効な数平均分子量(Mn)を有していてもよく、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定した場合、一実施形態では、少なくとも約1,000、別の実施形態では、少なくとも約2,000、一実施形態では、約50,000以下、別の実施形態では、約25,000以下であってもよいが、Mnは、これらの範囲から外れていてもよく、任意の望ましいか、または有効な重量平均分子量(Mw)を有していてもよく、一実施形態では、ポリスチレン標準を用いたゲル透過クロマトグラフィーで測定した場合、少なくとも約2,000、別の実施形態では、少なくとも約3,000、一実施形態では、約100,000以下、別の実施形態では、約80,000以下であってもよいが、Mwは、これらの範囲から外れていてもよい。結晶性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、任意の望ましい数または有効な数であってもよく、一実施形態では、少なくとも約2、別の実施形態では、少なくとも約3、一実施形態では、約6以下、別の実施形態では、約4以下であってもよいが、分子量分布は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0019】
アモルファスポリエステルを調製するのに適した二酸またはジエステルの例としては、限定されないが、ジカルボン酸、酸無水物またはジエステル、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、コハク酸、無水コハク酸、ドデシルコハク酸、無水ドデシルコハク酸、グルタル酸、無水グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、無水フタル酸、フタル酸ジエチル、コハク酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ドデシルコハク酸ジメチルなど、およびこれらの混合物が挙げられる。有機二酸またはジエステルは、任意の望ましい量または有効な量で存在していてもよく、一実施形態では、樹脂の少なくとも約40mol%、別の実施形態では、少なくとも約42mol%、さらに別の実施形態では、少なくとも約45mol%、一実施形態では、約60mol%以下、別の実施形態では、約55mol%以下、さらに別の実施形態では、約53mol%以下の量で存在していてもよいが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0020】
アモルファスポリエステルを作成するのに適したジオールの例としては、限定されないが、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、2,2,3−トリメチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ドデカンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)−ビスフェノールA、ビス(2−ヒドロキシプロピル)−ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、キシレンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ビス(2−ヒドロキシエチル)オキシド、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコールなど、およびこれらの混合物が挙げられる。有機ジオールは、任意の望ましい量または有効な量で存在していてもよく、一実施形態では、樹脂の少なくとも約40mol%、別の実施形態では、少なくとも約42mol%、さらに別の実施形態では、少なくとも約45mol%、一実施形態では、約60mol%以下、別の実施形態では、約55mol%以下、さらに別の実施形態では、約53mol%以下の量で存在していてもよいが、その量は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0021】
適切なアモルファス樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。使用可能なアモルファス樹脂の特定の例としては、限定されないが、ポリ(スチレン−アクリレート)樹脂、例えば、約10%〜約70%が架橋したポリ(スチレン−アクリレート)樹脂、ポリ(スチレン−メタクリレート)樹脂、架橋したポリ(スチレン−メタクリレート)樹脂、ポリ(スチレン−ブタジエン)樹脂、架橋したポリ(スチレン−ブタジエン)樹脂、アルカリスルホン酸化ポリエステル樹脂、分岐アルカリスルホン酸化ポリエステル樹脂、アルカリスルホン酸化ポリイミド樹脂、分岐アルカリスルホン酸化ポリイミド樹脂、アルカリスルホン酸化ポリ(スチレン−アクリレート)樹脂、架橋したアルカリスルホン酸化ポリ(スチレン−アクリレート)樹脂、ポリ(スチレン−メタクリレート)樹脂、架橋したアルカリスルホン酸化−ポリ(スチレン−メタクリレート)樹脂、アルカリスルホン酸化−ポリ(スチレン−ブタジエン)樹脂、架橋したアルカリスルホン酸化ポリ(スチレン−ブタジエン)樹脂など、およびこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば、コポリ(エチレン−テレフタレート)−コポリ(エチレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(プロピレン−テレフタレート)−コポリ(プロピレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(ジエチレン−テレフタレート)−コポリ(ジエチレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(プロピレン−ジエチレン−テレフタレート)−コポリ(プロピレン−ジエチレン−5−スルホイソフタレート)、コポリ(プロピレン−ブチレン−テレフタレート)−コポリ(プロピレン−ブチレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(プロポキシル化ビスフェノール−A−フマレート)−コポリ(プロポキシル化ビスフェノールA−5−スルホ−イソフタレート)などの金属塩またはアルカリ塩、およびこれらの混合物のようなアルカリスルホン酸化ポリエステル樹脂が、有用な場合がある。
【0022】
また、不飽和ポリエステル樹脂を用いてもよい。このような樹脂の例としては、米国特許第6,063,827号に開示されているものが挙げられる。例示的な不飽和ポリエステル樹脂としては、限定されないが、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(1,2−プロピレン フマレート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(1,2−プロピレンマレエート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(1,2−プロピレンイタコネート)など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
ある特定の適切なアモルファスポリエステル樹脂は、以下の式を有するポリ(プロポキシル化ビスフェノールA コ−フマレート)樹脂であり、
【化1】

式中、mは、約5〜約1000であってもよいが、mは、この範囲から外れていてもよい。このような樹脂および樹脂を製造するプロセスの例としては、米国特許第6,063,827号に開示されているものが挙げられる。
【0024】
また、米国特許7,528,218号に開示されているポリエステル樹脂も適している。適切な樹脂の特定の例としては、(1)以下の二酸
【化2】

と、以下のジオール
【化3】

の混合物の重縮合生成物、(2)以下の二酸
【化4】

と、以下のジオール
【化5】

の混合物の重縮合生成物が挙げられる。
【0025】
また、適切な結晶性樹脂としては、米国特許第7,329,476号に開示されているものが挙げられる。ある特定の適切な結晶性樹脂は、以下の式を有する、エチレングリコールと、ドデカン二酸およびフマル酸コモノマーの混合物とを含み、
【化6】

式中、bは、約5〜約2000であり、dは、約5〜約2000であるが、bおよびdの値は、これらの範囲から外れていてもよい。別の適切な結晶性樹脂は、以下の式を有し、
【化7】

式中、nは、繰り返しモノマー単位の数をあらわす。
【0026】
使用可能な他の適切なラテックス樹脂またはポリマーの例としては、限定されないが、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(メチルスチレン−ブタジエン)、ポリ(メタクリル酸メチル−ブタジエン)、ポリ(メタクリル酸エチル−ブタジエン)、ポリ(メタクリル酸プロピル−ブタジエン)、ポリ(メタクリル酸ブチル−ブタジエン)、ポリ(アクリル酸メチル−ブタジエン)、ポリ(アクリル酸エチル−ブタジエン)、ポリ(アクリル酸プロピル−ブタジエン)、ポリ(アクリル酸ブチル−ブタジエン)、ポリ(スチレン−イソプレン)、ポリ(メチルスチレン−イソプレン)、ポリ(メタクリル酸メチル−イソプレン)、ポリ(メタクリル酸エチル−イソプレン)、ポリ(メタクリル酸プロピル−イソプレン)、ポリ(メタクリル酸ブチル−イソプレン)、ポリ(アクリル酸メチル−イソプレン)、ポリ(アクリル酸エチル−イソプレン)、ポリ(アクリル酸プロピル−イソプレン)、ポリ(アクリル酸ブチル−イソプレン);ポリ(スチレン−アクリル酸プロピル)、ポリ(スチレン−アクリル酸ブチル)、ポリ(スチレン−ブタジエン−アクリル酸)、ポリ(スチレン−ブタジエン−メタクリル酸)、ポリ(スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル−アクリル酸)、ポリ(スチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸)、ポリ(スチレン−アクリル酸ブチル−メタクリル酸)、ポリ(スチレン−アクリル酸ブチル−アクリロニトリル)、ポリ(スチレン−アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−アクリル酸)など、およびこれらの混合物が挙げられる。ポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、または交互コポリマー、およびこれらの組み合わせであってもよい。
【0027】
乳化凝集粒子を調製するためのエマルションを、任意の望ましい方法または有効な方法、例えば、米国特許公開第2007/0141494号および同第2009/0208864号に開示されているような溶媒を使わない乳化方法または転相プロセスで調製してもよい。
【0028】
また、例えば、米国特許第7,029,817号に開示されているような溶媒フラッシュ法も、エマルションを調製するのに適している。
【0029】
また、任意の他の望ましい乳化プロセスまたは有効な乳化プロセスを用いてもよい。ある特定の実施形態では、樹脂はポリエステルであり、例えば、米国特許公開第2009/0208864号および同第2009/0246680号に開示されているような、有機溶媒を用いない連続乳化プロセスによって調製される。
【0030】
トナー粒子を、任意の望ましい方法または有効な方法によって調製してもよい。トナー粒子の製造に関連する実施形態を、乳化凝集プロセスに関して以下に記載しているが、米国特許第5,290,654号および同第5,302,486号に開示されているような懸濁およびカプセル化のプロセスのような化学プロセスを含む、トナー粒子を調製する任意の適切な方法を用いてもよい。トナー組成物およびトナー粒子は、粒径が小さな樹脂粒子を適切なトナー粒径になるまで凝集させ、次いで、融着させ、最終的なトナー粒子の形状および形態が得られるような凝集融着プロセスによって調製されてもよい。
【0031】
トナー組成物を、カーボンブラックと、任意成分のワックスと、任意の他の望ましい添加剤または必要な添加剤と、上述のように選択した樹脂を含むエマルションとの混合物を、場合により界面活性剤中で凝集させることと、次いで、この凝集混合物を融着させることとを含む乳化凝集プロセスによって調製してもよい。カーボンブラックと、場合によりワックスまたは他の材料(場合により、界面活性剤を含む分散物の形態であってもよい)とを上のエマルション(樹脂を含有する2種類以上のエマルションの混合物であってもよい)に加えることによって、混合物を調製してもよい。
【0032】
また、場合により、トナー粒子を作成するときに、ワックスを樹脂および他のトナー成分と合わせてもよい。ワックスが含まれる場合、ワックスは、任意の望ましい量または有効な量で存在していてもよく、一実施形態では、少なくとも約1重量%、別の実施形態では、少なくとも約5重量%、一実施形態では、約25重量%以下、別の実施形態では、約20重量%以下の量で存在していてもよいが、この量は、これらの範囲から外れていてもよい。適切なワックスの例としては、(限定されないが)例えば、重量平均分子量が、一実施形態では、少なくとも約500、別の実施形態では、少なくとも約1,000、一実施形態では、約20,000以下、別の実施形態では、約10,000以下のワックスが挙げられるが、重量平均分子量は、これらの範囲から外れていてもよい。適切なワックスの例としては、限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンワックスのようなポリオレフィン(Allied ChemicalおよびPetrolite Corporationから市販されているもの、例えば、Baker Petrolite製のPOLYWAX(商標)ポリエチレンワックス、Michaelman,Inc.およびDaniels Products Companyから入手可能なワックスエマルション、Eastman Chemical Products,Inc.から市販されているEPOLENE N−15(商標)、VISCOL 550−P(商標)(三洋化成工業株式会社から入手可能な重量平均分子量が小さいポリプロピレン)などを含む);植物由来のワックス、例えば、カルナバワックス、ライスワックス、カンデリラワックス、木蝋、ホホバ油など;動物由来のワックス、例えば、蜜蝋など;鉱物由来のワックスおよび石油由来のワックス、例えば、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、微晶質ワックス、Fischer−Tropschワックスなど;高級脂肪酸と高級アルコールとから得られるエステルワックス、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニルなど;高級脂肪酸と一価または多価の低級アルコールとから得られるエステルワックス、例えば、ステアリン酸ブチル、オレイン酸プロピル、グリセリドモノステアレート、グリセリドジステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネートなど;高級脂肪酸と多価アルコールマルチマーとから得られるエステルワックス、例えば、ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジグリセリルジステアレート、トリグリセリルテトラステアレートなど;ソルビタン高級脂肪酸エステルワックス、例えば、ソルビタンモノステアレートなど;コレステロール高級脂肪酸エステルワックス、例えば、ステアリン酸コレステリルなど、およびこれらの混合物が挙げられる。適切な官能化ワックスの例としては、限定されないが、アミン、アミド、例えば、AQUA SUPERSLIP 6550(商標)、SUPERSLIP 6530(商標)(Micro Powder Inc.から入手可能)、フッ素化ワックス、例えば、POLYFLUO 190(商標)、POLYFLUO 200(商標)、POLYSILK 19(商標)、POLYSILK 14(商標)(Micro Powder Inc.から入手可能)、混合フッ素化アミドワックス、例えば、MICROSPERSION 19(商標)TM(これもまたMicro Powder Inc.から入手可能)、イミド、エステル、四級アミン、カルボン酸またはアクリルポリマーのエマルション、例えば、JONCRYL 74(商標)、89(商標)、130(商標)、537(商標)、538(商標)(すべてSC Johnson Waxから入手可能)、塩素化ポリプロピレンおよび塩素化ポリエチレン(Allied ChemicalおよびPetrolite CorporationおよびSC Johnson waxから入手可能)など、およびこれらの混合物が挙げられる。また、上のワックスの混合物および組み合わせを使用してもよい。ワックスは、例えば、フューザーロール剥離剤として含まれていてもよい。ワックスが含まれる場合、ワックスは、任意の望ましい量または有効な量で存在していてもよく、一実施形態では、少なくとも約1重量%、別の実施形態では、少なくとも約5重量%、一実施形態では、約25重量%以下、別の実施形態では、約20重量%以下の量で存在していてもよいが、この量は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0033】
次いで、上のように作成した凝集トナー粒子に任意成分のシェルを塗布してもよい。コア樹脂として適していると上に述べた任意の樹脂をシェル樹脂として用いてもよい。シェル樹脂を、任意の望ましい方法または有効な方法によって、凝集粒子に塗布してもよい。例えば、シェル樹脂は、界面活性剤を含むエマルションの状態であってもよい。作成した凝集物の周りにシェル樹脂がシェルを形成するように、上述の凝集粒子を、上述のシェル樹脂エマルションと合わせてもよい。ある特定の実施形態では、アモルファスポリエステルを用い、凝集物の周りにシェルを作成し、コア−シェル構造を有するトナー粒子を作成してもよい。
【0034】
トナー粒子は、所望な場合、他の任意成分の添加剤も含んでいてもよい。例えば、トナーは、陽電荷制御剤または負電荷制御剤を、任意の望ましい量または有効な量で含んでいてもよく、一実施形態では、トナーの少なくとも約0.1重量%、別の実施形態では、少なくとも約1重量%、一実施形態では、約10重量%以下、別の実施形態では、約3重量%以下の量で含んでいてもよいが、これらの範囲から外れる量を用いてもよい。適切な電荷制御剤としては、限定されないが、アルキルピリジニウムハロゲン化物を含む四級アンモニウム化合物;硫酸水素塩;米国特許第4,298,672号に開示されているものを含むアルキルピリジニウム化合物;有機サルフェートおよび有機スルホネートの組成物、米国特許第4,338,390号に開示されているものを含む;セチルピリジニウムテトラフルオロボレート;ジステアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェート;アルミニウム塩、例えば、BONTRON E84(商標)またはE88(商標)(Hodogaya Chemical)など、およびこれらの混合物が挙げられる。このような電荷制御剤は、上述の任意成分のシェル樹脂と同時に塗布されてもよく、任意成分のシェル樹脂を塗布した後に塗布されてもよい。
【0035】
また、トナー粒子と、外部添加剤粒子(流動補助添加剤を含む)とをブレンドしてもよく、この場合、添加剤はトナー粒子表面に存在するだろう。これらの添加剤の例としては、限定されないが、金属酸化物、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化スズなど、およびこれらの混合物;コロイド状シリカおよびアモルファスシリカ、例えば、AEROSIL(登録商標)、ステアリン酸亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウムなどを含む金属塩および脂肪酸金属塩、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの外部添加剤は、それぞれ、任意の望ましい量または有効な量で存在していてもよく、一実施形態では、トナーの少なくとも約0.1重量%、別の実施形態では、少なくとも約0.25重量%、一実施形態では、約5重量%以下、別の実施形態では、約3重量%以下の量で存在していてもよいが、これらの範囲から外れた量を用いてもよい。適切な添加剤としては、限定されないが、米国特許第3,590,000号、同第3,800,588号、同第6,214,507号に開示されているものが挙げられる。この場合も、これらの添加剤は、上述の任意成分のシェル樹脂と同時に塗布されてもよく、任意成分のシェル樹脂を塗布した後に塗布されてもよい。
【0036】
トナー粒子を現像剤組成物に配合してもよい。トナー粒子をキャリア粒子と混合し、2成分現像剤組成物を得てもよい。現像剤中のトナーの濃度は、任意の望ましい濃度または有効な濃度であってもよく、一実施形態では、現像剤の合計重量の少なくとも約1重量%、別の実施形態では、少なくとも約2重量%、一実施形態では、約25重量%以下、別の実施形態では、約15重量%以下の濃度であってもよいが、これらの範囲から外れた量を用いてもよい。
【0037】
トナー粒子は、真円度が、一実施形態では、少なくとも約0.920、別の実施形態では、少なくとも約0.940、さらに別の実施形態では、少なくとも約0.962、なお別の実施形態では、少なくとも約0.965、一実施形態では、約0.999以下、別の実施形態では、約0.990以下、さらに別の実施形態では、約0.980以下であるが、この値は、これらの範囲から外れていてもよい。真円度が1.000とは、完全に真円の球を示す。真円度は、例えば、Sysmex FPIA 2100分析機を用いて測定することができる。
【0038】
乳化凝集プロセスによって、トナーの粒径分布を大きく制御することができ、トナー中の微細なトナー粒子および粗大トナー粒子の量を制限することができる。トナー粒子は、相対的に狭い粒径分布を有していてもよく、数による幾何標準偏差(GSDn)の小さい側の比率が、一実施形態では、少なくとも約1.15、別の実施形態では、少なくとも約1.18、さらに別の実施形態では、少なくとも約1.20、一実施形態では、約1.40以下、別の実施形態では、約1.35以下、さらに別の実施形態では、約1.30以下、なお別の実施形態では、約1.25以下であってもよいが、この値は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0039】
トナー粒子は、体積平均径(「体積平均粒子径」または「D50v」とも呼ばれる)が、一実施形態では、少なくとも約3μm、別の実施形態では、少なくとも約4μm、さらに別の実施形態では、少なくとも約5μm、一実施形態では、約25μm以下、別の実施形態では、約15μm以下、さらに別の実施形態では、約12μm以下であってもよいが、この値は、これらの範囲から外れていてもよい。D50v、GSDv、GSDnは、製造業者の指示にしたがって操作されたBeckman Coulter Multisizer 3のような測定装置を用いて決定されてもよい。代表的なサンプリングは、以下のように行ってもよい。少量のトナーサンプル(約1g)を得て、25マイクロメートルのふるいで濾過し、次いで、等張性溶液に入れ、濃度約10%を得て、次いで、このサンプルをBeckman Coulter Multisizer 3で操作する。
【0040】
トナー粒子は、形状因子SF1*aが、一実施形態では、少なくとも約105、別の実施形態では、少なくとも約110、一実施形態では、約170以下、別の実施形態では、約160以下であってもよいが、この値は、これらの範囲から外れていてもよい。走査型電子顕微鏡法(SEM)を用い、トナーの形状因子の分析をSEMおよび画像分析(IA)によって決定してもよい。平均的な粒子の形状は、以下の形状因子(SF1*a)の式:SF1*a=100πd/(4A)を用いることによって定量化され、式中、Aは、粒子の面積であり、dは、主要な軸である。完全に円形または球状の粒子は、形状因子がほぼ100である。形状がより不規則になるか、または表面積が大きくなるような形状に伸ばされると、形状因子SF1*aは、大きくなる。
【0041】
トナー粒子の特性は、任意の適切な技術および装置によって決定されてもよく、本明細書で上に示した装置および技術に限定されない。
【0042】
トナー樹脂が架橋可能である実施形態では、このような架橋は、任意の望ましい様式または有効な様式で行われてもよい。例えば、トナー樹脂が融合温度で架橋可能な場合には、トナーを基剤に融合させている間にトナー樹脂を架橋してもよい。また、例えば、融合後の操作中に、トナー樹脂が架橋するであろう温度まで融合後の画像を加熱することによって架橋を行ってもよい。特定の実施形態では、架橋は、一実施形態では、約160℃以下、別の実施形態では、約70℃〜約160℃、さらに別の実施形態では、約80℃〜約140℃の温度で行われてもよいが、これらの範囲から外れた温度を利用してもよい。
【実施例】
【0043】
(実施例I)
異なる製造業者および異なる供給業者またはこれらの製造業者のロット番号から得たカーボンブラックについて、表面の硫黄濃度をX線光電子分光法(XPS)によって分析した。サンプル表面の上側2〜5ナノメートルの直径約1mmの領域を分析した。銅製の導電性テープの上に粉末を振りかけることによって、サンプルをX線源にさらした。この技術の検出限界は、上側2〜5nmで約0.1at%であった。定量分析は、主要な構成要素については測定値の5%以内の精度であり、少量構成要素については測定値の10%以内の精度であった。
【0044】
測定したカーボンブラックサンプルは、REGAL 330、CABOTカーボンブラックロット番号TPX1067、CABOTカーボンブラックロット番号TPX1337(Cabot、Billerica、MAから得た)、NIPEX 35(Evonik Carbon Black GmbH、Rodenbacher、Chaussee 4、Germanyから得た)、NIPEX 35(Evonik Industries、Belpre、OHから得た)であった。結果は以下のとおりであった。
【0045】
【表1】

結果に示されているように、Evonik Germanyから得たNIPEX 35は、硫黄の原子百分率が0.04であり、Cabot TPX1337は、硫黄の原子百分率が0.03であり、いずれも本明細書に開示したトナーとともに使用するのに適している。
【0046】
(実施例II)
黒色乳化凝集トナーを、20ガロンのパイロットスケール(理論上、乾燥トナー11g)で調製する。アモルファスポリエステルエマルションAは、Mwが約19,400であり、Mnが約5,000であり、Tgの開始温度が約60℃であり、固形分が約35%であるポリエステル樹脂エマルションを含有している。アモルファスポリエステルエマルションBは、重量平均分子量(Mw)が約86,000であり、数平均分子量(Mn)が約5,600であり、ガラス転移開始温度(Tg開始温度)が約56℃であり、固形分が約35%のポリエステル樹脂エマルションを含有している。結晶性ポリエステルエマルションは、Mwが約23,300であり、Mnが約10,500であり、融点(Tm)が約71℃であり、固形分が約35.4%であるポリエステル樹脂エマルションを含有している。両アモルファス樹脂は、以下の式を有し、
【化8】

式中、mは、約5〜約1000である。結晶性樹脂は、以下の式を有し、
【化9】

式中、bは、約5〜約2000であり、dは、約5〜約2000である。2%界面活性剤(DOWFAX 2A1)を含む2種類のアモルファスエマルション(アモルファスポリエステルAを7kg、アモルファスポリエステルBを7kg)、2%の界面活性剤(DOWFAX 2A1)を含む2kgの結晶性エマルション、3kgのワックス(IGI)、6kgのEvonik Germanyから入手可能なNIPEX 35カーボンブラック(実施例Iに記載した方法によってXPSで測定した場合、表面の硫黄濃度が0.04at%である)、917gのシアン顔料(Pigment Blue 15:3 Dispersion、固形分が約17%、Sun Chemical Corporationから入手可能)を反応器中で混合した後、0.3M硝酸を用い、pHを4.2に調節する。次いで、このスラリーを、合計60分間の再循環ループを用いたcavitronホモジナイザによって均質化し、ここで、最初の8分間に、2.96gのAl(SOからなる凝固剤を36.5gの脱イオン水と混合したものをラインから加える。反応器のrpmは、100rpmから上げていき、すべての凝固剤を加えたら、300rpmで混合するように設定する。次いで、スラリーをバッチ温度42℃で凝集させる。凝集の間、コアと同じアモルファスエマルションを含むシェルのpHを、硝酸を用いて3.3に調節し、バッチに加える。その後、このバッチを目標の粒径に達するまでさらに加熱する。目標の粒径になったら、NaOHおよびEDTAを用いてpHを調節し、凝集工程を凍結させる。反応器の温度を85℃まで上げつつ、このプロセスを進める。望ましい温度で、pH5.7の酢酸ナトリウム/酢酸バッファを用いてpHを6.8に調節すると、この時点で粒子が融着し始める。約2時間後、粒子は>0.965に達し、熱交換器を用いて急冷する。トナーを、室温で脱イオン水洗浄液を用いて3回洗浄し、Aljetの「Thermajet」乾燥器4型を用いて乾燥させる。
【0047】
(実施例III)
凝集および融着のために、約1.9%の0.02M HNO、スチレン/n−アクリル酸ブチル/β−カルボキシアクリル酸エチルコポリマーを約74:23:3の比率で含む約24.7%のラテックスコア、スチレン/n−アクリル酸ブチル/β−カルボキシアクリル酸エチルコポリマーを約74:23:3の比率で含む約12.2%のラテックスシェル、約6.7%のEvonik Germanyから入手可能なNIPEX 35カーボンブラック(実施例Iに記載の方法によってXPSで測定すると、硫黄の表面濃度が0.04at%である)、約54.5%の脱イオン水をあらかじめブレンドしておき、このブレンドを、加圧ポンプを用いてツインスクリュー型押出成型機(ZSK25、Coperion製)に注入する。押出成型機の長さ/直径(L/D比)は、約53であり、スクリューのL/D比は、約54.16である。スクリューは、搬送スクリューの後に中立の混練要素、右側の混練要素、中立の混練ブロック、左側の混練要素、小さなピッチの搬送要素を備えた構造であり、あらかじめブレンドした材料の応力、ひずみ、滞留時間、圧送を制御する。供給速度は、約48g/分〜約97g/分に調節され、温度は、約40〜100℃である。スクリューの速度は、約200〜800rpmまで変動する。樹脂粒子の粒径は、Sysmex Corporation製のFPIA2100を用いて測定する。粒子は、初期の粒径である約0.9μから約2.53μまで成長する。スクリューの速度が速く、供給速度が大きいほど、粒子の成長が良好に起こり、粒子が懸濁状態のまま維持される。
【0048】
(実施例IV)
黒色現像剤組成物を以下のように調製する。92重量部のスチレン−n−ブチルメタクリレート樹脂、6重量部のEvonik Germanyから入手可能なNIPEX 35カーボンブラック(実施例Iに記載の方法によってXPSで測定すると、硫黄の表面濃度が0.04at%である)、2重量部の塩化セチルピリジニウムを、ダイを約130〜145℃の温度に維持し、バレルを約80〜100℃の温度範囲に維持した押出成型機内で溶融混合した後、微粉化し、空気で分級し、体積平均径が12μのトナー粒子を得る。その後、Hoeganoes Anchor Steelコア(粒径範囲が約75〜150ミクロン、Hoeganoes Companyから入手可能)を、20重量部のVulcanカーボンブラック(Cabot Corporationから入手可能)を80重量部のクロロトリフルオロエチレン−塩化ビニルコポリマー(Occidental Petroleum CompanyからOXY 461として入手可能)に均一に分散した0.4重量部のコーティングで溶液コーティングすることによってキャリア粒子を調製し、ここで、コーティングは、メチルエチルケトン溶媒から溶液コーティングされる。次いで、Lodige Blender中で約10分間、97.5重量部のコーティングされたキャリア粒子と、2.5重量部のトナーとをブレンドすることによって黒色現像剤を調製し、これにより正の摩擦電気が帯電しているトナーを含む現像剤が得られる。
【0049】
(実施例V)
熱融合性のマイクロカプセル化されたトナーを以下の手順によって調製する。250mLのポリエチレン瓶に、15.3gのスチレンモノマーと、61.3gのn−メタクリル酸ブチルモノマーと、約52wt%のスチレンおよび48wt%のn−メタクリル酸ブチルを含む22.4gのコポリマーと、Evonik Germanyから入手可能なNIPEX 35カーボンブラック(実施例Iに記載の方法によってXPSで測定すると、硫黄の表面濃度が0.04at%である)の混合物21.0gとを、65wt%のスチレンおよび35wt%のメタクリル酸n−ブチルを含むスチレン/メタクリル酸n−ブチルコポリマーにあらかじめ分散させておいたものを加える。ここで、顔料とコポリマーとの比率は、重量基準で50/50である。ポリマーおよび顔料を、Burrellリストシェーカーで上のモノマーに24〜48時間かけて分散させる。着色したモノマー溶液が均質になったら、Burrellリストシェーカー上で10分間かけて瓶を振り混ぜることによって、この混合物に、19.0gの塩化テレフタロイル、3.066gの2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、0.766gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを分散させる。600mLの0.5%ポリビニルアルコール溶液(Mw 96,000、88%加水分解されたもの)を入れた2Lのステンレス鋼ビーカー内で、Brinkmann PT45/80ホモジナイザおよびPTA−35/4Gプローブを10,000rpmで用い、0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを、着色したモノマー溶液に3分間かけて分散させる。分散は、冷水浴中、15℃で行う。次いで、分散物を、機械式スターラーと、ビーカーの下に油浴を取り付けた2Lのガラス反応器に移す。溶液をはげしく撹拌しつつ、11.0gの1,6−ヘキサンジアミン、13.0gの炭酸ナトリウム、100mLの蒸留水を含む水溶液をこの反応器に注ぎ、混合物を室温で2時間撹拌する。この間に、界面重合が起こり、架橋していないポリアミドシェルがコア材料の周りに生成する。撹拌を続けつつ、反応混合物の容積を1.0%ポリビニルアルコール溶液を用いて1.5Lまで増やし、1.0gのヨウ化カリウムを10.0mLの蒸留水に溶解した水溶液を加える。溶液のpHを、希塩酸を用いてpH7〜8に調節し、次いで、撹拌しつつ、85℃で12時間加熱する。この間に、モノマー材料は遊離ラジカル重合し、ポリマーコアの生成が完結する。次いで、この溶液を室温まで冷却し、粒子を重力によって沈降させることによって、蒸留水で10回洗浄する。粒子を425μおよび250μのふるいによって濡れた状態でふるい、スプレー乾燥する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子を調製するプロセスであって、
(a)カーボンブラックを選択することと;
(b)前記カーボンブラック表面の硫黄濃度をX線光電子分光法によって測定し、表面の硫黄濃度が約0.05at%以下であるようにすることと;
(c)前記カーボンブラックと樹脂とを混合し、トナー組成物を作成することとを含む、プロセス。
【請求項2】
前記カーボンブラックは、平均粒径が約100nm〜約300nmである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記カーボンブラックが、前記トナー中に、トナーの約1〜約25重量%の量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記カーボンブラック表面の硫黄濃度は、X線光電子分光法で測定した場合、約0.04at%以下である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記トナー粒子が、乳化凝集プロセスによって調製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
トナー粒子を調製するプロセスであって、
(a)カーボンブラックを選択することと;
(b)前記カーボンブラック表面の硫黄濃度をX線光電子分光法によって測定し、表面の硫黄濃度が約0.05at%以下であるようにすることと;
(c)有機溶媒が存在しない状態でポリエステル樹脂を溶融混合し、場合により、この樹脂に界面活性剤を加え、この樹脂に塩基性薬剤および水を加え、樹脂粒子のエマルションを作成することによって、ポリエステルラテックス粒子を作成することと;
(d)前記カーボンブラックと、前記ポリエステルラテックス粒子とを乳化凝集プロセスで混合し、トナー組成物を作成することとを含む、プロセス。
【請求項7】
前記カーボンブラックは、平均粒径が約100nm〜約300nmである、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記カーボンブラックが、前記トナー中に、トナーの約1〜約25重量%の量で存在する、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記カーボンブラック表面の硫黄濃度は、X線光電子分光法で測定した場合、約0.04at%以下である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
トナー粒子を調製するプロセスであって、
(a)カーボンブラックを選択することと;
(b)前記カーボンブラック表面の硫黄濃度をX線光電子分光法によって測定し、表面の硫黄濃度が約0.05at%以下であるようにすることと;
(c)
(i)反応容器中で、少なくとも1個の酸基を含む少なくとも1種類のポリエステル樹脂を与えること;
(ii)この少なくとも1個の酸基を、前記樹脂と塩基とを接触させることによって中和すること;
(iii)前記中和した樹脂と、少なくとも1種類の界面活性剤とを有機溶媒が存在しない状態で接触させることによって、前記中和した樹脂を乳化させ、ラテックス粒子を含むラテックスエマルションを得ること;および
(iv)前記ラテックス粒子を連続的に回収すること
によって、ポリエステルラテックス粒子を作成することと;
(d)前記カーボンブラックと、前記ポリエステルラテックス粒子とを乳化凝集プロセスで混合し、トナー組成物を作成することとを含む、プロセス。

【公開番号】特開2012−220949(P2012−220949A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58428(P2012−58428)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】