説明

表面保護フィルムまたはシート

【課題】コシの強さ(引張弾性率)、防傷性、および耐溶剤性に優れたバイオマス資源を原料として使用されたポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物からなる、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材用、自動車部品用、特には液晶部材といった光学製品用および電気電子部品用などに好適に用いられる表面保護フィルムまたはシートを提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるカーボネート構成単位[A]を含んでなるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物であって、カーボネート構成単位[A]が全カーボネート構成単位中50〜100モル%の割合であるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物より形成された表面保護フィルムまたはシート。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂より形成された表面保護フィルムまたはシートに関する。さらに詳しくは、コシの強さ(引張弾性率)、防傷性、および耐溶剤性に優れたバイオマス資源を原料として得られるポリカーボネート樹脂から形成された、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材用、自動車部品用、特には液晶部材といった光学製品用および電気電子部品用などに好適に用いられる表面保護フィルムまたはシートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に表面保護フィルムまたはシートは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート等の熱可塑性樹脂単体あるいはこれらを混合してなる樹脂成形物からなる1層または多層の基材層と粘着層とからなり、加工時、輸送時、保管時に外部から受ける傷や汚れ発生を防止することを目的として、金属板、樹脂板、木製化粧板、銘板、液晶部材、電気電子部品、建築資材、自動車部品などに貼って使用されている。
【0003】
基材層がポリエチレンからなる場合には、ポリエチレンとして高密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンといった線状ポリエチレンを単体あるいは高圧法低密度ポリエチレンと混合して用いられることが知られている。例えば特許文献1には、高密度ポリエチレンを単体で基材層に使用する方法が、特許文献2には高密度ポリエチレンを高圧法低密度ポリエチレンと混合して使用する方法が、更には特許文献3に直鎖状低密度ポリエチレンを単体で使用する方法がそれぞれ開示されている。
【0004】
しかし、線状ポリエチレンを使用することで表面保護フィルムまたはシートの機械的強度、打ち抜き加工性や鋸刃やルーターによる切削加工時の毛羽立ち性を改良することが可能となるものの、特に液晶部材用や電気電子部品用において要求レベルが高まってきているクリーン性を満足するには至っていないというのが現状である。
【0005】
さらには、近年は液晶部材を中心に薄肉化が進み、表面保護フィルムまたはシートは傷や汚れの発生を防止するだけではなく該部材の支持体としての役割も求められ、クリーン性とともにコシの強さも併せ持つことが要求されるようになってきているが、それにも応えられていないという問題も残している。
【0006】
併せて、環境志向の高まりに伴い、近年PLAなどに代表される再生可能資源から得られる材料がさまざまな分野において求められているが、これまで、上記要求特性を満足し、且つ再生可能資源から得られる材料というものは未だ知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開平08−170056号公報
【特許文献2】特開昭54−133578号公報
【特許文献3】特開平06−328633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、コシの強さ(引張弾性率)、防傷性、および耐溶剤性に優れたバイオマス資源を原料として使用されたポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物からなる、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材用、自動車部品用、特には液晶部材といった光学製品用および電気電子部品用などに好適に用いられる表面保護フィルムまたはシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、下記式(1)で表されるカーボネート構成単位[A]を主とするポリカーボネート樹脂から形成された表面保護フィルムまたはシートが、引張弾性率が高く、防傷性、および耐溶剤性に優れることを見出し、本発明に至った。
【0010】
【化1】

【0011】
すなわち、本発明によれば、
1.下記式(1)で表されるカーボネート構成単位[A]を含んでなるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物であって、カーボネート構成単位[A]が全カーボネート構成単位中50〜100モル%の割合であるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物より形成された表面保護フィルムまたはシート、
【化2】

2.カーボネート構成単位[A]が全カーボネート構成単位中75〜100モル%の割合である前項1記載の表面保護フィルムまたはシート、
3.カーボネート構成単位[A]が全カーボネート構成単位中90〜100モル%の割合である前項1記載の表面保護フィルムまたはシート、
4.カーボネート構成単位[A]のみからなるポリカーボネート樹脂より形成された前項1記載の表面保護フィルムまたはシート、および
5.ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度が0.20〜0.65である前項1記載の表面保護フィルムまたはシート、
が提供される。
【0012】
以下、本発明で用いるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物から形成された表面保護フィルムまたはシートについて具体的に説明する。
【0013】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、前記式(1)で表されるカーボネート構成単位を含むポリカーボネート樹脂であり、全カーボネート構成単位中、前記式(1)で表わされる構成単位は50モル%以上が好ましく、75モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましく、90モル%以上が特に好ましい。最も好適には、前記式(1)のカーボネート構成単位のみからなるホモポリカーボネート樹脂である。
【0014】
また、本発明で用いるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度としては0.20〜0.65のものを好ましく用いることができる。比粘度の下限は0.20以上がより好ましく、0.22以上がさらに好ましい。また上限は0.65以下がより好ましく、0.55以下がさらに好ましく、0.50以下が特に好ましい。また比粘度が0.20より低くなると本発明のポリカーボネート樹脂より得られた成形品に充分な機械強度を持たせることが困難となる。また比粘度が0.65より高くなると溶融流動性が高くなりすぎて、成形に必要な流動性を有する溶融温度が分解温度より高くなってしまう。
【0015】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、そのガラス転移温度(Tg)の下限が60℃以上が好ましく、より好ましくは90℃以上であり、さらにより好ましくは110℃以上である。また上限は200℃以下が好ましい。Tgが60℃未満だと耐熱性に劣り、200℃を超えると成形する際の溶融流動性に劣る。TgはTA Instruments社製 DSC (型式 DSC2910)により測定される。
【0016】
また、本発明に用いるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、その5%重量減少温度の下限が310℃以上が好ましく、より好ましくは320℃以上であり、さらに好ましくは330℃以上である。上限は450℃以下が好ましく、より好ましくは400℃以下であり、さらに好ましくは380℃以下である。5%重量減少温度が上記範囲内であると、本発明のポリカーボネート樹脂を用いて製膜する際の樹脂の分解がほとんど無く好ましい。5%重量減少温度を上昇させるためには、後述の通り溶融重合触媒として好ましい化合物を選択することが有効である。5%重量減少温度はTA Instruments社製 TGA (型式 TGA2950)により測定される。
【0017】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、下記式(a)で表されるエーテルジオールおよび炭酸ジエステルとから溶融重合法により製造することができる。
【0018】
【化3】

【0019】
エーテルジオールとしては、具体的には下記式(b)、(c)および(d)で表されるイソソルビド、イソマンニド、イソイディッドなどが挙げられる。
【0020】
【化4】

【化5】

【化6】

【0021】
これら糖質由来のエーテルジオールは、自然界のバイオマスからも得られる物質で、再生可能資源と呼ばれるものの1つである。イソソルビドは、でんぷんから得られるDーグルコースに水添した後、脱水を受けさせることにより得られる。その他のエーテルジオールについても、出発物質を除いて同様の反応により得られる。
【0022】
特に、カーボネート構成単位がイソソルビド(1,4:3,6ージアンヒドローDーソルビトール)由来のカーボネート構成単位を含んでなるポリカーボネート樹脂が好ましい。イソソルビドはでんぷんなどから簡単に作ることができるエーテルジオールであり資源として豊富に入手することができる上、イソマンニドやイソイディッドと比べても製造の容易さ、性質、用途の幅広さの全てにおいて優れている。
【0023】
また本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、その特性を損なわない範囲で脂肪族ジオール類または芳香族ビスフェノール類との共重合としても良い。脂肪族ジオールとしては、下記式(2)で表される脂肪族ジオールが好ましく用いられる。
【0024】
【化7】

(式中、mは1〜20の整数)
【0025】
具体的にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖状ジオール類や、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式アルキレン類などが挙げられ、中でも1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、およびシクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0026】
芳香族ビスフェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称“ビスフェノールA”)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン等が挙げられる。
【0027】
また、上記式(1)で表されるエーテルジオール、上記式(2)で表される脂肪族ジオールおよび芳香族ビスフェノールに加えて他のジオール残基を含むこともできる。その他のジオールとしてはジメタノールベンゼン、ジエタノールベンゼンなどの芳香族ジオールなどを挙げることができる。
【0028】
また本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、その特性を損なわない範囲で末端基を導入することもできる。かかる末端基は、対応するヒドロキシ化合物を重合時に添加することにより導入することができる。該末端基としては下記式(3)または(4)で表される末端基が好ましい。
【0029】
【化8】

【化9】

【0030】
上記式(3),(4)中、Rは炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、または下記式(5)
【化10】

であり、好ましくは炭素原子数4〜20のアルキル基、炭素原子数4〜20のパーフルオロアルキル基、または上記式(5)であり、特に炭素原子数8〜20のアルキル基、または上記式(5)が好ましい。Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合が好ましいが、より好ましくは単結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合であり、なかでも単結合、エステル結合が好ましい。aは1〜5の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、特に1が好ましい。
【0031】
また、上記式(5)中、R,R,R,R及びRは、夫々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基及び炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であり、好ましくは夫々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基及び炭素原子数6〜10のアリール基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であり、特に夫々独立してメチル基及びフェニル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基が好ましい。bは0〜3の整数であり、1〜3の整数が好ましく、特に2〜3の整数が好ましい。cは4〜100の整数であり、4〜50の整数が好ましく、特に8〜50の整数が好ましい。
【0032】
これらの末端基を導入することにより、該ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物から形成された表面保護フィルムまたはシートの流動性、離型性、耐吸湿性または表面エネルギー性(防汚性や摩耗耐性)等を向上させる効果が得られる。これらの末端基は好ましくはポリマー主鎖構造に対して0.3〜9.0重量%含まれており、より好ましくは0.3〜7.5重量%含まれており、特に好ましくは0.5〜6.0重量%含まれている。
【0033】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、植物などの再生可能資源から得られる原料を用いたカーボネート構成単位を主鎖構造に持つことから、上述したヒドロキシ化合物もまた植物などの再生可能資源から得られる原料であることが好ましい。植物から得られるヒドロキシ化合物としては、植物油から得られる長鎖アルキルアルコール類(セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール)などが挙げられる。
【0034】
また、本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、前記式(a)で表されるエーテルジオールを含むビスヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを混合し、エステル交換反応によって生成するアルコールまたはフェノールを高温減圧下にて留出させる溶融重合を行うことによって得ることができる。
【0035】
反応温度は、エーテルジオールの分解を抑え、着色が少なく高粘度の樹脂を得るために、できるだけ低温の条件を用いることが好ましいが、重合反応を適切に進める為には重合温度は180℃〜280℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは180℃〜270℃の範囲である。
【0036】
また、反応初期にはエーテルジオールと炭酸ジエステルとを常圧で加熱し、予備反応させた後、徐々に減圧にして反応後期には系を1.3×10−3〜1.3×10−5MPa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる方法が好ましい。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0037】
炭酸ジエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜18のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(p−ブチルフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0038】
炭酸ジエステルは全エーテルジオール化合物に対してモル比で1.05〜0.97の割合で用いる事が好ましく、1.03〜0.97の割合で用いる事がより好ましく、1.03〜0.99の割合で用いる事がさらに好ましい。炭酸ジエステルのモル比が1.02より多くなると、炭酸エステル残基が末端封止として働いてしまい充分な重合度が得られなくなってしまい好ましくない。また炭酸ジエステルのモル比が0.98より少ない場合でも、充分な重合度が得られず好ましくない。
【0039】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。該重合触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、二価フェノールのナトリウム塩またはカリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。なかでも、含窒素塩基性化合物とアルカリ金属化合物とを併用して使用することが好ましい。
【0040】
これらの重合触媒の使用量は、それぞれ炭酸ジエステル成分1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。反応系は窒素などの原料、反応混合物、反応生成物に対し不活性なガスの雰囲気に保つことが好ましい。窒素以外の不活性ガスとしては、アルゴンなどを挙げることができる。更に、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を加えてもよい。
【0041】
上記製造法により得られたポリカーボネート樹脂に触媒失活剤を添加する事もできる。触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましく、更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の上記塩類やパラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の上記塩類が好ましい。またスルホン酸のエステルとしてベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられ、その中でもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた前記重合触媒1モル当たり0.5〜50モルの割合で、好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用する事ができる。
【0042】
また、本発明で用いるポリカーボネート樹脂ブレンド物は、カーボネート構成単位[A]のみからなるホモポリカーボネートとカーボネート構成単位[A]を含む共重合ポリカーボネートとのブレンド、カーボネート構成単位[A]のモル分率の異なる共重合ポリカーボネート同士のブレンドのいずれの形態であっても良い。また、分子量の異なるポリカーボネート樹脂をブレンドしたものも含まれる。
【0043】
この場合得られたポリカーボネート樹脂ブレンド物におけるカーボネート構成単位[A]の割合が100〜50モル%であり、好ましくは100〜75モル%であり、より好ましくは100〜90モル%である。
【0044】
ポリカーボネート樹脂ブレンド物の製造に当たっては、その製造法は特に限定されるものではない。しかし本発明に用いるポリカーボネート樹脂ブレンド物の好ましい製造方法は押出機を用いて各ポリカーボネート樹脂成分を溶融混練する方法である。
【0045】
押出機としては特に二軸押出機が好適であり、原料中の水分や溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生した水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。
【0046】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は必要に応じて離型剤を添加することができる。かかる離型剤は、アルコールと脂肪酸とのエステルである。その中でも一価アルコールと脂肪酸とのエステルまたは多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが好ましく、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルおよび/または全エステルがより好ましく、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルがさらに好ましい。なお、ここで云う部分エステルとは、多価アルコールの水酸基の一部が脂肪酸とエステル反応せずに残存しているものを意味する。さらに、炭素原子数1〜20の一価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸とのエステル及び炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の離型剤が好ましく、特に炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが使用される。
【0047】
具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。
【0048】
具体的に多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。
【0049】
これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレート等の部分エステルが好ましく、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレートがより好ましく、特に、ステアリン酸モノグリセリドが好ましい。かかるC成分の化合物は、1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0050】
離型剤の量はポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物100重量部に対して0.01〜0.5重量部が好ましく、0.03〜0.5重量部がより好ましく、0.03〜0.3重量部がさらに好ましく、特に0.03〜0.2重量部が好ましい。離型剤がこの範囲内にあると、ヤケを抑制しつつ離型性の向上を達成することができる。
【0051】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物には、さらにヒンダードフェノール系熱安定剤および/またはリン系熱安定剤を加えても良い。
【0052】
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えばオクタデシルー3ー(3,5ージーtertーブチルー4ーヒドロキシフェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸3,5ービス(1,1ージメチルエチル)ー4ーヒドロキシアルキルエステル(アルキルは炭素数7〜9で側鎖を有する)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3ー(5ーtertーブチルー4ーヒドロキシーmートリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3ー(3,5ージーtertーブチルー4ーヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3ー(3,5ージーtertーブチルー4ーヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9ービス[2ー[3ー(3ーtertーブチルー4ーヒドロキシー5ーメチルフェニル)プロピオニロキシ]ー1,1ージメチルエチル]ー2,4,8,10ーテトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−イソプロピリデンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−tert−ペンチル−6−(3−tert−ペンチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルメタクリレート、2−tert−ペンチル−6−(3−tert−ペンチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ブチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ブチルフェニルメタクリレート、および2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルメタクリレートなどが挙げられる。上記ヒンダードフェノール系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
ヒンダードフェノール系安定剤の配合量はポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物100重量部に対して0.0005〜0.1重量部が好ましく、0.001〜0.1重量部がより好ましく、0.005〜0.1重量部がさらに好ましく、0.01〜0.1重量部が特に好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤がこの範囲内にあると、本発明のポリカーボネート樹脂を成形する際の分子量低下や色相悪化などを抑える事ができる。
【0054】
リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4ージーtertーブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6ージーtertーブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4ージーtertーブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6ージーtertーブチルー4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6ージーtertーブチルー4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0055】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4ージーtertーブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0056】
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0057】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6ージーtertーブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6ージーtertーブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6ージーtertーブチルフェニル)−3,3’―ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6ージーtertーブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6ージーtertーブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
リン系安定剤の配合量はポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物100重量部に対して0.001〜0.5重量部が好ましく、0.005〜0.5重量部がより好ましく、0.005〜0.3重量部がさらに好ましく、0.01〜0.3重量部が特に好ましい。リン系安定剤がこの範囲内にあると、本発明のポリカーボネート樹脂を成形する際の分子量低下や色相悪化などを抑える事ができる。
【0059】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物には、上記の他必要に応じて各種の添加剤を添加してもよく、例えば熱安定化剤、安定化助剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、重金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0060】
また、本発明で用いる共重合ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物には、本発明の目的を損なわない範囲でポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート(カーボネート構成単位[A]を含まないもの)、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアクリル、ABS、ポリウレタンなど、各種のポリマーならびに合成樹脂、ゴムなどを混合しアロイ化して用いることもできる。
【0061】
本発明の表面保護フィルムまたはシートの製造方法としては、本発明で用いるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物を溶媒に溶解させた樹脂溶液を用いる溶液キャスト法、本発明で用いるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物をそのまま溶融させて流延する溶融製膜法が挙げられる。
【0062】
溶液キャスト法によりフィルムまたはシートを作成する場合には、使用する溶媒としては、汎用性、製造コスト面からハロゲン系溶媒、中でも塩化メチレンを用いることが最も好ましいが、製膜性を妨げない範囲で他の溶媒を用いてもかまわず、また必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。他の溶媒としては例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が挙げられる。
【0063】
本発明で用いるポリカーボネートの樹脂溶液(ドープ)を支持基板上に流延した後、加熱して溶媒を蒸発させることによりフィルムまたはシートを得ることが出来る。支持基板としてガラス基板、ステンレスやフェロタイプなどの金属基板、PETなどのプラスチック基板などを使用し、ドクターブレードなどでドープを均一に支持基板上に流延させる。工業的にはダイからドープをベルト状もしくはドラム状の支持基板上に連続して押し出す方法が一般的である。
【0064】
支持基板上に流延したドープは発泡が起きないよう低温から徐々に加熱乾燥していくことが好ましく、加熱して大部分の溶媒を除去して自立性のあるフィルムとしてから支持基板から剥離し、さらにフィルムまたはシート両面から加熱乾燥して残りの溶媒を除去することが好ましい。基板から剥離した後の乾燥工程では、熱収縮による寸法変化によりフィルムまたはシートに応力がかかる可能性が高いため、液晶表示装置に用いる光学用フィルムまたはシートのように精密な光学特性のコントロールが必要とされる製膜においては、乾燥温度、フィルムまたはシートの固定条件などに留意して行うことが必要である。一般には剥離後の乾燥においては用いるポリカーボネート樹脂の(Tg−100℃)〜Tgの範囲で段階的に昇温しながら乾燥する方法をとることが好ましい。Tg以上で乾燥するとフィルムまたはシートの熱変形が起こり好ましくなく、(Tg−100℃)以下では乾燥温度が著しく遅くなるため好ましくない。
【0065】
溶液キャスト法で得るフィルムまたはシート中の残留溶媒量は2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。2重量%以上と残留溶媒量が多いとフィルムまたはシートのガラス転移点の低下が著しくなり好ましくない。
【0066】
溶融製膜法によりフィルムまたはシートを作成する場合には、一般にTダイから融液を押し出して製膜される。製膜温度は、ポリカーボネート樹脂の分子量、Tg、溶融流動特性などから決められるが、通常180℃〜350℃の範囲であり、200℃〜320℃の範囲がより好ましい。温度が低すぎると粘度が高くなりポリマーの配向、応力歪みが残りやすいことがあり、逆に温度が高すぎるのも熱劣化、着色、Tダイからのダイライン(筋)などの問題がおきやすくなることがある。
【0067】
本発明におけるフィルムの厚みは10〜500μm程度で、シートの厚みは0.5〜2mm程度である。
【発明の効果】
【0068】
本発明の表面保護フィルムまたはシートは、再生可能資源であるバイオマス資源を原料として使用されたポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物からなり、コシの強さ(引張弾性率)、防傷性、および耐溶剤性に優れることから、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材用、自動車部品用、特には液晶部材といった光学製品用および電気電子部品用などに好適に用いられる表面保護フィルムまたはシートとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例により本発明を詳述する。但し、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお参考例、実施例および比較例中の物性測定は以下のようにして行ったものである。
【0070】
(1)比粘度(ηsp
ペレットを塩化メチレンに溶解、濃度を約0.7g/dLとして、温度20℃にて、オストワルド粘度計(装置名:RIGO AUTO VISCOSIMETER TYPE VMR−0525・PC)を使用して測定した。なお、比粘度ηspは下記式から求められる。
ηsp=t/t−1
t :試料溶液のフロータイム
:溶媒のみのフロータイム
(2)ガラス転移温度(Tg)
ペレットをTA Instruments社製 DSC (型式 DSC2910)により測定した。
(3)5%重量減少温度(Td)
ペレットをTA Instruments社製 TGA (型式 TGA2950)により測定した。
(4)引張弾性率測定
5mm幅の短冊状フィルムを用意し、これを間隔20mmの一対のチャックではさみ、5mm/minの速度で引張った時の応力から引張弾性率(MPa)を求めた。
(5)耐溶剤性評価
試験片を各溶剤中に浸漬し、24時間後の変化を目視にて評価した。試験片は40×10×4mmのものを用いた。評価は、変化なし(◎)、表面が荒れる(△)、溶解(×)の3段階評価を行った。
(6)防傷性評価
得られた各フィルムを用いて、JIS K5600に基づいた試験方法によってえんぴつ硬度を測定した。
【0071】
[参考例1](実施例で用いるポリカーボネート樹脂の製造)
イソソルビド1608重量部(11モル)とジフェニルカーボネート2356重量部(11モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを1.0重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して1×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを1.1×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して0.25×10−6モル)仕込んで窒素雰囲気下常圧で180℃に加熱し溶融させた。
【0072】
撹拌下、反応槽内を30分かけて徐々に減圧し、生成するフェノールを留去しながら13.3×10−3MPaまで減圧した。この状態で20分反応させた後に200℃に昇温した後、20分かけて徐々に減圧し、フェノールを留去しながら4.00×10−3MPaで20分間反応させ、さらに、220℃に昇温し30分間、250℃に昇温し30分間反応させた。
【0073】
次いで、徐々に減圧し、2.67×10−3MPaで10分間、1.33×10−3MPaで10分間反応を続行し、さらに減圧し、4.00×10−5MPaに到達したら、徐々に260℃まで昇温し、最終的に260℃、6.66×10−5MPaで1時間反応せしめた。反応後のポリマーをペレット化した。得られたポリマーの比粘度は0.26、ガラス転移温度は162℃、5%重量減少温度は357℃であった。
【0074】
[参考例2](実施例で用いるポリカーボネート樹脂の製造)
イソソルビド66.42重量部(0.45モル)と1,3−プロパンジオール11.52重量部(0.15モル)とジフェニルカーボネート129.81重量部(0.61モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを1.0重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して1×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを1.1×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して0.25×10−6モル)とを用いた以外は参考例1と同様にしてポリカーボネート樹脂の溶融重合を行った。得られたポリマーの比粘度は0.25、ガラス転移温度は116℃、5%重量減少温度は338℃であった。
【0075】
[参考例3](実施例で用いるポリカーボネート樹脂の製造)
イソソルビド804重量部(5.5モル)、ビスフェノールA(BPA)1256重量部(5.5モル)およびジフェニルカーボネート2356重量部(11モル)を反応槽に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド1.0重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して1×10−4モル)、および水酸化ナトリウム1.1×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して0.25×10−6モル)とを用いた以外は参考例1と同様にしてポリカーボネート樹脂の溶融重合を行った。得られたポリマーの比粘度は0.35、ガラス転移温度は153℃、5%重量減少温度は366℃であった。
【0076】
[参考例4](実施例で用いるポリカーボネート樹脂の製造)
イソソルビド1242重量部(8.5モル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン(以下、DEDと略することもある)490重量部(1.5モル)およびジフェニルカーボネート2142重量部(10モル)を反応槽に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド1.0重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して1×10−4モル)、および水酸化ナトリウム1.1×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して0.25×10−6モル)とを用いた以外は参考例1と同様にしてポリカーボネート樹脂の溶融重合を行った。得られたポリマーの比粘度は0.25、ガラス転移温度は124℃、5%重量減少温度は357℃であった。
【0077】
[参考例5](実施例で用いるポリカーボネート樹脂の製造)
イソソルビド1608重量部(11モル)とジフェニルカーボネート2356重量部(11モル)、ステアリルアルコール59重量部(0.22モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを1.0重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して1×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを1.1×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して0.25×10−6モル)とを用いた以外は参考例1と同様にしてポリカーボネートの溶融重合を行った。得られたポリマーの比粘度は0.28、ガラス転移温度は150℃、5%重量減少温度は362℃であった。
【0078】
[参考例6](実施例で用いるポリカーボネート樹脂ブレンド物の製造)
実施例1で製造したポリカーボネート樹脂ペレット50部と実施例2で製造した共重合ポリカーボネート樹脂ペレット50部とをブレンダーにて混合してイソソルビド構成単位87モル%および1,3−プロパンジオール構成単位13モル%のポリカーボネート樹脂ブレンド物を得た。得られたポリマーの比粘度は0.26、ガラス転移温度は140℃、5%重量減少温度は348℃であった。
【0079】
[実施例1]
参考例1で得られたポリカーボネート樹脂をKZW15−30MGフィルム成形装置((株)テクノベル製)及びKYA−2H−6 ロール温調機((株)加藤理機製作所製)を用いて溶融製膜フィルムを得た。押出し機シリンダー温度は220℃〜260℃の範囲内に保持し、ロール温度は250℃にて行った。
このようにして得られたフィルム(厚み120μm)の引張弾性率は、2298MPaであった。該フィルムは高い引張弾性率を有し、コシが強いことが分かる。
また、得られたフィルムを用い防傷性評価を行った。その結果を表1に示した。
【0080】
[実施例2〜6]
参考例2〜6で得られたポリカーボネート樹脂を、実施例1と同様の方法で溶融製膜フィルムを得た。得られたフィルムを用い防傷性評価を行った。その結果を表1に示した。
【0081】
[比較例1]
ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂である帝人化成(株)製パンライト(登録商標)L1225を用いて、実施例1と同様の方法で溶融製膜フィルムを得た。得られたフィルムを用い防傷性評価を行った。その結果を表1に示した。実施例1〜6のフィルムと比較して防傷性に劣ることが分かる。
【0082】
【表1】

【0083】
[実施例7および8]
参考例1および2で得られたペレットを、日本製鋼所(株)製 JSWJ−75EIIIを用いてシリンダ温度250℃、金型温度90℃にて耐溶剤性試験用試験片(縦40mm×横10mm×厚み2mm)を成形し、耐溶剤性試験を行った。得られた結果を表2に示した。
【0084】
[比較例2]
ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂である帝人化成(株)製パンライト(登録商標)L1225を用いて、実施例7および8と同様にして耐溶剤性試験用試験片を成形し、耐溶剤製試験を行った。得られた結果を表2に示した。実施例7および8と比較して耐溶剤性(殊に有機溶剤に対する耐溶剤性)に劣ることが分かる。
【0085】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるカーボネート構成単位[A]を含んでなるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物であって、カーボネート構成単位[A]が全カーボネート構成単位中50〜100モル%の割合であるポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物より形成された表面保護フィルムまたはシート。
【化1】

【請求項2】
カーボネート構成単位[A]が全カーボネート構成単位中75〜100モル%の割合である請求項1記載の表面保護フィルムまたはシート。
【請求項3】
カーボネート構成単位[A]が全カーボネート構成単位中90〜100モル%の割合である請求項1記載の表面保護フィルムまたはシート。
【請求項4】
カーボネート構成単位[A]のみからなるポリカーボネート樹脂より形成された請求項1記載の表面保護フィルムまたはシート。
【請求項5】
ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂ブレンド物は、樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度が0.20〜0.65である請求項1記載の表面保護フィルムまたはシート。

【公開番号】特開2009−79190(P2009−79190A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251276(P2007−251276)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】